多方面で活躍するアーティスト、Mac Wetha(マック・ウェタ)が、beabadoobeeとAminé(アミネ)をフィーチャーしたコラボレーション・シングル「Fear of Flying」をDirty Hitから発表した。
「この曲は2021年に初めて形になり、当初はジョシュ・スカーブロウとマット・マルテーズと書いたものだったんだ。この曲は、フルタイムで音楽で生計を立てるという夢を持ちながら、幾度も自問自答を繰り返し、ファンを失望させることを心配していた時期から生まれたたものなんだ。それが私にとっての "Fear of Flying "の意味でもある。"みんなに見てもらうために高く舞い上がろうとするんだけれど、誰もそれを好きにはならないし、気にもしてくれないという恐怖に関して」
2年後、「Fear Of Flying」の最終バージョンは、レーベル・メイトのBeabadoobeeと、彼が以前プロデュースしたアメリカのラッパーAminéをフィーチャーしている。
「ダブリンのリハーサル・スタジオで真冬に書いた曲で、寒さが曲に染み込んでいる」とバンドは声明で説明している。昨年、Pillow Queensの2ndアルバム『Leave the Light On』を発表した。
2022年初め、トロントのハードコアバンド、Fucked Upは、24時間で作曲と録音を行った伝説的なフルレングス『One Day』をMerge Recordsからリリースした。続いて『One Day』のセッションの別テイクから3曲を収録した『Show Friends』(7Inch)をリリースしたばかり。タイトル・トラックと 「Spot The Difference」に続く3曲目のシングル「What The Sun Shaw」がついに公開となった。
この曲には、頻繁にコラボレートしているギルバート・トレホが監督したビデオが付属しており、彼はこのビデオについてこうコメントしている。「ジョジョと私は、Heartwormsが築いているモノトーンの世界に強く傾倒し、バンド以外のすべてを虚無の海に洗い流したかったんだ。『24 Hours』と『May I Comply』の撮影の間に、ツアー中のハートワームズを撮影する機会があり、この段階でジョジョのパフォーマンスのエネルギーをもう少し捉えることに興奮していた」
「May I Comply」
2022年、『With a Hammaer』を発表し、人気急上昇中のYaeji。彼女は「easy breezy」を発表した。この新曲についてこう語る。「"easy Breezy "は、私の過去の作品(と過去の自分)を紡ぐ続編のような感じです」
ビデオは、曲そのものと同じくらい軽快でのんきなもので、ヤエジが愛犬ジジと一緒にスクーターでニューヨーク中を疾走し、マリオカート風のレースでバナナの皮やその他の障害物をよけている。最近の「For Granted」と「Done (Let's Get It)」のビデオに引き続き、このビデオでもヤエジが監督を務めている。下記よりチェックしてみましょう。
画期的な瞬間にめまぐるしい1年を過ごしたYaejiは、8月に北米とヨーロッパ・ツアーの合間を縫ってスタジオに戻り、そこからこのエキサイティングな新作を発表した。今週、YaejiはWith A Hammerのヨーロッパ・ツアーに出発し、今週土曜日にラウンドハウスで開催される権威あるピッチフォーク・ロンドン・フェスティバルのヘッドライナーを務める。
自由を求める気持ちは人それぞれだが、時には人間以外の仲間と過ごす時間も大切だ。タイのファルセット・ヴォーカルとドライヴ感のあるエレクトリック・アレンジが「マイ・ベスト・フレンド」のバックボーンで、ギターがシンクロしたラインを刻み、カウベルがコーラスを強化する。ソロ・セクションでは、共鳴するリズム/リードがめくるめくステレオ効果で煽られる。タイが撮影・監督したこの曲のビデオでは、彼の忠実な仲間であるファニーとハーマンが、新しい一日の夜明けに抑えきれない情熱で尻尾を振っている。甘いおやつ、フレンドリーな匂い、ビーチでの元気な出会いが曲のリズムを映し出している。ーDrag
City
Ty Segall 『Three Bells』
Label: Drag City
Release:2024/1/26
Tracklist:
1. The Bell
2. Void
3. I Hear
4. Hi Dee Dee
5. My Best Friend
6. Reflections
7. Move
8. Eggman
9. My Room
10. Watcher
11. Repetition
12. To You
Tour Date:
USA
2/20 - San Francisco, CA @ Great American Music Hall 2/21 - San Francisco, CA @ Great American Music Hall 2/23 - Los Angeles, CA @ The Wiltern - w/ White Fence 2/24 - Solana Beach, CA @ Belly Up 4/19 - Tucson, AZ @ 191 Toole 4/20 - Albuquerque, NM @ Sister Bar 4/22 - Austin, TX @ Mohawk (Outside) 4/23 - Jackson, MS @ Duling Hall 4/24 - Nashville, TN @ Brooklyn Bowl 4/26 - Asheville, NC @ The Orange Peel 4/27 - Washington DC @ Lincoln Theatre 4/28 - Philadelphia, PA @ Union Transfer 4/29 - New York, NY @ Webster Hall 5/1 - Boston, MA @ Royale 5/2 - Montreal, QC @ Club Soda 5/3 - Toronto, ON @ Danforth Music Hall 5/5 - Cleveland, OH @ Beachland Ballroom Mon. 5/6 - Chicago, IL @ Thalia Hall 5/7 - Omaha, NE @ The Waiting Room 5/9 - Englewood, CO @ Gothic Theatre 5/10 - May 12 - Salt Lake City, UT @ Kilby Block Party 5/11 - Sacramento, CA @ Harlowʼs
Europe
6/17 - Prague, @ Roxy, CZ 6/18 - Zürich, @ Mascotte, CH 6/20 - Vitoria-Gasteiz, @ Azkena Rock Festival, ES 6/22 - Paris, @ Elysée Montmartre, FR 6/24 - Manchester, @ New Century, UK 6/25 - Dublin, @ Button Factory, IE 6/27 - Glasgow, @ Queen Margaret Union (QMU), UK 6/28 - London, @ Roundhouse, UK 6/30 - Bristol, @ Bristol Sounds 2024, UK 7/2 - Lille, @ L'Aéronef, FR 7/3 - Berlin, @ Festsaal Kreuzberg, DE 7/4 - Vilanova i la Geltrú, @ Vida Festival 2024, ES 7/7 - Beuningen, @ Down The Rabbit Hole, NL
実際のアルバムは、バー・イタリアのメンバーのプリミティヴなプロトパンクに対する親近感を読み取ることができるかもしれない。そのサウンドの質感は、Television、Sonic Youth、Richard HellといったNYのレジェンドに近いものである。オープニングを飾る「my little tony」は、bar italiaがSonic Youthの次世代のバンドであることのしたたかな表明代わりとなる。ガレージ・ロックを吸収したダイナミックなギターラインは、前作よりも信頼感のあるロックグループとしての道を選択したことの証ともなる。実際に、ソリッドで硬質なギターラインは、bar italiaの代名詞であるボーカルを入れ替えるスタイルと劇的に合致し、従来よりもタイトなサウンドが生み出されるに至った。
一方で、前作で象徴的だったローファイで荒削りなニューヨークのNo Waveに近いアヴァンギャルドなオルタナティヴロック・サウンドは、今作でも健在である。「que surprise」では、ホーム・スタジオならでは感覚が重視されていて、ライブ・セッションに近いリアルな息吹を感じる。サローニのラフなミックスも、曲のローファイな感覚を上手く引き出している。スローテンポな曲ではありながら、バンドの演奏のリアルな感覚を楽しめる。同じように「Blush w Faith」においても、ジャム・セッションの延長線上にあるラフなロックが展開される。Violent Femmesを思わせる寛いだインディーロックから、曲の後半にかけてDinasaur Jr.の系譜にあるダイナミックなオルトロックサウンドに移行する瞬間は必聴である。こういったダイナミックさと繊細さを併せ持つ特異なオルトロックサウンドは、「calm down with me」にも見出すことができる。
さらに、bar italiaは、Matadorと契約する以前から、シューゲイズ、ドリーム・ポップの音楽にも取り組んで来た。それらはローファイという形でアウトプットされることは旧来のファンであればご承知のはずである。しかしながら、今まさにバンドは、過酷なライブツアーを目前に控えて、「Hi Fiver」、「Sounds Like You Had To Be There」と、原点回帰の意味を持つ曲を書いている。これはとても重要なことで、今後、何らかの形で生きてくる可能性が高い。
フィラデルフィアのハードコア・アウトフィット、Paint It Blackは、Kid Dynamite/Lifetimeのメンバーとして知られるDanが所属しているという。意外にも長いキャリアを持つバンドらしいが、今作では、USハードコアの王道を行くパンク性により、パンクキッズをノックアウトする。
Kid Dynamite,Lifetime、Dag Nasty周辺を彷彿とさせる硬派なボーカルスタイルやハードコアの方向性には、Discordを中心とするDCのハードコアやストレイト・エッジのオールドスクール性が漂うが、一方、グルーブ感を生かしたニュースクールのリズムと鋭いエッジを擁するギターやドラム、無骨なボーカルスタイルが特徴である。さらに、Paint It Blackの音楽性にはニューメタルやメタルコア等の影響も滲んでいる。アルバムの蓋を開けば、怒涛のノイジーさとアジテーションの応酬に塗れること必至だが、他方、Converge以後のニュースクール・ハードコアのスタイルの中には、奇妙な説得力や深みがノイジーさの向こう側に浮かび上がってくる瞬間がある。つまり、プレスリリースで説明されているとおり、「ハードコア・パンクの最も強力なリリースは、弱さ、正直さ、信憑性の空間から生まれるものであることを証明するもの」なのである。
そのことはオープニング「Famine」において示されている。フックやエッジの聴いたギターラインと屈強なリズムとバンドのフロントマンの咆哮にも近いスクリーモの影響を絡めた痛撃なハードコアサウンドは、バンドがこれまでどのような考えを持ち、活動を行ってきたのかを示している。ノイジーなサウンドの中核を担うのは、オールドスクールのDCハードコア、そしてFiddleheadに近いモダニズムである。他方、ヨーロッパのニュースクール・ハードコア/ポスト・ハードコアの独特な哀愁も漂う。それは、イタリア/フォルリの伝説、La Quiete、フランスのDaitro、スウェーデンのSuis La Luneのポストハードコアバンドと比べても何ら遜色がないことがわかる。
もちろん、疾走感や無骨さだけが、Paint It Blackの魅力なのではない。「Explotation In Period」では、イギリスのNew WaveやニューヨークのNo Waveを系譜にあるアヴァンギャルド音楽をポスト・ハードコアという形に落とし込んでいるのが美点である。これらの前衛性は、彼らがパンク・スピリットとは何かという原義的なものを探し続けた来た結果が示されていると言える。そして、実際、アルバムの全体的な音響性の中に面白い印象の変化をもたらしている。
ハードコアパンク・サウンドの中にある多彩さというのは、本作の最大の強みとなっている。 「Serf City, USA」では、Kid Dynamiteを思わせるメロディック・ハードコアのアプローチを選んでいる。ストップ・アンド・ゴーを多用したパンクサウンドはアンサンブルの深い理解に基づいており、Paint It Blackのバンドとしての経験豊富さやソングライティングにおける引き出しの多さを伺わせる。ダブル・ボーカルに関しても苛烈で痛撃な印象を及ぼし、もちろんハードコア・パンクファンの新たなアンセムと言って良く、拳を突き上げてシンガロングするよりほかない。
Paint It Blackは、このアルバムを通じて、パンクロックそのものの最大の魅力である簡潔性や衝動性に重点を置いている。それはその後も続いている。
「The Unreasonable Silence」では、レボリューション・サマーの時代のOne Last Wish、Fugaziの系譜にあるアヴァンギャルドなロックへの展開していく。さらに、Minor Threat、Teen Idlesを思わせる「Namesake」では、ストレイト・エッジを、近年のConvergeのように、ポストハードコアの側面から再解釈しようとしている。表向きにはきわめてノイジーなのに、内側に不思議にも奇妙な静寂が感じられるのは、La Quieteと同様である。クローズ曲「City Of Dead」では、王者の威風堂々たる雰囲気すら漂う。最後の曲では、暗示的に政治不安や暗黒時代の何かが歌われているのだろうか。そこまではわからないことだとしても、アルバムの全般を通じて、フィラデルフィアのPaint It Blackは現代のハードコアパンクの未来がどうあるべきなのか、その模範を断片的に示そうとしている。
その後、”Tetsumasa”名義で活動を開始し、実験的な電子音楽の作品 『ASA EP (vinyl)”』、『Obake EP (cassette)』をリリースしました。Urban Spree for Libel Null Berlin、Griessmühle (Berlin)、OHM Berlin、ATOM Festival (ウクライナ) などでもライブセットでプレイしている。
Music Tribune: 2016年から日本からベルリンに拠点を移して活動なさっているとのことですが、現在はどのような感じで日常生活を送っているのか教えてください。また、なぜドイツに移住しようと思ったのかについても教えてください。さらに言語的なコミュニケーションやドイツの文化に馴染むのは、なかなか大変なことではないですか??
Music Tribune: 以後、2020年の「On The Way」(食品まつり a.k.a foodmanが参加)からガラッと作風が変化したように思えます。私は、この辺りの音楽にはあまり詳しくないんですが、これは現地のフロアのダンス・ミュージックに感化されたことが大きいのでしょうか。また、最近では髪の色も赤に変わり、かなりイメージチェンジを図っていますね??
Music Tribune: 続いて、11月2日発売の新作EPについても質問したいと思います。「Lots of Question」のテーマ、コンセプト、全般的な構想などについて教えてください。
Tetsumasa: タイトルの”Lots Of Questions”は自分自身とオーディエンスに対しての疑問がテーマになってます。自分が今どこにいて、どこに向かっているのかがはっきりわからないので、「Lots Of Questions」というタイトルにしました。僕の疑問にオーディエンスが何か答えをおしえてくれることを期待しています。
Music Tribune: テツマサさんは、これまでウクライナやベルリンでのライブを経験されているようですね。日本とヨーロッパのクラブ・シーンの違いや、ライブ時の迫力の違い等があれば教えてください。
Music Tribune: いよいよ『Lots of Question』が11月2日に発売されました。ずばり手応えはいかがでしょうか?? アルバムの収録曲の中で、これだけはチェックしておいて欲しいという注目の一曲を教えてください。
Tetsumasa: 手応えは今までで1番良い感じがしてます。EPのタイトルにもなっている2曲目「Lots of Question」が関係者から良いと言ってもらえることが多く、フックになっている気がしています。自分的には、1曲目の「Moment In Berlin」が自分らしい世界観が最も出せたし好きですね。タイトル、曲の雰囲気、MV、全てが合致したと思える作品になったので、是非、MVも見てほしいです!!
Music Tribune: 今後、ミュージシャン(プロデューサー)としてどういうふうになりたいか、こういった音楽を作っていきたい等の展望をお持ちであれば、教えてください。
Tetsumasa: 今後の展望は、次のEPも既に制作中で近々リリースできると思います。しばらくは今回の"Lots
Of
Questions”のような方向性の音楽のリリースを続けようと今のところ考えてます。でも僕はよく気が変わるのでどうなるかわからないですけどね。DJやライブセットも積極的に色々な場所でやっていきたいです。
インタビューをお受けいただき、厚く御礼申し上げます。 今後のさらなる活躍に期待しております。
Tetsumasaの新作EP「Lots Of Questions』は11月2日より発売中です。ストリーミングとご購入はこちらから。
シカゴの緊密で多作なDIYシーンの著名なメンバーであるセンが、初めてプロのスタジオで制作したのが、「If The Answer Isn't Love」だった。
シカゴのFriends Of Friendsレコーディング・スタジオで作業し、曲の肉付けに彼のコミュニティのメンバーを起用したこの曲は、ブロック・メンデがエンジニアを務め、ライアン・パーソンがドラム、マイケル・カンテラがベース、KAINAがバッキング・ヴォーカルを担当した。
アルバムのオープニングを飾る「If The Answer Isn't Love」では、ジャズ、ファンクの影響を巧みに取り入れ、それを爽快感のあるロックへと昇華している。インディーロックと言わないのは普遍性があるから。リズムのハネを意識したボーカルはフロウに近い質感を帯びている。しかし、曲において対比的に導入されるソウルフルなコーラスがメロウな空気感を作り出す。制作者に触発を与えたNNAMDÏの既存の枠組みにとらわれない自由奔放な音楽性も今一つの魅力として加わっている。それらが幻惑的なボーカルとローファイの質感を前面に押し出したプロダクションの構成と組み合わされ、親しみやすさとアヴァン性を兼ね備えたナンバーが生み出された。先行シングルとして公開された「Bad State」は、オープニングよりもファンクからの影響が強く、巧みなシンコペーションを駆使し、前のめりな感じを生み出している。聴き方によっては、Eagles、Doobie Brothersのようなウェストコーストサウンドを吸収し、微細なドラムフィルを導入し、シカゴのドリル的なリズムの効果を生み出している。以前、シカゴで靴がかっこいいというのをそう称したように「ドリルな」ナンバーとして楽しめる。また、アーティストの弟の裕也さんが撮影したというミュージックビデオも同様にドリルとしか言いようがない。
「Bad State」
「St. Peter Blind」は、アブストラクトヒップホップとネオソウルの中間にあるトラックといえるか。と同時に、ジャズのメロウな雰囲気にも充ちている。さらに無数のクロスオーバーがなされているものと思われるが、 前衛的なビートを交え、ゴスペルを次世代の音楽へと進化させている。もしくは、これはラップやジャズ、ファンクを網羅した2020年代のクリスマスソングのニュートレンドなのかもしれない。たとえ、JPEGMAFIA、Danny Brownが書くヒップホップのようにリズムがアブストラクトの範疇にあり、相当構成が複雑なものであるとしても、ほのかな温かみを失うことがなく、爽快感すら感じられる。また、リリックとして歌われるかは別として、アーティストのブラック・ミュージックへの愛着が良質なウェイブを生み出している。
続いてアルバム発売前の最後に公開された「Pressure On The Pulse」は周囲にある混沌を理解することにテーマが縁取られている。「静かな面は、なぜ、世界はこんなにも残酷なんだろう、その答えを本当に聞いて理解できるのかと問いかけている。また、その反対に、答えがまったく得られないという場合、どうすれば前に進み続けることができるかについても考えている」とプレスリリースで紹介されているシングルは、イントロのネオソウル風のメロウな感覚からポスト・ロックに転じていく。この切り替えというべきか、大きく飛躍する展開力にこそアーティストの最大の魅力があり、それはNinja Tuneに所属するノルウェーのJaga Jazzistのようなジャズとロックとエレクトロの融合という面で最大のハイライトを形成し、その山場を越えた後、イントロのように一瞬の間、静寂が訪れた後、一挙に大きくジャンプするかのように、ポップ・バンガーへと変化していく。ライブで聴くと、最高に盛り上がれそうな劇的なトラックだ。
「Naive」はアルバムの全体的な収録曲がモダンな音楽性に焦点が絞られているのに対して、この曲はジャック・ジャクソンのようなヨットロックやフォークへ親しみがしめされているように思える。アルバムのタイトルに見られるナイーヴ性は、ギターの繊細なハーモニーの中で展開されている。しかし、こういった古典的な音楽性を選択しようとも、その音楽的な印象が旧来のカタログに埋もれることはない。もちろん、セン・モリモトのボーカルは、ボサノバのように軽やかかつ穏やかで、ギターのシンプルと演奏の弾き語りは、おしゃれな感覚を生み出している。続く「What You Say」はNNAMDÏの多彩な音楽性を思わせるものがあり、ギターアンビエントをベースに前衛的なトラックが生み出されている。曲の中でたえず音楽性が移り変わっていき、後半ではファンカデリックに象徴されるようなクロスオーバー性の真骨頂を見出す事もできる。
Drop Nineteensが戻び制作に取り掛かることは、既に誰かがやっていることを後から擬えるのとは意味が異なっていた。ほとんど前例のないことであり、彼らは、電話で連絡を取りあった後、ほとんど制作前には曲を用意していなかったという。しかし、それは良い効果を与え、新しい学びや経験の機会をもたらした。「Scapa Flow」は、80、90年代のギターロック/ネオ・アコースティックの影響を取り入れ、よりモダンでダイナミックなシューゲイズ・サウンドへと進化させている。しかし、その中にはやはりノスタルジアが滲み、内省的な感覚とレトロな雰囲気を生み出し、アッケルの親しみやすいボーカルがディストーションの轟音と合致している。
続く「Gal」は、シンセサイザーの反復的なマシンビートを元にし、瞑想的な雰囲気のあるインディーロックとディケイサウンドが展開される。表向きには70年代のポスト・パンクや最初期のドイツ時代のMBVに象徴されるシューゲイズの原始的な響きを留めているが、アッケルのボーカルは、どことなくYo La Tengoのアイラ・カプランの声の持つ柔和な響きに近い雰囲気が漂う。ギターロック、ネオアコ、ドリーム・ポップ、シューゲイズをクロスオーバーし、アンサンブルの核心となるUSのオルタナティヴ性を捉えようとしているといえるかもしれない。これらの複数のサウンドの合致は、どちらかといえば和らいだ響きを作り出し、さらに曲の後半では、シネマティックなストリングスが導入されることで、曲に漂う感情性を巧みに引き出している。
続く「Tarantula」は、 スコットランドのネオ・アコースティックやアノラックの要素を受け継いだ上で、ビートルズのポップセンスの影響を取り入れ、懐古的な音楽性を探求している。シューゲイズサウンドとともにボーカルのコーラスワークの秀逸さが光る。そのメロディーは、ウェールズのYoung Marble Giants等に象徴される奇妙な孤独感や切なさが漂っている。さらに「The Price Was High」では、ボーカルが入れ替わり、ドリーム・ポップに近い音楽性に転じる。彼らのルーツであるMTV時代のサウンドを受け継ぎ、それをシューゲイズとして解釈しているようだ。ポーラ・ケリーのボーカルは、このトラックにわずかながらのペーソスを添えている。
「Rose With Smoke」は「Gal」と同様に、MBVの2ndアルバム『Isn’t Anything』に見出された ディケイサウンドの復刻が見受けられる。ギターのトーンの独特の畝りは聞き手の感覚に直に伝わり、切なさや陶酔的な感覚を呼び覚ます。シューゲイズバンドをやっているプレイヤーはかなり参考になる点が多いと思われる。30年もの長い試行の末にたどり着いた究極のサウンドである。
オーストリア出身で、現在ロサンゼルスを拠点に活動するジョン・テハダ。もはや、この周辺のシーンに詳しい方であればご存知だろうし、テック・ハウスの重鎮と言えるだろうか。テクノ的なサウンド処理をするが、ハウス特有の分厚いベースラインが特徴である。もちろん、ジョン・テハダのトラックメイクは、ダンスフロアのリアルな鳴りを意識しているのは瞭然であるが、アルバムの中にはいつも非常に内的な静けさを内包させたIDMのトラックが収録されている。さらに、数学的な要素が散りばめられ、理知的な曲の構成を組み上げることで知られている。近年のジョン・テハダの注目曲を挙げておくと、「Father and Fainter」、「Reminische」等がある。
三曲目の「Disease of Image」はテックハウスの代名詞的なサウンドといえるかもしれない。ループサウンドを元に、複数のトラック要素を付け加えたり、それとは反対に減らしながら、メリハリのあるダンストラックを制作している。特にリズム、メロディー、テクスチャーの3つの要素をどこで増やし、どこで減らすのか。細心の注意を払うことによって、非常に洗練されたサウンドが生み出されている。5分40秒のランタイムの中には音によるストーリー性や流れのようなものを感じ取ることもできる。アウトロに至った時、最初のループサウンドからは想像もできないような地点にたどり着く。こういった変奏の巧緻さも醍醐味のひとつ。
「Fight or Flight」ではテハダのバンド、オプトメトリーのパートナーであるマーチ・アドストラムがボーカルを担当している。ビートのクールさは言わずもがな、このボーカルがトラック自体に奇妙な清涼感を与えている。Massive Attackの黄金時代のサウンドを思わせる瞬間もある。こういったボーカルトラックが今後どのような形で集大成を迎えるのかを楽しみにしたい。