ワシントンDCのGlittererが次作アルバム『Rationale』の3作目のシングル「The Same Ordinary」をリリースした。先行公開された「Just A Place」と合わせて聴くと、連曲になっているのが分かる。

 

『Rationale』は、Glitterer名義としては4枚目のアルバムとなる。バンドのリーダーであるネッド・ラシンに、キーボードのニコール・ダオ、ドラマーのジョナス・ファラー、ギタリストのマイク・フレンチが加わった初のフルバンド形式により録音された作品である。

 

『The Same Ordinary』についてネッドは、「歌詞が先走り、曲に合うようにアレンジし直した後に生まれた」と述べている。「最終的に、フレーズの最後に、ちょっとしたタグのように省略した小節を入れてみることにしたんだ。結局のところ、目的の追求がいかに単調で、たとえそれに批判的であったとしても逃れられないものであるかを分析する歌詞は残したかったんだ」 

 

 「The Same Ordinary」

 

 

Glittererの新作アルバム『Rationale』はANTIから2月23日に到着する。先行シングルとして「Just A Place」、「Plastic」が公開されている。下記よりテースターをチェックしてみよう。



 

©Danie Topete


イアン・シェルトン率いるMilitarie Gunは、Fiddleheadと並んでUSパンクの新星である。MS SPRINTとの親交が深いのは周知の通りで、7インチ・スプリット「Paint Gun」も発表している。

 

2023年、バンドは記念すべきデビュー作を発表した。本作には「Do It Faster」という一撃必殺のパンクアンセムが収録されていた。

 

今回、ミリタリー・ガンは、アトランタのインディーロックバンド、Manchester Orchestraと組み、『Life Under The Gun』の収録曲「My Friend Are Having A Hard Time」の新ヴァージョンを制作した。

 

この曲は、以前公開された「Very High (Under the Sun)」と「Never Fucked Up Twice」(BullyのAlicia Bognannoをフィーチャー)と共に、今週金曜日にLoma Vistaからリリースされる『Life Under the Sun』EPに収録される。

 

EPには、NOFXの「Whoops, I OD'd」のカヴァー、Militarie GunとDazyの「Pressure Cooker」リミックスにゲスト参加したMannequin Pussyとの新曲「Will Logic」も収録される。アイザック・デイツ監督による「My Friends Are Having a Hard Time」の新ビジュアルは下記より。


 

「My Friend Are Having A Hard Time」(ft. My Firend Are Having A Hard Time)


 


ロンドンのポストパンク・デュオ、The KVBがニューアルバム『Tremors』を発表。4月5日にInvada Recordsからリリースされる。


Invadaは、ポーティスヘッドのジェフ・バーロウが手掛けるレーベルで、ひときわ個性的な作品をリリースしている。2023年、ミドルスブラのインダストリアル・ノイズバンド、Benefitsの『Nails』をリリースしている。引き続き、The KVBにも注目しておきたい。

 

The KVBはリードシングル「Labyrinths」とミュージックビデオを公開した。アルバム・ジャケットのトラックリストは以下の通り。


「Labyrinths」について、バンドは声明の中でこう語っている。


歌詞は、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編小説集にインスパイアされたもので、歴史的な主観性、真実の柔軟性、物語の構築について言及している。

デジタル化された自然、CRTスクリーン、アナログなグリッチ・テクスチャーが内臓を襲う。最初のビデオ・シングルは、アルバムのアートワークを反映させ、編集のエネルギーは曲の攻撃性を反映させたかった。


KVBは、マンチェスター/ブリストルでアルバムをレコーディングし、ジェームス・トレヴァスカス(Billy Nomates、RVG)と共に録音した。


テーマ的には、"ディストピア、黙示録、人間の条件”といった前作までのテーマを発展させたが、以前よりも悲観的な見通しと深い不信感を持っている。なおかつまた、喪失感、避けられない変化への抵抗、嘆き、受容といったテーマにも触れている。

 

 

「Labyrinths」


The KVB 『Tremors』


Label: Invada

Release: 2024/04/05


Tracklist:


1. Negative Drive

2. Words

3. Tremors

4. Labyrinths

5. In The Silence

6. Tremors (Reprise)

7. Overload

8. Dead Of Night

9. A Thirst

10. Deep End

 

Pre-order:

 

https://lnk.to/VqzsGbvp 

 

©Space Shower Music


向井秀徳率いるZazen Boysが新作アルバム『らんど』を本日リリースする。彼の他のプロジェクトと同様、アルバムには13曲が収録。発売はCD/Digitalの2バージョン。この新作アルバムから「永遠少女」が先行配信されている。


『らんど』のリリースに際し、向井秀徳は下記のコメントを発表している。


ZAZEN BOYSのニューアルバムのタイトルは「らんど」だ。
乱土世界の夕焼けにとり憑かれ続けている人間の歌がここにある。
ー向井秀徳



現在、ZAZEN BOYSは6月までの全国ツアー開催中。是非、ニューアルバム「らんど」を聴きライブ会場に足を運んで欲しい。ツアー日程に関しては下記を参照のこと。

 

また、フロントマンの向井秀徳は、今年、今井レオとのプロジェクト、Kimonosとしてコーチェラ・フェスティバルに出演し、カルフォルニアのインディオのステージに降り立つ。

 

 

 「永遠少女」

 

 

 

Zazen Boys  『らんど』 New Album


 

 

 

 

・リリース詳細

ZAZEN BOYS「らんど」
1 DANBIRA
2 バラクーダ
3 八方美人
4 チャイコフスキーでよろしく
5 ブルーサンダー
6 杉並の少年
7 黄泉の国
8 公園には誰もいない
9 ブッカツ帰りのハイスクールボーイ
10 永遠少女
11 YAKIIMO
12 乱土
13 胸焼けうどんの作り方

発売日 2024年1月24日
価格 3000円+税(CD)
品番 PECF-3287
リリース形態 CD,Digital


 

配信リンク:


https://ssm.lnk.to/Rando



ツアー詳細:

 

ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION 2024

 
出演:ZAZEN BOYS
全公演 前売¥6,600/当日¥7,700(税込/整理番号付/ドリンク代別途)



一般発売中 ※1月20日(土)岡山〜3月20日(水祝)名古屋公演分


イープラス:https://eplus.jp/zazenboys/
ぴあ:https://w.pia.jp/t/zazenboys/
ローチケ:https://l-tike.com/zazenboys/
TCKET FROG(東京公演のみ):https://ticket-frog.com/e/zbtms2024

 

 
1月20日(土)岡山YEBISU YA PRO ※YEBISU YA PRO 9th Anniversary公演
開場17:30/開演18:00
e+ / チケットぴあ P:255-724 / ローソン L:63079
(問)YEBISU YA PRO 086-222-1015

2月3日(土)熊本B.9 V1
開場17:00/開演18:00
(問)BEA 092-712-4221<平日12:00〜16:00>

2月4日(日)福岡DRUM LOGOS
開場17:00/開演18:00
(問)BEA 092-712-4221<平日12:00〜16:00>

2月28日(水)東京TOKYO DOME CITY HALL ※全席指定
開場18:00/開演19:00
(問)ホットスタッフ・プロモーション 050-5211-6077<平日12:00〜18:00>

3月10日(日)大阪なんばHatch
開場17:00/開演18:00
(問)YUMEBANCHI(大阪) 06-6341-3525<平日12:00~17:00>

3月20日(水祝)名古屋ダイアモンドホール
開場17:00/開演18:00
(問)クロスロードミュージック 052-732-1822<平日:11:00〜17:00>

4月5日(金)新潟CLUB RIVERST
開場18:30/開演19:00
(問)FOB新潟 025-229-5000 <平日:11:00〜16:00>

4月6日(土)郡山HIPSHOT JAPAN
開場17:30/開演18:00
(問)GIP https://www.gip-web.co.jp/t/info

4月12日(金)水戸ライトハウス
開場18:30/開演19:00
(問)ADN STATE 050-3532-5600 <平日12:00-17:00>

4月14日(日)盛岡CLUB CHANGE WAVE
開場17:30/開演18:00
(問)GIP https://www.gip-web.co.jp/t/info

4月20日(土)那覇桜坂セントラル
開場17:30/開演18:00
(問)PM AGENCY 098-898-1331 <平日11:00〜15:00>
 

5月9日(木)京都磔磔
開場18:00/開演18:30
(問)YUMEBANCHI(大阪) 06-6341-3525<平日12:00~17:00>

5月10日(金)福井CHOP
開場18:30/開演19:00
(問)FOB金沢 076-232-2424 <平日:11:00〜16:00>

5月18日(土)鹿児島CAPARVO HALL
開場17:00/開演18:00
(問)BEA 092-712-4221<平日12:00〜16:00>

6月8日(土)札幌PENNY LANE24
開場17:00/開演18:00
(問)WESS info@wess.co.jp


Jim O'Rourke(ジム・オルーク)によるBurt Bacharach(バート・バカラック)のカヴァーアルバム『All Kinds of People ~love Burt Bacharach』(2010)がサブスクリプションで復活する。

 

このアルバムは本日(1月24日)にデジタルで発売、続いて、3月9日には数量限定で見開きダブル・ジャケットのLPとCASSETTE TAPEで発売される。リリース情報の詳細を下記から確認してみよう。

 

Jim O' Rouke(ジム・オルーク)は、シカゴのエクスペリメンタル・フォークの大御所として名高い。ギタリストとしては、ミュージック・セリエルに近い無調のスケールの演奏をすることで知られている。ジム・オルークは、Sonic Youthにも一時的に参加したほか、デビッド・グラブスとジョン・マッケンタイアが中心となって結成した”Gastr Del Sol”に1994年に加入した。

 

ジョン・マッケンタイア擁するTortoiseの『TNT』と並び、”シカゴ音響派”の名作として知られる『Upgrade & Afterlife』に参加している。以降、オルークは、ソロアーティストやプロデューサーとして活動するようになった。アメリカでは、Wilco,Superchunkの作品のプロデュースを手掛けたほか、イギリスでは、Beth Orhon(ベス・オートン)の作品をプロデュースした。

 

オルークは、親日家の一面を持つことでよく知られている。日本のミュージック・シーンとの関わりが非常に深く、Melt Banana,チャット・モンチー、大友良英、カヒミ・カリイの作品のプロデュースを手掛けている。さらに、従来から日本映画に対するリスペクトを表明しており、それは若松孝二監督の映画『実録・連合赤軍』へのサウンドトラック提供を見てもよく分かる。



本日、デジタル・ストリーミングで解禁されるカヴァー・アルバム『All Kinds of People ~love Burt Bacharach』には、ジム・オルークの他にも日米の豪華なアーティストが参加している。

 

細野晴臣、小坂忠、Thurston Moore(サーストン・ムーア)、Donna Taylor(ドナ・テイラー)、カヒミ・カリィ、坂田明、中原昌也、やくしまるえつこなど、総勢11人のヴォーカリストをフィーチャー、個性的なバカラック・ナンバーを構成する。「ユリイカ」と共にJim O'Rourkeの代表的な作品となっている。




・Jim O'Rourke / All Kinds of People ~love Burt Bacharach~ [ Digital ]




DDCB-13010 | 2024.01.24 Release
Released by B.J.L. X AWDR/LR2

 

配信リンク:

https://ssm.lnk.to/AkoP_lBB

 

・Jim O'Rourke / All Kinds of People ~love Burt Bacharach~ [LP]




[ LP ] DDJB-91304 | 2024.03.09 Release
Released by B.J.L. X AWDR/LR2 | 4,000 Yen+Tax

 



・Jim O'Rourke / All Kinds of People ~love Burt Bacharach~ [CASSETTE TAPE]




[ CASSETTE TAPE ] DDTB-13003 | 2024.03.09 Release
Released by B.J.L. X AWDR/LR2 | 2,273 Yen+Tax

 


Tracklist:


A1. Close To You / 細野晴臣
A2. Always Something There To Remind Me / Thurston Moore(サーストン・ムーア)
A3. Anonymous Phone Call / やくしまるえつこ
A4. After The Fox / 坂田明、中原昌也
A5. You'll Never Get To Heaven / 青山陽一

B1. Do You Know The Way To San Jose / カヒミ・カリィ
B2. Don't Make Me Over / 小坂忠
B3. Raindrops Keep Falling On My Head / 小池光子
B4. I Say A Little Prayer / Yoshimi
B5. Trains And Boats And Planes / Jim O'Rourke(ジム・オルーク)
B6. Walk On By / Donna Taylor(ドナ・テイラー)




Burt Bacharach(バート・バカラック):

 

アメリカの作曲家、作詞家、レコード・プロデューサー、ピアニスト、 20世紀のポピュラー音楽において最も重要で影響力のある人物の一人と広くみなされている。


1950年代から、彼は何百ものポップソングを作曲し、その多くは作詞家であるハル・デイヴィッドとのコラボレーションであった。バカラックの音楽は、ジャズでの経歴に影響された珍しいコード進行や拍子の変化、小編成オーケストラのための珍しい楽器の選択が特徴である。彼はレコーディング作品の多くを編曲、指揮、プロデュースしている。


1961年から1972年まで、バート・バカラックとハル・デヴィッドのヒット曲のほとんどは、ディオンヌ・ワーウィックのために特別に書かれ、ディオンヌ・ワーウィックが演奏したものであったが、それ以前(1957年から1963年まで)には、マーティ・ロビンス、ペリー・コモ、ジーン・マクダニエルズ、ジェリー・バトラーらと仕事をしていた。これらのコラボレーションの最初の成功の後、バカラックは、ジーン・ピットニー、シラ・ブラック、ダスティ・スプリングフィールド、トム・ジョーンズ、B.J.トーマスなどの歌手のためにヒット曲を書いた。

 

バカラックは全米で73曲、全英で52曲のトップ40ヒットを書いた。 ビルボード・ホット100の上位にランクインした曲には、

 

・「This Guy's in Love with You」(ハーブ・アルパート、1968年)

・「Raindrops Keep Fallin' on My Head」(トーマス、1969年)

・「(They Long to Be) Close to You」(カーペンターズ、1970年)

・「Arthur's Theme (Best That You Can Do)」(クリストファー・クロス、1981年)

・「That's What Friends Are For」(ワーウィック、1986年)

・「On My Own」(キャロル・ベイヤー・セイガー、1986年)

 

などがあり、その功績が讃えられ、グラミー賞6回、アカデミー賞3回、エミー賞1回受賞している。


 

バカラックは、作家のWilliam Farina(ウィリアム・ファリーナ)によって「その由緒ある名前は、同時代の他の著名な音楽アーティストのほとんど全てと結びつけることができる作曲家である」と評されている。「後年、彼の曲は、大作映画のサウンドトラックに新たに採用され、その頃には、オマージュ、コンピレーション、リバイバルが至る所で見られるようになった」

 

彼はまたイージー・リスニングの重要人物でもある。チェンバー・ポップや渋谷系といった後の音楽運動に影響を与えた。 2015年、ローリング・ストーン誌は、バート・バカラックとハル・デヴィッドを「史上最も偉大なソングライター100人」の32位にランクインさせた。ーWikipedia


Pixiesのソールドアウト・ツアーを記念して、『Pixies at the BBC, 1988-91』が3月8日に4ADからリリースされる。  初のレコードプレスで、2枚組CDとHDデジタル・オーディオでも発売される。


1988年から1991年、4ADの在籍時代に、ピクシーズはBBCのために6つのセッションを録音した。ブラック・フランシス、キム・ディール、ジョーイ・サンティアゴ、デイヴィッド・ロヴァリングがフロント・ランナーを駆け抜けた瞬間をタイムスタンプ化したこれらのセッションは、バンドのライブ・パフォーマンスのリアルなエネルギーをキャッチし、即座に注目に値すると感じた。


この時期に録音された24曲(「Allison」と「Wave of Mutilation」の2曲を含む)の中には、ミニ・アルバム『Come on Pilgrim』や4ADの4枚のスタジオ・アルバムのうち3枚からのお気に入りが含まれている。また、ビートルズの「Wild Honey Pie」、イレイザーヘッドの「(In Heaven) Lady in the Radiator Song」、ビーチ・ボーイズの「Hang On To Your Ego」の3曲のカヴァーもレコーディングされた。


1998年にCDでリリースされたこのリブート盤は、6つのセッションの全トラックが収録され、トラックリストは年代順に並べられている。


スリーブも一新され、クリス・ビッグによる黒と金の素晴らしいデザインが施されている。サイモン・ラーバルスティエによる未公開のピクシーズ・アーカイヴ・イメージを使用し、クリスはバンドの故ヴィジュアル・ディレクター、ヴォーン・オリヴァーに愛情を込めたオマージュを捧げている。



こちらの記事もあわせてお読み下さい:


THE TOP 10 SONGS : PIXIES  ピクシーズのベスト曲 トップ10




Pixies at the BBC, 1988-91』



Label: 4AD
Release: 2024/03/08


John Peel Session 3rd May 1988 


1. Levitate Me
2. Hey
3. In Heaven (Lady In The Radiator Song)
4. Wild Honey Pie
5. Caribou 

John Peel Session 9th October 1988 

6. Dead
7. Tame 
8. There Goes My Gun 
9. Manta Ray 

John Peel Session 16th April 1989 

10. Down To The Well
11. Into The White
12. Wave Of Mutilation

John Peel Session 11th June 1990 

13. Allison
14. Velouria 
15. Hang On To Your Ego 
16. Is She Weird

Mark Goodier Session 18th August 1990 

17. Monkey Gone To Heaven
18. Ana 
19. Allison 
20. Wave Of Mutilation

John Peel Session 23rd June 1991 

21. Palace Of The Brine
22. Letter To Memphis
23. Motorway To Roswell 
24. Subbacultcha


Pre-order:



Squarepusherが新作アルバム『Dostrotime』の制作を発表した。3月1日にWarpからリリースされる。


アルバムのリード・シングル「Wendorlan」はBMPを極限まで引き上げたドリルンベースにブレイクビーツを対比的に配置している。幻のデビューアルバム『Feed Me Weird Things』の時代の作風を思わせるものがある。


同時公開されたミュージックビデオは、まるで原子核の視点がセルンのハドロン衝突型加速器の中を旅しているように見えるかもしれない。しかし、実際はトム・ジェンキンソン自身がオシロスコープを使って作ったビデオである。フラッシュが苦手な方はご視聴をお控え下さい。


このミュージックビデオについて、ジェンキンソンはこう語っている。「トラック・オーディオとコントロール・データのコンポーネントからXY信号を生成するカスタム処理を使い、CRTオシロスコープで1テイクで撮影した。土壇場でスコープを貸してくれたデビッドに感謝したい」


「私にとって、2020年のパンデミックのロックダウンは、その恐怖の直感的なものだけでなく、その斬新で不気味で崇高な静寂のために、注目すべき時間として常に際立っているんだ。何もしないこと、つまり、音楽のレコーディングをはじめとする重要なことを邪魔しようとする絶え間ない雑念から、私(そして間違いなく他の幸運な一匹狼たちも含めて)を解放してくれたんだ」



「Wendorlan」

 



Squarepusher  『Dostrotime』


Label: Warp

Release: 2024/03/01

 


Sunny Day Real Estate(サニー・デイ・リアル・エステート)は、デビュー・アルバム『Diary』の30周年記念ツアーを今年開催すると発表した。日程は3月から10月までで、名作アルバムをフルで披露する。


バンドはまた、10年ぶりの新曲 「Novum Vetus」のリリースを発表、さらに『Diary』のスタジオ・ライブ・バージョン『Diary - Live At London Bridge Studio』をリリースした。


プレスリリースによると、7分を超えるこの曲は、1998年の『How It Feels To Be Something On』のレコーディング・セッション中に構想されたもので、オリジナル・メンバーのジェレミー・エニグック、ダン・ホーナー、ウィリアム・ゴールドスミスによって、シアトルのロンドン・ブリッジ・スタジオで、グレッグ・スラン、クリス・ジョーダンとともにレコーディングされた。


アニバーサリー・アルバムは5月3日に発売される。「Novum Vetus」は今週金曜日(1/26)に発売される。








 


ロサンゼルスを拠点に活動するインディーロック・トリオ、Cheekface(チークフェイス)が4作目のアルバム『It's Sorted』をサプライズ・リリースし、ニューシングル「Life in a Bag」のユニークなビデオも公開した。バンドがミュージックビデオを公開するのはこれが初めてである。

 

デヴィッド・コムズとベン・エプスタインが監督したこのミュージックビデオは、サイレント・ディスコで躍動するバンドをフィーチャーしている。「Life in a Bag」のビデオも視聴できる。


チークフェイスは、ヴォーカリスト/ギタリストのグレッグ・カッツ、ベーシストのアマンダ・タネン(元stellastarr*)、ドラマーのマーク・"エコー"・エドワーズで構成されている。


カッツはプレスリリースで『It's Sorted』についてこう語っている。 「僕たちはシングル・バンドだと非難されてきた。しかし、僕たちは『It's Sorted』をアルバムのためのアルバムとして制作し、あるテーマで統一しようとしたんだ」


Are we just quirky creative people forced to live on the hamster wheel of capitalism, pretending to be respectable worker bees?

 

ーー自分たちは、資本主義のハムスター・ホイールの上で、立派な働き蜂のふりをしながら生きることを強いられる、風変わりな創造的人間に過ぎないのか? 

 

Or are we just an uncool, rebellious eccentric who barely manages to conceal the fact in a vain attempt to fit into a crumbling empire? 

 

ーーそれとも、崩壊しつつある帝国に溶け込もうとする虚しい試みの中で、かろうじてその事実を隠しおおせようとする、かっこ悪い反逆を起こす奇人に過ぎないのか?


チークフェイスは、まさしく世間的な評価や一般的な価値観から逃れることが出来た数少ないロックバンドの1つである。それは、彼らが作品の出来不出来にかかわらず、音楽を純粋に楽しむことに最大の価値を求めているからである。だから、このアルバムは、ファンがそれぞれ1から10まで好きな評価を与えることが出来る。

 

「Life in a Bag」

 


バンドの最新アルバムは、2022年の『Too Much to Ask』。このアルバムには 「Pledge Drive」と「We Need a Bigger Dumpster」が収録されている。

 

チークフェイスの4作目のアルバム『It’s Sorted』は昨日より発売中。バンドの公式オンラインショップはこちら。 ヴァイナル盤ほか、バンドの特製グッズをシッピングで購入する事が出来る。


Cheekface  『It’s Sorted』

 


Tracklist:

 
1. The Fringe
2. Popular 2
3. I Am Continuing to Do My Thing
4. Grad School
5. Life in a Bag
6. Trophy Hunting at the Zoo
7. There Were Changes in the Hardcore Scene
8. Largest Muscle
9. Don't Stop Believing
10. Plastic

 

 

 

 

Cheekface Tour Dates:


23 March - Bristol @ Ritual Union Festival
24 March - Brighton @ CHALK
26 March - London @ Village Underground
27 March - Birmingham @ Hare & Hounds
28 March - Leeds @ Brudenell Social Club
29 March - Manchester @ Manchester Punk Festival
31 March - Glasgow @ Stereo
April 17 - Sacramento, CA @ Harlow’s Starlet Room
April 20 - Vancouver, BC @ Biltmore Cabaret
April 21 - Seattle, WA @ Madame Lou’s
April 22 - Portland, OR @ Mississippi Studios
April 24 - Boise, ID @ Shrine Basement
April 26 - Denver, CO @ Marquis
April 28 - Lawrence, KS @ The Bottleneck
April 29 - St. Louis, MO @ Off Broadway
April 30 - Madison, WI @ High Noon Saloon
May 2 - Minneapolis, MN @ 7th St Entry
May 3 - Chicago, IL @ Bottom Lounge
May 4 - Cleveland, OH @ Mahall’s
May 5 - Detroit, MI @ El Club
May 7 - Toronto, ON @ Horseshoe Tavern
May 9 - Boston, MA @ Brighton Music Hall
May 10 - Brookly, NY @ Music Hall of Williamsburg
May 11 - Philadelphia, PA @ First Unitarian Church
May 15 - Washington, DC @ The Atlantis
May 16 - Richmond, VA @ Richmond Music Hall
May 17 - Durham, NC @ Motorco Music Hall
May 18 - Atlanta, GA @ The Masquerade Purgatory
May 19 - Orlando, FL @ The Social
May 21 - Houston, TX @ White Oak Music Hall Upstairs
May 22 - Austin, TX @ Parish
May 23 - Dallas, TX @ Club Dada
May 25 - Phoenix, AZ @ The Rebel Lounge
May 26 - San Diego, CA @ Voodoo Room at House of Blues
May 29 - Los Angeles, CA @ Teragram Ballroom


今週初めにソーシャル・メディアで確認されたように、グリーン・デイはニューヨークの地下鉄で『Saviors』のトラックをパフォーマンスした。


パンク・バンドは、「ザ・トゥナイト・ショー」の司会者、ジミー・ファロンと50丁目駅で合流し、1994年のヒット曲 「Basket Case」とバッド・カンパニーの 「Feel Like Makin' Love 」のカバーを披露した。セッションに参加したファロンさんのコーラス、タンバリンの腕前にも注目しよう。


今回のアメリカの深夜テレビ番組でオンエアされたのは上記の2曲だけだったということだが、『トゥナイト・ショー』はボーナス・ビデオとして、彼らの最新アルバム『Saviors』に収録されている「Dilemma 」「Look Ma, No Brains!」、「American Idiot 」のパフォーマンスを公開した。


グリーン・デイの14枚目の新作アルバム『Saviors』はRepriseから先週末に発売されたばかりだ。2020年の『Father of All Moterfuckers』以来となるアルバム。「Dilemma」「The American Dream Is Killing Me」「Look Ma, No Brains」「One Eyed Basterd」を収録している。


グリーンデイは昨年、メガヒット作『Dookie』の30周年を記念するデラックス・エディションをリリースしている。






 

ドイツの作曲家/プロデューサー、Nils Frahm(ニルス・フラーム)が、2022年の3時間に及ぶアルバム「Music For Animals」以来となるソロ・ピアノ曲集の詳細を発表した。(Reviewを読む)


「Day」は3月1日にLEITER-VERLAGからリリースされ、限定盤とすべてのデジタル・プラットフォームで発売される。


2022年夏、ベルリンの有名な複合施設Funkhausにある彼のスタジオを離れ、完全な孤独の中で録音されたこのアルバムから先行シングル「Butter Notes」がリリースされた。


「Day」は、過去10年間、フラームが最初にその名を知らしめたピアノ曲から徐々に離れていき、それでもなお、より楽器的に複雑で複雑なアレンジを施した独特のアプローチに移行していくのを見てきた人たちにとっては驚きかもしれない。

 

さらに2021年、パンデミックの初期にアーカイヴの整理に費やした彼は、80分、23曲からなる「Old Friends New Friends」をリリースした。「Music For Animals」の延長線上にあるアンビエント的な性質から判断すると、この作戦は成功したと言えるが、フラームは初心に帰らずにはいられない性格の持ち主である。「The Bells」、「Felt」、「Screws」といった高く評価された以前のアルバムを楽しんだ人々は、「Day」の慣れ親しんだ個人的なスタイルに再び満足するはずだ。


「Day」には6曲が収録され、フラームが2024年にリリースを予定している2枚のアルバムの第1弾となる。そのうち3曲が6分を超える。しかし、その性質上、フラームはこのリリースについて、歌ったり踊ったりはしない。

 

その代わり、彼は現在進行中のワールド・ツアーを再開する。すでにベルリンのファンクハウスでの15公演が完売し、アテネのアクロポリスでの公演も含まれている。2024年7月にロンドンのバービカンで開催される数回のソールドアウト公演を含め、世界各地での公演が続く予定だ。

 

「Butter Notes」

 

 


アルバム発売後の特集レビューはこちらからご一読ください。



Nils Frahm 『Day』





Label: Leiter-Verlag

Release: 2024/03/01


Tracklist:

 

1.You Name It

2.Tuesdays

3.Butter Notes

4.Hands On

5.Changes

6.Towards Zero


Pre-order:


https://nilsfrahm.bandcamp.com/album/day


 

ーグルジエフの人生と考え

 

 

グルジェフは、コーカサス地方のアルメニア出身の神秘思想家で、20世紀最大のオカルティストとして知られている。神秘思想家としては、一般的にヘルメス主義の影響を受けているといわれ、イスラム神秘主義の「スーフィズム」の影響下にあるという説もある。彼はオカルティストとして絶大な影響力を誇った。

 

グルジェフは、ギリシャ系の父とあるルーマニア系の母のもとに生まれた。青年時代のグルジエフは、医師と牧師になるという夢を抱えていたが、その医術は、現代的に解釈すると、神秘主義的な治癒の方法に焦点が置かれていた。以後、彼は古文献を渉猟し、神秘主義者としての道のりを歩み始めた。彼の行動の手始めとなったのが、コーカサス地方をはじめとする放浪の旅である。


グルジエフは、アナトリア、エジプト、バビロニア、トルキスタン、チベット、コビ、北シベリア、東欧から小アジア、アラビアをくまなく歩いた。彼の探究心は、最終的に古代文明に行き着き、複数の秘技的な宗教集団と接触する。そのなかには、イスラム、キリストの神秘主義派、チベット密教、シベリアのシャーマニズムなど、多岐にわたるレリジョンが含まれている。

 

グルジェフは、複数の地域で秘技的な文化に接するが、最も強い触発を受けたのが、西アジアの北ヒマラヤにある「オルマン僧院」と言われている。ここにグルジェフは数ヶ月滞在し、イスラム神秘主義のひとつとされる「スーフィズム」を通じて、「大いなる知恵」を掴んだとされる。

 

しかし、グルジェフは意外にも、最初に実業家として名を揚げた。 20世紀初頭、チベットから戻った彼は、中央アジアのタシュケントで事業をはじめ、それを拡大させ、いつの間にか大金を手にしていた。彼が第一次世界大戦直前の社会的に混迷を極めていたロシアに姿を現した時、すでに彼は100万ルーブルもの資金を手にしていた。


この時代、彼は、実業家としての並々ならぬ才覚を発揮し、鉄道、道路のインフラ、レストラン、マーケット、映画館の経営に携わり、驚くべき大金をその手中に収めた。1ルーブルを現在の円のレートで換算すると、グルジエフは1,5億円以上もの収益を上げたということになる。 金銭価値は市場の相対的な評価に過ぎないので、現在ではさらに多額の価値があると推測される。

 

以降、ヨーロッパの貴族社会の人々や名士と交流を交わし、名声を獲得していったといわれている。そのなかで、新約聖書のなかで使徒が語ったように、ナザレのイエスがなした奇跡的な治療を施し、これがのちに、20世紀最大の神秘思想家として知られる要因になったと推測される。

 

グルジェフは、神秘主義の教団の首領として弟子たちをワークというかたちで先導するかたわら、アラビア、イスラム、スラブの民族音楽に触発された音楽家/舞踏家として芸術的に優れた才覚を発揮し、数年間で複数のスコアを遺している。なぜ、体系的な音楽教育を受けていないグルジェフが、音楽や舞踏という分野に活路を見出したのかは不明だが、これは秘技的な教団を率いる以前の放浪の時代に、音楽的な源泉が求められるのは明白だろう。彼は、それらをアカデミーで学ぶのではなく、生きた体験として学んだことは想像に難くない。グルジェフの音楽には、ヨーロッパ、南米、南アジアとも異なるエキゾチックな響きがある。その楽曲の演奏時には、Santur、Tmbuk、Duduk、Pkuなど、アラビア、イスラム圏の固有の楽器が複数使用される。

 

そして、グルジェフがアナトリア、エジプト、バビロニア、トルキスタン、チベット、コビ、北シベリア、東欧から小アジア、アラビアといった若い時代に旅をした地域のエキゾチズムが彼の音楽の根幹を成すことは、実際の音源を聴けば痛感できる。

 

彼の神秘主義の教えの中には、現代社会に通じる真実性が含まれていることがわかる。グルジェフは、「人類全体が目覚めておらず、眠ったままの隷属的存在」であるとし、そこから開放されることの重要性を訴えた。それを単なる神秘思想やオカルトと結びつけることは簡単だが、現代的な視点から見ると、スピリチュアリティに基づく思想だけを最重要視すべきではないように思える。

 

グルジェフは生前、弟子に対して、人類がなぜ戦争を幾度も繰り返すのかについて、そして戦争がなくならない理由について次のようなことを語っている。彼が話すのは1世紀前のことだが、しかし、2020年代の東欧やイスラエルで起きていることに深い関連性を見出すことができる。


ーー戦争を嫌う人々は、ほとんど世界が創造された当初からそうしようと努めてきたと思う。それでも、現在やっているような大きい規模の戦争は一度もなかった。戦争は減るどころか、時代とともに増えていて、しかもそれは普通の手段では止めることが出来ない。世界平和や平和会議に関する議論も、単に怠惰の結果であり、どころか欺瞞に過ぎない。 人間は、自分自身について考えるのも嫌でたまらず、いかにして他人に望むことをやらせることばかり考えている。

 

ーーもし、戦争をやめさせたいと考える人々の十分な数が集まれば、彼らはまず彼らに反対する人々に戦争を仕掛けることから始めるだろう。そして、彼らはそういうふうに戦うだろう。人間は今あるようにしかなれず、別様であることは出来ない。

 

ーー戦争には我々の知らない多くの原因が潜んでいる。 ある原因はひとりの人間の内側にあり、また別のものはその外側にある。そして戦争を止めるためには人間の内側から手をつけなければいけない。環境の奴隷であるかぎり、巨大な宇宙のちからという外的な影響をいかにして免れることができるのか? 人間はそもそも、まわりの外的な環境に操られているだけだ。もし、それらの物事から自由になれれば、そのときこそ人間は本来の意味で自由な状態になることができる。

 

ーー自由、開放、これがまず人間の生きる目的でなければならない。自由になること、隷属の状態から開放されること、これこそ人々が獲得すべき目標となるだろう。内面的にも外面的にも、奴隷状態にとどまるかぎり、その人は何者にもなることもできず、また、何もすることができない。内面的に奴隷であるかぎり、外面的にも奴隷状態から抜け出すことはできない。だから自由になるためには、人間の内的自由を獲得しないといけない。

 

ーー人間の内的な奴隷状態の第一の要因となるのは、その人自身の無知、なかんずく自分自身に対する無知である。自分自身を知らずして、みずからの内側にある機械的な動きとその機能を理解せずには、人間は本当の意味で自由になることも、自分自身を制御することもできない。それは単なる奴隷に過ぎないか、あるいは、外的な環境の翻弄される遊び道具にとどまるだろう。ーー  グルジェフ

 


 ーーグルジエフの音楽観 客観的な音楽と主観的な音楽の定義 東洋の発見

 


客観的な芸術と考えられるものに対する一般的な反応について語るのは難しい。それは、私たち誰もが経験したことのある普通の連想プロセスを超越しているように見える。私たちが知っている多くの音楽では、少なくともある文化圏の一般的な経験の範囲内では、特定の音の進行や質、それらの組み合わせや時間的な間隔が、他の人と共通する特定の感覚や感情を聴き手に呼び起こす。


この現象は、一見不可解であると同時に否定できない。この現象は、聴き手の中で活性化される共鳴から生じるに違いなく、さらに、音と記憶との関連性が曖昧だったり不明だったりしても、過去の経験との連想を引き起こすことが可能なのだ。全般的な芸術において、この振動(ヴァイヴ)の力は、その過程と結果を部分的にしか知らないまま使われている。アーティストの主観的な意識によって制限され、アーティストが発信するものは、同じように「主観的な反応」しか生み出せない。


従って、主観による表現の結果は偶然のものに過ぎず、「受け手によって正反対の効果をもたらすこともありうる」というのがグルジェフの主張である。「無意識的な創造的芸術は存在しえない」とまで彼は主張している。


逆に、客観的な音楽は、振動の法則を決定する数学、ピタゴラス派の標榜する黄金比による正確無比で完全な知に基づいており、それゆえ聴く人に特定の予測可能な結果をもたらす。グルジェフは、無宗教の人が修道院にやって来た時の例を挙げている。そこで歌われ演奏される音楽を聴いて、その人は宗教性をもたないにもかかわらず、なぜか「敬虔な祈り」を音楽の流れのなかに感じとることがある。この例では、人間を高い内的状態に導く能力が、「客観的な芸術の特性のひとつ」として定義付けられる。その効果は、人によって程度が異なるだけである。


音楽の持つ客観的な力学について、グルジェフは『ベルゼバブ物語』の中でもう一つの例を挙げている。彼は、特別なシステムに従って調律された普通のグランドピアノで、ある一連の音を繰り返し叩く驚くべき老練なダービッシュについて述べている。


ーーこれらの音はすぐに、聴衆の一人の足に、師匠が予言したとおりの場所にできものを生じさせる。その直後、別の音符の連打でその腫れ物はすぐさま消える。エリコの城壁が破壊されたという伝説は、単に奇跡的な出来事の想像上の物語ではない可能性を考えることはできないだろうか? もしかしたら、ヨシュアは音の振動の特異な性質と効力を知悉していたのかもしれないーー


このように、グルジェフの考えでは、心地よい楽音を楽しむだけでは、いかに深刻で高尚なものであろうと、科学として、芸術として、高次の知識として、そして、人間の成長と進化のために必要な糧としての音楽の究極的な理想には、少しも近づいていないことは明らかなのである。


グルジェフが、真理の体現という本来の神聖な目的を果たす芸術を発見したのは、主にアジアだった。東洋の古代芸術を彼は台本のようにすらすら読むことができた。それは好き嫌いのためではなく、「より深く理解するため」と彼は言った。


しかし、平均的なヨーロッパ人にとっては、ある程度の音楽的教養があっても、東洋音楽はエキゾチックであるが、最後には単調で理解しがたいものに思える。ベートーヴェンの交響曲やシューベルトのリート、あるいは単純な民謡の「内容」を受け取ることができるように思えるのと同じように、私たちはこの音楽のほとんどが「何について」書かれているのか理解できないのだ。


グルジェフは、オクターブ構造は普遍的であるが、東洋の音楽では、西洋人にとって奇妙な方法で分割されている可能性があることを想起させる。基音とオクターブとの間には、4つという少ない分割もあれば、48という多い分割もある。西洋的な考えでは、私たちの知覚は7音のダイアトニックスケールや、ピアノの鍵盤のように等距離にある12音の半音階構造によって制限される。


東洋の音楽は、微分音的な配置によって、私たちの「制限された音階」では到達しえない、かけ離れた感情を呼び起こすことができる、と言われている。にもかかわらず、私たちのほとんどは、それらが調律されていないような音楽というかたちでしか聴くことが出来ない。私達は、アジア人であっても、常日頃から西欧的な音楽の中で生き、それが一般的な概念であると捉えている。


他方、特別な感受性と開放性を持つヨーロッパ人が、東洋音楽のなかに熟考すべき深遠な何かが存在することを肯定しえる何かを発見する可能性が高いことは、紛れもない事実だろう。チベットの僧侶の深い三和音の詠唱、スーフィーのジークルの小声のクレッシェンド、日本の能楽の伴奏の滑舌のよい声音など、これらはすべて、感覚的な印象のみならず、未知なる感情を呼び起こす音楽形式に他ならない。当初の反応はしばらく新奇な感覚として後に残るかもしれない。それでも未だ疑問点は残る。ドミナントからトニックへの進行を追うように、知性により音楽の「構文」を追うことができなければ、その音楽は主観的に完全に受け入れられたのだろうか?


音楽を聴く行為というのは、聴覚により何かを把捉しているように見えて「他言語の構文」を追っているに過ぎない。そして、その語法が一般的なものと乖離するほど、その言語はより難解になり、一般的には受け入れ難いものとなる。

 

してみれば、各地域の文化の壁が、各々の音楽的な語法や言語的な特性を有するがゆえ、純粋な芸術という形で高次の知識を伝えることを阻害していると定義付けられる。しかし、もしかしたら、この真実を追求することが可能な道筋がどこかにみつかるかもしれない。グルジェフの客観的芸術の定義に近づけるような音楽的な事例を、西洋の遺産や伝統から探すのはどうだろう。アンブロジオ聖歌やグレゴリオ聖歌の純粋さと正確さについて思いを馳せるのはどうだろう?


あるいは、ノートルダム派の謎めいたオルガヌムや、15世紀のフランドルの巨匠、ヤコブ・オブレヒトが作曲した、「3」という数の順列を表現した数秘的な声楽ミサに注目すべきかもしれない。J.S.バッハが静謐で瞑想的な殻の中で対位法の難解な謎を探求したライプツィヒの合唱前奏曲や平均律のフーガの芸術を考えてみることはできないだろうか。あるいは、モーツァルトの五重奏曲の、シルクのように滑らかで欺瞞に満ちた表面の下に、音、音程、リズムの組み合わせが、言葉では説明できないような感情を人間の心に呼び起こす秘密が隠されているのではないだろうか?


これらの全般的な疑問は、芸術に関するグルジェフの考えを肯定し、彼自身が作曲した音楽と関連づけようとするとき、特に大きな意味を持つようになる。もちろん、グルジェフの音楽の目的そのものや、それが創作された状況さえも、音楽の捉え方に大きな影響を与える可能性があるということがわかる。



ーーロシアの作曲家、トーマス・デ・ハルトマンとの関わり



グルジェフとロシアの作曲家トーマス・デ・ハルトマンとの関わりはよく知られている。若いデ・ハルトマンは、精神的な教えを求めて1916年にグルジェフのもとを訪れ、彼の弟子となった。グルジェフは訓練された作曲家ではなかったため、デ・ハルトマンもグルジェフの音楽的思考を表現する理想的な補助役となった。


彼はまず、グルジェフの教えの不可欠な部分である聖なる舞曲(ムーヴメント)のために、グルジェフの音楽を調和させ、発展させ、完全に実現することから始めた。数年後、デ・ハルトマンは、ムーヴメントとは独立したグルジェフの音楽作品に同様の方法で協力した。驚くべきことに、これらの後者の作品は非常に数が多く、ほとんどすべてが1925年から1927年にかけて、グルジェフが数年前に研究所を設立したフランスのフォンテーヌブローのプリューレで作曲された。1927年、この音楽活動は終わりを告げ、グルジェフが再び作曲することはなかった。


ド・ハルトマンの貢献の重要性は極めて大きい。実際、デ・ハルトマンの献身的な協力がなければ、グルジェフの音楽的アイデアは私たちが知っているように生まれなかったのではないか、と考える人もいるだろう。しかし、グルジェフの音楽を綿密に研究し、特にデ・ハルトマンがグルジェフと関わる前、関わっていた時、関わっていた後の、グルジェフ自身の膨大な音楽作品と比較すれば、グルジェフの音楽の真の源泉はグルジェフ自身にあったことは明らかである。


もちろん、デ・ハルトマンには洗練された音楽的精神があり、この共同作業ではそれを見事に発揮した。しかし、グルジェフの目的に対する彼の感覚は鋭く、聡い音楽的本能を十分に保ちながら、この仕事のために自らの創造性を昇華させることができた。彼がグルジェフから指示されたメロディーをいかにして上品かつ適切に調和させ、発展させたとしても、本質的な音楽的衝動と、その音楽が呼び起こす独特の感情の質は、一人の人間から生まれたものであることは明らかである。デ・ハルトマンが作曲した各曲の草稿は、グルジェフによって聴かれ、グルジェフがその意図を実現できたと満足するまで、しばしば大幅に修正されることもあった。


デ・ハルトマンは、グルジェフとの作曲過程についての驚くべき記述からも明らかなように、この共同作業における自分の役割について、控えめであるどころか、どちらかと言えば自嘲的であった。デ・ハルトマンはグルジェフとの共同作業について次のように回想している。


ーーゲオルギイ・イワノヴィッチのすべての音楽の一般的なキャッチとメモは、通常、プリーレハウスの大きなサロンまたはスタディハウスのいずれかで、夕方に起こりました。私は演奏し始め、音楽用紙を持って階下に急いで降りなければならなかった。すべての人々がすぐに来て、音楽のディクテーションはいつもみんなの前にありました。


ーー書き留めるのは簡単ではありませんでした。彼が熱狂的なペースでメロディーを演奏するのを聞いたので、私は紙に一度に曲がりくねった音楽の反転、時には2つの音符の繰り返しを走り書きしなければならなかった。しかし、どんなリズムで? アクセントの作り方は? メロディーの流れは、時々止めたり、バーラインで分割したりできませんでした。そして、メロディーが構築されたハーモニーは東洋のハーモニーであり、私は徐々にそれを認識しただけだったのです。


ーー多くの場合、私を苦しめるために、彼は私が表記を終える前にメロディーを繰り返し始め、これらの繰り返しは微妙な違いを持つ新しいバリエーションであり、私を絶望に駆り立てました。もちろん、このプロセスは単なるディクテーションの問題ではなく、本質的なキャラクター、メロディーの非常にノヤウまたはカーネルを「キャッチして把握」するための個人的な練習でした。


ーーメロディーが与えられた後、ゲオルギイ・イヴァノヴィッチはピアノの蓋をタップしてベース伴奏を構築するリズムを演奏しました。その後、私は与えられたものをすぐに演奏し、私が行くにつれて調和を即興で演奏しなければなりませんでした。



Gurdjieff


グルジェフは、ロシア領のアルメニアとトルコの国境にある、豊かな民族と宗教が混在する中心地で生まれ、幼少期を過ごした。少年時代から人間存在の意味について深い疑問を抱いていた。彼は、彼を取り巻く光景や音、特に音楽に対して非常に敏感であった。


深く慕い、『驚くべき人々との出会い』の中で彼が感動的な章を書いている父親は、「アショク」という職業に就いており、彼の民族の古代の伝説の数々を歌や詩で語る吟遊詩人のような存在だった。


これがグルジェフの最も初期の音楽的印象と影響であった。その後、若い学生時代にロシア正教会の聖歌隊で歌った。それ以上の音楽的訓練はほとんど受けていない。しかし、少年時代やその後の旅で吸収した多様な土着の音楽に対する彼の並外れた感受性は、彼自身の作曲に顕著に反映されている。


民謡や舞踊、さまざまな聖職者の宗教的聖歌、エジプトや中央アジア、遠くはチベットの寺院や修道院で耳にした神聖な合唱曲など、ありとあらゆる音楽がグルジェフのスコアのなかには通奏低音のように響き渡る。彼自身の楽器演奏能力については、ギターや、片手で弾き、もう片方の手で空気を送り込む小さなハルモニウムの形をした鍵盤の演奏など、ささやかなものだったようだ。


彼の音楽にはアラビア、イスラム、スラブの独特な音楽性が発見できる。そこには讃美歌の影響があると指摘する識者もいる。現代音楽のシーンでは、グルジェフのアーティスト/ミュージシャンとして再評価の機運が高まっているという話もある。それらのスコアの再構成に取り組むのが、The Gurdjieff Ensemble(グルジエフ・アンサンブル)、そして、ジャズレーベル、ECMである。


The Gurdjieff Ensemble


ドイツの国家観としては、グルジエフの作品をリリースすることは勇気が必要だが、従来から「エスニック・ジャズ」というジャンルを手掛けてきたレーベルは、アラビア、イスラム圏の音楽の伝統性をより良く知るための最適な機会を提供している。The Gurdjieff Ensembleの功績は、グルジェフの音楽の隠れた魅力を発見したことに加えて、単なるオカルティストや神秘主義者の遊戯という領域を超越し、真に芸術的な表現に引き上げようとする挑戦心に求められる。

 

以前は、アラビア、イスラム圏の作曲家は、日の目を見る機会が少なく、軽視されることもあったが、以下に紹介する、グルジエフのスコアの再録のリリースなどの機会を通して、スラブ、アナトリア、イスラム、中央アジアを中心とする文化圏の音楽にも注目が集まることを期待したい。


 


 The Gurdjieff Ensemble & Levon Eskenian『Music of Georges I. Gurdjieff』



 

グルジェフ(1866年頃~1949年)の音楽を民族的なインスピレーション源に立ち返らせる、魅力的で非常に魅力的なプロジェクト。


これまでグルジェフの作品は、西洋ではトーマス・デ・ハルトマンのピアノ・トランスクリプションによって研究されてきた。アルメニアの作曲家レヴォン・エスケニアンは、印刷された音符を越え、グルジェフが旅の間に出会った音楽の伝統に目を向け、その観点から作曲を再編成した。


エスケニアンは、アルメニア音楽、ギリシャ音楽、アラビア音楽、クルド音楽、アッシリア音楽、ペルシャ音楽、コーカサス音楽のルーツに注目している。アルメニアを代表する奏者たちの協力を得て、エスケニアンは2008年にグルジェフ民族楽器アンサンブルを結成し、彼らとともにこの驚くべきアルバムを完成させた。


レヴォン・エスケニアンの楽器編成で私が最も魅力を感じるのは、静寂の荒野でほんのわずかな音への介入を行う際、不必要な "作曲 "や "巧みさ "を排した、極めて綿密で明快な作業アプローチである。グルジェフの音楽の核心には深い静寂があり、それは聖書のコヘレトの書の章、あるいは遠い国の深い静寂が語る真実と関係している。- ティグラン・マンスリアン 

 




Anja Lechner / Vasslis Tsabropoulos 『Chants, Hymns and Dances』



ドイツのチェリスト、アンニャ・レヒナーとギリシャのピアニスト、ヴァシリス・ツァブロプロスによる魅力的な新プロジェクト「聖歌、賛美歌、舞曲」は、「世界の十字路からの音楽」という副題が付けられるかもしれない。グルジェフの作品のなかでは最も室内楽的な響きを持つ。


東洋と西洋、作曲と編曲と即興、現代音楽と伝統音楽の境界線を曖昧にするプロジェクトだ。レパートリーの中心は、古代ビザンチンの賛美歌をインスピレーション源とするツァブロプーロスの作曲と、アルメニア生まれの哲学者・作曲家であるジョルジュ・イヴァノヴィッチ・グルジェフ(1877-1949年頃)の音楽で、コーカサス、中東、中央アジアの聖俗両方のメロディーとリズムを使用している。 ーECM

 


 

 

 

The Gurdjieff Ensemble & Levon Eskenion『Komstas』



  



アルメニアン・グルジェフ民族楽器アンサンブルは、G.I.グルジェフ/トーマス・デ・ハルトマンのピアノ曲を「民族誌的に正統な」アレンジで演奏するために、レヴォン・エスケニアンによって設立された。


ECMからのデビューアルバム『ミュージック・オブ・G.I.グルジェフ』は広く賞賛され、2012年にエジソン賞のアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞した。今、エスケニアンと彼の音楽家たちは、コミタス・ヴァルダペト(1869-1935)の音楽に注目している。

 

作曲家、民族音楽学者、編曲家、歌手、司祭であったコミタスは、アルメニアにおける現代音楽の創始者であり、コレクターとしての活動の中で、アルメニアの聖俗音楽を独自に結びつけるつながりを探求した。民俗楽器の演奏とインスピレーションに満ちた編曲に焦点を当てたこのアンサンブルは、201年2月にルガーノで録音されたこのプログラムで、コミタスの作曲の深いルーツに光を当てる。ーECM

 



 The Gurdieff Ensemble & Levon Eskenion  『Zartir』

 

 



 

昨年にECMから発売された『Zartir』は、グルジエフの音楽的な遺産を発掘するためのアルバムである。

 

レヴォン・エスケニアンによる注目のアンサンブルのサード・アルバムは、これまでで最も冒険的な作品となった。G.I.グルジェフの音楽を民族楽器のために再生させただけでなく、アシュグ・ジヴァニ、バグダサール・トビール、伝説的なサヤト・ノヴァなど、アルメニアの吟遊詩人やトルバドゥールの伝統の中にグルジェフを位置づけている。これと並行して、神聖な舞踊のための作品に重点を置いた『大いなる祈り』は、グルジェフ・アンサンブルとアルメニア国立室内合唱団との魅惑的なコラボレーションで頂点に達し、複数の宗教の儀式音楽を取り入れている。


アレンジャーのエスケニアンは、「『大いなる祈り』は単なる "作曲 "以上のものだと思います。グルジェフの作品の中で、私が出会った最も深遠で変容的な作品のひとつです」と語る。


『ザルティール』は2021年にエレバンで録音され、2022年11月にミュンヘンでマンフレート・アイヒャーとレヴォン・エスケニアンによってミキシングされ完成した。ーECM





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©︎Ebru Yildiz

ムーア・マザーは、9枚目のスタジオ・アルバム『The Great Bailout』をANTI-から3月8日にリリースすると発表しました。 


 2022年の『Jazz Codes』に続くこのアルバムには、ロニー・ホリー、メアリー・ラティモア、ヴィジェイ・エアー、エンジェル・バット・ダウィッド、ニッティ・グリッティのシスタッツ、アーロン・ディロウェイらが参加している。


ロニー・ホリー、メアリー・ラティモア、ライア・ワズをフィーチャーした新曲「GUILTY」を聴き、アルバムのジャケット・アートワーク(シドニー・カインによる)とトラックリストをチェックしよう。


「リサーチは私の仕事の主要な部分であり、歴史(特にアフリカの歴史、哲学、時間)をリサーチすることは大きな関心事です」


カマエ・アイエワは、彼女の音楽とそのイギリスの植民地主義の影響に焦点を当てたことについて声明で述べています。


「ヨーロッパとアフリカは、時代を通してとても親密で残酷な関係にある。私は、植民地主義と解放の関係を、この場合はイギリスにおいて探求することに興味があります」


「強制移住とその影響は十分に議論されていません。世界で起きていることについて学ぶ機会があれば、自分自身について学ぶ機会もある。私たちは、組織的な暴力によるさまざまな行為を経験してきたのですから」



「Guilty」





Moor Mother 『The Great Bailout』



Label: ANTI

Release: 2024/03/08


Tracklist:


1. GUILTY [feat. Lonnie Holley, Mary Lattimore, and Raia Was]

2. ALL THE MONEY [feat. Alya Al Sultani]

3. GOD SAVE THE QUEEN [feat. Justmadnice]

4. COMPENSATED EMANCIPATION [feat. Kyle Kidd]

5. DEATH BY LONGITUDE

6. MY SOULS BEEN ANCHORED

7. LIVERPOOL WINS [feat. Kyle Kidd]

8. SOUTH SEA [feat. Sistaz of the Nitty Gritty]

9. SPEM IN ALIUM



Pre-order:


https://kr-m.co/moormother?ffm=FFM_1899eb1a6fc2a983c2bc7d7ddadb58d2



イギリスの植民地政策とガーナの映画文化、ガリウッドについてはこちらをお読み下さい。


スコットランド出身のジム・リード/ウィリアム・リードの兄弟デュオ、ジーザス・アンド・メアリー・チェインが今年、新作『Glasgow Eyes』をリリースする。メリー・チェインのアルバムとしては7年ぶりで、2007年の再結成以来2作目のフルレングスとなる。バンドは続いて「Chemical Animal」という新しいジャムを発表した。「Jamcod」に続くニューシングルだ。

 

「jamcod」がジーザス・アンド・メリー・チェインのベスト・ソングの精細感を蘇らせたのに対し、「Chemical Animal 」はバンドの一味違う側面を示している。不安と瞑想が同時に渦巻くドローンで、ドラッグ中心の歌詞は、JAMCの不変のテーマに戻っている。トラックにはギターが多用されているが、ギターというよりはシーケンサーが中心となり、アンダーワールドのようなドライブ感のあるEDMのダンスビートを刻印している。以下からチェックしてみよう。

 

2017年の『Damage and Joy』に続く『Glasgow Eyes』は、グラスゴーにあるMOGWAIの所有するキャッスル・オブ・ドゥーム・スタジオでレコーディングされ、ジム/ウィリアム・リード兄弟は、「スーサイド、クラフトワーク、そしてジャズに見られるような規律に縛られない姿勢への新鮮な評価からインスピレーションを得た」とプレスリリースを通じて説明している。

 

「しかし、メリー・チェインがジャズになると期待してはいけない」という。「人々はジーザス・アンド・メリー・チェインのレコードを期待すべきで、”Glassgow Eyes”がそうであることは確かなんだ」

 

「僕らのクリエイティブなアプローチは、1984年当時と驚くほど変わらない。たくさんの曲を持ってスタジオに入り、成り行きに任せる。ルールはなく、必要なことは何でもやる。そして、そこにはテレパシーがある。私たちは、互いの文章を完成させる奇妙な双子みたいなものなんだ」



「Chemical Animal 」



デトロイト出身のラッパー、ダニー・ブラウンが最新作『Quaranta』の収録曲「Y.B.P」のミュージックビデオを公開した。(Reviewを読む)


「YBP」は、ブルーザー・ウルフをコラボレーターとして迎えている。ブラウンの幼少期や家族の一人称のシーンが鮮やかに登場する。アルバムの中では、ファンク色が強いナンバーだ。


ミュージックビデオではダニー・ブラウンがハンドクラフトの人形のようになり、ユニークなラップを披露するという手の込んだ映像となっている。『Quaranta』は昨年、ワープレコードから11月に発売された。このアルバムは当サイトの昨年度のアルバムオプザイヤーとしてもご紹介しています。


 Green Day  『Saviors』

 

Label: Reprise 

Release: 2024/01/19

 

 

Review    


USパンクシーンの分水嶺

 

オレンジ・カウンティのポップパンク・ムーブメントの立役者であるグリーン・デイのフロントマン、ビリー・ジョーは、遡ること2020年、ソロアルバム『No Fun Mondays』を発表し、「Kinds in America」のような有名曲から「War Stories」のようなマニアックなカバーに至るまで、網羅的にパンクのアレンジを施し、みずからの音楽的な背景をファンに対して暗示していた。

 

実際、私自身は、このアルバムをかなり長い期間楽しんだ思い出があるが、ソロ活動の影響が『Saiviors』に何らかの働きかけをしていないといえば偽りになるだろう。「Saviors」は、他のジャンルの曲のカバーやオマージュというポップ・パンクの重要な一側面を表し、それが本作のオープニングを軽やかに飾る「American Dream is Killing Me」に色濃く反映されていることは、彼らのファンであればお気づきになられるはずだ。つい一ヶ月前、マンチェスター・ガーディアン誌の取材に応じたフロントマンのビリー・ジョーは、『Saviors』が、政治的な風刺を込めるというバンドのかつてのアプローチ、ひいてはパンクロックの原点に回帰したことについて、

 

ーーこの数年間、ドナルド・トランプ政権に対する不信感や嫌悪感が内面にあり、それがこのアルバムで半ば顕在化したーー

 

という趣旨のことを率直に話していた。それは、Black Flagのヘンリー・ロリンズのように、アジテーションを交えた風刺という形でもなく、NOFXのファット・マイクのように、斜に構えたようなブッシュJr.政権に対する左翼的な鋭い風刺となるわけでもない。グリーン・デイのビリー・ジョーの風刺やシニズムというのは、ストレートでユニークな感覚が込められている。それはおそらく、90年代の名盤『DOOKIE』の時代から普遍のものであったのではないだろうか。

 

このアルバムに何らかの意味が求められるとしたら、「パンクロックの全盛期の熱狂性をその手に取り戻す」ということにある。グリーン・デイもまた、好意的に捉えると、ポップパンクが完全には死んでいないこと、そしていまだに古びていないことを対外的に示そうしたと推測される。ポップ・パンクは、現在、Sum 41、NOFXのように、全盛期の水準以上のリリースが行えないのであれば、せめてもの思いで最後のリリースをおこない、これまで支えてきてくれたファンに対する恩返しという形でラストツアーを行うグループもいる。かと思えば、Blink 182のように、持病を抱えながら再結成し、全盛期に劣らぬ痛撃な作品をリリースするグループもいる。いわば、「USパンクシーンの分水嶺」ともいうべき時期に差し掛かっていることは明確であり、それはおそらく、グリーン・デイのメンバーも薄々ながら気がついていることだろう。

 

そして、グリーン・デイが旧来からポップ・パンクの親しみやすさとは別に示唆してきた米国社会に対する風刺というのは、現実的に看過できない出来事に対してシニカルな眼差しを注ぐということでもある。それらが不満を抱えるティーンネイジャーの心になんらかの形で響くであろうことは想像に難くない。

 

それは政治的なポジションとは関係なく、若者たちの不満を掬い、それらを親しみやすい痛快なパンクロックソングとして昇華してきたことは、Bad Religionをはじめとするパンクバンドと同様である。「American Dream is Killing Me」では「American Idot」の風刺的なバンドの姿に立ち返るかのように、ケルト民謡のイントロから激烈なパンク・アンセムへと曲風を変化させる。


しかし、グリーンデイは、全盛期の時代に立ち返りながらも、未知のチャレンジを欠かすことはない。The Monkeesの「Daydream Biliever」を思わせるメロディーを絡めながら、オーケストラ風のストリングスを導入し、ドラマティックな展開を呼び起こす。その後、アンセミックなパンクナンバーに戻るが、どうやら、曲の後半でもなんらかのオマージュが示されているらしい。

 

「Look Ma, No Brains!」では、スケーター・カルチャーの重要な側面である疾走感を刺激的なパンクチューンにより縁取っている。メタルのようなパワフルさ、重厚感はもちろん、オレンジ・カウンティのパンクバンドらしい陽気なイメージが合致を果たした痛快なパンクソングだ。愚かであることをいとわず、それをシンプルで聞きやすいパンクソングに昇華する技術にかけては、グリーンデイの右に出るものはいない。それに加えて、ピカレスクなイメージを付け加え、フロントマンは現在、折り目正しく、禁酒中であるにもかかわらず、パンクというアティティードから醸し出される音楽の力により、バッドボーイのイメージをあえて作り出そうとしている。これは、ほとんどビリー・ジョーによるシニカルなジョークでもあるといえるのだ。


 

その後も、バンドとしての引き出しの多さ、間口の多さを伺わせる曲が続く。「Boddy Sox」は、グリーン・デイのバラードソングというもうひとつの側面が立ちあらわれ、一気にパワフルでノイジーなロックソングへと変遷を辿る。90年代のオルタナティヴの形を自分なりのスタイルの色に変えてしまうソングライティングの技術は卓越しており、これらの静と動の形式は一定のクオリティを擁しているが、いくらか使いふるされたオールド・スタイルと言えるかも知れない。ただ、その中にもミクスチャー・ロックに近いアプローチが取り入れられることもあり、ラウドロックを好むリスナーにとっては聞き逃すことが出来ないナンバーとなるはずだ。

 

アルバムの中盤でも話題曲に事欠かない。「One Eye Bastard」は、レスポールの芯の太いフックの効いたギターソロで始まり、ヘヴィメタルの影響を交え、アンセミックな展開に繋げていこうとする。しかし、惜しむらくは、曲の中に技巧を凝らしすぎている部分があり、これがそのまま曲のスムーズな進行を妨げている側面もなくはない。


曲そのもののシンプルさやわかりやすさがグリーン・デイの一番の魅力であったわけだが、それとは正反対に曲をこねくりまわすような不可解な難解さをもたらしている。「American Idiot」の時代のアンセミックな空気感を呼び覚まそうとしているのは理解出来るけれど、ジョーによるサビのシャウトの部分も熱狂性が感じられず、エネルギーの爆発とはならず、少しだけ不発に終わってしまっている。ただ、これは、好意的な見方をすると、バンドの新しい挑戦のプロセスを示したものに過ぎず、この先に何か次なる完成形が示される可能性もあるかもしれない。まだ見ぬ作品に期待しよう。

 

「Look Ma, No Brains!」と同様に先行シングルとして公開された「Dilemma」は、アルバムの序盤では珍しくフロントマンやバンドのプライベートな側面が伺え、グリーン・デイの隠れた魅力である、しんみりとしたナイーブな感覚と融合を果たしている。ビリー・ジョーのボーカルについては、ララバイのような哀愁を漂わせているが、やはりブルーな感じにとどまることなく、ラウドでアンセミックなライブパフォーマンスを意識した展開に繋がっていく。他の曲と比べて、強い熱量がうかがえ、それらが90年代のミクスチャーロックのような雰囲気を醸し出す。


「1981」では「Look Ma, No Brains!」と同様にスケーターパンクに象徴されるスピードチューンを披露している。「Dookie」の時代、もしくはその背後にあるパンクムーブメントの熱狂を何らかの形で蘇らせたい、というバンドの意図を読み取ることができる。そして、序盤の収録曲と同じように、ロックとパンクの中間点を行く方向性に加えて、メタルの響きが織り交ぜられている。これはSum 41に対するリスペクトが示された曲であるとも推測できる。そして、ここにもまたオレンジ・カウンティを代表するロックバンドとしてのひそかなプライドが伺い知れる。

 

アルバムの前半部で勢いを掴み、パンクの良質な側面を示そうとしているグリーン・デイではあるものの、「Goodnight Adeline」と「Coma City」に関しては中盤の中だるみを作り出す要因ともなっている。


「Goodnight Adeline」のアコースティックギターを重ねたトラックは、グリーン・デイのセンチメンタルな一面が伺える曲であり、ある意味では序盤のノイジーなパンクソングに対するクールダウンのような意図が込められている。しかし、その繊細な面が示されたかと思うと、単調なノイジーな展開へと舞い戻ってしまう。明るい側面やパワフルな感覚をゴールに設けるということは素晴らしいが、どことなくこのあたりからついていけないという感じが出てくる。


ただ、それだけでは終わらない。続く「Coma City」では、イントロのクールな同音反復のギターに続いて、全盛期を彷彿とさせる精彩感のある展開に戻るのは面目躍如といえるか。曲の中で、微妙なテンションの落差やダイナミックの変化を駆使しながら、まるで落ちかけた吊り橋の上を走り去るかのように、すんでのところで、これらのスピードチューンは凄まじい速度で駆け抜けていく。ある意味では、全盛期のパンクのスリリングさを感じ取ることができるはずだ。

 

 

 「Corvette Summer」は、バンドそのものが90年よりも前の80年代の時代に立ち返るかのようであり、彼らの音楽に対する普遍的な愛が滲む。LAの産業ロックの空気感が反映されている。それらは、ブライアン・アダムスのようなアメリカン・ロックと融合を果たす。途中のギターソロもハードロックのようなロマンを呼び覚まし、バンドとしてはめずらしく、ギターヒーローへの親近感が示しているのに驚きを覚える。続く「Suzie Chopstick」においても、ブルース・スプリングスティーンに象徴される80年代のアメリカン・ロックに対するリスペクトが示されるが、それこそグリーン・デイにとっての「理想的なアメリカ」の姿であるのかもしれない。そして、それらのロックの中にはブルージーな雰囲気が含まれる。悲しみとまではいかないが、これらは現代の米国社会に対するバンドの尽くせぬ思いが込められているとも解釈できる。

 


ビリー・ジョーがソロアルバムで、パンクのアレンジに挑戦したことは、冒頭で述べたが、それらをバンドとしてどのように昇華するのかという試みを、「Strange Days Are Here To Stay」に見出すことができる。


『No Fun Mondays』において、往年のポピュラーなヒット曲や隠れた名曲のカバーを行い、それらをどのようにして、自分のものにするのかを模索してきたビリー・ジョーであるが、それらの試みは『Dookie』の時代のモンスターバンドの片鱗を伺わせる。同時に、バンドがパンクの中に含まれる親しみやすいメロディー、つまり、簡単に口ずさんだり叫ぶことができるメロディーを大切にしてきたことが分かる。実際、シンガロング必須の熱狂性を誘発することもある。つまり、グリーン・デイというバンドの最高の魅力が、この曲に宿っていると言えるのだ。

 

「Living In 20's」では、 メタリックなギターとAC/DCを想起させるハードロックの影響を込めたシンプルなナンバーで、バンドがパンクというジャンルのみに影響を受けているというわけではなく、スタンダードなロックバンドとしての本性を併せ持つことを暗示している。続いて、アルバムの後半では、全体として起伏のあるストーリーを描くかのように、「Father To a Son」においてハイライトを作り、ドラマティックな情感をフォークロックのスタイルで表現する。曲の後半では、GN'Rのコンセプトアルバム『Use Your Illusion』に見受けられるロック・オペラのようなアプローチを選び、一般的なパンクバンドとは異なる特性を示そうとしている。


終盤に至っても、グリーン・デイはパンクという枠組みにとらわれることなく、本質的には広義におけるロックに焦点を置くバンドであることを示唆する。「Saviors」ではギターリフのフックに焦点が絞られ、ライブセッションにより、どのように理想形に近づけるのかを模索している。

 

クローズ曲「Fancy Sauce」ではシンプルなスリーコードを用いながら、ロックソングの最大の魅力とは何かを追求している。どうやら何らかの祝福的な響きを追い求めているのは確かのようであるが、それはまだ予定調和な響きに止まり、魂を震わせるような表現には至っていないのが少し残念なところ。


ただし、ほんわかした幸福感を示そうとしたということは、従来のグリーン・デイの作品にはあまり見られなかったと思う。これが果たしてロックバンドとしての進化なのか、それとも、その逆であるのかまでは断定しきれない。リスナーの数だけ答えが用意されているといえよう。

 



80/100

 

 

Featured Track 「Strange Days Are Here To Stay」