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Tomaga

Floating PointsとMarta Salogniがタッグを組んで、Tomagaに捧げられる2曲入りのアルバムをPhonicaからリリースします。フローティング・ポインツは、ファラオ・サンダースとの共作で知られている。一方のマルタ・サロニは、ビョークやボン・イヴェールの作品のプロデューサーとしてあまりにも有名です。


『Intimate Immensity / A Call From The Eaves』は、Floating PointsとMarta SalogniがTomagaの「Intimate Immensity」を再解釈/リミックス作となります。B面は2人のオリジナル・コラボレーションとなっています。


2020年にTomagaのメンバーの一人、トム・レリーンが亡くなったことを踏まえ、本作の売上はすべてレリーンの名前で設立された慈善団体、フリー・ユース・オーケストラに寄付される予定です。この団体は、地元のミュージシャンが運営する楽器や無料のワークショップを提供することで、子供たちが音楽機材にアクセスする際の経済的な障壁を取り除くことに尽力しています。



 

 

 

Floating Points/Marta Salogni 『Intimate Immensity / A Call From The Eaves』

Label: Phonica Records

Release:2022/12/2


Tracklist: 
A. Tomaga – Intimate Immensity (Floating Points & Marta Salogni Remix)
B. Floating Points & Marta Salogni – A Call From The Eaves

  

Quasi


1989年から活動するポートランドのエレクトロ・デュオ、Quasiが、来年2月に発売される新作アルバム『Breaking The Balls Of History』からのセカンド・シングル「Doomscrollers 」を公開しました。


新作アルバム『Breaking The Balls Of History』は、シアトルのRob Lang StudiosでJohn Goodmanson(Sleater-Kinney, Bikini Kill)と共にプロデュースされた。Quasiの2013年のアルバム『Mole City』に続く作品となる。


ジャネット・ワイスは、このレコードの制作について、「人生を肯定してくれるような感じがした。その場にいて、またそのレベルで演奏できることがどれだけ幸せなことか、音楽から伝わってくるよ。私は存在することができるのです」と説明する。

 

 


 現在、LAを拠点に置く、ダラス出身のアーティストLiv.e(リヴ)が、セカンドアルバム『Girl in the Half Pearl』を、In Real Lifeから、来年2月10日にリリースすることを発表しました。

 

Liv.eは、まさにクロスオーバー・ヒップホップの先鋒と称するべきミュージシャン。ブルースやゴスペル等の教会音楽にルーツを置きつつ、メンフィスラップに影響を受けたミュージシャンである。もちろん、ラップの性格が最も強いが、ソフトウェア"ableton live"を駆使し、最新鋭のエレクトロニクスサウンドを体現する。加えて、上記のブラックミュージックのルーツが彼女の音楽性に深い情感を与えている。

 

今回、Liv.eは、John Carroll Kirby(ジョン・キャロル・カービー)とSolomonophonic(ソロモノフォニック)と共同で作曲・プロデュースしたニューシングル「Wild Animals」を公開しました。


Liv.eは「私はビジョンを思いつき、それが私の想像と同じように出てくることを確実にするために最善を尽くすプロセスが本当に好きです」と、「Wild Animal」のセルフディレクション・ビジュアルについて語った。

 

"私はほとんどすべての練習を、自分自身への信頼と信念を強化するもう一つの方法として使う傾向があります。このコンセプトは、私が過去によく行動しがちだった古い「人を喜ばせる」習慣を手放すことに基づいているだけです。毎回自分を選択する強さと勇気を得ることを描いたのです"


2020年のデビュー・アルバム『Couldn't Wait To Tell You』に続く新作LPは、以前シェアされたトラック「Ghost」を含む17曲で構成されている。アーティスティックな佇まいを持ちながらも、実力派のミュージシャンとしてぜひとも注目しておきたい。

 


「Wild Animals」

 



「Ghost」
 
 




Liv.e 『Girl in the Half Pearl』 Artwork
 



 



 アメリカン・フットボールのMikeとNate Kinsellaの共同プロジェクト、LIESが、9月の "Corbeau "以来となるシングル 「Camera Chimera」をリリースし、POND Creativeによるビデオも公開されました。


Mike Kinsella(マイク・キンセラ)はこの曲について、「"Camera Chimera "は、ソーシャルメディア上での交流や存在がもたらす恐ろしい、そしてしばしば不自由な副作用についての曲なんだ。他者から操作されていると感じるだけでなく、自分自身の嘘や操作の現実と結果に直面し、それが精神的、感情的にどのようなスパイラルに陥るかを描いています」と説明しています。


9月の『Corbeau』に先立ち、LIESは8月に『Summer Somewhere』をシェアし、5月にはデビュー曲『Blemishes』と『Echoes』を配信しています。

 

 

New Order

 New Orderは、1985年の3rdアルバム『Low-Life』のDefinitive Editionを1月27日にRhinoからリリースする予定です。その発表に伴い、シングル "The Perfect Kiss "の未発表初期バージョンが到着した。


このコレクションは、2xCD、2xDVD、1xLPのパッケージで、新たに明らかになった楽曲、当時の貴重な音源や映像資料、ハードカバーの本、アルバムのオリジナルグラフィック・アーティストであるPeter Savilleによる新鮮なスリーブデザインなどが収録されています。CD付録には、"The Perfect Kiss"、"Sooner Than You Think "などの定番曲のライティング・セッション音源、"Love Vigilantes"、"Sub-Culture "のインストゥルメンタル音源を収録しています。


さらに、DVDには1985年にベルギー、オランダ、カナダで行われたコンサートの未発表映像や、同年の東京公演、マンチェスターのThe HaciendaでBBCが主催したWhistle Testでの演奏など、ほとんど出回っていない音源が収録されています。

 

レコード盤にはSavilleがデザインしたオリジナルのヘビーウェイト・トレーシングペーパーが付属し、48ページの回顧本には未公開写真とメンバー全員の新しいインタビューが掲載されています。


また、バンドのウェブサイトでは、特別な12インチレコードが独占販売されている。ミラースリーブの透明ビニールでプレスされた "The Perfect Kiss "の限定版と、黒無地のレーベル無しスリーブでデザインが新しくなった12インチ "Sub-Culture "が含まれ、どちらもアルバムのたった2枚のシングルのプロモーションのためにバンドから出された、オリジナルの未発表仕様になっている。

 

Savilleは声明の中で、ミラーのデザインは1985年に実現しなかったビジョンであり、「それ以来、私はそれを見たいと思っていた」と話しています。オリジナルのコンセプトは、ミニマル/ポップアートのスタイルで、口紅の反射する魅力(re: 'Perfect Kiss')を想起させるものでした。この形の'The Perfect Kiss'は変幻自在で、ファンやコレクターにとって必需品となるだろう」

 


New Order  『Low-Life (Definitive Edition)』

 


 

Label: Rhino

 

Release:2023年1月27日



Tracklist:



CD 1: Low-Life
01. Love Vigilantes
02. The Perfect Kiss
03. This Time of Night
04. Sunrise
05. Elegia
06. Sooner Than You Think
07. Sub-Culture
08. Face Up

Fever Ray ©︎ Nina Anderson

スウェーデンのエレクトロ・デュオ、Fever Ray(フィーバー・レイ)がニュー・アルバム『ラディカル・ロマンティクス』のリリースを発表した。Fever Rayは、カリン・ドレイヤー、オロフ・ドレイヤーの兄弟からなるプロジェクトである。


2017年の『Plunge』以来、5年以上のブランクを経て、ようやく完成に漕ぎ着けた新作アルバム『Racidal Romactics』は、カリン・ドレイヤーが、元The KnifeのメンバーでもあるOlof Dreijer(オロフ・ドレイヤー)と共に設立したストックホルムのプライベート・スタジオで2019年後半に制作が開始された。2人はリード・トラック「What They Call Us」をはじめ、収録曲の数々で共演し、8年前にザ・ナイフを解散して以来、初めてレコードでコラボレートしている。


アルバムの発表に合わせて公開された先行シングル「Carbon Dioxide」は、Vesselが共同プロデュースし、さらにアルバムの収録曲にもゲスト参加。その他、Nine Inch Nails(ナイン・インチ・ネイルズ)のTrent Rezner(トレント・レズナー)とAtticus Ross(アッティカス・ロス)、Príncipe Discos所属のNídia、Aasthma (AKA Peder Mannerfelt and Pär Grindvik、Johannes Berglundといったミュージシャンが参加しています。


Fever Rayの新作アルバム『Radical Romantics」は、2023年3月10日にRabidから発売予定である。

 







Fever Ray 『Radical Romantics』


 
 
Label: Rabid Records

Release: 2023年3月10日

 
 
Tracklist:

1. What They Call Us
2. Shiver
3 New Utensils
4. Kandy
5. Even It Out
6. Looking for a Ghost
7. Carbon Dioxide
8. North
9. Tapping Fingers
10. Bottom of the Ocean


 

Floating Points

 Floating Pointsがニューシングル「Someone Close」を11月9日にリリースした。この曲はミニマルの構造を持つエレクトロニカであるとともに、微細なトーンの変化/ダイナミクスの変化により独特な抑揚をもたらし、曲にトリッピーな浮遊感を与えている。これまでの三曲の先行シングルとは明らかに異なり、宇宙的な音響性すら兼ね備えている。この曲は、単なるエレクトロニカではなく、電子音楽の天文学的なオーケストラレーションと称すことが出来る。

 

中盤では、ワンフレーズの反復の上に、バックトラックにアンビエントのようなサウンドスケープが薄く、また、別のシンセ・リードのフレーズが反対に厚く、連続して重ねられることにより、多重的な複雑な構造が生み出される。これらの音響性がデジタル信号の上限まで拡張された後、クライマックスでは、最初のモチーフが完全に消えさり、それまで表向きに聴くことが出来なかった静謐なアンビエント風のシークエンスだけが残され、神妙な余韻をもたらしている。

 

この中盤からクライマックスにかけての展開はほとんど「圧巻!」というよりほかなく、(皆既月食や天王星食の月や星の満ち欠けの微細な推移のように)聞き手はそこに存在しなかったと思っていた何かが「その空間中に既に存在していた」ことを発見し、驚かざるをえなくなる。この最後の絶妙というよりほかないフレーズの抜き方と曲構成の意外性に、サム・シェパードの天才性がはっきりと表れ出ているように思える。


ここでは、まさに、サム・シェパードの電子音楽のスタイルの真骨頂が体感できるにとどまらず、宇多田ヒカルの「バッドモード」や、故ファラオ・サンダースの「Promises」において様々なジャンルの音楽家とコラボレーションを重ねてきた敏腕プロデューサーとしての表情も窺える。

 

このニューシングルは、先日公開された「Grammar」、「Vocoder」、「Problems」と合わせて、12月16日にNinja Tuneから限定12インチ・ヴァイナルに収録される。「Someone Close」の試聴は以下よりどうぞ。


 

Helena Hauff

ドイツ/ハンブルクのプロデューサー/DJ、Helena Hauff(ヘレナ・ハウフ)は、『Living With Ladybirds』というタイトルのEPを発表し、そのリード曲として新曲 "Touching Plastic "を公開した。

 

"Touching Plastic "は、ハウフにとって2022年最初の新曲であり、2020年のとのシングル "Segment 3 "に続く作品となる。

 


この新曲は、来週リリース予定のEP『Living with Ladybirds』に収録される4曲のうちの1曲となっている。 

 

 

 

Helena Hauff 『Living with Ladybirds』EP

 

 

 

Label: Fabric Originals

Release: 2022/11/11


Tracklisting:

1.Jonas

2.Your Turn To Fly

3.Touching Plastic

4.Pinch

 

Aphex Twin


1992年にリリースされた作品が30年ぶりにヴァイナルで発売される。


Warp Recordsは、12月9日に再リリース予定のコンピレーション『Artificial Intelligence』の再発を発表した。このアルバムはArtificial Intelligenceシリーズの最初のリリースで、AutechreとAphex TwinがThe Dice Manという名で発表した初期のレアトラックを収録している。


また、Richie Hawtin(UP!)、The OrbのAlex Paterson、B12 as Musicology、The KLFのJimmy Cautyのトラックも収録されています。 WarpのArtificial Intelligenceシリーズは92年から94年にかけて行われ、Polygon WindowのSurfing On Sine Waves、B12のElectro Soma、Artificial Intelligence IIも含まれています。


このコンピレーションは12月9日にリリース予定。





Tracklist:



1. The Dice Man – Polygon Window
2. Musicology – Telefone 529
3. Autechre – Crystal
4. I.A.O – The Clan
5. Speedy J – De-Orbit
6. Musicology – Premonition
7. Up! – Spiritual High
8. Autechre – The Egg
9. Dr Alex Paterson – Loving You Live

 Ásgeir 『Time On My Hands』

 

 

 

 Label:  One Little Independent

 Release:  2022年10月28日

 

Listen/Stream



 

Review

 

現在の北欧のアイスランドのミュージック・シーンには、性別を問わず、傑出したシンガーソングライターが数多く見受けられる。JFDR,Jojiを始め、これから活躍しそうな歌手の例を挙げると枚挙に暇がないが、 しかし現在のアイスランド国内のミュージックシーンで絶大な支持を得ているのが、Ásgeir(アウスゲイル)である。アウスゲイルは2012年のデビュー作『Dyrd i daudapogn』で、国内のグラミー賞に該当するアイスランド・ミュージック・アワードの2つの主要部門を含む4部門を受賞し、国内のシーンにおける地位を確立し、今や、アイスランド国民の10人に一人が、このアウスゲイルのアルバムを所有しているともいわれ、アイスランド国内の音楽ファンでこのÁsgeirを知らない、という人を探す方が難しくなっているようだ。

 

若い時代、カート・コバーンに憧れ、グランジサウンドに目覚めた後、Ásgeirに薫陶を与えたのは、ロンドンのネオ・ソウル/エレクトロの象徴的なアーティスト、ジェイムス・ブレイクにほかならなかった。さらに、アウスゲイルのデビューした年代に活躍したBon Iverが彼の才覚を覚醒へと導いた。つまり、アウスゲイルの音楽は、ジェイムス・ブレイクのような人間味あふれるネオソウル、そして、ボン・イヴェールのエレクトロニクスとフォークの融合性にある。察するに、これらのサウンドを、アイスランドのMumに代表されるような自然味溢れるフォークトロニカサウンドと上手く合致させようというのが、このアイスランドの次世代のSSWの役割なのかもしれない。

 

デラックスバージョンを除いて通算五作目となる『Time On My Hands』は、近年の作品の中で最も内的な静けさと、このアーティストの持ち味であるソウルミュージックへの深い愛着が示された一作に位置づけられる。そしてアウスゲイルはアーティストとして深みのある表現性に到達したとも言える。

 

アウスゲイルは、今年ラフ・トレードからデビューしたCarolineを始めとする実験的なバンドの音楽を聴きながら、散歩やドライブをしているときに、アルバムの曲を思いついたという。そして、彼の頭脳の中に溢れる豊かなアイディアやイマジネーションは、このアーティストらしいソングライティングの手法、レコーディングスタジオに置かれていたMinimoog,Korg PS-3100といったヴィンテージのシンセサイザーを介して、纏められた作品として洗練されてゆく。

 

アルバム全体のアプローチは、やはり、このシンガーソングライターが信奉するBon Iverの主な音楽性であるエレクトロニクスとフォーク・ミュージックの劇的な融合性にあると思う。そして、これらのモダンミュージックの核心を突くアプリーチに洗練性を与えているのが、アウスゲイルのJames Blakeに近いソウルフルで温かみのあるボーカルなのである。アウスゲイルのボーカルは、ブレイクのように内省的であり、熱さを持ち合わせつつも冷静さを兼ね備えている。そしてこれらの曲がなぜ多くの人の心に共鳴するのかというと、それは、「人間味のあふれるソウル・レコード」というBlakeの主要な音楽性の核心を、このアーティストは継承しているからでもある。

 

このアルバムには、上記の二人のアーティストの性格を引き継いだエレクトロ・ポップのシンガロング性を上手く引き出した#2「Borderland」、先行シングルとして公開された、まったりとしたフォークとソウルを融合した#1「Time On My Hands」といった楽曲の中で、これまでのファンの期待に応え、以前より渋みのある内的な世界を探求し、新たなファンの心を捉える。このアーティストのファルセットは美しく、聴いていて心地よい。いわば一度聴いて分かる親しみやすい楽曲ではある反面、したたかな渋い歌唱力も持ち合わせているため、繰り返して聴いていても飽きさせない安定感のあるタイプの音楽になっているのだ。

 

しかし、Bon Iverのような売れ筋のアプローチの中にも、アイスランドのアーティストらしい独特な気風も込められている。独特な気風とはつまり他には見出すことの出来ないマニア性でもあるのだが、「Blue」では明らかに2000年代のMumのようなフォークトロニカのアプローチを、Minimoogの音色の面白さを駆使しながら新しいサウンドを探求しているように思える。それはポピュラー性の高い楽曲の中で異彩を放っており、このアルバム全体を俯瞰した際に、一筋縄ではいかないという感じを与え、いわば厳格で硬質な雰囲気をもたらしている。もちろん、これらのキャッチーさと聴き応えの両側面を兼ね備えたアルバムは、聞き手に一定のリズムと心地よさを与えつつら音楽の世界へ誘なうに足る求心力が込められているのにも注目である。

 

アウスゲイルの新作は、全体的に綿密な曲の構成がなされていて、始めから最後までじっくり聴き通せる。そして、アルバムの最後にも、重要な曲が収録されていて気を抜くことが出来ない。#8「Wating Room」 では、ダイナミックなソウル・バラードを展開する。このファルセットは技巧的で美しく、そして、この曲こそがこのアルバムに大きな存在感をもたらしていると言える。

 


84/100

 


Featured Track 「Waiting Room」


 

PVA 

ロンドンのエレクトロニック・トリオ、PVAが「Kim」のPVを公開しました。この曲は、今月、Ninja Tuneから発売された『Blush』の収録曲です。アルバムのレビューはこちらからお読みください。


 

©Bolado Banjo

 Mount Kimbieは、近日発売予定のダブルアルバム『MK 3.5: Die Cuts|City Planning』からさらに2曲を公開した。

 

「Satellite 9」はグループのKai Camposがプロデュースし、「DVD」はDom Makerが指揮をとり、Chokerがゲスト参加している。Duval Timothyは「DVD」でピアノを弾いており、Samphaのバッキング・ヴォーカルも収録されている。


新曲に加え、Mount Kimbieはアルバムの各面に付随する2つの作品を発表している。デビューアルバム『Crooks & Lovers』やFran Oceanの『Nikes』を手がけたクリエイターTyrone Lebonを起用し、11月4日から5日までロンドンのFrieze Galleryで上映される映像作品を制作したとのこと。また、11月4日からオンラインで視聴することが出来る。

 

City Planningでは、ニューヨーク在住の彫刻家、Tom Shannonに「Four World Set」と題した作品を依頼し、10月31日からロンドン中心部の”St Giles Square”で展示された後、世界各地を巡回しています。


『MK 3.5: Die Cuts | City Planning』は11月4日にWarpより発売されます。これまでにKučkaが参加した「F1 Racer」、「Zone 1 (24 Hours)」、「In Your Eyes」(SlowthaiとDanny Brownが参加)、「A Deities Encore」(Liv.e参加)、「Q」、「Quartz」が先行公開されています。


「Satellite 9」

 

 

 「DVD」

 

 


リバプールのエレクトロ・デュオ、Ladytron(レディトロン)は1月20日にCooking Vinylよりニューアルバム『Time's Arrow』をリリースします。

 

このたび、アルバムのファーストシングル「City of Angels」のミュージックビデオが公開されました。バンドが短編映画と呼んでいるこのビデオは、Manuel Nogueiraが脚本と監督を担当し、Bianca ComparatoとMarina Diasが出演しています。以下、ご覧ください。


NetflixのSFドラマ『3%』に出演しているコンパラートは、プレスリリースでこのように語っている。「私はレディトロンのファンで、幸運にもミュージックビデオに出演することができました...全ての経験が夢のようです」


以前のプレスリリースでは、"City of Angels "は 「官能的なイメージを、近未来の文化的記憶の崩壊のビジョンに反転させたもの」と説明されている。LadytronのDaniel Huntは、「それは忘れることについて...それがいかにもろいか...ある特定の場所や他のものについてではなく、それらの融合」と付け加えています。

 

 


Ladytron 『Time’s Arrow』

 

 

Label: Cooking Vinyl

Release: 2023年1月20日


Tracklist:

 

1. City of Angels

2. Faces

3. Misery Remember Me

4. Flight From Angkor

5. We Never Went Away

6. The Night

7. The Dreamers

8. Sargasso Sea

9. California

10. Time’s Arrow



 


 1989年から活動するポートランドのエレクトロ・デュオ/Quasi(Sam CoomesとJanet Weissのデュオ)が10年ぶりのアルバムを発表しました。

 

『Breaking the Balls of History』は、Sub Popから2023年2月10日にリリースされる予定です。ニュー・シングル「Queen of Ears」は、Patrick Stantonが監督したビデオ付きで、下記からチェックできますよ。


2013年の『Mole City』を最後に新作LPをリリースしているQuasiは、3月にSub Popとの契約を発表しています。

 

ジョン・グッドマンソンとの共同プロデュースによる本作は、2019年にスリーター・キニーを脱退して以来、ワイスにとって初の新プロジェクトとなる。


"若くてバンドにいるときは、それが自分の仕事だからレコードを作るんだ "とクームスは声明で語っている。

 

「でも今回は、その状況ならではの方法で、全体が目的を持っているように感じた」 ワイスはさらに付け加えている。「もう未来に投資することはない。未来は今だ。やりたいなら今やれ。先延ばしにしてはいけない。手遅れになりそうになって初めて気づくことばかりだ。一瞬で消えてしまうかもしれないのだから」

 


『Breaking the Balls of History』は、前作から10年後の2月10日に着地した、Quasiの10枚目のアルバムだ。この10枚は、彼らが一緒に演奏してきた30年の歴史と重なります。サム・クームズとジャネット・ワイスはパシフィック・ノースウエストのアイコンとなり、クエイジは常に不動の地位を築いてきた。彼らの永続的な友情はとても寛大で、彼らのエネルギーは無限で、それぞれのアルバムは前作よりも騒がしく、キャッチーで凶暴で面白い。しかし、私たちはQuasiが当然であると考えるのは間違っていた。しばらくの間、彼らは2013年の複雑なMole Cityが彼らの最後のレコードになるかもしれないと考えていた。彼らは素晴らしい作品に出会って、前に進むだろう。


そして2019年8月、ジャネットのもとに車が激突し、両足と鎖骨が折れた。その後、致命的なウイルスが私たち全員に衝突し、私たちが知っているようなライブ音楽、ツアー、共同体の群衆、暗いクラブの音の教会などが、いつ、どのように再び起こるのか誰も知りませんでした。ジャネットは、「もう未来に投資することはできない」と悟った。「未来は今なんだ。未来は今だ。やりたいなら今やれ。先延ばしにしてはいけない。手遅れになりそうになって初めて気づくことばかりだ。一瞬で消えてしまうかもしれないのだから。"


封鎖されたポートランドの街は静まり返り、飛行機は消え、野生動物が現れました。そして、消された日常は、思いがけない贈り物となったのです。Quasiはツアーに出ることができなかったので、彼らはあるアイデアを思いつきました。毎日午後、サムとジャネットは小さな練習スペースにこもり、この異質な新世界の困惑と不条理を歌に注ぎ込んだ。ジャネットの体力は回復し、アスリート並みのスタミナになった。「若くてバンドをやっているときは、レコードを作るのが仕事だから」とサムは言った。「でも今回は、この状況ならではの目的意識があったんだ」。彼らは、部屋で一緒に演奏するのは二人だけにしておこうと思ったんだ。そして、その瞬間をとらえるために、ライブで一緒に曲をレコーディングすることも知っていた。


そのセッションの驚くべき結果が、ワシントン州ショアラインにある伝説のロバート・ラング・スタジオでジョン・グッドマンソンがプロデュースし、5日間で録音された『Breaking the Balls of History』である。2人のアーティストが全盛期を迎え、それぞれが音楽的知識と経験の人間的ライブラリーであり、曲作りとサウンドにおいて完全に独特な存在となっているのだ。Quasi-formでは、バンドは錬金術的にそのパーツの総和よりもさらに偉大な存在となる。ジャネットの疾走するドラムとサムのパンクシンフォニックなロックシコード、そして彼らの絡み合うボーカルが、巨大でアンセミックなものを作り上げている。社会的、政治的な激震の中で、彼らは怒りと野生のユーモアと知性に満ちた、絶妙なメロディーの曲を作り上げ、大きな傷ついたドキドキする心で駆り立てているのだ。


アルバム冒頭でサムが歌う "A last long laugh at the edge of death "は、この喜びに満ちた反抗心、つまり私たちの現在の瞬間のキャッチフレーズであるかのように、これから始まる曲へのテーブルをセットしているのです。Gravity "では、Quasiの不条理への偏愛は、今や気の遠くなるようなリアリズムに傾いている。ポストファクト時代には、我々を地球に結びつけるものそのものが無意味になる(「米国製のコンクリートの靴を履けば、水の上を歩けるよ」)。死と混乱を警告するパンチの効いた詩は、至福に満ちた「Queen of Ears」のコーラスへとなだれ込む(「But I, I float above it all, wizard of idleness, mistress of killing time.」)。ジャネットの声は、"Inbetweenness "の大気中の浮遊現実の中で甘く不気味に浮遊しています。Doomscrollers "を黄金のレコードに刻み込み、理解しがたい現在の正確なタイムカプセルとして宇宙へ打ち上げる。"The Losers Win "は、このレコードを、いや、この国を締めくくる、酸っぱいヒ素のナイトキャップである。


この曲は暗く聞こえるが、その瞬間に立ち上がっているのだから、そうなのだろう。しかし、これはエネルギーと喜びと歓喜に満ちあふれたレコードでもある。「人生を肯定するような感じだ。あの場にいられたこと、あのレベルで演奏できたことが、どれだけ幸せなことか、音楽から伝わってくるよ」とジャネット。"私は存在することができる"

 


Quasi  『Breaking the Balls of History』

 


 Label: Sub Pop

 Release: 2023年2月10日


 

Tracklist:


1. Last Long Laugh

2. Back in Your Tree

3. Queen of Ears

4. Gravity

5. Shitty Is Pretty

6. Riots & Jokes

7. Breaking the Balls of History

8. Doomscrollers

9. Inbetweenness

10. Nowheresville

11. Rotten Wrock

12. The Losers Win

 

Orbital

オックスフォードのエレクトロデュオ、Orbital(オービタル)が2月17日にLondon Recordsより『Optical Delusion』をリリースすることを発表しました。


この新作アルバムは、ブライトンでレコーディングが行われ、Penelope Isles、Anna B Savage、Dina Ipavicらがゲストで参加している。

 

アルバムの告知と同時に、Sleaford Modsをフィーチャーしたファースト・シングル 「Dirty Rat」がリリースされています。MVには、Sleaford Modsのスポークンワードを担当するジェイソン・ウイリアムソンが出演、歯切れの良い痛快なスポークンワードでこの曲のテンションを盛り上げています。

 


 

 


Orbital 「Optical Delusion」

 



Tracklist:
1. Ringa Ringa (The Old Pandemic Folk Song) (feat The Mediaeval Baebes)
2. Day One (feat Dina Ipavic)
3. Are You Alive? (feat Penelope Isles)
4. You Are The Frequency (feat The Little Pest)
5. The New Abnormal
6. Home (feat Anna B Savage)
7. Dirty Rat (with Sleaford Mods)
8. Requiem For The Pre Apocalypse
9. What A Surprise (feat The Little Pest)
10. Moon Princess (feat Coppe)

 

©︎Steve Gullick

UKのエレクトリック・デュオ、 Leftieldが、Fontaines D.C.のGrian Chattenと組んで、新曲「Full Way Round」を発表しました。この曲は、12月2日にVirginからリリースされる彼らのアルバム『This Is What We Do』の最新先行曲となっています。曲の試聴は以下からお楽しみください。


"「Full Way Round」は、ビートと良い雰囲気の完璧なコラボレーションでした。" ハードワークと楽しさ。Grian Chattenは説明している。

 

「分析するのではなく、感じ、経験する自由な旅だ。彼のエネルギーと熱意はスピーカーから吐き出される。この曲を聴くたびに、彼がレコーディングしたときのスタジオでの興奮を思い出すよ」



©︎Shervin Lainez

 Bonoboが新曲「Defender」をリリースしました。このシングルはNinja Tuneから10月28日に発売される「12」に既発のシングル「ATK」と共に収録されています。


1月にUKチャートでNo.3を記録したアルバム『Fragments』をリリースした後、海外ツアーに向けてライブを刷新し、単体のシングルを次々と発表しているBonobo。日本のフジロックでのライブも大盛況でした。


先日、サプライズ・バーナー "ATK "をリリースしたBonoboは、その直截性を引き継ぎ、ピアノ主体の "Defender "では、彼の絵画的タッチを活かした4ビートのトラックながら、クラブで体験するようなエネルギーに満ちている。エレクトロニックミックスにシンセサイザーを加え、デジタルな実験とクラブに根ざしたリズムのバランスを常に追求するこのプロデューサーにとって、この作品は力強い復活と言えるでしょう。

 





Ikonikaが新曲「When You Look At Me」を公開しました。


このたび、長年にわたって親交のあるレーベルHyperdubから、新作EP「Bubble Up」が11日25日にリリースされる。


5曲入りEPに加え、先日ベルリンのPanorama Barで行われたBubble Upのライブセットも収録される予定です。


今回リリースされる'When You Look At Me'は、自称クィア・ラブ・アンセムで、クラブでの体験の即時性と喜びを表現している。この曲は、ハウスのテクスチャーとアマピアノのエネルギーの波が生み出すリズムをリンクさせ、Ikonikaのクリエイティブな魅力のいくつかを結びつけます。


また、'When You Look At Me'は、私たちの間に存在するシンプルなつながりに魅了される作品である。この曲は、ポップでキャッチーなヴォーカルが特徴だが、Ikonikaは複雑なアイデアを盛り込んでいる。


 

PVA 「Blush」

 


Label: Ninja Tune


Release: 2022年10月14日



Review


Ninja Tuneからリリースされるサウスロンドンのバンド、PVAのデビューアルバム『BLUSH』は、エレクトロニックミュージックの鼓動と人生を肯定するライブギグのエネルギーを巧みに統合し、これまで語られてきた以上のトリオの姿を明らかにするものとなる。



エラ・ハリスとジョシュ・バクスター(リード・ボーカル、シンセ、ギター、プロダクションを担当)、そしてドラマーとパーカッショニストのルイス・サッチェルによる11曲は、アシッド、ディスコ、強烈なシンセ、ダンスフロア、クィアコード・シュプレヒゲサングのポストパンクで構成されている。



このトリオは、ハリスとバクスターが2017年に一緒に「カントリー・フレンド・テクノ」と名づけたものを作り始めたことから始まった。最初の曲のひとつは、ハリスが自分の夢を新しいバンドメイトに口述したことから生まれ、最初のライヴは、ニュークロスのThe Five Bells pubで行われたNarcissistic Exhibitionismという伝説の一夜であり、彼らが出会ってからわずか2週間後に開催された。このショーはエラ・ハリスのキュレーションによるもので、2階は絵画、彫刻、写真、1階はバンドがフィーチャーされていた。彼女は、PVAをヘッドライナーとしてブッキングした。

 


 この初期の段階を経て、彼らはライブショーに新しい次元をもたらすためにルイス・サッチェルを採用した。このように、より硬派なライブを行うことで、PVAはロンドンのギグファンの間でカルト的な評判を確立した。

 

その時点ではライブをおこなことが彼らの唯一の選択肢であった。トリオは、Squid、black midi、Black Country、New Roadと並んで、南ロンドンの熱狂的なインディー・シーンにおける最重要アーティストとしての地位を確立する。その後、「SXSW」、「Pitchfork Music Festival」、「Green Man」に出演し、Shame、Dry Cleaning、Goat Girlと共に国内ツアーを行うようになった。だが、初期の段階から、従来のバンド編成の枠を超えた存在であることは明らかだった。ブリクストンのスウェットボックス「The Windmill」と、デプトフォードの地下クラブ「Bunker」で早朝からDJをする彼らを一晩で2回も見ることも珍しいことではなかったという。



PVAは、2019年末、Speedy Wundergroundからデビュー・シングル「Divine Intervention」をリリースした。その1年後には、Young FathersやKae Tempestといった同様に、イギリス国内の象徴的なアーティストが所属する”Ninja Tune”からデビューEP「Toner」をリリースしている。このEPには、ムラ・マサの「Talks」のリミックスが収録されており、2022年のグラミー賞のベスト・リミックス・レコーディング部門にもノミネートされた。


PVA

 

10月14日、Ninja Tuneから発売された『Blush』は、過去のどのアルバム、どのアーティストとも似ていない、孤絶した領域にある作品です。このような音楽に接した際、多くのリスナーは戸惑いを覚えると共に、本当の意味での熱狂的なリスナーであれば、いくらかの興奮を覚えざるをえなくなる。

 

アルバムには、このトリオの幅広い音楽のバックグラウンドを伺わせる様々な要素が込められている。多彩な音楽が溢れるサウスロンドンのダンスフロアから登場したという経緯もあってか、エレクトロ、 ポスト・パンク、アシッドハウス、トランスを主体においた、実験的なアプローチが今作において図られていますが、それは、エラ・ハリスとジョシュ・バクスターの両ボーカルによって全体的な作品の均衡が絶妙に保たれいるだけでなく、また、ヴァラエティーに富んだアルバムとなっている。シンセサイザーを担当するジョシュ・バクスターは、アナログのモジュラーシンセの音色をフル活用し、これらのトラックに思わぬ魔法をかけてみせるが、全体的なトリオとしてのサウンドの枠組みを支えているのは、ドラムのルイス・サッチェスです。ジャズや民族音楽の要素を多分に感じさせるルイス・サッチェスのダイナミックで変則的なリズムが、時折創造性が豊かすぎるゆえ奔放になりがちなサウンドに統一感を与えているのです。


さて、PVAのエレクトロに根差したサウンドは、西洋的な美学の一つである対比の概念によって強固に支えられている。このギリシャ哲学の時代から綿々と引き継がれるアート全般の美学は、もちろんクラシック音楽の作曲を行う上で、そして、ポピュラー音楽の構成面でぜひとも必要な要素なのですが、その対比の美学は、エラ・ハリスとジョッシュ・バクスターのボーカルの対称性に反映されている。


前者のエラ・ハリスのボーカルは、Sprechgesang(シュプレヒゲサング)のスタイルをとり、語りにも似たた性質であるが、冷徹な雰囲気を感じさせるとともに、時にそれとは逆の華やいだ抒情性にも成り代わる場合もある。さらに、もう一方のジョッシュ・バクスターのボーカルは常に強い熱量に支えられており、まるでロンドンのダンスフロアの熱狂を体現したようなエナジーを擁している。これらの両者のまったく温度差の異なるトラックが対比的に配置されることで、このアルバム全編は多彩性溢れるものとなり、ダイナミックな印象を与えるのです。

 

オープニング「Untetherd」では、ゴアトランスに近い過激なアプローチをPVAは採用しているが、この音楽の欠点となりがちな刺激性と興奮性にばかりに焦点が当てられているわけではありません。エラ・ハリスは、典型的なヘテロ的な男性像というものに強い抵抗と怒り、エナジーを込め、それらを知的かつ理性的な表現として昇華している。他にも、ドイツのインダストリアルや古典的なテクノミュージックに依拠した「Hero Man」は、典型的なテクノを、現代のエレクトロ、ハウス、そして、鋭い感覚を持ったポスト・パンクと融合しているが、このトラックにおいても、エラ・ハリスのボーカルには Sprechgesang(シュプレヒゲサング)のスタイルが導入されている。 

 

 

「Hero Man」 

 

 

 

ハリスは、このパンデミックのロックダウンの時期を、この曲の中で表現し、「眠れない、食べれない、仕事にいけない」と、この時代における苦悩を解き明かしている。ボーカルのピッチは殆ど常に一定で変わりませんが、微細なトーンの変化の中に特異な抒情性がほのかに揺曳している。これは機械的な何か、またはシステム的な何かへの人間の強い抵抗とも取られることも出来る。

 

アルバムの中盤に差し掛かってもなお、PVAの掲げる音響世界は極限まで押し広げられ、特異性を増していく。中盤のハイライトといえる「Bunker」では、バクスターがボーカルを担当し、ゴツゴツとした雰囲気のエレクトロを提示している。特に、この曲におけるモジュラー・シンセサイザーを駆使した展開力や創造性には驚嘆するよりほかありません。バクスターは、シンセサイザーに使われるのではなく、彼は自発的にアナログシンセをコントロールし、彼自身の創造性を最大限に活用し、楽曲は中盤から終盤にかけて思わぬ展開へと繋げていくのです。常に、バクスターのボーカルは、サウスロンドンの最もアンダーグラウンドにあるダンスフロアの熱気を感じさせ、そこには、彼のこの土地のシーンへの深い愛情と敬意が多分に込められている。彼の生み出すシンセのフレーズ、そして、ボーカルは聞き手を圧倒させるものがあります。それは電子音楽のまだ見ぬ可能性を感じさせるとともに、さらに、これまで誰もアプローチしてこなかったデジタルのように音の増幅の受けないアナログ信号の未来の可能性をここで追求している。

 

先行シングルとして発表された「Bad Dad」の新世代のエレクトロ・ポップのバンガーと称するべき良質なトラックですが、特に、ひとりのリスナーとして大きな驚きを覚えたのが9曲目に収録されている「Transit」です。エラ・ハリスがボーカルをとるこの曲では、近年隆盛のエクスペリメンタルポップの一歩先を行き、時代に先んじた新鮮な方向性が取り入れられている。この曲は、ピアノアレンジが取り入れられたアルバムの中では、ポピュラーミュージック寄りの楽曲に感じられるものの、もちろんこの曲の魅力はそれだけに留まりません。ダークな雰囲気をもちあわせた独特なトラックで、アシッド・ハウスの要素を交え、執拗なフレーズを合間に織り交ぜたあと、曲のクライマックスでは誰も予測出来ない展開が待ち受けている。ここで、PVAは、インダストリアル、エレクトロ、フォークトロニカの未来にある、これまでに存在しなかった類の音楽を提示している。


なぜ、このような音楽が出来たのか、と不思議に思っているが、これは、エラ・ハリスが「このような音楽になるとは想像できなかった、一種の天啓だった」と語っているように、このトリオが事前に設計していた通りの作品よりも、はるかにものすごい音楽が生まれたことを証左しているのです。

 

しかし、芸術全般にこのことは言えますが、自分たちの手から創作物が離れていき、それが作者があらかじめ予想していたのとは全然別の何かに成り代わる時、つまり、本人たちも予期せぬ偶然の要素が入り込んだ瞬間に傑作というのは誕生する。しかし、それは、常に真摯に音楽に向き合い、誰よりも真摯に音楽に取り組んでいる製作者にしか訪れない数奇な瞬間でもある。


更にいえば、PVAは、その幸運に預かる資格を与えられ、幸運なる瞬間を自らの手で力強く掴んでみせた。こういった、どこから生まれたのか容易に解きほぐせない、偶発的な音楽が生み出されるためには、時代的な出来事や、日常のおける身近な出来事、その他、様々な要素が偶然に入り込むのが1つの条件ではありますが、PVAは、ロックダウン時における苦悩を、ロンドンのフロアシーンを中心とするライブの熱狂を介して、創作的な前向きなエネルギーへと変換させてみせた。その大きな成果が、Ninja Tuneからのデビュー作「Blush」には顕著な形で表れているのです。


「Blush」は、多くのリスナーにPVAなるトリオがいかなる存在であるかを力強く示す作品であるとともに、デビュー作としては、ほとんど非の打ち所のない作品です。サウスロンドンから登場した新星ーPVAは、音楽の未知の可能性と明るい未来をここに示してみせています。今後、彼らがどのような傑作をこの世に生み出していくのか心から楽しみにしていきたいところです。

 

 

 

100/100(Masterpiece)

 

 

 

Weekend Featured Track 「Bunker」

 



 蓮沼執太のシングル・プロジェクトの不定期リリースが続いている。最新作「Hypha」(ハイファ)が昨日、10月14日(金) リリースされた。
 
 

コロナウイルスのロックダウン前にニューヨーク・ブルックリン在住時から制作された楽曲で、1作目「Weather」(ウエザー)、「Pierrepont」(ピエールポント)に続く第三弾シングルとなる。

 

「Hypha」は2019年 NY ブルックリンにあるライブスペース「PUBLIC RECORDS」で行ったパフォーマンスのために書き下ろされた楽曲です。当時のライブ映像が公式のYouTubeチャンネルで公開されている。 

 

 

 

蓮沼執太/Syuta Hasunuma 「Hypha」   New Singles



 

Label:  Syuta Hasunuma

Release: 2022年10月14日

 

 

楽曲のご試聴/ダウンロード:

 

https://linktr.ee/shutahasunuma