ラベル Indie Pop の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Indie Pop の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
©︎ Craig McIntosh

Carla J Easton(カーラ・J・イーストン)とSimon Liddell(サイモン・リデル)によるプロジェクト、Poster Paintsが、10月中旬に発売予定のセルフタイトルアルバムのプレビューシングルを公開しました。

 

今回発表された「Not Sorry」は「Falling Hard」、「Never Saw It Coming」、「Circus Moving On」に続くプレビューシングルです。


"これはすぐにライブで演奏するお気に入りになったし、リリースできてとても嬉しい!" イーストンは声明の中で『Not Sorry』についてこう語っている。「眠れるマジー・スターのようなサウンドだ。囁くような内省的な嘆きの中で、ブリスターなギターで大コーラスをドライブさせる」




Poster Paintsのセルフタイトル・デビューアルバムは、Ernest Jenning Record Co./Olive Grove Recordsから10月14日に発売されます。

 

 

 

 

 Poster Paints  『Poster Paints』

 


 

Tracklist:

 

1.Still Got You

2.Number 1

3.Not Sorry

4.Never Saw It Coming

5.Falling Hard

6.Falling Hard

7.Ribbons(feat.Lomond Campbell)

8.Rupture

9.Hard To Sweeten

10.My Song


 

Photo: savanna hughes
 


Lowertownが、デビューアルバム『I Love to Lie』からの最新曲「Antibiotics」を公開しました。


「"Antibiotics" は19歳になってすぐ、初めて真剣な交際相手と別れた後に感じた明晰さについて書いたものです」とデュオのOlivia Osbyは声明で説明しています。

 

"その関係の終わりは、自分がどう扱われているから終わらせたいと言うと、パートナーがそれに応えて、演技をしたり、私が相手を怖がったり同情するようなことをしたりするという息苦しいサイクルだったんです。だから何度も何度も、結局はまた吸い寄せられるように戻ってくるんです。" 彼女はこう続けた。


「交際中、彼の家の壁の黒カビが原因で、私は歩く肺炎のような病気になったんです。その関係が、文字通り私の心身を蝕んでいるような気がして、まるで病気でおかしな比喩のようでした。


最終的に物事を断ち切った後、私は病気から完全に回復しました。1年以上ぶりに、心身ともに癒され始めた気がしました。人生の一部と距離を置いたことで、その関係がいかに有害であったかを理解し、今後どのような境界線を自分に対して持つべきかを気づかされました」


先にリリースされたシングル「Bucktooth」を収録した「I Love to Lie」は10月21日にDirty Hitからリリースされる。



 


レスター出身の5人組バンド、Easy Lifeが、Gus Dappertonと組んで、アルバム『MAYBE IN ANOTHER LIFE...』から4作目となる先行シングル『ANTIFREEZE』を発表しました。

 

「ANTIFREEZE "は、ニューヨークで撮影されたYago Hunt-Laudi監督によるビデオで、7月にリリースされたBENEEとのコラボレーションソング「OTT」に続く作品となっています。



『MAYBE IN ANOTHER LIFE...』は、2021年のデビュー・アルバム『Life's A Beach』に続く作品で、先行シングル「BEESWAX」やケヴィン・アブストラクトとのコラボレーション「DEAR MISS HOLLOWAY」など全15曲を収録しています。

 

Easy Lifeのアルバム『MAYBE IN ANOTHER LIFE...』は、Island Recordsより10月7日にリリースされる。彼らは2023年2月25日にロンドンのアレクサンドラ・パレスで公演を行う予定です。チケットは、明日(9月16日)よりeasylifemusic.comにて発売開始となります。

 

 Jockstrap    「I Love You Jennifer B」

 


Label:Rough Trade

 

Release: 2022年9月9日

 

Listen/Buy

 

 

 

Review


ジョック・ストラップの記念すべきデビュー・アルバム『I Love You Jennifer B』は、先週リリースされたインディーポップ作品の中で最も注目を集めた作品となった。複数のメディアはこのアルバムに平均点以上の高評価を与えていることからの最初の反応は軒並み良いものとなった。

 

このアルバムで、ジョージア・エレリー、テイラー・スカイは、既存のポップスやロックを新しい形で組み直そうと挑戦している。そのことは、先行シングル「Jennifer B」、他にも「Greatest Hits」に表れている。北欧のトイトロニカ/フォークトロニカ、他にも若手のアーティストらしく、ティーンネイジャーカルチャーに基底を置くチップチューンに近いユニークな音楽性が、ポピュラー・ソングやフォークミュージックと融合を果たし、新鮮な息吹をもたらす楽曲として昇華されている。これらの楽曲は、デビュー作ということもあり荒削りな形で提示されているが、それがローファイのような魅惑的なジャンク感を演出しているのも事実である。

 

ロンドンの演劇学校「ギルドホール」で出会ったというデュオの結成秘話のようなものもまたこれらのポピュラーミュージックの先進的なアプローチの中に大きく寄与しているように思える。スコットランドのフォーク・ミュージックから現代的なインディー・フォークを踏襲した六曲目の「Angst」は、ハープを豪華に活かした演劇的な雰囲気を持つ一曲で、聞き手を幻想的なおとぎ話の世界へと優しく誘う。他にも、プリペイド・ピアノをポピュラー・ミュージックとして再解釈した「Glassgow」は、現代音楽とポピュラー・ミュージックの融合に取り組んでいる。

 

「Lancaster Court」は、艶やかな質感を持った、近年、稀に見るような斬新なインディーフォークだ。オーケストラのティンパニーやジャズにルーツを置いたデビュー当時のビョークのような華やいた印象も見受けられる。ジョック・ストラップは、この楽曲で、新進プロジェクトとは思えない存在感の大きさ、才覚の鋭さを初見のリスナーに印象づけることに成功している。さらに、ボーカルについても、舞台芸術のような視覚的な効果を重視しているのにも着目したい。

 

「Jennifer B」と同じく、先行シングルとしてリリースされた「50/50」では、2021年に発売されたシングル盤とは異なるエレクトロ調のリミックスをこのアルバムでは体験することが出来る。ただ、この曲については、正直、オリジナルシングルの方が魅力的な楽曲であったように思え、アルバム単位として聴くと、全体の作品価値をほんの少し貶めている印象を覚える。

 

ジョック・ストラップは、このデビュー作において、他の新進アーティストとは異なる際立った才質を示している。それは、80-90年代から始まったスコットランドの音楽文化の流れに与するもので、ギター・ポップ/ネオ・アコースティックのニューウェイヴを今作で呼び起こそうというのである。それはティーンカルチャーの興味と相まって新鮮な息吹を感じさせるものとなっている。

 

1つだけ難点を上げるのならば、これらのトラックを聴くかぎり、デュオの音楽性や本当の才覚が完全な形で示されたとは言いがたい。これらの楽曲のアプローチのベクトルは常に中心点に収束し、大きなスパークを起こしているわけではない、その音楽のベクトルは常に散漫になりがちなため、それが楽曲として大きな化学反応を起こすまでには至っていない反面、それらの難点は、ジョック・ストラップの収まりのつかない”創造性の高さ”を示すものともなっている。

 

今後、ジョックストラップの持つシアトリカルな効果が、音楽と劇的な形で融合を果たした際には、スコットランドのミュージック・シーンの記念碑的な作品が出てきそうな気配もある。ぜひ、ベル・アンド・セバスチャンの次世代を受け継ぐインディー・スーパースターになってもらいたい。

 

 

78/100

 


Featured Track  「Angst」

 

 

©︎Athena Merry

LAのドリームポップ/シューゲイズバンドWinterは、Hatchie(オーストラリアのSSW)が参加した「atonement」に続いて、ニューアルバム『What Kind of Blue Are You?』の3rdシングル「good」を公開しました。この曲でも、SASAMIがゲストボーカルとして録音に参加しています。


Samira Winter(サミラ・ウィンター)は、プレスリリースを通じて「この曲は心酔させるものがある。ゲストとして参加したSASAMIは強い存在感と声質を持っていて、この曲の魅惑的な水準を引き上げてくれた」と話す。

 


『What Kind of Blue Are You?』はBar/None Recordsから10月14日にリリースされる予定です。アートワーク、トラックリストは以下の通り。

 

 

Winter 『What Kind of Blue Are You?』


 

Tracklist:

 

1.wish i knew

2.atonement feat.Hatchie

3.good feat.SASAMI

4.sunday

5.crimson enclosure

6.write it out

7.lose you

8.fool

9.mr. on-my-mind

10.kind of blue

 Weekly Recommendation   

 

Julia Jacklin 『Pre Pleasure』

 



 

Label:  Transgressive/Polyvinyl/Liberation

Release:  2022年8月26日


 

 

Review

 

今週の一枚として、紹介するのは、オーストラリアのシンガーソングライターのジュリア・ジャックリンの最新アルバム「Pre Pleaure」となります。既に、前二作のスタジオ・アルバムで大成功を収めたジュリア・ジャックリンは、オーストラリア国内での不動の人気ソングライターとしての地位を築きあげただけにとどまらず、国外でもその名を知られるようになってきている。



 

共同プロデューサーにマーカス・パキン(The Weather Station, The National)を迎え、モントリオールで録音された「Pre Pleasure」は、ジュリア・ジャックリンがカナダを拠点に活動しているバンド、ベーシストのベン・ホワイトリーとギタリストのウィル・キッドマン(ともにカナダのフォークバンドThe Weather Station)とチームを組んでいる。また、ドラマーのLaurie Torres、サックス奏者のAdam Kinner、プラハのフルオーケストラで録音されたOwen Pallett (Arcade Fire)のストリングスアレンジメントもいくつかの楽曲の中で取り入れられる。

 

ジュリア・ジャックリンはこのレコードの楽曲は、「書くのに三年かかったか、三分かかったかのどちらか」と報道資料を通じて説明しているが、少なくとも、彼女はここで敬愛する歌手、セリーヌ・ディオンの影響下にある心地よいポピュラーミュージックを展開している。

 

表面上では、これらの収録曲は、最近のトレンドに沿ったベッドルーム・ポップという形で提示されてはいるものの、それだけではなく、このシンガーソングライターの内面を表現するかのように、多彩な表現が込められている。そしてジャクリンは日常で体験した感情をそのまま様々なスタイル、ーーポピュラーソング、ギターロックーーとして表現している。それは時に、「Love Try~」で見られるように、重苦しいヘヴィーロックのような雰囲気を持って胸に迫ってくる楽曲もある。繊細で叙情的でありながら、ジュリア・ジャックリンの歌声、楽曲そのものは不可思議な現実感を兼ね備えている。これがなぜかについては、このシンガーソングライターの以下の言葉の中に現れている。



 

 

「人生を楽しむ前に、全ての仕事をしなければならないと感じることがよくある。曲の制作であれ、セックスであれ、友情であれ、家族との関係であれ、一生懸命に取り組めば、いずれ楽しめるようになる、と思っているのかもしれない。でも、そんなことはない。全てはすべては現在進行形なのだから」

 

と語るように、ジュリア・ジャックリンは、キャッチーなポピュラー・ソングを舞台女優のように明日を夢見て歌いながら、現在に根ざした生々しい直接的な感情表現を込めており、そして、それはときにかなり苛烈な表現性になっている。 もちろん、プラハのフルオーケストラのアレンジメントはジャックリンの高い作曲能力にドラマ性、ストーリー性を付加していることは確かだ。

 

オープニング「Lydia Wears A Cross」ではベッドルームポップのスタイルを取っている。しかし、歌は、常に内面と深くリンクするような形で行われており、夢想的な雰囲気を漂わせつつも、やはりリアリズムの方に重点が置かれている。その他、内省的なポピュラー・ソングとしてアルバムの中で鮮烈な印象を放つ「Ignore Tenderness」では、ギルバート・オサリバンのようなクラシカルなポップスに重点を置いた良質な楽曲で聞き手を魅了するが、ここでも内面を抉るようなかなり強い表現が込められている。



 

アルバムの中盤を彩るのは、近年のトレンドのオルタナティヴ・フォークに触発された楽曲が中心となっており、「Less Of Stranger」、「Moviegoer」「Magic」と一連の静かで内省的で心地よい流れを形作っている。これらの曲は、アルバム序盤と終盤をつなげる連結部に近い役割をもっており、作品全体にバランス感覚を与え、終盤にかけての流れを盛り上げるための引き、言わば助走のようなセクションを設けている。

 

アルバムの終盤部を形成する「Be Careful With Yourself」では、その流れを受け、高く、そして美しく音楽が完成へと向かっていく。このシンガーソングライターの曲のひとつの核心ともいえるクランチギターが心地よいドリーム・ポップと対比をなしながら、見事な融合を果たしている。この曲において、ジュリア・ジャックリンは再度、アルバム序盤のように直情的に歌ってみせることにより、大がかりなスケールを持つインディーロックアーティストとしての真価を示している。さらに、クロージング・トラック「End Of Freindship」で、映画音楽のようなワイルドかつ叙情的な雰囲気を漂わせ、プラハのフルオーケストラのゴージャスなストリングスアレンジの力を借り、このアルバムはドラマティックかつダイナミックなエンディングを迎えるに至る。

 

 

85/100

 


Weekend Featured Track  「End of A Friendship」

 



 

Photo: Pamela Pittky

カナダのインディーポップデュオ・Tegan and Sara(ティーガン・アンド・サラ)は、Mom+Pop Musicから10月21日にリリースされる10thアルバム『Crybaby』のニューシングルを公開しました。

 

この曲は「Faded Like a Feeling」と呼ばれ、「Fucking Up What Matters」と「Yellow」に続くシングルとなっています。

 

「この曲は、サラが言うところのこの新しいアルバムのCall It Offで、シンプルでストリップダウンした、エモーショナルなガッツポーズをする曲よ」と、Teganはこの曲についてInstagramに投稿しています。

 

「サラにもっと深く掘り下げるように言われ、ラブソングとして始まったこの曲は、全く違うものになった。

 

さらに今週のサブスタックには、「...時には、あなたが持っているものについて書くことは、あなたが失ったものについて書くことの半分も面白みがない」と書いている。

 

「これは、サラの未発表曲から私の好きな歌詞をいくつか引用したので、真のT&Sコラボのように感じられます。私たちはブリッジをデュエットで歌ったりもしています。この曲は秋にぴったりなのですが、もっと早く皆さんに聴いていただきたいと思いました」


 Melody's  Echo Chamber  「Emotional Eternal」

 

 



Label:Domino Recordings


Release:April 29,2022

 

 

メロディーズ・エコー・チャンバーとして活動するメロディー・プロシェは、フランス・パリを拠点に活動するソローミュージシャン。現在、パリからフランス・アルプス地方に転居して、生まれたばかりの子供、そしてパートナーと暮らしているという。

 

今作「Emotional Eternal」は、メロディーズ・エコー・チャンバーにとって、通算三作目のスタジオ・アルバムとなり、8曲+1曲という特殊な形態の二枚組盤です。レコーディングは、ストックホルム近郊にあるスウェーデンの森で、最初のレコーディングが行われ、Lars Fredrik Swahn、スウェーデンのプログレバンドDungenのメンバーReine Fiskeといった面々がレコーディングに参加。クラシック、ジャズの素養を備えるJosefin Runsteenが複数の楽曲でストリングスを担当、ジャズドラマー、Moussa Faderaもレコーディングに加わっています。

 

Melody Echo's Chamberは、サブ・ポップ所属のビーチ・ハウス、ステレオラブといったバンドと引き合いに出されることもあるアーティスト。いわゆるドリーム・ポップの文脈で語られる事が多いように思えますが、もちろん、このアーティストの持つ魅力はそれだけにとどまりません。最新作「Emothinal Eternal」では、それらのバンドに代表されるドリーム・ポップの色合いに加え、ビートルズの体現したサイケデリックポップ、チェンバーポップの要素を込め、大衆性と実験性の双方をバランスよく配置したトラックを親しみやすい形で提示する。ストリングス、チェンバロ、シンセサイザー、ピアノ、ギターを交え、表向きには大衆性に根ざした音楽とは裏腹に、きわめて複雑な構造をなす楽曲が展開されていきます。

 

このアーティストの最大の持ち味は、おそらく1960年代のフランソワーズ・アルディに代表される「イエイエ」、もしくは、セルジュ・ゲンスブールの全盛期のおしゃれなフレンチポップの影響下にある音楽、その要素を20世紀のフランスの映画音楽のドラマティックな雰囲気とセンスよく掛け合わせていること。このことは、本人が意識しているかいなかにかかわらず、そういった往年のフランスのポピュラーミュージック、パリ映画が最盛期を迎えた時代の継承者としての役割を果たすアーティストであるように思えます。

 

アルバムでは、英語、そして、フランス語の双方の語感の魅力がボーカルトラックとして存分に引き出されています。おそらく、それは、メロディープロシェという人物が国際的な感性を持つ人物であり、世界市民であるからでしょう。とりわけ、表題曲「Emotional Eternal」に象徴されるように、往年のフレンチポップスの持つ独特なスタイリッシュさ、エスプリの風味がほんのり漂っているのが、このアルバムの聴き所といえるでしょう。描かれる音楽のストーリーの中盤では、シンセ・ポップ、ドリーム・ポップ、シューゲイズ、アートポップ、サイケデリック、きわめて多彩な要素を交えた楽曲がめくるめくように展開されていく。

 

さらに、アルバムの一連の物語のクライマックスに向かうにつれて、それらの幻惑は強まっていくが、メロディー・プロシェは誰も想像しえないような驚くべき着地点を見出す。メロディー・プロシェは、フランスの音楽を作品のクライマックスに配置しています。世界市民であろうとも、やはり、フランス文化を心から敬愛しているのです。


クライマックスとなる「Alma」は、アルバムのハイライトの一つで、セルジュ・ゲンスブール、ジェーン・バーキン、フランソワーズ・アルディ、シルヴィ・バルタンらが生み出したフレンチポップ最盛期の甘くうるわしい哀愁のアトモスフェールに包まれています。フランス・パリの大衆文化が最も華やいだ時代を彷彿とさせる淡いノスタルジアが満載となっている。この年代の音楽をよく知る人にとっては、じんわりした温かみをもたらすことは言うまでもなく、フレンチポップを知らないという世代にとっても、なにかしら新鮮味を感じさせる作品となっています。

 

72/100

 




・Amazon Link


Lightning Bug

 

Lightning Bug

ライトニング・バグは、Audrey Kang、Kevin Copeland,Logan Mmiley、Ddane Hhagen、Vincent Pueloによって、NYで結成されたインディー・ロックバンドです。

 

結成当初は3ピース形態でバンド活動を行っていましたが、Ddane Hhagen、Vincent Puelo、が加入し、現在は五人編成となっています。

 

2015年、自主製作盤の「Floaters」を発表した後、これまでDinosaur.Jrや坂本慎太郎といったオルタナの大御所の作品リリースを行っているミシガンのインディー・レーベル"Fat Possum Records"と契約し、実質上のデビュー・アルバム「October Song」を発表。2021年には、同レーベルから二作目「A Color of the Sky」をリリースしています。

 

ライトニング・バグの陶酔感に満ち溢れた耳触りのよい音楽性を形作しているのは、フロントマンを努めるAudrey Kangの清涼感のあるボーカル、そして、温かく包み込むような質感を持ったポップセンスに尽きるでしょう。バンドサウンドの風味は、シューゲイザー、ドリーム・ポップの中間点に位置し、不可思議な幻想性がほのかに漂う。

 

特に、2015年に発表された自主製作「Floaters」は、2010年代のインディー・ロックの隠れた名盤の1つとして挙げておきたい作品です。

 

ライトニング・バグの主要な音響世界を構築するAudrei Kangは、既にリリースされた三作のスタジオアルバムにおいて独特な世界観を構築しており、同郷NYの日本人ボーカル"ユキ"の在籍するAsobi Seksuに近い、幻想的な質感をもったドリーム・ポップ・ワールドが展開され、そのサウンドの美しさというのは、バンド名に象徴されるように、宵闇のかなたに幻想的に漂う、夏のホタルの淡い瞬きにもたとえられます。

 

今後、アメリカのインディー・ロックシーンで脚光を浴びそうなキラリと光るセンスを持ったバンドです。

 

 

 

・「Floaters」 2015 1070382 Records DK2


Tracklist:

 

1.Lullaby No.2

2.Bobby

3.11 but not any more

4.Garden Path Song

5.Gaslit

6.The Sparrow

7.A Sunlit Room

8.Labyrinth Song

9.Luminous Veil

10.Real Love

 

 

 

ライトニング・バグの自主製作アルバムとなる「Floaters」。  この作品では荒削りながらもこのバンドの後の才覚の萌芽が見いだされます。後二作のアルバムと比べると、ドリーム・ポップというより、シューゲイザーの雰囲気が強く、Ride、苛烈なディストーションサウンドが鮮烈な印象を放っています。

 

しかし、 近年のこれらのジャンルに属するバンドと明確な違いが見いだされ、その独自性がこのバンドの印象を強固にしている。この作品で提示されるインディー・ロックサウンドは、刺々しいシューゲイザーサウンドでなく、温かく包み込むような労りをもったいわば癒やしのロックサウンド。1990年代に活躍した、アメリカの幻の伝説的ドリーム・ポップバンド、Alison's Haloに比する奇妙な温みを漂わせるものがあります。

 

もちろん、この作品「Floaters」の魅力はそういったシューゲイズサウンドにとどまらず、「The Sparrow」に代表されるクラシックピアノを使用した古典音楽、ロマン派の音楽への憧憬。「A Sunlit Room」に見受けられる電子音楽のアプローチを交えた新世代サウンドの追究性にあり。時代性を失ったようなサウンドの雰囲気は、聞き手にノスタルジアを与えてくれるはずです。 

 

 

 


・「October Song」2019 Fat Possum Records 


 

Tracklist:

 

1.(intro)

2.The Lotus Eaters

3.Vision Steps

4.The Luminous Plane

5.The Roundness of Days

6.The Root

7.I Looked Too long

8.September songs

9.Octorber Songs Pert.Ⅱ

 

 

 

ファット・ポッサム・レコードとの契約した後に発表されたデビュー作。前作に引き続きライトニングバグの主要な音楽的な骨格ともいえる、インディー・フォーク、シューゲイザー、テクノポップの3つの要素がより、強い色彩となって表れ出たかのような雰囲気も見受けられます。

 

今作において、Audrey Kangは、前作の音楽的な情景をなぞらえたわけでなく、ここで新たな情景をときには真実味を持って、ときには幻想性を携えて音楽という空白のキャンバスに異なるシーンを描き出しています。

 

その「音の絵」とも呼ぶべきニュアンスは、ポートランドを拠点に活動していたGrouperのインディーフォーク性に近い、暗鬱なアトモスフェールによって彩られている。それはリズ・ハリスの描き出すようなアンビエントドローンのもつアヴァンギャルド性に接近していく場合もある。

 

けれども、ライトニンバグは、今作品において、危うい寸前で踵を返すと称するべき絶妙なサウンドアプローチを図っていることに注目したい。グルーパーのような、完全なダークさにまみれることを自身の生み出す音楽性に許容するのかといえば誇張になってしまう。


この作品において、ライトニング・バグが描き出す音響世界は、徹底して幻想的な世界観でありながら、最初期の作品「Floaters」で、Audrey Kangが構築した陶酔的な恍惚、美麗な叙情性に彩られています。

 

その質感は、グルーパーのリズ・ハリスの描き出す情景とは全く対極に位置する。五、六曲目で、アンビエントドローンに近い曲調が一旦最高の盛り上がりを迎えた後、八曲目の「September Rain」では、嵩じた曲調に一種の鎮静が与えられ、アルバムの世界の持つ世界も密やかに幕を徐々に閉じていく。

 

今作品は、ギター・ロックの音響的な拡張性を試みた実験的作品ですが、そこまでの気難しさはなく、初めてこの作品に触れたとしても、何らかの親近感を見出してもらえるはずです。

 

 

・「A Color of the Sky」 2021 Fat Possum Records  

 

Tracklist:

1.The Return

2.The Right Thing Hard To Do

3.Spetember Song pt.Ⅱ

4.Wings Of Desire

5.The Chase

6.Songs Of The Bell

7.I Lie Awake

8.Reprise

9.A Color Of The Sky

10. The Flash

 

 

 現時点のライトニング・バグの最高傑作といえるのが、通算三作目となるアルバム「Color of the Sky」です。この作品も前作と同じくファットポッサムレコードから発表された作品です。

 

この作品は、アルバムアートワークに描かれた美しい青空に架かる虹が、実際の音のニュアンスの全てを言い表しているといえるかもしれません。前作の暗鬱さとは打って変わり、ぱっと雨模様の空が晴れわたったかのような清々しさに彩られ、何か、聴くだけで気持ちが晴れ渡るような楽曲が多く収録。また、音楽性の観点から言うなら、上記二作品に比べ、シューゲイザーサウンド、苛烈なギターロックサウンドの雰囲気は薄れそれとは正反対の流麗なドリーム・ポップサウンドをこの作品において、ライトニング・バグは完全に確立しています。


注目したいのが、Audrey Kangの歌唱法が美しくなったことです。Kangのヴォーカルは、大きく腕に包み込むかのような温かさが満ち溢れています。これを母性的な愛情と称するべきなのかは微妙なところですが、それに比する神々しい慈しみのような声質が上記二作に比べると、顕著に滲み出ている。


そこには、もちろん、ローファイ寄りのギターサウンド、まったりしたドラミングというこれまでのバンドサウンドが円熟味を醸し出したこと、それから、今作から、メロトロンやストリングスが導入された点が、ライトニング・バグの音楽に新鮮味を加え、さらに説得力あふれるものたらしめている主だった要因なのでしょう。

 

最初期からのインディー・ロックバンドとしての矜持を持ち合わせつつ、マニアックさという慰めに逃げ込まないのが見事です。ビートルズの後期のアートポップ性に近い質感をもった楽曲「The Return」、それから、何となく、穏やか〜な気持ちにさせてくれる「The Right Thing Is Hard To Do」といった楽曲は聞き逃がせませんよ。


また、表題曲「The Color of the Sky」において、既存の作品にはなかったストーリー性が加味されていることにも着目しておきたい。聴いていると、心がスッと澄み渡るような美しさに満ち溢れた作品。ドリーム・ポップやシューゲイズ、インディー・ロックファンは、是非とも聴いてもらいたい傑作の1つです。

 

 

 



・「Waterloo Sunset」 2020 Fat Possum Records


 

 

シングル盤についても、一作紹介しておきましょう。 2020年、ファット・ポッサムからリリースされた作品「Waterloo Sunset」は上記の最新作「A Color of the Sky」の呼び水となった楽曲で、美しい情景を目に思い浮かばさせるような傑作です。

 

昔の名歌謡を彷彿とさせるインディー・フォークの楽曲で、淡い哀愁やノスタルジアを感じさせてくれるでしょう。

 

ヒーリング・ミュージックではないのに、癒やし効果抜群。Audrey Kangの美しい包み込むような自然な歌声が魅力、悠久の時の果てに迷い込むかのような美しさに癒やされます。