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Mitki©︎lisa czech


NYのシンガーソングライター、Mitski(ミツキ)が新しいデモEPを独占的にリリースしました。

 

Rough Tradeの店舗、店頭、オンラインにて限定発売される4曲入りの『Stay Soft, Get Eaten: Laurel Hell Demos』は12インチレコードで12月に発売予定。ストリーミングやダウンロードは配信されません。Rough Tradeは今年のアルバム「Laurel Hell」の新しい "Ruby & White Bloom "カラーのビニール盤を在庫限り販売する予定。


このデモEPのリリースに関して、プレスリリースでは、次のように説明されている。"「Stay Soft, Get Eaten: Laurel Hell Demos' EPは、Mitskiの曲の核となる部分が、その年のアルバムに結実する前の、骨格となる形、そして進行中の作業として聴ける貴重な機会となるでしょう。"


Mitskiは、今年始めにDead Oceansから最新アルバム『Laurel Hell』を発表し、ビルボードトップアルバムチャートの1位を獲得した。レビューはこちらからお読み下さい。




Mitski 『Stay Soft, Get Eaten: Laurel Hell Demos』

 


Label:  Dead Oceans

Release:  2022年12月9日


Tracklist:

 

1.Valentine,Texas(Demo Version)

2.Love Me More(Demo Version)

3.Stay Soft(Demo Version)

4.Gride(Demo Version)

 

 

Rough Trade:

 

https://www.roughtrade.com/gb/product/mitski/stay-soft-get-eaten-laurel-hell-demos

 

Mitski  ©︎Ebru Yildiz


ニューヨークのシンガーソングライター、Mitskiが「Love Me More」のイギリス人エレクトロニック・ミュージシャン、Clarkによる新しいリミックスバージョンを公開しました。


現在、クラークは、母国のイギリスからドイツに移住し、ワープ・レコーズからドイツ・グラモフォンに移籍し、2021年には、これまでのテクノの方向性とは打って変わって、モダンクラシカルの領域を切り開いた話題作「Playground In A Lake」を発表しています。


本日、発表された「Love Me More」のオリジナルは、Mitskiが二月にリリースした最新作アルバム「Laurel Hell」に収録されています。世界的なシンガーソングライター、および世界的な電子音楽家のコラボレーションが実現したリミックス作品について、ミツキ、クラークは次のように述べています。


「Clarkの音楽、特に彼のアルバム『Death Peak』は、私に現代のエレクトロニック・ミュージックに目を向けさせてくれたものです。だから、リミックスを依頼されたとき、最初に思い浮かんだのは彼だけだった」


一方、クラークは、「今回のリミックスを依頼されたことは私にとって大きな喜びでした、ありがとうございます。ミツキの仕事は大好きだ。キックを作るのに何年もかかったよ。しばらくやっていなかったけど、すべてが蘇ってきたよ」と話しています。



ニューヨークを拠点に活動するシンガーソングライターのミツキが、先日行われたHuckのインタビューで、ライブの全パフォーマンスを撮影するファンについて発言した。多くの読者がご存知の通り、ミツキは以前、シンガーソングライターとして異質な注目を受けたことに戸惑いを感じ、一度は引退宣言を行ったが、その後、この宣言を取り下げ、今年リリースされた「Laurel Hell」で劇的な復活を果たしている。


Huck誌の最新号に掲載されたミツキのインタビュー(これは、彼女が2月にTwitterで共有し、その後削除したスレッドで、ファンが彼女のショーの大部分を撮影しているのを見ると「観客とパフォーマンスを行う私たちが同じ空間にいるのにもかかわらず、なぜか一緒にその場にいないような気がする」と書いていた出来事を受けて行われた)において、彼女は、ライブセットをスマートフォンなどで全撮影をおこなう節度を弁えないファンに彼女は率直に苦言を呈する。


最近のHuckのインタビューにおいて、ミツキは、Twitterにそれについて投稿したのは「甘かった」とし、「ライブでの電話に反対だと言ったことはありません。私がプロとしてパフォーマンスをしているかぎり、オーディエンスは自由にライブを録画したり写真を撮ったりしてきた。彼女は、もちろん、ライブショー全体を撮影する観客のことを指しているだけと付け加え、さらに、「ステージの上で、静止したままの携帯電話の海を見て、ショー全体の観客の顔が全然見えなくなる」ことに大きな落胆を覚えたと話している。


また、「少なくとも最初の2列目以上はセットを見ることができる」とわかっているため、座席が段状になっている会場で演奏することに、いくらか安心感を覚えると話す。さらにミツキは、Twitterで自分の考えを共有することは「安直」であったと語っている。「多くの人々は、自分の議論を進めるため、投稿した文章の一部を恣意的に選び、人々は自分の主張を通すために、文章の一部をよくない意図を持って選んで読んでいる」と主張している。さらに、ミツキは、彼女のツイートが、「人種、性別、セクシュアリティ、世代間対立に関するオンライン上の争い」で意図的に利用されたことについても話し、とある出版物が「私がショーでの電話使用に全面的に反対しているとほのめかすクリックベイトの見出し」を掲載したことを指摘している。それはもちろん、どちら側の人々に対してもあまり良い性質とは言いがたい話題をもたらすことになった。


ミツキは、最近のファンの間のリアクションの中で、最もがっかりしたのは、"私たちはショーにお金を払っているのだから、自分たちの好きなようにするのは当然であり、それについて何も口出しをしないで欲しい"という持論を掲げる人たちであったと述べている。さらに、ミツキは、「興行収入と引き換えに、サービスを提供している」ことにある程度同意しつつも、「真剣に心を通わせたいと思っている人たちから、直接、彼らにとって私は、その夜のために買っただけの商品であり、私がいる間はなんでも好きにしていいと思われていることがとても悲しい」というように表現している。


ミツキはさらに、本来アーティストは「他の人間とのつながりを感じる」ためにライブを開催していると表現した上で、「ステージに上がって、目の前にいる何人かの人にとって、私は踊っている人形のようで、彼らがお金を払っているコンテンツを得るために早く踊り始めた方がいい、そのような事実を意識するのは悲しいことだ」とインタビューで述べている。




Photo by Ebru Yildiz


アメリカ人シンガーソングライター、Mitskiのアルバム「Laurel Hell」がUS Billboardの「Top Album Sales」チャートで初登場首位を獲得、2月10日までにアメリカ国内で記録的なセールス、24,000枚の売上を記録しました。 2012年、Mitskiはデビュー作「Lush」をリリースし、これまでの最高のセールスウィークとなり、シンガーソングタイターのキャリアで初めてトップ10入りを果たしています。

 

「Laurel Hell」はシンガーソングライターMitskiが音楽業界からの引退を宣言した後の劇的な復帰作品。海外の音楽メディアによって称賛を送られた「Be The Cowboy」以来の作品となります。

 

ビルボードの「トップ・アルバム・チャート」は、従来のアルバム販売総数に基づいて、集計がなされるその週最も販売数の高かったアルバム作品のランク付けを行います。このチャートの歴史は、1991年5月25日に遡り、特に、その週のアルバムの販売数の目処を図るのに最適の指針となります。米ビルボードはSoundscan(現在はMRCデータ)からの電子的に集計された情報を利用し、このチャートの作製を行っています。


Dead Oceanから2月4日にリリースされたMitskiの「Laurel Hell」は、彼女のキャリアで初めてトップ40入りを記録し、またインディーズレーベルからプレスされた作品でありながら、アメリカの音楽市場で好調な売上を記録しており、USビルボードの発表するトップアルバムチャートで見事初登場一位を獲得しています。

 

さらに「Laurel Hell」は、この主要部門の他にも「Top Alternative Album」「Top Rock Album」「Vinyl Album」「TasteMaker Album」「Top Current Album」と複数部門で一位に輝き、アメリカの音楽業界にMitski旋風を巻き起こしています。グラミー賞のノミネートアーティストThe Weekndの「Dawn FM」と共に、アメリカ国内の音楽市場で大きな話題を呼び、トップセールスを競い合っており、次回のグラミー賞の候補にノミネートされることは間違いなしと言えるでしょう。

 

「Laurel Hell」は、先週末の時点で累計24,000部の売上を記録しています。そのうち、フィジカル盤の売り上げは、22000部、デジタル盤は2000部を記録。売上総数のうち、約17,000枚のレコードがLPとして販売されています。今回の販売総数は、2022年リリースされたアルバムの中で、最大の売上記録を樹立しています。

 

これは、英国の世界的なポピュラーミュージックシンガー、アデルに迫る勢いがあり、昨年、アデルの最新作「30」 が12月に35,000という記録を打ち立てて以来の快挙となります。

 


Mitski

 

ミツキ・ミヤワキはニューヨークを拠点に活動するシンガーソングライター。日本生まれで、アメリカ人と日本人のハーフである。

 

幼年期から父親の仕事の関係で、コンゴ共和国、マレーシア、中華人民共和国、トルコ、様々な国々を行き来する環境の中で育った。その後、ニューヨークに渡り、ニューヨーク州立大学バーチェス校で音楽を専攻、ベースメントショーをはじめとするパンクシーンでミュージシャンとしての経験を積んだ。

 

アメリカの音楽メディア”Pitchfork”は、楽曲「Your Best American Girl」Best New Trackに選出し、いち早くこのアーティストのスター性を見抜いた。その後、Rolling Stoneで知っておくべき10人のアーティストに選出され、シンガーソングライターとして注目を浴びる。スタジオ・アルバム「Puberty 2」はTime誌や主要な音楽メディアの「Best Album of 2016」に選出されている。2016年に行われたUSツアーは好評を博し、ニューヨーク、ボストン、フィラデルフィアの公演すべてソールドアウトとなった。

 

ミツキのサウンドを形作る上で欠かさざる人物は、 大学時代の友人であり、過去全てのタイトルに関わってきたパトリック・ハイランドである。これまで、すべての楽器を彼とミツキの二人で演奏し、ミキシング、マスタリング、ジャケットのデザインにいたるまですべてふたりで行ってきている。


また、日本人の母親の影響で、日本のJ-POPに深い造詣を持っており、影響を受けたアーティストに、松任谷由実、山口百恵、中島みゆきを挙げている。その他にも、インスパイアされたアーティストとして、M.I.A、Bjork,Mariah Carey、Mica Levi,Jeff Buckley、椎名林檎らを挙げている。

 

 


 

「Laurel Hell」 Dead Oceans


 







Tracklist

 

1.Valentine,Texas

2.Working for the Knife

3.Stay Soft

4.Everyone

5.Heat Lightning

6.The Only Heartbreaker

7.Love Me More

8.There's Nothing Left Here for You

9.Should've Been Me

10.I Guess

11.That's Our Lamp



アメリカ合衆国東部に自生する月桂樹のバラ、それは、美しい花弁と豊かな緑色の葉を有している。愛らしさと毒素を含み、枝分かれしているこの植物を、地元の人は「Laurel Hell」と呼んでいる。毒素を含んだ美しいバラ。それはミツキの新作の名にぴったりな表現と言えるでしょう。

 

日系アメリカ人シンガーソングライター、Mitskiは、前作「Be The Cowboy」をリリースするまもなく、音楽メディアから絶賛を浴び、ツアーに出た後、2019年の秋、一度は音楽業界からの引退を決意した。それは、ポピュラーシンガーソングライターとして過分な注目を浴びたことに依るものだった。

 

 

この時のことについて、Mitskiは、ローリング・ストーン誌のインタビューにおいて以下のように話しています。

 


「世界が私をこの立場においたとき、私は世間の関心と引き換えに、自分自身を犠牲にすることになる取引に応じたことに気がついていなかった」

 

 

こういった暗喩的な表現を使ったのには理由があり、ミツキは、熱狂的なファンがあまりに個人情報を得たいと望んでいることを感じ、それ以来、ソーシャルメディアを完全にシャットアウトし、世間の喧騒や注目から一定の距離をとることを望んだ。しかし、ミツキ・ミヤワキは音楽がみずからの人生にとって欠かさざるものと気が付くまでにはそれほど時間を要さなかった。

 

Mitskiの新作アルバム「Laurel Hell」に収録されている楽曲のほとんどは2018年以前に書かれ、COVID-19のパンデミックのロックダウン中に録音が行われた。その間、ミツキは世間から一定の距離をおいた。その制作背景を受けてか、以前の作風より内省的な思想が反映された作風となった。


アルバムは三十分の長さで驚くほど簡素なポップスで占められているため、以前からのミツキのファンはこの作品について刺激性が少し物足りないと考えるかも知れません。それでも、このアルバムで展開される1980年代のカルチャー・クラブ、デュラン・デュラン、ティアーズ・フォー・フィアーズといったディスコポップを彷彿とさせるミツキらしい妖艶な雰囲気を持った楽曲群は、聞き手に懐かしさを与えるとともに、癒やしさえもたらしてくれることは事実でしょう。

 

この作品では、ミュージックスターとして注目を浴びることへのミツキの戸惑い、大衆という得体のしれぬものに対する恐怖を克服しようとする試みが音楽を介して表現されているように感じられます。それは、言い換えるなら、ディスコポップ/シンセポップというキャッチーな形質を表向きには取りながらも、その深淵を覗き込んでみると、哲学的なメタファーに近い概念に彩られています。「Love Me More」「The Only Heartbreaker」「Stay Soft」といったシンセ・ポップの色合いが強い楽曲群は、表面上では親しみやすいポピュラー・ミュージックでありながら、その内奥には、音楽という抽象概念を通して、生々しい内的世界が描き出されているのです。

 

音楽というきわめて抽象的な世界において、ミツキは今回、内的な恐怖を克服しようとするべく、いくつかの楽曲制作において、歌をうたうこと、ミュージックビデオでバレエダンサーのように踊ることにより、大衆の注目や関心という見えづらい恐怖を乗り越えようと試みている。それは目に見えないものにやきもきする現代社会での生き様を反映しているようにも感じられます。

 

そして、この三十分というスタジオアルバムに収録されているポピュラー音楽は、そういった現代的な気風を反映しながら、ひとつらなりの妖艶な物語として進行していきます。山あり、谷あり、そういった幾つかの難所を乗り越えた先に見えるのが「I Guess」という、清涼かつ純粋な境地です。「I Guess」という、薄暗がりにまみれていた真実を見出した瞬間、このスタジオアルバム作品が世間の評判よりもはるかに傑出したものであることが理解できるのです。

 

2022年2月4日にインディーズレーベル”Dead Oceans”からリリースされた最新スタジオ・アルバムにおいて、ミツキ・ミヤワキは、世間の関心や評価を越えた、自分なりの答え、音楽を通して納得できる最終的な結論を見出したようにも思えます。それは、ミツキ自身がプレスに対して公式に語っているように、いくつかのドラマティックな物語の変遷、ときに、地獄的な苦しみを経巡りながら内省的な旅を続けたのち、「Laurel Hell」と銘打たれた音楽の物語は、その最後の最後で「勝ち負けとは関係のない、”愛”という純粋な感情」という抽象的結論へと帰結していくのです。

 

今回、アメリカ国内で最も期待される日系人シンガーソングライター、ミツキ・ミヤワキが提示した新たな概念は、この世には、勝ちや負けを超越した普遍的概念が存在するのだということをはっきりさせました。これは旧時代の概念が既に古びてしまったことの現出であり、このスタジオアルバムを聴くことは、苛烈な競争社会に生きる現代の人々にとって、癒やしや安らぎにも似た不思議な感覚を与えてくれるはずです。