Fontaines D.C.が昨夜(5月7日)、ジミー・ファロン主演のザ・トゥナイト・ショーに出演し、最近のシングル「Starburster」をライブパフォーマンスした。この曲は次作アルバムに収録されている。2022年の『Skinty Fia』に続くアルバムは、XL Recordingsから8月23日にリリースされる。


Fontaines D.Cはアイルランドのミュージックシーンを代表するバンドで、来日公演も行なっている。最新作をリリース後、メンバーのプライベートのこともあり、バンドは少しお休みしていた。一方、ボーカルのグリアン・チャッテンだけは、昨年、フォークミュージックを中心とするアルバムをリリースしている。


バンドは今年に入り、XL Recordingsとライセンス契約を交わし、再出発。プロジェクトの手始めとなるのが今夏にリリースされる『Romance』である。新作について、グリアンは日本の漫画/アニメ「AKIRA」にインスピレーションを受けたと語っている。


Fontaines D.Cの音楽性についても若干の進化の過程が見出せる。これまではヘヴィーなポストパンクが彼等の特徴であったが、ニューシングル「Starbuster」ではより一層ダンサンブルな音楽性が強まった。メロトロンの導入については盟友マーダー・キャピタルからの影響なのか。ボーカルループをかけたりと、サウンド面での工夫が加わっている。その他、スポークンワードに近いグリアンのボーカルスタイルはファンテインズD.Cの新たなストロングポイントになりそうだ。ドラマティックな音楽性が加わったことで、今度は少しカサビアンに近づいてきている!?



Le Makupは5月15日に発売予定のニューアルバム”予感”の収録曲「なんで」を先行リリースした。K-POPを思わせるモダンなポップソング、ヒップホップをベースにしたローファイなど、多角的な音楽を取り入れるシンガー/プロデューサー。以前、Pitchforkがレビューで取り上げている。

 

シンガーソングライターは関西学院大学の出身であり、ニューシングル「なんで」は大阪の街をセンチメンタルに歌っている。ミュージシャンはこの曲に関して次のように説明しています。

 

見えないとこに傷を隠す。誰にも触れられないように、それでも恥じずに。
大阪の南、太陽の西を見つめる。目には見えないすべてを真実として。


大阪の郊外。ひとりで歩く自分のための歌、ずっと話してる頭の中。よく泣いてるけど別に、涙もろいだけで。気に入った人がいたら話してみたい。あんまり目見て話せないけど。

 

また、アーティストは、ニューアルバム”予感”のリリースを記念し、5月21日に渋谷WWWでのワンマンライブを予定してます。 こちらの詳細についても下記よりチェックしてみて下さい。

 

 

Le Makeup 「なんで」 ーNew Single

 

Digital | PURE009  | 2024.05.08 Release
Released by AWDR/LR2

PRE-ADD/PRE-SAVE:https://ssm.lnk.to/Nande

 

 

Le Makeup「予感」ー New Album

 



Digital | PURE010  | 2024.05.15 Release

Released by AWDR/LR2

 

PRE-ADD/PRE-SAVE: https://ssm.lnk.to/Yokan_

 

 

 
Le Makeup One-Man Live "予感"


Date| 2024.05.21 [Tue] Open/Start 19:00/20:00
Venue| WWW (Shibuya, Tokyo)
Act| Le Makeup (Oneman Show)
Adv.| 3,000 Yen (Tax in) +1D
Door| 3,500 Yen (Tax in) +1D
Ticket| LivePocket [ https://t.livepocket.jp/e/lemakeup ]


Information| WWW [03-5458-7685]



ソロとバンドセットで2020年に出した「微熱」というアルバムの曲から新しく出すアルバムの曲まで。もっと前の曲もやるかもしれないです。

 

知ってる人も知らない人も、この日聞いてもらえたら自分がどんなこと考えてる(考えてた)のかわかってもらえる気がする。わかる必要が皆さんにあるのかは置いといて。

 

絶対なにかを起こすとか、だれか救うとかそんなこと言う気ないけど、5月21日WWWに来てくれたら僕がパフォーマンスしてると思う。それだけは約束できそう。こんな機会待ってたから嬉しいし、楽しみです。ーLe Makeup


Le Makeup:

シンガー/プロデューサー。関西学院大学在学中に作曲へと本格的に取り組みはじめ、以降国内外の様々なレーベルから作品を発表する。

2020年にアルバム「微熱」をリリース。中国・韓国・オランダ・デンマーク・ドイツでもパフォーマンスを行う。

2023年2月にDove、gummyboy、JUMADIBA、Tohji、環Royが参加したアルバム「Odorata」をリリース。このアルバムはPitchforkでレビューで取り上げられ話題となった。

2024年5月15日にニューアルバム「予感」のリリースと5月21日にWWWにて初のワンマン「予感」を開催が決定している。

・チャック・ベリーと1955年以降の数年間 クロスオーバーの流れを作る



 

ロック・ミュージックの成立に関しては、どちら側の観点からその音楽を検討するかによって変化してくる。例えば、エルヴィス・プレスリーのようなミュージシャンを思い浮かべる人ならば、ロックはカントリーやウェスタンの延長線上にある音楽と言うかもしれない。それとは正反対に、リトル・リチャードやチャック・ベリーを最初のロックのアイコンとして見るなら、当然、ゴスペル、ブルース、ロカビリー、ドゥワップの以降の音楽、及び、ブラックミュージックの重要な定義である”ダンスカルチャーの中に組み込まれた音楽、及びその文化形態”と言うはずなのだ。

 

この場合はロックではなくて、厳密に''ロックンロール''という今や廃れかけた言葉を使用する必要があるかもしれない。ロールというのは”転がす”の意味で、つまり、2ビートの音楽の原始的なスタイルを示すと同時に、ダンスカルチャーの一形態のことを示唆しているのである。そして、もし、エルヴィス・プレスリーをロックの先駆者として解釈するならば、当然、SUNレーベルのリリースやヒット・ソング、チャートの推移データを検討する必要がある。もしエルヴィスから話を広げる場合は、音楽ビジネスや業界の形態の動向を度外視することは出来ない。

 

他方、もし、チャック・ベリーをロックの先駆者としてみるなら、彼の全盛期である1955年からの数年間の軌跡を追っていく必要がある。しかし、ロックが白人音楽のものなのか、それとも黒人音楽のものなのかというのは、ナーバスな問いで、いつまで経っても結論が出そうもない。これはバスケットボールとベースボールのどちらが凄いかという無益な論争にもよく似ている。どちらも凄いで良いのではないだろうか。少なくとも、ロックはどちらの音楽でもあるというのが著者の拙い私見なのである。

 

音楽のセンセーショナル性やスター性では、リトル・リチャードやプレスリーに軍配が上がるに違いない。しかし、私自身がチャック・ベリーがロックミュージックを概観する上で重要視したいのは、彼の音楽がロックの基本的なスタイルや素地を作ったからなのではなく、単純に彼が前の時代のマディー・ウォーターズからギターの演奏の薫陶を受けており、ベリーがモンゴメリーのような優れたプレイヤーだからである。そしてベリーの音楽は、ブラックミュージックとしてもクールだ。それはなぜなのか? それは彼がマディー・ウォーターズのバックバンドで演奏した経歴があり、いわゆるサポート・メンバーからスターダムへとのし上がった人物だからである。そして彼のロックの系譜の中には、やはりブルースの泥臭さがあるというべきなのだ。

 

チャック・ベリーは一貫して、ギタープレイヤーとして、シカゴのブルースマンや、それ以前のブルージャズのギタリストに習って、ギブソンの大型のカスタムギターを使用してきた。これは晩年になっても不変だったはずである。少なくとも、ベリーの頭の中には自分が単なるロックで終わったミュージシャンではなく、普遍的なジャズギタリストやブルースマンと同じように”時代に古びないプレイヤー”として見てもらいたいという思いがあったのではなかったか。

 

 

 

 チャック・ベリーの軌跡

 

 1928年10月18日、チャック・ベリー「本名: チャールズ・エドワード・アンダーソン・ベリー)は、カルフォルニアのサンホセに生まれたとされている。

 

ただし、これは俗説に過ぎず、 セントルイスの出身という説もある。すくなくとも、ベリーは幼年時代にミズーリ州に移り、そして少年時代を過ごしたと言われている。

 

ギターを演奏するようになったのは、中学時代で、卒業後、紆余曲折を経験し、ミュージシャンを志すようになった。彼はその後、当時、ブルースの聖地であったシカゴへ向かい、マディー・ウォーターズと出会った。その後、ベリーはウォーターズのバックバンドで演奏をはじめた。これがチャック・ベリーのプロミュージシャンとしての出発だった。そしてシカゴの名門のブルースレーベル、CHESSのオーディションを受け合格。チャック・ベリーはソロアーティストとしての契約にこぎ着けたのだった。

 

チャック・ベリーは、その後の2年間で驚くべき多作ぶりを見せている。1955年8月20日にはデビュー・シングル「Maybellene / Wee Wee Hours」 を発表した。この曲はベリーにとって最初のチェスレコードの録音だったが、驚くべきエフェクトを音楽業界に及ぼしている。そして彼の音楽はポップとして受けいれられることになった。いきなり、全米ポップチャートの五位にランクインし、チェック・ベリーという代名詞を広める要因ともなったのである。また同年、ベリーは同じくシングル「Thirty Days/Together」を発表した。惜しくもこのシングルは、ヒット作とはならなかったが、少なくとも、彼の知名度を上昇させる要因となったと見て良さそうである。

 

1955年は音楽評論の観点から言うと、ロックンロールが始まった年と言われることが多い。例えば、アメリカでエルヴィスがSUNレーベルに所属していた時代で、まだこの頃にはロックブームははじまっていない。もちろん、全米を代表するようなスターは誕生していない。さらに、厳密にいえば、のちのクロスオーバー現象もまだ起こってはいなかった。最初のブームが起きたのは、エルヴィスがRCAと契約した翌年であると言われている。ただ、この頃のチャック・ベリーの音楽は、まだ以降のような洗練されたスタイルと言い難かった。つまり、彼の音楽は、2ビートのシャッフルが基本であり、ロカビリーの延長線上にあったのである。そしてロカビリーは、カントリー/ウェスタンが派生したものであるというのが一般的な説である。つまり、ロックの最初は、ロカビリーをどのようにして次のモダンなスタイルに繋げていくのかがミュージシャンの間での論点だったわけだ。サム・フィリップスをはじめとするSUNのブレインは白人側からこの点に着目し、ベリーは黒人側からこの点を注目していたのだった。

 

ロカビリーというジャンルは、現在ではパンクと融合して”パンカビリー”というジャンルに転訛している。歌詞にも、現代に通じる特徴があり、ごく普通に現代のラップのようなスラングを使用していたという。その中には、少し際どい表現もあり、セクシャルな表現も散りばめられていた。ところが、ベリーはその限りではなかった。彼はどちらかといえば、十代の青春や純粋さを歌ったエバーグリーンな表現をロック・ミュージックに乗せて情熱的に歌ったのである。彼の歌詞のテーマは現代のラップミュージックにも近いもので、思春期の悩み、欲望等をストレートに表現していた。

 

 

・ロックンロールの最盛期

 

1956年に入ると、ロックンロールはアメリカで全国的な人気を獲得するようになった。その流れに乗って、チャック・ベリーはこの一年間で四作ものシングルを発表している。そのなかで彼のヒット作も誕生した。


「No Money Down / Download Train」、「Roll Over Beethoven/ Drifting Heart」、「Too Much Monkey Business/ Brown Eyed Handsome Man」、「You Can't Catch Me/Havana Moon」である。

 

これらのタイトルはカントリーのようなタイトルもあるが、「Roll Over Beethoven」、「Too Much Monkey Business」のような以降のクラシックなロックのヒントになり、ウィットに富んだタイトルがある。

 

このなかで、6月30日に発売された「Roll Over Beethoven」はチャック・ベリーの代表曲であり、以後のロックのクラシックとなるが、実際は、商業的にはいまいち成功していない。このシングルは発売当初、全米チャート29位に一週間だけランクインしただけにとどまった。後にヤードバーズやホリーズがカバーした「Too Much Monkey Business」はチャートインすらしていない。いわばミュージシャンズ・ミュージシャンの代表作にみなされている曲である。

 

1956年は、エルヴィスがRCAとサインし、ローカルなロカビリースターとして名を馳せた年だった。むしろチャック・ベリーのような黒人のロックミュージシャンは、チャートや商業主義とは別軸にあるロックブームの基礎をリリースと合わせて着実に積み重ねていった印象がある。特に、この年代のベリーの音楽的な功績には注目すべき点がある。ブルース/R&Bを白人のウェスタン・スイングのリズムと掛け合わせ、さらに以降のロックの重要なリズムとなる4ビートと重ね合わせ、最終的にギターソロの原型をその中に付与することになった。これは間違いなく、彼がシカゴのブルースシーンのバックバンドで活躍していたのが理由であり、セッションとしてのソロが後のロックやメタル、ハードロックの布石となったことは想像に難くない。 また、ベリーの歌詞にも、個性的な特徴がある。彼はオリジナルソングに、のちのラップに見受けられる韻を率先して取り入れたりと、人種的な枠組みにとらわれない自由な歌詞や歌の表現方法を模索していたのである。

 

 

1957年、 ロックはついに最大のムーブメントと目されるようになった。この年、ベリーは三作のシングルを発表している。「School Days/ Deep Feeling」、「Oh ,Baby Doll /Oh, Juanda」という青春やナーバスなラブソング、そして「Rock’N' Roll Music /Blue Feeeling」というブルースの後の時代にこの音楽を位置づける彼の考えが反映されたものまである。そしてチャック・ベリーは、この年、音楽映画にも俳優として出演を果たし、まさにロックブームの人気に一役買った。ロックミュージックは文字通り、最盛期を迎えるが、これが保守層の反感を買ったのは周知の通りである。特にロックンロールは、のちのビートルズが登場した時代のような感じで、”不良性を誘発する”とされ、ポピュラーシーンから締め出しを食らうことになった。先鋭的なものや前衛的なものが受け入れられるまでには、それ相応の時間を必要とするのである。

 

エルヴィスがテレビ出演を果たすと、88%の視聴率を獲得し、彼は押しもおされぬスターへと上り詰める。しかし、純粋な音楽的な価値は大きく変わらないにもかかわらず、チャック・ベリーはこれ以降の年代に受難の時を迎える。ちょうどこの年から黒人排斥運動が沸き起こった。つまり、彼のようなロックは保守層からの反発を受け、「黒人音楽が白人文化を堕落させる」というのが社会的なコモンセンスとなったのである。 ここには、音楽が、政治や社会以上の影響力を持つようになることへの社会的な恐れが反映されている。これもまたレノンがプレスに対して過激な発言を行い、ボイコットを受けた時代のエピソードと重なるものがある。そしてこれは、見方を変えると、チャック・ベリーをはじめとする黒人音楽が、ひとつの社会現象のようになりつつあり、それが保守層の反感を呼び、排斥運動に繋がっていったとも解釈出来る。

 

 

・ロックミュージックの2年のブームの終焉 クロスオーバーへの流れ

 

 




こういった流れのなかで、チャック・ベリーはヒットソングに恵まれなかった。58年と翌年の2年間にかけて、彼は以前と変わらぬ多作ぶりを見せ、実に10枚ものシングルを発表している。

 

ポップチャートの上位には白人のスウィートなポップスが独占することになり、本格派ミュージシャンとしてのベリーの音楽は本物であるがゆえに受け入れられがたかったのか。しかし、この2年の間において、のちのロックの定番曲「Johhny B Goode」が全米チャートの5位を記録し、他にも「Sweet Little Sixteen」が2位を記録しているのはさすがと言えるだろう。他にもこの時代、チャック・ベリーは同じく定番曲「Back In The U.S.A」をリリースしている。 


評論筋によると、チャートでは最大の成功を収めたとはいいがたいが、この2年間はチャック・ベリーの代名詞的な曲が多く、この時代にこそ、彼の音楽の独自の世界観を形成したとみなされているようだ。そして、1950年代後半に差し掛かると、最初のロックブームは終焉を迎え、以降のT-RexやNew Yorlk Dolls、あるいはデヴィッド・ボウイのような最初期のグラムロック/グリッターロック、及び、Mott The HoopleやKinksのようなハードロックの元祖ともいうべき原初的なハードロックシーンへと受け継がれていくことになった。


一般的には、チャック・ベリーの伝説もこの2年の後、ロックブームの鎮火とともに1958年から以前のような切れ味が見られなくなった。そしてスキャンダルに見舞われ、女性との揉め事によりムショ暮らしを強いられる。同時に同じく、ロック・ミュージックの代名詞的な存在であるリトル・リチャードもまた”ゴスペル宣言”を行い、異なる音楽へシフトチェンジを図る。唯一、この年代で活躍したBo Diddley(ボ・ディドリー)にしても、彼独自のビートがあったが、どちらかと言えば、古典的なR&Bの流れに組み込まれていくことになった。同年代から、プラターズを始めとするいわゆるコーラス・グループやドゥワップの一派が登場したことにより、ブラックミュージックとしてのロックンロールは、わずか2年でその役割を終えることになった。


その後のポップ・ミュージックの動向は上記の人種間の音楽的な性差が薄くなり、俗に言うクロスオーバーという考えが出てくる。以降の年代には、ストーンズのリチャーズがブルースやブギーからの音楽的な影響を掲げたり、エリック・クラプトンがブルースへの回帰を果たしたり、あるいはボウイがソウルや古典的なR&Bをポップの文脈の中に取り入れたりという流れが起こった。

 

音楽のクロスオーバーという考えは1960年代に始まり、それ以降の20年、もしかすると30年のポピュラー音楽を象徴づけることになったが、それと同時に弊害もあった。音楽が作品のクオリティによって評価づけられるようになったのだ。この60年代に起きたのは”評価概念の平均化”であり、その考えを基底に音楽も制作されるようになっていったのである。そして現代の音楽業界にいたっても、それはストリーミング再生数という指標に取って代えられたに過ぎない。


チャック・ベリーについては、60年代以降の作品に関しては一般的な評価はそれほど芳しくない。しかし、それはもしかすると、以降の評価概念の平均化という考えに彼の音楽がそぐわなかっただけなのかもしれず、カタログの中にはもしかすると、時代に古びない普遍的なものが残されている可能性もある。60年代以降のベリーの作品もあらためて再検討する必要がありそうだ。

 

©Amy Fort

Colaがニューシングル「Albatross」をリリースした。6月14日に発売される『The Gloss』からのニューシングル。

 

モントリオールにルーツを持つバンドColaは、元OughtのメンバーであるTim Darcy「ティム・ダーシー)とBen Stidworthy「ベン・スティッドワーシー)によって結成された。新進気鋭のポストパンクトリオとして注目。彼らは現在破竹の勢いで快進撃を続けるFire Talkに所属している。

 

Colaのメンバーは、U.S.ガールズやブロディ・ウェストなど、トロントの活気あるジャズ/エクスペリメンタル・シーンでセッション・ミュージシャンとして活躍し、コラボレーターとしても需要の高いエヴァン・カートライトが、2019年の初練習後に加入。結成当初から、彼らはDischordやSST時代のd.i.y.エチシックを発展させ、ドラム/ベース/ギターのミニマルなパレットから強力なサウンドを生み出し、愛嬌のある一発芸や社会的なコメントを散りばめてきた。


歌詞は繰り返し聴くことで深い意味が見えてくる。デイヴィッド・バーマンの詩によるガレージ風の軽快な文章は、UKのファースト・ウェーブ「ニューウェーブ)やダニーデン・サウンドの軽快な側面と同様にインスピレーションを付与している。その結果、ある時はまばらで詩的であり、またある時はスリリングでフック満載の楽しい時間を呼び起こす。例えば一夜限りの関係を描いた生意気なロマンチック・スケッチは、当てこすりやジャーナリズム・トークに溢れ、セルフ・パロディになりかけている。が、その結果、軽快さと誠実さが見事に融合している。
 

 

最新シングルについて、「この曲は、最終的な形になるまで、いくつかの人生があった」とバンドのティム・ダーシーは声明で説明している。

 

「後のDeep in Viewのツアーでは、歌詞を変えてもっと速いバージョンを演奏した。最終的にスタジオに入った時、ベンのオリジナル・デモを再検討し、スローダウンしてヘヴィなフィーリングを再び取り入れることにしたんだ」

 


「Albatoross」

 

©Sydney Tate


ブルックリンのパンクユニット、THICKがニューシングル「Mother」をEpitaphからドロップした。このシングルは、3月にリリースされた「Father」に続編となる。この曲のビデオは以下よりご視聴下さい。


これまでOiパンクや、ストレート・エッジ、Nikki And Covettesを彷彿とさせるガールズ・パンク等、多様なロックの形を探求してきたThick。近年では、曲のメロディー性とシンガロングに重点を置いてソングライティングを行っている。最新シングルも昨今の作風の延長線上に位置し、エッジの効いた痛快なパンク・アンセム。

 

"Mother"は、その役割に陥ることにうんざりしている全ての人間関係の世話役へのエール。「愛と気遣いで関係を始めてから、相手の傷を背負い、親代わりとなり、自分自身を癒す以上に相手を癒したいと思っている。簡単に言えば、私はあなたの母親ではなく、あなたの恋人なのです」


ミュージックビデオは、彼女たちの友人でブルックリンのアーティスト、シドニー・テイトによって撮影された。説明は次の通り。「ミュージック・ビデオは、曲の中で共有されているフラストレーションを明確に表現しているわけではありませんが、室内のインテリア、身振り手振り、ファッションについては退屈な主婦の趣があります。重厚なテーマのインテリアと、屋上で大音量で演奏する、期待の重圧から解放されたバンドの生き生きとしたシーンが対照的だ」

 

 

「Mother」

 

Half Waif(ナンディ・ローズ)はウガンダ出身で、マサチューセッツ州で育ったシンガーソングライター。マサチューセッツにいた頃からソングライティングを始め、ケニオン大学で学習している。また、ハーフ・ウェイフはニュージャージーのインディーロックバンド、Pinegroveの創設メンバーとしても知られ、2014年頃から現在のソロ名義でのリリースを行っています。

 

今回、ハーフ・ウェイフは「Ephemeral Being EP」の制作を発表しました。2022年の「Portraits EP」に続く5曲収録のEPは、ANTI-から5月31日に発売されます。先行シングル「Big Dipper」がアルバムの発表と合わせて配信されています。本楽曲は、モダンクラシック、インディーロック、エレクトロニックをアートポップとして解釈したユニークなシングル。

 

「この曲は、答えを探して、何も見つけられず、また、探すことを歌った曲です」とハーフ・ウェイフことナンディ・ローズは声明の中で「Ephemeral Beingー北斗七星」について語っています。


「この曲は、私が自分の体からなかなか抜け出せずにいて、さまざまな悲しみに圧倒されていた時期に書かれました。ちょうど亡くなったばかりの仏教僧であるティク・ナット・ハンと、彼の『継続』という考え方にインスパイアされた。私たちは続いていく。この肉体は本来の私ではないのだから、一緒に笑い、私の手を握り、またすぐ再会できるように、さよならを言いたい」

 

 

 「Big Dipper」


 

 

Half Walf 「Ephemeral Being」EP


Label:ANTI-

Release:  2024/05/31

 

 

Tracklist:

 

1.Service

2.Big Dipper

3.Heartwood

4.Ephemeral Being

5.Dreaming of Bears

 

 

Background:

 

冬から春にかけて録音された『Ephemeral Being EP』は、生命のはかなさに目を向けると同時に、自然とそのサイクルの継続を祝福しています。全5曲は、Half Waifが今年後半に発表する作品群の第1弾で、ローズは自然界に安らぎと希望を見出す。Heartwoodでは、彼女は自分自身を古代のオークの木に見立て、「Dreaming of Bears」では、仏教僧ティク・ナット・ハンの継続の思想にインスパイアされ、死後も続く愛する人の微笑みを川のカーブのように想像している。

 

リード・シングルの 「Big Dipper 」は、彼女が宇宙への信頼を失い、絶望へと落ち込んでいく。「誰も外を見ていないような気がしてならない」しかしおそらく、彼女はこうした自然への呼びかけの中で、神聖なものは別の場所にあるということを示唆している。

 

コンテンポラリー・クラシックとインディー・ロックやシンセ・ポップを大胆に融合させたアレンジに彩られた激しくも繊細なEPの楽曲は、砂岩、スズメ、海を目の前にした私たちはみな儚い存在なのであることを示し、音楽自体もスケールの大きさを思い起こさせる。人生の混乱に麻痺しそうになる時、私たちの信念が揺らぐ。最も絶望的になるとき、自然は私たちに明るいヴィジョンを与えてくれる。「人生は続く」とローズは発見する。「時にはもっと広い視野が必要なのかもしれない」ー Anti

Anour Brahem(アヌアル・ブラヒム)

Anour Brahem © ECM Records


Anour Brahem(アヌアル・ブラヒム)はチュニジア出身の作曲家、及び、ウード奏者である。(ウードーOud)とはリュート属に分類される撥弦楽器。中東から北アフリカのモロッコに及ぶアラブ音楽文化圏、及び、ギリシアで使用される。ウードの楽器の形状は、中世ヨーロッパのリュートや日本の琵琶に似ており、事実これらの楽器の近縁に当たるとされる。アヌアル・ブラヒムはウード演奏の第一人者で、これまでチュニジアの音楽とジャズの音楽を融合させてきた。

 

彼はソロアーティストでありながら、ジャズアンサンブルとして作品をリリースする場合が多い。アンサンブルの中には、バス・クラリネット奏者のKlaus Gesing、ベーシストのBjorn Meyer、同じく中東の楽器であるDarbouka(タブラ)を演奏するKhaled Yassine(カリド・ヤシン)等とレコーディングに取り組んできた。

 

アヌアル・ブラヒムは、チュニジア・チュニスのメディナにあるハルファウイーン地区で生まれ育った。チュニジア国立音楽院でウードの演奏を学び、その後、ウードの巨匠アリ・スリティに師事する。1981年、新しいヴィジョンを求め、フランスのパリに渡った。そこでさまざまなジャンルの音楽家と出会う。パリには4年間滞在し、チュニジアの映画や演劇のための劇伴音楽を作曲した。さらにバレエ音楽を制作し、『Thalassa Mare Nostrum』においては、ガブリエル・ヤレドとコスタ・ガヴラス監督の映画『Hanna K...』のリュート奏者として共演した。

 

1985年にチュニジアに戻ると、5年間にわたって作曲とコンサートを行い、彼の名声を確立した。ECMとの関係は1989年からで、以来10枚のアルバムを録音している。

 

『Barzakh』を筆頭に、バルバロス・エルケーゼ、ヤン・ガルバレク、デイヴ・ホランド、ジョン・サーマン、リチャード・ガリアーノなど、ジャンルや伝統に関係なく、世界で最も才能ある音楽家とコラボレートしてきた。主要なディスコグラフィには、『Conte de L'Incroyable Amour』(1991)、『Madar』(1994)、『Khomsa』(1995)、『Thimar』(1998)、『Astrakan Café』(2000)、『Le Pas Du Chat Noir』(2001)、『Le Voyage De Sahar』(2006)、『The Astounding Eyes Of Rita』(2009)などがある。

 

 

アヌアル・ブラヒムは一般的に、エスニック・ジャズの代表格とされることがあるが、彼の音楽性を単なるエキゾチズムと呼ぶのは妥当ではないかもしれない。中東/アラビアの旋律やスケール、巧緻なウードの演奏、打楽器を用いた世界音楽をジャズ/現代音楽の観点を通じて作曲してきた。

 

 

 

『Astran Cafe』 2000

 

アヌアル・ブラヒムは、ウード奏者としてだけではなくコンポーザーとしても一流の人物である。彼は2000年代からチュニジアや中東、北アフリカの民族音楽を、かつてのピアソラのように現代音楽やクラシックの作曲法により、独自のものとするのかを追求してきた。

 

その手始めとなったのが、「Astran Cafe」である。このアルバムにはのちのエスニック・ジャズの基礎となる要素や、民族音楽やワールド・ミュージックをどのようにクラシックや現代音楽のように構築していくのか、その試行錯誤のプロセスが的確に捉えられている。おそらく、作曲家は、チュニジアや中東の音楽を単一地域の民族音楽としてではなく、他のフラメンコやタンゴと同じように世界的な音楽として紹介することを意図していたのではないかと思われる。

 

しかし、それと同時に『Astran Cafe』はブラヒムの旧作のカタログの中で最もエキゾチックな響きが含まれているのは事実である。2010年代には洗練されたジャズや現代音楽、バレエのような劇伴音楽に至るまで、彼はさまざまな音楽の表現法を積み上げていったが、本作があったからこそ、オリジナリティ溢れる作風を作り上げることが出来たのではないかと推測される。

 

そういった意味では、ウードの演奏とハミングにより紡がれる演奏がエキゾチックな響きを持つ録音というかたちで留められている。以降の年代には、チュニジア、ネパールや中東の音楽を世界的な視点で捉えるようになるアヌアル・ブラヒムではあるが、少なくとも、彼の出世作ともいえる本作では、民族音楽の地域性や特性にコンポジションの焦点が絞られていると解釈出来る。ただし、これらの曲が古びて聞こえるかと言えば、そうではない。例えば、「Astran Cafe- 1」、「Karakorum」は今でも新しく聞こえ、ワールドミュージックとしてもきわめて斬新な響きを擁する。また、2009年の代表作「The Astounding Eyes Of Rita』でのウードの演奏と声のハミングのユニゾンという、アヌアル・ブラヒムらしい音楽性の萌芽を見出すことが出来る。

 

 

 

 

 

 

「Las pas du chat noir」 2002

 

 2000年代からエスノ・ジャズというジャンルがよく聞かれるようになったが、まさにこの音楽的な特徴を捉えるのに最適なアルバムが「Las pas du chat noir」。


今作において、アヌアヌ・ブラヒムは、フランスの現代音楽で活躍目覚ましいフランソワ・クチュリエと共演を行い、チュニジアや中東の民族音楽をバッハ的なエクリチュールと結びつける。

 

そして、アコーディオン奏者であるジャン・ルイ・マティリエはアルゼンチンタンゴのような哀愁を音楽に付与している。ジャズトリオの演奏の形式を取りながら、その演奏はクラシックの室内楽のような気品に満ちあふれている。これは中世のヨーロッパ音楽をエスニック/ジャズとして解釈している。

 

アルバムの収録曲のほとんどは、マイナー・スケールを中心に構成されるが、トリオの緻密なアンサンブルはメロディーの融合は、瞑想的な音楽の領域へと近づく場合もある。

 

ブラヒムの持つ中東や北アフリカの民族音楽のスケールに加え、アルゼンチンタンゴの持つ特殊な音階が結びついたタイトル曲「Las pas du chat noir」はもちろん、アコーディオンとピアノの合奏が瞑想的なアトモスフェールを作り出す「Leila au pays du carrousel」等、良曲に事欠かない。民族音楽やジャズの印象が表向きには際立っているが、バッハを中心とする正調の純正音楽をモチーフとしたフランソワ・クチュリエによる現代音楽のピアノのパッセージも本作に重要な貢献を果たしている。チューリッヒのDRSスタジオで2001年にレコーディングされたアルバムである。


 

 

 

「The Astounding Eyes Of Rita』 2009

 


アヌアル・ブラヒムの音楽はそもそも彼自身によるウードの演奏に加え、ジャズ・アンサンブルという形を取り、タブラのリズム、そしてバスクラリネットの中東のテイストを漂わせるスケールをもとに構成される。

 

稀にボーカルが入る場合もあるが、それは限定的なことであり、器楽的な効果を予想して導入されるに過ぎない。少なくとも、このアルバムにおいて四人編成のジャズ・アンサンブルは、低音部の音響の強調と、ウードやバスクラリネット、タブラのアンビエンスを拡張したサウンドという形で表側に現れる。特に、彼の旧来のカタログの中で注目しておきたいのは、2009年「The Astounding Eyes Of Rita」である。

 

この作品では、チュニジアを始めとする北アフリカ圏、それから中東の民族音楽のスケールを用い、ピクチャレスクなエスノ・ジャズを展開させる。特にブラヒム、メイヤー、ヤシーヌを中心とするアンサンブルはダンスミュージックのごとき深みのあるグルーブ感を作り出す。タブラの演奏は神がかりの領域に入る場合があり、5曲目「AI Birwa」に見出せる。

 

チュニジア/中東のマイナースケールに基づいたタイトル曲「The Astounding Eyes Of Rita」はバス・クラリネットの哀愁のあるフレーズの妙が光る。さらにボーカルをフィーチャーした「Waiking State」ではアラビアを放浪するような開放的な感覚が込められている。アルバムは、パレスチナの詩人"マフムード・ダルウィーシュ"の思い出に捧げられている。

 

 

 


 

 

 

 『Souvenance』 2014

 


ドイツのECMレコードはメインのジャズのリリースと合わせて、NEW SERIESという現代音楽のリリースにも取り組んできたことは詳しい方ならばご存知のことと思われる。

 

そして、このアルバムはどちらかといえば、従来のアラビアの旋法やスケールを踏まえて、現代音楽のようなディレクションが施されている。他のアヌアル・ブラヒムの主要な作品と同じように、室内楽やアンサンブルの形式を選んでレコーディングされているものの、エスニック・ジャズという言葉では一括りにすることが難しい。というのも、本作では指揮者、ピエトロ・ミアニーティを録音に招き、少人数の編成のオーケストラ作品のような趣を持つ作風もオープニングに収録されているからである。

 

2014年の「The Astounding Eyes Of Rita」において共同制作を行ったフランスのピアニスト、フランソワ・クチュリエの現代音楽のエクリチュール、同じくベース奏者のビョーン・メイヤー、バスクラリネットのクラウス・ゲッシング、スイス・イタリア管弦楽団のシネマティックで重厚なストリングスのコントラストには目を瞠るものがある。

 

アルバムの一曲目「Improbable Day」は大掛かりなスケールを持つ室内楽、及びオーケストラとして楽しめる他、音楽の多彩なバリエーションがひとつの魅力となっている。「Deliverance」ではエスノ・ジャズとミニマル、民族音楽のリズムを緻密に組み合わせて、独特な作風を作り上げる。バスクラリネットの響きはスリリングで高らかな響きに変わる場合もある。「Youssef's Song」には中東/アラビアの文化性に加え、四者の優れたプレイヤーによるジャズ・アンサンブルとしての魅力が凝縮されている。

 

 「この曲集を書くのに長い時間を必要としました」とアヌアル・ブラヒムは述べています。彼の感情の世界は、チュニジア、あるいは近隣諸国を席巻する政治的動乱ーーアラブの春ーーにまつわる物語に絡め取られていたという。大きな希望と恐怖を伴う異常な変化の波はチュニジア出身の作曲家にとって無関係ではありえなかった。アルバムの収録曲の音楽の中には中東の政治的な緊張や不穏な空気感が暗示されている。


しかし一方で、ブラヒムはそれが音楽の全てではないと述べています。 「ただ、私の作曲とチュニジアで起きている出来事との間に直接的な因果関係があるとは言い切れません」考え方によっては、上記のアートワークに表されているように、そういった政治的感情から距離を少し置いて、芸術的な感性を取り戻すために制作されたとも解釈しえる。さらに彼は次のように説明しています。「音楽の新しいディレクションについては、フランソワ・クチュリエがグループに戻り、繊細な弦楽器のオーケストレーションによって支えられています」

 


 

Lightning Bug


* *This article is available in both Japanese and English. Please scroll down to read the episode in both languages. 


(この記事は日本語と英語の双方で掲載しています。両言語のエピソードは下にスクロールしてお読み下さい)

 
Lightning Bugは、Audrey Kangを中心にニューヨークで結成されました。現在は四人編成で活動を行っています。


 
2015年に自主制作盤『Floaters』をリリースした後、ミシシッピのレーベル、Fat Possumと契約を結び、2作のフルアルバム『October Song』、『Color Of The Sky』を発表しました。バンドの音楽性の特徴は、浮遊感のあるドリーム・ポップと爽快感のあるインディーフォークの融合です。ライトニングバグのサウンドはバンドアンサンブルの巧みな演奏力と、ボーカリストのオードリー・カンのボーカルの魅力によって作り上げられます。2024年に入り、バンドはレーベルとの契約を終了し、再び自主制作盤をリリースすることを発表しました。


 
ライトニング・バグのバンドとしての新たな旅の始まりを象徴付けるのが、5月3日にリリースされるフルアルバム『No Paradise』となる。公式のプレスリリースとは異なり、感覚的な体験として音楽を楽しんでもらいたいというアーティストの思いを感じ取ることが出来るはず。そのエピソードの全容は以下の通りです。

 


--まず、バンドのニューアルバム『No Paradise』について質問させてください。このアルバムを通してリスナーに伝えたかったことは何ですか? また、この音楽から何を感じ取ってほしいと思いますか?






Lightning Bug(Audrey Kang): リスナーが、生きているということの身体性や官能性とつながる助けになればと思います。現代生活の多くには、頭の中にあるバーチャルな交流が含まれている。この音楽が、人々が自分の身体にもっと入り込む手助けになればと思います。



 


--2021年の”A Color of the Sky”と比べて、バンドの音楽的アプローチにおいて何が変わったと思いますか? 自主レーベルからのリリースということで、作曲やレコーディングのプロセスに大きな変化はありましたか?
 
 
Audrey Kang:  自主レーベルからリリースすることで、自分たちのルールに従うことができるようになりました。
 
幸いなことに、マーケティングのスケジュールや業界のタイムラインに従わなければならないというプレッシャーもありませんでした。私たちの音楽的アプローチは、より極端で絶対的な方法で自分たちの世界を作り上げることができたということを除けば、特に変わりはありませんでした。


  


--アルバム制作の前に、メキシコからニューヨークまでバイクで旅をしたと聞きました。まるで映画のようで、驚きました。なぜ、そんなことをしたのですか? 旅の途中で印象的な出来事はありましたか?
 


 
Audrey Kang: この旅に出たのは現実的な理由からで、メキシコにバイクを置いていく代わりに、自分のバイクを残しておきたかったからです。


 
また、私は良くも悪くも、ひとたび気まぐれが頭をよぎると、とても夢中になるタイプなんです。そして、その気まぐれを実現するためにかける気概もある。だから、一時の夢はすぐに現実のものとなるんです。


 
突然、私は、この牛の群れの一員として動き出したんです。すぐ前を若い子牛が走っていましたが、私がついてきているかどうかを確認するかのように、私を振り返り続けたんです。ひづめが舗装道路を踏む音、バイクのエンジンの柔らかい音、そして遠くから聞こえる鳥のさえずり...。日差しが牛の体を照らし、まるで牛が金色に彫られているように見えました。あまりの美しさに、私は息を止めていました。そして、牛たちは野原に分け入り、私たちは別れたのです。

 
--続いて、バンドの音楽性についても質問していいですか? これまでドリーム・ポップ、インディー・フォーク、ロックなど幅広いジャンルがライトニング・バグの主な音楽スタイルを形成してきました。 


 
新作に先立つシングルを聴く限り、音楽という枠にとらわれない開放感があるように思えます。音楽を映画や文学、映像のように解釈しているのではないかと思ったのですが、それについてはどうお考えですか?


 

Audrey Kang:  音楽を作るときは、(ジャンルやバンドにインスパイアされるよりも)映画や文学に直接インスパイアされることが多いですね。通常、映画や本は、私の中に深い感情を呼び起こしたり、新しい方法で何かについて考えさせたりします。このようなインスピレーションの感覚に動かされ、自分の感情を歌に変換することがよくあります。また、音楽は映画や本と同じように、ストーリーを伝えたり、聴く人を感動させたりするもうひとつの方法だと考えるのも好きですね。




 


--バンドの音楽を聴く限りでは、他の媒体の芸術を音楽という形に置き換えるという考えについては納得出来るような気がします。ミュージックビデオでもそれらのことは表現されているようです。また、より具体的に、ニューアルバムのプレスリリースを読むと、アルバムは「悲しみ」から出発しているみたいですが、その出口は、曲作りのプロダクションやバンドとのライブ・セッションを通して、どこに導かれたのでしょうか? 何か新しい発見があったのでしょうか?
 
 
Audrey Kang: 最初のテーマとしての「悲しみ」から少し離れることで、より強く、より主張の強い感情を音楽で追求することができたと思います。音楽により大きなエッジを与え、後押ししてくれました。また、情熱、ロマンス、冒険、希望などを音楽で表現することは、単純にとても楽しいことでしたね。





--この質問はシンガーソングライターについてというより、バンドの音楽についてです。ライトニング・バグの音楽にはニューヨークのテイストが含まれていると思いますか? シンセポップが盛んな印象がありますが?
 


Audrey Kang: 実は・・・、私たちの音楽がニューヨーク的だとは思っていないんです。私たちはニューヨークの音楽シーンから少し離れていて、あんまり馴染めないんです。ニューヨークのミュージシャンの多くは、現代の生活や人間関係を探求することに重きを置いていると思います。それに比べると、わたしたちの音楽はもっと古典的なテーマを扱っていることが多いと思いますね。
 
 
--バンドの曲作りはどこから始まるのでしょう? メンバーの誰かがデモを持ってくるのでしょうか? それともスタジオでのセッションから始まるのでしょうか? また、どのようにして完成させますか?





Audrey Kang:  私が曲を書いて、バンドに持ち込みます。多くの曲は、ケヴィンと私が一緒にデモを作って、フィーリングや大まかな方向性をつかんでいく感じです。それからバンドで、しっくりくるまで演奏をしていきます。



--次に、オードリーさんについて質問させてください。あなたの声にはカレン・カーペンターのような落ち着きと柔らかさがありますね。シンガーとして影響を受けたアーティストはいますか? また、できればあなたがどんな音楽を聴いて育ったのかも知りたいです。


 
Audrey Kang: 私の歌に最も大きな影響を与えたのは、比類なきカレン・カーペンター、ドロレス・オリオーダン、サンディ・デニー、ニーナ・シモン、ベス・ギボンズだと思う。

 


不思議なことに、私は音楽を聴かずに育ちました。私はどちらかというと芸術のない家庭に住んでいたのです。両親はあまり文化に触れさせなかったし、音楽を楽しむために聴くこともありませんでした。


正直なところ、私に大きな影響を与えた最初の音楽アーティストは、アヴリル・ラヴィーンだった。今でも『Let Go』は完璧なアルバムだと思っています。それから、高校時代のボーイフレンドは、私に "インディ・ミュージック "の世界を教えてくれた人だった。彼は、ザ・マウンテン・ゴーツ(敬愛するジョン・ダーニエルにエールを送ります)のようなバンドを聴いていた。巨大な音楽の世界を知ったことは、私の人生の軌道を大きく変えたのです。
 
 
--アヴリルは私も好きだけど、少し意外だった。また、今後ライトニング・バグとして音楽シーンにどのような影響を与えていきたいですか?


 

Audrey Kang: うわぁ、こんなこと考えたこともなかったよ...。バンドとして、未来のミュージシャンたちに "自分たちのやり方でやってみよう "というインスピレーションを与えることができたらいいと思うな。






--最後の質問です。オードリーさんが次に旅行したい場所を挙げるとしたら? また、そこで何をしてみたい?


 
Audrey Kang:  東ヨーロッパをバイクで旅したいですね。グルジア(という国)を見て、学びたいと思っています。






--お答えいただき、ありがとうございます。バンドの他の皆さんにもあらためて感謝いたします。新作アルバムのリリースをお祝いしたいと思います。今後の活躍にも期待しています。



 
 
ライトニング・バグの新作アルバム"No Paradise"は5月3日より自主レーベルより発売中です。


 
 
 
・Episode In English:


--First, let me ask you a question about the band's new album "No Paradise". What is the message you wanted to convey to listeners through this album? Also, what do you hope listeners will take away from this music?


 


Lightning Bug(Audrey Kang): I hope this helps listeners connect with the physicality and sensuality of being alive. A lot of modern life involves virtual interactions that are in the mind. I hope this music can help people get more into their bodies. 



--What do you think has changed in terms of the band's musical approach compared to "A Color of the Sky" in 2021? Since you are releasing the album on your own label, have there been any major changes in the writing and recording process?
 

Audrey Kang:  By self-releasing, we were really able to follow our own rules, which I guess means no rules. No pressure to adhere to any marketing schedule, or industry timeline. Our musical approach didn’t really change, except I suppose we were able to create our own world in a more extreme and absolute way. 



--I heard that you traveled from Mexico to New York by motorcycle before making the album. It was like a movie, and I was amazed. Why did you do that? Were there any memorable events during your trip?
 
 
Audrey Kang: I embarked on this trip for practical reasons, because I wanted to keep my motorcycle instead of leaving it behind in Mexico. Also, for better or for worse, I’m the kind of person who gets very obsessed once a whim enters my mind. And I have a lot of gumption to put into realizing these whims. So a passing dream can very quickly become a committed reality.


There were countless things from the trip that are forever embedded into my memory. But I’ll share this: one dawnlit morning, I was riding through the rising fog on a curving country road, and a herd of cows ran onto the road before me. Suddenly, I was moving as part of this herd. 


There was a young calf running right in front, who kept looking back at me as if it wanted to make sure I was following. The only sounds were the hooves on the pavement, the soft purr of the bike engine, and the faraway singing of birds.
The sunlight was lighting up the bodies of the cows so it looked like they were each carved in gold. I was holding my breath, it was so beautiful. Then, the cows broke into a field, and we parted ways, never to meet again. 

 

--Perhaps the best part of life is some kind of direct experience, and perhaps we overlook such miraculous events in our daily lives. 


Can I also ask a question about the band's musicality? In the past, a wide range of genres such as dream pop, indie folk, or rock have formed Lightning Bug's primary musical style. 



From listening to the singles that precede the new album, there seems to be a sense of openness that is not confined to the framework of music. I found myself wondering if you are interpreting music as if it were film, literature, or visuals; what are your thoughts on this?
 

 
Audrey Kang: I would say I’m more directly inspired by film and literature (versus being inspired by genres or bands) when making music. Usually, film or books will spark a deep feeling in me, or make me think about something in a new way. This sense of inspiration often moves me to translate my feelings into song. I also love to think of music as another way of telling a story, or transporting a listener, just like a film or a book.






 

--As far as the band's music is concerned, I feel very comfortable with the idea of replacing the art of other mediums with the form of music. It seems that the music video also expresses these things. 


Also, more specifically, reading the press release for the new album, it seems that the album departs from "sadness," but where did that exit lead you through the songwriting production and live sessions with the band? Did you discover anything new?





Audrey Kang: I think moving away from “sadness” as a theme allowed us to explore stronger, more assertive feelings in the music. It gave the music a greater edge, a push. It was also simply more fun to instead explore passion, romance, adventure, and hope in our music.







--This question is more about the band's music than about the singer/songwriter. Do you think Lightning Bug's music has a New York flavor to it? Do you get the impression that synth-pop is thriving?




Audrey Kang: I actually don’t really think we sound very New York. We’re a bit removed from the NYC music scene, we don’t quite fit in. I’d say a lot of NYC musicians are more concerned with exploring modern life and relationships. I believe our music carries older themes, in comparison.







--Where does the band's songwriting process begin? Does one of the members bring a demo to the band? Or does it start with sessions in the studio? And how is it completed?






Audrey Kang: I write the songs, and bring them to the band. For a lot of the songs, Kevin and I made demos together, just to capture the feeling and general direction. Then together as a band, we play till it feels right. 


--Next, let me ask a question about you. Your voice contains a calmness and softness. Are there any specific artists who have influenced you as a singer?  Also, if possible, I would like to know about the kind of music you grew up listening to.



Audrey Kang: I think the biggest influences on my singing are the peerless Karen Carpenter, Dolores O'Riordan, Sandy Denny, Nina Simone, and Beth Gibbons.

Strange to say, I didn’t listen to music growing up. I lived in a rather artless household. 

My parents didn’t expose me to much culture, and they didn’t listen to music for enjoyment. Honestly, the first musical artist who had a big influence on me was Avril Lavigne. To this day I believe that “Let Go” is a perfect album.
 
Then, my high school boyfriend was really the person who showed me the world of “indie music.” He listened to bands like The Mountain Goats (shout out to the beloved John Darnielle). That revelation about a massive world of music really changed the entire trajectory of my life.





 

-- I like Avril too, but that was a little surprising. Also, what kind of effect do you hope to have on the music scene as Lightning Bug in the future?




Audrey Kang: Oh wow, I’ve never really thought about this. I hope that we as a band can inspire future musicians to “do it their own way.” 


--So, last question. If Audrey could name the next place she would like to travel, where would it be? And what would you like to do there?




Audrey Kang: I’d love to go on a motorcycle trip through eastern Europe. I’ve been really wanting to see and learn about Georgia (the country).
 

--Thank you so much for taking the time to answer our questions!! And thanks again to the other members of the band!
 
 
* Lightning Bug's new album "No Paradise" is available on May 3 on their own label. 

 

 



グレアム・コクソンとローズ・エリナー・ドーガルの新プロジェクト、The Waeve(ザ・ウェイブ)がニューシングルを発表した。ブラーのメンバー、グラハム・コクソンとピヘッツのメンバー、ローズ・ドーガルによるユニット。


「City Lights」は、昨年のセルフタイトルのデビューアルバムに続く作品。春のツアーに先駆けてリリースされた。


この新曲に関して、グラハムとローズはミステリアスなコメントをのこしています。「街の灯りは、美しい者もグロテスクな者も、天使も悪魔も、輝く魅惑的な者も、皆に平等な独特の魔法を与えるのだ...。誰があなたを愛し、誰があなたを壊したいのだろうか?」

 


「City Lights」

 


LAプリーストが新作EPからのビデオを公開しあしたた。「LA Fusion」はサード・アルバム『Fase Luna』に続くもので、本日5月3日(金)にDominoからリリースされる。彼は先日、初期シングル「City Warm Heart」を公開したが、今回は「Apple」のビジュアルも公開された。


この曲は「宇宙人からの激励の言葉」だとサム・イーストゲートは説明する。「言葉が意味をなさないように見えても、啓発的なものにしたかったんだ」

 

 

 

 


ブライトンの期待のインディーロックバンド、Swim Deep(スイム・ディープ)が新曲をリリースしました。

 

このシングルは、6月7日にリリースされる『There's A Big Star Outside...』に先駆けて公開されました。最近リリースされた「First Song」と「How Many Love Songs Have Died In Vegas?」に続くシングルです。来月の発売日を前にチェックしてみてください。


フロントマンのオースティンは言う。「ウェスト・カービーでの風の強い夜、僕とビル(ライダー・ジョーンズ)は、横殴りの雨が頬を刺す中、彼の地元に座っていた。僕たちは、エバートンやバーミンガムの街の悩みから、そもそも音楽を作ろうと思った理由まで、ほろ酔い加減で率直に話しました。


「私たちはアイデアやボイスノートを交換し、彼は控えめに『Very Heaven』のコーラスを私に見せてくれた。ホテルに帰るのが待ちきれなくて、何度も繰り返し聴いて、この曲がどんな曲になるのか想像した。タイトルは、ウィリアム・ワーズワースの詩から引用しています。ICPでバンドと一緒にこの曲を録音したのは、その時のハイライト。バンドとして大きな瞬間でした」

 

 

 「Very Heaven」

 


オーストラリアのインディーポップ/R&BシーンをリードするDayglow(デイグロー)がニューシングル「Every Little Thing I Say I Do」でカムバック。この曲は、彼の3枚目のレコード「People In Motion」に続く作品で、ポリドール/マーキュリー・レコードからの初のリリースとなります。


『Every Little Thing I Say I Do』は、自分の完璧主義と支配欲をからかった曲なんだ。僕は何でも完璧にこなすだけでなく、君のためでもあるという、ちょっと馬鹿げた主張なんだけど、そこがポイント。それは有害で不可能な在り方となるが、私の小さなホモサピエンスの脳では、残念ながらこういうモードに走りがち。私は、自分自身を理解する方法として曲を書いていて、時には厳しいことを言う傾向があるんです。でも曲が出来上がったとき、いつも自分がちょっと成長したような気がするし、外から見た自分をよりリアルに垣間見ることができたような気がします」


さらに、デイグローは次のように続けています。「私の願いは、リスナーにも同じような効果が起こること。人々が自己を振り返り、より素敵な存在になれるような曲を作りたいと思ってます。もちろん、曲に合わせて踊ることもできるけどね。何しろかなりキャッチーだからね……」



「Every Little Thing I Say I Do」

 


イギリスのシンガーソングライター、Holly Humberstone(ホリー・ハンバーストーン)が2曲の新曲を発表しました。


ミディアム・ビルドとタイニー・ハビッツとのコラボレーションは、彼女が最近MUNAとのコラボレーションに続く作品。昨年10月にリリースされたデビュー・アルバム「ペイント・マイ・ベッドルーム・ブラック」の楽曲の新バージョンを制作しています。


「ミディアム・ビルドを知ったのは、1年ほど前、アメリカでツアーをしていた時だった。ツアー・マネージャーのカールが、パシフィック・コースト・ハイウェイを北上しているときに彼の曲をかけたの。彼のことを少し理解できたような気がして、すぐに連絡を取り、コラボレーションしないかと尋ねた。彼に私の曲『Cocoon』を送ったところ、歌詞はすでに書かれていたにもかかわらず、彼は2番の歌詞を彼自身のストーリーに変えてくれた。彼の言葉遣いが、この曲を本当に不思議なものに変えたので、私たちのバージョンをリリースすることにしたんです」


「ニック(ミディアム・ビルド)はその後、今年初めの私のUK&EUツアーのオープニングに来てくれ、毎晩私のショーでこの曲を一緒に演奏しました。彼は私の大親友になってくれた。だからこの『コクーン』のヴァージョンはわたしにとって特別。みんなに聴いてもらうのが待ちきれません」

 

 

「Tiny Habits」

 

 

「Cocoon」

 

 


オーストラリアのインディーロック/ポストパンクデュオ、Royel Otis(ロイエル・オーティス)が新曲「Claw Foot」と「Merry Mary Marry Me」を発表しました。下記よりチェックしてみてください。


ユニットは今年、彼らの出世作となりそうな『PRATTS & PAIN』をリリースした。この作品はシドニーのインディ・デュオと、Wet Legのデビュー作を手掛けたダン・キャリーがプロデュース。また、ダン・キャリーはイギリスでのレコーディング中によくバーにでかけていたという。

 

2作のシングルは2月のデビューアルバム『PRATTS & PAIN』からのボーナストラックです。「Velvet」「Adored」「Fried Rice」「Heading For The Door」をはじめとするハイライト曲を収録しています。



「Claw Foot」

 

 

 「Mary Mary Marry Me」

 

©Eleanor Petry

アイルランド/ダブリンのガレージロックバンド、Sprints(スプリンツ)が2曲の新曲「Drones & Help Me, I'm Spiralling」と「Drones」を発表しました。どちらも、1月にリリースされたアイルランドのバンドのデビュー・アルバム『Letter to Self』のセッションでレコーディングされたのだそうです。彼らはまた、アメリカ、イギリス、ヨーロッパを回る大規模なツアーを発表しています。


「"Letter To Self "のレコーディング・プロセスであったカオスとカタルシスの名残を分かち合えることを嬉しく思っています。Black Box Sessionsには、「Drones」と「Help Me, I'm Spiralling」が収録されており、不確かさ、不安、疑念をテーマにしている。狂気とノイズを受け入れたいよ」




 
Charlotte Day Wilson-



トロント出身のシンガーソングライター/プロデューサー、シャーロット・デイ・ウィルソン(CDW)が、待望の2ndアルバム『Cyan Blue』を5月3日にリリースする。


『シアン・ブルー』は、ゴスペル・ピアノ、温かみのあるソウルのベースライン、雰囲気のあるエレクトロニクス、そしてR&Bの突き抜けたメロディーなど、ウィルソンが永遠に影響を受け続けてきたシアン・タペストリーを滑らかに織り上げています。そして、この作品には、ウィルソンの新時代の到来を告げるに足るセンスがある。


「シアン・ブルー』の制作について、ウィルソンは次のように語っている。「多くの荷物がなかった頃、多くの人生を生きる前について。でも、若い頃の自分と合わせて現在の自分を見てほしいとも思う。私が今持っている知恵や明晰さの一部を、伝授することができたらいいなと思う」


レオン・トーマス(SZA、アリアナ・グランデ、ポスト・マローン)、ジャック・ロション(H.E.R、ダニエル・シーザー)といったプロデューサーと組んだ『シアン・ブルー』は、ウィルソンの音響的な専門知識を示すと同時に、彼女の時を超えたソングライティングの次なる進化を披露している。


13曲のヒプノティックなトラックを通して、彼女は音楽を人間関係を解きほぐす器として使い続けている。しかしながら、『シアン・ブルー』では、彼女は完璧主義者の傾向を一蹴することに挑戦しています。「それ以前の私は、強固な基礎、芸術的な完全性を備えた音楽を創ることに熱心でした」とウィルソンは振り返る。「でも、それは少し息苦しかった。"時の試練に耐えられるような素晴らしい作品を、プレッシャーなく作らせてほしい "という感じでした。今は、すべてが完璧でなければならないという、凍りついた状態から抜け出せたと思います。それよりも、その瞬間に起こった感情をその瞬間にとらえ、その瞬間に残すことに興味があります」


このアルバムはまだ通算2作目にもかかわらず、ウィルソンの音楽における影響力はメインストリームに大きな影響を及ぼし続けている。

 

ウィルソンは2016年に絶賛されたEP『CDW』でブレイクし、2018年の『Stone Woman』に続き、2021年には絶賛された自主制作盤『Alpha』でスタジオ・デビュー・アルバムを正式なカミング・アウトの瞬間とした。過去10年間、その楽曲は、ドレイク、ジョン・メイヤー、ジェイムス・ブレイクにサンプリングされ、最近では、パティ・スミスがウィルソンの2016年のブレイク・シングル "Work "を賞賛しカバーしている。さらに、ケイト・ラナダ、BADBADNOTGOOD、SGルイスといったアーティストともコラボレーション経験がある。ウィルソンが適応できない音はない。彼女はシアンブルーの魔法を振りかけることができることを示す。

 


『Cyan Blue』‐ Stone Woman Music/ XL Recordings

 

・Background

 

シャーロット・デイ・ウィルソンは、10代の頃にAppleのGaragebandで音楽制作をはじめ、幼初期にクラシックピアノを学んでいる。ハリファックスに引っ越し、大学で音楽を学習する予定だったが、その後、キャリアに専念するために大学を去った。十数年前から音源のリリースを行い、2012年にはEPのセルフリリースを行い、以後の数年間で、スタンドアロンのシングルを三作発表した。また、それらのソロシンガーとしてのキャリアに加え、ファンクバンドでも活動したことがあった。The Wayoではボーカル、キーボード、サックスを演奏していたという。


ケベック州モントリオールで過ごした後、ウィルソンはトロントに戻り、アーツ&クラフツプロダクションでインターンを行う。


その頃、ダニエル・シーザー、リバーテイバー、BadBadNotGoodなどのコラボに取り組むことになった。2016年には、リリースしたEPの収録曲「Work」が注目を集めはじめ、Socanソングライティング賞にノミネートされ、ポラリス音楽賞のロングリストに残った。また、ウィルソンはプロデューサーとしても高い評価を得ている。2017年のジュノー賞ではプロデューサー・オブ・ザ・イヤーにノミネート。ファンタヴィアス・フリッツ監督が手掛けた「ワーク」のビデオも好評で、2018年度のプリズム賞を受賞している。

 

3作目のEP「Stone Woman」でもウィルソンは注目を集めた。収録曲「Falling Apart」はジェイムス・ブレイクが「I Keep Calling」でサンプリングを行った。2021年頃にはR&Bアーティストとして国内で評価される。2021年のシドをフィーチャリングしたシングル「Take Care Of You」でジュノー賞のトラディショナルR&B/ソウルのレコーディング・オブ・ザ・イヤーを獲得した。

 

着実に実績を重ね、イギリスのXL recordingsと契約し、満を持してリリースされるアルバム『Cyan Blue』はウィルソンの初期のキャリアを決定づける可能性が高い。もしかするとマーキュリー賞にノミネートされても不思議ではない作品である。13曲とヴォリューム感のあるアルバムであることは間違いないが、驚くほどスムーズに曲が展開され、そして作品の中に幾つかの感動的なハイライトが用意されています。本作はプロデューサーとしての蓄積が高水準のネオソウルとして昇華され、加えて、ファルセット、ウィスパーボイス、ミックスボイス、そしてアルトボイス等など、驚くほど多彩なヴォーカリストとしての性質が見事に反映されている。


シャーロット・デイ・ウィルソンのソウル/R&Bは、例えば、SZA、Samphaといった最も注目を集めるシンガーとも無関係とは言えません。しかし、上記の二人とは異なり、基本的には低音域のアルトボイスを中心の歌われる。その歌声は基本的には落ち着いていて、ダウナーともいうべき印象をもたらすが、稀にファルセットや高音域のミックスボイス等が披露されると、曲の印象が一転して、驚くべき華やかさがもたらされる。あらゆるボーカルスタイルを披露しながら、細部に至るまで多角的なサウンドを作り込もうとする。”完璧主義から距離を置いた音楽を選んだ”というシンガーの言葉は捉え方によっては、ボーカルにしてもプロデュースにしても、それ以前の音楽的な蓄積が、少し緩さのある軽妙なネオソウルを作り上げるための布石となった。

 

2ndアルバム”Cyan Blue”はアーバンなソウル、メロウさ、それとは対象的な爽快さを併せ持つ稀有な作品となっています。その中にはファンクバンドとしての経験を織り交ぜたものもある。そしてカナダのミュージック・シーンに何らかの触発を受けてのことか、ローファイなサウンドメイキングが施されている。例えば、ボーカルのオートチューンの使用はダフト・パンクのようなロボット声を越え、ユニークなボーカルの録音という形で表れる。ただ、マニアックなプロディースの形式が選ばれているからとは言え、アルバム全体としてはすごく聞きやすさがある。

 

 

・1「My Way」〜 5「Do U Still」

 

オープナー「My Way」ではギターサウンドをローファイ的に処理し、それにダブステップのような”ダビーなリズム”というようにコアな音楽が展開される。しかし、そのトラックに載せられるウィルソンのボーカルは、メロウな雰囲気を漂わせながらも、驚くほど軽やかである。イギリスのシンガーソングライター、Samphaを思わせるネオソウルは、サビでコーラスが入ると、親しみやすく乗りやすいポピュラー・ソングへと変化する。徹底して無駄や脚色を削ぎ落とした、スタイリッシュかつタイトな質感を持つサウンドが繰り広げられます。さらに、デイ・ウィルソンのR&Bにはモダンでアーバンな空気感が漂う。#2「Money」でも、最初のメロウな雰囲気が引き継がれる。曲そのものはポピュラーなのに、新しい試みもある。デチューンをトラック全体に掛け、サイケな曲の輪郭を作り出し、アウトロにかけて、ラップのサンプリングをクールに導入している。こう言うと、難解なサウンドを思い浮かべるかもしれませんが、全般的にはメロディーの心地よさ、リズムの乗りやすさにポイントが絞られているので聞きやすさがある。もちろん、リズムの心地よさに身を委ねるという楽しみ方もありかもしれない。

 

ウィルソンのファンクバンドとしての演奏経験は続く#3「Dovetail」に表れている。Pファンクの代表格である”Bootsy Collins”のようなしなやかなファンクサウンドを基調としているが、デイ・ウィルソンのソウルは、チルウェイブの影響を取り入れることで、モダンな雰囲気と聞きやすさを併せ持つトラックに昇華される。アルトボイス中心の落ち着いたボーカルに色彩的な和音が加わり、スマイルの最新作やジェイムス・ブレイクなどのレコーディングでお馴染みのボーカルのエフェクト効果がリズムや旋律と混ざり合い、大人の感覚を持つR&Bが構築される。


その後の#4「Forever」でもボーカルのオートチューンや複雑な対旋律的なコーラスの導入は顕著な形で表れる。この曲にはエレクトロニックの影響があり、サンプリング的に処理されたピアノとソフトシンセの実験的なエフェクト処理が施されたマテリアルが多角的なネオソウルを作り上げる。ウィルソンのボーカルについても、「しっとりとしたソウル」とよく言われるように、落ち着いたアルトボイスを基本に構成される。けれども、それらのボーカルのニュアンスはジェイムス・ブレイクが以前話していた”ビンテージソウルの温かみ”がある。最新鋭のレコーディングシステムや多数のプラグインを使用しようとも、ボーカルやトラックには深いエモーションが漂い、それがそのままアルバムの導入部の魅力ともなっている。さらに曲の後半では、ミックスボイスに近い伸びやかな鼻声のボーカルが華やかさを最大限に引き上げていきます。続く#5「Do U Still」でも中音域のボーカルを中心にして、しっとりとした曲が作り上げられる。この曲では、旋律よりもリズムが強調され、それはスキッターな打ち込みのドラムが、ボーカリストがさらりと歌い上げるメロディーや複合的な和音のメロウさを引き立てている。

 


 「My Way」




・6「New Day」~ 9「Over The Rainbow」


アルトボイスとミックスボイスを中心に構成されていたアルバムの導入部。しかしながら、アーティストは驚くべきことに、手の内を全部見せたわけではなかった。ボーカリストとしての歌唱法の選択肢の多さは、中盤部において感動的な瞬間を呼び起こす箇所がある。中盤の収録されている#6「New Day」を聴けば、ウィルソンのボーカリストとして卓越した技巧がどれほど凄いのかを体感していただけるに違いない。イントロではゴスペルを下地にした霊妙なハミング/ウィスパーボイスとジェイムス・ブレイクの作風を思わせるピアノ、それに続いて優しく語りかけるようなデイ・ウィルソンのボーカルが続く。背後には、XL Recordingsが得意とするボーカル・ディレイが複合的に重ねられ、トリップホップを思わせる霊妙な音楽へとつながる。そして曲の中盤から、それまで力を溜め込んでいたかのように、華やかで伸びやかなビブラートでボーカリストがこの曲を巧みにリードしていく。これこそソロシンガーとしての凄さ。

 

歌にとどまらず、音楽のバラエティー性にも目を瞠るものがある。#7「Last Call」ではサンファを彷彿とさせる落ち着きと爽快感を兼ね備えるネオソウルを披露したかと思えば、#8「Canopy」では、アルバムの一曲目と同様に、ローファイなギター、エレクトロニカ風のエフェクトという現行のネオソウルやヒップホップの影響があるが、それらをブレイクビーツとして処理している。もちろん上記の2曲でも依然として、メロウさやモダンな感覚が維持される。

 

この2曲はダンスフロアのクールダウンのような意図を持つリラックスした箇所として楽しめる。そして、中盤の最大のハイライトがジュディー・ガーランドのカバー「Over The Rainbow」である。''オズの魔法使い''の主題歌でもあったこの曲を、デイ・ウィルソンは、ゴスペルとネオソウルという二つの切り口から解釈している。ここには、カバーの模範的なお手本が示されていると言えるでしょう。つまり、原曲を忠実に準えた上で、新しい現代的な解釈を添えるのである。基本的なメロディーは変わっていませんが、何か深く心を揺さぶられるものがある。これはデイ・ウィルソンが悲劇のポップスターの名曲を心から敬愛し、そして、霊歌や現代のソウルR&Bに至るまで、すべてにリスペクトを示しているからこそなし得ることなのでしょうか? そしてミュージシャンの幼少期の記憶らしきものが、最後の子供の声のサンプリングに体現される。 

 

 

 「Over The Rainbow」

 

 

 

 ・10「Kiss & Tell」〜13「Walk With Me」

 

アルバムの後半では、UKのアンダーグランドのダンスミュージックの影響が親しみやすいポピュラー・ソングの形で繰り広げられる。


#10「Kiss & Tell」では、ベースラインを基にして、トリップ・ホップやダブステップのリズムをミックスして織り交ぜながら、それらを最終的に深みのあるネオソウルに昇華させています。特にこの後の2曲は、アルバムの最高の聞きどころで、またハイライトになるかもしれない。


#11「I Don't Love You」では「Over The Rainbow」と同じく、古いゴスペルを鮮やかなネオソウルに生まれ変わらせる。ピアノとボーカルにはデチューンが施され、入れ子構造やメタ構造のような意図を持つ弾き語りのナンバーとも解釈出来る。落ち着いた感じのイントロ、中盤部のブリッジからサビの部分にかけて緩やかな旋律のジャンプアップを見せる箇所に素晴らしさがある。なおかつタイトルのボーカルの箇所では、シンガーの持つ卓越したポピュラリティーが現れる。しかし、多幸感のある感覚は、アウトロにかけて落ち着いた感覚に代わる。ウッドベースに合わせて歌われるウィルソンの神妙なボーカルは、このアルバムの最大の聞き所となりそう。

 

タイトル曲「Cyan Blue」のイントロでは複雑なエフェクトが施され、サンファの系譜にある艷やかな空気感のあるネオソウルというかたちで昇華させる。しかし、そういった前衛的なサウンド加工を施しながらも、普遍的なポピュラーミュージックの響きが込められている。この曲では古典的なポピュラーソングのスタイルを採用し、ポール・サイモン、ジョニ・ミッチェル、ウェイツのような穏やかで美しいピアノ・バラードがモダンな感覚に縁取られている。この曲でもシャーロット・ウィルソンのソウル/R&Bシンガーとしての歌唱力は素晴らしいものがあり、ビブラートの微細なニュアンスの変化により、この曲に霊妙さと深みをもたらしています。

 

”Cyan Blue”は全体的にブルージーな情感もあり、ほのかなペーソスもあるが、アルバムの最後はわずかに明るい感覚をもってエンディングを迎える。クローズ「Walk With Me」は他の曲と同じように落ち着いていて、メロウな空気感が漂うが、ドラムのリズムはアシッドなグルーヴ感を呼び起こし、それに加えてローファイの要素が心地よさをもたらす。スタイリッシュさやアーバンな雰囲気が堪能出来るのはもちろん、超実力派のシンガーによるR&Bの快作の登場です。

 

 

* プロデュース面での作り込みの凄さに始終圧倒されてしまいました。それ以前にどれほど多くの試行錯誤が重ねられたのかは予想もできないほど……。一度聴いただけで、その全容を把握することは難しいかもしれません。しかし、その一方で、純粋なネオソウルとしても気軽に楽しめるはず。

 

 

 

96/100

 

 

 

 Best Track-「I Don't Love You」