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Orbital

オックスフォードのエレクトロデュオ、Orbital(オービタル)が2月17日にLondon Recordsより『Optical Delusion』をリリースすることを発表しました。


この新作アルバムは、ブライトンでレコーディングが行われ、Penelope Isles、Anna B Savage、Dina Ipavicらがゲストで参加している。

 

アルバムの告知と同時に、Sleaford Modsをフィーチャーしたファースト・シングル 「Dirty Rat」がリリースされています。MVには、Sleaford Modsのスポークンワードを担当するジェイソン・ウイリアムソンが出演、歯切れの良い痛快なスポークンワードでこの曲のテンションを盛り上げています。

 


 

 


Orbital 「Optical Delusion」

 



Tracklist:
1. Ringa Ringa (The Old Pandemic Folk Song) (feat The Mediaeval Baebes)
2. Day One (feat Dina Ipavic)
3. Are You Alive? (feat Penelope Isles)
4. You Are The Frequency (feat The Little Pest)
5. The New Abnormal
6. Home (feat Anna B Savage)
7. Dirty Rat (with Sleaford Mods)
8. Requiem For The Pre Apocalypse
9. What A Surprise (feat The Little Pest)
10. Moon Princess (feat Coppe)

 

©︎Steve Gullick

UKのエレクトリック・デュオ、 Leftieldが、Fontaines D.C.のGrian Chattenと組んで、新曲「Full Way Round」を発表しました。この曲は、12月2日にVirginからリリースされる彼らのアルバム『This Is What We Do』の最新先行曲となっています。曲の試聴は以下からお楽しみください。


"「Full Way Round」は、ビートと良い雰囲気の完璧なコラボレーションでした。" ハードワークと楽しさ。Grian Chattenは説明している。

 

「分析するのではなく、感じ、経験する自由な旅だ。彼のエネルギーと熱意はスピーカーから吐き出される。この曲を聴くたびに、彼がレコーディングしたときのスタジオでの興奮を思い出すよ」



©︎Shervin Lainez

 Bonoboが新曲「Defender」をリリースしました。このシングルはNinja Tuneから10月28日に発売される「12」に既発のシングル「ATK」と共に収録されています。


1月にUKチャートでNo.3を記録したアルバム『Fragments』をリリースした後、海外ツアーに向けてライブを刷新し、単体のシングルを次々と発表しているBonobo。日本のフジロックでのライブも大盛況でした。


先日、サプライズ・バーナー "ATK "をリリースしたBonoboは、その直截性を引き継ぎ、ピアノ主体の "Defender "では、彼の絵画的タッチを活かした4ビートのトラックながら、クラブで体験するようなエネルギーに満ちている。エレクトロニックミックスにシンセサイザーを加え、デジタルな実験とクラブに根ざしたリズムのバランスを常に追求するこのプロデューサーにとって、この作品は力強い復活と言えるでしょう。

 





Ikonikaが新曲「When You Look At Me」を公開しました。


このたび、長年にわたって親交のあるレーベルHyperdubから、新作EP「Bubble Up」が11日25日にリリースされる。


5曲入りEPに加え、先日ベルリンのPanorama Barで行われたBubble Upのライブセットも収録される予定です。


今回リリースされる'When You Look At Me'は、自称クィア・ラブ・アンセムで、クラブでの体験の即時性と喜びを表現している。この曲は、ハウスのテクスチャーとアマピアノのエネルギーの波が生み出すリズムをリンクさせ、Ikonikaのクリエイティブな魅力のいくつかを結びつけます。


また、'When You Look At Me'は、私たちの間に存在するシンプルなつながりに魅了される作品である。この曲は、ポップでキャッチーなヴォーカルが特徴だが、Ikonikaは複雑なアイデアを盛り込んでいる。


 

PVA 「Blush」

 


Label: Ninja Tune


Release: 2022年10月14日



Review


Ninja Tuneからリリースされるサウスロンドンのバンド、PVAのデビューアルバム『BLUSH』は、エレクトロニックミュージックの鼓動と人生を肯定するライブギグのエネルギーを巧みに統合し、これまで語られてきた以上のトリオの姿を明らかにするものとなる。



エラ・ハリスとジョシュ・バクスター(リード・ボーカル、シンセ、ギター、プロダクションを担当)、そしてドラマーとパーカッショニストのルイス・サッチェルによる11曲は、アシッド、ディスコ、強烈なシンセ、ダンスフロア、クィアコード・シュプレヒゲサングのポストパンクで構成されている。



このトリオは、ハリスとバクスターが2017年に一緒に「カントリー・フレンド・テクノ」と名づけたものを作り始めたことから始まった。最初の曲のひとつは、ハリスが自分の夢を新しいバンドメイトに口述したことから生まれ、最初のライヴは、ニュークロスのThe Five Bells pubで行われたNarcissistic Exhibitionismという伝説の一夜であり、彼らが出会ってからわずか2週間後に開催された。このショーはエラ・ハリスのキュレーションによるもので、2階は絵画、彫刻、写真、1階はバンドがフィーチャーされていた。彼女は、PVAをヘッドライナーとしてブッキングした。

 


 この初期の段階を経て、彼らはライブショーに新しい次元をもたらすためにルイス・サッチェルを採用した。このように、より硬派なライブを行うことで、PVAはロンドンのギグファンの間でカルト的な評判を確立した。

 

その時点ではライブをおこなことが彼らの唯一の選択肢であった。トリオは、Squid、black midi、Black Country、New Roadと並んで、南ロンドンの熱狂的なインディー・シーンにおける最重要アーティストとしての地位を確立する。その後、「SXSW」、「Pitchfork Music Festival」、「Green Man」に出演し、Shame、Dry Cleaning、Goat Girlと共に国内ツアーを行うようになった。だが、初期の段階から、従来のバンド編成の枠を超えた存在であることは明らかだった。ブリクストンのスウェットボックス「The Windmill」と、デプトフォードの地下クラブ「Bunker」で早朝からDJをする彼らを一晩で2回も見ることも珍しいことではなかったという。



PVAは、2019年末、Speedy Wundergroundからデビュー・シングル「Divine Intervention」をリリースした。その1年後には、Young FathersやKae Tempestといった同様に、イギリス国内の象徴的なアーティストが所属する”Ninja Tune”からデビューEP「Toner」をリリースしている。このEPには、ムラ・マサの「Talks」のリミックスが収録されており、2022年のグラミー賞のベスト・リミックス・レコーディング部門にもノミネートされた。


PVA

 

10月14日、Ninja Tuneから発売された『Blush』は、過去のどのアルバム、どのアーティストとも似ていない、孤絶した領域にある作品です。このような音楽に接した際、多くのリスナーは戸惑いを覚えると共に、本当の意味での熱狂的なリスナーであれば、いくらかの興奮を覚えざるをえなくなる。

 

アルバムには、このトリオの幅広い音楽のバックグラウンドを伺わせる様々な要素が込められている。多彩な音楽が溢れるサウスロンドンのダンスフロアから登場したという経緯もあってか、エレクトロ、 ポスト・パンク、アシッドハウス、トランスを主体においた、実験的なアプローチが今作において図られていますが、それは、エラ・ハリスとジョシュ・バクスターの両ボーカルによって全体的な作品の均衡が絶妙に保たれいるだけでなく、また、ヴァラエティーに富んだアルバムとなっている。シンセサイザーを担当するジョシュ・バクスターは、アナログのモジュラーシンセの音色をフル活用し、これらのトラックに思わぬ魔法をかけてみせるが、全体的なトリオとしてのサウンドの枠組みを支えているのは、ドラムのルイス・サッチェスです。ジャズや民族音楽の要素を多分に感じさせるルイス・サッチェスのダイナミックで変則的なリズムが、時折創造性が豊かすぎるゆえ奔放になりがちなサウンドに統一感を与えているのです。


さて、PVAのエレクトロに根差したサウンドは、西洋的な美学の一つである対比の概念によって強固に支えられている。このギリシャ哲学の時代から綿々と引き継がれるアート全般の美学は、もちろんクラシック音楽の作曲を行う上で、そして、ポピュラー音楽の構成面でぜひとも必要な要素なのですが、その対比の美学は、エラ・ハリスとジョッシュ・バクスターのボーカルの対称性に反映されている。


前者のエラ・ハリスのボーカルは、Sprechgesang(シュプレヒゲサング)のスタイルをとり、語りにも似たた性質であるが、冷徹な雰囲気を感じさせるとともに、時にそれとは逆の華やいだ抒情性にも成り代わる場合もある。さらに、もう一方のジョッシュ・バクスターのボーカルは常に強い熱量に支えられており、まるでロンドンのダンスフロアの熱狂を体現したようなエナジーを擁している。これらの両者のまったく温度差の異なるトラックが対比的に配置されることで、このアルバム全編は多彩性溢れるものとなり、ダイナミックな印象を与えるのです。

 

オープニング「Untetherd」では、ゴアトランスに近い過激なアプローチをPVAは採用しているが、この音楽の欠点となりがちな刺激性と興奮性にばかりに焦点が当てられているわけではありません。エラ・ハリスは、典型的なヘテロ的な男性像というものに強い抵抗と怒り、エナジーを込め、それらを知的かつ理性的な表現として昇華している。他にも、ドイツのインダストリアルや古典的なテクノミュージックに依拠した「Hero Man」は、典型的なテクノを、現代のエレクトロ、ハウス、そして、鋭い感覚を持ったポスト・パンクと融合しているが、このトラックにおいても、エラ・ハリスのボーカルには Sprechgesang(シュプレヒゲサング)のスタイルが導入されている。 

 

 

「Hero Man」 

 

 

 

ハリスは、このパンデミックのロックダウンの時期を、この曲の中で表現し、「眠れない、食べれない、仕事にいけない」と、この時代における苦悩を解き明かしている。ボーカルのピッチは殆ど常に一定で変わりませんが、微細なトーンの変化の中に特異な抒情性がほのかに揺曳している。これは機械的な何か、またはシステム的な何かへの人間の強い抵抗とも取られることも出来る。

 

アルバムの中盤に差し掛かってもなお、PVAの掲げる音響世界は極限まで押し広げられ、特異性を増していく。中盤のハイライトといえる「Bunker」では、バクスターがボーカルを担当し、ゴツゴツとした雰囲気のエレクトロを提示している。特に、この曲におけるモジュラー・シンセサイザーを駆使した展開力や創造性には驚嘆するよりほかありません。バクスターは、シンセサイザーに使われるのではなく、彼は自発的にアナログシンセをコントロールし、彼自身の創造性を最大限に活用し、楽曲は中盤から終盤にかけて思わぬ展開へと繋げていくのです。常に、バクスターのボーカルは、サウスロンドンの最もアンダーグラウンドにあるダンスフロアの熱気を感じさせ、そこには、彼のこの土地のシーンへの深い愛情と敬意が多分に込められている。彼の生み出すシンセのフレーズ、そして、ボーカルは聞き手を圧倒させるものがあります。それは電子音楽のまだ見ぬ可能性を感じさせるとともに、さらに、これまで誰もアプローチしてこなかったデジタルのように音の増幅の受けないアナログ信号の未来の可能性をここで追求している。

 

先行シングルとして発表された「Bad Dad」の新世代のエレクトロ・ポップのバンガーと称するべき良質なトラックですが、特に、ひとりのリスナーとして大きな驚きを覚えたのが9曲目に収録されている「Transit」です。エラ・ハリスがボーカルをとるこの曲では、近年隆盛のエクスペリメンタルポップの一歩先を行き、時代に先んじた新鮮な方向性が取り入れられている。この曲は、ピアノアレンジが取り入れられたアルバムの中では、ポピュラーミュージック寄りの楽曲に感じられるものの、もちろんこの曲の魅力はそれだけに留まりません。ダークな雰囲気をもちあわせた独特なトラックで、アシッド・ハウスの要素を交え、執拗なフレーズを合間に織り交ぜたあと、曲のクライマックスでは誰も予測出来ない展開が待ち受けている。ここで、PVAは、インダストリアル、エレクトロ、フォークトロニカの未来にある、これまでに存在しなかった類の音楽を提示している。


なぜ、このような音楽が出来たのか、と不思議に思っているが、これは、エラ・ハリスが「このような音楽になるとは想像できなかった、一種の天啓だった」と語っているように、このトリオが事前に設計していた通りの作品よりも、はるかにものすごい音楽が生まれたことを証左しているのです。

 

しかし、芸術全般にこのことは言えますが、自分たちの手から創作物が離れていき、それが作者があらかじめ予想していたのとは全然別の何かに成り代わる時、つまり、本人たちも予期せぬ偶然の要素が入り込んだ瞬間に傑作というのは誕生する。しかし、それは、常に真摯に音楽に向き合い、誰よりも真摯に音楽に取り組んでいる製作者にしか訪れない数奇な瞬間でもある。


更にいえば、PVAは、その幸運に預かる資格を与えられ、幸運なる瞬間を自らの手で力強く掴んでみせた。こういった、どこから生まれたのか容易に解きほぐせない、偶発的な音楽が生み出されるためには、時代的な出来事や、日常のおける身近な出来事、その他、様々な要素が偶然に入り込むのが1つの条件ではありますが、PVAは、ロックダウン時における苦悩を、ロンドンのフロアシーンを中心とするライブの熱狂を介して、創作的な前向きなエネルギーへと変換させてみせた。その大きな成果が、Ninja Tuneからのデビュー作「Blush」には顕著な形で表れているのです。


「Blush」は、多くのリスナーにPVAなるトリオがいかなる存在であるかを力強く示す作品であるとともに、デビュー作としては、ほとんど非の打ち所のない作品です。サウスロンドンから登場した新星ーPVAは、音楽の未知の可能性と明るい未来をここに示してみせています。今後、彼らがどのような傑作をこの世に生み出していくのか心から楽しみにしていきたいところです。

 

 

 

100/100(Masterpiece)

 

 

 

Weekend Featured Track 「Bunker」

 



 蓮沼執太のシングル・プロジェクトの不定期リリースが続いている。最新作「Hypha」(ハイファ)が昨日、10月14日(金) リリースされた。
 
 

コロナウイルスのロックダウン前にニューヨーク・ブルックリン在住時から制作された楽曲で、1作目「Weather」(ウエザー)、「Pierrepont」(ピエールポント)に続く第三弾シングルとなる。

 

「Hypha」は2019年 NY ブルックリンにあるライブスペース「PUBLIC RECORDS」で行ったパフォーマンスのために書き下ろされた楽曲です。当時のライブ映像が公式のYouTubeチャンネルで公開されている。 

 

 

 

蓮沼執太/Syuta Hasunuma 「Hypha」   New Singles



 

Label:  Syuta Hasunuma

Release: 2022年10月14日

 

 

楽曲のご試聴/ダウンロード:

 

https://linktr.ee/shutahasunuma 

 

 

 


LA在住のソングライター、ノア・ウェインマンの名義であるRunnnerは、デビューアルバム『Like Dying Stars, We're Reaching Out』を発表しました。

 

2月17日にRun for Coverよりリリースされるこのアルバムのファースト・シングル「i only sing about food」が本日公開されました。ミュージックビデオを以下よりご覧ください。


「ある朝、友人の家でこの曲を書いたんだ」とノア・ウェインマンはプレスリリースを通じて語っている。

 

「彼らは別の部屋で電話をしていたから、とても静かに演奏して、"私はバカだ "と言い始めるまでブツブツ言っていたのを覚えていて、それがなんだか笑えたから良いスタート地点だと思ったんだよ。

 

 この曲は、自分がどう考えているかということと、自分をどう見せているかということの間にある矛盾を解決しようとした曲なんだ。

 

 私は人間関係において、あらゆる側面やレイヤーを知ってもらいたいと強く思いながら、それを伝えようとする自分の姿にもどかしさを感じていた段階だった。制作も映像も、90年代後半のマドンナの『ミュージック』や『レイ・オブ・ライト』の作品にとてもインスパイアされました」


Dying Stars』と同じく、『We're Reaching Out』は、Runnnerの2021年の作品集『Always Repeating』に続く作品となる。今年初めには、「Vines to Make It All Worth It」という楽曲を発表している。 

 


 

 

この5年間、ロサンゼルスを拠点に活動するミュージシャン、Noah WeinmanはRunnnerとして活動してきた。

 

2021年の作品集 Always Repeating の制作、Skullcrusherレコードのプロデューサーとしての活動、そしてもちろん、デビュー作 Like Dying Stars, We’re Reaching Out に向けた作業も行っている。LAからオハイオ、そして北東部へと、彼は音の技巧に深く関わってきた。

 

携帯電話や携帯型テープレコーダー、エアコンの音、友人からのボイスメールなど、あらゆるものを使って自宅で作られた音楽だ。

 

段ボールをこすり合わせたり、アコースティックサウンドを液体近くまで伸ばしたり、ディレイペダルをランダムに重ねて曲の滑らかさをかき乱したりすることで、既知のものを未知のものに、普通のものを宇宙的なものにすることができる。これらの曲は、完璧さが予測可能性を招き、不完全さがバランスを崩すため、エッジが意図的に荒いままになっている。そして、その聞き取りにおいて、音は真剣になり、質問を投げかけ、会話をすることができる。

 

「アルバムに収録する曲を決めようとデモを整理していたら、言葉の限界というテーマに気がつき始めたんだ」とNoah Weinmanは説明する。

 

「誰かに何かを伝えようとしたとき、うまく伝わらなかったり、結局何も言えなかったりする。親しい人に自分を表現するのに苦労するのは、私の人生でもよくあるパターンです」。トランペットとジャズを学んだ後、ギター、バンジョー、ピアノ、シンセに夢中になり、それらを組み合わせて曲を作り、レコーディングすることに目覚めた。「スタジオの環境から抜け出して、自宅でレコーディングを始めてから、レコーディングが本当に好きになったんだ」と彼は言う。

 

Like Dying Stars, We’re Reaching OutWeinmanの自宅で何年もかけて作曲、録音、改造を行った結果であり、オーガニックな楽器と別世界のデジタル操作のパッチワークとして愛情を込めて作られたものだ。予想外のサウンドと豪華なプロダクションは、Weinmanのメロディーと温かみのあるヴォーカルをさらに際立たせ、疎らな親密さと壮大さを常に絶妙なタイミングで行き来させる。

 

「私はただ、あなたが簡単に識別できないような、少しオリジナルなサウンドを作りたいだけなんだ」と彼は説明する。「しかし、私は自分の選択肢をかなり制限しておくことでそこに到達する。マイクは3本、楽器は数個、MIDIはなるべく使わない。材料リストは短くしていますが、その分、特定の音の生成において、よりクリエイティブになるようにディレクションしています」

 

この音楽的アプローチは、歌詞にも反映されており、見慣れたものが見慣れないものになり、そしてまた見慣れたものになる。

 

米を研ぐこと、シャンプーを買うこと、退屈と孤独が絡み合う様子など、Weinmanはユーモアと心を込めて、日常の中の孤独と不安をふるいにかけている。そして、これらの断片から、彼は新しいものを作ると同時に、すでに知っていて、同時に感じているものを作るのだ。り多くの曲は、緊張が高まり、私が何も言わない、何もしないという物語の弧を描いている」と彼は言う。「それは、思考と会話の間に信号の損失があるようなものです」

 

。”I Only Sing About Food”、”Raincoat”、”Chess With Friends “などの曲は、コミュニケーションに対する様々な精神的、時には物理的な障壁を探り、スキッターなドラムビートとスクラップな音響が、Weinmanの混迷する思考の中をリスナーに導いてくれる。アルバム中盤に収録されている “Running In Place At The Edge of The Map “では、ソファで緊張状態にある自分を、デジタル空間の果てに行き場を失ったビデオゲームのアバターになぞらえている。

 

『Like Dying Stars, We’re Reaching Out』は、次に何が起こるかわからない、一瞬の中に閉じ込められた人生のように聞こえるが、ここにも希望と明るさがある。

 

アルバムの最終トラック “A Map For Your Birthday “は、”Like Dying Stars, we’re reaching out / so much I can’t say / but you nodded anyway “というフレーズで幕を閉じる。私たちは、なりたい自分になることができない、どこに向かっているのかわからない、自分の居場所がないと感じる、現在に満足できない、自分を完全に世界に示すことができない、にもかかわらず、Runnnerは、おそらくお互いを知りたいと願うこと、支離滅裂であったり言葉が出ないときにお互いを理解すること、それが私たちを結びつけるかもしれないと提案している。

 

 

Runner 『Like Dying Stars, We're Reaching Out』




Tracklist:

1. plexiglass
2. i only sing about food
3. bike again
4. raincoat
5. chess with friends
6. reach
7. noah needs a haircut
8. runnning in place at the edge of the map
9. scabpicker
10. string
11. NYE
12. a map for your birthday




アーカンソー州のエレクトロ・ディオ、joanは、2022年最初のニューシングル「don't wanna be your friend」を10月11日にリリースした。


バンドが過去最大のヘッドライン・ツアーから帰国した後に制作されたこの曲について、joanは次のように説明している。

 

「家に帰ったらすぐに曲作りを再開した。2年以上、リリースと並行してライブをしないまま音楽をリリースしていたけど、こんなに元気でインスピレーションを受けて最高の曲を作り始めようと思ったことはなかったよ。Don't wanna be your friend」はツアー後に初めて書いた曲で、すぐに非常に特別な曲であることがわかったんだ」


「この曲は、成長すること、そしてお互いに友達でい続けることができないことを知ることについても歌っている。この曲が何らかの形であなたの心に響くことを願っている。"その人を人生から切り離す必要があると気づいたり、引っ越したり、バンドを始めたくなったり、親友に電話したくなったりするような曲なんだ」


©︎Laura Lewis


 Gold Pandaが、11月11日にCity Slangからリリースされるアルバム『The Work』からの最新シングルを公開した。

 

”I've Felt Better (Than I Do Now)"、"The Corner "に続き、"The Dream "は、Rob Brandon(ロブ・ブランドン)が監督したミュージックビデオと同時にリリースされている。

 

「"The Dream "は、元々複数の曲で構成されており、ハーピーな部分は別々だったのですが、そのサンプルをこの曲にドロップしたら、とてもうまくまとまりました」とゴールド・パンダは説明する。

 

「オーガニックなヴァイナルサンプルとデジタルドラム、テクスチャーは僕のお気に入りの組み合わせなんだ。この曲がどのように仕上がるのか、全く予想出来なかった。夢のように、新しい要素が導入され、他のパートが再び入ってくるまで、一見、場違いなようですが・・・そして突然完成したのです!  長い間、複数の曲として存在し、意味がなく、完全に意味があるものだった」


MVの制作監督を担当したロブ・ブランドンは次のように説明する。「iPhone 6でVRアプリをいろいろ試していたら、楽しいものに出会った。去年から探っていたものを組み合わせたんだ」

 

 



サウンド&ビジュアルアーティストの池田亮司が、ベルリンのレーベルNOTONから12月にニューアルバムをリリースします。


1989年から1999年にかけて録音された音源と、2013年から2022年にかけて制作された楽曲を収録した17曲入りのアルバムです。池田は10月15日に東京のWWW Xでこのアルバムを初公開する予定です。また、12月にはMUTEK.JPでのライブも予定されています。


池田がベルリンのレーベル(当時はRaster-Noton)からリリースした最後のアルバムは、2013年の『Supercodex』です。昨年夏には、ロンドンで開催された彼の作品の最大規模の展覧会のキュレーションに携わった。現在、パリと京都を行き来しながら活動している。


さらに、本日107日(金)、アルバムからの先行シングルカット“ultratronics 01”が配信開始されている。さらに1015日には 東京・渋谷WWW Xにて最新ライブセット「ultratronics [live set]」の世界初演が開催され、127日に<MUTEK.JP 2022>にてLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)での同ライブセットの上演が決定している。



最新アルバム『ultratronics』は122日にCDとデジタル/ストリーミング配信で世界同時リリースされる。CDの国内盤は池田が主宰する〈codex | edition〉より、海外盤はアルヴァ・ノトことカールステン・ニコライが主宰するドイツのレーベル〈NOTON〉より発売され、アルバムのアートワークはそれぞれオリジナルの仕様となる。共に107日からプレオーダーが開始されたので、ぜひお見逃しのないように。




Tracklist

01. ultratronics 00 02. ultratronics 01 03. ultratronics 02 04. ultratronics 03 05. ultratronics 04 06. ultratronics 05 07. ultratronics 06 08. ultratronics 07 09. ultratronics 08 10. ultratronics 09 11. ultratronics 10 12. ultratronics 11 13. ultratronics 12 14. ultratronics 13 15. ultratronics 14 16. ultratronics 15 17. ultratronics 16

©Jack Mckain

 Nick Hakimが、DJ DahiとAndrew Sarloの共同プロデュースによるニューシングル「M1」を発表しました。前作のシングル「Vertigo」、「Happen」に続く、アルバム『COMETA』の最新プレビューとなります。


「M1」は、DJ Dahiのドラムループとクワイアのシンセテイクに、最小限の編集でサブベースの音を加えただけのものでした」とSarloはコメントしています。

 

「この曲はすぐに注目を浴び、私たちはこの曲を作らなければならないと思いました。その夜、ニックは非常識なスクラッチボーカルを披露してくれたのですが、彼がコーラスのリフレインでメロディーを奏でるのを初めて聞いた時のことを思い出すと、今でもゾクゾクする。アルバムの最終段階で、なかなか完成しない曲があるのだけれど、「M1」を時間内に完成させた時のアドレナリンラッシュは、とても嬉しかった。ニックの曲の中で一番好きな曲として間違いなく固まったんだ」



 Nick Hakimのニューアルバム『COMETA』は10月21日にATO Recordsからリリース予定です。


 

 

 

Label: Warp 

Release: 2022 9/30

 



 

 

Review


 近年、クラークは、イギリスからドイツに移住し、昨年には、クラシックの名門レーベル、ドイツ・グラモフォンと契約を交わし、モダン・クラシカルの領域を劇的に切り開いた、最新アルバム「Playground In A Ground」をリリースしています。また、その他にも、ポピュラー・ミュージックとも関わりを持ち始めており、ニューヨークの人気シンガーソングライター、Mitskiとのコラボレーション・シングル「Love Me More」のリミックスを手掛けたり、と最近は、電子音楽にとどまらず、多岐に亘るジャンルへのクロスオーバーに挑戦しています。Clarkは、いよいよ、Aphex TwinとSquarepusherとの双璧をなすテクノの重鎮/ワープ・レコーズの看板アーティストという旧来のイメージを脱却し、新たなアーティストに進化しつつあるように思える。

 

クラークのデビューから十数年にも及ぶバック・カタログの中で最も傑出しているのが、2008年のハード・テクノの名盤『Turning Dragon』、そして、デビュー作としてダンスフロアシーンに鮮烈な印象をもたらした「Body Riddle」である。おそらく、このことに異論を唱えるファンはそれほど少なくないだろうと推察されるが、特に、前者の「Turning Dragon」は、ゴアトランスの領域を開拓した名作であり、クラーク、ひいてはテクノ音楽の真髄を知るためには欠かすことのできないマスターピースといえますが、そして、もう一つ、後者の「Body Riddle」もクラークのバックカタログの中で聴き逃がせないテクノの隠れた傑作の1つに挙げられる。

 

そして、今年、遂に、「Body Riddle」 が未発表曲と合わせて、ワープ・レコーズからリマスター盤として9月30日に再発された。これは、クラークのファン、及び、テクノのファンは感涙ものの再発となる。この再発に合わせて、同レーベルから発売されたのが「05−10」となる。こちらの方は、クラーク自身が監修をし、未発表曲やレア・トラックを集めたアルバムとなっています。

 

最近では、ハードテクノ、ゴアトランスのアプローチから一定の距離を置き、どちらかと言えば、それとは正反対にある上品なクラシック、そしてテクノの融合を試みているクラークではあるが、テクノの重鎮としての軌跡と、ミュージシャンとしての弛まざる歩みのようなものを、このアルバムに探し求める事ができる。次いで、いえば、このアーティスト、クラークの音楽性の原点のようなものがこのレア・トラックス集に見出せる。アルバムの序盤に収録されている#2「Urgent Jell Hack」には、エイフェックス・ツイン、スクエアプッシャーに比するエレクトロの最盛期を象徴するドラムン・ベース/ドリルン・ベースに重点をおいていることに驚愕である。

 

さらに、デビュー作硬質な印象を持ちながらも抒情性を兼ね備えた「Body Riddle」とハードテクノ/ゴアトランスに音楽性を移行させて大成功を収めた大傑作「Turning Dragon」との音楽性を架橋するような楽曲も収録されており、ミニマル/グリッチ、ノイズ・テクノの実験性に果敢に取り組んだ前衛的なエレクトロの楽曲も複数収録されている。元々、クラークは前衛的な音楽に常に挑戦するアーティストではあるものの、そのアヴアンギャルド性の一端の性質に触れる事もできなくはない。そして、近年の映画音楽のように壮大なストーリー性を兼ね備えたモダン・クラシカルの音楽性の萌芽/原点のようなものも#6「Dusk Raid」#8「Herr Barr」、終盤に収録されている#11「Dusk Swells」#12「Autumn Linn」に見い出すことができる。

 

おそらく、「05−10」というタイトルを見ても分かる通り、クラークの2005年から2010年までの未発表曲を収録した作品なのかと思われるが、このレア・トラックス集では、これまで表立ってスポットを浴びてこなかったクラークの音楽性の原点が窺えると共に、このアーティストらしいハードテクノの強烈な個性をこのアルバムには見出すことが出来るはずです。

 

また、驚くべきなのは、このアーティストしか生み出し得ない唯一無二のハード・テクノは、2022年現在になっても新鮮かつ前提的な雰囲気を放っている。それは現時点の最新鋭のモダンエレクトロと比べても全然遜色がないばかりか、しかも、2000年代に作曲された音楽でありながら、時代に古びていない。「なぜ、これらのトラックが今まで発売されなかったのか??」と疑問を抱くほど、アルバム収録曲のクオリティーは軒並み高く、名曲揃いとなっています。

 

『05−10』は、レア・トラックス集でありながら、クラークの新たなオリジナル・アルバムとして聴くことも無理体ではなく、全盛期のエイフェックス・ツイン、スクエア・プッシャーの名盤群の凄みに全然引けを取らないクオリティーをこのレアトラック集で楽しむことが出来る。このアルバムは、クラークの既発のカタログと比べても、かなり聴き応えのある部類に入ると思われます。さすが、ダンス・エレクトロの名門、Warpからのリリースと称するべき作品で、もちろん、テクノミュージックの初心者の入門編としても推薦しておきたい作品となっています。



87/100

 


・ Featured Track「Dusk Raid」




ロンドンのエレクトロデュオ、Mount Kimbieは、片面ずつ異なるメンバーがプロデュースした新しいダブルアルバムの製作完了を発表した。このダブルアルバムは、11月4日にリリース日がマークされている。

 

「Die Cuts」は、Dom Maker(ドム・メイカー)、『City Planning』はKai Campos(カイ・コンポス)のプロデュースとなる。「Die Cuts」は、James Blake、slowthai、Danny Brownなどがゲスト参加しており、かなりコラボレーション色の強い作品となっています。


本日、二人は、それぞれのアルバムから「F1 Racer」(Kučkaをフィーチャー)と 「Zone 1 (24 Hours) 」を公開しました。

 

更にまた、Maxo KreamとPa Salieuがヴァースを担当した、このダブルアルバムに収録されない単独のシングル 「Locked In」も公開されています。以下、アートワークと収録曲をご覧ください。 

 

 

 「F1 Racer」

 

 

 

 「Zone 1 (24 Hours) 」

 

  

 

 

「Locked In」(ダブルアルバムには収録されません)

 

 


 

Mount Kimbie 『Die Cuts』/『City Planning』



Die Cuts:


01 “DVD” (Feat. Choker)
02 “In Your Eyes” (Feat. Slowthai & Danny Brown)
03 “F1 Racer” (Feat. Kučka)
04 “Heat On, Lips On”
05 “End Of The Road” (Feat. Reggie)
06 “Somehow She’s Still Here” (Feat. James Blake)
07 “Kissing” (Feat. Slowthai)
08 “Say That” (Feat. Nomi)
09 “Need U Tonight”
10 “If And When” (Feat. Wiki)
11 “Tender Hearts Meet The Sky” (Feat. Keiyaa)
12 “A Deities Encore”

 

City Planning:


01 “Q”
02 “Quartz”
03 “Transit Map (Flattened)”
04 “Satellite 7”
05 “Satellite 9”
06 “Satellite 6 (Corrupted)”
07 “Zone 3 (City Limits)”
08 “Zone 2 (Last Connection)”
09 “Zone 1 (24 Hours)”
10 “Industry”
11 “Human Voices


 


PVAが、Ninja Tuneから10月14日にリリースされるニューアルバム『Blush』の新曲を公開しました。

 

「Bad Dad」は、「Untethered」、「Hero Man」、「Bunker」に続くシングルです。PVAのシンガー、エラ・ハリスは、このシングルのテーマについて、「『Bad Dad』は、新しい父親が夜な夜な息子をチェックし、男らしさの系譜とそれが汚れのない人間に与えるかもしれない影響を恐れている内的世界を探っています 」と語っています。

 

この曲のミュージック・ビデオは以下よりご覧ください。

 

©︎Shervin Leines

 

 American FootballのMike/Nate Kinsellaの従兄弟からなるニュープロジェクト、LIESがニューシングル「Corbeau」を公開しました。

 

これまで、LIESは、エレクトロニカ/フォークトロニカの側面から新境地を開拓しようとしているように感じられましたが、このシングルについては、マイク・キンセラのソロ・プロジェクトOWENの楽曲に近いキャラクターを持っている。「Blemishes」、「Echoes」、「Summer Somewhere」の全3曲に続いて、Now, NowのKC Dalagerがバックヴォーカルを務めている。

 

 



UKの電子音楽プロデューサー、Floating Pointsがニューシングル「Problems」を9月21日にリリースしました。宇多田ヒカルの『Badモード」にも参加したフローティング・ポイントの今年に入って三作目のシングルで、「Grammar」、「Vocoder」のフォローアップとなります。


「Problems」は、お馴染みのコラボレーターであるHamill Industriesによるミュージックビデオと併せて公開された。ハミル・インダストリーズは、声明で次のように述べています。"Problems "は、その恍惚とした音波が到達するフロアを興奮させることを意味しています”

 

「私たちは、イメージを音響化する特殊な技術を使って、動きとダンスでそれを祝福し、音でそれを再形成したいと思いました。音楽に合わせて回転しながら動くレーザーを使い、しなやかな形状を目に見えるようにしました。この映像は、ダンスフロアにいるときに感じる電気的な感覚、音波が耳に届くと踊りたくなる衝動を形にすることが重要でした」

 

 F.S  Blumm  「Kiss Dance Kiss」

 

 

Label: blummrec

Release: 2022年9月16日

 

Listen/Stream

 

 

Review 

 

ドイツ国内のダンスミュージックシーンで異彩を放つF.S Blummは、Nils Frahmとともにベルリンの芸術集団に属していることでも知られる。


F.S.ブラームは、この最新作「Kiss Dance Kiss」で、ダブ、レゲエ、エレクトロと多彩な音楽性に挑戦を試みています。2000年代、元来、王道のエレクトロニカに近い作風のアルバムを制作していましたが、2021年のニルスフラームとのコラボレーションアルバム「2×1=4」のリリースを契機にレゲエ/ダブへ傾倒を見せるようになっていった。このアルバムが何らかの触発、インスピレーションをこのアーティストに与えたことはさほど想像に難くはない。

 

F.S.ブラームのDUBのアプローチは、アンディ・ストット、ダムダイク・ステアといった、現代のマンチェスターのダブステップ勢とは明らかに趣を異にしており、リー・スクラッチ・ペリーの古典的なレゲエの要素を多分に包含している。その点は、この最新作「Kiss Dance Kiss」でも変わらず、ドラムのスネア/ハイハットにディープなディレイ・エフェクトを加え、その素材をループさせることにより、サンプリング的な手法で重層的なグルーブを生み出していく。

 

つまり、上記したようなF.S.ブラームのダブの手法は、本人は意図していないかもしれないが、どちらかといえば、ヒップホップの最初期のDJのサンプリングに近い技法となっている。一見、それは古びているように思えるかもしれないが、このアーティストは、ラップに近い手法に、ラテン、カリブ音楽に近い性格を卒なく込めているため、そのアプローチは、かなり先鋭的な気風が漂う。ブラームは、トラックメイク/マスタリングにおいて、ディレイを駆使し、前衛的なリズム/グルーブを生み出している。本作は、レゲエ・ファン/ダブ・ファンを納得させる作品となるに違いない。

 

最新アルバム 「Kiss Dance Kiss」は、レゲエ、ダブ、スカ、ダンス・ミュージックの本来の楽しさを多角的に追究している。前作EP『Christoper Robin』において、リゾート感を演出した、というF.S.ブラームの言葉は今作のテーマにも引き継がれている。ここでも、彼が言ったように、リゾート地の温かなビーチの夕暮れどき、海の彼方を帆船が往航する様子を眺めるような、何とも優雅な雰囲気が醸し出されているのだ。

 

オープニング・トラック「Kauz」は、近年のマンチェスターのエレクトロに近いアプローチが取り入れられている。名プロデューサー、リー・スクラッチ・ペリーのダビングの手法を最大限にリスペクトした上で、クラウト・ロック、インダストリアルの雰囲気を加味し、スカに近い裏拍を生かしたエレクトロ・トラックを生み出している。


古典的なジャマイカのレゲエサウンドに依拠した2ndトラック「Ginth」は、近年のブラームの作風に実験性が加味され、ほかにも、ギターロックの影響がほのかに垣間見える。「Zinc」は、ジャムセッションの形をとったフリースタイルの楽曲で、オルガン、ギター、ドラムのアンサンブルを介してモダン・ジャズ的な方向性を探究している。

 

「Mage」において、F.S.ブラームは、トーキング・ヘッズの傑作「Remain In Light」で見られたようなイーノのミニマルミュージックの手法を取り入れ、ダンサンブルなロックに挑む。「Nimbb」は、現代的なエレクトロニカの雰囲気を演出しており、ここで、ブラームは、Native Insturument社のReaktorに近いモジュラーシンセを取り入れつつ、実験的なエレクトロを生み出している。


「Mioa」は、「Zinc」に近い、ジャズセッションの形を取ったトラックで、Tortoiseのように巧みなアンサンブルを披露している。反復フレーズを駆使したギター、しなるようなベース、シンプルなドラムとの絶妙な兼ね合いから生み出される心地よいグルーブ感を心ゆくまで堪能することが出来る。

  

「Nout Vision」ー「Nout」は、前作のEPの続編のような意義を持つ楽曲で、一対のヴァリエーショントラックとなっている。ジミー・クリフの精神性を彷彿とさせる古典的なレゲエ・サウンドを、モダン・エレクトロの側面から再解釈しようとしている。ここでは感覚の鋭いダブサウンドとトロピカルな雰囲気が絶妙に融合されている。


さらに、フィナーレを飾る最後の収録曲「My Idea Of Anarchy」ではシカゴのSea And Cakeを彷彿とさせる「Nout Vision」のボーカルバージョンが収録されている。おしゃれで、くつろいだ簡素なジャズ・ロックは、上記のインスト曲と聴き比べても楽しい。


最近、F.S.ブラームはインスト曲にこだわらず、ボーカルトラックにも挑戦するようになっていますが、ボーカルは適度に力が抜けており、心地良さが感じられる。このラスト・トラックを聴き終えた後には、リゾート地に観光した時のように、おだやかで、まったりとした余韻に浸れるはずです。



84/100

 

 

 

Featured Track  「KAUZ」

 

 


スイスの独立レーベル”WRWTFWW”は、寺田創一の別名プロジェクト”OMODAKA”としての2001年から2019年にかけての作品を網羅した新たなコンピレーション『ZENTSUU』をリリースします。『Collected Works 2001-2019』を今年10月21日にbandcampにて発売される。

 

寺田創一は2001年、"競艇(ボートレース)のためのBGM "を作製するために、この別名プロジェクト”OMODAKA”を立ち上げたという。


2001年から2019年までの寺田創一の作品を集めた『ZENTSUU:Collected Works 2001-2019』は、レトロゲームサウンドを生かしたチップチューン、エレクトロ、ダウンテンポ、日本の伝統音楽、ハウスを融合させたなんともノスタルジックな作品となっている。Perfumeのプロデューサー・中田ヤスタカの音楽性のルーツがこの作品に見出すことが出来る。

 

「Collected Works 2001-2019」は10月28日にリリースされる。





寺田創一  『Collected Works 2001-2019』

 


 

Tracklist:
1. Aranjuez
2. Galaxy Deca
3. Kiso Bushi
4. Iyano Kobiki
5. Kusatsu Bushi
6. Nanbu Ushioi Uta
7. Chakkiri Bushi
8. Ryotsu Jinku
9. Hyamikao
10. Cantata no.147
11. Kokiriko Bushi
12. Fortunate 1mark
13. Otemoyan
14. Yosawya San
15. Hietsuki Bushi
16. Monkey Turn
17. Kyoteidaiski
18. Plum Song


 

©︎Jacob  Ekvall


スウェーデンのエレクトロ・ポップ・バンド、リトル・ドラゴンが昨日、Ninja Tuneから新作EP『Opening the Door』をリリースした。また、同EPから、アトランタのラッパー、JIDとのコラボ曲「Stay」も公開されている。


プレスリリースを通じて、バンドは次のように述べている。「JIDが僕らの音楽のファンだと知った時、彼の音楽を聴き始めた」

 

「その気持ちはすぐに伝わりました。彼の作曲と歌はとてもシャープでクリエイティブだから、彼をトラックに起用することを決めた!」と述べています。さらに、このニューシングルは、「自分たちの弱さを示し、その人と一緒に夢を見続け、成長していきたいという気持ちを表現している」という。


EPのリリースに合わせて、シングル "Frisco "のミュージックビデオが公開されている。こちらは以下よりご覧下さい。昨年、12月、リトル・ドラゴンはNinja TuneからEP『Drifting Out』をリリースしている。

 



渋谷慶一郎 「ATAK026 Berlin」

 


 

Label:  ATAK 

Release:  2022年9月11日

 



 

Review

 

本作「ATAK026 Berlin」は、渋谷慶一郎が主宰するATAKの設立20周年を記念してリリースされました。2008年にドイツ・ベルリンのメディアアートの祭典「Transmediale」で行われたライブパフォーマンスのために作曲された楽曲群を2022年に再構成、細部に至るまでエディットしなおしたという。また、このアルバムでは、ドイツの生物学者、カオス理論のレスラーアトラクター、オットー・E・レスラーとの2008年当時にベルリンで行われた対話から引用されたサンプリングも「War Cut」に導入されているのに注目です。

 

これまで、最愛のパートナーであったMariaの死去に捧げられた美麗なピアノ曲、Alva Notoを彷彿とさせるようなノイズ・グリッチ、さらに、その他、初音ミクとの大掛かりなコラボレーション・ミュージカル、常に前衛性に重点を置いた実験音楽に挑戦してきた渋谷慶一郎氏は、この作品において、ノイズ・グリッチの先鋭的な方向性を探っている。この新作アルバムに収録されているサウンドは、東京大学教授の池上高志とのコラボレーションを元に生み出されたもので、サイエンスデータをコンピューター内部で変換し、再生されたノイズをかけ合わせたものとなっています。

 

ここで、渋谷慶一郎は、最新鋭のグリッチ作品を提示しており、それらは数学と映像を融合させた池田亮司のアプローチに近い音楽性を選んだようにも見受けられる。元々、グリッチはコンピューターの誤作動、エラーにより発生した電子音楽の一つなんですが、そのノイズを物理的あるいは数学的に組み直そうと、これまでに存在しえなかった実験音楽にチャレンジしています。


物理学には疎いので、どういった意図でテクノロジーのエラーが作製されたものなのかを指摘することは難しい。しかし、これは、どちらかと言えば、これは、Ovalの最初期のグリッチの流れを汲むもので、徹底して感情性を排したかのような無機質なミニマル・ミュージックが展開されている。「ATAK026 Berlin」は、決して人好きする音楽を狙ったわけではないし、一般的な音楽とも言いがたいものの、日本の電子音楽アーティストとしてヨーロッパの最前線の電子音楽に勇猛果敢に挑戦していることは、正当に評価されるべきでしょう。明らかにノイズ性を突き出した前衛的なアプローチを、渋谷慶一郎は今作において追究しているように思えますが、それは、この上なく洗練された形で提示されている。これは、レコーディングやミキシングを深く知悉した音楽家・プロデューサーだからこそ生み出すことが出来る実験音楽とも言えるのです。

 

アルバム全体は、SF調の雰囲気が漂い、各々の楽曲は精細な音によって構成されている。これらのノイズが既存の音楽と異なる点は、分子や粒子ひとつひとつが集積し、「音」というエネルギーを構成するという、科学の神秘を解き明かしているように思えます。さらに、精細なノイズにより、どのような音響空間を演出するのか、また、サウンドスケープを描くのかが、この作曲者が念頭に置いていたテーマだったと推察される。であるとするなら再構成によりその意図はほぼ完全な形として昇華されている。

 

アルバム全編には、一貫して、ノイズ・グリッチのアプローチが取り入れられていますが、それは必ずしも単調なものであるとは言いがたく、わずかに電子音楽としてのストーリー性を感じさせるものとなっています。例えば、「Metaphysical Things」では、それらの手法の延長線上にあるアシッド・ハウスにたどり着く。さらに、クローズ・トラックの「Near Death Experience」はその手法を受け継いだ上、ドローンに近い音楽性へと転化する。これはノイズの連続音の行き着く先がアンビエントと証明づけた音響学の発見と称するべきでしょう。そして、これほどまでに緻密で物理的なアプローチをこの作曲家が取ったことは近年なかったようにも思える。もっと言えば、既存のATAKの作品の中で、もっとも先鋭的な作風として位置づけられるかもしれません。 

 

物理学や工学の要素を大々的に宣伝するまでもなく、今作は、ノイズ/グリッチとして画期的な作品であることに変わりありません。そして、おそらく、現在の日本のミュージック・シーンを見渡すかぎり、「ポスト・サカモト」のポジションを引き継ぐ人物がいるとするなら、バイオグラフィーの観点から言っても、渋谷慶一郎氏をさしおいてほか誰も見当たらないという気もします。

 

 

85/100