ドイツの伝説的バンド、CANのボーカル、ダモ鈴木が74歳で死去した。CANのインスタグラムの投稿で、昨日(2月9日)亡くなったことが明らかになった。「ダモの優しい魂と生意気な笑顔は永遠に惜しまれるだろう」とメッセージは書かれていた。


死因については明かされていない。鈴木は2014年に大腸がんと診断された。彼のがんとの闘い、そして人生と音楽は、2022年のドキュメンタリー映画『Energy』において知ることが出来る。


バンドの公式の投稿は以下の通り。


「彼の限りない創造的エネルギーは、Canだけでなく、全大陸にまたがるネットワーク・ツアーでも、世界中の多くの人々に感動を与えました。ダモの優しい魂と生意気な笑顔は永遠に惜しまれるだろう。彼はマイケル、ジャキ、ホルガーと素晴らしいジャムを披露する予定だ! 彼の家族と子供たちにたくさんの愛を」


鈴木がCANに在籍していたのは1970年から1973年までの数年間だった。彼はマルコム・ムーニーの後任として二期目のCANのサウンドを司った。『Tago Mago』(1971年)、『Ege Bamyasi』(1972年)、『Future Days』(1973年)といったクラウトロックの歴史的名盤に参加した。


日本生まれの彼は、ミュンヘンでバスキングをしていたときにCANと出会い、CANに加入。ドイツのケルンに定住した。妻のエルケ・モルスバッハと子供たちがいる。


 

©︎Kelly Christine Sutton


Kacey Musgraves(ケーシー・マスグレイヴス)がニューアルバム『Deeper Well』を発表した。2021年の『star-crossed』に続くこのアルバムは、3月15日にリリースされる予定だ。本日の発表では、タイトル曲と、ハンナ・ラックス・デイヴィスが監督したミュージックビデオが公開された。


このニュー・シングルについて、マスグレイヴスは声明の中でこう語っている。「時には岐路に立つこともある。風向きが変わる。かつて惹かれたと感じたものが同じ魅力を持たず、コースから外れても、やがて自分の足元を見つけ、新たなインスピレーション、新たな洞察、より深い愛を別の場所で探し求める」


マスグレイヴスはこの新作を、長年のコラボレーターであるダニエル・タシアンとイアン・フィチュックと共同プロデュースし、その大半をニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオでレコーディングした。「エレクトリック・レディは最高のモジョを持っている。「素晴らしいゴーストたちよ」。マスグレイヴスはまた、彼女の最初の2枚のレコードを手がけたシェーン・マカナリーとジョシュ・オズボーンとも「The Architect」という曲で再会した。


「Deeper Well」



Kacey Musgraves 『Deeper Well』



Tracklist:


1. Cardinal

2. Deeper Well

3. Too Good to be True

4. Moving Out

5. Giver / Taker

6. Sway

7. Dinner with Friends

8. Heart of the Woods

9. Jade Green

10. The Architect

11. Lonely Millionaire

12. Heaven Is

13. Anime Eyes

14. Nothing to be Scared Of


今週はかなり多くの注目のリリースがありました。マーキュリー賞の受賞者、リトル・シムズの前作アルバムに続くサプライズリリースを行い、ラップファンを驚かせました。さらにスウェーデンのポップスター、ザラ・ラーソン、ブライトンのポストパンクバンド、プロジェクターズ、スウェーデンのドローン・ミュージックの音楽家、カリ・マローン、そしてブルーノートからもジョエル・ロスという才覚のあるジャズマンの新作が登場しました。「Kerrang!」のカバーアートを飾ったハイパーポップ/ゴシックポップの新星、チェルシー・ウルフにも注目です。

 


 


Zara Larsson 「Venus」


スウェーデンのシンガー、ザラ・ラーションのポップはどこまで世界を席巻するのか。「Venus」の制作過程は2021年6月頃に始まり、ラーションは自身のソーシャルメディアを通じて「アルバム3番のスタジオに戻る」というキャプションとともに自身の写真を投稿し、新しい時代の始まりを予告した。


その投稿からほぼ1年後、NMEとのインタビューで、アーティストはポスター・ガールの後継作が半分完成していることを明らかにしただけでなく、このプロジェクトが2023年初めにリリースされることも明らかにした。彼女は、サウンドはまだポップが中心だが、少しダークさもあり、傷つきやすさや恋にまつわるテーマもあると付け加えた。


2022年6月8日、彼女はTEN Music GroupのCEOであるOla Håkanssonとの合意により、自身の全音楽カタログを正式に買い戻したと発表した。この発表はまた、Epic Records(アメリカ)およびSony Music(スウェーデン)との提携による自身のレコードレーベルSommer Houseの立ち上げと同時に行われた。


プレスリリースの中で、レーベルのディレクターとザラは、この契約についてそれぞれの考えを語っている。


「アーティストとしてブレイクする機会を与えてくれ、私のキャリアをスタートさせてくれたオラとTENのみんなに本当にありがとうと言いたい。TENの皆さんは、音楽業界の女性にとってとてもとても稀なこと、つまり自分のカタログを持てるということを実現させてくれています。そうなれば、私が自分のレコード会社を立ち上げるのも納得がいく。自分の将来と、ソニーとの継続的なコラボレーションがとても楽しみです」


「これは、ザラの音楽キャリアにおける自然でエキサイティングな展開です。私たちは10年以上一緒に仕事をしてきましたが、ザラは若いにもかかわらず、今日の国際的な音楽シーンで豊富な経験を持ち、定評のある国際的なアーティストです。ザラの音楽キャリアを追うのはとてもエキサイティングなことでしょう。私は彼女の幸運を祈るとともに、彼女がすべての音楽的夢を達成し、その素晴らしい芸術性を世界最大の舞台で披露することを確信している」



 

Steaming Link:

https://zaralarsson.lnk.to/VENUS_preorder 

 

 

 

Little Simz 『Drop 7』 EP



一昨年、マーキュリー賞を受賞したイギリスのラッパー、リトル・シムズが1年以上ぶりにEPをリリース。今週初め、彼女のインスタグラムでトラックリストとスニペットで「Drop 7」を予告していたが、7曲入りのフル・プロジェクトが今、私たちの手の中にあると、この新作を予告した。


常に2歩先を行く未来志向のラッパーは、常にサウンドを進化させ、プロジェクトの度にファンに予想外のものを提示している。


このEPでリトル・シムズは、彼女のトレードマークである内省的なリリックを、これまでの彼女の作品の中で最も実験的でクラブ・インフューズされたビートの迷宮に通している。このEPは、シムズが2021年のシングル「Rollin Stone」、2015年の「Time Capsule」、「Devour」などで過去に何度か一緒に仕事をしているプロデューサーのJakwobとのコラボレーションの成果である。


ペーシーでハードなオープニングの「Mood Swings」から、レゲトンにインスパイアされた「Fever」、ダークでささやくような「I Ain't Feeling It」まで、「Drop 7」の各トラックは独自のサウンド領域で独立している。


「Drop 7」に収録されている曲は、1曲を除いてすべて、ほとんど閉所恐怖症のような急速なプロダクションを特徴としている。シムズは、EPの最終トラックであるピアノを中心としたジャズ調の「Far Away」では、特別な繋がりを失ったことを嘆きながら、バターのようなヴォーカルにスポットライトを当てている。 

 


Steaming Link:

https://littlesimz.ffm.to/drop7



Kali Malone 『All Life Long』



スウェーデンの実験音楽家、カリ・マローンのニュー・アルバム『オール・ライフ・ロング』は、マローン作曲のパイプオルガン、聖歌隊、金管五重奏のための楽曲集で、2020年~2023年の作品。


合唱曲はマカダム・アンサンブルにより演奏され、エティエンヌ・フェルショーがナントのノートルダム・ド・L'Immaculée-Conception礼拝堂で指揮。金管五重奏曲をアニマ・ブラスがニューヨークのザ・バンカー・スタジオで演奏。ローザンヌのサン・フランソワ教会、アムステルダムのオルゴールパーク、スウェーデンのマルメ・コンストミュージアムで、カリ・マローンとスティーブン・オマレーが歴史的なミーントーン・テンパー式パイプオルガンでオルガン音楽を演奏。


カリ・マローンは、稀に見る明晰なヴィジョンで作曲を行う。彼女の音楽は忍耐強く集中力があり、潜在的な感情的共鳴を引き出す進化する和声サイクルを土台としている。時間は極めて重要な要素であり、持続時間や広がりへの期待を手放すことで、内省と瞑想の空間を見出すチャンスを与えてくれる。


彼女の手にかかると、何世紀も前のポリフォニックな作曲法を実験的に再解釈したものが、音、構造、内省の新しい捉え方への入り口となる。畏敬の念を抱かせるような範囲ではあるが、マローンの音楽で最も注目すべき点は、それが促す耳を澄ませることによってかき立てられる親密さ。


2020年から2023年にかけて制作された『オール・ライフ・ロング』では、2019年の画期的なアルバム『ザ・サクリファイス・コード』以来となるオルガンのための作曲を、マカダム・アンサンブルとアニマ・ブラスが演奏する声楽と金管のための相互に関連する作品とともに紹介している。


12曲の作品の中で、和声的なテーマやパターンが、形を変え、さまざまな楽器のために繰り返し提示される。それらは、かつての自分のこだまのように現れては消え、見慣れたものを不気味なものにしていく。


ベローズやオシレーターではなく、ブレスによって推進されるマローンの合唱と金管楽器のための作品は、彼女の作品を定義してきた厳格さを複雑にする表現力を持ち、機械的なプロセスによって推進されてきた音楽に叙情性と人間の誤謬の美しさをもたらす。15世紀から17世紀にかけて製作された4つの異なるオルガンで、マローンがスティーヴン・オマリーの伴奏を加えて演奏する。

 


Steaming Link:

 

https://kalimalone.bandcamp.com/album/all-life-long 



Helado Negro 「Phasor」


『PHASOR』はランゲの最もタイトなコレクションで、深く、雰囲気があり、綿密に実行されている。 2019年の『This Is How You Smile』では、より前面に出たドラムとベース、集中したグルーヴを取り入れた。  


2021年のアルバム『Far In』では、部屋の向こう側ではなく、Zoomを通して母親と話すという隔離された状態に焦点を当てた。  『PHASOR』は、再び外に出ることへのオマージュである。  太陽がどんな風に感じるかを思い出し、肌を温めることで、人生を取り戻すためのレコードなのだ。


PHASORの種の一部は、2019年のランゲの39歳の誕生日に、イリノイ大学にあるサルバトーレ・マティラーノのSAL MARマシンを5時間見学した後に植え付けられた。このマシンは、ヴィンテージのスーパーコンピューターの頭脳とアナログオシレーターでジェネレーティブに音楽を作り出す複雑なシンセサイザー。  サウンド・シーケンスに無限の可能性を生み出すことができる。  「私はそれに魅了されました」とランゲは振り返る。SAL MARの経験がPHASORの基礎となった。サルマーの経験は、ランゲに自分自身について多くのことを教え、彼のクリエイティブ・プロセスの中心となった。  


「何が私を刺激するのか、特別な洞察を与えてくれた」とランゲは説明する。  「プロセスと結果における絶え間ない好奇心の追求なんだ。  曲は果実だけれども、私は土の下にあるものが大好きなのさ。 目に見えない魔法のようなプロセス。誰もがそれを見たいと思っているわけではないからだ。ただ果実を求める人もいる。 私はそうだ。 私は実も育てたいんだ」


ファー・インの後、ランゲはノースカロライナ州アッシュビルに移り住み、雲母が点在する結晶のような山々、野生のブルーベリーの茂み、そして漆黒の土が常に表面を覆っている風景が制作に欠かせないものとなった。  このコレクションは彼の妻でアルバム・アート・ドローイングを手がけたコラボレーター、クリスティ・ソードのスタジオの向かいにある彼のスタジオで制作された。

 



Steaming Link:

https://heladonegro.ffm.to/phasor 

 

 

Madi Diaz 「Weird Faith」


『Weird Faith』で、マディ・ディアスは、「ほんの少しの時間と空間があれば、どんなに揺るぎない感情さえも開かせる」(ピッチフォーク)。ディアスにとってその答えは、不安を探ることだった。


ディアスは2000年代後半からレコードを作り、プロとして曲を書いてきたが、2021年の『History Of A Feeling』をリリースするまで、彼女が広く知られるようになったと感じることはなかった。デビューアルバムではなかったが、確かにそう感じた。彼女は昼と夜のテレビデビューを果たし、2014年以来のソロツアーに乗り出し、ワクサハッチーやエンジェル・オルセンのツアーをサポート、レコードでは彼らとコラボレートした。ハリー・スタイルズは、ディアスを北米のアリーナやスタジアムでの前座に抜擢し、彼女の魅惑的なライブ・ショーに魅了され、彼のツアー・バンドのメンバーとして、ヨーロッパとイギリス全土で彼と共に歌い、さらに様々な都市でショーの前座を続けるよう依頼した。国際的なツアーを3ヶ月間行った後、ディアスはナッシュビルに戻り、ニュー・アルバム『Weird Faith』のリリースに向けて準備を進めている。

 

前作『History of a Feeling』でディアスは、長い交際の解消と微妙な別れに直面した。「あのアルバムを書くのは、感情のダーツ盤にダーツを投げるようなものだった」と彼女は言う。自分自身の悲しみを処理すること以外には何の目的もなく、自分が感じていることの核心に近づこうとしていた。その感情を消費するために外に出すのは怖かったが、ディアスはこのレコードをツアーに出す過程で不思議な癒しを感じた。ファンは彼女のセットに合わせて叫び、ウェンブリー・スタジアムのような場所で自分の言葉が反響してくるのを聞く力は、彼女を肯定するものだった。「女の子たちが思い切り大きな声で叫んでいるのを聞いて、部屋に立っていると力が湧いてくるの」と彼女は言う。


ケシャやリトル・ビッグ・タウンなどのアーティストのために曲を書く一方で、ツアー中の時間は、ディアス自身のプロジェクトや物語に対する興奮を新たにした。  

 

『Weird Faith』では、ディアスは再びロマンチックなパートナーシップについて考察している。今回は誰かを好きになること、そして新しい関係が引き起こす終わりのない自問自答について歌っている。


「このアルバムは、愛によって本当に火傷を負った後、勇気を出して再挑戦することを歌っている。勇気を出して、もう一度やってみること。そうやって勇気を出そうとするのは、私たちの本性なの。交通事故が起こるのは見えている。そうならないかもしれないけれど、とにかくそれに備えようとするの」


新しい恋の渦中で、彼女は繰り返し同じ疑問にぶつかった。「私はこの準備ができているのだろうか?自分にできるのだろうか?良いことと悪いことの区別がつく自分を信じていいのだろうか?

 

『Weird Faith』を書いているとき、ディアスは昔からソングライターを悩ませてきた問題に直面した。感傷的になったり、陳腐になったり、偽物になったりせず、ロマンスや愛について書くにはどうすればいいのか? ディアスにとってその答えは、恋に落ちるということが、屈辱的とまではいかずとも、いかに不安を誘うものであるかを探求することだった。『Weird Faith』はこれらの疑問に率直に応えている。ディアスはアルバムについて、「新しい恋愛の記録であると同時に、自分自身との新しい恋愛の記録でもある」と語っている。このアルバムは、あなたが「I Love You」と言ってから、相手が言い返す(あるいは言い返さない)までの合間に存在する。

 

 

 

Streaming Link:

https://madidiaz.ffm.to/weirdfaith



Projector 「Now We When Talk Violence」




2018年の結成以来、PROJECTORは、頑なに独自の道を歩んできた。フックのあるオルタナティヴロックに鋭利なインダストリアル・ドラム・マシン、そしてロンドンのシーンに触発された熱狂的なポストパンクにみずみずしいメロディを持ち込む。バンドはサウンドの幅広さとポップに対する実験的な姿勢をデビュー時から保持している。トリオはロック界の巨人、クレオパトリック(Cleopatrick)とヨーロッパツアーを行い、BBCラジオ6のスティーヴ・ラマック/エイミー・ラメの番組でオンエアされるようになった。それはこのクラフトに対する自信の賜物だった。


PROJECTORのサウンドを聴けば、現代のポストパンクがどうあるべきなのか、そして何をアウトプットすべきかを熟知しているかは瞭然だ。表現の微妙なニュアンス、現代生活、精神、政治の真の狂気と厳しさについて言及している。(彼らは歌詞について話したがらない)。レコーディングに対して一貫した姿勢を貫いてきたPROJECTORはこの数年、独力でプロデュースとレコーディングを行うことで、クリエイティブなアウトプットの手綱をしっかりと握っている。


PROJECTORのデビューアルバム「NOW WHEN WE TALK IT'S VIOLENCE」は2月9日に自主レーベルから発売。三者三様の芸術的な錯乱、鋭い攻撃性を持ち寄り、そして、バンドがメインストリームのロック・シーンに殴り込みをかける。ポップなフックの間を軽やかに行き来する。


ある時は、ジョイ・ディヴィジョン/インターポールを想起させるダークでインダストリアルなブルータリズムに染め上げられたかと思えば、またある時は、Squid風味のハイパーアクティブなラントポップのスペクタクルを織りなす。アルバムのクライマックスは、ドラムマシーンとみずみずしいハーモニーで歪んだアシッドに侵食されたカントリーに傾き、ラナ・デル・レイ風味のコーラスに乗せ、『Incesticide』時代のパラノイアなグランジ・ロックへと飛躍してゆく。


男女の双方のメインボーカルの個性が苛烈なポストパンク性、それとは対照的な内省的なオルトロック性を生み出す。ボーカルにはリアム・ギャラガーのようなフックと親しみやすさがある。かと思えば、対照的にアンダーグラウンドなカルト的な雰囲気を擁する。それはロックの持つ原初的な危険性である。なにより、バンドのテンションが、ピクシーズの初期のような奇妙な熱気を持ち、曲全般をリードする。それは彼らのライブのリアルなエネルギーを力強く反映している。

 


 

Steaming Link:

https://www.projectorprojector.co.uk/



Sonic Youth 「Wall Have Eyes」


このレジェンダリーなブートレグは、1985年のエポック的なツアーで行われた3つの重要なイギリス公演の録音をもとに制作された。1983年に英国を訪れたソニックユースは、耳を劈くような音量で会場をクリアにし、音楽プレスから賞賛を浴びた。2年後に再び訪れた1985年のツアーは、ソニック・ユースと英国との関係を確固たるものにし、永続的な影響力を持つことが証明された。


2月9日に発売される「Walls Have Ears」は、様々なブートレグで長期間入手困難だったライヴ音源を、原音に忠実に再現している。ソニック・ユースのドラマー、スティーヴ・シェリーがテープの入手に協力し、完全な形でリリースされることになった。


「Walls Have Ears」は、二枚組のヴァイナル、CD、カセット、デジタル・ダウンロードで入手可能だ。ファンに人気の「Expressway To Yr.Skull」が収録。長らくソニック・ユースのライヴ・セットで戦力となってきたこのヴァージョンは、荒々しく、縛られておらず、完全にストレートだ。





Streaming Link:

https://sonicyouth.bandcamp.com/album/walls-have-ears




Chelsea  Wolfe 「She Reaches Out To She Reaches Out To She」

 



ゴシック的な雰囲気を放つハイパーポップのニューフェイス、チェルシー・ウルフをご存じか。ウルフは、マルチ・インストゥルメンタリストのベン・チショルム、ドラマーのジェス・ゴウリー、ギタリストのブライアン・トゥーラオといういつものコラボレーターと曲作りに取り組み、2022年初頭にはプロデューサーのデイヴ・アンドリュー・シテックも参加した。ショーン・エヴェレットがミックスを担当し、エンジニアのヘバ・カドリーがマスタリングを行った。


アルバムについてウルフは、「過去の自分が現在の自分に手を差し伸べ、未来の自分に手を差し伸べて、変化、成長、導きを呼び起こすというレコード。自分を縛り付けている状況やパターンから解放され、自己啓発するための物語だ。自分らしさに踏み出すための招待状」と述べている。


チェルシー・ウルフの最新のソロ・スタジオ・アルバム『Birth of Violence』は2019年にリリースされた。2022年にはA24の映画『X』のサウンドトラックを手がけた。ダークなハイパーポップの新境地を切り開く。 
 
 


Streaming Link:




Joel Ross 「nublues」



「ナブルス」の起源は2020年に遡る。コヴィッド・パンデミックの最中、ライブ・パフォーマンスが閉鎖されたため、ジョエル・ロスは学位を取得するためにニュー・スクールに戻った。


アルト・サックス奏者のダリウス・ジョーンズが教えていた授業のひとつで、彼は学生にブルースの歴史を掘り下げるよう促した。


ロスは、ブルースとはどういうものなのか、単なる12小節の形式ではないと思い知らされた。単なる12小節の形式ではなかった。「これは精神やエネルギーのようなものなんだ」とロスは言う。「感情であり、表現だ。でも私たちがすでに発展させてきたリズムのアイデアに忠実でありたいとも思っている」


アルバムのリード・シングルとしてリリースされたタイトル曲「nublues」は、ブルースの精神とフリー・ジャズの奔放さを融合させている。「私はバンドにどう演奏するかは指示しない」とロスは言う。「僕が彼らに言っているのは、常につながっていること、そして僕らがやることすべてを互いに関連させることだ。そして、それがどうであれ、ブルースを演奏することだ」


そう考えると、「nublues」はさまざまな入り口がある広大なレコードであり、自分で冒険を選ぶように誘う。このLPで何を伝えたいのかと聞かれると、ロスは躊躇したのちにこう語った。「私の個人的な体験が、人々がそれを体験しているときに考えていることであってほしくないのです」と彼は言う。「音楽を聴きに来て、それぞれ自分のレンズを通して解釈してほしいんだ」


「ブルースについて学び、ブルースの歴史を理解し、バンドのサウンドとバンド構成を発展させることに集中する旅を楽しんでいた。私にとっては、あらゆる情報に触れ、それがどうあるべきかを見極めることから生まれる旅のようなものだった。それは常に続いている。これまでと同じことを続けてきて、それがどのように変化してきたかを知るためのスナップショットなんだ」

 




Streaming Link:

https://joelross.lnk.to/nublues

 


ノルウェーのシンガーソングライター、girl in redがニューシングル「Too Much」をリリースした。デビューアルバムの時期よりも純粋なポップスへのアプローチである。(ストリーミングはこちらより)

 

またガールズ・イン・レッドは新作アルバムの情報を明らかにした。2ndアルバム『I'M DOING IT AGAIN BABY!』は4月12日にコロンビアからリリースされる。「Too Much」はアルバムの最初のプレビュー。監督のフィオナ・ジェーン・バージェスのミュージックビデオは以下から。


ガールズ・イン・レッドこと、マリー・ウルヴェンはプレスリリースで次のように述べている。

 

「私はいつもやり過ぎだと言われてきました。子供時代も大人になってからも。一番幸せなとき、一番興奮しているときに、それを否定されることで、私は自意識過剰で、疎外感を感じ、奇妙に感じていた。人間関係で同じような感覚に出会って初めて、自分という人間が完全に受け入れられていると感じることがないことが、どれほど自分を傷つけているかに気づいた。また、文化的に人々はクールになりすぎて、楽しさや本当の興奮や感情を表に出さない傾向があると思う」


ノルウェーのシンガー・ソングライターはこの曲で、感情的になれない相手と恋に落ちるというテーマを介して、自分の弱さを受け入れ、自分の価値を解放することで得られる痛快なエンパワーメントを探求している。


ーーあなたは私の目の光を殺すのが好きなだけ/私がハイな時に私を低くするのが好きなだけーーと彼女は歌い始めに歌い、勢いを増していよいよ反抗的なコーラスに突入する。 


ーーお願い、私がやりすぎだなんて言わないで/私が大げさだなんて言わないで/あなたは私を理解していないだけ。ーー



また、フィオナ・ジェーン・バージェスが監督し、スマグラーがプロデュースした以下の映像では、シンガー(本名マリー・ウルヴェン)が、残酷なパートナーに理屈をこねて、劇場のステージで懇願する場面もある。イライラが募っていく様子が描かれている。以下から映像をチェックしてほしい。

 


「Too Much」



『I'M DOING IT AGAIN BABY!』のの先行シングルとして「Too Much」、タイトル曲「I'm Doing It Again」が配信されています。アーティストは''フジロックフェスティバル2024''で来日公演を行います。


Girl In Red  『The ‘I’m Doing It Again Baby!』

 

 

Label: Columbia

Release: 2024/04/12


Tracklist:


1. I’m Back

2. DOING IT AGAIN BABY

3. Too Much

4. Phantom Pain

5. ‘ou Need Me Now?

6. A Night To Remember

7. Pick Me

8. Ugly Side

9. New Love

10. ★★★★★

 


OWENがニューアルバム『The Fall of Sioux』を発表した。ボリヴァイナルから4月26日にリリースされる。


マイク・キンセラのソングライティングは、20年以上にわたって広く影響力を持ち、新しい章が始まるたびに着実に研ぎ澄まされ、進化してきた。アメリカン・フットボール、キャプテン・ジャズ、最近のLIES、その他のコラボレーション・ベンチャーに加え、オーウェンとしてのソロ活動においても、キンセラのギザギザの感情の流れをシームレスにつなぎ合わせ、胸が締め付けられるような美しくエモい曲に仕上げる能力は、彼の芸術の最前線にあり続けている。


このコントラストは、オーウェンが控えめなアコースティック・アルバムから、より華やかなプロダクションへと展開するにつれて、よりはっきりとしたものとなり、2020年の『The Avalanche』のリリースまでには、複雑さと明瞭さの新たなレベルに達している。


もちろんいうまでもなく、キンセラの最新作『The Falls of Sioux』は、さらにレベルアップしている。この9曲は一種の改革を象徴していると同時に、芸術的にも個人的にもキンセラの成長における自然な次のステップのようにも感じられる。  このアルバムは、確立されたサウンドに穴を開け、ありそうでなかった音楽的アイデアを探求している。重苦しいテーマは優しい手つきでひっくり返され、キンセラは苦労して身につけた人生経験から来る深い視点を宿している。


過去数作のOwenと同様、キンセラは共同プロデューサーのショーン・キャリー(Bon Iver)とザック・ハンソン(Bon Iver、Low、Waxahatchee)と仕事をし、Now, NowのKC Dalagerをバッキング・ヴォーカルに迎えた。ラッセル・ダーラム(フリート・フォックス、アンドリュー・バード)がストリングス・アレンジメントを作曲し、コリー・ブラッケン(アメリカン・フットボールのツアー・バンド)がシンセを演奏した。キンセラのサウンド・パレットは、いとこのネイトと最近組んだ境界を押し広げるグループ、LIESに大きな影響を受けている。


エレクトロニック・プロダクションの限界に挑戦することで、キンセラはオーウェンのために作曲する際に、それまで考えもしなかったサウンドに傾倒するようになった。Beaucoupのアコースティック・ギターの弦は、シューゲイザーのテクスチャー、深いシンセ・ベース・シークエンス、ノイジーなエレクトロニクスの波に洗われる。「Hit and Run」は、ゴージャスなストリングスと遠くのピアノが散りばめられた、安定した抑制されたチェンバー・ポップである。

 

オープニングの 「A Reckoning 」のウェスタン・ノワールの雰囲気は、キネスラが曲中にベルを入れ続けるためにプロデューサーと喧嘩するほどドラマチックなチューブラーベルによって強調される。その目的は、安全で確実な選択をするのではなく、未知の興奮を受け入れることだった。


その開放的な音楽は、キネセラの最も不安定な歌詞でさえも、ほとんど遊び心に満ちたカウンターウェイトとして提供し、オーウェンのディスコグラフィーの中で、これまで全く登場しなかった新しい位置づけを『The Fall of Sioux』に与えている。


それは、困難な冬が予想以上に素敵な春へと溶けていくのを見るようなものであり、悪い時期との距離感が、振り返って笑うことを容易にしている。何よりも、このアルバムは、どんなに切れ味のある一言を吐いても、どんなに哀愁を帯びた曲を歌っても、自己受容の感覚に満ちている。キンセラは、アーティストがクリエイティヴな道を歩む上で、ある角を曲がったときにだけ起こるような方法で、自分自身と自分の技術に心地よさを感じているようだ。-Polyvinyle

 

 

「Beaucoup」

 

 

 

Owen  『The Fall of Sioux』


Label: Polyvinyl

Release; 2024/04/26


Tracklist:

 

1.A Reckoning

2.Beaucoup

3.Hit and Run 

4.Cursed ID 

5.Virtue Misspent 

6.Mount Cleverest 

7.Qui Je Plaisante? 

8.Penny 

9.With You 

 

Pre-order(INT):

 

https://owen.ffm.to/the-falls-of-sioux 


 

©Phoebe Fox

リーズのYard Actが、アルバム『Where's My Utopia?』の最新シングル「When The Laughter Stops」を公開した。ジェームス・スレーター監督によるミュージック・ビデオ付き。

 

毎回、自分やバンドが直面した人生や出来事に照らして、詳細に曲の説明を行ってくれるスミス。ニューシングルの声明は以下の通り。

 

「歌詞の情感は、『Where's My Utopia?'』の核心をほとんどすぐに突いていて、『Dream Job』の時に自分が置かれたのと同じ境遇から最初に生まれた皮肉が、今はもっと本物の一抹の惨めさに変わっていることに気づく。幸いなことに(ネタバレになるが)、今のところ、この落とし穴から抜け出す方法を見つけることができた。


 歌詞はすぐにできたが、音楽的には大変だった。ライアンがベース・ラインを提示するときによくあることだが、ハーモニー的にはかなり曖昧で、人によって聴こえ方が違う。私はこの曲をかなりブルージーなマイナー・キーで聴いていたし、一方サム(ギタリスト)はとても甘ったるいメジャー・キーの曲を聴いていた。曲は行ったり来たりで、僕の記憶が正しければ、カーディガンズの『Lovefool』のことをよく話していた。

 

 2022年12月にケタリングのパーラー・スタジオでラッセル・ラッセルとレコーディング・セッションをしたとき、私はローランド・ジュノでアルペジエーターを鳴らしていた。ジョン・カーペンターの終末時計のカウントダウンか何かのようだった。


 サムはギターをエレクトリック・シックスの「High Voltage」のようなサウンドに作り直し、私たちはファンキーなパーカッションを取り除き、リズムを「Seven Nation Army」のような攻撃的なものにした。ケイティがロンドンのメトロポリスに会いに来てくれて、コーラスのヴォーカルをダビングしてくれたんだ。彼女は素晴らしい。デヴィッド・セウリスにマクベスを朗読してもらったのは、明らかな理由だ。結果が物語っている!」


このビデオについて、ジェームス・スレーターはこうコメントしている。ミュージックビデオは、「『訪問者』の旅を続きであり、彼女が2人組のアサシンに引きずり出されるのを見た『石油』に続くものだ」


「『When The Laughter Stops』では、彼女の運命が明らかになる...年老いたサーカス団員でいっぱいの刑務所。警備が少し緩いのは認めるので、すべてが失われたわけではないかもしれない。私たちが制作したビデオはすべて、より広いヤード・アクトの映画的世界の一部であり、すべてを映画化する過程にある。お楽しみに!」

 

ニューアルバムはデビュー・アルバムで世界的な成功を手にしたバンドが次なる内面の幸福を探す旅とも言える。その中にはヤードアクトらしい皮肉もあり、そして人生を生きる上での喜びもある。 シアトリカルな演出は彼らの音楽が1つ上にステップアップしたことの証左となる。どうやらピカレスク・ロマンのようなテーマも音楽性に含まれているのはMVを観ると明らか。

 

新曲では、フロントマンのジェームズ・スミスがメインボーカルの座を女性ボーカルに受け渡す箇所に面白さがある。それは英国の古典演劇で主役が物語の中心にいながら、舞台袖に捌ける瞬間のような滑稽味をもたらす。その空白の瞬間にこそ想像をめぐらす余地がある。曲の後半のスミスのスポークンワードは、ブラック・フランシスのように渋い。これはアルバムのタイトルがピクシーズの曲にちなんでいることのジョークなのか。ディスコ風のダンサンブルなナンバーであることは先行シングルと同様だが、より軽やかなポップネスに焦点が絞られている。

 

 

「When The Laughter Stops」

 

 


アルバムの発表後、「Dream Job」のほか、「Petroleum」「When  The Laugher Stops」「We  Make Hits」が先行配信されています。


 

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ボルチモアを拠点に活動する4人組、Tomato Flower(トマト・フラワー)が、デビュー・アルバム『No』を3月8日にランプ・ローカルからリリースする。そして今回、アルバムの3rdシングル「Temple of the Mind」のミュージックビデオが公開された。ミュージックビデオは以下より。

シンガーのオースティン・ウォーラーズとジャミソン・マーフィーはバンドを率いている。以前はカップルだったが、バンドを続けながら別れ、そのことを歌にした。マイク・アルフィエリとルビー・マーズがラインナップを完成させている。

 

2022年、バンドは2枚のEP『Gold Arc』と『Construction』をリリース。比較的新しいバンドにもかかわらず、同年、トマト・フラワーはボルチモアのバンド、アニマル・コレクティヴの全国ツアーをサポート。プレスリリースでは、ステレオラボ、クラム、ブロードキャスト、パイロン、ディス・ヒート、ディアハンター、ジーザス・リザードをバンドの引用元として挙げている。

 

 

「Temple of the Mind」

 

 

 

 Tomato Flower 『No』


 

Label: Ramp Local

Release: 2024/03/08


Tracklist:


1. Saint 

2. Destroyer 

3. Radical 

4. Do It 

5. No

6. Sally & Me 

7. Harlequin 

8. Lost Lunar One 

9. Temple of the Mind 

10. Magdalene 

11. Spoon Jade 

12. Jem 

 

Pre-oreder(INT):


https://tomatoflower.lnk.to/noalbum

 


ニューヨークのロック・バンド、Vampire Weekend(ヴァンパイア・ウィークエンド)がニューアルバム『Only God Was Above Us』を発表し、その予告編を公開した。

 

来週(2月16日)には「Gen-X Cops」と「Capricorn」の2曲の新曲が約束されている。Only God Was Above Us』はコロムビアから4月5日発売予定。アルバムのトラックリストとジャケットアートワークに続いて、以下のアルバムトレーラーをチェックしよう。

 

『Only God Was Above Us』はバンドの5枚目で、5年ぶりのフルレングス。『Father of the Bride』に続く作品である。ビルボード200アルバム・チャートで2019年のロック・アルバムとしては最大の初週売上を記録して1位を獲得。グラミー賞の年間最優秀アルバムにもノミネートされた。

 

ヴァンパイア・ウィークエンドは、エズラ・ケーニグ、クリス・バイオ、クリス・トムソンの3人組。2019年と2020年にアルバムの多くの歌詞を書き、以来、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、東京など世界中の様々な都市でレコーディングを行い、アルバムを洗練させてきた。バンドは長年のコラボレーターであるアリエル・レヒトシャイドと共にアルバムをプロデュースし、デイヴ・フリードマンがミックス、エミリー・ラザールがマスタリングを担当した。

プレスリリースによると、このアルバムは "直接的でありながら複雑で、バンドが最も硬質で、また最も美しくメロディアスであることを表現している "という。

 

ジャケット・アートワークは、タイトルにも大きなインスピレーションを与えた。1988年にスティーヴン・シーゲルがニュージャージーの地下鉄墓地で撮影した写真である。写真に写っているのは、ひっくり返った地下鉄車両に座り、1988年5月1日付の『N』紙を読んでいる男である。

 

 

 Trailor




Vampire Weekend 『Only God Was Above Us』


Label: Columbia

Release: 2024/04/05

 

Tracklist:

 

1. Ice Cream Piano 

2. Classical 

3. Capricorn 

4. Connect

5. Prep-School Gangsters 

6. The Surfer

7. Gen-X Cops

8. Mary Boone

9. Pravda 

10. Hope 1. Ice Cream Piano 

2. Classical 

3. Capricorn 

4. Connect

5. Prep-School Gangsters 

6. The Surfer

7. Gen-X Cops

8. Mary Boone

9. Pravda 

10. Hope

 

Pre-order(INT):

 

https://vampireweekend.lnk.to/OGWAU 

Weekly Music Feature

 

‐The Telescopes


 

  イギリスのバンド、ザ・テレスコープスは1987年から活動している。バンドのラインナップは常に流動的で、レコーディングに参加するミュージシャンは1人だったり20人だったりする。この宇宙で不変なのは、ノーサンブリア生まれのバンド創設者で作曲家のスティーヴン・ローリーだ。


当初はチェリー・レコードと契約していたが、後にホワット・ゴーズ・オン・レコードに移籍し、インディ・チャートの上位に常連となった。ザ・テレスコープスの音楽には堅苦しい境界線はなく、様々なジャンルを網羅し、常にスティーブン・ローリーのインスピレーションに導かれながら独自の道を歩んでいる。


スティーヴン・ローリーが、13th Floor Elevators、The Velvet Underground、Suicideといったアメリカのアンダーグラウンド・アイコンへの愛情を注ぎ込む手段として1987年に結成して以来、バンドはノイズ、シューゲイザー、ブリットポップ、スペース・ロックの世界に身を置きながら、そのどれにも深入りすることなく活動してきた。むしろローリーは、それらすべてをつなぎ合わせて、完全にユニークなドリームコートのようなものを作り上げることを好んできた。


1992年にクリエイション・レコードからリリースされた彼らの名を冠した2枚目のLPは、その年にパルプやシャーラタンズが発表したレコードよりも、ブリットポップへの強力なサルボである。


10年の歳月をかけて制作された続編『サード・ウェイブ』では、ローリーはジャズとIDMに没頭し、Radioheadの「KID A」の後の世界におけるロック・バンドというフォーマットの無限の可能性を示すにふさわしい作品を作り上げた。


約10年前から、テレスコープスは、Tapete Recordsという新しい国際的なレーベル・パートナーを得ている。2021年にリリースされた前作『Songs Of Love And Revolution』は再びUKインディ・チャートにランクインし、ボーナス・エディションにはアントン・ニューコム、ロイド・コール、サード・アイ・ファウンデーションがリミックスを提供した。楽曲は時の試練に耐え、聴くたびに新しい発見がある。かつてイギリスの新聞は、ザ・テレスコープスを「舗道というより精神の革命」と書いた。この共通項は、30年以上に及ぶ影響力のある作品群を貫いている。ザ・テレスコープスは、世界中の様々なジャンルのアーティストに影響を与えている。


「Growing Eyes Becoming String」は、イギリスのノイズ・ロックのパイオニア、ザ・テレスコープスの16枚目のスタジオ・アルバムである。


元々は2013年に2回のセッションでレコーディングされ、1回目は厳しいベルリンの冬にブライアン・ジョネスタウン・マサカーのスタジオでファビアン・ルセーレと、2回目はリーズでテレスコープス初期のプロデューサー、リチャード・フォームビーと行われた。10年近く前、ハードドライブのクラッシュに見舞われたこのセッションは、失われたものと思われ、すぐに忘れ去られてしまった。デジタル・エーテルから奇跡的に救出され、結成メンバーのスティーヴン・ロウリーがパンデミックの中、自身のスタジオで仕上げたこのアルバムは、2024年2月にFuzz Clubからリリースされることが決定、2013年当時のザ・テレスコープスの別の一面が明らかになった。


当時の彼らのフィジカル・アウトプットのほとんどが実験的なノイズ・インプロヴィゼーションで構成されていた。それらが明らかな構造とはかけ離れたものであったのに対し、『Growing Eyes Becoming String』は、ロンドンの実験的ユニット、ワン・ユニーク・シグナルがバックを務めるザ・テレスコープスが、並行する存在として、より歌に基づいた音楽を実際に生み出したことを示している。アルバムに収録される全7曲には、長年のファンがザ・テレスコープスの音楽から連想するクオリティのトレードマークがすべて詰まっている。ソリッドなボーカル、メロディ、ハーモニー、ノイズ、不協和音、即興、実験、そして自然の視覚の領域を超えた旅。


「この2つのセッションの目的は、ブラインドで臨み、完全にその場にいることだった」とスティーヴン・ローリーは振り返っている。「先入観なんかは一切なくて、すべてが "W "だったのさ」



『Growing Eyes Becoming String』- Fuzz Club



  当初、イギリスのロックバンド、The Telescopes(テレスコープス)の音楽活動は1980年代に席巻したブリット・ポップの前夜の時代のミュージック・シーンに対する反応という形で始まった。フロントパーソンのスティーヴン・ローリーには才能があったが、まだ一般的に認められる時代ではなかった。「10代の頃に起こった悪いことや、80年代のチャートを支配した酷い音楽等に触発された。テレスコープスは、まわりのほとんどのものに対する反応だった」 

 

 その当時から、テレスコープスは流動的にメンバーを入れ替えて来た。最初のリリースの前にも、ラインナップ変更があった。しかし、それらは偶然の産物であり、意図的なものではなかった。状況によってメンバーを入れ替えたにすぎないという。80年代から、スティーヴン・ローリーが触発を受けた音楽は、「周りの暗闇を受け入れながら、光の中で創造されたもの」ばかりだった。 ニューヨークのプロトパンク/ローファイの始祖、The Velvet Undergroundは言うに及ばず、サイケデリック・ロックの先駆者、The 13th Elevators、アラン・ヴェガを擁する伝説的なノイズロック・バンド、Suicideなど、スティーヴン・ローリーの頭の中には、いつもカルト的だが、最も魅力的なアンダーグラウンドのバンドの音楽が存在した。

 

  もうひとつ、ローリーに薫陶を与えたのが、イギリス国内のダンスミュージックだった。「私達は、バーミンガムやノッティンガムで遊び始め、当時流行っていたファンジンの文化を通して、言葉が広まっていった。私達の最初のロンドンでのショーは誰もいなかった。ケンティッシュタウンのブル&ゲートでハイプをプレイした時、観客は20人しかいなかった。その当時、カムデンのファルコンでは、多くのノイズバンドが最初のギグを行っていた。”パーフェクトニードル”を発表したときには、ファルコンでのショーはいつも満員となり、凄まじい熱気だった」

 

  正確に言えば、バンドはその後、MBVなどを輩出した''Creation''と契約を結び、リリースを行った。クリエイションのレーベル創設者、アラン・マッギーが彼らのショーを見に来た時、あまりに強烈すぎて、彼はその場を去らなければならなかった。翌日、彼はそれが良いことであると考え、テレスコープスに連絡を取り、マスターテープとライセンスを寄与するように求めた。ローリーはそれに応じ、クリエイションとの契約に署名する。その後、彼は引っ越し、創造的な側面に夢中になり、スタジオに行く時間を増やした。しかし、ショーではバイオレンスがあった。唾を吐きかけられたり、ボトルを投げつけられることに、ローリーは辟易としていた。そんなわけで、インスピレーションに従い、レコードを制作することに彼は専心していた。

 

 

  セカンド・アルバムをリリースした後、ブリット・ポップの全盛期が訪れた。同時にそれはテレスコープスにほろ苦い思い出を与えるどころか、ミュージックシーンから彼らの姿を駆逐することを意味していた。ローリーは燃え尽き症候群となり、しばらく無期限の活動休止を余儀なくされることになった。それから何年が流れたのか、音楽はどのように変わっていったのか。それを定義づけることは難しい。少なくとも、ローリーはガラスの散らばっているような部屋で暮らし、財政的には恵まれなかったが、少なくとも、音楽的な熟成と作曲の才覚の醸成という幸運を与えた。ローリーは、誰も彼のことを目に止めない時代も曲を書き続けた。長い時を経て、2015年にドイツのレーベル、Tapete Recordsと契約したことがテレスコープスに再浮上の契機を与えたことは疑いがない。『Stone Tape』を皮切りにして、『Songs Of Love and Revolution』とアルバムを立て続けに発表した。この数年間で、テレスコープスはイギリス国内のインディーズチャートにランクインし、文字通り、30年の歳月を経て、復活を遂げたのだ。

 

  もうすでに、『Growing Eyes Becoming String』はレーベルのレコードの予約は発売日を前にソールドアウト、また、日本のコアなオルタナティヴロックファンの間で話題に上っている。それほど大々的な宣伝を行わないにもかかわらず、このアルバムは、それなりに売れているのだ。音楽を聞くと分かる通り、このアルバムは単なるカルト的なロックでもなければ、もちろんスノビズムかぶれでもない。Velvet Undeground、Stoogesの系譜にあるノイズ、サイケ、ブリット・ポップに対するおどろおどろしい情念、そして、Jesus and Mary Chainのような陶酔的な音楽性が痛烈に交差し、想像だにしないレベルのレコードが完成されたということがわかる。

 

 

   #1「Vanishing Lines」を聞くと分かる通り、テレスコープスのギターロックを基調とした全体的な音楽の枠組みの中には、70年代のサイケデリックロックや、ザ・ポップ・グループのような前衛主義、なおかつ、ニューヨーク/デトロイトのプロトパンクを形成するヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ストゥージズ、スイサイド、スワンズといった北米のアンダーグランドのマニアックな音が絡み合い、ミニマルによる構成力を通じて、ラフなセッションが展開される。しかし、エクストリームなノイズは、ごくまれにメリー・チェインズのようなシューゲイズ/ドリーム・ポップの幻影を呼び覚まし、スティーヴン・ローリーのモリソンを彷彿とさせる瞑想的なボーカル、同時に、ドリーム・ポップのゴシック性が噛み合った時、独創的なギターサウンドや、ローファイ、ノイズに根ざした独創的なバンドサウンドが産み落とされる。

 

  本作の冒頭の曲の中には、シャーランタンズやパルプのような主流から一歩引いたブリットポップのグループのメロディー性が受け継がれている。そして、スティーブン・ローリーのボーカルは、最終的にシガレット・アフター・セックスのような夢想的で幻惑的なイメージを呼び覚ます。それは1980年代後半や90年代前半に、彼がブリット・ポップ・ムーブメントを遠巻きに見ていたこと、あるいは、商業的に報われなかったということ、そのことが、この時代の象徴的なミュージシャンやバンドよりもブリット・ポップの核心を突いた音楽を生み出す要因ともなったのである。ローリーの瞑想的なギター、そしてボーカルに引きずられるようにして、ローファイかつアヴァンギャルドなロックが、きわめて心地よく耳に鳴り響くのだ。

 

 

  #2「In The Hidden Fields」には、スティーヴン・ローリーがこよなく愛する東海岸のプロトパンクに対するフリーク的な愛着が凝縮されている。The Stoogesの「1969」、「I wanna be your dog」を思わせる、ガレージ・ロック最初期の衝動性、プロトパンクを形成する粗さ、そういったものが渾然一体となり、数奇なロックソングが生み出されている。しかし、テレスコープスは現代のロサンゼルスで盛んなローファイの要素を打ち込み、それをミニマルな構成によりフィードバックノイズを意図的に発生させ、それらを最終的に、サイケデリックな領域に近づける。時代錯誤にも思えるローファイなロックは、驚嘆すべきことに、カルト的な響きの領域に留まらず、ロンドンのBar Italiaのような現代性、そして奇妙な若々しさすら兼ね備えている。

 

  プロトパンクやサイケロックの要素と併行して、この最新アルバムの中核をなしているのが、Melvins、Swansに代表される、ストーナー・ロックとドゥーム・メタルの中間にあるゴシック的なおどろおどろしさである。俗に言われるドゥーム・メタルのおどろおどろしい感じを最初に生み出したのは、Black Sabbathのオズボーンとアイオミであるが、そのサブジャンルとしてドゥーム、ブラック・メタル、スラッジ・メタル等のサブジャンルが生み出された。

 

  テレスコープスは、そういったメタル的なドゥーム性を受け継ぎ、#3「Dead Head Light」において、彼ららしいスタイルで昇華している。Swansの「Cops」を思わせるヘヴィーロックを構成する重要な要素ーー重苦しさ、閉塞感、内向き、暗鬱さ、鈍重さーーこういった感覚が複雑に絡み合い、考えられるかぎりにおいて、最も鈍重なヘヴィーロックが誕生している。フロントマンのローリーは、暗い曲を書くことについて、「今の世の中は暗いのに、どうして明るい曲を書く必要があるの」と発言しているが、それらの世の中にうごめく、おぞましい情念の煙霧は、ノイズという形でこの曲を取り巻き、聞き手をブラインドな世界へといざなっていく。それらの徹底的に不揃いであり、いかがわしく、どこまでも不調和なこの世の中を鋭く反映させたような音楽を牽引するのが、ロールを巧みに取り入れたラフなドラムのプレイである。 

 

  テレスコープスのドリームポップ/シューゲイズの音楽性は、アルバムの中盤の収録曲、#4「We Carry Along」に見いだせる。フィールド録音を取り入れて、バンドは本作のなかで最もシネマティックなサウンドを表現しようとしている。ダウナーなローリーのボーカルと、幻惑的な雰囲気のあるギターロックの兼ね合いは、かつてのヴェルヴェット・アンダーグラウンドのティンパニーを用いたスタイルでリズムが強化され、半音進行の移調により、トーンの微細な揺らめきをもたらす。スティーヴン・ローリーのボーカルは、本作の中で最もグランジ的なポジションを取っているが、それは、Soundgardenのクリス・コーネルのサイケデリックで瞑想的なサウンドに近い。この曲には、オルタナティヴ・メタルの名曲「Black Hole Sun」のような幻惑的な雰囲気が漂う。それらの抽象性は、コーネルが米国南部の砂漠かどこかを車でぼんやりドライブしていたとき、「Black Hole Sun」のサビのフレーズを思いついた、という例の有名なエピソードを甦らせる。「We Carry Along」には、ノイズ・ロックの要素も込められているが、同時にその暗鬱さの中には奇妙な癒やしが存在する。砂漠の蜃気楼の果てに砂上の楼閣が浮かび上がってきそうだ。それはフィールドレコーディングの雷雨の音により、とつぜん遮られる。


  アルバムのハイライトとも言える#5「Get Out of Me」は、彼らの主流のスタイルであるミニマルな構成のローファイ・ロックという形で展開される。小規模でのライブセッションをそのまま録音として収録したかに思えるこの曲は、テレスコープスの代名詞であるローリーのシニカルで冷笑的なボーカル、そして、Swansのように重苦しさすら感じられるスローチューンによって繰り広げられる。シンセのサイケデリックなフレーズ、Melvinsのバズ・オズボーンが好む苛烈なファズがギターロックという枠組みの範疇にあるドローン性を形成し、それらの幻惑的なサイケ・ロックの中にダウナーなボーカルが宙を舞う。最後には、地の底から響くようなうめき、悲鳴にもよく似た断末魔のような叫びを、それらのサイケロックの中に押し込めようとする。


 

  「世の中が暗いのに、なぜ明るいものを作る必要があるのか?」というローリーのソングライティングの方向性は、アルバムの終盤になっても普遍的なものであり、それがテレスコープスの魅力ともなっていることは瞭然である。しかし、どこまでも冷笑的で、シニカルなバンドサウンドが必ずしも冷酷かつ非情であるとも言いがたい。「What Your Love」では、すでに誰かがどこかに速書きのデモソングとして捨てたかもしれないMBVのドイツ時代の音楽性や、スコットランドのPrimal Screamのギターポップ、Mary ChainsやChapterhouseのシューゲイズの源流を成すノイズを交えたドリーム・ポップの音楽性を継承し、それらの音楽を現在の地点に呼び覚ます。


  アルバムの最後には、意味深長なタイトル曲代わりの「There is no shore(海岸はもうない)」が収録されている。テレスコープスは、本作の前半部と中盤部の収録曲と同じように、70年代の西海岸のサイケデリアとニューヨークのプロトパンクを下地にし、一貫して堂々たる覇気に充ちたヘヴィーロックを披露する。そして、ENVYの最高傑作『A Dead Sinking Story』の『Chains Wandering Deeply』を思わせる、ドゥーム・メタルの雰囲気に満ちたダークでダウナーなイントロから、へヴィーなリフとノイズと重なりあうようにして、亡霊的に歌われる「海岸はもうない、もうない……」というローリーのボーカルが、幻惑的な雰囲気を持って心に迫ってくる。この曲には、Borisのようなバンドの前衛音楽の実験性に近いニュアンスも見いだせるが、テレスコープスのスタイルは、どこまでもドゥーム・メタルのようにずしりと重く、暗い。

 

  最後に、それは幻惑という印象を越えて、秘儀的な領域に辿り着く。米国のプロトパンクやドイツのノイズを吸収しているが、秘儀的な音楽としては、どこまでも英国的なバンドである。表面的なイメージとは裏腹に、テレスコープスこそ、Crass、This Heat、Pink Floyd、Black Sabbath、こういった英国のアンダーグランドの系譜に位置づけられる。それは、サバスの「黒い安息日」の概念が生み出した「メタルの末裔」とも言える。アルバムの音楽から汲み取るべきものがあるとすれば、それは究極的に言えば、現代社会の資本主義のピラミッドから逃れられぬ人々がどれほど多いのかという、冷笑的でありつつも核心を捉えたメッセージなのである。

 

 

94/100
 

 


 

The Telescopesの新作アルバム『Growing Eyes Becoming String』は、Fuzz Clubから本日発売。インポート盤の予約はこちら。LP/CDのバンドル、テストプレッシング等の販売もあり。



先週のWeekly Music Featureは以下より:

Maria W Horn『Panoptipkon』


以下の記事もあわせてお読み下さい:


THE VELVET UNDERGROUND(ヴェルヴェット・アンダーグランド)  NYアンダーグランドシーンの出発点、その軌跡

 


実力派シンガーソングライター、マギー・ロジャースが、4月12日にサード・アルバム『Don't Forget Me』をポリドール・レコードからリリースすることを発表した。


このアルバムは、彼女の2019年のデビュー作「Heard It In A Past Life」と2022年の「Surrender」に続く。新譜に期待される最初のプレビューは、高らかに歌い上げるフォーク調のタイトル・トラック。マギーは「Don't Forget Me」の制作過程を説明した手紙を公開している。


『ドント・フォーゲット・ミー』の制作について、マギーはこう語っている。


「このアルバムの制作は、どの段階でもとても楽しかった。曲の中にそれが表れていると思う。それが、このアルバム制作を成功させるための重要な要素なんだ」


「2022年12月に3日間、2023年1月に2日間。時系列順に書かれた。アルバムに収録されているストーリーのいくつかは私自身のものだ。そして本当に初めて、そうでないものもある。大学時代の思い出や、18歳、22歳、28歳(現在29歳)の頃の詳細が垣間見える。アルバムを順次書いていくうちに、ある時点でキャラクターが浮かび上がってきた」


「アメリカ南部と西部をロードトリップする女の子の姿を思い浮かべ始めたんだ。若いテルマ&ルイーズのようなキャラクターで、家を出て人間関係から離れ、声を大にして処理し、友人たちや新しい街や風景の中に慰めを見出している」


「私は、リンダ・マッカートニーの写真のような親密さで、彼女の人生をとらえようとした。彼女はやり直し、人生の新しい章のページをめくっている」


「曲中のストーリーや詳細は、友人やニュースから得たものもある。完全に作り上げたというか、私の中から飛び出してきたものもある。ペンを紙に。完全な形で。そこにあった。こうすることで、私の現在に関する最も深い真実のいくつかが前に出てくることができたと思う」


「私はそれらを探したり、掘り起こしたりして、それらが完全に成長する前にその物語を収穫したのではない。私の人生についての真実は、私の最も深い直感から生まれた。自分自身では口に出して言う準備ができていなかったが、音楽の中に居場所を見つけた」



『Don't Forget Me』




 ・「So Sick Of Dreaming」



気鋭のシンガーソングライター、マギー・ロジャース(Maggie Rogers)が、近日リリース予定のアルバムのニューシングル「So Sick Of Dreaming」を公開した。先に公開されたタイトル曲に続く。

 

今回の新曲「So Sick Of Dreaming」でアーティストはよりロック的なアプローチを図っている。ボーカルとスポークンワードの融合という点ではニューヨークのTorresに近いが、ロジャースのソングライティングはロックの普遍性に焦点が置かれている。それほど先鋭的な音楽性ではないものの、その中には非凡な歌唱力とセンスが垣間見える。以下よりチェックしてみよう。

 

マギー・ロジャースはニューヨークの歌手ではあるが、今回のアルバムでは南部的な概念をポピュラー音楽の中に織り込んでいる。


「So Sick Of Dreaming」


 

 

 
Maggie Rogers 『Don't Forget Me』



Label:Capital

Release: 2024/04/12


Tracklist:

1. It Was Coming All Along
2. Drunk
3. So Sick of Dreaming
4. The Kill
5. If Now Was Then
6. I Still Do
7. On & On & On
8. Never Going Home
9. All The Same
10. Don’t Forget Me
 
 

 

・The Late Show With Stephen Colbert




昨日、NYのシンガーソングライター、Maggie Rogers(マギー・ロジャース)が米国の深夜番組、『The Late Show With Stephen Colbert』に登場し、最新アルバム『Don't Forget Me』の収録曲「The Kill」をステージセットで披露した。ライブパフォーマンスの模様は以下より。


ロジャースのライブステージは、アコースティックギター、シンセ、ベース、エレクトリックギター、ドラムに加え、パーカションが参加した。曲の魅力が伝わりやすいライブとなっている。


「The Kill」

 

 

Michael Tyrone Delaney

フェイ・ウェブスターが、3月1日にリリースされるニューアルバム『Underdressed at the Symphony』から新たなシングル「Feeling Good  Today」を発表した。


このシングルは、リル・ヤッチーとのコラボ曲「Lego Ring」、以前に発表された「But Not Kiss」「Lifetime」に続く作品。プーネ・ガーナが撮影し、TikTok/YouTubeのスター、リリ・ヘイズが出演しているビデオは以下からご視聴ください。


2021年の『I Know I'm Funny Haha』に続くアルバム『Underdressed at the Symphony』はシークレットリー・カナディアンから3月1日にリリースされる。


「Feeling Good  Today」


 

現在は俳優としても活躍するニック・ケイヴ、そしてウォーレン・エリスが、エイミー・ワインハウスの伝記映画『Back to Black』の音楽を担当することが明らかになった。マリサ・アベラが主役を演じるこの映画の制作を手掛けたスタジオ・カナルは、サム・テイラー=ジョンソン監督とミュージシャンの写真と合わせてこのニュースを明らかにした。「ニックとウォーレンは、私の中で『バック・トゥ・ブラック』の音楽を担当する唯一のミュージシャンでした。何年もの間、彼らが作曲したものをすべて聴き、一緒に仕事をする夢を実現したいと切望していました。彼らの感性だけでなく、この物語を理解することで、深く感動的な映画音楽が生まれました」


昨年、ケイブとエリスはNetflixの番組『ダーマー - モンスター』にサウンドトラックを提供した。ジェフリー・ダーマー・ストーリー』とマリリン・モンローの伝記映画『ブロンド』である。



先行公開された映画の予告編は、10代のエイミーが幼少期の寝室でアコースティック・ギターをかき鳴らすシーンから始まる。

 

主演のマリサは、「私の声を聴いて、5分間だけでも悩みを忘れてほしい」と言う。次にカメラは、いずれエイミーの特徴的なルックとなる盛ったビーハイヴ・ヘアにピンナップ・ガールのタトゥー、そして短いヴィンテージのカクテルドレスにチャンキーなハイヒールに身を包んだマリサ演じるエイミーがステージに立っている姿に切り替わる。

 

エイミーは、「ガール・パワーが私にとってどういう意味かわかる? サラ・ヴォーン、ローリン・ヒル……。これだけは知っておいて。私はスパイス・ガールじゃない」と、スポットライトを浴びていた6年の間、ガールズ・グループ的ボーカルとヒップホップに触発された堂々とした態度を融合させ探求したレトロコンテンポラリーと言える独特のスタイルについて説明している。

 

また、ライブ・パフォーマンスの映像のほか、父親のミッチ・ワインハウス役のエディ・マーサン(『レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー』)や、様々な問題を抱えた夫のブレイク・フィールダー=シビル役のジャック・オコンネル(『ゴッドレス -神の消えた町-』)が一瞬登場する。

 

全米で大ブレイクしたエイミーの高揚感、いつかママになりたいという夢も含めたフィールダー=シビルとの結婚、そして、夫婦の波乱に満ちた、歩み寄ったり離れたりの関係を描いている。 


エイミー・ワインハウスは六年間というきわめて短いキャリアで、2003年のデビュー作『フランク』と、世界的ブレイクを果たしてグラミー賞を受賞。遺作となった2006年の『バック・トゥ・ブラック』の2枚しかフル・アルバムをリリースしていない。長年にわたるアルコールと薬物乱用との闘いの末、彼女は2011年7月23日にアルコールの過剰摂取により27歳で死去している。

 

エイミーの伝記映画は、『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』の監督サム・テイラー=ジョンソンと脚本のマット・グリーンハルシュがタッグを組んだ。エイミーの遺産管理団体、ユニバーサル・ミュージック・グループ、ソニー・ミュージック・パブリッシングの支援を受け、スタジオ・カナルによって製作された。「リハブ」で知られる彼女の最も愛されていたヒット曲の数々が登場する。『バック・トゥ・ブラック』は現地時間2024年5月17日に全米公開予定。


『Back To Black』 予告編

 

©︎Netti Habel

先週、予告されていた通り、ポーティスヘッドのボーカリスト、ベス・ギボンズが待望のアルバム『Lives Outgrown』でソロ・デビューを果たす。5月17日にDominoからリリースされる。


ギボンズとジェームス・フォードが共同プロデュースし、トーク・トークのリー・ハリスがプロデュースを担当。アルバムには、10年間に渡ってレコーディングされた10曲が収録されている。トニー・アウスラーによる新曲「Floating on a Moment」のビデオを以下よりご覧下さい。


『Lives Outgrow』の収録曲の中でギボンズは、自らの人生についての考察を的確に交え、とくにそれは内的な感覚が年齢を重ねるごとにどう変化していくのか、その飽くなき音楽家としての真摯な眼差しで捉えようとする。普通の人ならば見過ごしてしまうか、目をそらしてしまうテーマ、誰もが持っている人生の主題を的確な視点から捉え、ーー不安、母性、死ーーを音楽によって表現しようとする。あるいはアーティストにとって、それは内側に秘めたままではいられぬものでもある。

 

ギボンズは声明の中で、「私は希望がない人生がどのようなものかを悟りました。そして、それは、私が感じたことのない悲しみだった。以前は、自分の未来を変えることができた。でも、自分の体と向き合ったとき、体が望んでいないことをさせることはできないことがわかったんです」


このアルバムはまた、"数多くの別れの時期 "から生まれた、とギボンズは述べている。「人が死にはじめたと私は悟った。若いときは、未来の結末なんてちっともわからないのだし、どうなるかなんて皆目見当もつかない。私たちは、たぶん、これを乗り越えられるだろうし。きっと良くなるのだ、と。それでも、生きていると、消化するのが難しいような結末もある......。今、私はもう一つの終わりから抜け出して、勇気を出さなければならないときが来たんだと思う」


「Floating on a Moment」のビジュアルについて、監督のトニー・アウスラーはこうコメントしている。


「''Floating On A Moment "を初めて聴いたとき、文字通り、私をあちこちに連れて行き、万華鏡のような多彩な感情とビジョンで満たしてくれました。可能であれば、このビデオによってその精神的な流動性のようなものを捉えたかった。そもそも、ベスの作品はとてもパワフルなのです。私たちを人生の森や火の中へと導き、可能性のある未来を垣間見せてくれます。そのような声と音楽があるのならば、オープンで、どことなく思索的な映像を作らなければと思っていた」

 

「Floating on a Moment」




2nd Single  「Reaching Out」

©Netti Habel


ベス・ギボンズ(Beth Gibbons)が新曲「Reaching Out」を配信した。シンガー・ソングライターは、エイフェックス・ツインのコラボレーターであるWeird Coreと共同で、この曲のインタラクティブビデオを制作したという。以下からご覧下さい。

 

 

「Reaching Out」

 

 

3rd Single 「Love Changes」

©︎Netti Habel

ポーティスヘッドのベス・ギボンズが、待望のソロデビューアルバムを金曜日にリリースする。「Love Changes」は、壮大かつ哀愁を帯びた、ベスの曲に求めるものすべてを詰め込んだようなナンバー。 またインディーフォークを基調とした美しい曲でもある。


彼女は、このシングル曲のなかでストリングスのテクスチャに相対して、「私たちはみんな一緒に迷っている/私たちはお互いを騙している...。私たちは努力するけれど、説明できない/私たちはあるフィーリングを引き受けた/輝く瞬間/そして、ゲームは何だと言った」と歌っている。


ベス・ギボンズの新作アルバムは、最初の発表時に説明されていた通り、大掛かりな音楽や装置や舞台ではなく、ギボンズがミュージシャンとして、あるいは独立系のアーティストとして今、何が出来るかを考えたというものである。『Lives Outgrown』はタイトルにも見える通り、ミュージシャンだけにとどまらず、家庭人としての人生も部分的に反映されているのかもしれない。こういったアウトプットについては、男性よりも女性の方が向いているという気がする。女性は人生の節目で現実を見つけるが、男性は現実という名の幻想の中に生きる生き物なのだ。

 

当初は、大きな希望を叶えることが人生の醍醐味であると考えていたギボンズであるようだが、年を重ねるにつれ、それらの中にはどうにも出来ない問題や弊害も存在することが分かる時がある。若い時代に抱いていた希望の多くが幻想だったかもしれず、しかし、それは諦観とも言いがたい、納得や安堵に近い感情へと変遷していくものである。なんらかの出来事に打ちひしがれたことのない人々にとっては、あまりに救いのないようなことに思えるかも知れないが、しかし、それは同時に納得出来るポイントを見出したという、明るい意味も含まれている。

 

人生とは、結局のところ、無数の選択肢のなかで、自分や周囲との関係の中で頷けるポイントを見つけるということである。ギボンズの場合は、自分自身や人生に正直であるということだった。そのことに関してギボンズは言う。「希望のない人生がどんなものかを悟りました。それは、私が感じたことのない悲しみでした。以前は、自分の未来を変える能力があった。でも、自分の体に立ち向かっているとき、その体がやりたくないことをさせることはできなかった」 

 

このシングルには、いかなる人もいつかは体験するであろう不思議な感覚があり、浮き沈みのある人生や音楽的表現を経験したことに対して、ささやかな慈しみの眼差しが注がれている。そして、窓辺の向こうにゆっくり流れていく過去の自らの人生を見つめるような優しい感情に溢れている。それは忙しない人生の流れを止め、ほんの少しだけ時計の針を遅らせる効果がある。

 

 

「Love Changes」

 

 

今作にはシンガーソングライターとしてのキボンズの性質が反映されている。加えて、近年、ヘンリク・グレツキの交響曲、ケンドリック・ラマーの「Mother I Sober』など現代音楽やスポークンワードにも取り組んできたギボンズの音楽的な蓄積がどのように表れるかに着目したい。



Beth Gibbons 『Live Outgrown』


Label :  Domino

Release: 2024/05/17

 

Tracklist:


1. Tell Me Who You Are Today

2. Floating On A Moment

3. Burden Of Life

4. Lost Changes

5. Rewind

6. Reaching Out

7. Oceans

8. For Sale

9. Beyond The Sun

10. Whispering Love


Beth Gibbons 2024 Tour Dates:


May 27 – Paris, FR – La Salle Pleyel

May 28 – Zürich, CH – Theater 11

May 30 – Barcelona, ES – Primavera Sound Festival

May 31 – Lyon, FR – La Bourse Du Travail

Jun 2 – Berlin, DE – Verti Music Hall

Jun 3 – Copenhagen, DK – Falkonersalen

Jun 5 – Utrecht, NL – Tivoli Vredenburg

Jun 6 – Brussels, BE – Cirque Royal

Jun 9 – London, UK – The Barbican Centre

Jun 10 – Manchester, UK – Albert Hall

Jun 11 – Edinburgh, UK – Usher Hall

 

 

・Later with Jools Holland



イギリスのシンガーソングライター、Beth Gibbons(ベス・ギボンズ)がBBCの番組、''Later with Jools Holland''に出演し、先日発売されたばかりのニューアルバムの収録曲「Floating On A Moment」をライブパフォーマンスした。演奏はバンドセットで行われた、渋さのある歌声を披露した。下記よりこのパフォーマンスをご覧下さい。


ジュールズ・ホランドとのLater...(イーブン・ラター...ウィズ・ジュールズ・ホランド、旧名:Later Live... with Jools Holland、...Later with Jools Holland)は、ジュールズ・ホランドが司会を務めるイギリス音楽番組。レイト・ショー』のスピンオフ番組で、1992年10月8日から短いシリーズで放送されている。現在はBBC Twoの『サタデー・ナイト・ミュージック』ブロックの一部となっている。


 

 

©Zoe Donahoe

Claire Rousey(クレア・ルーセイ)は、新作アルバム『sentiment』を発表した。初のフルアルバムには、Hand HabitsとLala Lalaがゲスト参加。リードシングルの「head」の視聴は以下より。


実験音楽とアンビエント・ミュージックの形式に挑戦することで知られるルーセイ。テクスチャーのあるファウンド・サウンド、贅沢なドローン、フィールド・レコーディングを巧みに取り入れ、人生の凡庸さの中にある美を讃える音楽に昇華させている。彼女の音楽は見事なまでにキュレーター的で、細部まで美しい粒子となり、感覚に訴えかけるものとして昇華される。『センチメント』は、孤独による感情の瞑想である。 ノスタルジア、感傷、罪悪感、セックス・・・。アルバムの物語の弧は繊細な音楽のジェスチャーと芸術的な繊細さによって導かれる。

 

クレア・ルーセイは、自宅や滞在先のホテルを始めとする様々なスペースで曲の制作を行った。各曲のパッセージからは彼女が過ごした時間とエネルギーの感触がリアルに放たれている。


このアルバムは、家で一人暮らしをしながら、ギターを学び、ポップ・ミュージックの魅力に出会った彼女の人生の瞬間を反映している。「最近、自分の気持ちや考えをできるだけ明確に伝えたいと思うようになった、今回はポップがもっとも理にかなう方法だと思ったんだ」とルーセイ。サンプリングされた会話の断片の告白が、彼女の作品に即時性と親密感を及ぼす。

 

音から純粋な感情を呼び起こすルーセイの生来の音楽的な能力は、ポップ、フィールド・レコーディングに見られる繊細さ、ミニマルなアレンジ等、多種多様な形を取って表れる。結果として生まれた『センチメンタル』の曲は、息をのむほど個人的であり、アンセミックでもある。

 






Claire Rousey 『Sentiment』

 

Label: Thrill Jockey

Release: 2024/04/19


Tracklist:


1. 4pm

2. head

3. it could be anything

4. asking for it

5. iii

6. lover’s spit plays in the background

7. sycamore skylight

8. please 5 more minutes [feat. Lala Lala]

9. w sunset blvd

10. ily2 [feat. Hand Habits]

 

©T-Bone Fletcher


ロンドンのクラブミュージックの象徴的な存在であるMount Kimbie(マウント・キンビー)は、約7年ぶりとなるアルバム『The Sunset Violent』を発表した。ダブステップの先を行くポスト・ダブステップに関連付けられるプロデューサーの作品がどのような内容になるのか。

 

2017年の『Love What Survives』に続くこのアルバムは、4月5日にWarpからリリースされる。新曲「Fishbrain」はテゲン・ウィリアムズが監督したミュージック・ビデオも公開された。(ストリーミングはこちら

 

『サンセット・ヴァイオレント』はカリフォルニアのユッカ・バレーで書かれ、ロンドンで完成した。11月にリリースされた「Dumb Guitar」のほか、盟友とも言えるキング・クルールとの2曲(以前シェアされた「Boxing」を含む)が収録されている。日本盤は各レコードショップにて。

 

 

 「Fishbrain」




Mount Kimbie 『The Sunset Violent』


Label: Warp 

Release: 2024/04/05


Tracklist:


1. The Trail

2. Dumb Guitar

3. Shipwreck

4. Boxing [feat. King Krule]

5. Got Me

6. A Figure in the Surf

7. Fishbrain

8. Yukka Tree

9. Empty and Silent [feat. King Krule]

 

Pre-order:

https://mountkimbie.warp.net/