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米国のラッパー、Denzel Curry(デンゼル・カリー)が昨夜(7月20日)、The Tonight Show Starring Jimmy Fallonに出演し、自身の曲「Walkin'」を披露しました。「Walkin」は、3月にリリースされたカリーの最新アルバム「Melt My Eyez See Your Future」から抜粋された曲です。

 

Robert Glasper、Saul Williams、6LACK、Rico Nasty、JID、slowthai、T-Painらがゲスト参加した作品となっています。

 

 

 



イギリス・ヘッドフォードを拠点にするプロデューサー、Lil Silvaは、デビュー・アルバム『Yesterday Is Heavy』から5曲目の先行シングルとなる 「To The Floor 」を公開しました。

 

BADBADNOTGOODをフィーチャーした 「To The Floor」は、Lil Silvaのデビューアルバムのリリースに先駆けて公開。Skiifallをフィーチャーした「What If?」, Charlotte Day Wilsonとのコラボ「Leave It」「Another Sketch" and "Backwards" featuring Sampha」といった曲と併せてアルバムに収録されている。


ニューアルバム『Yesterday Is Heavy』には、Ghetts、Little Dragon、serpentwithfeetとの新たなコラボレーションも収録される予定です。


 

Mr.Jukes Barney Artist Credit: Ellie Koepke


5月にリリースされたシングル「93」に続き、Mr. Jakes、Barney Artistは新曲「Air To Your Hidden Lung」を公開した。

 

Mr.Jukesは元々、ボンペイ・バイシクルというインディーロックバンドで活動を行っていたが、その後、幅広いジャンルへアプローチを図るようになり、ソウル、ファンク色の強い楽曲が特色であり、現在では、ソングライター、プロデューサーとしての活動を中心に行っている。一方のバーニー・アーティストは、イーストロンドンのモダン・ヒップホップシーンのラッパーとして活躍している。ヒップホップに加えて、R&Bのリスペクトも伺わせるアーティストである。


前回の「93」に引き続き、ロンドンの秀逸なミュージシャン、二人のコラボレーションの第二弾シングルとなる「Air To Your Hidden Lung」は、「90年代ヒップホップのダークサイドへのトリビュートで、Wu-Tang Clan、Mobb Deepをイメージしている」Mr Jukesは語っている。「この曲は、大音量で演奏して首の筋肉を疲れさせるような、低音のバリバリ効いた曲なんだ」

 

 Wu-Lu   「Loggerhead」

 

 

 

Label:  Warp Records


Release: 2022 7/8


 

REVIEW


Wu-Luは、イギリスのクラブミュージックの最前線サウスロンドンを拠点に活動するプロデューサー。

 

「Loggerhead」をリリースするに際してイギリスのダンス/クラブ・ミュージックの名門レーベルWarp Recordsと契約を交わした。このアーティストは、サウスロンドンのロイル・カーナーと並んで、最注目するべきラッパーである。また、ウー・ルーは、リチャード・D・ジェームス、スクエア・プッシャーに続いてのワープレコーズの大型新人アーティストの台頭といえる。これまでに、Fader,Mojo,Crack,Quietusといった現地のメディアが手放しに絶賛したアーティストである。

 

このデビューアルバム「Logger Head」は、CD/LP,カセットの三形式で昨日に発売された。先行シングルとしてリリースされていた「South」を初め、いくつかの既発シングルがアルバムの中に収録しなおされている。 


「Loggerhead」の制作は、バックバンドのメンバーと共に、ウエストロンドンのパブ、ノルウェーにあるレコーディング・スタジオ「Betty Fjord Clinic」で録音がなされている。レコーディング/マスタリングの段階においては、実際のバンドのジャム・セッションを元にサンプリングを駆使し、音形の断片を繋ぎ、再演奏を繰り返しながら制作が行われている。ウー・ルーがノルウェーからイギリスのロンドンに帰国した際に、この作品は既にほぼ完成間近であったという。

 

Wu-Luの縦横無尽で奔放なアプローチについては、近年、流行のクロスオーバーというより、ジャンルレスを志向しているような印象を受ける。アルバム全体の一部分だけを捉えると、苛烈な表現もあるが、よく聴き込めば、冷静な一面を垣間見え、全体としてはバランスの良い作品に仕上がっている。


ジャケットのアートワークに示されるように、このプロデューサーの不安、罪悪感がテーマに掲げられ、その概念を元に、このプロデューサーの多面性が性質が音楽を通じてひときわクールに表現されている。ここには、ウー・ルーというアーティストの外交的な人柄が垣間みえたかと思えば、その正反対の内省的な一面が、曲の流れの中、入れ替わり立ち替わり姿を現すように感じられる。この多面性のようなものが「Logger Head」の大きな魅力といえるのかもしれない。

 

このアルバム『Loggerhead』はきわめて多彩な音楽性が繰り広げられる。ハイライトのひとつとなるLex Amor(ノースロンドンの女性ラッパー)をゲストボーカルに迎えた「South」では、ギターのローファイなサンプリングを元にし、ヒップホップ、グランジを融合させたアヴァンギャルド・ラップの領域に踏み入れる。さらに、アルバム発売の告知に合わせて最初の先行シングルとして発表された「Blame」では、ドリルンベースとロンドンの多彩なヒップホップを巧みに融合した実験的なサウンドを提示している。また、その他にも、現代的なダブ・サウンドをヒップホップに組み入れた「Ten」も収録されている。これらは、このアルバムの世界観を形作る一部にとどまるが、このアーティストの内面性を様々な音楽を介して取りまとめたようにも思える。

 

このアルバムの中で、もうひとつ注目しておきたいのが、サウスロンドンのクラブシーンの最前線を行くサウンドが示されている「Slightly」となる。ローファイ、ヒップホップ、アシッド・ハウスを組み合わせたこの曲で、ウー・ルーはプロデューサーとしての類い稀なる才覚を示している。ギターの演奏をサンプリングし、スライスし、リズムトラックと掛け合わせて、断片的なスクラッチサウンドをループさせることで、実にきわどいグルーブ感を生み出している。ウー・ルーは、この秀逸な楽曲において、グライム、ガラッジ、ベースライン、その他、様々なサウスロンドンのクラブシーンの系譜にあるリズム性を組み入れた音楽をクールに提示しているのが見事だ。


95/100

 

 

Featured Track  「South」

 




Warp Records Official Store :

https://warp.net/releases/307313-wu-lu-loggerhead



・Amazon Affiliate Link

 

 

Loyle Carner Credit: Sirus Gahan


セカンドアルバム「Not Waving, But Drowning」のリリースから3年、ロンドンのラッパー、ロイル・カーナーはパワフルなニューシングル「Hate」を携えて戻ってきた。彼はこの新曲について以下のように話す。


「憎しみに満ちた場所から作られた数少ない曲のひとつだ。私は世界に対して怒り、怯え、圧倒されていたのです。

 

この曲はフィルターを通さない。憎しみは恐怖に根ざしているということを理解するための、本当にただの意識の流れなんだ。

 

赤い霧に覆われた時や、残りの霧が去った時に感じる孤独感を思い出す。傲慢で独善的でありながら、同時に弱々しく沈痛な気持ちになる。私は夜、車の中でこの曲を聴いています。特に口論の後、場所を確保して一息つきたいときにね」



 

Calvin Harris


スコットランド出身の音楽プロデューサー、カルヴィン・ハリスが、ニューアルバム「Funk Wav Bounces Vol.2」をコロンビアレコードから8月5日にリリースすることを発表した。この発表と同時に、21 Savageをフィーチャーしたニューシングル「New Money」を公開している。アルバムのトレイラー映像も同時公開されています。

 

「Funk Wav Bounces Vol.2」 Album Trailer


 


今回発表された『Funk Wav Bounces Vol.2』には、豪華なコラボレーターが見いだされる。 ジャスティン・ティンバーレイク、ファレル・ウィリアムス、ホールジー、チャーリー・プースなどのポップアーティストから、ノーマニ、ティナーシェ、ジョルジャ・スミス、クロイなどの女性シンガー、21サヴェージ、ステフロン・ドン、6LACKなどのラッパーに加え、スヌープ・ドッグ、バスタ・ライムスといった大御所まで、総勢23組のスペシャルなゲストが一挙公開された。

 

今年初め、カルヴィン・ハリスは、Dua LipaとYoung Thugのコラボ曲「Potion」でこのレコードの発売を予告していた。

 

 

 「New Money」-Single-

 


 

Calvin Harris 「Funk Wav Bounces Vol.2」



Label:  Columbia

Release:  2022年8月5日

Kendric Lamar

Kendrick Lamarは今、ヨーロッパで様々なフェスティバルやハイエンドなイベントに出演しています。

 

数日前には、Spotify主催のカンヌライオンズ・フェスティバルで親密なセットを行い、今夜はミラノ・サマー・フェスティバルに出演、日曜日にはグラストンベリーのピラミッド・ステージでヘッドライナーを務め、さまざまな仕事をこなしています。より型破りな出演としては、今日のパリ・ファッションウィーク中に行われたルイ・ヴィトンのショーケースでのパフォーマンスが挙げられる。


今回、ケンドリック・ラマーは、様々なファッションプレートが行進するキャットウォークの横で観客と一緒に座りながら、最新作『Mr.Moral & The Big Steppers』の曲をピックアップし、ライブパフォーマンスを行い、ショーケースを盛り上げている。パフォーマンス中、ケンドリックは(ニューアルバムのジャケットに見られる)茨の冠を被り、ルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターである、故ヴァージル・アブローに感謝を捧げている。その模様は以下からご覧いただけます。


 


ニュージャージー出身のカニエ・ウェストの愛弟子、070 Shakeは、6月3日にデビュー・アルバム「You Can’t Kill Me 」をリリースした。

 

マイク・ディーンによるミキシング、マスタリングをフューチャーした新作アルバム「You Can't Kill Me」は、クリスティーヌ・アンド・クイーンズのコラボレーション「Body」を含む全14曲が収録されている。今、女性ラッパーとしてアメリカ国内で大きな話題を呼んでいるアーティストでもあり、上記のデビューアルバムはアメリカのモダン・ラップシーンの象徴的な作品である。

 

今週、070シェイクは、Jimmy Falons主演の『The Tonight Show』に音楽ゲストとして出演を果たし、その中でデビュー作に収録されている「Skin and Bones」を披露している。


070シェイクは、ジミー・ファロンのスタジオではなく、サウンドステージで「Skin And Bones」を披露した。カメラに映りこんでいるのは彼女だけで、曲の大半は、冷たくドラマチックな白い背景を背に歌われています。曲のビートが切り替わると、色調も変化する。そのすべてがクールで、Shakeの姿を際立たせている。ライブパフォーマンスの様子は以下でご覧ください。

 

 


 

Chance the RapperがJoey Bada$$とタッグを組んで、ニューシングル「The Highs & The Lows」を発表しました。

 

DexLvLがプロデュースしたこの曲は、Chanceと映像作家のTroy Guenoが監督したビデオも並行して公開されています。


「The Highs & The Lows」は、ガボンのアーティスト、Naïla OpiangahとMoses Sumneyとのコラボレーション「Child of God」、シカゴ在住の画家Nikko Washingtonとのコラボレーション「A Bar About A Bar」に続く異色シリーズの第3弾となる。

 

最新作は、ガボンの写真家ヤニス・ダビ・ギビンガのアートワークを使用し、木曜日にスイスのアート展示会で展示デビューを果たしています。


また、この作品は、今週日曜日(6月19日)のジュネーテントに、シカゴのデュサブルアフリカンアメリカン歴史博物館で展示される予定です。

 


 


 

昨晩、Drakeは、ニューアルバム『Honestly, Nevermind』の制作を発表。このアルバムは、ドレイクが45分間、最新鋭のハウスビートで優しく歌い、ラップはほとんどなく、最後の瞬間に21 Savageが登場し、すべてを奪いさるというものです。アルバムの詳細についてはまだ完全に判明していませんが、今回は、アルバムのオープニングを飾る "Falling Back "のビデオをご紹介致します。ドレイクの独特かつ魅惑的なフロウが存分に発揮された内容になっていますよ。


この "Falling Back "のミュージックビデオは、Drakeと何度も仕事をしているラップビデオのベテラン監督、Director Xが手がける。さらに、ビデオは、ドレイクが結婚するという内容が描写されていますが、彼はインスタグラムのモデルタイプに見える23人の女性と一度に結婚するというド派手さ。ドレイクは、このジョークを9分半も引き伸ばし、Honestly、Nevermindの曲のクリップを織り交ぜ、大規模なエンドクレジットで、すべての花嫁をクローズアップしている。

 

ビデオクリップは、ビッグスターで埋め尽くされていますが、それらの中で、注目すべきは、トリスタン-トンプソン、現在のシカゴ・ブルズのセンターと悪名高いトリーバーチでしょう。トンプソンは、結婚前のドレイクを説得する役割を担っている。また、ドレイクの母親が、この人は長続きすると思う、と言っています。そして、『オールドスクール』に登場した不敬なカバーアクト、ダン・バンドがレコ発で、ドレイク自身の「Best I Ever Had」をカバーする場面もあり。

 

Flying Lotus 


Flying Lotusは、ロサンゼルス在住のソウルシンガーDevin Tracyのボーカルをフィーチャーした2つの新曲「The Room」と「You Don't Know」を公開しました。以下よりお聴きください。


前作のスタジオLP『Flamagra』と、それに伴うシングル『Flamagra (Instrumentals)』をリリースして以来、フライング・ロータスは、レシーントーマスのアニメシリーズ『Yasuke』のスコアを作曲、ドキュメンタリーシリーズ『They Call Me Magic』のタイトルテーマをシェアしています。さらに、今年初めに、Flying Loは、2作目の長編映画となる、SFホラー映画『Ash』の制作も発表しています。

 

 

「You Don't Know」 


 

 

 「The Room」


 

Moor Mother  Photo Credit:samantha isasian


Moor Motherが、Akai SoloとJustmadniceをフィーチャーした新曲「RAP JASM」を公開しました。この曲は、彼女が先日発表したLP『Jazz Codes』からのもので、昨年発表された『Black Encyclopedia of the Air』には、以前発表されたトラック「Woody Shaw」が収録されています。両シングルとも下記よりチェックしてください。


Moor Motherのセカンドアルバム「Jazz Codes」は、今年7月1日にAnti Recordsからリリースされる予定です。Mary Lattimore, Fatboi Sharif, Irreversible Entanglements, Yungmorpheusが参加した作品となっています。

 

「このアルバムの原動力は詩です」とCamae Ayewaは声明で説明しています。「これらのアーティストや、名前はないけれども感じた無数の人たちの物語が、主要なモチーフとなっています。私は、彼らを尊敬し、供え物を与え、私の体に抱き、彼らと共に夢を見、甘美を送りたかったのです」

 


Jay Wood
 

カナダ、トロント 、ウィニペグのミュージシャン、ソングライターであるJeremy Haywood-Smithのソロ・プロジェクト、JayWoodは、7月15日にCaptured Tracksからリリースされるスタジオ・アルバム『Slingshot』から新しいシングル/ビデオ「Shine」を発表しました。「Shine」は、McKinley Dixon(マッキンリー・ディクソン)をフィーチャーしています。


さらに、この曲は、ミネソタ州ミネアポリスでGeorge Floydが殺された夜に書かれたもので、アルバムの中で最も重要な意味を持つ曲に挙げられます。


ヘイウッド=スミスは、「2020年の夏ほど、活性化や過激さを感じたことはなかったと思う」と語る。

 

「疲弊した時期でしたが、私はその時起きていることすべてに意見するようなことを一度やってみたかったんです。

ヒップホップの曲を作ろうと思いついたとき、マッキンリーを起用しなければと思いました。彼の書く曲はとてもワイルドだから、私もそのレベルで何かできないかと思った」とヘイウッド=スミスは付け加えました。パーカッシブなインストゥルメンテーションと穏やかな打楽器の上で、ジェイウッドはこう激励を与える。「そして、最終的には、私の仲間を輝かせれば良いんだ」 

 

 

 

 

新作アルバム『Slingshot』の物語は1日という短いスパンで展開される。1曲目から最後の曲まで、JayWoodは幼少期、宗教、アイデンティティというテーマに触れる旅に聞き手を誘います。

 

ヘイウッド-スミスは、このアルバムの作曲とレコーディングの間に、彼の実生活の超現実的なバージョンを構成するすべてのプロットポイント、環境、キャラクターをマッピングした複雑な「脚本」を作成しました。



カナダの大草原で生まれ育ったJayWoodは、2015年からヘイウッド=スミスの自己発見と心痛の旅をユニークなソングライティングで捉えてきた。2019年に母親を亡くし、2020年を通して複数の社会的危機が発生し世界的に行き詰まったヘイウッド=スミスは、前進する勢いに憧れました。

 

「前進するために振り返るという考えは、私にとって本当に大きなものになりました。だからこそ、『Slingshot』というタイトルを付けたんです」とヘイウッド=スミスは説明しています。ヘイウッド=スミス氏は、両親の死後、自分の過去や祖先とのつながりを断ち切られたと感じ、白人が多いマニトバ州で暮らす自分のアイデンティティと黒人特有の経験をよりよく理解しようと意識的に取り組みました。『Slingshot』は、ファンタジーなシナリオと個人的な逸話、そして、ポップでダンスなインストゥルメンタルを融合させた、Jay Woodの表面と深層の自画像ともいえます。


「Slingshot」は、7月15日に、Captured Tracks/Royal Mountain Recordsからリリースされる予定です。

 




Jay Wood 「Slingshot」


 

Label: Captured Tracks/Royal Mountain Records

 

Release:2022年7月15日


Tracklisting


1.Intro(End Of An Era)

2.God Is A Reptile

3.Pray.Move On

4.All Night Long

5.Just Sayin(feat.Ami Cheon)

6.Is It True?(Dreams Pt.3)

7.Kitchen Floor

8.Shine(feat.Mckinley Dixon)

9.Tullps

10.YGBO-Interlude

11.Thank You

12.Arrival(Outro)


 


 

グリセルダのラッパー、Benny The Butcherはテキサスのバッファロー出身です。バッファローでは最近、人種差別を目的とした犯人がスーパーマーケットで10人(全員黒人)を殺害する事件が発生しました。

 

この事件をはじめ、アメリカでは恐ろしい銃乱射事件が相次いでおりますが、Bennyは、新曲 "Welcome To The States "のPVを公開しました。


この曲は、ケンドリック・ラマーの最新作『Mr. Morale & The Big Steppers』の収録曲で、ケンドリックが女優のテイラー・ペイジと罵り合いを演じた「We Cry Together」のビートに乗せて彼がラップしているものです。「憎しみの上に形成されたイデオロギー」とBenny The Butcherは情熱的にラップしています。「今じゃ、皮肉なことに、食料品店も安全じゃないんだ」


"Welcome To The States "はベネフィット・ソングの一環として書かれており、全米犯罪被害者弁護士協会、バッファロー・サバイバーズ・ファンドなどの団体に寄付するよう呼びかけをするためリリースされました。ベニーのブラック・ソプラノ・ファミリーも同じく「Pray For Buffalo」Tシャツを販売し、売り上げの100%を「Buffalo 5-14 Survivors Fund」に寄付する予定になっています。


YouTubeの映像では、この曲のビデオに、ベニー・ザ・ブッチャーからのこんなメッセージが添えられています。


2022年5月14日、バッファローのコミュニティは、ジェファーソン・アベニューにあるトップスフレンドリーマーケットで銃を乱射して、10人が死亡、3人が負傷するという悲惨な暴力行為に見舞われました。多くの人が、どのように支援すればいいのかについて尋ねていました。ナショナル・コンパッション・ファンドは、TOPSと協力して、この痛ましい悲劇に影響を受けた人々に直接資金援助を行うため、「バッファロー5/14サバイバーズ・ファンド」を設立しました。


この映像は、今年に入ってから、米国で発生した銃乱射事件の数(6月1日現在で少なくとも233件)という驚異的な数字を含む別のメッセージから始まっています。曲と映像は、以下よりご覧いただけます。

 

 

 Chance The Rapperは、アート作品としても鑑賞出来るような新曲とビデオを共有しました。

 

「A Bar About A Bar」は、モージズ・サムニーをフィーチャーした、ガボンの画家ナイラ・オピアンガとのコラボレーションである「神の子」に続くシングル。「A BarAbout a  Bar」のビジュアルでは、チャンスとヴィック・メンサがライティングの練習をしている様子を見ることが出来、Nikko Washingtonがシングルのアートカバーを手掛けています。是非、以下でチェックして下さい。


Nikko Washingtonのアートワークは、5月25日にシカゴ美術館で発表され、今週末まで展示される予定です。プレスリリースによると、それは「白人アメリカの郊外における人種的不平等、人種統合、階級差別の最初の黒人スーパーマンの非正統的で未来的で超現実主義的な描写であるアバール」に触発されたという。

 

 KENDRICK LAMAR 「Mr Morale&The Big Steppers」

 


 

Label: pgLang

 

Release Date: 2022年5月13日



「Mr.Morale&The Big Steppers」は、ケンドリック・ラマーが新たな境地を開拓した作品と評せるでしょう。彼のラップシーンにおいての大きな功績は、既に「To Pimp A Butterfly」「Damn」といった近作のアルバムが証明していますが、ケンドリックは、メインストリームに引き上げられてもなお、その名声に溺れることなく、アメリカ国内で象徴的なラップアーティストとなってもなお、自らの芸術性、表現性をこのアルバムにおいて探求しようとしている。これまでの作品において、彼は、スポークンワードを介しての政治的な発言、アメリカという国家にたいする社会的な提言をする言うなれば「代弁者」としての役割を持ってきたのは周知のとおりですが、この作品においてラマーはより大きな代弁者としての歩みを前に進めたように思えます。

 

彼は本作において、個人的な問題にとどまらず、他者、特に、女性やトランスジェンダーに対する人権についての考えをアルバムの中で提示しているようにも思えます。彼は、アルバムアートワークに示されているように、父親になりまた二人の子を授かったことにより、女性的な視点を持ってスポークンワードを紡ぎ出していることに注目です。 (先行シングルのミュージックビデオで顔を七変化させたのにはアルバムの重要なヒントが隠れていた)いくつかの他者になりきり、それを鋭さのあるスポークンワードとして紡ぎ出すこと、それらの彼の試みが最も成功を見た曲が、「We Cry Together」、アルバムのハイライトともいえるポーティスヘッドのベス・ギボンズをゲストボーカルとして招いたジャズ/チルアウトの雰囲気を持つ「Mother I Sober」です。

 

ケンドリック・ラマーは、女性に対する優しい思いやり、さらに傷んだ心を持つ人の立場のなりかわり、痛烈に叫ぶことにより、前者のトラックでは、苛烈なスポークンワードとして、後者では爽やかでありながら熱情を兼ね備えたスポークンワードが生み出されています。ラマーにとってのラップをするとは、子供を持つこと、つまり、新たな命を授かることと同意義であるように思えます。彼の言葉には、慈愛があり、温かさが込められている。もちろん、彼の代表的な傑作のひとつである2015年のアルバム「To Pimp A Butterfly」の頃に比べると、表向きの苛烈さはいくらか薄れているものの、それでも、幾つかの楽曲では、落ち着いた深い精神性を擁し、今まで感じられなかった人間的な温かさがスポークンワードの節々に滲んでいます。これは、父性を表しており、ケンドリック・ラマーが、父親としての深い自覚をもったからこそ、また、子を持つ親としての自覚を持つからこそ生み出された表現といえるかもしれません。

 

既に指摘されているように、今回のアルバムで、ケンドリック・ラマーは、アメリカらしいヒップホップというよりかは、UKのブリストルサウンドのトリップホップ/ロンドンのヒップホップに近い質感を持った作風を制作構想に取り入れていたように思えますが、彼の構想は、ポピュラーミュージックの中に潜むような形で、アルバムの幾つかの楽曲で見事に花開いています。メインストリームのアーティストとして、過分な注目を受けた後、何らかの創造性を失ってしまう例は多く見られますが、少なくとも、ケンドリック・ラマーというラップシーンきってのビッグスターにとって、以上のことは無関係であるようです。さらに、「Mr.Morale&The Big Steppers」は、叙情詩の才能が既存作品よりも引き出され、ケンドリックの代名詞的なアイコンとなりえる力強さがあり、また、夏の暑さを吹き飛ばすのに適したアルバムと言えるでしょう。

 

100/100(Masterpiece)

 

 

Weekend Featured Track 「Mother I Sober」

 

Danger Mouth/Black Thought Credit:Uncanny


グラミー賞に22回ノミネート、六回受賞というとんでもない大記録を持つシンガーソングライター、デンジャー・マウス、そして、アメリカ国内で根強い人気を誇るラッパー、ブラック・マウスが新たにコラボレートしたアルバム「Cheet Cord」がBMGから8月12日にリリースされることが明らかになりました。

 

この知らせとともに、シングル「No Gold Teeth」が5月11日にリリース、同時に、Uncanny(英国を拠点とするジョージ・マンシー&エリオット・エルダーのクリエイティブデュオ)が手掛けたミュージックビデオが到着しています。

 

「Cheat Code」は、 共同制作者として、エイサップ・ロッキー、ラン・ザ・ジュウェルズ、MF DOOM、マイケル・キワヌカ、キッド・シスター、ジョーイ・バッドアス、ラス、レイクウォン、コンウェイ・ザ・マシンらがレコーディングに招かれ制作されました。MF・ドゥームに関しては、2020年の年末に亡くなっているため、ファンにとっては思い入れのある参加となるはずです。 

 

 

 

 

Danger Mouth/Black Thought 

 

「Cheat Code」

 


 

Label: BMG

 

Release Date: 2022年8月12日

 

Tracklist

 

1.Sometimes

2.Cheat Code

3. The Darkest Part[feat.Raekwon and Kid Sister] 

4. No Gold Teeth

5. Because [feat.Joey Bada$$、Russ and Dylan Cartlidge」

6. Belize [feat.MF Doom]

7. Aquamarine [feat. Michael Kiwanuka]

8.Identical Depth

9. Strangers [feat.A$AP Rocky and Run the Jewels]

10. Close To Famous

11.Saltwater [feat.Conway the Machine]

12.Voilas&Lupitas

 

 LAのアンダーグラウンドシーンで活躍する、プロデューサー、DJ,BeatJunkiesの設立者J.Roccは、今年6月17日にStone Throw Recordsから、新作アルバム「A Wonderful Letter」をリリースすると発表しました。



 

「A Wonderful Letter」は、LAのアンダーグラウンドビート、ヒップホップシーンにおけるJRoccのルーツを再考し、さらにLAの街、そしてこの地域に住まう全ての人々に捧げるラブレターとして生み出されました。

 

また、新作アルバム「A Wonderful Letter」には、Steve Arrington、The Egyptian Lover、The Koreantown Oddity、Budgie、MEDから音源が提供されているのにも注目です。

 


J.Rocc「A Wonderful Letter」



Label:Stone Throw Records


Release:6/17,2022



Tracklisting


1. Welcome Everyone
2. L.A. Anthem (ft. LMNO & Key Kool)
3. One
4. Love & Dope (ft. MED)
5. The Changing World (ft. The Koreatown Oddity)
6. Keep On (Yeah)
7. Flawless (Raw) (ft. Frank Nitt)
8. Flawless (Smoothed Out) (ft. Budgie)
9. All I Wanna Do (Remix) (ft. Steve Arrington)
10. Pajama Party (ft. The Egyptian Lover)
11. Go!
12. Dancing With The Best
13. The End (N.T.P.)

 

Kota the Friend

 

コタ・ザ・フレンドは、NYのブルックリンを拠点に活動を行っているアヴェリー・マルセル・ジョシュア・ジョーンズのヒップホップ・プロジェクト。

 

ジョシュア・ジョーンズはブルックリン出身で、若い時代から音楽に親しみ、トランペット、キーボード、ギター、ベースなど多種多様な楽器の演奏を習得する。ブルックリンアートハイスクールを卒業した後、ファイブ・タウン・カレッジに通い、トランペットを専攻。大学在学中に、ジョシュア・ジョーンズはヒップホップアーティストとしての活動を始め、Nappy Hairというトリオで活動を行い、ミックステープ、「Autumn」「Nappy Hair」をリリースしている。

 

2015年からコタ・ザ・フレンドのステージネームを冠し、ミュージシャンとしての本格的な活動を開始。この「KODA」という名には、ディズニー映画「ブラザー・ベア」に登場する子熊に因んでいるらしく、誰もが友人を必要としていて、自分の生み出す音楽が友人を見つけるためのインスピレーションになれば嬉しい、というジョシュア・ジョーンズの温かい思いが込められている。

 

コタ・ザ・フレンドは徹底して、DIYの精神を貫き、インディーラッパーとしてこれまでの活動を継続している。

 

デビュー前に、メジャーレーベルからの契約の誘いを断り、その代わりに、自主レーベルとアパレルショップを立ち上げた後、2018年に「Anything」、2019年にはデビュー作「FOTO」をリリースし、アメリカのイーストヒップホップシーンにおいて大きな存在感を示した。


コタ・ザ・フレンドは、幼い頃に両親が聴いていた、チルアウト・ジャズ、ソウル・ミュージック、それからNujabes、N.E.R.D、NAS、Biggiie、JAY-Zのような、幅広いヒップホップアーティストに音楽のバックグランドを持つ。




「Lyrics To Go Vol.3」fltbys LLC





Tracklisting


1.Scapegoat

2.Twenty-Nine

3.Bitter

4.Prodigal Son

5.Breath

6.For Troubled Boys

7.Dear Fear

8.Shame

9.Boy

10.Cherry Beach 




さて、今週の一枚として紹介させていただくのは、アメリカ東海岸のヒップホップシーンの最重要アーティスト、コタ・ザ・フレンドの1月14日リリースの新作「Lyrics to GO Vol.3」となります。 

 

この「Lyrics to GO」という作品は、一つの意識の流れを意味し、必ずしも、完全な曲としてリリースされたものではなく、アイディアを集約した作品で、オリジナルアルバムをリリースする間に挟むことにより、創作を円滑に繋ぎ合わせるというアーティストの意図が込められています。


全ての楽曲は、一分半、二分のランタイム。ジョシュア・ジョーンズが、今、メッセージとしてぜひとも伝えておきたいことをフロウに込める簡潔な雰囲気の作品です。一作目の「Lyrics to GO Vol.1」は、インディーアーティストながら、ビルボードのUSチャートトップ10にランクインした話題作。そして、この作品は、「Lyrics to GO」三部作の完結と見てもよいかもしれません。

 

この作品「Lyrics to GO Vol.3」が素晴らしいのは、表向きに見えるシンプルな楽曲構成の魅力もさることながら、叙情的な雰囲気が漂っていることに加え、ヒップホップに旋律性や和音性をもたらそうとしている点。


また、ジョシュア・ジョーンズの本格派のフロウはバックトラックのジャジーな雰囲気と相まって、独特な美しいハーモニクスを生み出しています。正確に言えば、和音が意図して構成されていないにも関わらず、アンビエンスの倍音によって複雑な和音が生み出されているのが見事と言えます。


全体的には、コタ・ザ・フレンドのこれまでの既存の作品の音楽性を引き継ぎ、家族や友人といった出来事に歌詞のテーマが絞られ、ローファイ・ホップの雰囲気を持った楽曲が数多く収録されています。これまでの作風と同じく、コタ・ザ・フレンドは、多彩なアプローチを図り、ヒップホップの中に、ソウル、ジャズ、フォークの要素をオシャレにそつなく取り入れています。

 

「Lyrics to GO Vol.3」は、メモ書きのような意味を持つ作品のため、本義のオリジナルアルバムとは言いがたいかもしれません。いや、それでも、これらのトラックに込められたジョシュア・ジョーンズのフロウの軽やかさを聞き逃すことなかれ。この作品は、爽快かつリラックスして聴くことのできる個性的な楽曲ばかり揃っていて、聴いていると、ほんわかした気分を与えてくれます。

 

「アイディアの集約」という意図で制作されたデモテープのニュアンスに近いリリースであり、長い時間を掛けて制作されたわけではないからか、アルバム全体には、爽快で軽やかな雰囲気が漂っています。

 

しかしその一方、長く聴けるような渋さも十分に併せ持った作品でもある。また、このコンピレーションで繰り広げられるコタ・ザ・フレンドの痛快で軽やかなフロウは、先行きの不透明な現代社会だからこそ意味深いもの。きっと多くのリスナーに、明るく、温かな息吹を与えてくれるはず。

 

今作は、本格派のフロウでありながら、通好みのローファイ感が満載。まさに、コタ・ザ・フレンドの名の通り、ヒップホップファンにとっての「長きにわたる友」と言えるような雰囲気に満ちた魅力的な作品。

Album of the year 2021 

 

ーRap/Hiphopー 

 

 

 

 


・Nas  

 

「King Disease Ⅱ」 Mass Appeal 

 

 

 Nas 「King Disease Ⅱ」


 King's Disease II [Explicit]

 


アメリカ合衆国でディスコが衰退した後に登場したラップ、ヒップホップという音楽ジャンルは、1970年代後半のニューヨークのブロンクス地区の公園で、街中の電線から違法に電気を引いてきて、移民のDJがレゲエ、ダブを掛け始めることで始まった文化である。


この音楽文化を、Bボーイズ、ガールズ、数多くのDJインディーズレーベルがクラブカルチャーを通じて徐々に広めていった。当時、アメリカの主要な音楽を取り扱う最大手のビルボード紙にも、このラップ音楽の理解者が殆どおらず、一種のカウンターカルチャーとして見なされていた。しかし、今日のアメリカのミュージックシーンでは、ヒップホップがメインカルチャーに変わり、レコード産業はこの最も売れるジャンルに依存すらしているのは、時代の変遷ともいえるだろう。


長い時代を通して、アメリカの表社会からは見えづらい社会の闇、人種問題、人権問題、ゲットゥーの悲惨な生活、そういう影の部分にスポットライトを当てる役割がその後の世代を通して出現したラッパーたちには存在した。


もちろん、アメリカで最も著名なDJラッパーのひとり、ニューヨークのクイーンズ出身のNasについても全く同じことが言える。


ナズは、元々、八歳で学校をドロップアウトしたのち、ドラッグの売人をしながらゲットゥーをさまよった。彼に、教養、そして文学性を与えたのは、聖書、コーランといった聖典だった。


今日、ナズのラップが未だにアメリカ国内にとどまらず、ヨーロッパ圏でも大きな人気を獲得している理由は、「ラッパーの王者」となってもなお、そういった弱者、表社会からはじき出された人々に対する愛着を失わないからかなのかもしれない。赤裸々にアメリカ社会の闇を暴き出す姿勢、歯に衣着せぬ物言いが、特に、アメリカ国内の人々には痛快な印象すら与えるのだろう。


エミネムをゲストとして招聘した今作「King Disease Ⅱ」は、「王者のヒップホップ」というように、海外の複数の音楽メディアから数々の賛辞を与えられており、その中には歯の浮くような評言も見いだされる。もちろん、作品の話題性については言わずがな、グラミーも受賞するであろうレコードと率直に思う。現在も、ナズは、アメリカのラップ界のアイコンともいえる存在であることは、張りのあるスポークンワードだったり、そして、苛烈なフロウを見れば理解できる。そして、ゲトゥーからスターダムに這い上がってなお、ギャングスタ・ラップの色合いの強い、デンジャラスな雰囲気を今作でも過分に残しているというのは殆ど驚愕すべきことだ。


それはやはり、ナズが若い時代のゲトゥーでの生活、社会の底に生きる人々に一種の愛着のようなものを持ち続けていることに尽きると思う。このレコードに収録されている楽曲のトラックメイクについても王道のヒップホップを行くもので、全く売れ線を狙うような姿勢を感じさせないのも見事。

 

この作品には、いまだに、Nasのアメリカの表社会に対する一種の義憤、そして、ドラッグの売人の時代、ゲトゥーで暮らしていた時代に培われた強かな反骨精神のようなものがタフに感じられる。また、それが、ナズというアーティストが「ラップの王者」でありつづける要因でもあるのだ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

・Kota The Friend  Feat.Statik Selektah 

 

「To Kill a Sunrise」 Fitbys LLC

 

 

Kota The Friend  Feat.Statik Selektah 「To Kill a Sunrise」  


To Kill A Sunrise [Explicit]  



コタ・ザ・フレンドとして活動するAvey Marcel Joshua Joneもヒップホップの発祥の地であるニューヨーク出身のラップアーティストであり、イーストコーストヒップホップシーンを代表するDJである。


近年、オールドスクールのヒップホップスタイルも行き詰まりを見せているように思え、他のジャンルがそうであったようにクロスオーバー、つまり本来異なるジャンルをヒップホップに織り交ぜていこうと模索するDJが出てくるようになった。いわばヒップホップも次の時代に進んでいこうという段階にあるのかもしれない。


コタ・ザ・フレンドも同じように、クロスオーバー・ヒップホップに取り組んでいるアーティストのひとり、大学でトランペットを学んでいて、ラップの要素に加え、ジャズ、そのほかにも、クラブミュージック、チルアウト、ローファイ・ヒップホップの要素を織り交ぜたくつろげる良質なヒップホップ作品をリリースしている。また、追記としては、2019年に発表した「Foto」は、ローリングストーン紙によってヒップホップのベストアルバムの19位に選出されている。


コタ・ザ・フレンドの新作「To Kill a Sunrise」は、カニエ、ナズ、ケンドリックといった大御所ラッパーの作品に比べると、いくらか話題性、刺激性に乏しいように思えるかもしれない。しかし、この作品には普遍的な良さがある。ヒップホップによりアート性を求め、芸術作品へ昇華させていこうというジョシュア・ジョーンズの意思を感じさせる。そして、張り詰めたヒップホップではなくて、それとは正反対のまったりした質感を持ち、くつろいだ感じが漂う作品である。


上記の「King Disease Ⅱ」ような鮮烈な印象こそないが、ローファイホップのようなリラックスして聴くことの出来る作品。ジャズの上品な雰囲気の漂うラップの良盤の一つとしてひっそりと取り上げておきたい。 



 

 

 

 

 

 

 

・Mick Jenkins 

 

「Elephant In the Room」Free Nation Cinematic Music Group

 

 

Mick Jenkins 「Elephant In the Room」  


Scottie Pippen [Explicit]  

 


長い間、ヒップホップ、及びラップアーティストは、このヒップホップ音楽がR&Bを始めとするソウル音楽に強い影響を受けて誕生したジャンルということを半ば否定し、忘れていたように思えるが、ようやく、ヒップホップにビンデージ・ソウルの音楽性を添えるDJが出て来た。それがシカゴ、イリノイ州に活動拠点を置くラッパー、ミック・ジェンキンスだ。ヒップホップのミックステープ文化に根ざした活動を行っており、カセットテープのリリースも率先して行っている。


これまで、アメリカの人種問題について歌ってきたミック・ジェンキンスは、今作「Elephant Int The Room」において、個人的な人間関係を題材とし、痛快なフロウを交えて歌ってみせている。若い時代の父親との疎遠な関係、そして、現在の友人関係であったりを、理知的に、ときには、哲学的な考察を交えながら、スポークンワードという形に落とし込んでいる。つまり、この作品は、表向きのラップの音楽性とは乖離した、内省的な世界が描き出されたレコードなのだ。

 

特に、ミック・ジェンキンスのルーツともいえるアナログレコード時代のビンテージソウルの影響を感じさせる作品である。


「Elephant In The Room」の個々のトラックメイクについては、ソウルミュージックの要素がサンプリングを介して展開されている。なんとなく、哀愁の漂うノスタルジアを感じさせる作品となっている。それは、なぜかといえば、ほかでもない、ミック・ジェンキンスの幼少期の音楽体験によるものだろうと思われる。幼い頃、両親が、家でかけていたビンテージソウルのレコード、それは彼の記憶の中に深く残り続け、今回、このような形でラップとして再現されたのである。


本作において、ミック・ジェンキンスは、形而下の世界に勇猛果敢に入り込み、それを前衛的な手法に導いてみせている。

 

それは言ってみれば、疎遠な父親との関係、幼少期の思い出を主題として、ビンテージソウルを介してどうにか歩み寄ろうと努めているように思える。


つまり、ミック・ジェンキンスが志すヒップホップは、このように、内的な感情に根ざした深い心象世界を描き出す。それがこのレコード作品にほのかな哀愁にも似た淡い雰囲気をもたらす。