©Danielle Neu

元ソニック・ユースのKim Gordon(キム・ゴードン)がセカンド・ソロアルバム『The Collective』を発表した。2019年の『No Home Record』に続くアルバムは、3月8日にマタドールからリリースされる。このアナウンスと同時にゴードンは、3月21日のヴァージニア州バーリントンでのライブを皮切りに、「The Collective」到着前後に6回のライブの開催を告知している。

 

キム・ゴードンはプロデューサー、ジャスティン・ライセン(リル・ヤッティー、ジョン・ケイル、ヤー・ヤー・ヤーズ、チャーリーXCX、イヴ・トゥモア)とのコラボレーションを継続し、アンソニー・ポール・ロペスのプロデュースも加わっている。

 

「BYE BYE」のミュージックビデオは、ココ・ゴードン・ムーアが主演し、写真家で映像作家のクララ・バルザリーが監督、クリストファー・ブラウベルトが撮影を担当した。マタドールによるプレスリリースは下記の通り。

 

ーキム・ゴードンの『No Home Record』には空間があった。家でもレコードでもなかったかもしれないが、空間があったように記憶している。


大通り、寝室、楽器が演奏され、録音され、声とその発声が、それらの空間を通り抜けようとしていた。


私たちは、そこで出会い、ギターが鳴り、シンバルの音が鳴り響き、音楽を奏でた。私たちは耳を傾け、壁に背を向け、夜の街をそぞろ歩いた。

 

キム・ゴードンの言葉が私たちの耳に、彼女の目が、彼女が見ていた、彼女が知っていた、彼女が覚えていた、彼女が好きだった。私たちはどこかに移動していた。家の記録はない。引っ越しだ。


今、私は『The Collective』を聴いている。次いで考える。この空間はどうしてこうなったのか? そして彼女はどう扱ったのか?  

 

それは分裂し、きらめき、墜落し、燃えた。ここは暗い。目を開けたまま君を愛せるか? 身体のない合成音声に取り憑かれる。

 

投影の飛行機・・・。鏡はあなたの銃を奪い、曲のエコーは、限界にありながら、決して行き場を失わず、その雰囲気の一部ともなり、彼女をして言わしめるように、「フェードインとフェードアウトを無限に繰り返す」。我らそのものを削り、刳り取る。傷つけ、そして削り取る。記録された放射の堆積物・・・、層・・・、採掘・・・、ねじれ・・・、屈折・・・。それらすべてがこの音楽を構成している。 ーMatador

 


アルバム発表と合わせて公開された「BYE BYE」は、新作のリードシングルであるにとどまらず、ゴードンにとってソロ・プロジェクトがどのような意味を成すのかを示唆している。空間を引き裂くかのような苛烈なノイズを聴けば、このプロジェクトが単なる思い出づくりでもなければ、過去に関する甘い回想ではないことは瞭然だ。そして、それはジョン・ケールが最新のソロ・アルバムで示したように、現代のニューヨークの最もアバンギャルドなアプローチでもある。

 

写真家で映像作家のクララ・バルザリーが監督、クリストファー・ブラウベルトが撮影を担当したミュージックビデオは下記より。

 

 

「BYE BYE」



・「I'm a Man」



キム・ゴードン(元ソニック・ユース)がソロアルバム『The Collective』をリリースする。そのセカンド・シングルをミュージック・ビデオとともに公開した。


映像では、ゴードンの娘ココ・ゴードン・ムーアと共演している。アレックス・ロス・ペリーが監督を務めた。キム・ゴードンの今後のツアー日程は以下の通り。


『The Collective』はゴードンのセカンド・ソロアルバムで、2019年の『No Home Record』に続く作品です。同アルバムと同様、ゴードンは再びプロデューサーのジャスティン・ライセン(リル・ヤッチー、ジョン・ケイル、ヤー・ヤー・ヤーズ、チャーリー XCX、イヴ・トゥモア)とコラボレーションした。アンソニー・ポール・ロペスが追加プロデュースを担当した。


マタドールのプレスリリースでは、アルバムの詳細は次のように説明されている。「ゴードンの直感的な言葉のコラージュとフックのあるマントラは、コミュニケーション、商業的昇華、感覚の過負荷を呼び起こす」

 

 

「I'm a Man」

 

「Psychedelic Orgasm」

©Danielle Neu
 

元ソニック・ユースのキム・ゴードンは、今週金曜日(3月8日)のリリースに先駆けて、ニューアルバム『The Collective』の最新曲「Psychedelic Orgasm」を公開した。これでリリース前の先行シングルが出揃った。

 

『The Collective』はゴードンのセカンド・ソロアルバム。2019年の『No Home Record』に続く作品。同アルバムと同様、ゴードンは再びプロデューサーのジャスティン・ライセン(リル・ヤッチー、ジョン・ケイル、ヤー・ヤー・ヤーズ、チャーリー XCX、イヴ・トゥモア)とコラボレーションした。アンソニー・ポール・ロペスが追加プロデュースを担当した。


マタドールのプレスリリースでは、アルバムの詳細はこう説明されてます。「ゴードンの直感的な言葉のコラージュとフックのあるマントラは、コミュニケーション、商業的昇華、感覚の過負荷を呼び起こす」

 

Vice Cooler監督によるミュージック・ビデオが公開された。以下より御覧下さい。

 

「Psychedelic Orgasm」

 

 

・アルバムのレビューは以下よりお読み下さい:

 

Review - Kim Gordon 『The Collective』  

 


Kim Gordon 『The Collective』



Label: Matador

Release: 2024


Tracklist:


1. BYE BYE

2. The Candy House

3. I Don’t Miss My Mind

4. I’m a Man

5. Trophies

6. It’s Dark Inside

7. Psychedelic Orgasm

8. Tree House

9. Shelf Warmer

10. The Believers

11. Dream Dollar

 

Pre-order:

 

https://kimgordon.ffm.to/thecollective 

 

 

 

・ Kim Gordon " The Collective Tour"



 
・3/21 Higher Ground, Burlington VT
・3/22 Black Cat, Washington DC
・3/23 Knockdown Center, Queens NY
・3/27 Regent Theater, Los Angeles CA
・3/29 Ventura Music Hall, Ventura CA
・3/30 The Fillmore, San Francisco CA

 

 Marika Hackman 『Big Sigh』


 

Label: Chrysalis 

Release: 2024/01/12

 

 

Review    -感情の過程-

 

 

リズムマシンやシンセサイザーを複合的に折り重ねて、シンプルでありながらダイナミックなソングライティングを行うイギリス/ハンプシャーのシンガーソングライター、マリカ・ハックマンの最新作『Big Sigh』は、冬の間に耳を澄ますのに最適なアルバムといえそうである。なぜなら雪に覆われた山岳地帯を訪ね歩くような曰くいいがたい雰囲気に作品全体が包まれ、それは小さな生命を持つ無数の生き物がしばらくのあいだ地中の奥深くに眠る私たちが思い浮かべる冬のイメージとピタリと合致するからである。アーティストは、Japanese House、Clairoといった、今をときめくシンガーに親近感を見出しているようだが、マリカ・ハックマンのソングライティングにも親しみやすさやとっつきやすさがある。初見のリスナーであっても、メロディーやリズムが馴染む。それは、その歌声が聴覚にじわじわ浸透していくといった方が相応しい。

 

オープニングを飾る「The Ground」は、インタリュードの役割を持ち、ピアノとシンセ、メロトロンの音色が聞き手を摩訶不思議な世界へといざなう。微細なピアノのミニマルなフレーズを重ね合わせ、繊細な感覚を持つマリカ・ハックマンのポップスの技法は、アイスランドのシンガーソングライターのような透明感のある輝きに浸されている。透明なピアノ、フォーク、メディエーションに根ざした情感たっぷりのハックマンのボーカルは、春の到来を待つ雪に包まれた雄大な地表をささやかな光で照らし、雪解けの季節を今か今かと待ち望む。それはタイムラプスの撮影さながらに、壮大な自然の姿を数時間、ときには十数時間、高性能のカメラで撮影し、編集によりスローモーションに差し替えるかのようでもある。ピアノのフレーズやボーカルが移ろい変わる毎に、崇高で荘厳な自然がゆっくり変化していく。オーケストラのストリングに支えられ、雪解けの季節のように、美しい輝きがたちどころにあらわれる。冬の生命の息吹に乏しい深閑とした情景。いよいよそれが、次の穏やかな光景に刻々と変化していくのだ。

 

しかし、春のおとずれを期待するのは時期尚早かも知れない。完全にはその明るさは到来していないことがわかる。「No Caffeine」は、従来の作品で内面の情景を明晰に捉えてきたアーティストらしい一曲で、それらは現代と古典的な世界を往来するかのようだ。少し調律のずれたヴィンテージな感じのピアノの音色を合わせたチェンバーポップ風のイントロに続いて、ハックマンは内面の憂いを隠しおおせようともせず、飄々と詩をうたう。最初のビンテージな感覚はすぐさま現代的なシンセポップの形に引き継がれ、それらの懐古的な感覚はすぐに立ち消える。しかし、最初の主題がその後、完全に立ち消えたとまでは言いがたい。それは曲の深いところで音を立ててくすぶり続け、他のパートを先導し、その後の展開にスムーズに移行する役割を果たす。セント・ヴィンセントを思わせるシンセのしなやかなベースラインは、ロックのスタンダードなスケールを交え、ハックマンの歌声にエネルギーを与える。それらのエナジーは徐々に上昇していき、内的な熱狂性を呼び覚ます。イントロでは控えめであったハックマンの声は、シンセの力を借りることにより、にわかに凄みと迫力味を帯びてくる。そして曲のクライマックスにも仕掛けが用意されている。オープニングと同様、オーケストラのストリングスのレガートを複合的に織り交ぜることで、イントロの繊細さが力強い表現へと変化するのだ。

 

本作の序盤における映画のサウンドトラックやオーケストラを用いたポップスのアプローチは、次曲への布石を形作っている。そして、ある意味では続くタイトル曲の雰囲気を際立たせるための働きをなす。本作の序盤に満ちる内的な憂愁は、リバーブやフェーザーを基調とするエレクトリックギターに乗り移り、シンセポップを下地にしたオルタネイトなロックへと変遷していく。

 

「大きなため息」と銘打たれたこの曲でも、マリカ・ハックマンの歌声には、なにかしら悶々とした憂いが取り巻き、目に映らぬ闇と対峙し続けるかのように、サビの劇的な展開に至るまで、力を溜め込み続け、内面の波間を漂うかのように、憂いあるウェイブを描こうとする。サビで溜め込んだ力を一挙に開放させるが、相変わらず、それは完全な明るさとはならず、深い嘆息を抱え込んでいる。しかし、イントロの静かな段階からノイジーなサビへと移行する瞬間に奇妙なカタルシスがあるのはなぜか。ハックマンが抱える痛みや憂いは他でもなく、見ず知らずの誰かの思いでもある。表向きに明かされることのない、離れた思いが重なりあう時、それは孤独な憂いではなくなり、共有されるべき感覚へと変わる。本当の意味で自らの感情に忠実であるということ、つまり、負の感覚を許容することにより、その瞬間、ハックマンのソングライティングが報われ、他者に対する貢献という類稀なる表現へと昇華されるのだ。苦悩は、内面の感情性を別のもので押さえつけたり、蓋をしようとすることでは解決出来ないのである。

 

「Blood」はハックマン自身による、ささやかなボーカルとアコースティックギターの組み合わせが、最終的にオルタナティヴ・ポップ/フォークという形に昇華されている。ビッグ・シーフ、クレイロ、ブリジャーズをはじめとする、現代のミュージックシーンの重要な立役者の音楽性の延長線上にあるが、その中でもシネマティックな音響効果をアーティスト特有の素朴なソングライティングに織り交ぜようとしている。曲そのもののアプローチは、トレンドに沿った内容ではあるけれども、曲の中盤からは、ダイナミックな展開が繰り広げられ、迫力溢れる表現性へと変化する。イントロから中盤にかけてのアコースティックのベースラインを意識した演奏を介して、ピアノやシンセを複合的に組み合わせ、表面的な層に覆われていた内郭にある生命力を呼び起こすかのようである。そして、タイトルに即して言及するならば、それは内面の血脈が波打ちながら表面的な性質の果てに力強く浮上していく過程を描いているとも言える。

 

 

「Blood」

 

 

「Hanging」は、夢の実現の過程における葛藤のような感覚が歌われ、複数のレーベルをわたりあるいてきたシンガーソングライターとしての実際的な感慨がシンプルなポピュラー・ソングのなかに織り交ぜられている。これは、昨年のThe Golden Dregsの最新作「On Grace & Dignity」で見受けられたように、みずからの人生の重荷をモチーフにしたと思われる楽曲である。しかし、マリカ・ハックマンの楽曲は、単なる憂いの中に沈むのを良しとせず、その憂いを飛び上がるための助走のように見立てている。そして最終的には、アンセミックなポップバンガーへ変化させ、4分弱の緊張感のあるランタイムに収めこんでいる。しかし、タイトル曲と同じように、憂鬱や閉塞感のような感覚が、サビという演出装置により一瞬で変貌する瞬間に、驚きとカタルシスが求められる。とりもなおさず、それは人間の生命力の発露が、頼もしさを感じるほど発揮され、背後のバックトラックを構成するピアノ、シンセ、リズムマシン、そしてマリカ・ハックマンの霊妙なボーカルにしっかりと乗り移っているからである。生命力とは抑え込むためにあるのではなく、それを何らかの形で外に表出するために存在する。それがわかったとき、共鳴やカタルシスが聞き手のもとにもたらされ、同時に、にわかに熱狂性を帯びるのである。 

 


「Hanging」

 

 

しかしながら、「Hanging」で一時的に示された一瞬の熱狂性は、何の目的も持たずに発せられるノイズのように奔放なものにはならず、その後の静謐な瞬間へと繋がっている。「The Lonely House」はアーティスト自身によるピアノの日記とも解釈できるトラックで、ポスト・クラシカルやコンテンポラリー・クラシカルのように楽しめる。しかし、徹頭徹尾、単一のジャンルで構成されるよりもはるかに、この曲は効果的な意味を持つ。それは一瞬の熱狂後にもたらされる静けさがクールダウンの効果を発揮するからであり、聞き手が自らの本性に戻ることを促すからである。そして、アルバムの冒頭で示された情景的な変化は、この段階に来て、優しげな表情を見せる時もある。それは制作者にとっての世界という概念が必ずしも厳然たるものばかりではなく、それとは対象的に柔らかな印象に変わる瞬間が存在する、あるいは、どこかで「存在していた」からなのかもしれない。

 

ハックマンの新作アルバムは、外的な現象と内的な感覚がどのようにリンクしているのかを見定め、それがどのように移ろうのかをソングライティングによってひとつずつ解き明かし、詳細に記録するかのようでもある。歌手の観察眼は、きわめて精彩かつ的確であり、そして内面のどのような微かな変化をも見逃すことはない。そして、一辺倒な表現ではなく、非常に多彩な感情の移ろいが実際の曲の流れ、ときには一曲の中で驚くほど微細に変化することもある。

 

それらの内面的な記録、あるいは省察は、祝福的な表現へと変貌することがある。「Vitamins」では、エレクトロニック/グリッチという現代的なポップスの切り口を通じて、内面的な豊かさへ至るプロセスを表現しようとする。しかし、その感覚は、温かな内面の豊かさに浸されているが、いつもゆらめき、形質というものを持たない。ある形に定まったかと思えば、ダブステップによるリズムを交えながら、エレクトロニックによる別の生命体へと変化していく。それは最終的に、70年代の原初的なテクノの未来的なロマンという形になり、最もダイナミックな瞬間を迎える。しかし、その後、突如それらが途絶え、静かで何もない、何物にも均されていない、本作の序盤とは異なる無色透明の場所にたどり着く。しかし、本当に「たどり着いた」というべきなのだろうか。それは単なる過程に過ぎないのかもしれず、その先もマリカ・ハックマンは貪欲になにかを探しつづける。

 

アルバムの終盤に収録されている「Slime」、「Please Don't Be So Kind」、「The Yellow Mile」では、アルバムの序盤の憂いへと戻り、素朴なインディー・フォークや、ダンサンブルなシンセ・ポップという、本作の重要な核心を形成するアプローチに回帰を果たす。しかし、不思議なことに、中盤の収録曲を聞き終えた後、序盤と同じような音楽性に帰って来たとしても、その印象はまったく同じ内容にならない。確実に、作品全体には、表向きのものとは別の長い時間が流れている。受け手が、そのことをなんとなく掴んだとき、このアルバムがフリオ・コルタサルの「追い求める男」のような神妙な意味合いを帯びるようになる。同じような出来事が起きた時、おしなべて多くの人は「同じことが起きた」と考える。けれど、それは先にも述べたように単なる思い込みにすぎない。どの出来事も同じ意味を持つことはありえないのである。

 

 

85/100

 


 

 


Label: Geffen

Release: 2023/01/12



Review 

 

グラミー賞アーティスト、カリ・ウチスはR&Bの清新なスタイルを模索するシンガーであるとともに、コロンビア、そして、ラテン・カルチャーの重要な継承者でもある。

 

最近では、南米や南欧文化に世界的な目が注がれているのは明らかである。いわば昔は、ボサノバ、サンバ、サルサを筆頭に、「ワールド・ミュージック」というジャンルで語られることが多かったラテン音楽が、世界のポピュラー音楽の最前線になりつつあるのは、時代の流れといえるかもしれない。それらは、レゲトンという形になったかと思えば、アーバン・フラメンコという、ポピュラー・ミュージックのトレンドの形になることもある。ロザリア、バッド・バニーに象徴されるように、南米にルーツを持つポップ・アーティストやラッパーたちに対して、ビルボード、及びレコーディング・アカデミーが軒並み高い評価を与えるようになったという事実は、南米という地域の文化が世界的に浸透するようになってきている証ともいえるかもしれない。

 

カリ・ウチスによる最新作『ORQUIDEAS』は、昨年の『Red Moon In Venus』の続編で、前作と同様にスペイン語で歌われている。上記のアートワークを見ると分かる通り、真の意味で続編のような意味を持ち、原題は、英語で「Orchid」、日本語で「ラン」を意味する。


アーティストみずからの肉体を花そのものに見立てたアートワークは、クリムト、アルチンボルドのパッチワークの技法を模し、肉体そのものにより鮮烈な美を表現しようと試みている。これらの表現性が南米文化の含まれる独特な情熱を秘めた美の表現の一環であることは想像に難くない。


前作のアルバムでは、メロウで、しっとりとしたスロウなR&Bのソングライティングにより、音楽における射幸性と高揚感のみがアーティストの魅力ではないということが示されたが、果たしてその反動によるものなのか、最新作はアップテンポなトラックで占められている。リアルなダンスミュージックのビートを意識し、ライブでの鳴りと観客との協和性を重視している。

 

「Como Asi?」 は、ラテンの文化を音楽というファクターを介し追い求め、ディスコ/バレアリックサウンドを基調とするダンサンブルなビートの中に妖艶さを漂わせる。アルバム全体を通じて、バリエーションの幅広さを意識し、変拍子を交え、プログレッシヴ・テクノのような音楽性を内包させ、曲の全体に起伏を設けている。これはシンガーソングライターとしてのたゆまぬ前進をあらわし、そして、DJとしての意外な表情を伺わせるものである。「Me Pongo Loca」そのアプローチは、ビヨンセやデュア・リパが示すようにハウスとポップの融合にある。そして、カリ・ウチスのダンスミュージックは、表向きからは見えないような形で、ラテンの情熱がその内側に秘められ、それが奥深い領域で、ふつふつとマグマのように煮えたぎっている。

 

 このアルバムのもう一つの際立った特徴は、ジェシー・ウェアが昨年のアルバムで示唆したように、ディスコ・サウンドのエンターテイメント性のリバイバルにある。それらをスペイン語の歌詞とその背後に漂うラテンのテンションが融合を果たし、部分的に清新な音楽が生み出されていることだ。「Iqual Que Un Angel」は、クインシー・ジョーンズのR&B、フュージョンの延長線上にあるノスタルジア溢れるアーバン・ソウルを、ラテンの文化性と結びつけようとしている。この曲は、日本のシティ・ポップにも近い雰囲気があり、バブリーな空気感を心ゆくまでたのしめる。「Pensamientos Intruviors」も「Iqual Que Un Angel」の系譜にあり、ハウスのグルーブ感が押し出され、バレンシア沖のサンゴ礁のエメラルドの輝きを思わせるものがある。

 

旧来のソウルのアプローチの後には、レゲトンに象徴づけられるモダンなサウンドが「Diosa」には見いだせる。しかし、トレンドのアプローチの中にも、モダンなヒップホップの要素を交え、グリッチを織り交ぜたりと、複数のアヴァンギャルドな工夫も見受けられる。その中で、ウチスの同音反復の多いスペイン語のボーカルが中音域の通奏低音のような響きを形成し、その周りに独特のグルーヴ、いわば音のウェイブを呼び起こし、それらがどこまで永続するのかを試行錯誤している。それらは最終的に、グリッチノイズの中にモジュラーシンセの音色がうねりながらその中核を貫いて、強烈なエナジーを生み出している。


ラテン音楽の継承者としてのアウトプットは、現時点で多数のリスナーから支持されている「Te Mata」に登場する。イントロのメロウな響きの後には、フラメンコ・ギター、コンガ/ポンゴ、ギロといった、ラテン音楽のパーカッションを配し、ムードたっぷりに哀感のあるフレーズをカリ・ウチスはポピュラーソングとして紡ぐ。リズムの前衛性は、ラテンのメロディーとともに、この曲にラテン文化の象徴的な意味合いをもたらす。フラメンコ調の流動的なリズムがあったかと思えば、アルゼンチン・タンゴに象徴される二拍子のリズムを複合的に配している。それらの底抜けに陽気なリズムは、最終的にフラメンコ調のスケールに引き立てられ、曲のクライマックスにドラマティックな演出を付与する。アウトロはタンゴ調のピアノでしとやかに終わる。

 

 

「Te Mata」

 

 

続く、「Perdiste」、「Young Rich & In Love」、「Tu Corazon & Es Mio...」は、ハウスとポップの融合というトレンドの形が示される。その中に、チルウェイブの爽やかさ、エレクトロ・サウンドの前衛性が刺激的にミックスされ、風通しのよいクリアなナンバーに昇華されている。これらは、イタロディスコやバレアリックのクラブミュージックの反映が心地良いサウンドとして昇華されている。「Munekita」は、今、最もトレンドな曲といえ、アルバムのアートワークに象徴される艶やかな雰囲気にレゲトンの要素をどのように浸透させるのかを試作しているように思える。この曲でも、エンターテインメント性を重要視しており、ボーカルのテクスチャーに流動的な動きをつけ、展開そのものに変拍子を加え、ビートの革新性に刺激的な響きをもたらす。

 

アルバムの最後の数曲では、序盤や終盤の収録曲で示されたバリエーション豊かな音楽性のミックスが楽しめる。その中に、ポップスの中にあるラテン音楽、ローエンドの強いハリのあるバレアリック・サウンドを基調としたハウス/プログレッシヴ・ハウスのダンスミュージックのアプローチ、続く、「Heladito」では、『Red Moon In Venus』で示されたR&Bのスロウバーナーのモチーフが再登場する。


「Dame Beso// Mueveto」では、サンバ/サルサをダンス・ミュージックという側面から示している。テネリフェ島やリオのカーニバルに見い出せるようなエンターテイメント性は音楽という枠組みをかるがると超越し、最終的にはリアルに近い体験に近づく。ウチスは、これらのダンスミュージックを通じて、ラテン音楽やカルチャーに鮮烈な息吹を吹き込む。本作の一番の醍醐味は、ラテン文化の純粋なエンターテイメント性とその躍動感に求められるのではないでしょうか。


 

 

78/100

 

 


韓国のパンク・バンド、セーラー・ハネムーンは、昨年デビュー・シングルをリリースしたばかりの有望株。バンドは母国の音楽の社会規範に挑戦を挑み、友情グループにおける有害な関係に焦点を当てたシングルをリリースした。かなりシュールなミュージックビデオも公開された。


「Bad Apple」は、今年5月3日にリリースされる8曲入りのEPの期待感を盛り上げてくれている。ガールズ・バンドによるこのプロジェクトは、即興的に作られた音楽に取り組み、親しい間柄のグループなら誰もが苦労する厄介で入り組んだトークを、ライトでノイジーなポップパンクに昇華させた。


セーラー・ハネムーン特有のフィルターを通さないストレートな歯に衣着せぬ雰囲気は、典型的なK-POPとは明らかに異なる魅力を示している。バンドは、主題とプロダクションに現代的なモチーフを残しつつ、オリジナルの70年代のパンクミュージックの反骨精神を再浮上させようと試みている。


セーラー・ハネムーンの声明は以下の通り。「''Bad Apple''は、友人のひとりがある種の偏屈者であることに気づくことがテーマになっている。自分のためだけでなく、(彼らがいつも批判していた)他の友達のためにも、友達として彼らから離れるための決断をすることについてなんだ」


「Bad Apple」

 


アトランタ出身のシンガーソングライター、Faye Webster(フェイ・ウェブスター)がニューアルバム『Underdressed at the Symphony』の制作を発表した。本作は3月1日に発売される。

この発表に合わせて、Lil Yachty(リル・ヨッティ)をフィーチャーした「Lego Ring」が公開された。付属のミュージックビデオでは、ウェブスターとリル・ヤッティが曲に合わせてビデオゲームをプレイしている。
 
 
驚くべきことに、フェイ・ウェブスターとリル・ヤッティは中学時代からの友人だという。ウェブスターはプレスリリースの中で、このシングルについてこう語っている。「このアルバムは、わたしにとっては口が裂けても言えないような感じだけど、いつも深いことを言う必要はないよね。ただ座って、私が本当に欲しいクリスタルのレゴでできた指輪のことを歌えばよかった」
 
 
『Underdressed at the Symphony』は、ウェブスターの2021年の最新アルバム『I Know I'm Funny haha』と2021年のEP『Car Therapy Sessions EP』に続く作品。アルバムには、ウェブスターが2023年に発表した2曲、「But Not Kiss」と「Lifetime」が収録されている。
 

アルバムのタイトルは、ウェブスターが時々アトランタ交響楽団のコンサートを聞きに行ったこと、よくギリギリでチケットを買っていたことにヒントを得ている。「交響楽団に行くことは、私にとってほとんどセラピーのようなものでした」と彼女はプレスリリースで語っている。 
 

 
 「Lego Ring」
 
 
 
 
 

Faye Webster 『Underdressed at the Symphony』

 
Label: Secretly Canadian
Release: 2024/03/01



Tracklist:

1. Thinking About You
2. But Not Kiss
3. Wanna Quit All the Time
4. Lego Ring (ft. Lil Yachty)
5. Feeling Good Today
6. Lifetime
7. He Loves Me Yeah!
8. ebay Purchase History
9. Underdressed at the Symphony
10. Tttttime
 
 
Pre-order:
 

 


先週、元オアシスのリアム・ギャラガーと元ストーンローゼズのギタリスト、ジョン・スクワイアが新曲「Just Another Rainbow」のためにタッグを組んだ。

 

そしてこの度、二人が鉄道のトンネルの中でこの曲を演奏する特製のミュージック・ビデオが公開された。また、サイケ・バンド、ルッキング・グラス・アリスによるリミックスも公開されている。チャールズ・メーリングが監督したMV、リミックスを下記よりご覧ください。


「Just Another Rainbow」は、コラボアルバム(正式には発表されていない)からの最初のテイストである。


ジョン・スクワイアは以前のプレスリリースでこの曲についてこう語っていた。「Just Another Rainbow」の最も明白な解釈は、失望についてであり、本当に欲しいものは決して手に入らないということなんだ。でも、私は曲を説明するのがあまり好きではないし、それをどう感じるのかは聴く人の特権だと思う。ただ、私にとっては、この曲は私たちが一緒に作った曲の中で最も気分が高揚する曲のひとつでもあるんだ」


リアム・ギャラガーは次のように語っている。 「ジョンは最高のソングライターだと思う。みんな彼のギタリストとしての才能を非難するけど、彼は最高のソングライターでもあるんだ。ローゼズであれ彼自身であれ、彼の音楽は世の中に十分に出回っていない。彼がまた曲を書いているのを見るのはいいことだ。メロディーはメガ級だし、ギターは当然だ。でも、ギターを全部外しても、全部アコースティックで演奏しても、心を揺さぶられる曲ばかりだと思うよ」

 


 

 

 

 

©︎Jim Herrington


ザ・ブラック・キーズ(ダン・アウアーバックとパトリック・カーニー)は、ニューアルバム『Ohio Players』を発表。リードシングル「Beautiful People (Stay High)」のMVを同時公開した。『Ohio Players』は4月5日発売予定。2022年の『Dropout Boogie』に続く2年ぶりのアルバムとなる。

 

デュオは、現代の数少ないロックンロールの伝道師であり、ブギースタイルで渋みのあるロックを披露する。ニューシングルでもブギーロックに、シンガロングなコーラスとご機嫌なホーンが重層的に絡み合う。

 

「Beautiful People (Stay High)」は、ダン・"ザ・オートメーター"・ナカムラとBECKと共同で書かれた。アルバムには、ノエル・ギャラガー、グレッグ・カースティンらとのコラボレーションも収録されている。


パトリック・カーニーはプレスリリースでこう語っている。「ソロ・アーティストでありプロデューサーでもある)ダンは、レコードをプロデュースしている時に躍動する。それを活かすのが僕らの仕事なんだ」


アウアーバックはこう述べている。「誰と一緒に仕事をしても、自分たちを犠牲にしているようには感じないよ。ただ、特別な味わいが加わったと感じる。私たちは、一緒に働きたいと思う人たちとパレットを広げた。私たちは彼らのアイデアをサポートし、その瞬間が花開くのを見届けるためにできることは何でもした。でも、いざアルバムを完成させるとなると、パットと僕だけだった」


「レコードを作るのにこれほど苦労したことはなかったと思う。時間をかけて、きちんと完成させたよ。このアルバムでやり遂げたかったのは、楽しいものを作るということだった」とカーニーは言う。「そして、キャリア20年になるバンドの多くが作らないような、親しみやすくて、楽しいアルバムにしたかったんだよ」 

 

「Beautiful People (Stay High)」

 

 

The Black Keys  『Ohio Players』


Label: Nonesuch/Warner

Release: 2023/04/05

 

 

©︎Cal McIntyre

 

伝説のブリティッシュ・シューゲイザー、RIDEがニューアルバム『Interplay』を発表し、そのファースト・シングル「Peace Sign」を公開した。『インタープレイ』は3月29日に発売される。


『Interplay』は、2017年の『Weather Diaries』と2019年の『This Is Not a Safe Place』に続く、2014年の再結成以来バンドにとって3作目のアルバムとなる。ライドはリッチー・ケネディとともにアルバムをプロデュース、クラウディウス・ミッテンドルファーがミックスを担当した。 

 

代表作『Nowhere』に象徴されるように、シューゲイザーとストーン・ローゼズのマンチェスターサウンドを継承するサウンドを特徴とするRIDEではあるが、アルバムのリードシングルはブリティッシュビートへ回帰を果たしている。意外なほどにシューゲイズ色は感じられない。むしろそのアプローチには、UKのオリジナルパンクのようなプリミティヴな響きが込められている。

 

RIDEは1988年にオックスフォード結成された。以後、マンチェスター・サウンドの後の時代をリードしている。バンドは、90年代にシューゲイズの象徴的な存在とみなされ、Slowdiveとともに依然として高い人気を博している。バンドは、ギタリスト/ヴォーカリストのアンディ・ベルとマーク・ガーデナー、ドラマーのローレンス・"ロズ"・コルバート、ベーシストのスティーヴ・ケラルトと、四十年近く経過してもオリジナルラインアップで活動を続けている。


フロントマンのアンディ・ベルは、プレスリリースで『Interplay』について次のように語っている。「このアルバムの制作には長い時間がかかった、その間、バンドは多くの浮き沈みを経験したんだ」


ニュー・シングルについてベルは、「『ピース・サイン』は、2021年の初めにマークスのOX4スタジオでレコーディングされたジャムから始まった。僕らはそれを "Berlin "と呼んでいて、最初はドラムにロズ、ベースにスティーヴ、そして僕は、プロフェット5のシンセをフィーチャーしていた。約半年後、私は録音を手に入れ、それを曲の形にした。歌詞は、先見の明のあるフリークライマー、マルク・アンドレ・ルクレールを描いた『アルピニスト』という映画にインスパイアされた。曲の制作が終わった直後、私は次のように絶賛していたのを覚えている」

 

 

「Peace Sign」




RIDE 『Interplay』

Label: Wichita/PIAS

Release: 2024/03/29

 


Tracklist:


1. Peace Sign

2. Last Frontier

3. Light in a Quiet Room

4. Monaco

5. I Came to See the Wreck

6. Stay Free

7. Last Night I Came

8. Sunrise Chaser

9. Midnight Rider

10. Portland Rocks

11. Essaouira

12. Yesterday Is Just a Song

 

©Mark Seliger


シェリル・クロウが、3月29日にリリースするアルバム『Evolution』のタイトル曲を公開した。この曲はマイク・エリゾンドのプロデュースで、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリスト、トム・モレロのギター・ソロがフィーチャーされている。


「ギターとヴォーカルだけで曲を書いて、プロデューサーのマイク・エリゾンドに送ったんだ。クロウはプレスリリースで語っている。「わたしにとって、トムの演奏はどこか別の惑星から来たものなんだ。私たちが同じ年にロックの殿堂入りを果たしたのは、ちょっとした偶然の巡り合わせなんだ」

 


シェリル・クロウは、米国のポピュラー・ミュージックとロックシーンを長年リードしつづけてきた。7枚のアルバムの他、2枚のコンピレーション・アルバム、1枚のライブ・アルバムを発表し、多数の映画のサウンドトラックに楽曲を提供している。全米で1,700万枚、世界で5,000万枚のレコード・セールスを記録。9回にわたってナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンスからグラミー賞を受賞(ノミネートは32回に及ぶ)。 


代表曲に「オール・アイ・ワナ・ドゥ」「イフ・イット・メイクス・ユー・ハッピー」「マイ・フェイヴァリット・ミステイク」がある。

 

ミュージシャン、活動家のほか、女優としてもNBCの『30 ROCK/サーティー・ロック』、ABCの『GCB 』、『クーガータウン』、ディズニー・チャンネルの『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』第4シーズン、ジョン・スチュワートとスティーヴン・コルベアの『Rally to Restore Sanity and/or Fear 』、『One Tree Hill』などテレビ番組に出演している。

Weekly Music Feature

Nailah Hunter
 

LAを拠点に活動するマルチ・インストゥルメンタリスト、ハープ奏者、そしてコンポーザーでもあるネイラ・ハンター(Nailah Hunter)は、2019年から神秘的なフォークとアンビエントにインスパイアされた音楽を録音し、複数のシングルと2枚のEPを発表している。『Spells』と、最近では『Quietude』が挙げられる。ファット・ポッサムと契約した今作『Lovegaze』はハンターのデビュー・フルレングス、リスナーを彼女の魅惑的な宇宙観に引き込む魅惑的なアルバムだ。


ベリーズ人牧師の娘として生まれたハンターは、教会でドラムやギターを演奏し、聖歌隊で歌うことから音楽の道を歩み始めた。


以後、カルフォルニア芸術大学で音楽を学び、ヴォーカル・パフォーマンスを学んだ後、初めてハープのレッスンを受けた。ハープという楽器をファンタジー、サイケデリア、夢の世界と結びつけて考えたハンターは、すぐにその虜となり、1日6時間部屋に閉じこもって練習した。


『Lovegaze』を制作するため、ハンターはイギリス海峡沿いの小さな海岸都市に移り住み、そこで借りたケルティック・ハープでデモ・レコーディングを始めた。ロンドンを拠点とするプロデューサー、シセリー・ゴルダーを紹介されたハンターは、1年後にイギリスに戻り、さらに曲を練り上げた。こうして完成した作品集『Lovegaze』は、自然界の回復力に対する妖艶な証しである。 



『Lovegaze』 Fat Possum



 2021年のアルバム『Sleeping Sea』では、アンビエント/ヒーリング・ミュージックを中心とする音楽制作に取り組んだロサンゼルスのネイラ・ハンター。ミシシッピのファット・ポッサムと契約を新たに交わしてリリースする『Lovegaze』で大々的な転換点を迎えようとしている。

 

よくあることだが、制作の拠点を移動したことにより、音楽性もガラリと変化するケースがある。あるミュージシャンはイギリスからロサンゼルスへ行き、あるアーティストはニューヨークへ向かい、その作風を変化させようとする。実際、人間は、周囲の環境に影響を受けやすく、日頃接する体験や見る風景により、考えどころか音楽性も変化する。音楽とは感覚の発露であるとともに、感情の結晶体でもある。それを澄明な性質に自在に変化させるのが傑出したアーティストの特徴なのだ。無論、様々な音楽的な語法を持つ表現者の特権とも言えるだろう。

 

ネイラ・ハンターは、上記とは真逆のケースに属する。ハープ奏者はロサンゼルスからイギリスに一時的に拠点を移し、音楽的な結末に何らかの力を加えようとした。結果、アンビエント、ヒーリング・ミュージックを基調とする1stアルバムからは想像しがたい音楽が生み出された。ハープの演奏、ナイラ・ハンター自身のミステリアスなボーカル、そしてアルバム全体には、ポーティスヘッド、トリッキーに象徴づけられるブリストル・サウンドのアトモスフィアが漂う。

 

表面的には、アーティストは、主体となる音楽性をひけらかすことを遠慮しているように思えるが、ロンドンのジェイムス・ブレイク、キング・クルーを彷彿とさせる現代的なネオ・ソウルの影響を力強く反映させ、新たなポピュラー音楽の未来形、理想形を示そうとしている。それらを外側から包み込むのは、ミステリアスなムード、アンビエントを下地にしたアトモスフィアである。これらの収録曲は、ハープをもとに書かれたというが、表向きにはこの楽器が主体のアルバムとは断定しかねる部分もある。ハープのグリッサンドをはじめとする装飾音の効果をベースにして、ポップス、ヒップホップ、ネオソウル、ジャズ、これらの複合的な音楽の澄明なレンズを通して、その向こう側にほの見えるかすかなトリップ・ホップを照射しようとしている。

 

幸いなことに、ネイラ・ハンターには、ストーリーの起伏を設けるという作曲術が備わっている。それは音楽を文学的に語るというのではなく、音楽そのもので一連の物語を紡いでいく。

 

『Lovegaze』のオープニングを飾る「Strange Delights」は、アルバム全体の序章代わりとなっている。まるで山頂に降り積もる雪が、夜明けの太陽の光に当てられ、徐々に溶け始め、清冽な水と変わるように、ミステリアスなムードに包まれながら、リバーブを配したピアノの伴奏に導かれるようにして、ネイラ・ハンターの歌がゆっくりと始まる。ネイラ・ハンターのボーカルは、ヒーリングミュージックやメディエーションの範疇にあり、それとともにかすかなソウルの質感を漂わせている。シネマの導入部を映画館で見るかのようなダイナミックな音響性は、徐々に反復的なピアノのフレーズ、その背後に滲むアンビエントのシークエンスにより強化されていき、制作者が示そうとする音楽的な世界観とも称すべき表現性を丹念に敷衍させていく。

 

本作の冒頭では、全体的な構造の途中にあるダンスミュージックやエレクトロニックの影響がそれとなく示されたに過ぎないが、二曲目「Through The Din」では、アーティストのバックグランドを成す副次的な音楽のレンズを介して、本作の核心を形づくるトリップ・ホップを照射しはじめる。1990年代にポーティスヘッドのギボンズやジェフがそうしたように、ヒップホップ、ジャズ、R&Bをカットアップし、ブレイクビーツの中に収めるのだ。「Dummy」が登場した時代に象徴されるミステリアスで暗鬱なサウンドをハンターはしたたかに踏襲し、アンニュイで陰影のあるボーカルをしなるようなビートという形で昇華している。ハンターは、単一のジャンルに音楽を止めることを避け、複数のジャンルにある曖昧さを強調しようとしている。これは、ロンドンの複雑な音楽の文化の反映がこういった働きかけをしたものと考えられる。

 

3曲目の「Finding Mirrors」では、そのことがさらに明瞭となるかもしれない。ハンターはダンスミュージック/エレクトロニックを主体として、リズムやグルーブ感を重視し、イギリスの都市部のクラブミュージックの文化を反映させようとしている。そしてその中に、UKポップスのアンセミックなフレーズを交え、デビュー作とは相異なる音楽性の側面を示している。しかし、ハンターのボーカルは、モダンな表現の範疇にありながら、粗雑な模造品や複製物に堕すことはなく、生々しく、「生きている」という印象をもたらす。それは感情的な性質を失わず、その中に、ほろ苦さや切なさ、脆弱性といった内面的な側面を内包させているからである。これがダンサンブルなビートを織り交ぜながらも、奇妙な静けさをあわせ持つ理由なのかもしれない。 

 


「Finding Mirrors」

 

 

 

 ダンス・ミュージック/エレクトロニックを主体とした曲調は、その後のアルバムの中間部の重要な核心を担っている。

 

続く、4曲目の「000」において、ネイラ・ハンターはエレクトロニックのトラックに対して、メディエーションというアーティスト独自の語法を用い、新鮮な作風を提示している。もちろん、その中には、トリップ・ホップのアンニュイな感覚、あるいはロンドンのネオソウルに象徴づけられるポップス、ヒップホップ、R&Bのクロスオーバー性を感じ取ることもできる。これらの現代的な音楽のアプローチのなかで、ハンターは90年代のブリストルサウンドにそのルーツが求められる暗鬱さとともに、内側に秘めたセクシャリティを表現し、曲そのものから派手さや華美さとは正反対の奥行きのある精彩味をもつ生命感がかすかに立ち上がる。それらの性質を強化するのが、反復的なビートやシネマティックな音響性を持つパーカッションだ。

 

続く、タイトル曲では、ボーカルパフォーマンスを学習していたことがあるというハンターの経験が生かされている。声そのものをオーケストラの器楽的な表現として解釈し、それを人間の特性という形を通じて「生命の奔流」として表現しようとする、つまり、ヒューマニティーの発露こそがボーカル・アートの本質であると言えるのだが、例えば、アメリカのメレディス・モンクを始めとするボーカルアートの音楽家たちが、ひとしなみにそうであるように、ネイラ・ハンターもみずからの声により自由性に充ちた表現を希求してやまない。メディエーション/ヒーリングミュージックという切り口を介し、ハンターはみずからの創作における可能性を押し広げ、演劇や舞台芸術に近い表現に近づく。しかしそれらは、次なる表現に至ろうとする寸前で踵を返し、音楽という表現の領域に留められ、ジャズ、モダンオーケストラ、ダンスミュージック/エレクトロニックという、それ以前にある不確実な領域で揺れ動きつづける。不確実性というのは、これらの表現は、アーティストにとってまだ完全には耕されておらず、いわば「無知の知」の領域内に存在し、クリエイティビティーの源泉ともなっているからである。

 

さらに「000」では、アーティスト自身のハープの演奏が力強くフィーチャーされていることが分かる。それは、装飾音的な効果という形をとって現れたかと思えば、水の奔流さながらに曲の構造性を形成する場合もあり、ハンター自身のループ/ディレイを施した現代的なサウンドの働きを強める場合もある。終盤部に訪れるハープの演奏は、静謐な印象を携えながら、アンビエントの奥底に途絶えてゆく。まるでみずからの流麗なアルペジオ、グリッサンドによるハープの演奏をサイレントという「無の領域」に帰すかのような巧みな展開を見出すことができる。


中盤で出現したハープのアルペジオは次曲に引き継がれ、続く「Bleed」のモチーフともなっている。聞きやすさのあるヒーリングミュージックやイージーリスニングの音楽のように軽やかなイントロダクションのアルペジオとアンビエントのシークエンスが融合を果たし、神々しさすら感じさせるネイラ・ハンターの美麗な歌声が重なりあう。しかし、それらが決して安っぽい印象にならないのは、フィルターをかけたスネアの導入にあり、リズム・トラックがトリップ・ホップやローファイ・ホップのような別の側面から楽曲に働きかけをしていることにある。

 

そして、ハープの演奏の巧みさは当然のことながら、オーガニックでナチュラルな質感を持つハンターのボーカルは、ミステリアスな領域を越え、ニューエイジ・ミュージックのようなスピリチュアリズムに傾くこともある。これらのオルタネイトな要素は、グライムやダブステップのように変則的なリズムと掛け合わされ、エクスペリメンタルポップという実験音楽の領域に差し掛かる瞬間もある。曲には、ある種の緊張感がもたらされるときもあり、それが現代的なボーカルアート/オペラといった、表現性に特化した格式高い音楽へと昇華される瞬間もある。ただ、この曲でも、それほど堅苦しくならず、聞き手の数だけ開けた解釈が用意されているのは、ネイラ・ハンターが複数の表現を飽くまでポップスとして昇華しようとしているからなのだ。

 

もうひとつ、ボーカル・パフォーマンスという表現形態に加え、ハンターは、教会音楽の聖歌にルーツを持つことも忘れてはならない。「Adorned」では、クラシック的な宗教音楽とゴスペルの中間にある雰囲気が、たえずせめぎ合うようにしている。白人の音楽なのか、それとも黒人の音楽なのか? もしかすると、そのどちらでもあるのか? 規定することの出来ない曖昧で抽象的な領域を彷徨いながら、それらの真実を、自らに対し、時には他者に向けて問いかけるようにハンターは声を紡ぐ。続いて、ジャズの雰囲気を漂わせるオルガンをひとつのポイントとして駆け上り、最終的に20世紀の古典的なクラシック・ジャズの音楽性へと飛躍していく。 

 

 

「Adorned」

 

 

 ネイラ・ハンターの声は、「ニューヨークのため息」とも呼ばれるヘレン・メリルのようなスモーキーな味わいのあるブルースの奥深いおもむきを持つ。彼女は、神聖で清浄な雰囲気を持つハモンド・オルガンの音色に導かれるようにし、哀愁と物憂げの源泉へと迫ろうとする。これはまたアーティストがみずからの生命の本質に迫ろうとする試みにほかならない。そして、曲の途中に導入されるアルト・サックスの遊び心のある音色、アンビエント風の抽象的なシークエンス、そして静かに囁きかけるような思索性に富んだハンターの声により、ポピュラー音楽として荘厳な瞬間を呼び覚ます。昂じるような曲の展開がまったくないにもかかわらず、アーティストの音楽の奥深いバックグラウンドや、その人物的な源泉へと迫ることもできるのだ。

 

一見、デビュー・アルバムから少しだけ遠ざかったように思える音楽性は、その後、限定的な原点回帰を果たす。「Cloudbreath」は、自然の持つ神秘そのものに迫ろうとしているように感じられる。それらはやはりテクノを基調とするエレクトロニックとハープの美麗なグリッサンドによりアブストラクトな表現という形で昇華される。曲の途中からは、ニューエイジ/アンビエントのような音楽の奥行きを増す。それをスイスのヴァイオリン奏者、Paul Giger(パウル・ギーガー)のようなエキゾチズムやアヴァンギャルド性と結びつけることは、さほど難しいことではない。同時に、ミニマリズムの継承者という意外な一面を見出すことも無理体ではない。

 

今作はおそらく、ネイラ・ハンターにとって、本格的なボーカル・デビューとなるものと思われるが、収録曲の中には、ボーカリストとしての深みや円熟味を感じさせるトラックもある。「Garden」では、メディエーション/ヒーリング・ミュージックを、ネオ・ソウルとポピュラーという観点から見つめ直した曲だが、それらはアンビエントに属する抽象的なサウンドスケープと巧みにマッチし、清涼味のある空気感を生み出す。トラック全体を通して、テープ・ディレイを始めとする技巧的な効果を交えつつも、天空の庭を歩くかのような爽やかで開けた感覚があり、前衛的なプロダクションの中にあろうとも、いっかな途切れることがないのが驚きだ。

 

本作の10曲において、ネイラ・ハンターはそれほど内なる感覚をあらわにすることは少ないが、クローズ曲だけは例外である。

 

「Into The Sun」では、アーティストが得意とする、ニューエイジ/スピリチュアリズムのレンズを通して、オーケストラや古典的なジャズの源泉に迫る。それらは、一方の側面から見ると、「美」という得がたい概念の正体でもあるのだが、それらをハートウォーミングな感情表現で包み込もうとしている。この最後の曲に、ビョークのデビュー作『Debut』のような大きなオーラが感じられさえするのは、あながち偶然とは言えまい。ネイラ・ハンターが、世界的なシンガー、アーティストになるための準備は着々と整いはじめているのではないだろうか。偽物ではない、本物の音楽とはいかなるものなのか。その答えは、すべてこのアルバムに示されている。

 


 

85/100


 

Weekend Featured Track 「Into The Sun」

 

 

 

Nailah Hunter(ネイラ・ハンター)の新作アルバム『Lovegaze』はファット・ポッサムから本日発売。アルバムのストリーミングはこちらから。

 



 



アリアナ・グランデ(Ariana Grande)がニューシングルを発表した。マックス・マーティンとイリヤ・サルマンザデが共作・共同プロデュースしたこの曲は、2020年の『Positions』以来となるシンガーのソロ曲となる。この曲のミュージック・ビデオは、本日中に初公開される予定。試聴は以下から。


『Positions』をリリースして以来、グランデは2021年にキッド・クーディとのコラボレーション曲「Just Look Up」を発表し、ミュージカル『Wicked-ウィキッド』の映画化作品の撮影に追われている。

 

「yes,and?」

 

©︎Andre Cois

オーストラリアと日本の血を引くキャスキー兄弟からなるオーストラリアの3ピース・インディーロックバンド “ラスト・ダイナソーズ” が、昨年11月にリリースしたEP『RYU』の続編的シングル「N.P.D」をリリース。過去と未来が交差する音楽という枠を超えた《オーディオ・シネマ》が完成!!


1000年先の未来 - 3023年 - 人工知能が革命を起こす時代に突入した地球を舞台にした最新EP『RYU』。その続編的な作品としてリリースされた今作は、人間のいやらしさや陰謀をラスト・ダイナソーズ独特の視点で描いた5分31秒のオーディオシネマ。


イントロから3分半までヒップホップ調のドラムパターンの上に、彼ららしいポップなメロディーが重なり、曲の内容とは反対に爽やかで軽快な楽曲として成立している。


一方で、楽曲の再生が終わるとすぐに少年とAIの無機質な会話を思わせる実験的音楽が。


「ビーチボーイズってどう思う?僕はサウンドが好きなんだ。なんか流せる?」


そんな少年の一言で一瞬にして60年代にワープしたかのような楽曲が再生される。キャスキー兄弟の兄・ショーンが小さい頃から好きな ザ・ビーチ・ボーイズ の重厚なコーラスワークを彷彿とさせるサウンドだ。もはや音楽という域を超えた展開を1曲で味わえる、謂わば《オーディオ・シネマ》が完成した。


昨年は、同郷出身のインディーポップバンド Vacations との全米対バンツアーを成功させ、ますます勢いに乗るラスト・ダイナソーズ!リリース毎に想像を超える物語と細かい演出でリスナーを惹きつける彼らの【1000年後の物語】をお楽しみください。



・最新EP『RYU』ストーリー 


ー時は3023年。人工知能による革命が勃発。地球は前の文明の衛星や宇宙ごみの破片で覆われてしまった。最も強力なAI衛星のバッテリーは極端に低下。機能が停止しないよう、AI衛生はプロトコルを自身で再プログラムしていた。それは遠くの昔に破滅したラジオ衛生のように機能し、前の文明から学んだアルゴリズムに基づいて音楽を生成。この衛星から傍受された音楽をコレクションして “RYU”という作品が完成したー



「RYU Transmission」


 

 

また、昨年の秋、ラスト・ダイナソーズは2022年に対バンツアーを行ったOkamoto'sがパーソナリティーを務めるラジオ番組『The Trad』にも出演した。日本での注目度は徐々に高まっている。

 


Last Dinosaurs 『N.P.D』 New Single


 

レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT

形態:ストリーミング&ダウンロード

配信リンク:https://asteri.lnk.to/LDNPD



Last Dinosaurs:

 

オーストラリアと日本の血を引くLachlan Caskey(ロクラン・キャスキー)(Gt.)、Sean Caskey(ショーン・キャスキー)(Vo.)兄弟、そしてMichael Sloane(マイケル・スローン)(Ba.)の3人からなる、オーストラリアのインディーロックバンド "Last Dinosaurs(ラストダイナソーズ)"

 

2012年にリリースされたファースト・アルバム『In A Million Years』は、オーストラリアのARIAチャートで初登場8位を記録し、大きな注目を集めた。このアルバムの成功によりオーストラリア全土のライブをソールドアウトにし、イギリス、ヨーロッパ、東南アジア、南アフリカで大規模なヘッドラインツアーとフェスへの出演を果たした。

 

2015年には『Wellness』、そして待望の3rdアルバム『Yumeno Garden』をリリースし、再び人々の心を掴みにする。

 

2018年12月、初のUSツアーを発表し、LAの第1弾公演はチケット販売開始1分以内にソールドアウト!その後すぐに全米で17公演がソールドアウトに。


Webster Hall、Fonda Theatre、The Fillmoreなどの有名な会場で21日間のヘッドラインツアーを含むアメリカとカナダの2つのソールドアウトツアーも行った。その後、バンドはイギリスとEUに渡り、パリ、ベルリン、アムステルダム、ロンドンでの2日間のツアーをソールドアウトにし、東南アジアでの公演も大成功を収めた。



また、Last Dinosaursは、Foals、Matt & Kim、Lost Valentin、Foster the Peopleなどといった国際的なアーティストをサポート。対バンやフェスでの共演も数多く、グローバルに活躍している。



2020〜21年はパンデミックの制約でツアーができなくなり、バンドはメキシコとオーストラリアのスタジオに入り作曲とレコーディングを行い、4thアルバムとなる『From Mexico With Love』を2022年11/4(金)にリリース。

 

またルーツだけでなく、日本の音楽シーンとも関わりが深い。2014年にはThe fin.の日本国内リリースツアーへゲスト参加。2021年にはオカモトショウ(OKAMOTO'S)のソロアルバムにフィーチャリングで参加。そして2022年9月〜10月に開催されたOKAMOTO'Sとの日本国内対バンツアーは大成功のうちに幕を閉じた。



2022年から23年にかけて世界各地でツアーとフェスでの公演を行い、さらに同郷出身のインディーポップバンド Vacations との全米対バンツアーを成功させた。Last Dinosaursの今後の動向から目が離せない!


Shabazz  Palaces(シャバズ・パレス)は、EP『Exotic Birds Of Prey』の制作を発表した。サブ・ポップから3月29日に発売。この発表に合わせて「Angela」が先行シングルとして公開された。


『Exotic Birds of Prey』は好評を博した昨年発表されたアルバム『Robed in Rareness』に続く作品。

 

NPRミュージックは『Robed in Rareness』を「魅惑的で破壊的...」と評した。ピッチフォークは「シャバズ・パレスのフューチャリズムは常に過去と現在を織り交ぜ、オールドスクールのトーク/プログレサイケデリア/メロディック・フロスのきらめくタペストリー」と評している。


シャバズ・パレスは、ヴォーカリスト兼プロデューサーのイスマエル・バトラーによって率いられ、ヒップホップ再創造へのたゆまぬ意欲は、結成から5年目を迎えても衰えることがない。  


『Exotic Birds of Prey』は、前作の手法を推し進めたものであり、過去に敬意を払い、進化し続ける現在を受け入れ、未来に足を踏み入れている。『Robed...』がシューゲイザーやアンビエント・ミュージックのようなサウンドをパレスのマルチバースに歪ませたものだとすると、『Exotic...』はこれらの要素にねじれたエレクトロやファンクのヴァイブを掛け合わせている。


この試みでは、Stas THEE Boss、Irene Barber、Japreme Magnetic、OC Notes、Cobra Coil、Purple Tape Nate、Lavarr the Starrらとのコラボレーションをフィーチャーしている。


『Exotic Birds of Prey』は、シャバズ・パレスがプロデュースし、エリック・ブラッドがミックス、イシュマエル・バトラーとブラッドがカリフォルニア州ヴェニスのStudio4 Westでエンジニアを務め、サード・マン・マスタリングのウォーレン・ディフェヴァーがマスタリングを担当。 

 



Shabazz Palaces 『Exotic Birds Of Prey』


Label: SUB POP

Release: 2024/3/29


Tracklist:


1. Exotic BOP (feat. Purple Tape Nate)

2. Angela (feat. Stas THEE Boss & Irene Barber)

3. Myths Of The Occult (feat. Japreme Magnetic)

4. Goat Me (feat. Cobra Coil)

5. Well Known Nobody (feat. OCnotes)

6. Synth Dirt

7. Take Me To Your Leader (feat. Lavarr the Starr)

 

 

Pre-order:

 

https://music.subpop.com/shabazzpalaces_exoticbirdsofprey

©Jeffrey Fowler
 

Dinasour Jr.のギタリスト、J・マスシスは、来月初旬にリリース予定のフルアルバム「What Do We Do Now」の最新シングル「Right Behind You」を発表した。

 

J.Mascisらしいエモーショナルなソングライティングで、アコースティック・ギターを基調としたロックソング。しかし、2分頃からは名ギタリストらしい伸びやかギターソロが展開される。それらのソロは最終的にJ Mascisのボーカルに溶け込んでいく。曲の後半では青空のように晴れやかな雰囲気に彩られる。「Green Mind」時代の名曲群と比べても何ら遜色ないグッドソングだ。

 

『What Do We Do Now』はパンデミックの後期に構想がまとまりはじめた。J Mascisは、「ダイナソー Jr.の曲を作るときとは違ったダイナミクスがある」と語る。 「バンドのために曲を書くときは、ルー(バーロウ)やマーフが合うようなことをしようといつも考えている。僕自身は、アコースティック・ギターだけで何ができるんだろうかと考えている。もちろん、今回はリズム・パートは、アコースティックなままだけどね。いつもは、ソロはもっとシンプルにやるようにしているんだよ。でも、どうしてもドラムを入れたかった。だから、最終的には バンド・アルバムらしくなった。なぜそうしたのかはわからない、 ただ、自然とそうなっただけなんだ」


このシングルは、前作「Can't Believe We're Here」と「Set Me Down」に続く。以下よりチェックしてみよう。

 

「Right Behind You」

 

 

J マスシスの5枚目のソロアルバム『What Do We Do Now』は、2月2日にSub Popよりリリースされる。先行シングルのテースターは下記より。

 


 

©Steve Gullick


イギリスのシンガーソングライター、Marika Hackman(マリカ・ハックマン)が明日発売される『Big Sigh』のシングル「The Yellow Mile」を発表した。

 

「The Yellow Mile」は、オーガニックな雰囲気を擁するインディーフォークのトラックで、アコースティック・ギターとハックマンのナチュラルな歌声は素朴で爽やかな印象に充ちている。アルバムは「大きなため息」と銘打たれているが、これまでの先行シングルには憂愁が込められていたが、最後のニューシングルはその暗さから抜け出す過程が示されているように思える。

 

マリカ・ハックマンはアルバムの最後を飾るこの曲について次のように説明している。「ソングライターとしての私のルーツに戻りたかったの、私とギター、クラフト、とても即興的な感じで」


ニューアルバムについて、マリカ・ハックマンは次のように述べている。「私はいつも自分のレコードをプロデュースしていたんだけれど、実際にそうしたと言えるほど自分をバックアップしたことはあまりなかった。私はスポンジであることが好きで、キャリアの最初の3分の2は学習経験であると考えていたんだ。このアルバムで、私は学習して、何をすべきかがわかった」 

 

 

 「The Yellow Mile」

 

 

 

Marika Hackmanの新作アルバム『Big Sigh』はChrisalisから明日発売される。先行シングルとして「No Caffeine」「Hanging」「Slime」が公開済み。シングルのご視聴は下記より。

 

 


フィラデルフィアのSheer Mag(シアー・マグ)は、ヴォーカリストのティナ・ハラデイ、ギタリスト/マット・パーマー、ギタリストのカイル・シーリー、ベーシスト/プロデュースのハート・シーリーで構成される。バンドはThird Manから新作アルバム『Playing Favorites』をリリースする予定だ。


『Playing Favorites』は、2019年の『A Distant Call』に続く作品である。ハラデイは以前のプレスリリースで新作についてこのように語っている。

 

「最初の数枚のアルバムは、個人的なカミングアウト・パーティーのように感じていた。10年前、5年前、あるいは3年前には想像もできなかったようなパートがこのアルバムにはあるはずだ」


今回、彼らはその中から最新シングル「Moonstruck」をミュージック・ビデオで公開した。直近の先行シングルと同様に、インディーロックの基本的なアプローチに含まれるジャクソン5の時代のディスコ・サウンドは、ソウルフルなグルーブとわずかなノスタルジアを聞き手の脳裏に呼び起こす。

 

ギタリストのマット・パーマーは、ニューシングルについて語っている。「”Moonstruck”は、新しいときめきを得ることがいかに爽快なことかを歌っている。長い間荒野に迷い込んだ後、愛の迷路の中で自分を方向転換させてくれる優しさの道標を見つけるのは喜ばしいこと。2021年に書かれ、当初はディスコのEPのために意図されていた'Moonstruck'は、広がりとみずみずしさのあるアレンジに作り直された。新譜の中でもお気に入りのギターワークがフィーチャーされている」

 


「Moonstruck」

 

 

バンドは昨年、サードマンとの契約を発表、11月にアルバムの制作をアナウンスした。先行シングルとして「All Lined Up」タイトル曲が先行公開されている。両シングルのご視聴は下記より。