“音に色が見える”共感覚を持つピアニスト、アカデミー賞ノミネート/エミー賞受賞作曲家のダスティン・オハロランが、ルーツに立ち返ったニューEP『The Chromatic Sessions』を10月にリリースします。


アカデミー賞ノミネート/エミー賞受賞作曲家・ピアニストのダスティン・オハロランがこの発表と合わせて新曲「Red」を公開しました。


アイスランドのレイキャビクのスタジオでワンテイクで録音された即興ピアノ曲で、ルーツに立ち返ったニューEP『The Chromatic Sessions』を構成する3曲の魅惑的な楽曲のうちの2曲目となります。 「Red」は7月にリリースされた「Gold」と対をなす作品で、最終曲となる「Blue」が続く予定。色彩をテーマにしたのは、作曲と録音の過程で自然に生まれたものだといいます。



 

「事前に計画していたわけではありません」とダスティンは語ります。「毎日ピアノで即興演奏していたんだけど、作曲中にいつも色について考えていることに気づきました。マイクを設置して録音していると、深い集中状態に入る。あの赤いランプが点灯している状態には、本当にその瞬間へと引き込まれる何かがあります」


ダスティンは長年、共感覚を経験してきました。これは多くの人が共感できる感覚の混ざり合いです。例えばある味が、訪れた場所を鮮明に思い出させたり、馴染みのある香りが強烈な感情のフラッシュバックを引き起こしたり、ダスティンの場合のように特定の音が色の感覚を呼び起こしたりする現象です。


「人は自覚している以上に共感覚的だと思います」と彼は言います。「それは意識的に調整できるものなのです。あらゆる感覚は最終的に脳で変換される——そしてそれらの感覚の異なる部分を結びつけることを学べると思う」


こうしたつながりは『The Chromatic Sessions』全体に流れるテーマです。それはダスティンとリスナーの間のつながりも含まれます。


『The Chromatic Sessions』の全シングルはBandcampで購入するとスコア(楽譜)がダウンロード可能で、リスナー自身が演奏できます。これはダスティンがリスナーとのより深い関係を築きたいという切実な願いから生まれた試みです。


「デジタルで音楽をリリースするのは、とても距離を感じ、つながりが断たれたように思えます」と彼は語ります。


「我々はみんな、どこかでつながりを求めていると思います。人々が演奏に参加することで、音楽は別の形で彼らの一部になる。それは共同体のものとなり、彼らのものになるということなのです」


ダスティン・オロハランのEP『The Chromatic Sessions』は10/8にデジタルおよび7インチレコードでリリース予定です。



 

Dustin O'Halloran  『The Chromatic Sessions』





アーティスト:Dustin O'Halloran(ダスティン・オハロラン)

タイトル:The Chromatic Sessions(ザ・クロマティック・セッションズ)

リリース日:2025年10月8日

フォーマット:デジタルダウンロード/ストリーミング/7インチレコード

ジャンル:ポストクラシカル

レーベル:Splinter Records / p*dis


Tracklist:

1. Gold

2. Red

3. Blue




・デジタルリンク(Red):

https://dustin.lnk.to/redNL


・Pre-save/Pre-addリンク(The Chromatic Sessions):

https://dustin.lnk.to/chromaticNL


・Bandcamp:

dustinohalloran.bandcamp.com


 

ニューヨークを拠点とするシンガーソングライター兼ミュージシャン、ROREYの力強い新曲「Hurts Me To Hate You」を下記よりチェックしてみて下さい。内的な痛みを独白する繊細な楽曲。


この衝撃的で変容をもたらす楽曲は、ロレイと彼女の母親が出演するパーソナルなミュージックビデオと共に公開されています。 幼い頃になしえなかった和解、分かり合えなかった経験、それでもなおその抱擁は人間的な温かさをどこかにとどめている。


ローリーはApple Musicのゼイン・ロウ、LADYGUNN、オフィス・マガジンなどから称賛を受けている。彼女の楽曲はSpotifyのプレイリスト「Fresh Finds」「Fresh Finds Indie」「New Music Daily」「New in Pop」などに選出されている。


ニューヨークを拠点とするシンガーソングライター兼ミュージシャン、Roreyは、生々しい告白を癒しと不安を同時に呼び起こす芸術へと昇華させる。セカンドEP『Dysphoria』は精神疾患の矛盾へ恐れを知らぬ飛び込みであり、心に残るメロディと幽玄なボーカルが、催眠的な渦巻く楽器演奏と融合する。


長年の共同制作者であるスコット・エフマンと2021年に共同制作したこのプロジェクトは、躁状態の中で意味を求めてもがく若きアーティストの混沌、美しさ、そして方向感覚の喪失を捉えている。


ROREYの音楽は単に共鳴するだけでなく、口に出すのを恐れる真実を示し、その感情を抱くのは自分だけではないと気づかせてくれる。新曲「Hurts Me To Hate You」について、ロレイはこう打ち明ける。


「『Hurts Me To Hate You』は21歳の時に書いたの。母への怒りが自分を護っているわけじゃなく、ただ痛みのサイクルに閉じ込めているだけだと気づいた時。 そして彼女を憎むことが私を傷つけた」


「たとえ彼女が私を完全に理解できなくても、私は彼女を人生に留めておきたかった。それは彼女のありのままの姿と、彼女が与えられるものを認めることを意味した。これは私にとって、徹底的な受容を受け入れる重大な転機となった。結局、私の感情に責任を持つべきなのは母ではなく私自身。他人をコントロールすることはできない。この境地に達するまで何年もかかった」


「Hurts Me To Hate You」





New York–based singer-songwriter and musician ROREY transforms raw confession into art that unsettles as much as it heals.


Her sophomore EP, Dysphoria, is a fearless plunge into the contradictions of mental illness, where haunting melodies and ethereal vocals merge with hypnotic, swirling instrumentals.


Co-written and produced in 2021 with longtime collaborator Scott Effman, the project captures the chaos, beauty, and disorientation of a young artist clawing her way toward meaning in the midst of a manic episode.


ROREY’s music doesn’t just resonate, it names the truths you’re afraid to speak and reminds you that you’re not alone in feeling them.


Her new single "Hurts Me To Hate You" is a powerful song of acceptance, healing and overcoming anger. The stunning and transformative song is shared alongside a personal music video with ROREY and her mom. ROREY confides, “I wrote Hurts Me To Hate You at 21, when I realized the anger I held toward my mother wasn’t protecting me — it was only keeping me stuck in a cycle of pain. And it hurt me to hate her. 
 
 
Even though she may never fully understand me, I still wanted her in my life. And that meant accepting her for who she is, and what she’s capable of giving. It was a profound turning point for me in embracing radical acceptance. At the end of the day, I am responsible for my emotions - not my mother. You can’t control other people. It has taken me years to get there.”
 
 

 Weekly Music Feature: Shabason/Krgovich/Tenniscoats 


2024年4月、カナダの東西に分かれて活動するミュージシャン、ジョセフ・シャバソンとニコラス・クルゴビッチはシャバソン&クルゴビッチとして初の日本公演となる2週間のツアーに出発した。 7e.p.レコードの齋藤耕治氏による取り計らいにより、日本の名高いデュオ「テニスコーツ」のサヤと植野がツアーに同行し、松本、名古屋、神戸、京都、東京の各公演でバックバンドを務めた。


4人はたった2回のリハーサルしかできなかったが、それで十分だった。彼らの絆は瞬時に生まれ、音楽に滲み出ていた。瞬時に音楽的に結びついた4者は互いの演奏に興奮と喜びを持って反応し合い、ライブ・セットは公演を重ねるごとに生き物のように美しく成長を遂げていく。齋藤はこの相性の良さを予見し、録音エンジニアを神戸(塩屋)で待機させる手配をした。彼らは名高いグッゲンハイムハウスに滞在する。この117年前のコロニアル様式の邸宅はアーティスト・レジデンシーに改装されていた。これまでにもテニスコーツ&テープの『Music Exists disc3』、ホッホツァイツカペレと日本人音楽家たちのコラボ作『The Orchestra In The Sky』、マーカー・スターリングとドロシア・パースのライブ・アルバムなどが録音されてきた伝説的な洋館である。


あらかじめ完成した楽曲を事前に用意することなく始まった録音だが、それぞれが持ち寄ったモチーフを起点に、即興的に湧き出ていく4者の多彩でフレッシュなアイディアによって音楽が形作られ、ケルゴヴィッチとさやが書き下ろした詞が歌われ、驚くべきペースで新たな楽曲が次々に生まれていった。


二日間で驚くべき化学反応が起きた。それぞれが持ち寄ったモチーフを起点に、即興的に湧き出ていく4者の多彩でフレッシュな着想によって音楽が形作られていく。ケルゴヴィッチとさやが書き下ろした詞が歌われ、驚くべきペースで新たな楽曲が次々に生まれていく。この制作過程を通じて、サヤとクルゴビッチはすぐ、歌詞作りのアプローチにおける共通点に気づく。 サービスエリアで空を見上げながら雲の日本語愛称を共有すること(魚鱗雲、龍雲、鯖雲、眠雲、羊雲)、衣料品店で靴下を片方ずつ探して揃えること、神戸王子動物園で老衰により亡くなった愛されパンダ「タンタン」への追悼歌——二人は共に日常の魔法を探し求め、歌に紡いだ。


この体験は毎日が魔法のようだという感覚だった。グループはグッゲンハイム・ハウスの窓から瀬戸内海の満ち引きを眺めながら作業を進めた。二日間で彼らは8曲を創作・録音し、制作順に並べたアルバムは『Wao』と名付けられた。これは録音後にテニスコーツのサヤがぽつりとつぶやいた言葉だった。これこそコラボレーションをした異国のミュージシャンたちの共通言語だった。


「このアルバムの素晴らしい点は、家がレコーディングスタジオとは程遠い空間だからこそ、超ライブ感あふれる音に仕上がっていることです。それに線路の真横にあるから、録音中に電車が通過する音がよく入っています。僕にとっては、それが大きな魅力と個性になっています」とジョセフは語る。 


「全てが夢のように感じられ、あっという間に終わったので、家に帰って数週間はすっかり忘れていました。セッションデータを開いた時、僕たちが特別な何かを成し遂げたことがはっきりと分かりました」


トロントでのシャバソンによるミックスを経て完成したアルバム『Wao』。さやによる日本語とケルゴヴィッチによる英語がナチュラルに歌い継がれる“Departed Bird”から、ツアー中テニスコーツのセットにてシャバソン、ケルゴヴィッチ両人を迎え演奏されていた “Lose My Breath”(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)に至るまで録音順に収録された全8曲。ケルゴヴィッチ&テニスコーツと親交の厚い、ゑでゐ鼓雨磨(ゑでぃまぁこん)のコーラス(M5、M6)を除き、全ての歌唱と演奏は4者によるもの。


ジョセフ・シャバソン、ニコラス・ケルゴヴィッチ、テニスコーツ各々のリーダー作、さらにシャバソン&ケルゴヴィッチ名義での作品とすらも確かに異なる、まさに「シャバソン・ケルゴヴィッチ・テニスコーツ」というユニットとしての音楽でありツアー&録音時の驚きに満ちたマジカルな空気が全編に流れる珠玉のコラボレーション。


ライブツアー、そして制作期間すべてが魔法のように瞬く間に過ぎ去った。夢のように彼らはその渦に飲み込まれ、そして離れていった。数週間後、録音データが郵送で届いた時、初めてその夢のような感覚が鮮明な記憶へと変わり、今や何度でも振り返ることができる瞬間となった。


 

 『Wao』-7e.p.(Japan) / Western Vinyl(World)  



このアルバムが録音され、アートワークにもなっている神戸の旧グッゲンハイム邸は、日本の近代化の象徴とも言える建築的な遺産である。

 

1890年代ーー日本が幕末から明治維新の時代に移行する頃の瞬間的な流れを建築的な遺産として残している。江戸幕府が鎖国を解き、日米修好通商条約を通じて海外との交易を活発化させてから、一時的ではあるにせよ、横浜、神戸、長崎の3つの開かれた港は、海外との貿易を通じて、上海に匹敵する''アジア最大の港''として栄えることになる。 横浜港の周辺一帯、長崎の天主堂やグラバー邸周辺は、''外国人居留地''と呼ばれ、実際に外国人が一時的に定住していた。

 

一方の神戸は、京都御所に近いという理由から、本居宣長の流れを汲む国粋主義的な思想を持つ攘夷派の反乱を懸念し、京都から少し離れた場所に居留地が置かれたという。これらの居留地は、明治時代以降の軽井沢のように''外国人の別荘地''ともいうべき地域として栄えた。しかし、維持費が嵩むことを理由に日本の土地として返還されていく。少なくとも、領土の側面において、外地とも呼ぶべき一帯として20世紀初頭まで発展を続けた。特に、神戸の居留地は特殊な事情があり、”租界”ともいうべき土地であった。実際的に、海外の人々が他の地域に出ることは多くなかったという。この神戸の居留地には、ドイツ人が多く住んでいたことがあり、北野異人館等が主な遺構として脳裏を過ぎる。グッゲンハイム邸もまた、ドイツ人が使用していた邸宅であり、館内にピアノがひっそりと残されている。現在はアーティストレジデンスとして利用され、ライブなどが開催されることもある。その昔、この地帯は外国人の観光海岸として栄えた。

 

土地柄の因縁というと語弊があるかもしれない。が、旧外国人居留地で録音された日本の実験的なフォークデュオ、テニスコーツとカナダの二人のプロデューサー、シャバソンとクルコヴィッチのコラボレーションアルバムは、異質な空気感をまとっている。発売元のテキサスのWestern Vinylは、アルバムを''魔術的''と紹介しているが、聴けばわかる通り、得難い空気感を吸い込んだ素晴らしい作品である。録音はたったの二日間で、よくこれだけ集中した作品を制作出来たものだと感心すること頻りである。実際の音楽性は表向きには派手ではないものの、得難い魅力に満ちあふれている。シャバソンとクルコヴィッチのふだんの音楽性については、私自身は寡聞にして知らぬが、テニスコーツのいつもの音楽とは明らかにその印象を異にしている。

 

カナダと日本のコラボレーターは、ライブツアーや二日間の制作期間を通して体験した出来事を日本の感性と外国の感性を織り交ぜて吐露している。そのやりとりの多くは、コミュニケーションとして深く伝わったかどうかは定かではない。しかし、アルバムに接するとわかるように、日本とカナダの音楽家は、ジェスチャーや共通する言語をかいして、共通理解ともよぶべき瞬間を得ることになったのは明らかだろう。この国際的なコラボレーションは、考えが異なる人々を相互的に理解しようと努め、それが最終的に腑に落ちる瞬間を持つようになる、その過程のようなものが音楽として表されていると思う。そして、グランドピアノなどの音色が取り入れられるのを見ると、現地の標準的な環境設備が楽曲の中に取り入れられている。また、全般的には、楽器の役割がかぶることなく、演奏パートが上手いバランスに割り振られている。


一曲目の「Departed Bird」は、サヤによる日本語ボーカルが中心となり、その後、ボーカルの受け渡しが行われる。ムードのあるエレクトリックギターとジャズの要素をイントロの背景に敷き詰め、日本の童謡のような音楽性が取り入れられている。伴奏の後、哀感に満ちた声で、サヤは次のように歌う。「鳥があるいている、道ゆくぼくらの足もとへ」 このマイナー調の曲は日本語の歌詞と連動するように、ピアノのフレージングを通して叙情性を強めていく。その後、口笛やサックスの演奏を通して、この音楽はアヴァンジャズのような遊び心が取り入れられるが、歌謡的な性質を強調づけるかのように、この曲全体は粛然たる哀感に包まれている。そして賛美歌のようなシンセとサックスの音色が重なり、テニスコーツらしい音楽が強まっていく。さらにその後にはクルゴヴィッチのボーカルが入る。また、シャバソンのサックスの演奏もそのペーソスを強める。歌詞はおそらく日本語と英語の対訳のような感じでうたわれている。

 

日本語と英語の同じ歌詞を二声の対位法のように並置するにしても、その言語的な意味やニュアンスは全く異なることが、このアルバムを聴くと痛感してもらえるのではないか。そもそも言語を翻訳するということに限界があるともいえる。日本語は、ある一つの言葉の背後にあるイメージを呼び覚まし、連想のように繋げていく。つまり、その言語的な成立の経緯からして、''論述的にはなりえない''のである。とは対象的に、英語は、論理的な言語の構造を持つ。つまり、英語は直前の文章を補強したり補填する趣旨がある。一つの同じような伴奏で、同じ意味の文章が歌われても、言語的な意味が全然異なることに大きな衝撃を覚える。特に、日本語の観点から言えば、短歌や俳句のような行間にある、言外のニュアンスや感情性が、サヤの歌から感じ取ることが出来るかもしれない。そして、論理的なセンテンスを並べずとも、日本語は何となく意図が伝わることがある。この''言語における抽象性''はアルバムの重要な核となる。また、英語の歌詞の方は、歌の意味を一般化したり平均化するために歌われる。これらの2つの言語の持つ齟齬と合致は、アルバムの収録曲を経るごとに、大きくなったり、小さくなったりする。

 

続いて、二曲目の「A Fish Called Wanda」は、ヴァースとサビという基本的なポピュラーの構成から成立しているが、実験音楽の性質がそうとう強い。言語的なストーリの変遷が描かれ、「Wanda」という英語の言葉から、最終的には王子動物園の「Tan Tan」の追悼という結末へと繋がっていく。しかし、これらは、英語の「Wanda」と日本語の「ワンダ」という言葉を対比させ、その言葉を少しずつ変奏しながら繰り返し、実験音楽としての性質を強めたり、弱めたりしながら、驚くべき音楽的な変容を遂げる。このあたりに、言語によるコミュニケーションの一致とズレのような意図がはっきりと現れている。 その言葉の合間に、サックスの実験的なフレーズ、シロフォンのような打楽器の効果が取り入れられる。同じような言葉が連鎖する中、言葉が語られる場所が空間的に推移していく。そして、それと対比的なポピュラー音楽のフレーズが英語によって歌われる。これがシュールな印象を与え、ピンク・フロイドのシド・バレットのごとき安らかな癒やしをもたらす。もちろん、ピアノの伴奏に合わせて歌われるフレーズは、明晰な意識を保持している。この点は対称的と言える。ときどき、スキャットを駆使して明確な言語性をぼかしながら、デュオのボーカルが背後のサックスの演奏と美しいユニゾンを描く。「Wanda」「Under」「Anta(You)」など、英語と日本語の言葉を鋭く繰り返し交差させながら、実験音楽の最新鋭の境地へと辿り着く。これらは、二人のボーカリストの言語的な感性の鋭さが、現実性と夢想性の両面を持ち合わせた実験音楽へと転移しているといえる。最終的には、アコースティックギターとサックスの演奏に導かれ、温かな感情性を持つに至る。

  

3曲目に収録されている「Shioya Collection」は、今年度発売された日本語の楽曲では最高傑作の一つ。塩屋の滞在的な記憶がリアルタイムで反映され、叙情的に優れたポピュラーソングに昇華されている。イントロではシンセの水のあぶくのような可愛らしい電子音をアルペジオとして敷き詰め、古くは外国人の観光ビーチとして栄えた塩屋の海岸付近の風光明媚な光景を寿いでいる。シンセサイザーの分散和音を伴奏のように見立て、徐々に音色にエフェクティヴな変化を及ぼしながら、センチメンタルなイマジネーションを呼び覚ます。それは、これらの滞在期間が短期間であるがゆえ、かえって、このような切ない叙情的な旋律を生み出したとも言えるだろう。ボーカルが始まる直前、ジャズの和音を強調したピアノが入り、それらの印象は色彩的な和声進行に縁取られる。以降、日本語の歌詞が歌われるが、これらは断片的な言葉にすぎないのに、驚くほど鮮明にその情景の在処を伝え、同時にその感情性を端的に伝えている。 


坂の上の光景、そして、頭の上を通り抜けていく清かな風、それらを言葉として伝えるためのたった一語「カゼーカゼ」という楽節が歌われるとき、涙ぐませるような切ない感覚が立ち現れることにお気づきになられるだろう。グッゲンハイムの窓から見た光景か、それとも館の下の階段からみた光景かはつかないが、そのときにしか感じえない瞬間的な美しさが最上の日本語表現で体現されている。サビのフレーズの後の始まるサックスやピアノの演奏もまた、非言語でありながら、言葉の間やサブテクストの持つ叙情性を明瞭に伝えている。二番目のヴァース以降は、クルゴヴィッチのボーカルで英語で歌われ、日本語のサヤのボーカルと併置される。今までに先例のない試みであるのに、驚くほど聴覚に馴染むものがある。海際の潮風の風物的な光景が「思い出をならべてる」というような言葉から連想力を持ち、そのイメージがどんどんと自由に膨らんでいくような、ふしぎな感覚にひたされている。そして、日本語と外国語を対比させながら、「カゼーカゼ」の部分では異なる言語のイメージがぴたりと合致している。

 

4曲目の「Our Detour」はエレクトロニカの音楽性が強まる。 イントロにはグリッチのリズムを配して、トーンクラスターやダブの要素を強調しながら、ゆったりとしたビートを刻んでいく。ヴァースの始めでは、「過去から振り返るな」という歌詞が歌われ、それが日本の童謡的な旋律によって縁取られる。その後、「繰り返すと」に言葉が転訛し、ボーカルの受け渡しが行われ、フレーズの途中で、英語の歌詞に切り替わる。以降、この曲は、ピアノのダイナミックな演奏を背景に、ボーカルの叙情的な感覚を深めながら、ダブのディレイのサウンドエフェクトを用い、急進的な楽曲へと変化していく。これまでに何度か述べたことがあるように、一曲の中で音楽そのものがしだいに成長していくような感覚があるのに驚きを覚えた。英語と日本語の歌詞のやりとりの中で「ここには時間がある」という抽象的な歌詞が日本語で歌われる。


ダリのシュールレアリズムの絵画のような趣を持ち、その内的な形而下の世界を徐々に音楽と連動するようにして押し広げていき、サビの箇所では、「みんながいて」、「呼吸は繰り返して」のようなフレーズへと繋がっていく。ここでは変化していく共同体のような内的な記憶がきざみこまれている。単なる郷愁的な意味合いを持つ音楽とはまったく異なるような気がする。曲の最後では、迫力のあるダブのエフェクトがこの曲の持つじんわりとした余韻を増幅させる。

 

「At Guggenheim House」は文字通り、グッゲンハイム邸の滞在について歌われている。デュオの形式で構成されているが、基本的には英語の詩で歌われ、グッゲンハイムでの同じような瞬間的な体験とリアルタイムの記憶を反映させている。とはいえ、ジャズポップス寄りの楽曲である。 クルゴヴィッチのボーカルとシャバソンのサックスは、モントリオールの港の気風を呼び込み、そして、ムードたっぷりの叙情的な歌唱を通じて、ジャズの空気感を深めていく。その中で、まれにリードの役割で登場するオーボエ、クラリネットのような木管楽器がどことなくエキゾチックに響く。これは憶測にすぎないが、日本と海外の双方のミュージシャンが感じたエキゾチズムがムード感のあるジャズソングに結びついたのではないか。つまり、由緒ある洋館やこの土地の街角に、ミュージシャンたちは異国的な情緒を感じて、そして、現在の地点からへだたりがあることを滞在時に彼らは肌身で感じ取ったのではなかったか。館の中に残る、当時の異国人の家族や子供の生活や暮らしの様子を、音楽として表現したとしても不思議ではあるまい。いずれにせよ、この曲は、英語のポピュラーの中に日本語の歌謡的な要素が混在している。風土的な概念を象徴付けるようなアトモスフェリックなアートポップソングである。

 

 

続く「Ode To Jos」では、同じように夕暮れの潤沢な時間を伺わせるようなジャズトロニカである。 この曲では、アコーディオンの楽器が取り入れられ、遊び心のあるフレーズが登場するが、全体的な旋律の流れとボーカルはどことなく郷愁的な雰囲気に縁取られている。時々、アヴァンジャズに依拠したサックスのブレスやジム・オルーク風のアヴァンフォークのアコースティックギターのフレーズも登場するが、夢見るような旋律の美しさが維持されている。デュオ形式で歌われる両者のヴォーカルのユニゾンも見事なハーモニクスを形成している。アルバムの中で最もアグレッシヴな趣を持つ「Look Look Look」は、イントロでフューチャーステップのシンセを配し、スキャットやハミングの器楽的な旋律を強調付けるサヤのボーカル、そして、クルゴヴィッチの深みのある英語の歌詞が対旋律として強固な構成を作り上げる。リズムとしても、オフキルターとの呼ぶべき複合的なポリリズムが強調され、ボーカルだけで伴奏と主旋律を作り上げる。この曲で、テニスコーツとクルゴヴィッチはヴォーカルアートの最前線へとたどり着く。その後、ヒップホップのリズムを交え、この曲は未来志向のアートポップへと傾倒していく。この曲に関しては、細野晴臣さんの音楽性にも相通じるものがあると思う。

 

 

このアルバムを聴くに際して、My Bloody Valentineのカバーソング「Lose My Breath」は意外の感に打たれるかもしれない。


1988年のアルバム『Isn’t Anything』の収録曲である。『Loveless』が登場する数年前の伝説的な作品で、ヨーロッパのゴシックの雰囲気に縁取られている。ダンスミュージックの要素以外のシューゲイズの旋律的な要素は、このアルバムでほとんど露呈していた。今回のテニスコーツのカバーでは、これをインディーフォークやネオアコースティックの観点から組み直している。

 

あるミュージシャンに聞くところによると、カバーというのは難しいらしい。原曲にある程度忠実でなければならず、過度な編曲は倦厭されがち。この曲は、構成や和声や旋律進行の特徴を捉え、それらをダークでゴシックな雰囲気で縁取っている。このカバーは、どちらかといえば、Blonde Redheadのように、バロック音楽に触発されたポップソングのように聴くことが出来る。


従来、My Bloody Valentineのクラシック音楽からの影響というのは表向きには指摘されてこなかった。しかし、このカバーを聴くとわかる通り、ビートルズと同じようにシューゲイズというジャンルには、ダンスミュージックと合わせて、クラシック音楽からの影響が含まれていることがわかる。少なくとも、今まで聴いた中では、センス抜群のカバーであるように感じられた。曲数はさほど多くはないけれど、凄まじい聴き応えを持つアルバム。それが『Wao』である。

 

 

 

 

 

 

86/100 

 

 

 

Shabason/Krgovich/Tenniscoats 『Wao』は本日、日本国内では7.e.pから発売済み。さらに日本独自CDとして発売。海外ではWestern Vinylから発売。こちらはVinylの限定販売となっている。『Wao』の国内CDバージョンの詳細については、7.e.p.の公式サイトをご覧ください。 



マンチェスターの気鋭のエレクトロニックプロデューサー、Demdike Stare(ダムダイク・ステアー)がその才能を見出したことで知られる埼玉のミニマル/ダブステップ・プロデューサー、Shinichi Atobeの最新の音源がデジタルで解禁となった。 日本国内でも最注目すべき制作者である。


埼玉は昔から住宅地の他、工業地帯が多く、工場からもくもくと立ち上る煙を見るのは日常的な光景だった。埼玉の風景……、それは東京のコンクリートがちの無機質な箱型建築の光景とはまったく異なる。彼のような工業的なサウンドを持つ制作者が出て来たのは必然といえるだろう。

 

シンイチ・アトベは、Basic Channel傘下のChain Reactionから2001年にデビュー。以来、10年以上の沈黙を経て、2014年からマンチェスターのレーベル”DDS”よりコンスタントにリリースを重ね、ダブテクノ/ミニマル等のクラブオーディエンスのみならず世界の熱心な音楽ファンを魅了してきた。


先日、Shinichi Atobeは自身のプライベートレーベル、Plastic & Soundsを設立した。第一弾となるリリース「A.Whispers into the Void | AA.Fleeting_637」が12INCH(45RPM/Limited Press)レコード/デジタルでリリースされる。あらためてこの音源を確認してもらいたい。


ミニマルなシンセとリズムからピアノのリフレインの導入と共に徐々に禁欲的に展開する「Whispers into the Void」。BPM125前後のフロアライクな没入感のあるミニマル・ダブ・テクノ「Fleeting_637」の2曲が収録される。

 

追記として、一曲目の「Whispers into the Void」は古典的なダブステップではなくて、その次世代に位置づけられる未来志向の色彩的なフューチャーステップの音楽である。一方、二曲目の「Fleeting_637」は、マンチェスターのクラブ・ハシエンダの80年代後半のフロアサウンドに回帰したような多幸感に満ちたサウンドである。最初期のWarp/XLのカタログに見受けられるようなアンダーグランド界隈のダンスミュージックの熱狂的な空気感を見事に復刻している。


ただ、このサウンドの主な特徴は、ヒプノティックで内的な熱狂性に求められる。大型のモニターでは確認していないものの、サブベースの出方はかなり良い感じになっていると思う。また、ベタ張りのリズムではなく、ランタイムごとにうねるようなテンポの微細なズレが楽しめる。


 Shinich Atobeのリリースの目的は音源のプロダクトの発表だけにとどまらないことは明白である。イギリスの産業的な要素を受け継ぎ、レコードが美術品であったり工業製品の雰囲気が感じられるようにプレスされている。部屋の壁などに飾るなんて楽しみ方もアリかもしれない。マスタリング/レコード・カッティングにもこだわりが込められ、Shinichi Atobeの作品を多数手がけてきたベルリンのアーティスト、Rashad Becker(ラシャード・ベッカー)が担当している。

 

また、Atobeは、伊豆の白浜で9月27日から28日にかけて開催予定のダンスミュージックやエレクトロニックに焦点を当てたフロア向けのライブイベント”FFKT”に出演予定。このイベントには国内外から秀逸なDJ/エレクトロニックプロデューサーがホテル伊豆急でライブを行う。

 

国内からはChanaz,北村蕗、Powderが出演、DJやライブを披露する。海外アーティストは、Huerco. S、Fabiano do Nacimento、Ash Rahなどが出演予定。イベントの詳細は下記より。

 

 

 


・Vinyl Release



Shinichi Atobe「A.Whispers into the Void | AA.Fleeting_637」

12INCH (3,500Yen+Tax Incl.) | 2025.07.25 Release | DDJB-91257 (P&S001)

Released by Plastic & Sounds | AWDR/LR2


A.Whispers into the Void

AA.Fleeting_637


Sounds:Shinichi Atobe

Mastering & Cutting:Rashad Becker

Design:Satoshi Suzuki



・Digital Releases



Shinichi Atobe「A.Whispers into the Void」

Digital | 2025.07.25 Release | DDJB-91257_1

Released by Plastic & Sounds | AWDR/LR2

配信:[ https://ssm.lnk.to/whispersintothevoid ]


Shinichi Atobe「Fleeting_637」

Digital | 2025.08.29 Release | DDJB-91257_2

Released by Plastic & Sounds | AWDR/LR2

配信:[ https://ssm.lnk.to/fleeting_637 ]



・Live Performance



FFKT 2025 Izu Shirahama

27th – 28th Sep 2025 at Hotel Izukyu

 

About The Event(イベントの詳細) [ https://ffkt.jp/2025-izushirahama ]

 

AKIRAM EN, Ash Rah, Chanaz, CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN, Fabiano do Nascimento,

Gigi Masin, Greg Foat, Huerco S., 北村蕗, Knopha, Loidis, Milian Mori, NOOLIO, Powder, Shinichi Atobe, Stones Taro



After more than 10 years of silence since his debut in 2001 on Chain Reaction subsidiary of Basic Channel, he has been consistently releasing music since 2014 on DDS label in Manchester, UK, attracting not only the club audience of dub techno / minimal but also the enthudieatic music fans around the world. Electronic musician Shinichi Atobe has established his own private label Plastic & Sounds.

 

The first release on Plastic & Sounds includes two tracks: ‘Whispers into the Void’, which gradually and ascetically develops from minimal synths and rhythms with the introduction of a flowing piano refrain, and the floor use ‘Fleeting_637’, which develops immersive minimal dub techno at around 125 BPM. Mastering / record cutting was done by Rashad Becker in Berlin, who has worked on many of Shinichi Atobe's productions.

 


Shinichi Atobe:


Electronic artists based in Saitama, Japan.

 

He made his debut with the 12-inch “Ship-Scope” (2001) released on Chain Reaction, a sub label of Basic Channel, a 90s cult label leading to dub techno and then the “minimal” trend of the 00s. A decade later, in early 2010s, he released his first full-length album, “Butterfly Effect” (2014) on DDS label by lobbying of Manchester duo Demdike Stare.

 

Since then, he has consistently released “World” (2016), “From The Heart, It's a Start, a Work of Art” (2017), “Heat” (2018), “Yes” (2020), “Love of Plastic” (2022),  “Discipline” and the EP ‘Ongaku 1’ (2024). He has garnered a large number of music listeners as well as club audiences and has received acclaim from various music media.


Although his debut on the legendary Chain Reaction and his releases on DDS have brought him to the attention of the world, he has remained an enigmatic and rare entity.

In 2025, he established his own private label, "Plastic & Sounds" .


・Sound source:https://plasticandsounds.bandcamp.com



シンイチ・アトベは、埼玉を拠点に活動する電子音楽家。ダブ・テクノ、その後の00年代の一大潮流"ミニマル"にまで至る90年代のカルト・レーベルBasic Channel傘下のChain Reactionからリリースされた12インチ「Ship-Scope」(2001年)でデビューを果たす。その10年後となる2010年代初頭、マンチェスターのデュオDemdike Stareの働きかけによりレーベルDDSから初のフル・アルバム「Butterfly Effect」(2014年)をリリース。

 

それ以来同レーベルからコンスタントに「World」(2016年)、「From The Heart, It's A Start, A Work of Art」(2017年)、「Heat」(2018年)、「Yes」(2020年)、「Love of Plastic」(2022年)、「Discipline」、EP「Ongaku 1」(2024年)をリリース。クラブオーディエンスだけでなく多くの音楽リスナーを獲得し、多様な音楽媒体からも定評を受けている。


伝説化されたChain Reactionからのデビュー、DDSからのリリースをきっかけに世界に知れ渡ることになるものの、謎めいた稀有な存在として注目をされ続けている。2025年には自身のプライベート・レーベル【Plastic & Sounds】を設立。

Winter 『Adult Romantix』

 

Label: Winspear

Release: 2025年8月22日


Listen/Stream

 

Review

 

シューゲイザーというのは本来、90年代はサウンドの一形態を表していたものの、次世代のポスト世代の音楽を経過して、Y2Kのようなファッションやライフスタイルに近づいてきた。

 

シューゲイズ業界……そんなものがあればの話だが、少なくとも、このジャンルは近年飽和状態にある。リスナーの需要とアーティスト側の供給がマッチしているのか定かではない。このジャンルは少なくとも、数あるアルトロックソングのスタイルでも最もわかりやすく、伝わりやすい。そういった中、このジャンルをファストファッションのように志向するミュージシャンが増えたとしても不思議ではない。シューゲイズは今やかつてのパンクのようになりつつある。ただ、このジャンルに入るのは簡単だが、それを高い水準に持っていくためには、+アルファが必要になってくる。そのバンドやミュージシャンしか持ち得ない何かが追加される必要がありそうだ。

 

Winterは、ブラジルのルーツを持つミュージシャン。近年はロサンゼルスに根を張っていた。アメリカのインディーズロックのミュージシャンとしてはよくある話であるが、どうやら独自のコミュニティで生活し、それらは”ザ・エコー”と呼ばれていた。このアルバムはDIYの共同体の生活をフランケンシュタインのようなラブコメディと組み合わせて、それらをノスタルジーに振り返るという内容で、30代になったミュージシャンが20代の人生観を総括するというものである。ロサンゼルスから離れたミュージシャンがその土地を回想する。二度とは帰らない青春の最後の年代の記憶……、センチメンタルにも思えるが、人間の円熟期はたいてい壮年期以降に訪れる。クリエイティビティの頂点はこの年代以降に訪れる。人生のなにがしかがわからなければ、音楽の真髄を理解することは難しい。その理解を的確に反映した時、名作が出てくる。20代でそれをやってしまう人もたまにいるが、少なくとも人生や音楽が本当に理解出来るのは、もっと後になってから。そしてそれが理解できたとき、その人は音楽の氷山の一角しか見ていなかったことに気がつく。どのようなジャンルも例外はない。もちろん、近道もない。

 

このシューゲイズアルバムは、まるでそれ以上の意味を持ち、人生の一部分を切り取ったかのような趣を持つ。名作ではないが、はっきりとした聞かせどころがある。ウインターは、写真でも日記でもブログでもTikTokでもない、音楽という形でそれらの記憶を留めておく必要があった。コラボレーションは人生の視野を広げ、華やかにするためにある。このアルバムに、独特なテイストを添えるのが、Tanukicyan、Horse Jumper of Loveである。前者は西海岸のシューゲイズの象徴的なミュージシャンによるコラボ、後者はボストンの気鋭のアルトロックバンドとのコラボレーションで、それぞれ異なる楽曲となっている。ただ、シューゲイズに傾倒したアルバムといよりも、ストレートなオルタナティヴロックソング集として楽しめるかもしれない。

 

アルバムの冒頭を飾る「Just Like A Flower」はどちらかと言えば、今週アルバムをリリースしたSuperchunkに近いロックソングで、シューゲイズの要素は薄めである。唯一、サミラ・ウィンターのドリーミーなボーカルがシューゲイズの要素を捉え、それらを伝えている。センチメンタルなボーカルが骨太のギターラインと結びつき、このジャンルの陶酔的な雰囲気を生み出している。湿っぽくナイーブなヴァース、それとは対象的に晴れやかなコーラスを対比させ、キャッチーなソングライティングが強調されている。サビはクロマティックスケールを使用して、ペイヴメントのような曲に近くなる。しかし、その旋律の中には、切ない感覚が潜んでいる。

 

一方、打ち込みのようなフィルターをかけたドラムと重厚なディストーションギターが特徴である「Hide-A- Lullay」はシューゲイズの質感が徹底的に押し出されている。ジャグリーなギターの中で独特のポップセンスが光ることがあり、2つ以上のギターでそれらの対旋律の響きを作り出す。おのずと音楽自体はドローン音楽に近づくが、結局のところ、それらを聴きやすくしているのが旋律的な要素である。コラボレーターとしてボーカルで登場するたぬきちゃんは、この楽曲にアンニュイな雰囲気を添えている。これは前作EPとどこかで繋がっている。


ボーカルに関しても、MBVの80年代後半の曲やステレオラブのような鋭いハーモニーを作ることがある。そして、複数のギターを入念に重ね合わせて、その中にトレモロの効果を強調することで、独特なトーンやハーモニクスを作り出す。ギターの音響を巨大なシンセサイザーのように解釈して、その中でボーカルの側面でポップセンスをいかんなく発揮している。それはまた、オルタナティヴポップとしてのポップセンスであり、オーバーグラウンドの話ではない。これらのニッチでナードな音の運びは、およそロサンゼルスや西海岸の意外な表情を浮かび上がらせる。LAのくっきりとした澄んだ色の青空とは対極にある曇り空のような印象を呼び起こす。それはまた、内側の世界と外側の世界の出来事をすり合わせるための音楽でもあるのだ。両者のささやくようなボーカルのやりとりは、曲の雰囲気と連動している。名コラボである。

 

これらのシューゲイズの憂愁により、まったりとした効果を添えているのが、Horse Jumper of Loveである。こちらのコラボレーションもボーカルが中心だが、良いコラボレーションの見本を提示している。こちらの曲は『Loveless』を現代的なアルトロックとして再解釈したという感じ。『Loveless』の「Sometimes」と聴き比べてみると面白いはず。この曲をシューゲイズの中のシューゲイズにしている理由は、アコースティックギターやエレアコのような音色を駆使して、スコットランドのThe Patelsのようなサウンドを作り出しているから。また、ボーカルのメロディーラインも秀逸で、Horse Jumper of Loveのドミトリー?のボーカルは、シールズに匹敵する鋭い感性がある。コラボレーターがどのように歌えば良いのかを熟知していて、それらを的確に声で表現している。音楽的な効果が明瞭に表れ出ている。この曲は、Wrensのような00年代のロックソングを思い起こさせる。決してクールではないが、その点に共感のようなものを覚えるわけなのだ。

 

近年のシューゲイズは、90年代の最初のウェイブがそうであったように、ダンスミュージックとロックを結びつけるという形式が主流になりつつある。もちろん、現在のダンスミュージックは90年代よりも未来に進んでいて、表側に出てくる内容もへんかしてきている。「Existentialism」 では、現代的なインディーポップのボーカルと、グルーヴ感を強調した打ち込みのようなドラムを連動させ、その中で、ウィンターらしい少しナイーヴな感覚を織り交ぜている。そしてこれは、全般的に言えば、ローファイやサイケに近い音楽として成立している。こういった曲が三曲ほど続く。これらはシカゴのKrankyから昨年新作アルバムをリリースしたBelongのスタイルに準じている。


その中、多幸感を持つフラワームーブメントの雰囲気を持つ「Without You」こそ「LAのシューゲイズ」と言える。ただ、この曲の中に揺らめく独特な感性、そしてアンニュイな感覚こそ、Winterのソングライティングの核とも言える箇所である。これらはドラスティックな印象を持つシューゲイズ曲のさなかにあって特異な印象を持つ。バラードやフォークのような音楽性を反映させたこの曲は、ドリームポップへと傾倒し、ヒップホップのビートを内包させながら、独特な音楽性へと落着する。アンニュイなボーカルは、飽くまでアトモスフェリックな要素を添えているに過ぎず、デコレーションのようなものである。どうやら今後のシューゲイズは、ダンスミュージックの他、ヒップホップのローファイを通過した形式が主流になっていきそうである。つまり、今日のこのジャンルは、必ずしもロックの系譜にあるわけではなく、ブラックミュージックの要素を内包させている。西海岸のラップヒーロー、Ice Cubeのように過激ではないにせよ、これらのリズムの要素は、今後のシューゲイズソングを制作する際の重要な主題になるに違いない。

 

これまでのシューゲイズバンドの課題は、90年代のケヴィン・シールズの音楽をどのように再現するのか、という点にあった。しかし、音響技術の発展やエフェクターやマスタリングの進化により、近年そのハードルは下がりつつある。今後は現代のミュージシャンとしてのシューゲイズを制作するのが最重要課題となる。アルバムの後半はトーンダウンして、90年代の模倣やミレニアム以降のブルックリンのベースメントのインディーズロックサウンドへの偏愛がうかがえる。しかし、独創的な感性を示した「Running」は、ポストロックや音響系のサウンドとむすびつき、アンビエントのようなアトモスフェリックな音楽に行き着いている。


この点を見ると、ポストロックやアンビエントとのクロスオーバーをやるのもアリかもしれない。ウィンターは、ボーカリストとしてはどこまでも叙情的であるが、ギタリストとしてはアーティスティックな感性をもっている。アルバムで聞こえるギタープレイはペインターのように芸術的。 色彩的なギターの音響は時々、マクロコスモスの音楽さながらに鳴り響くことがある。秀作。

 

 

 

78/100 

 

 

 

 

Best Track - 「Without You」

 


NYを拠点に活動するフューチャーソウル・バンド、The Love Experiment(ラヴ・エクスペリメント、以下LEX)が、ニューシングル「Whoʼs Gonna Save the World (feat. J. Hoard)」を2025年9月5日にリリース。記事の最下部のリンクより楽曲のプリセーブが可能だ。

 

東京を拠点に活動するエクスペリメンタルソウルバンド、WONKとのコラボアルバム『BINARY』をリリースし、日本でのツーマンツアーも成功させたLEX。その後 、メンバーはプロデューサー、ソングライター、ミュージシャンとして、それぞれのキャリアを広げ、ソウル/R&B、ジャズ、ヒップホップシーンで活躍している。Lauryn Hill、Nas、Anderson .Paak、Solange、Corey Henryなどのビッグネームから、Amber Mark、Poppy Ajudha、Standing on the Cornerなどの新進気鋭のアーティストまで、幅広くコラボレーションを重ねてきた。


Chance The Rapperの「No Problem」の作詞でグラミー賞を受賞し、NYのジャムセッション<The Lesson>のホストバンドでヴォーカリストも務める"J.Hoard"をフィーチャーした「 Who's Gonna Save the World」。

 

前作「House Boat」が、水面を漂うようなサウンドと内省的な世界観でリスナーを包み込んだのに対して、本作は、社会的な問いかけを力強く放ち、エネルギッシュかつアグレッシブなサウンドが耳を捉える。


太くうねるベースラインとアフロビーツのリズムが、J. Hoardの深みと繊細さを兼ね備えたソウルフルな歌声を後押しする。後半では、LEXのリーダー兼ドラマーであるCharles Burchell が、ラッパー名義の”Karnival Kid”として参加している。彼のラップが、社会の矛盾や個人の内面を鋭くえぐり出す。''世界を救うのは誰か?”というシンプルで根源的な問いが、静かに力強く繰り返されるこの曲は、祈りと警鐘が交錯し、個人の目覚めを促すアンセムとして響く。今年リリース予定のニューアルバム『Velvet』に向け、LEXの進化と覚醒を鮮やかに刻み込む1曲。

 

 

The Love Experiment 「Who’s Gonna Save the World (feat. J. Hoard)」- new single

 


 

アーティスト:The Love Experiment

タイトル:Who’s Gonna Save the World (feat. J. Hoard)

ジャンル:Soul / R&B / Afrobeats / Hip Hop

配信開始日:2025年9月5日(金)

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS 

配信リンク:https://lnk.to/LEX_WGSW
 

ケイティ・ステルマニス(別名Austra)が、2020年の『HiRUDiN』以来となる初のアルバムを発表した。カナダのエレクトロポップバンドの注目作品。

 

タイトルは『Chin Up Buttercup』で、11月14日にドミノ・レコードよりリリース予定。ステルマニスはキーラン・アダムスと共同プロデュースを手掛け、マドンナの『Ray of Light』に代表されるユーロダンスサウンドからインスピレーションを得ており、その影響は先行シングル「Math Equation」にも響き渡っている。

 

クラシック音楽の訓練を受けた音楽家であり、オペラ愛好家でもあるステルマニスは、これまでに4枚のアルバムを発表し、カナダ・スクリーン賞も受賞している。彼女は長年、悲劇を題材にしたドラマティックなアリアを歌い続けてきた。彼女は、その壊滅的な痛みがどんなものか本当に知らなかった。2020年初頭、長年連れ添ったパートナーが衝撃的な告白をした時、初めて舞台の外でその痛みを経験した。「全く予期せぬことでした…。愛する人がある日突然、幸せじゃないと言って別れを告げ、その後ほぼ二度と会うことはありませんでした」とステルマニスは語る。世界と完全に隔絶した感覚に陥り、何もかもが意味をなさなかったと彼女は打ち明ける。


アルバムのタイトルは、笑顔を貼り付けて前へ進めという社会の圧力への言及だ。ステルマニスと共同プロデューサーのキーラン・アダムスは、ウィリアム・オービットがプロデュースしたマドンナの1998年の画期的なアルバム『Ray of Light』のユーロダンスサウンドからインスピレーションを得て、催眠的なダンスフロアアンセムと、傷ついた心を癒す優雅なメロディを融合させた。

 

ステルマニスは別れの痛みをカタルシス的なGoogleドキュメントに詩的な断片として吐露し、それがアルバムの力強い歌詞の原点となった。その一例が、アルバムの最初の魅力的なシングル「Math Equation」に鮮烈に刻まれている:「君は俺に友達が必要だって言った/だから俺はその友達を見つけた/そしたら君はその友達とヤったんだ」 全曲に貫かれる紛れもないサフィックな混沌。そして「Math Equation」は、キャッチーな反撃と再会への切ない嘆願が等分に混ざり合った楽曲だ。本日公開のミュージックビデオはトレバー・ブラムが監督を務めた。


 

 

「Math Equation」



Austra 『Chin Up Buttercup』

 

Label: Domino 

Release :2025年11月14日

 

 Tracklist:


1. Amnesia

2. Math Equation

3. Siren Song

4. Chin Up Buttercup

5. Fallen Cloud

6. Blindsided

7. Think Twice

8. Look Me in the Eye

9. The Hopefulness of Dawn

10. Good Riddance

Photo: Abbie Gobeli

 

ニューヨークのシンガーソングライター、Hannah Jadagu(ハンナ・ジャダグ)がニューアルバム『Describe』をサブポップから10月24日にリリースする。

 

全12曲収録の本作には先行シングル「My Love」に加え、ハイライトとなる「Gimme Time」「Normal Today」「Tell Me That!!!!」、タイトル曲、そして本日新たに公開された軽快なポップソング「Doing Now」が収録されている。

 

『Describe』でハンナ・ジャダグは、距離とは相対的なものだと苦い経験から学ぶ。2023年のデビューアルバム『Aperture』がニューヨーク・タイムズやNPRなどから絶賛を浴びた後、彼女の有望なキャリアはニューヨークで育まれていた恋愛関係から遠ざけてしまった。「愛と感謝を感じつつも、仕事のために離れていることへの罪悪感もあった」と彼女は振り返る。 

 

「ミュージシャンであることは時間を犠牲にすることを意味する——そして私の特徴の一つは、質の高い時間を大切にする人間だということ」。彼女の広がりを見せるセカンドアルバムでは、その分離と向き合い、物理的な距離を超えた繋がりを見出し、その過程で自身の声を強固にしていく姿が描かれている。

 

『Describe』は、繋がりを求めつつも空間を渇望するという緊張感に満ちている。デビュー作同様、その歌詞は生きた経験からしか引き出せない感情的な特異性で胸を締めつける。

 

しかし、その距離感が、ジャダグに新たな音の世界を探求させるきっかけにもなった。「アナログとモダンを融合できるアーティストにすごく惹かれるの」と彼女は語る。夏にカリフォルニアへ移ったことで、新たなコラボレーターと出会い、アナログシンセサイザーやドラムマシンを実験する機会を得た。

 

前作『Aperture』では温かなギターの響きが主軸だったが、その楽器への記憶が自分を縛っていると感じ始めた。 「シンセの前に座り、一つの音をドローンさせながらボーカルを探求できるのは解放感があった」と彼女は語る。 

 

「ギターを弾くよりも、むしろ自由を感じたんです」。共同プロデューサーのソラとアルタデナのスタジオで、またパリ在住のアパーチャー共同プロデューサー兼コラボレーターであるマックス・ベイビーとはリモートで数曲を制作しながら、ジャダグは『Describe』において、デビュー作の歪んだギターメロディからは完全に脱却しつつも、彼女独自のサウンドを確立した

 

コラージュのようなサウンドスケープで、一見シンプルに見えるギターメロディと、曲のキャッチーで自覚的なリフレイン(「Timid, I get so」)を繰り返し歌う彼女の催眠的なボーカルが融合した「Doing Now」は、ハンナのソングライティングにおけるこの刺激的な新たな方向性を示している。 

 

ユーモアあふれる公式ミュージックビデオはサム・ウィルバート監督作品。ハンナが「ル・ハン」役で地元のバスケットボールリーグ試合に登場し、彼女のチームが「ビッグゲーム」で勝利を収める様子が描かれている。

 

 

「Doing Now」


Hannah Jadagu  『Describe』





Label: Sub Pop

Release:  2025年10月24日

 

Tracklist:

1. Describe

2. Gimme Time

3. More

4. D.I.A.A.

5. Perfect

6. My Love

7. Couldn’t Call

8. Tell Me That!!!!

9. Normal Today

10. Doing Now

11. Miracles

12. Bergamont

 

Pre-save: https://music.subpop.com/hannahjadagu_describe 


 

ロンドンの実験的なロックバンド、Honeyglazeが「Turn Out Right」を公開した。先鋭的なイメージが目立った前作アルバムであったが、このバンドの持ち味である安らぎに満ちた優しげでナチュラルなフォークソングである。

 

今回のリリースは、オパス・キンク主催のコンピレーションアルバム『A Hideous Collective』から2曲目として発表された楽曲です。同アルバムは全24曲を収録し、ミュージック・ヴェニュー・トラストとUKアーティスト・ツーリング基金を支援するための資金調達を目的としている。


ハニーグレイズのボーカリスト/ギタリスト、アニウスカ・ソコロウは次のように語っている。「これは『Real Deal』に収録されなかった曲の、本当に骨組みだけのデモ版です。アルバムの他の曲と同様に、憂鬱でありながら皮肉を込めた、しかし最終的には希望に満ちたテーマを持っています」


「インディペンデント・ミュージック・ヴェニューを巡るツアーとはこういうものです。 最も情熱的な主催者たちは、わずかな資金で運営し、たった一度の不振で崩壊しかねない状況にある。こうした会場と人々への支援は、寄付や認知度向上、MVTのような団体の活動を通じて、灰の中からかすかに光り始めている」

 

「残念ながら、この国の草の根ライブ音楽文化の壊滅を本当に食い止めるには、業界からより根本的でトップダウンの支援を引き出す必要も、相変わらずあるのだ。 それまでの間、彼らを育んだ場所を存続させるアーティストたちの音を楽しんでほしい。そしてこのレコードを購入し、あなたもその一助となってほしい」とオパス・キンクは本作について語る。

 

近年、イギリス国内の小規模のライブハウスが経営難に陥っているという統計が出ている。ハニーグレイズは、今回、こういった出来事を受けて、慈善的な活動に乗り出した。ミュージシャンとして素晴らしい行動に称賛を送りたい。


『A Hideous Collective』は9月5日、バンド自身のレーベル、Hideous Mink RecordsとSO Recordingsの提携によりリリース予定。

 


「Turn Out Right」


ロサンゼルスのシンガーソングライターのジョーダナ・ナイ(通称 Jordana)が、アルバム『Lively Premonition』に続くEP『Jordanaland』を11月7日にGrand Juryよりリリースすると発表した。7曲入りの本作では、ポップグループMICHELLEのチャーリー・キルゴアとジュリアン・カウフマンが参加している。このアルバムでは、ユートピアへの逃避行を意味している。


「『Jordanaland』は間違いなくアメリカからの逃避行よ。混沌の中のオアシスで、生理用品は無料、全てが楽で、ルーサー・ヴァンドロスが副大統領なの」とナイは語る。

 

「ビデオではなぜかロサンゼルスにすごく似てる…変よね。でも目を閉じればどこにでも行ける場所。ポップミュージックを目指したのは確か。自信に満ちた、確固たるポップ。この進化は、自分の声に慣れ親しみ、確立されたサウンドを得たこと、そしてそうした表現をするアーティストたちからインスピレーションを得た結果だと思う」


EPの先行シングル「Still Do」は、力強いビート、レトロなシンセサイザー、ジョーダナの甘口の歌声が特徴の、柔らかなポップ・バラードだ。この楽曲は、自分を失望させた相手への執拗な愛情を反映すると同時に、自立を宣言する瞬間を象徴している。オティウム監督によるミュージックビデオでは、女性が自らを主権国家と宣言しようとする架空の報道が映し出される。

 

 

「Still Do」


Jordana 『Jordanaland』


Label: Grand Jury

Release: 2025年11月7日


Tracklist:


1. Burning Me Down

2. Like That

3. Still Do

4. Blouse

5. I Wanna Be

6. Hard Habit To Break

7. Jordanaland

 


ニューヨークのバンド、Geeseが3rdアルバム『Getting Killed』の2曲目となる先行曲「100 Horses」を公開した。アメリカーナとビンテージロックを融合させたGeeseらしい楽曲です。

 

この楽曲は、リードシングル「Taxes」と、キャメロン・ウィンターがニューポート・フォーク・フェスティバルで流出した「Trinidad」に続く、バンドの新アルバムからの2曲目の先行公開です。

 

『Getting Killed』は、バンドの2021年のデビューアルバム『Projector』と、2023年の続編『3D Country』に続く作品です。今年初め、Geeseのフロントマンであるキャメロン・ウィンターは、自身のデビューソロプロジェクト『Heavy Metal』を発表しています。

 


「100 Horses」



 

Spoonは夏の間スタジオで新曲を磨き上げた。バンドはその成果に興奮し、この新曲ダブルA面シングルで一気に解き放つことを決めた。


新曲として、生々しいパワーが炸裂するロックナンバー「Chateau Blues」と、煮えたぎるような熱量を持つ「Guess I’m Fallin In Love」が登場。ジャスティン・メルダル=ジョンセンとスプーンが共同プロデュースしたこの二本立ては、グラミー賞ノミネートアルバム『Lucifer On The Sofa(ルシファー・オン・ザ・ソファ)』以来となるバンドの新録音作品だ。バンドのブリット・ダニエルはこう語る。


「今年アルバム制作を始めたんだが、普通なら曲を作ってリハーサルし、レコーディングしてミックスし、全てを完璧に仕上げた後に曲を世に送り出す。でもLP用の最初の2曲を完成させた時、誰かが、そして最終的には全員がこの2曲を今すぐリリースすべきだと気づいたんだ。さあ、世に出そう。というわけで本日『Chateau Blues』と『Guess I’m Fallin In Love』をお届けしたい」

 

「テキサス州オースティンとロードアイランド州プロビデンスでこの数ヶ月間に生み出された、個性豊かな2曲だ。今日はあらゆる意味で特別な日だ。今夜サンタアナで久々のツアーをスタートさせ、明日はピクシーズとの共演が始まる。率直に言って、史上最高のバンドの一つだ。ご存知の方もいるだろうが、このバンドは長年私にとって特別な存在だった。本当に光栄だし、しばらくの間でもライブの世界に戻れることを心から嬉しく思っている。最前列で会おう」



『Chateau Blues』

 

 

「Guess I’m Fallin In Love」


レディオヘッドの1997年発表の名盤『OK Computer』収録曲「Let Down」が、TikTokで最近話題となり、ビルボード・ホット100で91位にランクインした。


レディオヘッドはビルボードのアルバムチャートでは安定した成功を収めてきたが、アメリカでのシングルでは必ずしも同様の成果を上げてこなかった。「レット・ダウン」は、1993年の「クリープ」、1996年の「ハイ・アンド・ドライ」、2008年の「ヌード」に続き、ビルボード・ホット100にランクインした4曲目のレディオヘッド楽曲であり、17年ぶりのチャート入りとなった。


この楽曲の最近の爆発的人気は、特定の時代精神への言及によるものではない(ただし『ザ・ベア』シーズン1の感動的なクライマックスで使用された)。むしろ、Z世代がこの楽曲の痛烈なトーンを初めて発見したこと、そして「レット・ダウン」をBGMに用いた様々な映画的・壮大な・感情的な映像が広まったことが、新たな人気の要因となっている。


レディオヘッドは2016年の『A Moon Shaped Pool』以来新作アルバムを発表していないが、最近は新たな動きを見せている。今月、バンドはライブアルバム『Hail to the Thief Live Recordings 2003 – 2009』をリリース。2003年のアルバム『Hail to the Thief』収録曲の改変・拡張アレンジを収録している。また、1995年発表のアルバム『ザ・ベンド』の30周年を記念し、トム・ヨークによる未公開の貴重なアコースティック演奏を公開。さらに今年に入り新たな事業体を設立したことから、レディオヘッドの新時代が間近に迫っていることを示唆している。

 

 

今年、力作アルバム『物語を終わりにしよう』をリリースした想像力の血がニューシングル「夏のおみやげ」をリリースいたします。

 

本作はギターにシンリズム、ドラムス&ベースに元・昆虫キッズの佐久間裕太、のもとなつよを迎えたバンド編成で制作、エンジニアリングは樫本””GURI”大輔が担当しております。


どこか懐かしい夏の記憶を呼び起こすような、この季節にふさわしい一曲として、ぜひお楽しみください。



▪想像力の血「夏のおみやげ」

 
ソウゾウリョクノチ「ナツノオミヤゲ」Yusuke Sato「Summerdog」


[ https://ssm.lnk.to/natsunoomiyage ]


Digital | 2025.08.27 Release | Released by 想像力の血

作詞・作曲・編曲:想像力の血/ソウゾウリョクノチ/Yusuke Sato


Vocals, Guitar, Keyboards:佐藤優介/サトウユウスケ/Yusuke Sato


Guitar:シンリズム/シンリズム/Shin Rizumu


Bass:のもとなつよ/ノモトナツヨ/Natsuyo Nomoto


Drums:佐久間裕太/サクマユウタ/Yuta Sakuma


Recording, Mixing Engineer:樫本“GURI"大輔/カシモトグリダイスケ/Kashimoto "GURI" Daisuke




想像力の血:


福島県浪江町生まれ。ミュージシャン。

Yusuke Sato:
 

Musician. Born in Namie-machi, Fukushima, Japon.




▪想像力の血「物語を終わりにしよう」


[ https://SPACESHOWERMUSIC.lnk.to/yusukesato ]


Digital | 2025.04.16 Release | Released by 想像力の血

1. ◯◯空洞説
2. UTOPIA(異議申し立て)
3. ゴーストタウンの町長さん
4. ataraxia
5. ふたつのアリア
6. 着いてすぐ帰ることを考える観光客
7. Quaggi
8. Ide
9. こんな仕事はこれで終わり
10. 反時代ゲーム Il Conformista
11. EL TOPO
12. そして音楽はつづく

ゲストボーカル



岡田紫苑(M5)
鈴木慶一(M7)
佐藤奈々子(M10)

ゲストミュージシャン


イトケン(ドラムス、パーカッション M3, 7)
岡田徹(アコーディオンノイズ M5)
佐久間裕太(シンセサイザー M9)
澤部渡(サックス M11)
四家卯大(チェロ M7)
シマダボーイ(シンセサイザー、パーカッション M6, 7)
シンリズム(ギター、ベース M3, 7, 10, 12)
Daniel Kwon(ギター、コーラス、フィールドレコーディング M3)
西田修大(ギター M7, 10)
森達哉(ギター M2)

ミックス・マスタリング


The Anticipation Illicit Tsuboi
Stuart Hawkes
Felix Davis
樫本”GURI”大輔
原口宏

 Water From Your Eyes 『It's A Beautiful Place』


 

Label: Matador 

Release: 2025年8月22日

 

Listen/Stream 

 

Review

 

ニューヨークのWater From Your Eyesは、2023年のアルバム『Everyone's Crushed』に続いて、Matadorから二作目のアルバム『It's A Beautiful Place』をリリースした。前作は、アートポップやエクスペリメンタルポップが中心の先鋭的なアルバムだったが、本作ではよりロック/メタル的なアプローチが優勢となっている。ネイト・アトモスとレイチェル・ブラウンの両者は、この2年ほど、ソロプロジェクトやサイドプロジェクトでしばらくリリースをちょこちょこと重ねていたが、デュオとして戻ってくると、収まるべきところに収まったという感じがする。このアルバムを聴くかぎりでは、ジャンルにとらわれないで、自由度の高い音楽性を発揮している。

 

表向きの音楽性が大幅に変更されたことは旧来のファンであればお気づきになられるだろう。Y2Kの組み直した作品と聞いて、実際の音源に触れると、びっくり仰天するかもしれない。しかし、ウォーター・フロム・ユア・アイズらしさがないかといえば、そうではあるまい。アルバムのオープニング「One Small Step」では、タイムリープするかのようなシンセの効果音で始まり、 レトロゲームのオープニングのような遊び心で、聞き手を別の世界に導くかのようである。

 

その後、何が始まるのかと言えば、グランジ風のロックソング「Life Signs」が続く。今回のアルバムでは、デュオというよりもバンド形式で制作を行ったという話で、その効果が一瞬で出ている。イントロはマスロックのようだが、J Mascisのような恐竜みたいな轟音のディストーションギターが煙の向こうから出現、炸裂し、身構える聞き手を一瞬でノックアウトし、アートポップバンドなどという馬鹿げた呼称を一瞬で吹き飛ばす。その様子はあまりにも痛快だ。


しかし、その後は、スポークンワードを取り入れたボーカル、変拍子を強調したマスロック、Deerhoofのようなめくるめく曲展開というように、デュオらしいオリジナリティが満載である。ロックかと思えばポップ、ポップかと思えばロック(パンク)、果てはヒップホップまで飲み込み、爆走していく。これらのジョークなのかシリアスなのかわからない曲に釘付けになること必須である。その中でアルバムのタイトルが執拗的に繰り返される。これがドープな瞬間を巻き起こす。


「Nights In Armor」では先鋭的な音楽性を取り入れ、ほとんどバンド形式のような巨大な音像を突き出し、ルイヴィルのバストロ以降のポストロックの系譜を称賛するかのような刺激的な音楽が続いている。新しい時代のプログレ? Battlesのリバイバル? この曲を聴けば、そんな些細な疑問は一瞬で吹き飛び、ウォーター・フロム・ユア・アイズのサウンドの虜になること必須である。K-POPのサウンドを部分的に参考にしたとしても、二人の秀逸なソングライターの手にかかると、驚くべき変貌を遂げ、誰にも真似出来ないオリジナリティを誇るポップソングが作られてしまう。ミニマルミュージックの構成やミュージックコンクレートのようなギター、そして、それらのカオスな音楽の中で奇妙なほど印象深いブラウンの声、すべてが混在し、この曲のすべてを構成している。それらの音楽はときおり、宇宙的な響きを持つこともある。

 

このアルバムでは、前作よりもはるかにヘヴィネスが強調されている。「Born 2」はまるでBlurのタイトルのようだが、実際は、90年代-00年代のミクスチャーロックを彷彿とさせる。同様に、魔神的なディストーションギターが曲の中を歩き回り、口から火炎を吐き、すべてを飲み込むような迫力で突撃していく。そのサウンドは、全体的にはシューゲイズに近づいていき、最終的にはボーカルが入ると、NIN、Incubus、Ministryのようなインダストリアルロックに接近していく。しかし、最も面白いのは、これらのサウンドから、ボーカルとして聞こえてくるのは、Evanescenceのようなニューメタルを想起させるポップネスである。これらのアンビバレントな要素ーーヘヴィネスとポップネスの混在ーーこそがこのアルバムの核らしいことがわかる。また、曲の終盤では2000年代以降のポストメタルに近づいていき、そのサウンドは、Meshuggahのようなポストスラッシュのような変則的なメタルソングに傾倒していく。 

 

Water From Your Eyesの多趣味は以降もほとんど手がつけられない。それは彼らが音楽制作におけるオールラウンダーであることを伺わせる。「You Don't Believe In God?」では、古典的なアンビエントでセンスの良さを見せつけ、古参のアンビエントファンを挑発する。しかし、アルバムの中で奇妙なほど静かなこの曲は実際的にインタリュードとしての働きを担っている。さらに続く「Spaceship」では、ニューヨークのAnamanaguchiがやりそうでやらなかったチップチューンを朝飯前のようにこなす。しかも、それ相応にセンスが良い曲として昇華されている。 その中には賛美歌のようなボーカル、アートポップ等が織り交ぜられ、まるでそれは''音楽バージョンのメトロポリタンミュージアムがどこかに開設したかのよう''である。続く「Playing Classics」もまたチップチューンを主体とした曲で、ゲームサウンドとエレトロニカの融合に挑んでいる。この曲もまた同年代のエレクトロニックのプロデューサーに比肩するような内容である。しかし、ボーカルが入ると、軽快なエレクトロ・ポップに印象が様変わりする。背景のビートとボーカルの間の取れたリズムは、単発のコラボレーションでは実現しえないものである。

 

これらのデュオの多趣味は、デモソングのようなローファイなロックソング「It's A Beautiful Place」で最高潮に達する。史上最も気の抜けたタイトル曲で、わずか50秒のやる気が微塵もないインスタントなギターロックのデモソング。炭酸の抜けたコカコーラのような味わいがしなくもない。最後とばかりに気を取り直し、実質的なクローズ「Bloods On Dollar」が続く。クライムサスペンスみたいな妙なタイトルだが、曲は同郷の有名なインディーフォークバンドのオマージュかイミテーションそのもの。しかし、この模倣もそれなりの曲として完成されている。アルバムの最後では再びイントロのタイムリープのようなシンセの効果音が入る。入り口と出口が繋がっているのか。それとも別の世界に続いているのか。その真相は謎に包まれたままだ.......。

 

 

 

84/100

 

 

 

 

Best Track-  「Life Signs」

 


NHK連続テレビ小説「ばけばけ」主題歌 ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」のデジタル配信&ベスト盤のリリースが決定!

 

ハンバート ハンバートの新曲「笑ったり転んだり」は、9月29日(月)より放送スタートのNHK連続テレビ小説「ばけばけ」の主題歌として書き下ろされた楽曲。


ドラマの初回放送週の10月01日(水)より配信が決定、只今よりPre-add/Pre-saveがスタート。配信後すぐお聴きいただけるようぜひご利用ください。


また、この楽曲「笑ったり転んだり」を含む、初の公式ベスト盤を今年の冬にリリースすることも決定。詳細は後日発表いたします。



◼︎ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」



Digital | 2025.10.01 Release | Released by SPACE SHOWER MUSIC

Pre-add / Pre-save(配信事前予約)[ https://humberthumbert.lnk.to/warattarikorondari ]  


■Pre-add / Pre-save とは? 


Apple Music の Pre-add(プリアド)、SpotifyのPre-save(プリセーブ)は、配信前のアルバムやシングルを事前に予約できる機能です。前もってPre-add/Pre-seveをしておくと、配信開始後に自身のライブラリやプレイリストに自動で追加されます。



◼︎ハンバート ハンバート プロフィール


1998年結成、佐野遊穂と佐藤良成によるデュオ。2人ともがメインボーカルを担当し、フォーク、カントリーなどをルーツにした楽曲と、別れやコンプレックスをテーマにした独自の詞の世界観を持つ。これまでに12枚のオリジナルアルバムを発表し、テレビ・映画・CMなどへの楽曲提供も多数。


2014年発表の楽曲「ぼくのお日さま」が主題歌/タイトルとなった映画『ぼくのお日さま』(2024年/監督:奥山大史)では、佐藤が劇伴も担当。また、2024年リリースのアルバム『カーニバルの夢』収録曲「トンネル」はドキュメンタリー映画『大きな家』(監督:竹林亮/企画・プロデュース:齊藤工)の主題歌として起用された。9月29日放送開始のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の主題歌を担当、ドラマのために「笑ったり転んだり」を書き下ろした。

 ジャズの巨人として必ず紹介されるアート・ブレイキー。伝説的なジャズドラマーの幻の音源が今年の秋、ついにお目見えとなる。ジャズファン垂涎の音源がここに登場する。

 

1982年にフランスのストラスブールにて録音されたアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの未発表音源『ストラスブール 82』。

 

一般流通は2026年2月を予定しているこちらの作品を、アート・ブレイキーの誕生日にあたる10月11日(土)より、ギアボックスの公式サイトから一足先に先行販売が開始される。本作はCD/LPの2バージョンの発売と合わせて、ジャズアルバムとしては珍しくデジタル・ハイレゾ音源でも発売予定です。


*なお、こちらの商品には、このタイトルの今後の成功から利益を得ることができるGearbox Collection(GBX)トークンが付属している。

 

ハイライトを聴くかぎり、82年のライブではジャズ・アンサンブルとしての魅力を直接的に伝えつつも、ビッグバンドの楽しい音色が強調されている。金管楽器(トランペット/サックス)、ピアノ、アート・ブレイキーの生々しく味わい深いドラムを体感出来、緊密でゴージャスなライブアルバムとして楽しめる。アルバムの紹介動画を下記よりチェックしてみてください。

 





【アルバム情報】

 

アーティスト名:Art Blakey & The Jazz Messengers(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)

タイトル名:Strasbourg 82(ストラスブール 82)

品番:GB4009CD (CD) / GB4009 (LP)

発売日:2025年10月11日(土)

レーベル:Gearbox Records


<トラックリスト>

(CD)

1. Little Man

2. Along Came Betty

3. Fuller Love

4. Eighty One

5. I Can’t Get Started

6. New York

7. I Didn’t Know What Time It Was

8. Blues March / Theme

9. Moanin’


(LP)

Side-A


1. Little Man (Charles Fambrough) 13:04

2. Along Came Betty (Benny Golson) 09:27

Side-B


1. Fuller Love (Bobby Watson) 09:13

2. Eighty One (Miles Davis) 14:26


Side-C

1. I Can’t Get Started (Vernon Duke) 07:44

2. New York (Donald Brown) 14:01


Side-D

1. I Didn’t Know What Time It Was 04:34

2. Blues March (Benny Golson) / Theme (Miles Davis) 08:39

3. Moanin’ (Bobby Timmons) 07:48


Credits:

Art Blakey; drums


Johnny O’Neal; piano


Donald Harrison; alto saxophone


Terence Blanchard; trumpet


Billy Pierce; tenor saxophone


Charles Fambrough: double bass


Recorded on 1st April 1982 in Strasbourg, France


Mastered by Caspar Sutton-Jones at Gearbox Records, London


Album artwork by Alan Foulkes


℗ & © Gearbox Records, 2025



CD『Strasbourg 82』プレオーダー受付中! 

https://store.gearboxrecords.com/products/pre-order-art-blakey-the-jazz-messengers-strasbourg-82-cd/


LP『Strasbourg 82』プレオーダー受付中! 

https://store.gearboxrecords.com/products/pre-order-art-blakey-the-jazz-messengers-strasbourg-82


『Strasbourg 82』デジタル・ハイレゾ音源プレオーダー受付中! 

https://gearboxrecords.bandcamp.com/album/strasbourg-82-24bit-96khz-high-resolution-version




Art Blakey & The Jazz Messengers:

アート・ブレイキーは、1919年、ペンシルベニア州ピッツバーグ出身のジャズ・ドラマー。1944年からビリー・エクスタインの楽団へ入り、1940年代後半からマイルス・デイヴィス、セロニアス・モンク、チャーリー・パーカーらと共演後、1954年にホレス・シルヴァーと初代ジャズ・メッセンジャーズを結成。


メンバーはその後入れ替わるも、基本的に2管または3管のフロント+3リズムのコンボ形式のバンドである。親日家として知られ、メッセンジャーズにも1970年代以降鈴木良雄、鈴木勲等の日本人がレギュラーまたは客演で加わっていた。


1990年に肺がんのため、ニューヨーク・マンハッタンにて死去する間際まで来日を繰り返し、特に夏のフェスティバルではおなじみだった。なお、アート・ブレイキーは多くの新人を発掘し、多くの著名なミュージシャンがメッセンジャーズから巣立った。その中にはリー・モーガン、ボビー・ティモンズ、ウェイン・ショーター、フレディ・ハバード、キース・ジャレットなどがメッセンジャーズ在籍をきっかけにスターになった。


他にも、第一線で活躍しているウィントン・マルサリス、ブランフォード・マルサリス、テレンス・ブランチャード、マルグリュー・ミラーなどがメッセンジャーズの出身である。

 


デンマークのミュージシャン、Blue Lake(ブルー・レイク)が野心的なアルバムを、ロンドンのTonal Unionから10月3日にリリースします。アルバム発売日を前にこの作品をいち早くご紹介します。


広範なビジョンを具現化するクリエイター、ジェイソン・ダンガンがバンドの集団的な化学反応を活かし、10曲の情熱的なトラックが力強い直接性で共鳴し、広大な世界との生態学的つながりを喚起する。


テキサス州ダラスで育ったダンガンは、その後長年移動を繰り返し、ヨーロッパとアメリカ合衆国で生活した後、デンマークの首都コペンハーゲンに深く惹かれ、現在もそこに居住しています。


この場所は、アストリッド・ソンネ、ML・ブッフ、クラリッサ・コネルリーなど、同時代の実験的アーティストたちにとって、近年注目される創造的な土壌として浮上している。この多岐にわたる地理的な経験は、ダンガンがアンビエント、アメリカーナを横断し、コスミッシュの要素をノルディック美学で融合させた独自の芸術的な声として台頭する上で、大きな意義を持つことでしょう。


ソロプロジェクト(ブルー・レイク)は、現在5枚目のアルバムをリリースしている。その名前とインスピレーションは、ドン・チェリーの1974年のライブアルバムから得たもので、ダンガンに創造的な啓示をもたらし、彼は非歌詞的な作曲の中に存在する感情的な可能性を引用し、自身の未開拓のサウンドの世界へと踏み出す道筋を築いた。


新たな理念を掲げ、直接的でシンプルな器楽音楽に深い感情を込めることを目指したジェイソンは、多様な音楽的要素を組み合わせ、高く評価されるアルバム『サン・アークス』(2023年)を生み出しました。このアルバムは「装飾的な、ツィターを主体とした格子模様」(ピッチフォーク、ベスト・ニュー・ミュージック)と評されています。

 

スウェーデンの森の中に建つ小屋の至福の孤立の中で生まれたこの音楽は、その時期の満開の春を彩るサウンドトラックとなりました。その後、『Sun Arcs』の孤独なアプローチとは対照的に、高く評価されたミニアルバム『Weft』(2025年)は、ブルー・レイクのサウンドをバンド指向のアプローチで表現する方向性を明確に示しました。


ジェイソンは、この頃までにバンドとの特別な集団的なエネルギーをライブパフォーマンスを通じて体験し、それを『The Animal』で活用し凝縮しようと試みました。これにより、彼は才能豊かな仲間たちと共に、伝統的なレコーディングスタジオ(The Village)とその無限の可能性を追求するプロジェクトへと進んだのです。

 

 『The Animal』は、その核心において人間の協力を鮮やかに讃え、コミュニティの意識と階層のないつながりに根ざしている。グループの創造的な錬金術は、共に演奏するミュージシャンを超え、より広い世界とその住む空間との包摂的、存在論的、生態学的なつながりを呼び起こします。アルバムは、ダンガンが説明する通り、人間を動物として捉えるアイデアを考察しています。


「私は、人間を動物の環境の一部として考えることに非常に興味を持っています。人間が『人間』という領域に分離された存在として、または階層的なピラミッドの頂点に立つ存在としてではなくて。つまり、『The Animal』は私や私たち自身なのであり、苔や雀や牛と同じように、ただ生きて、そこに存在しているのです」とダンガン。


ダンガンは完全にオープンな対話を歓迎し、そのプロセスはバンドの初期のリハーサルから始まり、彼のデモはダブルベース、チェロ、クラリネット、ヴィオラ、ドラムスを加えることで急速に進化し、洗練され、聴覚的に装飾された。


ジェイソンは録音プロセスにおいてより広範な深みを捉えることに焦点を当て、楽器の細かなニュアンスを分析し、自然界と都市界で展開される複雑で常に変化するバランスとダイナミクスを表現した。テーマもまた、「都市を動物や都市の生物として捉える」というアイデアを巡っています。コペンハーゲンの故郷について、その工業的な過去と半野生地域や海への近接性を挙げ、彼は重なるシナリオを説明します。「今や、それは不可能になりつつあると思います」

 

『The Animal』において、ダンガンは声を楽器として使用する手法を導入し、優雅なアルバムのオープニング曲『Circles』で聴かれるような歌のような特性を引き出す手段として活用しています。この曲では、グループが鳥のさえずりのように合唱のユニゾンで歌い、その声が周囲のサウンド環境の一部として響き渡ります。


バンドは演奏において際立ち、力強い存在感を示し、ダンガンのツィター奏法、土臭いギター、打楽器のパターンに豊かなアコースティックな伴奏を添えています。サウンドワールドは『Cut Paper』で明らかになるように、大胆で活気ある内容となっています。これは、現在定期的にミキシングで協力しているジェフ・ザイグラーが、新しいバンドのサウンドの豊かさを捉えているため。


ジェイソンはデンマークのプロデューサー、アスケ・ジドーレの協力を得て、新たな作業戦略への挑戦を促されました。この解放的な介入は、驚きと発見の要素を可能にした。ダンガンは中心を完全に支配せず、尊敬の念を抱きながら距離を保ち、ミュージシャンの即興的なパフォーマンスと即興に広い空間を与え、彼らの音楽的直感が魅惑的な全体的な同期を生み出すようにしています。 


ダンガンは、ドイツの首都ベルリンでのツアー滞在中に、豊かなツィターのリフと長いリバーブの余韻が、テキサスの起伏に富んだ丘陵地帯への広大な深夜の賛歌を織り成す映画的な『Berlin』を執筆しました。ジェイソンの親密で情感豊かな作風は、『Flowers for David』で感じられます。この心温まるフォーク調のトリビュート曲では、高揚感のあるフィンガーピッキングのギターが、友人の死への温かい別れのメッセージを伝えています。


アルバムは『Yarrow』で前進する勢いを増し、グループがメロディックに調和して進む中、カラフルな『Strand』では、高揚するソロと土臭い下地が、恍惚としたコメシクレシェンドへと突き進みます。タイトルトラック『The Animal』は、ドラムマシンが点線のような道を刻む中、情感豊かなホーンと、言葉のない癒しの大気的なボーカルが再び集う、短いメランコリックなバラード調の曲です。


To Read』に到達すると、ダンガンの探求は驚くべき明快さで凝縮され、グループが響き渡る和音で完全に一致する瞬間が訪れます。ダンガンにとって、音と空間で互いに絡み合ったまま、その瞬間の存在を捉える貴重な瞬間です。彼はこのように結論付けます。「私はいつも、音楽を通じて共有される、一瞬の儚さ、それから強い一体感を持つ瞬間に興味を抱いています」


『The Animal』は音楽的な変容の形態であり、依然としてアコースティックを中心に組み立てられながら、より作品として増幅され、新たな次元へと昇華されています。ブルー・レイク・プロジェクトは、ジェイソン・ダンガンとの普遍的なつながりに基づくコラボレーションを通じて新たな生命を吹き込まれました。それは彼の最も野心的なアルバムにおいて結実を果たしています。

 

 

Blue Lake  『The Animal』

 

 

Preview      ヨーロッパの視点から見た故郷テキサスへの賛歌

 

エレクトロニックの実験音楽からミニマルミュージックを中心とする前衛音楽、そして民族音楽まで幅広い実験音楽をリリースするロンドンのレーベル、Tonal Unionがこの秋新譜として送り出すのは、コペンハーゲンの作曲家/ツィター奏者のブルーレイクによるニューアルバム『The Animal』です。 


デンマーク/コペンハーゲンに在住するアーティストによる故郷アメリカ/テキサスへの賛歌ともいえ、ツィター(フォルテ・ピアノの原型。琴のように演奏する)、ダブルベース、クラリネット、ヴィオラ、ドラム等、ジャズからカントリーをくまなく駆使し、開放的なフォーク/カントリーミュージックを制作しています。インスト中心のアルバムですが、ツィターの音色がエキゾチックに響く。全般的にはヨーロッパのレンズから見たアメリカへの郷愁を意味するかのようです。

 

アルバムのオープニング「Circles」のイントロでは、オーケストラのティンパニのような奥行きのあるパーカッションのミュートの演奏から始まり、蛇腹楽器(コンサーティーナ/アコーディオン)、ツィター、弦楽器等の楽器が分散和音を描き、色彩的な音楽空間を生み出す。イージーリスニングのような響きがありますが、よく耳を澄ますと、様々な音楽が混在し、民族音楽音楽やフォーク音楽を融合した芳醇な響きが込められている。これらの色彩的にきらびやかな万華鏡のような世界は、ヨーロッパとアメリカの音楽を混在させながら発展していく。民族的な音楽の発露の後には、静かなシークエンスが登場し、ピアノとクラリネット、そしてツィターの演奏が和やかなムードをはなつ。その後、女性ボーカルのフォークミュージックに依拠した賛美歌のようなコーラスが登場し、音楽そのものは霊妙な感覚を持つようになる。様々な音楽文化が入り乱れながら、霊妙な出口へと音楽が向かっていく。それはアーティスト自身が様々な声や楽器を用いながら、故郷のアメリカへと精神的に近づいていくような感覚を授けてくれます。

 

二曲目「Cut Paper」ではフォーク/カントリーミュージックの色合いが強まる。 ナイロン弦を用いた繊細なアコースティックギターのアルペジオの演奏をもとにして、古き良きカントリーの世界へと誘います。この曲は、南部の広大な農場や畑のような田園風景を思い起こさせる空気感を、静かで落ち着いたフォーク/カントリーミュージックで体現している。音楽そのものが情景的な効果を持ち、聞き手は音楽を聴きながら自由な発想を膨らませることも不可能ではないでしょう。そして、それこそが、このアルバムの重要なポイントとなっているという気がします。


アコースティックギターとオクターヴの音程の関係でユニゾンを描くクラリネットの音色はふくよかな響きが含まれていて、聞き手の心を和ませる力を持っています。この曲はまた、次第に馬の疾駆の風景を象るかのように、軽快さを増していき、さらにリズミカルになっていきます。


インストゥルメンタル曲でありながら、聞かせどころがあり、ヴィオラのような楽器が伸びやかなパッセージを描き、風のように音楽が浮上する時、心が洗われるような感覚がもたらされる。フィドルのように響くヴィオラの華やかなイメージをパーカッションのシンバルが強調している。楽器の特性や音響性をしっかりと踏まえて、それらをうまく活かした一曲となっています。

 

続く「Berlin」は同じ調性を用い,同じような音楽のムードを引き継いでいますが、 より都会的な空気感が漂っています。この曲ではツィターのアルペジオを強調させ、異文化の混合という近代以降のベルリンという都市の気風のようなものを縁取っているように感じられます。この曲では、BGM(バックグラウンドミュージック)のような音楽的な手法を用い、家具の音楽としての爽やかなフォーク・ミュージックをアーティストの巧みな楽器の使用法により体現しています。音楽に耳を傾けていると、おのずと牧歌的な風景が目の裏に浮かんできそうになります。これらの印象的な音楽は、2分後半以降、ツィターと弦楽の演奏が中心となり、静謐なサイレンスに近い音楽へと近づく。曲の後半では、ツィターの演奏がエキゾチックに心地よく響き渡る。この曲は、どこまでも爽やかな音楽で、イージーリスニングに近い郷愁を持っています。

 

 

アルバムのハイライト曲「Flower For David」は、アコースティックギター、ツィターを中心に演奏され、カントリーの空気感に満ちている。ミニマル・ミュージックをヒントにした独創的なカントリーミュージックとも言えますが、その中にはやはり様々な文化や民俗が入り混じるように混在している。南欧の古学、あるいはイスラム圏の古楽の影響が折り重なり、これらの表層のヨーロッパ的なフォークミュージックを支えていると言える。しかし、この曲は現代的な音楽として出力されているのは間違いなく、それらがスタイリッシュな印象を及ぼすことがあります。

 

「Seeds」はこのアルバムの中でも風変わりな楽曲です。イントロでは、ダブル・ベース(ウッドベース)や弦楽器を中心とするレガート奏法の演奏を敷き詰めていますが、音楽的な印象はクラシックというより、ジャズ寄りです。エキゾチックなサウンドスケープの向こうから、爽やかなアコースティクギターの演奏が登場し、この曲はにわかにフォークミュージックの雰囲気が強まります。しかしまた、音楽そのものは単一に規定されることを忌避するかのように抽象性を増していき、ジャズのサウンドスケープの中で、ヨーロッパの民族音楽の響きを持つツィター、そしてアメリカのフォーク/カントリーミュージックの響きを持つアコースティックギターが色彩的に散りばめられ、カラフルで多彩な音楽性が強まります。 聞き手はきっと時代感覚を失ったかのような年代不明の魅惑的な音楽のワンダーランドへいざなわれることでしょう。

 

「Yarrow」において、ジェイソン・ダンガンはフォークミュージックの奥深い音楽世界を探求しています。舞踏的な要素の強い曲です。複数のギターを中心とする楽器で演奏されるアルペジオは時折、見事なほどきらびやかな音響を得ており、プロデュース的な側面においても、これらの滑らかな音響が見事に強調され、クリアな音像を獲得しています。しかし、このアルバムの中心的なテーマーー牧歌的な風景ーーが音楽で描写されているとはいえ、曲そのものは単調になることはなく、時折、ミステリアスな空気感が醸成されることがある。 全体的な四拍子のリズムの中で、曲の後半ではスラヴの民族音楽のようなイディオムも登場し、中央ヨーロッパの音楽性が強まる。アーティストの音楽的な感性がどのように完成されていったのかを垣間見ることが出来るかもしれません。「Strand」では同じように、民謡の音楽の形式が続きますが、前曲よりもアメリカーナの音楽性が色濃いように感じられます。一連の曲には、やはりアーティストの故郷への温かな思いが、爽やかな印象を持つフォーク音楽の中に滲み出ているようです。

 

もう一つの注目曲がアルバムの後半に収録されているタイトル曲「The Animal」となります。この曲では、ジャズの形式を通してフォークミュージックが展開されます。清流のせせらぎのように美しいアコースティックギターのような弦楽器の演奏を通して、伸びやかな印象を持つクラリネットのレガートがジャズ調の雰囲気を生み出すとともに、柔らかく安らいだ感覚を与えています。この曲に感じられるような温いエモーションを捉えられるかが、このアルバムを聴く際のポイントとなるかも知れません。 特に、アコースティックギターの演奏の聞かせどころがあり、1分20秒付近のギターソロは澄明で美しい感覚に縁取られています。これは今や現代的な工業化が進む中で失われつつある原初的な風景への憧憬が仄めかされているように思えます。

 

終盤の曲を聴けば、フォーク/カントリーミュージックが単なるボーカル音楽ではないことが理解してもらえるはずです。 ギターミュージックによる理想的なフォーク/カントリーを探求したのが「Vertical Hold」だとするなら、「To Read」はその音楽の郷愁的な印象を強調している。それぞれに異なる印象を持つ曲が多く収録されており、フォークミュージックの奥深い魅力を知るのに最適な一枚となる。また、『The Animal』は、BGMとしても聴くことが出来、ブルー・レイクの音楽性の片々には、リゾート的な安らいだ趣向も凝らされているように思えます。聴く場所を選ばず、気兼ねなく楽しめる音楽という点では家具の音楽の要素を多分にはらんでいるようです。聞き手の空間の雰囲気を尊重した珍しいタイプのカントリーアルバムとなっています。



*レビューは英国のレーベル、Tonal Unionから提供された音源をもとに掲載しました。(8月24日)

 

 

Pre-save: https://bfan.link/cut-paper

 

 

▪Reactions from various media outlets for ”Blue Lake”(各メディアからの反応)


・“Radiantly tranquil...braids together masterful precision and naturalistic experimentation(輝きに満ちた静けさ…卓越した精度と自然主義的な実験を巧みに融合させた)” -Pitchfork


・“Blue Lake weaves a scintillating sonic tapestry(ブルー・レイクは、きらめく音の織物を見事に作り出す)” - Paste Magazine


・"Irresistably radiant(抗いがたい輝き)" - Uncut


・"Dazzling(まばゆさ)" - The Guardian


・“A pastoral gem..painting a gorgeous vista of experimental Americana, country music for someone who is far from home(牧歌的な宝石…実験的なアメリカーナ音楽の壮麗な風景を描き出す、故郷から遠く離れた人に向けたカントリー音楽)” - Beats Per Minute


・“Gentility and grace.. lowered my blood pressure about 10 points(優美さと優雅さ…血圧を10ポイントほど下げてくれる)” - NPR All Song Considered


 


USポップシーンで最も大胆かつ独創的な歌声を持つシンガーソングライター、Madeline(マデリン)のニューシングル「Happy as Hell」を今週最後にご紹介致します。


マデリンは、ポップミュージック界で最も大胆で独創的なボーカリストのひとりとして急浮上しています。マデリンは、人生、死、メンタルヘルスといった重いテーマを扱った、主流から外れた歌詞のポップナンバーを創作する。機知に富んだ歌詞と演劇的なステージパフォーマンスを駆使し、音楽、ダンス、パフォーマンスアートを融合させた独自のスタイルで観客を魅了しています。そのスタイルは、まさに「キャットウォーク」と「キャバレー」を融合させたかのよう。

 

現代のヒットシンガーはその多くがSNSから登場することが多いですが、その例に違わず、マデリンの音楽は最初にオンラインで共感を呼びました。インスタグラムとティックトックで複数のバズる瞬間を生み出し、月間約50万人のリスナーからなる熱心なファン層を獲得しています。


特筆すべきは、バイリンガルのダブルシングル「dopamine」が1500万回以上のストリーミングを記録し、ダンスポップアンセム「I’m Only Here for the Beat」がビルボードのダンス/ミックスショーエアプレイチャートで1位を獲得している。


リリー・アレン、マリーナ、テイラー・スウィフトにアシュニコの要素を加えたような存在と形容されるマデリンは、ポップ音楽に新鮮で楽しいエネルギーをもたらし、ライブパフォーマンスを忘れがたくしている。


魅力的で大胆なニューシングル「Happy as Hell」について、アーティストは次のように説明してくれています。

 

「このシングルは、人生で取り残されているような感覚について歌っている。このアンセム的な曲は、映画のようなストリングスのサウンドが特徴であり、私が「シアターポップ」と呼ぶ新しい時代を先導する作品です。''Happy as Hell''は、アーサー・ベスナ(Nessa Barrett、Lay Banks)とジョン・ブセマ(Sophie Truax)がプロデュースしてくれた」 


マデリンは、月間50万人以上のリスナー、2,000万回以上のストリーミング再生、40万人以上という驚異的なフォロワーを誇っている。アーティストは最近、Em Beihold と Sub Urban のツアーに参加し、Cat Con 2025 でフィーチャーされたパフォーマーです。シングル「I’m Only Here for the Beat」は、ビルボードのダンス/ミックスショーエアプレイチャートで1位を獲得しました。今後ブレイクの可能性のあるシンガーです。早耳のリスナーはぜひ押さえておきたいところです。

 

 

「Happy As Hell」



Madelline is on the rise as one of pop's most daring and original voices. Crafting left-of-center lyrical bops that tackle heavy topics like life, death, and mental health, Madelline uses her witty lyricism and theatrical stage presence to captivate audiences with her blend of music, dance, and performance art - as much ‘catwalk’ as it is ‘cabaret’.

 

Her music has struck a chord online, leading to several viral moments across Instagram and TikTok, and earning her a dedicated following of nearly half a million monthly listeners. Most notably, her bilingual double-single "dopamine" has amassed over 15 million streams, while her dance pop anthem "I’m Only Here for the Beat" topped Billboard's Dance/Mix Show Airplay chart at #1. Described as the love child of Lily Allen, Marina, Taylor Swift, with a spoonful of Ashnikko, Madelline brings a fresh, fun energy to pop that makes her live performances unforgettable.


Her new single “Happy as Hell” is a riveting and bold release. She shares, "The single is about feeling like you’re falling behind in life. This anthemic song has cinematic strings and ushers in my new era of what I call “Theatrical Pop”. “Happy as Hell” is produced by Arthur Besna (Nessa Barrett, Lay Banks) & Jon Buscema (Sophie Truax)."

 

 




Weekly Music Feature:  TOPS



TOPS —デビッド・キャリエール、ジェーン・ペニー、マルタ・チコジェビッチ、ライリー・フレック — は、即効性と深みを融合させた時代を超越した音楽を率先的に創作している。


2020年以来初のフルアルバムであり、新レーベル・ゴーストリー・インターナショナルからリリースされる『Bury the Key』は、カナダ・モントリオール出身のバンドにとって魅力的な再始動作です。彼らは秀逸なメロディメイカーとして確固たる地位を築きつつも、常に変化や進化を恐れないで、時には暗く重いトーンに挑戦する姿勢を示している。世界のミュージックシーンは刻一刻と移り変わりつつあるが、TOPSもまたそれらの流れに与する。「TOPSは常に同じ本質を持っていますが、世界は新しい時代に差し掛かっている。私たちは、この運動の一部であると感じています」シンガーのジェーン・ペニーは述べている。また、フラット化された概念に対する反感を隠そうともしない。「今日の美学の均質化にうんざりしている」と彼女は付け加えているTOPSとはつまり、個性的な音楽とはなにかを率先して追求するプロジェクトなのだろう。


『Bury the Key』は封印されていた感情に向き合い、幸福、享楽主義、自己破壊の間の相互作用を描いている。架空のキャラクターが頻繁に登場するものの、彼らの輝きとグルーヴに満ちたセルフプロデュースの曲は、個人的な観察からインスパイアされている。バンド内外での親密さ、毒のある行動、薬物使用、そして終末的な恐怖がライトでポップなサウンドに織り込まれている。


レコーディングが始まった際、彼らはその変化に内心気づき、冗談交じりに「evil TOPS」と名付けたとペニーは振り返っている。「私たちはいつもソフトなバンドや、カナダらしい純真で親しみやすいバンドと見なされてきましたが、周囲の世界を真摯に表現するべく挑戦しました」それらの迫りくる時代と年齢に応じた明晰さを通じて、TOPSは『Bury the Key』でより陰湿なディスコの世界に浸り、ソフトフォーカスのソフィスティポップに鋭いエッジを加えています。


2010年代初頭、モントリオールのDIYシーンからインディ・ポップの先駆者として登場し、その影響は今なお現代の音楽シーンに轟く。TOPSの長期にわたる成功の秘訣はシンプル。曲作りを正直でオープンにし、レコーディングを自然体ながら完璧に仕上げ、バンドのダイナミクスをあらゆるレベルで深く調和させることである。彼らの曲は人生の輪郭を描き出し、5枚のアルバム、数多くのツアー、様々なサイドプロジェクトを経て、TOPSはその才能に磨きをかけて来た。


TOPSのヴォーカル、ソングライター、プロデューサー、フルート奏者、シンガーとして幅広い役目をこなすジェーン・ペニー。彼女の静かでささやくようなボーカルは、広範な表現力を持ち、Men I TrustからClairoまで現代のアーティストに影響を与え続けている。彼女の歌詞のテーマは時代を超えた普遍性を擁する。権力のダイナミクス、欲望、認められるための闘い、愛が報われるか否かなど、人間の普遍的な主題に及んでいる。2024年にモントリオールに戻り、初のソロ作品をリリースしたペニーは、過去の自分自身の街に戻り、一歩成長した姿で戻ってきた。


彼女の曲に描かれる洗練された車と永遠のハイウェイは、リズムの相棒デビッド・キャリエールと共に書かれた『Bury the Key』でさらに深化している。キャリエールは、ハイシェーンなフックと絶え間ないドライブ感を特徴とするソングライター、プロデューサー、ギタリストとして、音色とテクスチャーのトリックをさらに魅惑的に拡充している。そしてドラマーのライリー・フレックは、バンドの心臓部として活動し、他者のプロジェクト(最近ではジェシカ・プラットのライブバンド)でも活躍する彼は、より高いテンポとハードなリズムに挑戦している。


2017年にTOPSに加入し、2022年にキャリアーがプロデュースしたデビュー作『Marci』でブレイクしたキーボード奏者のマルタ・チコジェビッチも役割を拡大した。作曲プロセスに参加し、ペニーのボーカルラインの一部をバックアップし、アルバムで最も豊かで満足感のあるパートを演出している。TOPSはポップミュージックの洗練度において高いレベルに達しながらも、惜しいことに、そのレガシーはほとんど記録されていないままになっている。彼らは世界中をツアーして回り、主要なフェスティバルから最も小規模なライブハウスまでくまなく回り、床で寝泊まりし、ツアー管理を自ら行ってきた年月を経て、苦労の末に成功を築いて来たのだった。


仕事に対する倫理観だけでなく、相性や好みも重要な要素となった。どのアーティストの曲が流れているかといえば、フリートウッド・マックやスティーリー・ダンといった予想通りの名前も挙がる。さらに深く掘り下げると、チャイナ・クライシス、プレファブ・スプラウト、フランソワ・ハーディ、ミッシング・パーソンズ、エヴリシング・バット・ザ・ガールといったアーティストたちがプレイリストを独占している。これらのすばらしいアーティストから学んだ輝きとスリル、甘くも陰鬱な楽曲への本能が、バンドを『Bury the Key』へと導いていった。特にフランソワ・ハーディをメインとするフレンチポップからの影響が相当大きかったという。


「私は特にフランソワーズ・ハーディを考えて、Bury the Keyのために歌いました。なぜなら、彼女は同時に感情と思考のバランスを取れる女性だとわかったから。私は彼女の歌のこのような甘いグルーヴも大好き。私たちは、彼女がスタジオでとても楽しかったと感じている」と彼女は言います。ジェーン・ペニーの声の拡散した官能性は、レコードが浸る感情の複雑さを結晶化させる。「異なる要素を混ぜ合わせることを一緒にイメージするというわけではありませんが、うまくいってしまう。TOPSのブランドみたいなものです」とミュージシャンは言います。


作曲は2023 年の冬に始まった。ペニーとキャリエールはまずデモ制作に取り組み、その夏、バンドのPlaza Hubert  Studioでゆるくコラボレーション的なセッションを重ねつつ、デモソングを完成させていった。


「モントリオールで一番好きな場所です。ミュージックビデオを作るのに必要なものもすべて揃っているからです」と彼女は言います。そして、レコードの音楽的影響がある。少しハードコア、少しプログレ、常にポップ、常にトップス。「これらはアルバムの暗いテーマにマッチしています」


「さらに様々な人物像が形作られていった。シンセサイザー主体の「Wheels At Night」では、ペニーは当初、未亡人のキャラクター(「ここにはあなたの服と私の服しか残っていない」)を想像していたが、やがてより普遍的な喪失感へと展開し、最終的に自分自身と孤独の苦悩に向き合う別れの歌となった。


キャリエールのギターラインがブリッジで輝き、ナレーターは孤独な道で夢見るように去っていく。「ICU2」は、ペニーとチコジェビッチの遊び心あふれるやり取りから生まれたクラシックなアップテンポのTOPSらしい曲。しかし、グルーヴの下には、隠れんぼのようなクラブシーンが鏡の迷宮を暗示している。「半ば犯罪のような、幻想的な、暗闇の中で何かを探しているところを捕まったような感じ」とペニーは述べ、1969年の『ミッドナイト・カウボーイ』のパーティーシーンのアーティスティックなサイケデリックを引用しているという。


『Bury the Key』の影は、アルバムが進むにつれて、ますます鮮明になっていく。中盤に差し掛かる「Annihilation」はバンドの転機となる曲と紹介されている。この曲は非伝統的なアプローチから生まれた。フレックはドラムから曲を作成する挑戦を受け、バンドが構築する基盤となる速いハイハット、フィル、そして、4ビートを特徴としたリズムフィールドを生み出していった。坂本龍一、シネイド・オコナーの死後間もなく書かれたこの曲は、徐々に消え去りつつある文化的な神話へのオマージュになっている(「すべての偉大な男と女は死ぬ、友よ!!」)


「Falling On My Sword」は、キャリエールのハードコア音楽への興味をアレンジの観点から反映している。「最終的には私たちのスタイルで演奏した」と彼は言います。「私たちは常に、変化や再発明のアイデアに反対してきた」とペニーは言います。「しかし、私たちはサウンドの限界を押し広げ、これまで作ってきたものとは異なるものを試したかった。少しハードな方向へ進みたかった」


中心となるのは「Chlorine」と銘打たれた空虚な愛のバラード。毒素、化学物質に満ちたウォーターパークの懐かしさ、不健康なバーの夜の安らぎを交差させる。「成長過程での感情の幅、私たちが経験する事柄、自分を満たすような方法が私たち自身を破壊する要因にもなるかもしれない」とペニーは説明する。この概念の重みは、『Bury the Key』という多面的な作品全体に滲み出ている。最新作では、痛みと快楽に根ざした、生きることの複雑な喜び、あるいは、私達の時代の最高峰のバンドとしての存在感が、粗削りな素材から磨き上げられて完成へと繋がった。


TOPSはGhostly Internationalと契約を交わした。アメリカのレーベルから作品をリリースすることは、バンドメンバーのスピリットをモントリオールに近づけることになった。TOPSがニューヨークのレーベルに参加し、キーボードのマルタ・チコジェビッチとドラムのライリー・フレックが現在ロサンゼルスを拠点にしている。しかし、その本質は依然としてモントリオールに根付いている。


「私たちは両都市間で協力して作業を続けています。デイビッドと私はモントリオールで役割を引き継いでいますが、それは彼らの強い芸術的アイデンティティを損なうものではありません」ベルリンとロサンゼルスで生活した後モントリオールに戻ってきたペニーは強調します。「毎回戻ってくるたびに、ようやく家に帰ったような感覚でした。これは深く感じていることです」


近年のモントリオールの開放的な都市性、そして先進的な気風には模範的なものがある。モントリオールは、経済主義による均一化から逃れられた数少ない本物の国際都市である。おそらく、全体主義や排他主義の閉鎖性とは無縁の場所なのだ。ペニーによると、モントリオールは「何にでもなれる場所で、特に音楽を作るには最適な場所」だという。「この秘密は誰もが知っている」と彼女は言うほど。ジェーン・ペニーはモントリオールの文化の独自性を強調する。


「ベルリン、ニューヨーク、ロサンゼルス、パリでは、既に都市そのものが明確に定義されてしまい、既存のシステムに支配されています。一方、モントリオールでは、やりたいことを自由に想像したり、以前存在しなかった新しいものを創造できる」と彼女は指摘する。新しいものが制作できるのは''都市そのものが定義されていない''からだと言う。そしてベテランのミュージシャンにとって、これがモントリオールという都市が世界的に輝やかしく見える理由なのだろう。


TOPSの特色は、どの都市に住んでいようとも常にモントリオールのバンドなのであり、TOPSはTOPS以外の何者でもないということです。メンバーが境界を押し広げ、新たな世界へ挑戦しようともその本質は変わらない。


「実際、私たちは何でもできると気づきました。私の声、ライリーのドラム、デイビッドのギター、マルタのキーボード。何をやっても、それは私たちらしく響く」とジェーン・ペニーは断言している。そして次のようにこのアルバムを結論付けている。 「結局、すでに作ったアルバムを再現しようとしないで、他の場所を探索する方が私たちにとってずっと楽しいことだった」

 


TOPS 『Bury the Key』-Ghostly International  



~ソフィスティポップの次世代を象徴する作品が登場~


トップスは”最も優れたインディーポップバンド"としての称号をほしいままにしてきた存在である。しかし、このアルバム全体を聴くとわかる通り、フラットな作品を作ろうというような生半可な姿勢を反映するものではない。この点において、2012年頃から彼らはコアな音楽ファンからの支持を獲得してきたが、音楽性を半ば曲解されてきた部分もあったのではないだろうか。


トップスの曲は、大衆が親しみやすいように設計されていて、どこまでも聴きやすく軽やかなのは確かだが、その反面、ジェーン・ペニーのファニーなボーカルの印象とは対象的に、強い重力のようなものが基底に存在することに驚く。彼らの音楽は、飲み口の軽いカクテルのような味わいがある。しかし、その味には深さがあり、何重もの層のようなもので覆われている。そして本作に関しても、一度聴いただけではわからない何かがある。よくわからない部分が残されているからこそ、二度、三度と続けて聴きたくなるような魅力が内在しているのだろう。

 

『Bury the Key』はソフィスティポップ(AOR/ソフトロック)を中心に構成され、そしてヨットロックの音楽性も盛り込まれている。 しかし、実際の音楽は表向きの印象とは対照的に軽いわけではない。ギター、ベース、ドラム、フルート、シンセの器楽的なアンサンブルは、無駄な音が一切鳴らず、研ぎ澄まされている。メロディーの良さが取り上げられることが多いが、TOPSのアンサンブルは、EW&F(アースウィンド&ファイア)に匹敵するものがあり、グルーヴやリズムでも、複数の楽器やボーカルが連鎖的な役割を担い、演奏において高い連携が取れている。


TOPSのサウンドは、Tears For Fears、Freetwood Macといった、70、80年代のサウンドを如実に反映させているが、実際的なサウンドはどこまでもモダンな雰囲気が漂い、スウェーデンのLittle Dragonに近い。表向きに現れるのは、ライトな印象を持つポップソングであるが、ディスコ、アフロソウル、R&B、ファンク等、様々な要素が紛れ込み、それらの広範さがTOPSの音楽に奥行きをもたらしている。これが、音楽に説得力をもたせている要因ではないか。しかし、それらのミュージシャンとしての試行錯誤や労苦をほとんど感じさせないのが、このアルバムの凄さといえるのだ。

 

TOPSの曲が魅力的に聴こえる理由はなぜなのか。それは音楽そのものが平坦にならず、セクションごとの楽器の演奏の意図が明確だからである。さらにヴァースやコーラスの構成のつなぎ目のような細部でも一切手を抜かないでやり抜くということに尽きる。


オープニング曲「Stars Comes After You」は、表面的なイメージよりも奥深い内容である。チルアウトやヨットロックの範疇にあるムード感のあるイントロで始まり、以降は、80年代のディスコサウンドへと移行していく。まるで時代を遡るかのようなワクワクした感覚が、アルバムの中にある音楽的な空間を押し広げる。曲のメロディだけで構成を作らず、全体的なリズムや楽器のアンサンブルと連動しながら、構成が推移していく。これぞベテランの領域のサウンドの運び。この点に最高の敬意を表したい。


そして、曲の展開に合わせて、ドラムやシンセ、ギターが入ったりというように、音楽の持つ風通しを重視している。全体的なアンサンブルがメインボーカルを引き立てているのは事実だが、ペニーのメインボーカルですら、全体的なアンサンブルの一貫としての役割を担っている。どの楽器も、いうまでもなく声ですらも、均等な力学を持ち、それぞれが全体のバンドサウンドに等しく引力を及ぼす。だから、どのパートもソリストのように不自然に前に出過ぎるということがない。要するに、四人のメンバーが演奏したり、歌ったりしながら均衡の取れたサウンドを構築していく。表面的なポップサウンドの奥底には、セルジオ・メンデスのようなボサ・ノヴァ、ラウンジ、ラテンの音楽が滲み出てくる。実に多彩な音楽的な知識が内包されている。

 

TOPSの新機軸が早くも2曲目「Wheels At Night」で示される。イントロのバッキングギターをベースラインに重ね、その上にシンセをリズミカルに重ね、二拍目を強調する裏拍の軽快なリズムのセクションを作り出す。その上に、主旋律を担うメインボーカルが乗せられる。ボーカルに目が行きがちだが、土台となる楽器のアンサンブルが盤石だからこそ、ボーカルの旋律の良さが引き立てられる。そして最終的に導き出されるのは、ファビアーノ・パラディーノのサウンドを想起させる、80年代のソフトロックやソウルを反映させた軽やかなポップロックである。


この多彩なサウンドの中には、シンディ・ローパーのような80年代の偉大なボーカリストからのフィードバックも感じられる。少なくとも、「産業的なポピュラーソング」として長らく軽視されてきたサウンドが、非常に見事な形で現代に蘇っている。そして、TOPSとしてのサウンドのトッピングが、ボーカルの間に入るシンセサイザーの華やかなカウンターポイントである。これらのサウンドは、最終的にカラフルな印象をもつ劇的なポップソングに昇華されている。


 

 「Wheels At Night」

 


TOPSのファンクバンドとしての性質が「ICU2」において示されている。この曲のイントロは、リズムとして聞きいらせるものがある。シンセとベースを連動させ、同じように裏拍を強調する軽快なリズムを作り出し、そして、バンドメンバーのコーラスがハーモニーを程よく強調する。メインボーカルはスキャットを用い、器楽的な効果を強調する。すると、アースウィンド&ファイヤのような巧みなファンクサウンドが出現し、曲が面白いようにスムーズに転がっていく。


ベタなように思えるコーラス(サビ)の箇所もまたドラムやシンセといった楽器がたちどころに出現し、ジャズのコールアンドレスポンスのような形式を駆使して、主旋律が自由自在に変遷していく。こういった主旋律が変化する自由性が曲に聴きごたえをもたらしている。さらに、サブボーカルとしてのコーラスワークがこの曲に楽しげな雰囲気を与えている。”i see you do,i see"といったフレーズですら、リズムの側面でポリフォニックな影響を及ぼすための作用を担っている。この曲はメロディーとリズムの両側面において絶妙なバランス感覚が保たれている。

 

「Outstanding In The Rain」は表側からは想像しづらいTOPSのソウルミュージックの影響が最も色濃くなる瞬間です。ジェニー・ペニーの演奏するフルートは、アフロソウルのテイストを曲にもたらす。イントロの後、ディスコ風の曲に移ろい変わり、この曲はダンス・ミュージックの性質が強まる。前曲と同様、シンセとベース、ギターは70年代~80年代のファンクグループのサウンドに近く、巧みなアンサンブルを披露している。そして、複数の楽器のアンサンブルからバロックポップなどで頻繁に登場するチェンバロの音色がはっきりと浮かび上がる。


この曲には、歌手のジェーン・ペニーが述べているように、フランソワ・ハーディからの影響が見え隠れしています。ボーカル全般の旋律は、曲のセクションと連動しながら、華やかになったり、静かになったりする。最も華やかになる瞬間にはシンセサイザーと重なり合うように、豊かなハーモニーが生み出される。その中には、YMOのようなエレクトロポップのアジアンテイストが散りばめられることも。この曲も多彩な音楽性から成立していてすごい。アウトロでは、イントロと呼応するように、アフロソウル風のフルートで締めくくられている。

 

 

「Annihiration」はYMOに捧げられている。シンセサイザーをベースにしたエレクトロ・ポップであるが、依然としてメインボーカルとその間に呼応するサブボーカルは清涼感に満ちている。例えば、YMOのサウンドは近未来的な雰囲気やSFの空気感があり、それらがマイケル・ジャクソンのようなミュージシャンを魅了した要因だったと思われる。また、同時にファンクやソウルからの影響も見過ごせません。


これらのTOPSの再現力には目を瞠るものがあるが、同時にウィスパーボイスに近いボーカル、ソウルではお馴染みのコーラスワーク、軽妙なカッティングギターなど、多彩な要素が混在するようにして、TOPSの曲は成立している。さらにこの曲は、セクションごとに移調を重ね、リズミカルな効果と色彩的な和音をバランス良く並立させている。こういった古典的なスタイルの曲もTOPSの手にかかるや否や、モダンなイメージを持つポップソングに変貌してしまう。お見事。

 

アルバムの中核を担う「Falling On My Sword」は、スパイスとエッジの効いた曲として心を楽しませてくれる。パンキッシュなテイストをギターで表現し、従来のTOPSの軽やかなポップワールドを体現している。エッジの効いた音楽、そして、それとは対象的な夢想的な感覚に浸されたこの曲は、このアルバムの重力ーーヘヴィネスーーを明らかに象徴づけている。表向きのTOPSの軽さに隠された''ヘヴィネス''の側面を体感するのにうってつけの一曲ではないだろうか。


しかし、それと同時に、このグループらしいメロディセンスの妙も重要な核心を形成している。例えば、一分前後のボーカルライン、ギター、ドラムの兼ね合いには、近未来的なロックの要素すら織り込まれている。


また、ヘヴィ・メタルバンドのようなテンポの流動性も魅力である。1分10秒頃には、テンポを極端に落として、このアルバムの急進的な側面を表すヘヴィネスが体現される。すると、通奏低音を担うベースラインが浮かび上がってくる。


これらのバンドサウンドとしての押し引きや抜き差しの部分は、このバンド以外ではなかなか体感出来ないものではないかと思う。その後、一分半過ぎになると、急速に音楽そのものが重力を増し、ラウドなギターが全体の印象を占める。徐々にテンポを小節ごとに早めていき、楽器やボーカルの印象を強めたり弱めたりしながら、見事な構成を組み上げる。そして、音楽そのものがメロディアスになる。ここにきっと、TOPSの真骨頂を捉えることが出来るはずだ。

 

その一方、聴きやすく軽やかな7曲目「Call You Back」が併置され、見事なコントラストを形成している。シティ・ポップのような懐かしさと輝きに満ちたこの曲は、TOPSらしい少し可愛らしい感覚に満ちたポップネスを体現している。


この曲では、”I don't wanna call back”というコーラスの箇所が他の曲よりもクリアに浮かび上がり、華やかなディスコサウンドの渦中にあって、きらびやかな印象を放っている。このような曲はミラーボールディスコ全盛期の時代のバブリーな感覚、それとは対象的な内省的な感覚を織り交ぜたエモーショナルなポップソング。メインボーカルを縁取るギターの演奏も聴きどころで、全体のシンセサイザーのアトモスフェリックなシーケンスと融和している。これらのサウンドが渾然一体となり、夢想的なドリーム・ポップ風の見事なトラックが出来上がっている。

 

80年代のAOR/ソフトロックに最も傾倒した「Chlorine」も聴き逃がせません。アトモスフェリックなイントロから、ゆったりしたテンポ感覚を持つ横乗りのダンサンブルなディスコポップサウンドへ変遷していく。 ボーカルは主体的なウィスパーボイスに対して、華やかな印象を持つソプラノのビブラートが優勢になり、弦楽器のような音響的な効果を曲全体に及ぼしている。メインボーカルの印象は、チャカ・カーンやシンディ・ローパーに近くなる。音楽的には、MJ、ダニー・ハサウェイ、ホイットニー・ヒューストンのサウンドがベースになっていて、それらの80年代の商業音楽に存在した漠然とした未来への期待感が秀逸なポップサウンドに乗り移っている。ノスタルジアも漂うが、現代的な感覚から見た未来への期待感が描かれています。


この曲では起伏のある展開が重視され、休符を設け、ボーカルの主旋律を浮き立たせたり、ドラムの演奏が強まると、ダイナミックな迫力を増したりと、様々な演奏面での工夫が凝らされている。細部まで手を抜かず丹念に作り込もうという姿勢がバラードに依拠した良質なポップソングを作り出す要因になった。ドラムはパーカッシブな効果だけで、曲全体を司令塔のように司る。

 

「Your Ride」のような曲もまた、TOPSがブルーアイドソウルだけにとどまらず、本格派のブラックミュージックに親しんできたことを伺わせる。アーバンコンテンポラリー/ブラックコンテンポラリーのような80年代のソウルミュージックがお好きな音楽ファンに推薦したい楽曲です。軽やかなポップソングとして出力されることは変わりないけれど、やはり、こういった副次的な音楽の影響が、彼らの曲に深さや奥行きをもたらしている。これは、TOPSのメンバーが、結果ではなく、過程を一番に重視しているからこそ起こり得たことかもしれない。


さて、終盤のハイライトは、「Standing at the Edge of Fire」で訪れます。曲名は、YYY’S、Cheap Trickのようだが、実際の曲はAORとブラック・コンテンポラリーに属する。イントロのボーカルは、EW&Fの「Boggie Wonderland」のような乗りの良いダンサンブルなな効果を与える。こういったポップソングでは、''お約束''ともいうべきボーカルのフレーズが登場します。その後、この曲は、ミドルテンポの軽やかな雰囲気に満ちたディスコポップへと変遷していく。そして、その中に現れるシティポップのように切ないメロディを織り込んだセンチメンタルな音楽性が最高の聞き所となるはずです。曲の後半では、ゆったりとしたライブセッションのような感じに近づいて、ギター、シンセ、ドラムを中心としたヨットロックサウンドへと傾倒していく。

 

TOPSは、サブポップがリリースしたMurgo Guryan(マーゴ・ガーヤン)のコンピレーションアルバムに参加していた。カバーの影響が色濃く出たのが、アルバムの最後を飾る「Paper House」でしょう。TOPSらしいサウンドがフレンチポップと結びつき、最終的に魅惑的ですばらしいバロックポップとして昇華されています。上記のサウンドではお馴染みのチェンバロの音色が登場し、それらが聴きやすいポップソングに昇華されている。しかしながら、それは必ずしも懐古的なサウンドだともかぎらない。この最終曲にはTOPSらしい先進的な気風が盛り込まれている。モントリオールの開放的な感覚に満ちた国際都市の香りが漂っている気がします。


『Bury the Key』のサウンドの背景には、セントローレンス川のような風通しの良さがしたたかに織り込まれている。2020年代中盤のヨットロックやディスコポップの隆盛や流行を象徴づける劇的なアルバムが登場しました。

 

 

 

 

 90/100 

 

 

 

「Annihilation」 

 

 

 

▪TOPSのニューアルバム『Bury the Key』はGhostly Internatinalから本日(8/22)発売済み。ストリーミング等はこちらより。