ラベル Electronic の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Electronic の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

 

©︎Luca Bailey

ロンドンを拠点に活動する大森日向子が、次作アルバム『stillness, softness...』からニューアルバム「ember」をリリースしました。「foundation」「in full bloom」「cyanotype memories」に続く新曲。ぜひ下記よりチェックしてみてください。


「”ember"の背景にあるアイデアは、過去への執着が状況の認識を曇らせることに気づくこと、そして、自分自身と他者とのより健康的で思いやりのある関係を築くために、自分自身に課しているこれらの障壁を打ち破ることの重要性についてです」と大森はプレスリリースで説明しています。


『stillness,softness...』は、『2022's a journey...』の続編で、10月27日にHoundstoothからリリースされる。



 

イギリス人プロデューサー、ダレン・カニンガムが次作アルバムのリリースの詳細を明らかにした。『LXXXVIII』は11月3日にニンジャ・チューンからリリースされる。2020年の『Karma & Desire』に続くアルバムには、最近のシングル「Push Power ( a 1 )」が収録される。
 
 
新曲「Game Over ( e 1 )」が本日公開された。アルバムのジャケット・アートワークとトラックリストとともに、以下でチェックしてほしい。
 

プレスリリースによると、Actressのニューアルバムの主なインスピレーションの源はゲーム理論であり、「チェスは、アーティストのスタジオでの物質的相互作用の正確な身体性を反映するだけでなく、LXXXVIIIの創作を仲介した複雑で戦術的、内面的で美的な戦いをも示している」
 
 
 
 
 

ACTRESS 『LXXXVIII』

 

Label: Ninja Tune

Release: 2023/11/3


Tracklist:

 
1. Push Power ( a 1 )


2. Hit That Spdiff ( b 8 )


3. Azd Rain ( g 1 )


4. Memory Haze ( c 1 )


5. Game Over ( e 1 )


6. Typewriter World ( c 8 )
7

. Its me ( g 8 )


8. Chill ( h 2 )


9. Green Blue Amnesia Magic Haze ( d 7 )


10. Oway ( f 7 )


11. M2 ( f 8 )


12. Azifiziks ( d 8 )


13. Pluto ( a 2 )


 James Blake 『Playing Robots Into Heaven』

 


Label: UMG/ Polydor

Release: 2023/9/8



Review


2011年の『James Blake』にて一躍、UKのネオソウル界の寵児として注目を浴びるようになり、『Overgrown』では、ブライアン・イーノ、RZAが参加。自身も、ビヨンセの作品に関わるなど、大物ミュージシャンとの共同制作の経験の豊富な経験を持つジェイムス・ブレイクの最新アルバムをご紹介します。このアルバムで、ブレイクは、制作のルーツであるクラブ・ミュージックに根ざした音楽に取り組もうとしたということである。ヒップホップやポップ、ハウス、ネオ・ソウルを絡め、UKポップの進化系を顕示した『Friends That Break Your Heart』の頃に比べると、音楽性が大きく変化したことは、耳のさといリスナーであればお気づきになられるだろう。

 

ただ、その手法論は、デビュー当時と大きく異なるとは言え、かつてブレイクが語っていた「ソウル・レコードの温かみ」を、デジタルの指向性が強いレコーディング制作のプロセスを介して体現させるという面では、従来のジェイムス・ブレイクの考えに変更は見られない。考え方によっては、『Friends That Break Your Heart』で、行き詰まりをみせたポップス/ヒップホップの側面を、アシッド・ハウスの側面から見直した、あるいは捉え直したような作風である。

 

オープナー「Asking To Break」では、その考えの一端を掴むことが出来る。ピッチシフターでボーカルのトーンを変え、アシッド・ハウスの最深部に降りていくジェイムス・ブレイクではあるが、彼が幼少期から学んでいるピアノや、落ち着いたビート、そしてネオソウルの影響を留めた、しっとりとしたボーカルのフレーズ、こういったミニマルな要素を融合させることで、それらの化学反応として、ソウルミュージックの温かみを引き出そうとしている。音の耳障りはソフトだが、彼はそのなかに古典的なR&Bに見受けられる深みをもたらそうと試みている。

 

#2「Loading」では、彼のUKのクラブ・ミュージックの原点へと回帰を果たしている。若い時代に、ブレイクはロンドンのベースメントのフロアの音楽に親しみ、その中でUKガラージ、ベースライン、ダブステップを始め様々なクラブ音楽に触れたというが、そのリアルなフロアの音をこのトラックで再現しようとしている。これは、パンデミック時代を過ぎて、リアルな空間で真価を発揮する音楽を制作しておきたかったという制作者の意図を読み解くことが出来る。しかし、ベースラインやビートは、ハウスの基本的なスタイルを踏襲しているが、それと対比的に導入される中盤部のボーカル部分は、やはり、近年のアヴァン・ポップやネオ・ソウルの音楽性に根ざしている。そして、この曲では実験的な作風に取り組み、エレクトロニックの要素、インダストリアル・ノイズ等の音楽性を積極的に付加している点に驚きを覚える。ジェイムス・ブレイクは、自らの作風が固定化し、陳腐になることを忌避し、『Friends That Break Your Heart』で定まったポップスのスタイルを自己破壊し、新しい音楽として再構築しようとしている。


#3「Tell Me」でも、ジェイムス・ブレイクのエレクトロニックへの偏愛が余すところなく表現されている。アナログのモデリング・シンセをフル活用し、UKのベースメント・フロアの熱狂性を呼び覚まそうとしている。ノイズに関しては耳障りが良いとは言えないが、近年ブレイクが遠ざけていた印象もあるロックに接近していることに気がつく。元来、制作者は、シンセの演奏家として活躍してきた経緯があるが、実際、ブレイクのシンセの演奏に対する熱狂を読み取ることが出来る。しかし、曲の序盤のハウスに近い音楽性は2分半頃、いきなり途切れ、ダウン・テンポ風の静謐なサウンド・スケープに様変わりする。この意外な展開力は、UKのベースメントのフロアの熱狂から、それとは真逆の静寂に移行する瞬間を留めている。しかし、その後も展開は定まらず、疾走感のあるハウスが続き、ブレイクのボーカルが加わる。このトラックは、音源として終始する音楽ではなく、ライブ空間で映えるアグレッシヴなクラブ音楽を志向し、さらにライブ・ステージで披露することを前提として制作されたと推測出来る。後半では、アシッド・ハウス的な怪しげな雰囲気を帯び、リスナーを熱狂の中に呼び込もうとする。

 

#4「Fall Back」では、Burialのデビュー・アルバムのダブ・ステップからの影響を交え、ミニマルなダンス・ミュージックへと挑戦している。リズムこそダブ・ステップに属するが、一方のシンセは、WARPのIDMに近いスペーシーな音色が選ばれている。これは、旧来まで厳密に分別されたきた印象もあるIDM/EDMを合一させる画期的な試みである。90年代から長らくクラブ・ミュージックに親しんできたリスナーにとっては、衝撃的な意味合いを持つと思われる。イントロからアウトロまで一貫して続くミニマルな構成に、ピッチシフターとボーカルのディレイを巧みにミックスさせ、リスナーを幻惑と陶酔のさなかに呼び込もうとしている。もちろん、それらの反復的なビートとボーカルの兼ね合いは、アシッド・ハウスに近いデモーニッシュな雰囲気を生み出す。ダンス・ミュージックの最もコアな部分が抽出されたトラックといえる。

 

 

続く#5「He's Been Wonderful」、#6「Big Hammer」では、近年のラッパーとのコラボの経験を活かし、前衛的なトラックとして昇華している。前者では、グリッチ/ノイズの要素をシンプルに取り入れ、アヴァン・ポップとしてアウトプットしている。他方、後者ではタイトルからも分かる通り、ギャングスタ・ラップをエレクトロニック側から解釈しようとしている。ただ、この2つのトラックは前衛的な響きがありすぎ、一般受けするような音楽ではない。しかし、反面、ライブ・ステージで聞くと、その印象もまた異なり、バンガー的な曲に変貌すると思われる。ただ、この中盤の収録曲はやや冗長で、マニアックすぎる印象を与えるという難点もある。

 

 

その後、再びエレクトロニックへと回帰する。#7「I Want To Know」では、Bonobo風のダウンテンポ/ハウスへと移行している。ビート自体の心地よさもさることながら、近年、ブレイクが書いてきた曲の中では珍しく涼し気な印象を持つ。 しなるような反復的なアシッド・ハウスのビートの没入の後に、中盤部では、ブレイクのネオ・ソウル風のボーカルラインが加わる。そしてアルバムの序盤の収録曲と同じように、ピッチシフターをボーカル/シンセにかけ、幻惑的な雰囲気を巻き起こそうとしてはいるが、このスタイルは、アルバムを通して聴いたときに既視感を覚えさせる。そして、ボーカルラインに関しても、いまいち熱狂性を呼び起こすまでにはいたっていないのが惜しい。アウトロにかけてのピッチシフターのエフェクトも、サイケデリックな音作りを志向したということはよく分かるけれど、少しマニアックなきらいがある。

 

 

アルバムの終盤では、よりアヴァンギャルドな音楽性へと突き進み、これまでのブレイクの表向きのイメージを払拭しようとしている。「Night Sky」はアシッド・ハウスにサイケとアヴァン・ポップの要素をかけあわせたきわめて難解なトラックだ。「Fire The Editor」では、ネオソウルの進化系を生み出そうとしていて、そこにはソウル特有の甘美的な雰囲気を感じられる。アルバムの終盤の収録曲で、目が覚めるような気がしたのが、「If You Can Hear Me」である。ここでは、ジャズとエレクトロを融合させ、ポップ・バラードふうのトラックとして昇華している。これは、アルバムの序盤や中盤にかけて呼び覚まされた熱狂性をクールダウンする効果を備えている。ネオソウルとチルウェイヴを掛け合せたチル・ソウルに近い作風である。また、曲の終盤にかけてのエレクトリック・ピアノも甘美的な雰囲気を生み出している。

 

アルバム全編の音楽の流動性は、クローズでも受け継がれている。タイトル曲では、シンセの演奏でパイプ・オルガンの神妙な音響性を生み出し、BBC Jazz Awardを受賞したKit Downsの「The Gift」に触発されたクラシカルな作風に挑んでいる。序盤のダークでデモーニッシュなイメージが、アルバムの終盤にかけてエンジェリックに転化する瞬間に、最大の聞きどころがある。ぜひ、アーティストにも実際そうなって欲しいと思う。2011年のデビュー以降、いまだに音楽性を定義づけることが難しいジェイムス・ブレイク。その音楽の探索の旅は終わることがない。



72/100

 



©Rubben Panggabean

 

トムとエド・ラッセル兄弟のデュオ、Overmono(オーバーモノ)が新曲「Blow Out」を発表した。5月にリリースされたデビュー・アルバム『Good Lies』(レビューはこちらから)に続くシングル。試聴は以下からどうぞ。

 

チルウェイブ風のくつろいだエレクトロニックで、デビューアルバムとは別のOMの新機軸を示している。Overmonoのコメントは以下の通り。



「Blow Out」は、アルバムを完成させた後に最初に作った曲だ。かなり几帳面な作業の後、僕たちは本当に突き抜けた淫靡なものを書きたい、という衝動に駆られ、ベースがブローアウトしたスピーカーから鳴っているようなサウンドにしたいと思った。この曲が完成したのはコーチェラでのショーの前日で、それを試すにはこれ以上の場所はないと思った。アルバムがリリースされた直後、GALAで満員の観客を前にこの曲を演奏したことは忘れられないよ。


「Blow Out」


ケミカル・ブラザーズが10枚目のスタジオ・アルバム『フォー・ザット・ビューティフル・フィーリング』をリリースした。アルバムのストリーミングはこちらから。

 

自身のスタジオでレコーディングされた『For That Beautiful Feeling』は、ケミカル・ブラザーズが "音に圧倒され、引きずり込まれそうになりながらも、最終的にはその波に乗せられ、未知の目的地へと向かうワイルドな瞬間 "をボトリングした作品だ。


このアルバムには、最近のシングル「Skipping Like a Stone」でベックが参加しているほか、フランスのサイケ・ポップ・シンガー、ハロ・モードも参加している。後者は、7月のアルバム発表と同時にミュージックビデオが公開された「Live Again」で歌っている。


ケミカル・ブラザーズの長年のコラボレーターであるドム&ニックが監督した「Live Again」ビデオは、CGIと現実の映像をシームレスに融合させた「幻覚的な映像の旅」と銘打たれている。


Maria W Horn & Mats Erlandsson  『Celestial Shores』



 

Label: Ghent

Release: 2023/9/1



Review


 

アルバムに収録されている音楽は、アンディ・ウォーホルが1966年に制作した映画「ニコ/Nico Crying」の後半部分のスコアとして委嘱された。この委嘱は、2021年9月にブリュッセルのAncienne Belgiqueで行われた同映画の上映とスコアのライブ・プレゼンテーションのために、Art Cinema OFFがB.A.A.D.Mと共同で行っている。

 

録音は、その年の最終週に行われ、2022年1月にミックスされた。基本的に作曲家たちが同じ部屋で一緒に演奏したライブで、1960年代後半のレコード制作プロセスを彷彿とさせる手法で録音された。アルバムの音作りに使用された楽器は、モジュラー・シンセシス、チター(Zither)、ヴォイス、フィールド・レコーディング、メタル・パーカッションで構成されている。


Mats Erlandssonは、スウェーデン/ストックホルムでドローン音楽という分野を再興する作曲家/音楽家である。彼は持続音を多用することを特徴とする活動を展開している。ソロとコラボの両方で作品を発表している。直近の作品には、XKatedralからリリースされた「Gyttjans Topografi」、Hallow Groundからリリースされた「Minnesmärke」、レーベル13070からのYair Elazar Glotmanとのコラボ・アルバム「Emanate」がある。マッツ・エルランソンは、自身のアーティスト活動に加え、スタジオ・プロデューサーとしても活動する。2022年10月から2023年9月まで、一時的にストックホルムのElektronmusikstudionのスタジオ・ディレクター代行を務めた。

 


 

 

現在、ドローンを専門に作品として発表する実験音楽家は、スウェーデンのKali Malone(カリ・マローン)、そして、アメリカのSarah Davachi(サラ・ダヴァチ)が挙げられる。上記の二人のアーティストはパイプ・オルガンの演奏を中心としたドローンを制作している。もちろん、シンセサイザーでドローンを制作する場合もある。今年、カリ・マローンは、ロンドンのイベンターが主催する実験音楽のイベントのため、東京で来日公演を行った。イベントでは、ニューヨークのパーカッションの実験音楽家、Eli Keszler(イーライ・ケスラー)も公演を行っている。

 

今回のスウェーデンの実験音楽家、Maria W  Horn/Mats Erlandssonは、双方ともにシンセサイザーやプロデューサーとして活躍している。不確かな情報ではあるが、Mats Erlandssonはボーカリスト、Maria W Hornはパイプ・オルガンも演奏するようである。

 

『Celestial Shores』は、想像を絶する前衛音楽であり、ドローン音楽の最高峰に位置する作品と見ても違和感がない。ベルギーのレーベル、Ghentから発売された2曲のみ収録された作品であるが、40分程度に及ぶ濃密なドローンの世界は、比類なき高水準の音響空間が構築されている。何度聴いても、その内奥を掴むことが難しい音楽である。

 

一曲目の「Towards The Diamond Abyss」は、これまで聴いた試しがなく、比較対象を挙げることも出来ない、前例がなければ、類型もない前衛音楽である。唯一、近いのは、高野山の仏僧と打楽器のセッションを試みた高田みどりくらいだろうか。これまで70年代くらいまでは、ドイツの音楽家がこういった音楽を率先して制作して来た印象もあるが、実験音楽の最前線は、スウェーデン/ベルギーをはじめとするヨーロッパ諸国に移りつつあるのかもしれない。モジュラー・シンセ、特に、オシレーターの音をパイプ・オルガンの通奏低音のように際限なく伸ばしていく作曲技法については、ストックホルムのカリ・マローンと同様ではあるが、実際の持続音(サステイン)の伸ばし方が、上記のアーティストの手法とは一線を画すことが理解出来るはずだ。 


Maria W Horn & Mats Erlandssonは、直線上にオシレーターの音を伸ばしていき、それらを交差させて、不可思議な偶発的な和音を発生させる。それらの作曲技法は、ドローン音楽の構成を建築学的な音の礎石として積み上げていくかのようでもあるが、実際の音楽は、観念的になるわけでもなく、堅苦しいものにもなっていない。それどころか、感覚的な音楽として五感を刺激し、時にはシックス・センス以上の感覚を掻き立てる場合も少なくない。霊感に充ちた音楽であり、チベット密教の儀式音楽や、モートン・フェルドマンの「Rothko Chapel」のポスト・モダニズムを音楽的な側面から解釈した作風に属している。アーティスティックな香りが漂うのは、アンディー・ウォーホール関連の映像音楽として制作されたことに起因するのだろうか。


様々な考察を差し挟むことが可能な音楽でありながら、実際的には、原始的なオシレーターの音をモジュラー・シンセで発生させ、それらの簡素な音色を無限に伸ばし、複合的にそれらの音を別の場所から組み合わせ、ある空間の中心点に、不思議な縦構造の和音を発生させる。それはワシリー・カンディンスキーのような図形的な芸術様式を思わせ、二次元的な構造に留まることはなく、三次元、あるいは、それ以上の得難い高次元の音楽という形でアウトプットされる。

 

それらの不可思議な線上の通奏低音が重なり合った瞬間、日本の古典音楽である雅楽/能楽のように、西洋音楽(古典派/ロマン派に象徴されるドイツ和声法)とは対極に位置する新鮮な和音が発生する。また、アジア、インド、あるいは、アラビア風のエキゾチックな民族音楽の和音の構成を思わせる場合もある。そして、実際、ドイツのインダストリアル音楽に触発されたような実態不明な、聞き方によってはちょっと不気味にすら思えるフィールド・レコーディング/パーカッションに、Zitherの演奏が導入されることにより、教会/モスクの建築物の中に入った時のような不可思議な感覚にとらわれる。Zitherは、ドイツ、チロル、アルプス地方発祥の楽器と一般的に言われているが、これらの弦楽器のルーツを辿ると、リュート、そして、アラブのOudに行き着く。これがヨーロッパとイスラムの文化性の混淆のような得難い空気感を生み出している。


それらの繊細な音のデザインは、パイプ・オルガンのように荘厳なドローンの合間に挿入されるZither、あるいは、チベット・ボウル/シンキング・ボウル/ベルのような特殊な打楽器の一音の持続音により、音楽の印象は、にわかに祭礼じみて来る。しかし、それらの儀式音楽/祭礼音楽的なドローンは、長く聴いていても、決して苦にならず、ひたすら心地よい感覚に満たされている。それは多分ドローンの中に癒やしの感覚が取り入れられているがゆえなのかもしれない。

 

抽象的な音の連続は、Morton Feldman/John Cageの音楽におけるポストモダニズムに触発を受け、それらは水の跳ねる音、モジュラー・シンセで発生させたノイズが掛け合わされることによって不可思議な音響性を生み出している。これらの実験的な要素は決して聴きやすいものではない。しかし、反面、それらの反対側に配置されるドローンの持続音が幽玄な空気感を生み出し、祭礼における厳粛な空気感にも似た不可思議な印象を生み出している。これは例えば、Georgy Ligetyが「Atomosphere」で、「夜の霧」において描写されたようなアウシュビッツの空気感を探求したように、意図された空間の中に内在する異質な雰囲気を緻密に作りだそうとしている。

 

ただ、この曲では、人類史の悲惨な出来事に照準を絞るのではなく、より高次の啓示や、形而上学的な雰囲気をドローンという形で示しているように見受けられる。つまり、Maria/ Matsという二人のアーティストが先導し、単なる実在する空間とは別の領域にある空間をドローンという形でナビゲートしていく音楽とも解釈出来る。チィター/チベット・ボウル/ベル/フィールド・レコーディング/インダストリアル・ノイズ/メタル・パーカッションといった特殊音の要素は、全般に規則的に導入されている。つまり、それ以前の特殊音が、忘れた頃になって舞い戻ってくるような不可思議な感覚が繰り返される。 これがポスト・モダニズムという観点とは別の規則性を呼び起こし、モンドリアンのような「パターン芸術」の音楽に接近していく。一見したところ、分散し、気まぐれにも思える音の要素は、驚くべきことに、建築学の設計図のように、また、上下水道施設の工学的な信号のように、緻密な計算がなされ配置されている。そして、それらの断続的な音の連続性は、拡大することもなければ、収縮することもなく、正体不明のインダストリアルなフィールド録音により、抽象的なイメージをたずさえながら閉じていく。

 

 

一方、二曲目の「A Ship Lost In The Polar Sea」については、抽象芸術とは対極にある具象芸術という意図が込められていると推測できる。Kraftwerkの「Aurobahn」の時代のレトロなモジュラー・シンセの音色を選んでいるが、やはり一曲目と同様にドローンという手法で、持続音を徹底して複合的に伸ばしていく手法が採用されている。一曲目と同様に、パイプ・オルガンのような重低音がいきなり強調される場合もあるが、この曲で焦点が絞られているのは、宇宙的な音の壮大さであり、エナジーの無限性である。両者のモジュラー・シンセの合奏は、これらの際限なく広がっていく空間性を造出する契機を生み出すが、それらの2つのシンセの持続音の線が重なり合った時、アナログの信号の持つ特殊な倍音が組み合わされ、特異な和音が生み出される時もある。これらのベースとなる構成の上に、遊び心のあるシンセのリード、実験的なリード、ボーカルのテクスチャーが複合的に組み合わされ、前代未聞の音楽が生み出されている。それらの音楽の気風を強化しているのが、他でもない、Zitherのエキゾチックな音色であり、これも一曲目と同様に分散和音が配置されることで、色彩的な音響効果を生み出している。

 

しかし、一曲目とは正反対に、Zitherの分散和音は、まばらに配置され、それらのアルペジオがトラックの背後のボーカルのアブストラクトなテクスチャーと重なり合った時、それ以前の不思議な感覚とは別のエキゾチックな印象を生み出している。アジアやアラブの祭礼的な雰囲気が生み出されたかと思えば、やがて、イントロの宇宙的な幽玄な雰囲気へと回帰していく。また一曲目と同様、雅楽のような神秘的な和音の構成を生み出す瞬間もある。さらに、この曲では和音や倍音の特性を駆使し、規定された和音性とは対極にある流動的な和音が探求される。つまり、和音の偶然性の探求ーー和音性におけるチャンス・オペレーションーーが意図されていると解釈出来る。そして、縦に配置される和音ではなく、横に配置される単旋律の倍音の重なりによって和音が生み出されるという点では、インドネシアのガムラン音楽に近い印象もある。


そして、これらのZiterとシンセを組み合わせたドローン/前衛音楽は、徐々に途絶えていき、曲の後半部では、モジュラー・シンセを中心としたアンビエントに近い、癒やしと安らぎに満ちた音楽へと接近していく。しかし、その空間の背後に充ちるサイレンスは、Zitherの抽象的な音階の進行により、聞き手の脳裏に余韻(記憶の中に止まる音)を呼び起こす。やがて、Zitherのベースを強調した演奏はまばらになっていき、双方の持続音の余韻のみを残しながら、これらの地上的とも宇宙的ともつかない、抽象性の高いドローンの世界は無限の静寂の中に飲み込まれる。




96/100




 

©Andrew Strasser & Shawn Lovejoy / Joe Perri


先週、ダニエル・ロパティンは、ワンオトリックス・ポイント・ネヴァーのニュー・アルバム『Again』をWarpから9月29日にリリースすることを発表した。

 

本日、アルバムのトレイラー映像に続いて、彼はファースト・シングル「A Barely Lit Path」を公開した。この曲は、NOMADアンサンブルとロバート・エイムズ指揮・編曲のオーケストラと共にレコーディングされた。アムネシア・スキャナーやエイフェックス・ツインとの仕事で知られるエクスペリメンタル・アーティスト、フリーカ・テットがこの曲の付属ビデオを監督した。




2020年の『マジック・ワンオトリックス・ポイント・ネヴァー』に続く『アゲイン』は、プレスリリースで "思弁的な自伝 "であり、"記憶と空想が全く新しいものを形成するために収束する「非論理的な時代劇」"と説明されている。ジャケットのアートワークは、マティアス・ファルドバッケンがロパティンとともにコンセプトを練り、ヴェガール・クレーヴェンがMVを撮影した。

 

「A Barely Lit Path」の各種ストリーミングはこちらから。

 


「A Barely Bit Path」



 

 

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)が9月29日にWARPからリリースするアルバム『Again』の詳細を明らかにした。


声明の中で、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーこと、ダニエル・ロパティンは、このプロジェクトを「思索的な自伝」と説明している。このプロジェクトは、ロパティンが異なる音楽的決断を下していたらどうなっていたかを考えるうち、「非論理的な時代劇」へとたどり着いた。


アルバムのアートワークについては、マティアス・ファルクバッケンのオリジナル彫刻(ロパティンがコンセプト作りに参加)とヴェガール・クレーヴェンの撮影によるもの。このプロジェクトのニュースに合わせて、ダニエル・ロパティンは、無作為の人々に宛て、Oneohtrix Point Neverの発音についてクイズを出すトレイラー映像を公開した。以下よりご覧ください。

 

 

 「Again」ーTrailer

 



先週、ダニエル・ロパティンは、ワンオトリックス・ポイント・ネヴァーのニュー・アルバム『Again』をWarpから9月29日にリリースすることを発表した。

 

本日、アルバムのトレイラー映像に続いて、彼はファースト・シングル「A Barely Lit Path」を公開した。この曲は、NOMADアンサンブルとロバート・エイムズ指揮・編曲のオーケストラと共にレコーディングされた。アムネシア・スキャナーやエイフェックス・ツインとの仕事で知られるエクスペリメンタル・アーティスト、フリーカ・テットがこの曲の付属ビデオを監督した。


2020年の『マジック・ワンオトリックス・ポイント・ネヴァー』に続く『アゲイン』は、プレスリリースで "思弁的な自伝 "であり、"記憶と空想が全く新しいものを形成するために収束する「非論理的な時代劇」"と説明されている。ジャケットのアートワークは、マティアス・ファルドバッケンがロパティンとともにコンセプトを練り、ヴェガール・クレーヴェンがMVを撮影した。

 


「A Barely Bit Path」


Oneohtrix Point Never 『Again』

Label: WARP

Release: 2023/9/29



Tracklist:

 

1. Elseware 

2. Again 

3. World Outside 

4. Krumville 

5. Locrian Midwest 

6. Plastic Antique 

7. Gray Subviolet 

8. The Body Trail 

9. Nightmare Paint 

10. Memories of Music 

11. On an Axis 

12. Ubiquity Road 

13. A Barely Lit Path


 

©Shervin Lainez


Water From Your Eyesとして活動するネイト・エイモス(Nate Amos)が率いるプロジェクト、ディス・イズ・ローレライが新作EP『EP #33』を発表した。今週金曜日、8月25日にリリースされる。リード・シングル「The Laughter Remains」は本日リリースされ、以下で聴くことができる。



ネイト・エイモスによれば、この4曲入りコレクションは「2021年と2022年の2組の曲」だという。

 

「トラック1と2は、私が断酒したばかりで、これ以上書けるかどうか不安だった時期のもので、トラック3と4は、それから1年近く経った、激しく生産的な創作期間の終わりの頃のものだ。トラック2と3の間に60曲以上が書かれた。これは、薬物乱用がなくてもうまく書けることに気づいた私の個人的なプロセスを記録したものなんだ」


『The Laughter Remains』では、名もなき語り手が、浜辺で瀕死の鳥に向かって歌う天使を観察している」とエイモスは説明した。

 

「シェーン・マクゴーワンのワルツとエミリー・ディキンソンの詩にインスパイアされた私は、激しいセラピーを受けていて、苦しいけれども最終的には価値のある自己変革の真っ只中にいると感じていた時期に、自分自身を慰める歌としてこの曲を書いた。

 

音楽は今も昔も私にとってのはけ口なんだけど、この特別なケースでは、元気が出ないと感じていた私に本当に力を与えてくれた。

 

今この曲を聴いてみると、当時の私は、自分が評価していた以上に、感情的に揺れ動く地形を乗り越える能力が備わっていたことに気づく。この曲は、ひとつの形であれ何であれ、常にそこにあり、常に前を向く価値のある未来についての歌なんだ」

 

「The Laughter Remains」



This Is Lorelei 『EP #33』

 



Tracklist:

 
1. Dollars in the Dark


2. Hollered That Cry On The Pasture


3. Lullabies and Glue or My Brother


4. The Laughter Remains

 


UKエレクトロの重鎮、The Chemical Brothersが新曲「Skipping Like A Stone」でBeckとタッグを組んで、意外なコラボレーションを行った。ケミカル・ブラザーズは9月8日にニュー・アルバム『For That Beautiful Feeling』をリリースし、11月には全英ツアーを控えている。


「Skipping Like A Stone」は、ケミカル・ブラザーズのレイヴとベックの幻惑的なヴォーカルが溶け合い、サイケデリックな透明感が炸裂している。曲作りにはライブ・パフォーマンスが感じられ、ケムズは25年にわたるフェスティバルで鍛え抜かれた力量を遺憾なく発揮しようとしている。


新刊『Paused In Reflection』は、ジャーナリストのロビン・ターナーが執筆したキャリアを振り返っている。本書の中で、BeckはChemical Brothersとのクリエイティブな関係についてコメントしている。


 

 「ケミカル・ブラザーズは、探求することに長けているんだ。ケミカル・ブラザーズのレコードは、いつも違う場所に連れて行ってくれる。彼らは、エレクトロニック・ミュージックとDJカルチャーのさまざまな時代の間にある、ちょっと変わった場所にいるんだ。まるで複数の年代に同時に足を踏み入れているような、同業者の中ではまったくユニークな存在なんだ。彼らは常に毎年作品を作り続けていて、これほど豊かで印象的な作品群を蓄積しているという点で稀有な存在だろう」

 

 

 「Skipping Like A Stone」

 De De Mouse ☓ Maejima Soshi 『Summer End's Girl』


 

Label: Lonely Girl

Release: 2023/8/16

 

 


Review 


De De MouseとMaejima Soshi、国内のエレクトロニカを代表するプロデューサーによるコラボ・EP。アートワークのイラストは大島智子による。宇宙ネコ子のアルバムなどを手掛けるイラストレーターだ。

 

昨年、De Deこと遠藤さんは、国内のポストロックバンド、LITEとの新規で立ち上げたコラボ・プロジェクト、Fake Creatorsとしてフジロック '22のステージに出演した。出演前夜から遠藤さんは意気揚々と現地レポートを行っており、LITEのメンバーと一緒に宿泊したホテル先から、とんでもない現地報告をソーシャルで公開していた。正直、LITEのメンバーの泥酔具合を見ると、(あるメンバーは、その夜、トイレから出られなくなっていた。それをDe Deさんは動画のスニペットとしてソーシャルの投稿で公開していた)その様子は、男子高校の修学旅行の夜にしか思えず、本番は大丈夫なのか、と外野から心配していたが、翌日、難なくDJセットやFCのステージをサラッとこなしていたところを見ると、やはりそこはプロミュージシャン、真夜中の苗場のステージをガツンと湧かせた。De Deさんだけはなぜかいつもシラフに見えたのは余談だ。


本作はまさに2023年の夏の思い出にふさわしい一枚。De De Mouseといえば、Avex所属の時代から、また、その後の時期にかけて、「サマー」と題された作品を発表してきた経緯がある。また、同じように「ガール」と題された作品を発表してきたのも旧来のファンの知るところだろう。

 

De De Mouseは、以前からボーカロイドを駆使し、エレクトロニカとの融合に取り組んできたアーティストであるが、今回、それらの活動期の集大成を形成するようなミニアルバムとなっている。ローファイ・ヒップホップや、チルアウト、テクノあたりを基調として、Bonobo(サイモン・グリーン)の『Migration』、『The North Borders』周辺の涼やかなエレクトロニカを彷彿とさせる音作りに取り組み、コラボレーターのMaejima Soshiとともにセンス抜群の電子音楽を制作している。

 

またオープニングを飾る「Sparkle Girl」を見ても分かる通り、単なる方法論としてのエレクトロニカにとどまらず、情感を大切にした電子音楽が今作の魅力である。もちろん、歌ものではないにしても、シンセのフレーズには間違いなく歌心がある。そこにヒップホップ風のリズムトラック、ピアノの音色を交え、安らいだリラックス感を作り出している。これは、Kota The Friendあたりのコアなローファイを思わせる。また、パーカッションの音作りの方向性は、ナチュラルな雰囲気があり、2000年代のエレクトロニカの象徴であるHeliosの『Eingya』を彷彿とさせる。


「Memory Lane」の映画のサントラのようなストーリー性のある音の運びにも注目したい。イントロのピアノは、北野武の「菊次郎の夏」のテーマ曲を思わせ、それらの淡い感覚が洗練されたローファイヒップホップとして昇華されている。重要な点は、メロディーはテクノであるにも関わらず、リズムはヒップホップであるということ。これらの旋律の良さとリズム感の巧みさを掛け合せたトラックは、一聴に値する。しっとりとしたエレクトロサウンドを作りだすことにかけては比類なき、日本のエレクトロニカを象徴する両プロデューサーのコラボの妙を楽しめる。アウトロにかけてのしんみりとした感じは、夏の花火の後のセンチメンタリズムを思わせる。

 

特に今作では、以前よりもヒップホップに親和性のあるトラックメイクが際立つ。「Hitori」では、DJのスクラッチの技法を交え、それをエレクトロニカとして昇華している。そこにはターンテーブルのチョップの影響も見られるが、それがいかにもDe De Mouseらしいノスタルジックな電子音楽としてアウトプットされている。この曲では、このアーティストの代名詞ともいえる名曲「East End」の頃を思わせるテクノとハウスの中間にあるサウンドを楽しむことができる。

 

他にもMaejima Soshiが手掛けた「2 Return」は、世界的なエレクトロニカとして聴いてもなんら違和感がない。Bonoboに近いミニマル・テクノな音作りはもちろん、チルアウトの涼やかなビートが深いグルーブを生み出し、Nujabesのようなピアノのサンプリングを散りばめ、軽やかなクラブ・ミュージックとして昇華している。サイモン・グリーンの「Citrus」のように、パーカーションの要素を夏らしい清涼感のあるサウンドに仕上げた。この手腕には脱帽するよりほかない。

 

同じく続く「PANGG」は、Maejima Soshiが手掛けている。フィルターを掛けたイントロはヒップホップ/ローファイを下地にし、また、それらのサイケなリズムトラックと落ち着いたピアノのスニペットが散りばめられていく。それはキラキラしたネオン、つまり、東京の都心部の真夜中の裏路地を思わせる。この曲では、リズムを重視した乗りやすいヒップホップ・サウンドが貫かれているが、同時に、アルバムの主要なテーマであるリラックスした感覚がリズム・トラックに折り重なり、心地よいローファイ・ヒップホップ・サウンドが生み出されている。アウトロではピアノのフレーズが美麗な雰囲気を形成し、最もロマンティックな瞬間を見出せる。


「Lyra, Vega」はMaejima SoshiのトラックをDe De Mouseが受け継いだ連作のような楽曲である。前の曲のチルアウトの雰囲気を引き継いで、それを、らしさのあるテクノという局面から組み直している。時折、導入されるボーカルのサンプリングや、しなるようなリズムトラックは、前曲と同じく心地よいリラックス感にあふれている。曲の終盤では、エモーショナルな雰囲気が最高潮に達し、ほろりとさせる淡い切ない感じすら漂い始める。英国/米国のエレクトロとは異なる、わびさびのあるテクノ・サウンドが、一番の聞かせどころといえるかもしれない。

 

「Sayo_Nara」は唯一ボーカル・トラックとして収録。De De Mouseらしいテクノとハウスの中間にある曲調に夢想的なボーカルが揺らめく。曲を聴いてどんな夏の風景を思い浮かべるのかはリスナー次第。 

 

10代の頃の青春時代を想いうかべても良いし、それとは別に、家族や友人との夏の休暇を思い浮かべても良い。さらに、記憶の底に置き去られた、誰かとのひと夏の別れを思い浮かべるのも自由だ。このボーカル・トラックには、現行のエクスペリメンタル・ポップともハイパー・ポップとも異なる、J-Popを下地にした日本固有の珠玉のポピュラー・サウンドが貫かれている。

 


79/100

 


「Sayo_ Nara」(feat. Misi Ke)


©Black Country Club

イギリスのプロデューサー、アクトレスがニューシングル「Push Power ( a 1 )」をリリースした。

 

これまで、プロデューサーは80年代からハウス、テクノ、ダブステップなどを中心に幅広いエレクトロニックに取り組んで来た。ダレン・カニンガムのソロ曲としては、2022年のベストEPリスト入りを果たした『ダミー・コーポレーション』以来となる。プレスリリースによると、この曲は "より大きなプロジェクトが控えていることを示唆している "という。試聴は以下から。


アクトレスの前作は2020年の『Karma & Desire』。昨年、プロデューサーはジョン・ケイルのトラック「MARILYN MONROE'S LEGS (beauty elsewhere)」に参加した。




米国のプロデューサー、Laurel Halo(ローレル・ヘイロー)が、近日発売予定の新作アルバムからのタイトル曲「Atlas」をリリースました。先行リリースされたシングル「Belleville」に続く曲です。

 

ディケイを最大限に活かしたこのトラックでは、ボーカルのサンプリングを器楽的に処理され、クライマックスでは、ピアノ、ストリングスを加工した幻想的なサウンド・スケープが描かれ、はてなきアンビエントの迷宮へと続いている。旧来のローレル・ヘイローの作品と同様、アブストラクト・アンビエントの最高峰に位置する画期的なシングルです。今週のベスト・トラックとしてご紹介します。このニューシングルは以下にてチェックしてみましょう。


2018年の『Raw Silk Uncut Wood』以来となる『Atlas』は、ローレル・ヘイロー自身のインプリント、Aweから9月22日にリリースされる。サックス奏者のベンディク・ギスク、ヴァイオリニストのジェームス・アンダーウッド、チェリストのルーシー・レイルトン、ヴォーカリストのコビー・セイらが参加している。


「Atlas」

 

©︎Chad Maclean

ニア・アーカイブスがニューシングル「Bad Gyalz」をリリースした。


この曲は、8月6日(日)に60 Dock Roadで開催される、DJ Flight、PXSSY PALACE、Sim0ne、Izzy BossyなどのDJセットをフィーチャーしたリリース・パーティー「Bad Gyalz Day Party」の詳細とともに到着した。


この曲についてニアは、「クリップスとスタジオに向かう途中、私の大好きなMCの一人であるランキング・アンの曲を聴いていたの。私のショーに行くと、85%が18歳から25歳の女性で、とても素晴らしいわ!彼女たちはみんな悪役で、絶対的なジャングリストなんだ。だから、それを象徴するような曲を作りたかったんだ。そうしてBad Gyalzが生まれたんだ!」



©Ella Herme

セバスチャン・アン(SebastiAn)が、XXのオリヴァー・シム(Oliver Sim)とのコラボレーションによる新曲「Twin」を公開した。

 

この曲は、本日公開のエドゥアルド・サリエ監督の新作映画『トロピック』のサウンドトラックに収録されている。


「人間的な出会いとエドゥアルド・サリエ監督との仕事は、私にとって同じものでした。彼を突き動かしているものと、彼がしていることの間に強い一貫性を感じた。私たちは、映画的参照と音楽的嗜好について即座に合意し、私たちが映画に与えようとしていた意図と音楽的方向性に容易にアクセスすることができた。それらは、まるで内なる論理から流れてくるかのように、本能的にとらえられた」




「被写体から全体的な雰囲気まで、私たちが経験できることの音楽的翻訳は、すべて私に語りかけてきた。「この意味で、合成的な要素(テクノロジーの冷たさ、ディストピア、人生が登場人物に課す厳しさ)と、弦のような有機的な要素(人間的なもの、2人の兄弟が受ける絆や感情のねじれ)が交差し、映像との対話を形成した」


「私の映画への愛は、常に音楽への愛と密接に結びついていると感じてきた。曲を作り始めるときはいつも、サウンドトラックにしようとしている架空の映画が頭の中で流れているんだ。だから、本物の映画のためにセバスチャンと一緒に曲を作ることになったのは、エキサイティングな挑戦だと感じた」


「”トロピック”は、僕が大好きでつながりを感じている多くのものに語りかけてくる美しい映画だ。SF、家族、愛、美しい少年たち、そして傷つきやすい怪物。だから、テーマ、キャラクター、美しい映像、そしてセバスチャンが作り上げた素晴らしいサウンドスケープを持つ、この既存のストーリーのために書くのは簡単だった。それは簡単なことであり、純粋な喜びでもあった」


先月、セバスチャン(SebastiAn)はロンドン・グラマーと組み、トラック「Dancing by Night」を発表した。オリヴァー・シムのソロ・デビューLP『Hideous Bastard』は昨年発売された。

Music Tribune Interview 

 

 -Duenn

 

Duenn / Courtesy Of The Artist


 福岡を拠点に活動する気鋭のエレクトロニック・プロデューサー、duenn(ダエン)は、ロンドンやヨーロッパ圏の電子音楽家に比する感覚の鋭いエレクトロニックを制作している音楽家です。活動領域も国内のみならず、ベルギーの実験音楽レーベル”Entr'acte”、大阪の”スローダウン・レコーズ”を始めとする複数の国内外のレーベルより作品を発表しています。2017年、Merzbow、Nyantoraと共にエクスペリメンタル・ユニット「3RENSA 」を結成しました。以後、Nyantoraとアンビエントのイベント「Haradcore  Ambience」を共催しています。

 

 第5回のMusic Tribuneのインタビューでは、その音楽性の原点から、どのようにして音楽活動の裾野を広げていったのか。また、近年の岡田拓郎さんや、ナカコーさんとの共催イベント、サトミマガエさんとの共作アルバム『境界 Kyokai』や、日本を代表する詩人であり、『ピーナッツ』等の翻訳作品でも知られる谷川俊太郎さんとのコラボレーションに至るまで、網羅的にお話を伺っております。以下、そのエピソードを読者の皆様にご紹介したいと思います。

 

 

 

 

生と死を俯瞰でき、アクセスもできる現実世界に身を置く自分にとって、最早、境界というものは無いに等しいのではないか? ーDuenn

 

 

1. 


まず、Duenn(ダエン)という名義で活動するようになったのは、いつ頃からだったのかお聞きしたいです。例えば、Bandcampでは、2015年の「Minamiku」というリリースが確認出来るんですが、これが最初の作品ということでよろしいでしょうか。 

 

また、この作品は、環境音楽とノイズ、アンビエント、エレクトロニック等をクロスオーバーしており、現在の作風にも通じるものがあります。この作品がDuennというミュージシャンの原点と私自身は思うのですが、その点について、どのようにお考えでしょう。

 
 

Duenn→  活動の拠点は、ずっと福岡です。 Duenn名義以前に、2000年頃、大友良英さんやボアダムスに触発されてノイズバンドを結成し、数回ライブをしたことがありましたが、Duenn名義で活動するようになったのは2007年頃だったと思います。

 

活動当初は、2人組でした。その時の相方は、90年代に福岡の”サイジジー”というテクノ・レーベルからリリースをしていた方で、当時はよくお茶をする間柄でした。

 

そんなある日、細野晴臣さんの「アンビエント・ドライヴァー」(著者の自然観、人生観、音楽観などの伝わるエッセイ集。筑摩書房より発売)という本を同日に購入したことが判明して、これは”何かの導きかも”と、軽く盛り上がり、一緒に活動することになりました。

 

とはいえ、曲制作が中心で、毎週末、 相方の自宅にお邪魔し、即興演奏を録音し、双方で演奏データを編集しあい、CD-Rに焼くということを繰り返しただけで、リリースまでには至らないまま、双方の仕事が忙しくなったこともあり、自然消滅してしまいました。

 

サウンドは、今、思えば、ドイツのクラスターのようでした。ちなみに何回かライブもやったのですが、初ライブの時の共演者がCAN(カン:ドイツの伝説的なクラウトロックバンド)のダモ鈴木さんで、お会いした時に、 初対面にも関わらず「どっかで会ったことがあるよね?  いや、絶対あるはず・・・」と言われたことが印象的でした。 


2015年にリリースした「minamiku」の前にも、ネット・レーベルなどからEPをリリースした事も有ったのですが、フィジカルとしては、初リリースになります。

 

当時も現在も、サウンドに大きな変化はありません。自分のサウンドが何にカテゴライズされるか、未だに謎なのですが、 ご指摘のとおり、環境音楽とノイズ、アンビエント、エレクトロニック等をクロスオーバーしている部分はあるのかなと思います。 

 


2. 

 

現在では、ご自身でレーベル運営やイベント企画などに携わっていらっしゃいますが、最初期の活動から、リリースやイベントの活動の幅をどのような形で広げていったのかお聞きしたいです。 

 

 
Duenn→ 完全にソロで活動を開始することになったのは、2010年頃です。

 

当時は、曲制作よりもイベントの自主企画に主軸を置いていて、今は一緒に活動している、Koji Nakamuraことナカコーさんや、 バッファロー・ドーターの山本ムーグさんの別プロジェクトであるIKEBANA、イクエ・モリさん+ヨシミさん(OOIOO)などを招聘して、自主企画を開催していました。

 

丁度その時期に、Fennesz(フェネス)がカセットを 限定リリースして即完売になったという記事を目にしたことをヒントに、CDが売れないならカセット なら売れるかも、という半ば屁理屈に近い考えで、その自主企画が”duenn label"というカセット・レーベルに発展しました。 

 

作家の裏面をフィーチャーするというレーベル・コンセプトのもと、浅野忠信さん(日本の俳優として活躍、現在はアートワークなども手掛ける)、Merzbow(メルツバウ)の秋田さん、ドイツのOval、イクエ・モリさんなどのカセット作品を全45タイトルリリースして、2017年にレーベルを閉鎖しました。

 

ジャケ(アートワーク)などは外注しつつも、それ以外のレーベル業務は、ほぼ1人でやっていたので、なかなか大変でした。でも、今考えると、とても良い経験になったと思います。 

 


3. 

 

これまで、複数のアーティストとコラボレーションを行っています。その中には、岡田拓郎さんの名もあります。

 

2020年の「都市と計画」というアルバムでは、ギターとアンビエント、そして環境音などを融合させ、都市工学の音楽とも称するべきユニークなジャンルを開拓しています。

 

あらためて、このアルバムをどのように制作していったのか教えていただきたいです。 

 


Duenn→ 2017年に、畠山地平君のレーベル、White Paddy Mountainから「無常 MUJO」という作品を岡田君とのコラボレーションでリリースしたんです。その時の制作が、サウンドファイルの交換で構築していくという方法だったのです。

 

2020年にリリースした「都市計画」に関しては、岡田君からduennにメロディーを作って欲しいというリクエストが岡田君より上がったので、iphoneのGarage Bandをダウンロードし、思いつくままにGarage Bandのシンセ音源で、ひたすら1~2分程度のメモ的な演奏を録音して、岡田君に送るという作業を繰り返していきました。

 

その中で、演奏している場所が、信号待ちの横断歩道であったり、あるいは、公園であったりと、自宅以外の、街の中で行う事がほとんどで、街の中で音を鳴らす行為が、都市計画における公園、橋、住宅などのインフラを整備することへの類似性を感じ、都市計画というコンセプトでアルバムを制作しようということになりました。 

 

メロディーを作るのは、人生で初めてに近い経験でしたが、思いのほか面白くて、岡田君のリアクションがあるなしに関わらず、完成するたびに録音を送り続けていたら、「ゆっくり聴く時間が有りません!」と、 やんわりペースを落としてほしいと言われたのも、今となっては良い思い出ですね。 (笑)

 


4. 

 

岡田拓郎さんとのコラボレーションが、後々、ナカムラ・コウジさんとのセッション”Hardcore Ambience”に繋がっていったと考えているんですが、このイベントをなぜ立ち上げようとしたのかその理由を教えてください。

 

また、このライブセッションではシンセに加え、ギター、チベットボウルなどを使用し、音楽の即興的な実験に取り組まれているように感じますが、イベントの趣旨や目的についてもお聞きしたいです。 

 


Duenn→ これは、順番が逆で、ナカコーさんとのHardcoreAmbienceが先です。きっかけとしては、2017 年に自分のソロ作品をリリースした際に、dommuneでリリース記念番組を放送して頂いたんです。その時、dommune主宰の宇川さんに、”HardcoreAmbience”という番組タイトルを決めて貰いました。(由来は特にないようですが、ハードコア・アンビエントではなく、アンビエンスというのがポイントだそうです) 

 

その番組が、のちにナカコーさんとのイベント、Hardcore Ambienceに発展していきました。コロナ前は、ツアーで、国内の北から南まで、様々な場所でライブパフォーマンスを行っていたのですが、現在は、単発的に行うライブであったり、即興演奏をアーカイブしていくことを目的としたYOUTUBEの撮影が、その活動の中心となっています。

 


5. 

 

また、岡田拓郎さんとのコラボはほとんど恒例になりつつあると思うんですが、”森は生きている”の活動でお馴染みの岡田さんのミュージシャンとしての魅力についてお聞きしたいです。

 

 
Duenn→ 岡田拓郎君のミュージシャンとしての魅力は、卓越した演奏技術と、豊富な音楽知識が、マニアックではなく、ポップな形で表れていることではないでしょうか。 

 

ミュージシャンとしても素晴らしいのは勿論のこと、その人間性の良さにはいつも感心させられます。

 

 
6.

 

これまでのDuenn名義の多くの作品を聴くと、ソロ作品、コラボ作品を問わず、前衛的 な実験主義の音楽性が目立ちます。 

 

例えば、象徴主義や抽象主義という形で、音の立体性、いわば、インスタレーションのような音楽 性を志向しているのかな、と私自身は感じています。また、CINRAのインタビューでは、「商業主義に抗う」ということも、お話しになっているようです。

 
あらためて、ご自身の音楽のコンセプトについて、どのようにお考えでしょうか。また、現在、会社員をしながら、同時に音楽活動を行っているということですが、人生のなかに、いくつかの線や点を設けることで、複数の生きがいを作るというような考えがおありでしょうか。

 

 

Duenn→ 自分では前衛的なものをやってるつもりはないのですが、一般的な音楽リスナーに言わせると、十分奇妙な音楽をやっている自覚はあります。

 

普段は会社員で、一定収入が有るおかげで、 自分の好きな音楽だけをやり続けられる環境にいることは、余計なことを考えずに済むのでとても精神衛生上良いです。

 

ただ、二足の草鞋を履くというと響きは良いですが、視点を変えると、どちらとも片手間になるという可能性も有るので、自分の中では、会社員と音楽活動をシームレスに考えるようにしています。 

 

7.

 
続いて、Satomimagae(サトミマガエ)さんとのコラボレーションアルバム「境界」についてもお伺いします。 


マガエさんに、このアルバムのモチーフや主題について尋ねたところ、作品制作の中心となった のは、Duennさんであるように感じました。あらためて、通勤中に見た「境界」という考えが生じた 瞬間について詳しくお聞きしたいです。 

 

『境界」の音源を聴く範囲では、二人のコラボレーションによって、2つの空間をひとつの曲の中で往来するような奇妙な感覚に充ちた作品が生み出されたと感じました。つまり、「境界」というのは、現実と仮想の間に生じた、シュールレアリスティックな空間のような感じがしたのですが、この点について、ご自身ではどのようにお考えでしょうか。

 

 
Duenn→ マガエさんと、アルバム・タイトルを何にしようかと、やり取りをしている時に、通勤路に「境界」と いう小さな標識が、偶然目に入ったことにインスピレーションを受けたのがきっかけでした。 

 

”境界”という言葉の意味をWikipediaで調べてみると、「事物や領域などを分ける境目のこと。分野や用法により様々な用例がある」と記載されています。

 

”それでは、この事物や領域などは、誰がどうやって分けているのか?”と突き詰めると、人間が勝手に作ったものであり、本来は曖昧で実態が無いようなものではないのか、また、生と死を俯瞰でき、アクセスもできる現実世界に身を置く自分にとって最早境界というものは無いに等しいのではないかという考えに至ったのと、完成した楽曲を並べてみると、音楽と音の境があまり感じない曲で構成されていたことに結びついて、このタイトルにしました。



8.

 
また、この最新作では、旧来のアンビエントの基本的な作風に加え、二曲目の「air」では、前衛的 なシンセの音色が取り入れられているようですが、制作方法に関して、新しく挑戦した点などがあれば教えてください。

 

 
特に、1分45秒くらいにボーカルが入った時に、音楽そのものの印象がガラっと変化するような感じがあるんですが、トーンのゆらぎというか、雰囲気の変容というのは意図していたものだったの でしょうか、それとも、ボーカルトラックを追加したときに偶発的に生じたものだったのでしょうか。 

 


Duenn→ 自分の機材は、ROLAND SP-404SXというサンプラー2台だけなのですが、サンプリングした素材(自分にとってはシンセでいうところのプリセット音みたいな認識です)にリアルタイムにエフェクトをかけるというのが、基本的なスタイルです。複数の素材の組み合わせや、素材を出すタイミング(早く出力したり、遅く出力したり)だけでも、無数にバリエーションがある以上、新しい機材や手法を試す以前にこれから先、この手法を試し続けるだけで、一生が終わってしまう気がします。 

 

少し話が横道に逸れましたが、質問のトーンのゆらぎというか、雰囲気の変容というのは、 月並みの言い方にはなりますが、マガエさんのボーカルが入ったことによって起こった一種の化学反応のようなものだと考えます。 

 


9.

 
最新アルバムの中で最もお気に入りの曲や、リスナーにチェックしてほしい曲はありますか。アルバムをより楽しむために、こういった状況で聴いてもらいたいというような要望はありますか。 

 
Duenn→ 日によって変動しますが、今日は3曲目の「wave」が特に気に入ってます。

 

自分なりにポップ・ミュージックを解釈したトラックに、マガエさんの歌が入る事で、より深遠な響きになったと思います。聴いて欲しいシュチエーションは特にありませんが、末永く愛聴して頂けると幸いです。 

 


10.
 

「境界」の同時的なプロジェクトとして、谷川俊太郎さんとのコラボレーションについてもお伺いしたいと思います。 このコラボレーションを行うことになったきっかけについて、また、どういった趣旨で行われたものなのか教えてください。

 

また、音楽という形態を他のアート形式と結びつけようという意図も込められている ような気がするんですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。 

 


Duenn→ 自分とナカコーさんの共同イベント、HardcoreAmbienceへ、何年か越しに谷川さんへライブオファーを送っていくなかで、2017年にようやく出演して頂いたのです。

 

その時のセッション音源の内容が、なかなか良かったので、どうにか形にできればと模索していたところ、今年(2023年) になって、様々な状況が整い、現在クラウドファンディングを通じてリリースを目指しているところです。 


音楽を他のアートの形式に結び付けようと考えた時期もあったのですが、今は音もしくは音楽自体も、アートだという考えにシフトしています。

 

絵や写真と違って、音は展示に向かないため、美術館での展示は難しいですが、東京オペラシティ・アートギャラリーでの谷川さんとコーネリアス(小山田さん)の共同作品、京都のブライアン・ イーノ展、アーティゾン美術館のダムタイプ展を観に行ったりした際に、音が展示として成立するヒントを貰えた気がするので、今後の活動にフィードバック出来ればと考えています。 

 


11.

 
また、Merzbowの秋田昌美さんとNyantoraとのトリオ、”3Rensa”としてもDuennさんは活動されています。これはどのような趣旨で結成されたグループなのでしょうか。何かソロ活動やコラボとは違った刺激があるのかについてお聞きしたいです。 


Duenn→ 秋田さんとはバンドを結成する以前から、自主企画に何度も出演して頂くなどの交流が有ったんです。

 

ある日の打ち上げで、秋田さんが昔ドラムをやっていたという話から、一緒にバンドをやったら面白そうだなと思い、提案してみたところ、思いのほか、とんとん拍子に話が進み、コロナ前は、何度かライブをやったり、レコードをリリースしたりという活動をしていました。

 

秋田さんは、国内外でノイズ・ゴットと呼ばれるだけあって、凛とした雰囲気を持ち合わせているため、一緒に音を出すというだけでも、神事に参加してるかのような気持ちになります。 

 


12. 


私自身、最近、Merzbowのリリースは定期的にチェックしていますが、リリース情報を中心に追っている私のような音楽ファンには、ナカコーさんの現在の状況があまり上手く伝わってきません。 

 

スーパーカーの解散後、現在、エレクトロニック・プロデューサーとして活動なさっているのは存じ上げているんですが、音楽活動をともにするDuennさんにとっては、現在のナカコーさんはどのような人物として映るのでしょうか。 

 


Duenn→ 彼は、とにかく音楽が好きな人で、自身の感覚に対して、ブレがなく、とても正直です。 また、セールスとかトレンドといった二次的なものは超越していて、求道者のように自己表現し続けています。

 

それらをシンプルに実践出来ている人は、意外と少ないため、そういう意味では唯一無二の存在であり、身近な存在ですが、非常に尊敬してます。彼との音を通じてのコミュニケーションは、自分にとっては有意義な時間なので、今後も続けていきたいです。 

 


13. 


この質問は、特に、エレクトロニック・プロデューサーとしてお聞きしたいのですが、日本のクラブ・ ミュージックや、エレクトロニックの現在のミュージック・シーンに関して、いまいちヨーロッパのよう に大規模のシーンのようなものが見えづらいような印象もあるのですが、そのあたり、どのようにお考えでしょうか。

 

また、今後、ご自身のイベント開催などを通して、それらを一般的に普及させていこ うという計画などはありますか。 

 


Duenn→ 個人的な見解として、これから先も、国内のクラブカルチャーやエレクトロニックのミュージック・シーンが大規模なシーンになる可能性は極めて低いと思います。

 

ですが、そのカルチャーやミュージック・シーンにコネクトしていく人は、今も昔も一定数はいます。その一定数に向けて、伝統芸能のように継承していくイメージで、自身の自主企画を位置付けています。 

 


14. 


現在、福岡を中心に活動なさっているようですが、この都市をメインに活動している理由がありましたら教えてください。

 

最初期の作品にも「南区」というタイトルがありますが、やはり、福岡から発信したいのかな、という印象もあるんです。私自身は、情報の受け手としては東京が一番だと思うんですが、発信者としては関東にこだわる必要はないし、他の大都市圏のほうが良い場合もあると考えています。何か、現地のカルチャーに強く触発される時などはありますか。 

 


Duenn→ 気が付いたら、人生の半分以上を福岡で過ごしています。

 

時々仕事で東京に行くことも有りますが、もともと街育ちということもあるので、東京の人や情報が密集している感じも嫌いではないですが、自分にとっては、必要最小限のモノに囲まれている福岡のサイズ感が丁度良く、非常に生活しやすい場所です。 

 

また、基本的に、平日は仕事と自宅、休日は、本屋、映画館、美術館など、テリトリーが固定しているので、地元のカルチャーに触発される直接的な機会はほぼ無いですが、福岡に居ることで、 場所から無意識に影響を受けていることは、言葉であまりうまく言えませんが、有ると思います。 

 


15. 

 
最後の質問になります。今後のライブ予定、リリース情報、今年掲げている目標などありましたら教えてください。 

 


Duenn → ライブ予定は、8月に愛知県小牧市で開催される、こまぶんフェスタというイベントで、岡田拓郎君と美術家/鈴木康広さんとのインスタレーション的なライブを開催します。

 

リリースは、Koji Nakamura+Duenn+谷川俊太郎名義で、谷川さんの朗読に我々が音をつけた作品を、クラウドファンディングを通じてのリリースを目指しています。 

 

あと目標に関してですが、今年に限らず、生あるかぎり、作品を作り続けていきたいと思っています。 

 

 

(取材: Music Tribune  2023年8月2日 福岡↔東京) 



現在、Duenn & Satomimagaeのコラボレーション・アルバム『境界 Kyokai』が発売中です。また、詩人の谷川俊太郎さんとKoji Nakamuraさんとのリリース企画のクラウドファウンディングも受付中です。プロジェクトのご支援はこちらから可能です。ぜひ、こちらもチェックしてみて下さい。

 

お忙しい中、MUSIC TRIBUNEのインタビューをお受けいただき、ありがとうございました。

©︎Thibaut Grevet

ジェイムス・ブレイクが新曲「Loading」を発表した。リード・カット「Big Hammer」に続く、彼の6枚目のスタジオ・アルバム『Playing Robots Into Heaven』からのセカンド・シングルである。試聴は以下から。


『Playing Robots Into Heaven』は、2021年の『Friends That Break Your Heart』に続くアルバムで、9月8日にRepublicからリリースされる。


 

UKのBurial(ブリアル)が、2曲のシングル「Unknown Summer」、「Infirmary」をリリースした。

 

Burialの新曲は、昨年10月の『Streetlands EP』以来となる。この2曲は、Kode9とのスピリット『spilit 12(fabric Originals)』に収録される。

 

 

Vagabon

ニューヨークのSSW,Vagabon(ヴァガボン)が、今年末にリリース予定のニューアルバムからの新たなカットを公開した。
 

「Do Your Worst」は、レティシア・タムコのニューアルバム「Sorry I Haven't Called」(ノンサッチ・レコードより9月15日発売予定)の第3弾シングルとなっている。前作「Carpenter」、アルバムのオープニング曲「Can I Talk My Shit?」では、タムコがロスタム・バトマングリイとテオ・ハルム(SZA、ロザリア、FKA Twigs)と組んでプロデュースを担当した。

「クラブ・ミュージックを聴いていたので、ドイツやイギリスのアンダーグラウンド・クラブで聴けるような、それでいてヴァガボンの音楽的な辞書に載っているようなインストゥルメンタルを作ろうと思った。1年後、アメリカに戻ったとき、ロスタムを巻き込んだんだけど、彼はドイツのセッションのブレイクビーツに生ドラムを重ねるという素晴らしいアイデアを出してくれた」
 

 
「Do Your Worst」


The Chemical Brothers(ケミカル・ブラザーズ)が10枚目のスタジオ・アルバムの詳細を発表した。アルバムのタイトルは『For That Beautiful Feeling(フォー・ザット・ビューティフル・フィーリング)』で、9月8日にリパブリックからリリースされる。


自身のスタジオでレコーディングされた『フォー・ザット・ビューティフル・フィーリング』は、ケミカル・ブラザーズが "音に圧倒され、引きずり込まれそうになりながらも、最終的にはその波に乗せられ、未知の目的地へと向かうワイルドな瞬間 "をボトリングした作品だ。


このアルバムには、Beck(ベック)とフランスのサイケ・ポップ・シンガー、Halo Mauが参加しており、ハロ・モードは最近のシングル "Live Again "で歌っている。この曲は、ケミカル・ブラザーズのビデオで長年コラボレートしてきたDom & Nicが監督した、アルバム発表を記念した新しいビデオが公開されている。

 

「Live Again」
 

 


The Chemical Brothers 『For That Beautiful Feeling』


 
Label: Republic
Release: 2023/9/8
 

Tracklist:


1.Intro
2.Live Again (feat. Halo Maud)
3.No Reason
4.Goodbye
5.Fountains
6.Magic Wand
7.The Weight
8.Skipping Like a Stone (feat. Beck)
9.The Darkness That You Fear (Harvest Mix)
10.Feels Like I’m Dreaming
11.For That Beautiful Feeling (feat. Halo Maud)