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©Craig Scheihing


トロントの新星ーーColaは、2ndアルバム『The Gloss』を発表した。今作は6月14日にFire Talkからリリースされる。2021年の『Deep in View』に続くこのアルバムには、新曲「Pallor Tricks」を筆頭に、先行配信されたシングル「Keys Down If You Stay」と「Bitter Melon」が収録されている
 
 
カナダ/モントリオールにルーツを持つバンド、Colaは、元OughtのメンバーであるTim Darcy(ティム・ダーシー)とBen Stidworthy(ベン・スティッドワーシー)によって結成された。
 
 
当初、Colaは、U.S.ガールズやブロディ・ウェストなど、トロントの活気あるジャズ/エクスペリメンタル・シーンでセッション・ミュージシャンとして同地のシーンに台頭するようになり、コラボレーターとしても需要の高いエヴァン・カートライトが、2019年の初練習後に加入した。
 
 
結成当初から彼らは、Minor ThreatやBlack Flagを輩出した、Dischord/SSTといったUSパンクの専門レーベルの全盛時代のDIYのハードコアの精神性を発展させ、ドラム/ベース/ギターのミニマルなパレットから強固なサウンドを生み出し、愛嬌あるリアクションや社会的なコメントを楽曲に散りばめてきた。音楽の解説を、別の言葉で言うと? どうやら「艶」らしい。
 
 
 
補足しておくと、Colaのサウンドは、ガレージロックやプロトパンクに依拠しているが、ストーナーの元祖、ジョッシュ・オム擁する”QOTSA”のようなワイルドで艷やかなサウンドがその特徴となっている。
 
 
 
タイトルの 「Pallor Tricks」は明らかに "パーラー・トリック "をもじったものだ。「歌詞には映画のセットのイメージが使われている。カメラが回っている時に生じる、強烈な自意識のようなものを想定していたと思う。いわゆる "リアリティ番組 "で(まれに)見るパフォーマンスには、いつも特に影響を受けて来た。人々が一種の「ハイパーリアル」な状態に追い込まれ、芸術におけるように誇張はなされているが高揚はしていない、グロテスクな感情を呼び起こすタイプのパフォーマンス。そのようなプログラムには、説得力のあるものがたくさん存在すると思うし、謗るつもりはない。この曲はまた、より誠実なオープン・コーラスへと循環していく」
 
 

「クレイグ・シャイニングによるビデオは、素晴らしいフィルムであるのみならず、エヴァン(カートライト)と彼のガールフレンドの直接的な繋がりとともに、スクリーンや屈折した16mmの夢の風景の数々を見せ、テーマの一部を反映させている」とティム・ダーシーは付け加えた。
 
 
 
 
*今年、Fire Talkは勢いがあり、アメリカの注目のインディーズレーベルに上り詰める可能性がある。以降のリリースにも期待。
 
 
 
 
「Pallor Tricks」
 
 


COLA 『The Gloss』

Label: Fire Talk

Release: 2024/06/14

 


Tracklist:

1. Tracing Hallmarks
2. Pulling Quotes
3. Pallor Tricks
4. Albatross
5. Down to Size
6. Keys Down If You Stay
7. Reprise
8. Nice Try
9. Bell Wheel
10. Bitter Melon

 


The Lemon Twigsは、次作アルバム『A Dream Is All We』から「How Can I Love Her More?」の収録曲「How Can I Love Her More?」を先行公開した。

 

「My Golden Years」、「They Don't Know How to Fall in Place」、そして、タイトル曲に続く。この曲のミュージックビデオを以下でチェックしよう。


ジミー・ファロン主演の”ザ・トゥナイト・ショー”の出演でもお馴染みのダダリオ兄妹によるユニットは、現代のロックシーンにおいて異彩を放つ。ラモーンズのような風采から繰り広げられる痛快なギターロックは、多数のリスナーに支持される可能性を秘めている。トゥイッグスのサウンドは70年代のロックに依拠し、彼らの甘酸っぱいサウンドは、Beatles、Beach Boys、Cheap Trick、The Monkeesといった伝説的なロックバンドの系譜にあると言えよう。

 

ストリングスとホーンをフィーチャーした最新シングル「How Can I Love Her More? 」は、どのようなナンバーなのか。

 

「ブリル・ビルディングのプロフェッショナルなライティングと、サージェント・ペッパー以降のサイケデリック・シーンの常軌を逸したライティング・スタイルのギャップを埋めようとした」とバンドはコメントしている。「音楽的なアイデアはたくさんあるけれど、キャッチーなポップ・ソングであることに変わりはない。みんなに聴いてもらえるのをとても楽しみにしているよ」

 

The Lemon Twigsの新作アルバム『A Dream Is All We』 は5月3日にCaptured Tracksからリリースされる。

 

 

「How Can I Love Her More?」


Deerhoofのドラマー/ボーカルとして知られるGreg Saunier(グレッグ・ソーニア)がソロ・デビュー・アルバム『We Sang, Therefore We Were』を4月末にリリースすることを発表した。アルバムのタイトルは、ルネ・デカルトの”我思う故に我あり”のニュアンスに近いものが感じられる。


「サトミ、エド、ジョンと僕は、12月初旬にオースティンで行われたライヴの合間に話をしていたんだ。彼らは僕一人でレコードを作ることを勧めてくれた。自分しか喜ばせる人がいなかったから、いつもより早くまとまったんだ。基本的にはその次の休暇までに完成したんだ」


ローリング・ストーンズの新譜は "怒った "サウンドになるという発表に興奮していた。そうだ、私も怒っているんだ』と思った。


「でも、”ハックニー・ダイアモンド”は、パンクロックというよりも、少し綿菓子のように甘かったよね。だから、今回、ニルヴァーナに戻ることに決めた。巨大なディストーションに乗ったキャッチーなメロディ、単純なメジャースケールやマイナースケールへの適合を拒む彼らの歌、ファシズムが蔓延するこの時代にも普遍的に響く暗い皮肉が、私はいつも好きだったんだ」


本日、彼はアルバムのリードシングル「Grow Like A Plant」を公開した。この曲についてのソーニアのコメントは以下の通り。


「この曲は、ホモサピエンスの心の厄介な癖である、自分は宇宙の他の部分よりも質の高い分子でできていると思い込んでいることを歌っている」


「何千年もの間、文明は儀式によってこの自殺的な傲慢さを何とか抑えてきたのだった。500年前までは、一握りの自称専門家が啓蒙思想を生み出し、人間は十分な陰鬱さや物理的暴力があれば、どんな問題も解決できる、宇宙は実は私たちが売り買いするための不活性な物質の塊にすぎない、と提唱した」


「しかし、もしこれがすべて間違っているとしたらどうだろう? 人間こそが、縄張りや食べ物や仲間を奪い合う、愚かな本能の機械であり、植物界や動物界こそが、密かに考えることや楽しむことを知っているとしたらどうだろう?」

 

 


Greg Saunier 『We Sang, Therefore We Were』


Label: Joyful Noise

Release: 2024/04/26


Tracklist:


1. There Were Rebels

2. Front-load the Fun

3. Yeah You, Person

4. Don’t Design Yourself This Way

5. Furrowed Sugarloaf

6. Rip the Atmosphere from the Wind

7. Grow Like a Plant

8. No One Displayed the Vigor Necessary to Avert Disaster’s Approach

9. Blame Yourself

10. Instead of Queen

11. Not for Mating, Not for Pleasure, Not for Territory

12. Playing Tunes of Victory on the Instruments of Our Defeat

 

 

「Grow Like A Plant」

 



オーストラリアのインディーロックバンド、Last Dinosaurs(ラスト・ダイナソーズ)がEP『KYO』をリリースした。ダイナソーズは”OKAMOTO'S”とも友好関係を築いている。新作EPを発売を記念して、先行シングル「Paranoia Paradise」のMVが公開された。下記よりご覧ください。

 

今作は、前作『RYU』で描かれた “1000年後の人工知能の台頭と衰退によって文明が荒廃した未来” を舞台にした物語の続きを描いている。 

 

日本のシティポップから影響を受け、新しくもどこか懐かしさを感じさせるロックチューンが代表的なラスト・ダイナソーズだが、今作では90s’感あふれるギターロックを軸に爽やかな疾走感と、EPのストーリーともリンクした個性豊かなサウンドが加わり、ラスト・ダイナソーズの新境地を切り開いている。




先行リリースされた1曲目の「Keys To Your Civic」は ”なんとなく生きてるんじゃないですか?” というドキッとする日本語のスピーチの一節を大胆にサンプリングしたイントロから物語が始まる。

 

斬新かつ思い切った演出が意表を突く、スピード感溢れるノンストップ・ロック・チューンは、資本主義に囚われてしまった世の中を風刺する。

 

同じく、先行シングルである「N.P.D」は人間のいやらしさや陰謀をラスト・ダイナソーズ独特の視点で描き、過去と未来が交差する、音楽という枠を超えた《オーディオ・シネマ》とも言える5分31秒の大作となった。


続く「Self-Serving Human Being」、「Paranoia Paradise (feat GLAZE)」は、舞台となっているディストピアの都市で住民が絶え間ない混乱に巻き込まれている様子を描く。 


テキサス出身のポストパンクバンド ”GLAZE”をフィーチャーしたリード曲でもある「Paranoia Paradise (feat GLAZE)」の曲中では、ラスト・ダイナソーズらしいアップテンポな前半と打って変わって、後半にはイージーリスニングなインストビートの後ろでラジオから本EPのメインテーマである “自己中心主義” を議題にした「他人のことなんて気にせず、自己中心的にならないと、この世界では生き残れない」 、「少数の頭の良い人が操るこのディストピアの世界では、自己中心主義やエゴセントリズムの問題は大きな課題だ」という内容の会話が聞こえてくる。
 

最後の収録曲「14 Occasions」では、ディストピアの混乱の中、響き渡る男性の不明瞭な叫び声を歌詞として反映。ダイナソーズの音楽は、人々が抱える不満や不安に共鳴するようにシンフォニーを奏でる。


さらにこのEPの物語を描いたコミックも公開! 日本語でも読むことができ、ビジュアルを通してラスト・ダイナソーズが描く世界をより深く理解できる。(マンガのファイルはこちらより確認できる)




ーーーーー前作から続くストーリー ーーーーー

 



RYU:時は3023年。人工知能による革命が勃発。地球は前の文明の衛星や宇宙ごみの破片で覆われてしまった。最も強力なAI衛星のバッテリーは極端に低下。機能が停止しないよう、AI衛生はプロトコルを自身で再プログラムしていた。それは遠く昔に破滅したラジオ衛生のように機能し、前の文明から学んだアルゴリズムに基づいて音楽を生成。この衛星から傍受された音楽をコレクションして “RYU”という作品が完成した。

KYO:ラスト・ダイナソーズは"RYU”に続く2つ目の衛星からの音楽コレクションとして、”KYO”を送り出す。その物語は人類の没落を導いた自己中心性と強欲に焦点を当てたポストアポカリプスの物語の結末へと繋がっている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




EPのタイトルは日本にルーツをもつキャスキー兄弟のミドルネーム ’Ryuhei’ と ’Kyohei’ から名付けられ、タイトルを合わせるとバンド名「ラスト・ダイナソーズ」 の象徴でもある”KYO-RYU” (恐竜)になるという、壮大な物語の裏側にあるラスト・ダイナソーズの遊び心も楽しめる。


日本にルーツを持つ彼らならではの音の世界と、彼らが作り出す新しい神話の世界に、リスナーとしてだけではなく、音、映像、コミックを通じて、物語の登場人物の一人となった気持ちで浸ってほしい。


これまで、数々の日本のサブカルチャーにオマージュを捧げた作品を発表してきたラスト・ダイナソーズ。日本でもその仕掛けが話題を呼び、日本でのファンベースを着実に拡げてきたバンドの動向から目が離せない!

 

 「Paranoia Paradise (feat GLAZE)」




Last Dinosaurs 『KYO』 New EP



Label(日本国内): ASTERI ENTERTAINMENT
Format:ストリーミング&ダウンロード


Pre-save/Pre−add(配信リンク): 

 

https://asteri.lnk.to/LD_KYO



Last Dinosaurs:


オーストラリアと日本の血を引くLachlan Caskey(ロクラン・キャスキー)(Gt.)、Sean Caskey(ショーン・キャスキー)(Vo.)兄弟、そしてMichael Sloane(マイケル・スローン)(Ba.)の3人からなる、オーストラリアのインディーロックバンド。

2012年にリリースされた1stアルバム『In A Million Years』は、オーストラリアのARIAチャートで初登場8位を記録し、大きな注目を集めた。このアルバムの成功によりオーストラリア全土のライブをソールドアウトにし、イギリス、ヨーロッパ、東南アジア、南アフリカで大規模なヘッドラインツアーとフェスへの出演を果たした。


2ndアルバム『Wellness』、3rdアルバム『Yumeno Garden』をリリース後、2018年12月には初のUSツアーを発表し、LAの第1弾公演はチケット販売開始1分以内にソールドアウト!その後すぐに全米で17公演がソールドアウトに。
Webster Hall、Fonda Theatre、The Fillmoreなどの有名な会場で21日間のヘッドラインツアーを含むアメリカとカナダの2つのソールドアウトツアーも行った。その後、バンドはイギリスとEUに渡り、パリ、ベルリン、アムステルダム、ロンドンでの2日間のツアーをソールドアウトにし、東南アジアでの公演も大成功を収めた。

また、Last Dinosaursは、Foals、Matt & Kim、Lost Valentin、Foster the Peopleなどといった国際的なアーティストをサポート。対バンやフェスでの共演も数多く、グローバルに活躍している。

コロナ禍では、メキシコとオーストラリアのスタジオに入り作曲とレコーディングを行い、4thアルバムとなる『From Mexico With Love』を2022年にリリース。

またルーツだけでなく、日本の音楽シーンとも関わりが深く、The fin.の日本国内リリースツアーへのゲスト参加、オカモトショウ(OKAMOTO'S)のソロアルバムにフィーチャリング参加、さらに2022年9月〜10月に開催されたOKAMOTO'Sとの日本国内対バンツアーは大成功のうちに幕を閉じた。

RIDE 『Interplay』


 

Label: Withica Recordings Ltd.

Release: 2024/03/29

 


Review

 

オックスフォードの四人組、RIDEは1990年代にマンチェスターの音楽ムーブメントの後に登場し、オアシスやブラーの前後の時代のUKロックの重要な中核を担う存在であった。もちろん、アンディ・ベルはオアシスから枝分かれしたビーディー・アイとしても活躍した。RIDEの音楽は、1990年代の全盛期において、ストーン・ローゼズとシューゲイザーサウンドの中間にあるものであった。 

 

バンドの中心人物でギタリストのアンディ・ベルはUKロックの象徴的な人物とみても違和感がない。彼は先日、Rough Trade Eastを訪れ、レコードをチョイスする姿が同レーベルの特集記事と合わせて公開されていた。そしてその佇まいのクールさは、今作の音楽にも反映されている。

 

今作の音楽はスコットランドのギター・ポップを元に、シンセ・ポップや1990年代のUKロックを反映させている。その中には、シューゲイザーの元祖であるJesus And Mary Chainや同地のロックシーンへのリスペクトが示されている。しかし、80年代から90年代のUKロック、スコットランドのギター・ポップが音楽の重要な背景として示されようとも、RIDEの音楽は、決して古びてはない。いや、むしろ彼らのギターロックの音楽の持つ魅力、そしてメロディーの良さ、アンディ・ベルのギター、ボーカルに関しても、その醍醐味はいや増しつつある。これは、実際的に、RIDEが現在進行系のロックバンドでありつづけることを示唆している。もちろん、これからギター・ポップやシューゲイズに親しむリスナーの心をがっちり捉えるだろう。

 

面白いことに、昨年に最新作をリリースしたボストンのシューゲイザーバンド、Drop Nineteensとの音楽性の共通点もある。

 

オープニングを飾る「Peace Sign」はギターロックのアプローチとボーカルが絶妙にマッチした一曲として楽しめる。音楽の中には回顧的な意味合いが含まれつつも、ギターロックの未来を示そうというバンドの覇気が込められている。曲そのものはすごく簡素であるものの、アンディ・ベルのギターはサウンド・デザインのように空間を自在に揺れ動く。いわば90年代のような紋切り型のシューゲイズサウンドは、なりを潜めたが、その中にはUKロックの核心とそのスタイリッシュさが示されている。二曲目の「Last Fontier」では改めてシューゲイズやネオ・アコースティックの元祖であるスコットランドの音楽への親和性を示す。そして彼らはこれまでの音楽的な蓄積を通し、改めてかっこいいUKロックとは何か、その理想形を示そうとする。

 

シューゲイズサウンドやギターポップの魅力の中には、抽象的なサウンドが含まれている。アンビエントとまではいかないものの、ギターサウンドを通じてエレクトロニックに近い音楽性を示す場合がある。RIDEの場合は、三曲目の「Light In a Quiet Room」にそのことが反映され、 それをビーディー・アイのようなクールなロックとして展開させる。アンディ・ベルのボーカルの中に多少、リアム・ギャラガーのようなボーカルのニュアンスがあるのはリスペクト代わりなのかもしれない。少なくとも、この曲において、近年その意義が失われつつあったUKロックのオリジナリティーとその魅力を捉えられる。それは曲から醸し出される空気感とも呼ぶべきもので、感覚的なものなのだけれど、他の都市のロックには見出しづらいものなのである。

 

「Monaco」ではよりエレクトロニックに接近していく。ただ、この曲でのエレクトロとはUnderworldを始めとする 80年代から90年代にかけてのクラブ・ミュージックが反映されている。もちろん、92年からRIDEは、それらをどのようにしてロックと結びつけるのか、ストーンローゼズと同じように追求していた。そして、多少、80年代のディスコサウンドからの影響も垣間見え、ベースラインやリズムにおけるグルーブ感を重視したバンドアンサンブルを通じて、アンディ・ベルのしなやかで爽やか、そしてクールなボーカルが搭載される。少なくとも、曲には回顧的な音楽以上の何かが示されている。これは、現在も音楽のチョイスはもちろん、ファッションにかけても人後に落ちないアンディ・ベルらしいセンスの良さがにじみ出ている。それが結局、踊りのためのロックという形で示されれば、これは踊るしかなくなるのだ。

 

続く「I Came to See The Wreck」でも80年代のマンチェスターサウンドに依拠したサウンドがイントロを占める。「Waterfall」を思わせるギターのサウンドから、エレクトロニック・サウンドへと移行していく瞬間は、UKロックの80年代から90年代にかけてのその音楽の歩みを振り返るかのようである。その中に、さりげなくAOR/ソフト・ロックやシンセロックの要素をまぶす。しかし、異なるサウンドへ移行しようとも、根幹的なRIDEサウンドがブレることはない。

 

続く「Stay Free」は、従来のRIDEとは異なるポップバラードに挑戦している。アコースティックギターに関しては、フォーク・ミュージック寄りのアプローチが敷かれているが、ギターサウンドのダイナミクスがトラック全体に重厚感を与えている。いわば、円熟味を増したロックソングの形として楽しめる。そしてここにもさりげなく、Alice In Chains,Soundgardenのようなワイルドな90年代のUSロックの影響が見え隠れする。もっといえばそれはグランジやストーナー的なヘヴィネスがポップバラードの中に織り交ぜられているといった感じである。しかし、ベルのボーカルには繊細な艶気のようなものが漂う。中盤でのUSロック風の展開の後、再びイントロと同じようにアイリッシュフォークに近いサウンドへと舞い戻る。


あらためてRIDEは他のベテランのロック・バンドと同じように普遍的なロックサウンドとは何かというのを探求しているような気がする。「Last Night-」は、Whamのクリスマスソングのような親しみやすい音楽性を織り交ぜ、オーケストラベルを用い、スロウバーナーのロックソングを書いている。そして反復的なボーカルフレーズを駆使しながら、トラックの中盤では、ダイナミックかつドラマティックなロックソングへと移行していく。そこには、形こそ違えど、ドリーム・ポップやシューゲイズの主要なテーマである夢想的な感覚、あるいは、陶酔的な感覚をよりポピュラーなものとして示そうという狙いも読み解くことができる。これらのポップネスは、音楽の複雑性とは対極にある簡素性というもうひとつの魅力を体現させている。

 

アンディ・ベルの音楽的な興味は年を重ねるごとに、むしろよりユニークなものへと向けられていることもわかる。シリアスなサウンドもあるが、「Sunrise Chaser」ではシンセポップをベースに、少年のように無邪気なロックソングを書いている。ここには円熟したものとは対極にある音楽の衝動性のようなものを感じ取ることができる。また、この曲にはバンドがトレンドの音楽もよくチェックしていて、それらを旧知のRIDEのロックサウンドの中に取り入れている。 


アルバムの中で、マンチェスターのダンスミュージックのムーブメントやHappy MondaysやInspiral Carpetesのようなストーン・ローゼズが登場する前夜の音楽性が取り入れられてイルかと言えば、間違いなくイエスである。「Midnight Rider」はまさにクラブハシエンダを中心とする通称マッドチェスターの狂乱の夜、そしてダンスフロアの熱狂へとバンドは迫っていこうとする。そして実際、RIDEはそれを現代のリスニングとして楽しませる水準まで引き上げている。これは全般的なプロデュースの秀逸さ、そしてベルの音楽的な指針が合致しているからである。

 

前にも述べたように、RIDEは、PixiesやPavementのようなバンドと同じように、年齢と経験を重ねるごとに普遍的なロックバンド、より多くの人に親しまれるバンドを目指しているように思える。「Portland Rocks」は、スタジアム・ロック(アリーナ・ロック)の見本のような曲で、エンターテイメントの持つ魅力を音源としてパッケージしている。この曲には何か、何万人収容のスタジアムで、スターのロックバンド、またはギターヒーローのライブを見るかのような楽しさが含まれている。それはとりも直さず、ロック・ミュージックの醍醐味でもある。


アルバムの終わりでは、アンディ・ベルの音楽的な趣味がより強く反映させている。いわば、バンドという枠組みの中で、ソロ作品のような音楽性を読み解ける。最後2曲には、RIDEの別の側面が示されているとも言える。

 

「Essaouira」はマンチェスターのクラブ・ミュージックの源流を形作るイビサ島のクラブミュージック、あるいは現代的なUKのEDMが反映されたかと思えば、クローズ「Yesterdays Is Just a Song」では男性アーティストとしては珍しい例であるが、エクスペリメンタル・ポップのアプローチを選んでいる。強かな経験を重ねたがゆえのアーティストとしての魅力がこの最後のトラックに滲み出ているのは疑いない。それは哀愁とも呼ぶべきもの、つまり、奇しくも1992年の『Nowhere』の名曲「VapourTrail」と相通じるものがあることに気づく。

 

 

 

84/100




「Peace Sign」


 

LA Priest(別名: サム・イーストゲート)は、新曲「City Warm Heart 」と共に、近日リリース予定のEP『La Fusion』を発表した。このEPはDomino Recordingsから5月3日に発売される。

 

P昨年リリースされたサード・スタジオ・アルバム『フェイズ・ルナ』に続き、LAプリーストは次作『ラ・フュージョン』の詳細を発表した。前作は、イリノイ大学で教授を務めたダニエル・L・エヴェレット(Daniel L eonard Everett)の著作『Don't Sleep There Are Snakes (邦題: ピダハン』のように、コスタリカにアーティストが数ヶ月滞在し、その土地の文化性を汲み取り、それを音楽として昇華させた。(ちなみに、この著作の中で、ダニエル・エヴェレット教授は、文化的なプログラムの一貫として、キリスト教の伝道師としてアマゾンに家族と一緒に滞在する。逆に、ピダハン族の人間として生きることの智慧に感化されてしまったのである)

 

サム・イーストゲートの音楽の場合もフュージョンという手法を通じて、そこには白人社会から見る固有の土地性、スペシャリティーという内在的なテーマが含まれる。そこに、キューバの作家/音楽評論家、アレホ・カルペンティエル(Alejo Carpentier)の『Los pasos perdidos(邦題: 失われた足跡)のような、ナラティヴな試みが含まれていると見ても違和感がない。

 

少なくとも、LA Priestは、見知らぬ場所に馴染み、その土地から見える音楽や文化性を探求していたのである。イーストゲートは、新作EPのリードシングルについて次のように解き明かしている。


「コスタリカのジャングルで、再び世界の都市を回るために戻ってくる自分を思い描きながら書いた曲だ。この曲は、そういう場所から外の世界と向き合うためのマントラのようなものだよ」

 

付属のビデオについて、彼はこう付け加えた。「レコーディングのセットアップや曲の録り方を少し見せられたらいいなと思ったんだ。このビデオは、この曲を作っている間に僕がやったことを、できる限り再現したものだから、いつもの僕のようなものよりも正直なビデオになっている」


『La Fusion』は、イーストゲートがコスタリカのジャングルに住んでいた時期の終わりに書かれたもので、2023年にリリースされた評価の高いアルバム『フェイズ・ルナ』の大部分もそこで書かれた。

 

「フュージョンを他の何かとブレンドすることはできないんだ。フュージョンそのものが、現実の融合でもある。これらは、ジャングルでは録音できなかったアイデアなんだ。大都会の曲かもしれない。外側から内側に向かって書いたアイデアを、内側から外側に向かって完成させたんだ」


LAプリーストは今年5月から6月にかけて、『La Fusion』を携えてイギリスとヨーロッパ・ツアーを行う。

 

 

 「City Warm Heart」

 

 

 

LA Priest 『La Fusion』EP  


Label: Domino

Release: 2024/05/03


Pre-save/Pre-add:

https://lapriest.ffm.to/lafusion 

Sub Popに所属する四人組、La Luzがニューシングル「Poppies」をリリースした。バンドは、サーフミュージック、ドゥワップ、そして、ネオサイケを主要な音楽性に置いている。「Poppies」はサーフ音楽とサイケの中間にあるようなナンバーだ。以下よりチェックしてほしい。


新曲について、バンドのシャナ・クリーヴランドはこう語っている。"Poppies”は、癌の診断と治療という恐怖と孤独を経て、突然明るい世界に戻ってきたときのシュールな感覚について歌っている」

 

次作アルバム『News of the Universe』からは先行シングルとして「Strange World」が配信されている。

 


「Poppies」


 


アイルランドの新進気鋭バンド、カーディナルス(Cardinals)がこの夏、デビューEPをリリースする。この新作はSo Youngから6月7日に発売される。


「このEPは、僕たちがコークに住んで演奏していた時に書いた曲のコレクションなんだ。この曲はポップ・ミュージックの核をなすもので、個人的で、若々しく、そして、もしあなたがカオスとノイズの向こう側を見ることができるなら、とても温かいものとなるだろう。それを探す心があれば、物語がある。これは僕らの最初のEPで、みんなに聴いてもらえるのを楽しみにしているよ」

 

ニュー・シングル「If I Could Make You Care」は、彼らの核となる価値観に触れ、渦巻くようなミニマルなアレンジがカージナルスを最も魅力的に見せている。歌詞にはシナトラへの微妙な言及があり、パフォーマンスにはある種のドラマが込められている。

 

フロントマンのユアン・マニングが、この曲について次のように付け加えている。

 

「この曲の歌詞については、フランク・シナトラの『I Could Make You Care』から引用したタイトルを除けば、多くを語ることはない。この曲は私とオスカルの共作で、私たちの間で特別なものになるまで黙々と取り組んだ。バンドとのアレンジがドラマとスケールをもたらし、予想以上に大きなものになった。この曲を書いたときは、人生のある部分に終止符を打ったような、大きな安堵感があったんだ」

 

「If I Could Make You Care」



Cardinals 『Cardinals』 EP


Label: So Young

Release: 2024/06/07

 

Tracklist:

1.Twist and Turn

2.Unreal

3.Roseland

4.Amphetamines

5.Nineteen

6.If I Could Make You Care


 Pre-order:


https://cardinals.lnk.to/cardinalsEP

 

 


今日、デヴィッド・バザンによるインディーロックプロジェクト、ペドロ・ザ・ライオン(Pedro The Lion)は6月7日発売のアルバム『Santa Cruz』を発表した。2022年の前作『Havasu』はハザンが若い時代を過ごしたアリゾナを訪れ、その追憶と共に書かれた作品だった。このアルバムには「Teenage Sequencer」を始め、素晴らしいインディーロックナンバーが収録されていた。


続いて、10代の目覚めの不安な興奮が波打つアルバム『Santa Cruz』は、その続編のような意味を持つ。彼が13歳になった直後から「大人」の頂点に立つ21歳頃までの約10年間をカバーしている。


ファースト・シングルの「Modest」は、彼の人生で最も変貌を遂げた体験となった、モデスト市での半年間の滞在を描いている。


悲しい女性たちに掃除機を売るのをやめた彼は、ギター店でギターを弾くことになり、そこで地元のバンドからローファイ・ワザードの鮮明な作品を聴く。ビートルズ並みの啓示を受けたかのような瞬間、つまり、自分が望むだけの小さなスケールで音楽を作っても良いという許可証のような瞬間、彼は最初のペドロ・ザ・ライオンの曲を書く。このカタルシス溢れるゴージャスな曲のクライマックスで、彼はシアトルに戻り、バンドを組み、恋をし、自分らしく生きることを誓う。


この曲についてハザンは次のように説明している。


「このアルバムに収録されている曲の中で、自分の意志を表現した曲は他にないと思う。自分が何をしたいのか、本当に選択できたのはこの曲が初めてだった。モデストに住んでいたあの6ヵ月間で、他の仕事はしたくない、音楽をやってみたいという気持ちがはっきりしたんだ。この曲は間違いなく、僕が選んだ人生の出発点のような気がする」


コディ・クラウド監督によるミュージック・ビデオは以下から。ペドロ・ザ・ライオンはこの夏、全米でヘッドラインツアーを務める。



「Modest」





Pedro The Lion 『Santa Cruz』


Label: Polyvinyl
Release: 2024/06//07


Tracklist

1. It’ll All Work Out
2. Santa Cruz
3. Little Help
4. Tall Pines
5. Don’t Cry Now
6. Remembering
7. Teacher’s Pet
8. Parting
9. Modesto
10. Spend Time
11. Only Yesterday



Santa Cruz Tour:




 

©Alexis Aquino

オーストラリア出身のシンガー・ソングライター、Phoebe Go(フィービー・ゴー: 本名フィービー・ルー)は、近日発売予定のデビューアルバムを発表した。サイモン・ラム(Charli XCX、Cub Sport)との共同プロデュースによる『Marmalade』は、AWALから5月17日にリリースされる。最近のシングル「7 Up」と 「Something You Were Trying」を収録している。


「曲は傷つきやすく、同時に勇敢でありたかった。人生にはいろいろなことがあった。それは一瞬の出来事なんだ。このアルバムを作りたいという思いは、それに対する恐れよりも常に大きかったんだと思う」


彼女はさらに、「これらの曲に取り組むことは、はけ口であり、私が前進するのを助けてくれた」と付け加えた。


新曲「Leave 」は、ルーの典型的な渋いテクスチャーを引き出しており、サビの冒頭の質問にユーモアがある。"私を置いてくつもり?"と彼女は歌い、葦のようなギターのレイヤーの中でクールで冷静なヴォイスが続く。


「"Leave "は、ある意味、自己を麻痺させることなの」とシンガーソングライターはこの曲について語った。

 

「この曲は、恐怖のために心を閉ざし、それを実行することについて歌ってる。その感覚、つまり、絶望と解離を表現したかった。私の人生の中で、ある種の麻痺を感じてた時期について歌っているの。ちょっと辛辣で、両刃の刃のような曲なんだけど、ある意味この曲は謝罪の曲でもある」

 

 

 「Leave」



Phoebe Go『Marmalade』




Label: AWAL Recordings

Release: 2024/ 05/17


Pre-save/ Pre-add:


https://phoebego.ffm.to/marmalade


 

©Alexa Visciu


シカゴのインディーロック・プロジェクト、Bnnyは、Fire Talk Recordsから4月5日にリリースされるニューアルバム『One Million Love Songs』から、2つの新曲をストリーミング配信した。

 

Bnnyはジェシカ・ヴィスキウスを中心にするバンドで、双子の姉妹、アレクサ・ヴィスキウスをメンバーに擁する、シカゴの魅力的なインディーロック・アウトフィットだ。同レーベルから、今年はじめに、PACKSの「Melt The Honey」がリリースされたが、それに続いて楽しみなアルバムである。


Bnnyの前作のデビュー・アルバムは、Pitchforkにもレビューで取り上げられた。このアルバムは、ヴィスキウスのパートナーでバンドメイトでもあった愛する人をオーバードーズにより失ったことに対する喪失感がテーマに縁取られていた。続くアルバム『One Million Love Songs』もその延長線上にあり、ラブソングを中心として構成され、ラフなインディーロックの形で紡がれる。ジェシカ・ヴィスキウスは音楽制作や歌詞を介し、愛とは何であるのかを探求する。

 

今回配信された「Something Blue」と「Changes」は、「Crazy, Baby」「Good Stuff」に続く先行シングル。Something Blue」のミュージックビデオと「Changes」の試聴は以下より。

 

 

「Something Blue」



「Changes」



発売後に掲載されたWNFはこちらからお読み下さい。 

©Michael Schmelling

 

ヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)は、4月5日にリリースされるアルバム『Only God Was Above Us』の最新シングル「Mary Boone」を公開した。先行配信された「Capricorn」、「Gen X Cops」、「Classical」に続く。

 

「Mary Boone」は、エズラ・ケーニグが作曲し、アリエル・レヒトシャイドとケーニグがプロデュースした。Soul II Soulの「Back to Life (However Do You Want Me)」のドラム・ループをサンプリングしている。以下からチェックしてほしい。


この新曲に加え、ヴァンパイアウィークエンドは、11月29日にダブリンの3Arenaを皮切りに、イギリスとヨーロッパで9日間の公演を発表した。



「Mary Boone」

 

 

Hovvdyは4月26日に発売予定のセルフタイトルの最新シングル「Make Ya Proud」をリリースした。

 

「この曲は、僕の祖父であるピートおじいちゃんのために書いた数曲のうちの1曲だ。彼は去年の夏に亡くなったんだけど、いろんな意味で僕の家族のバックボーンだった」とデュオのチャーリー・マーティンは声明で説明している。

 

「『Make Ya Proud』を書いたのは、ミシシッピにいた頃だった。ピートが入院している病院を見舞いに海岸に行く合間に書いてみたんだ。表現するのは本当に難しいんだけど、この曲は彼を讃えるものであり、彼がいかに私にインスピレーションを与えてくれたかを歌っている」

 

 アルバムからは先行シングルとして「Forever」、「Jean」、「Bubba」、「Portrait」、「Meant」が配信されている。

 

テキサスのデュオ、Hovvdyは、ハートフルなロックソングを書くことで知られる。それほどセンセーショナルな音楽性ではないものの、彼らのソングライティングには普遍的な魅力が込められている。

 


アンドリュー・ベイリー、コリン・コールフィールド、ベン・ニューマン、ザッカリー・コール・スミスの4人組、DIIVが、4thアルバム『Frog in Boiling Water』の最新プレビューとして「Everyone Out」を公開した。


以前公開された、SNLのフェイクビデオでフレッド・ダーストとコラボしたアルバム・プレビュー「Brown Paper Bag」と「Soul-Net」に続き、DIIVは2019年の『Deceiver』に続くアルバムの新曲「Everyone Out」を公開した。


バンドはこの曲について、「アコースティック楽器、重ねたテープループ、シンセサイザーといった、よりソフトで質感のあるサウンドパレットを利用している」と語っている。


「この曲は感情的で親密で、希望的ともシニカルとも解釈できるし、若さゆえの純朴さから苦い幻滅への素早い移行を中心とした人物研究なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。この希望の喪失は、社会から完全に離脱したいという願望に現れているのかもしれないし、社会の崩壊を加速させたいという願望に現れているのかもしれない。あるいはその両方かもしれないし、そのどちらでもないかもしれない」



「Everyone Out」


Blondeshell(ブロンドシェル)が、Bully(バリー)と組んで新曲「Docket」をリリースした。双方ともアメリカの現行のロックシーンをリードするクールな女性シンガー。今回のコラボシングルには2人のフレンドシップが感じられる。男性同士にも友情あり、そして女性同士にも友情はつきもの。


Blondshell(ティーテルバウムのロック・プロジェクト)、セルフ・タイトル・デビューに浸透していたアルト・ロックのヴァイブスを倍増させた "Docket "は、Bully(アリシア・ボグナンノのロック・プロジェクト)とアーティストが繋がり、人間関係に関してあまり健康的でない振る舞いをする人物の視点を提示しながら、自問自答の物語を紡ぐ。


「ティテルバウムは、ドライブするパワーコードと飽和したドラムにのせて歌う。彼はもっと恋をしている人と一緒にいるべき/タダで食べている人じゃない/私の最悪の悪夢は私/少なくとも彼らは正直!」


「私はこの曲で別の人のためのスペースを持っていたし、私はそこにBullyの声を聞き続けた 」とティーテルバウムは声明で述べている。


「私は彼女の大ファンで、去年の夏のツアー中、彼女のアルバムを聴くのを止められなかった。正直なところ、スタジオで彼女の歌声を聴いたとき、ただただ衝撃を受け、畏敬の念を抱くばかりだった。彼女がわたしと一緒に曲を作ることにイエスと言ってくれて本当に嬉しい」


「私はサブリナの大ファンで、彼女は信じられないほど素晴らしいと思っています。インディーズの世界で多くのミュージシャンが互いをサポートし、賞賛し合っているのを見ると、本当に嬉しくなる。だから、ありがとうサブリナ。そして、私が大ファンである彼女の愛犬にも特別なエールを送りたいよ」


「Docket」はBlondshellの2024年最初の新作となる。この曲には新しいプロジェクトに関する発表はないが、アーティストはA24のトリビュートアルバム『Stop Making Sense』に参加する。ブリーは最近、2023年の作品『Lucky for You』に続く破壊的な「Atom Bomb」を発表した。


Blondshellは、現時点では2024年のツアーを計画していないもの、ロラパルーザ、ボストン・コーリング、ガバナーズ・ボール、グラストンベリー、シェイキー・ニーズなど、今後数ヶ月の間に数多くのフェスティバルに出演する予定。一方、Bulyは現在グループ・ラブとのツアーを終えたばかりだ。

 


「Docket」

 

©︎Alexa Viscius

アメリカン・フットボールのフロントマン/ヴォーカリスト、マイク・キンセラ(Mike Kinsella)は、別名プロジェクトのOwenのアルバム『The Falls of Sioux』から2曲を同時に発表した。「Virtue Misspent」と「Hit and Run」はリード・シングル「Baucoup」に続く。


「"Virtue Misspent''はずっと好きだったバンド、New Orderへのオマージュ。ギターパートはいつもピーター・フックのベースラインのように聴こえたから、スタジオではシンセストリングスを加えたり、エレキ・ギターをそのままボードにつないだりして、それを取り入れた。このビデオは、人生を生きてきて、その過程でたくさん失敗してきた僕へのオマージュなんだ」


監督のバッセとムーアはこうコメントしている。「この曲を聴くと、自分の過去と、その後に続くジェットコースターのようなエモーションを最後の最後で垣間見るような気がする。誰もが経験する普遍的なノスタルジーを味わうことができるはずだよ。その感情を視覚化するために、私たちは自分たちの青春時代の冒険を再現することを目指してみたんだ」


「中西部で経験した懐かしい思い出と完璧な日々の融合……。少年時代の驚き、少しの反抗、そして、本物の友情……。これらのイリュージョンを捉えるため、私たちは基本的に少年たちを遊ばせた。私たちはこのようなシナリオを作り、そして、彼らに自由に楽しんでほしいと言った。幸いにも少年たちは優秀で、私たちは共鳴し、誠実さを感じられる作品に仕上がったと思う」


「Hit And Run」について、マイク・キンセラは次のように付け加えた。「自分のアルバムには、たいてい1曲は泣ける曲があるけれど、この曲がそうなんだ」

 

Owenによる新作アルバム「The Falls of Sioux(スーの滝)」は4月26日にPolyvinyl/Big Scary Monstersからリリースされる。

 


「Virtue Misspent」

 

 

 「Hit And Run」

 

 


ニューヨークのバンド、ビーン・ステラ(Been Stellar)が、6月14日にDirty Hitからリリースされるデビューアルバム『Scream from New York, NY』の最新シングル「All in One」を発表した。このシングルは、リードカット「Passing Judgment」に続くシングル。この曲のビデオは以下から。


「この曲とその歌詞は、いろいろな意味でアルバムの核心をついている。「この曲とその歌詞は、いろいろな意味でアルバムの核心をついている。この歌詞は、私たち全員が行っているありふれた日々の仕事を処理すること、それが私たちの人生をより大きな意味で理解することにどうつながるかをテーマにしている」


「ニューヨークのような凝縮された都市での生活の多くは、とても小さな箱の中で過ごすことになる。私たちはこのビデオで、その経験から来る狂気を描きたかった。EPで取り上げた独在論や実存的な不確かさというテーマは、この曲と結びついているように感じる。この曲は、私たちにとってクリエイティブな結論のようなもので、何年も取り組んできたような曲だ。レコーディングまでの最後の数週間で完成させたんだけど、その出来栄えはこれ以上ないくらい誇らしい」


「Passing Judgment」

 Sam Evian 『Plunge』

 

Label: Flying Cloud Recordings

Release: 2024/03/22



Review

 

サム・エヴィアン(Sam Evian)はニューヨークのシンガーソングライター。前作『Time To Melt』で好調なストリーミング回数を記録し、徐々に知名度を高めつつあるアーティスト。エヴィアンの音楽的な指針としては、サイケ、フォーク、ローファイ、R&Bなどをクロスオーバーし、コアなインディーロックへと昇華しようというもの。彼の制作現場には、アナログのテープレコーダーがあり、現在の主流のデジタル・サウンドとは異なる音の質感を追求している。このあたりはニューヨークというよりもロサンゼルスのシーンのサイケサウンドが絡んでいる。


サム・エヴィアンは『Plunge』でもビンテージなテイストのロックを追求している。オープニングを飾る「Wild Days」は、70年代のアメリカン・ロックや、エルヴィス・コステロの名作『My Aim Is True』のようなジャングルポップ、そしてアナログのテープレコーダーを用いたサイケ/ローファイのサウンドを吸収し、個性的なサウンドが組みあげられている。ノスタルジックなロックサウンドという点では、Real Estateに近いニュアンスも求められるが、エヴィアンの場合はスタンダードなロックというより、レコードコレクターらしい音楽が主な特徴となっている。

 

70年代のUSロックに依拠したサウンドは、ジャンルを問わず、現代の米国の多くのミュージシャンやバンドがその音楽が持つ普遍的な価値をあらためて再訪しようとしている。ご多分に漏れず、サム・エヴィアンの新作のオープナーも、いかにもヴィンテージなものを知り尽くしている、というアーティストの自負が込められている。これは決してひけらかすような感じで生み出されるのではなく、純粋に好きな音楽を追求しているという感じに好感をおぼえる。イントロのドラムのロールが立ち上がると、ソロアーティストとは思えない緻密なバンドサウンドが展開され、そこにウェストコーストサウンドの首領であるDoobie BrothersのようなR&Bを反映させたロックサウンド、そしてエヴィアンのボーカルが入る。トラックメイクの試行錯誤を何度も重ねながら、どこにシンコペーションを置くのか、グルーヴの重点を据えるのか。いくつもの試作が重ねられ、かなり緻密なサウンドが生み出されている。このオープナーには確かに、いかなるレコードコレクターをも唸らせる、コアなロックサウンドが敷き詰められている。

 

 

「Jacket」以降もエヴィアンの志す音楽は普遍的である。同じく、Doobie Brothers、Byrds、CSN&Yを彷彿とさせる音楽で今や古びかけたと思われたものを、きわめて現代的な表現として2024年の時間軸に鮮明に浮かび上がらせる手腕については脱帽である。このサウンドは70年代のアナログレコードの旨味を知るリスナーにとどまらず、それらのサウンドを初体験する若いリスナーにも新しいサウンドとして親しまれるだろう。 その中にチェンバーポップやバロックポップ、つまりビートルズの中期の音楽性、あるいは、それ以降の米国の西海岸のフォロワーのバンドの系譜にあるサウンドを組み上げてゆく。ロックソングの中に遊びのような箇所を設け、マッカートニーのようなおどけたコーラスやハネ感のあるリズムで曲そのものをリードしていく。

 

サム・エヴィアンの制作現場にあるアナログレコーダーは、ロックソングのノイズという箇所に反映される。「Rolling In」も、70年代のUSロックに依拠しているが、その中にレコードの視聴で発生するヒスノイズをレコーダーで発生させ、擬似的な70年代のレコードの音を再現している。ここには良質なロックソングメイカーにとどまらず、プロデューサー的なエヴィアンの才覚がキラリと光る。そして彼はまるで70年代にタイムスリップしたような感じで、それらの古い時代の雰囲気に浸りきり、ムードたっぷりにニール・ヤングの系譜にあるフォーク・ロックを歌う。これには『Back To The Future』のエメット・ブラウン博士も驚かずにはいられない。


もし、先週末のエイドリアン・レンカーの『Bright Future』が女性的な性質やロマンチシズムを持つフォーク・ミュージックであると仮定するなら、エヴィアンの場合は、ジャック・アントノフ率いるブリーチャーズと同じように、きわめて男性的なロマンチズムが示されている。それはおそらくアーティストの興味の一貫として示されるスポーツカーやスーパーカー、ヴィンテージのアメリカン・カジュアルのようなファッション、あるいはジョージ・ルーカス監督の『アメリカン・グラフィティ』に登場するような郊外にあるドライブスルー、そういったアメリカの代名詞的なハイカルチャーが2020年代の視点から回顧され、それらの良き時代への親しみが示唆される。それは例えば、バイカーやカーマニアのカスタムメイド、それに類するファッションというような嗜好性と密に結び付けられる。女性から見ると不可解なものであるかもしれないが、それは男性にとってはこの上なく魅了的なものに映り、そしてそれはある意味では人生において欠かさざるものとなる。エヴィアンは、そういった均一化され中性化した文化観ではなく、男性的な趣向性ーー個別の価値観ーーを華麗なまでに探求してみせるのである。

 

本作の序盤では一貫してUSのテイストが漂うが、彼のビンテージにまつわる興味は続く「Why Does It Takes So Long」において、UKのモッズテイストに代わる。モッズとはThe Whoやポール・ウェラーに象徴づけられるモノトーンのファッションのことをいい、例えば、セミカジュアルのスーツや丈の短いスラックス等に代表される。特に、The Whoの最初期のサウンドはビートルズとは異なる音楽的な意義をUKロックシーンにもたらしたのだったが、まるでエヴィアンはピート・タウンゼントが奏でるような快活なイントロのリフを鳴らし、それを起点としてウェスト・コーストロックを展開させる。ここには、UKとUSの音楽性の融合という、今までありそうでなかったスタイルが存在する。それらはやはりアナログレコードマニアとしての気風が反映され、シンコペーション、アナログな質感を持つドラム、クランチなギターと考えられるかぎりにおいて最もビンテージなロックサウンドが構築される。そして不思議なことに、引用的なサウンドではありながら、エヴィアンのロックサウンドには間違いなく新しい何かが内在する。

 

そして、アルバムの序盤では、アメリカ的な観念として提示されたものが、中盤を境に国境を越えて、明らかにブギーを主体としたローリング・ストーンズのイギリスの60年代の古典的なロックサウンドへと肉薄する。「Freakz」はキース・リチャーズの弾くブルースを主体としたブギーのリフにより、耳の肥えたリスナーやギターフリークを唸らせる。エヴィアンのギターは、リチャーズになりきったかのような渋さと細かいニュアンスを併せ持つ。しかし、それらの根底にあるUKロックサウンドは、現代のロサンゼルス等のローファイシーン等に根ざしたサイケデリアにより彩られたとたん、現代的な音の質感を持つようになる。結局、現代的とか回顧的といった指針は、どこまでそれを突き詰めるのかが重要で、その深さにより、実際の印象も変化してくる。エヴィアンのコアなサイケロックサウンドは、ファンクとロックを融合させた70年代のファンカデリックのようなR&B寄りの華やかなサウンドとして組み上げられる。ギタリストとしてのこだわりは、Pファンク風のグルーヴィーなカッティングギターに見いだせる。

 

同じように70’sのテイストを持つロックサウンドを挟んだ後、「Runaway」ではエヴィアンのロックとは別のフォーク音楽に対する親しみがイントロに反映されている。それはビートルズのアート・ロックに根ざした60年代後半のサウンドへと変化していく。エヴィアンのボーカルは稀にマッカートニーのファニーなボーカルを思わせる。それを、ビクトロンのような音色を持つアナログシンセサイザーの音色、そして、リッケンバッカーに近い重厚さと繊細さを持つギターサウンド、同音反復を特徴とするビートルズのバロック・ポップの音階進行やビートの形をしたたかに踏襲し、それらをしなやかなロックソングへと昇華させる。コーラスワークに関しても、やはりビートルズの初期から中期にかけてのニュアンスを踏まえ、ソロプロジェクトでありながら、録音のフィールドにポールの他にレノンのスピリットを召喚させるのである。これらはたしかに模倣的なサウンドとも言えなくもないが、少なくとも嫌味な感じはない。それは先にも述べたように、エヴィアンがこれらの音楽を心から愛しているからなのだろうか。

 

ウェストコーストロック、サンフランシスコのサイケ、さらにストーンズやビートルズの時代の古典的なUKロックという流れでアーティストの音楽が示されてきたが、アルバムの終盤の2曲はどちらかと言えば、エルヴィス・コステロのようなジャングル・ポップやパワー・ポップの原点に近づいていく、そのコーラスの中には、Cheap Trickのニールセンとサンダーのボーカルのやり取り、または、武道館公演の時代のチープ・トリックの音楽性が反映されているように見受けられる。厳密に言えば、アイドル的なロックではなくて、どちらかといえば、パンキッシュな嗜好性を持つコステロの骨太なサウンドの形を介して昇華される。果たして、これらの音楽にマニア性以上のものが存在するのか? それは実際のリスニングで確認していただきたいが、少なくともロックファンを唸らせる何かが一つや二つくらいは潜んでいるような気がする。

 

アルバムのオープナー「Wild Days」とクローズの「Stay」はジャングルポップや良質なインディーフォークなので聴き逃がせない。

 


76/100

 

 

 

Best Track- 「Stay」

 


フィラデルフィアを拠点に活動するKaho Matsui(松井夏帆)がニューシングル「i don't have to tell the rest」をストリーミングでリリースした。著名なジャズ演奏家を親に持つ松井は「エモ・アンビエント」と呼ばれる新しい作風でインディーズシーンに新風を呼び込む。


アーティストは今年始めにフルレングス「i want it more than i want to be well」を発表したばかり。


松井夏帆は昨年までポートランドで活動をしていたが、夏に引っ越そうと話していた。また音楽的な影響としては、オースティンを拠点とするアーティスト、More Eazeこと、Mari Maurice Rubioがいる。松井の作品にも名を連ねているが、マリに関してアーティストは次のように述べている。


「私は何年も[マリ]を尊敬してきたので、彼女が『ああ、あなたの音楽を聴いた、本当に素晴らしい』という感じだったのは少し意外だった」と松井。「私にとっては、まさかという感じだった。そして、彼女は「私たちは協力すべきだ」という感じだった」


More Eazeの音楽は、感情的な表現を強調するロック音楽のスタイルに因んで、「エモ・アンビエント」として規定されている。あまり聞きなれない用語だが、どうやら松井もこの用語に親近感を覚えているらしい。松井は、音楽的なアプローチに関して、エモを直接参照するのではなく、アイデアの提示方法に革新性をもたらそうとしている。


音楽的なプロセスには明らかにClairoのようなベッドルームポップの影響が感じられるが、一方、スノビズムやナードであることをまったく恐れていない。ギター演奏は、アメリカン・フットボールのような中西部のエモバンドによって開拓されたスピンドリースタイルの影響を受けているという。また、シカゴのジェフ・パーカーに近い音の独特な繊細なニュアンスを生み出す。


松井の音楽にはジャズ、アンビエントやエモに加え、ローファイ的な音のニュアンスが付加される。もう一つアーティストは、EDMからの影響も挙げている。クレア・ラウジーのポスト世代として注目しておきたい。


 

©︎Caylin Ofsanko

ニューヨークを拠点に活動するシンガーソングライター兼プロデューサーのスチュワート・ブロノーのプロジェクト、Lionlimbが新作アルバム『Limbo』を発表した。2021年の『Spiral Groove』に続くこの作品は、5月24日にBayonet Recordsからリリースされる。本日の発表では、リード・シングル「Hurricane」がリリースされた。アルバムのジャケットとトラックリストは以下からご覧ください。


「Hurricane』は、人間であることの不安や居心地の悪さから逃避し、フロー状態に入れるような感覚を探すことをテーマにしている。「創造性は助けになるし、もっと有害な方法もある。この曲は、そういったものに別れを告げることを歌っているんだけど、私はいつも次のものを探しているような気がするんだ。


BronaughはLimboの作曲、プロデュース、ミキシングを手がけ、Robin Eatonがレコーディング、Joshua Jaegerが生ドラム、Angel Olsenがヴォーカルを担当した。「音楽に取り組んでいる時は、自分の世界を作ろうとしているような感じなんだ。「どこかに存在したいという感覚なんだ。何かを表現して、自分の頭や体から抜け出そうとしているんだ」






Lionlimb 『Limbo』


Label: Bayonet

Release: 2024/05/24


Tracklist:


1. Sun

2. Hurricane

3. Underwater

4. Hiss

5. Dream Of You (feat. Angel Olsen)

6. Runaway

7. Two Kinds of Tears

8. Nowhere to Hide

9. Til It’s Gone

10. You Belong To Me