デトロイトのロックバンドMC5の共同創設者、ギタリスト、シンガーのウェイン・クレイマーが75歳で亡くなった。MC5はガレージロックバンドとして影響を持つのみならず、プロトパンクの源流を作る最重要のグループ。ザ・ストゥージズ、グランドファンクレイルロードとともに、米国のラウドロックの先駆者に挙げられる。彼らのロックは音響的な可能性、そして荒削りではありながら未来的なものだった。


ウェイン・クレイマーの死は2月2日(金)にインスタグラムに投稿され、伝説的なミュージシャンが膵臓がんで亡くなったことを明らかにした。


「ウェイン・クレイマーは今日、膵臓癌のため安らかにこの世を去った。彼は音楽、文化、そして優しさに革命を起こしたことで記憶されるでしょう」と彼の公式インスタグラム・アカウントに声明が掲載された。


MC5の歴史は、クレイマーがギタリスト仲間のフレッド・"ソニック"・スミスとバンドを始めた1963年に遡る。数年後、クレイマー、スミス、シンガーのロブ・タイナー、ベーシストのマイケル・デイビス、ドラマーのデニス・トンプソンというクラシックなラインナップが揃った。


MC5はメインストリームでの成功には至らず、1970年の『Back in the USA』と1971年の『High Time』の2枚しかスタジオ・アルバムをリリースしていないが、ザ・ストゥージズやザ・ホワイト・ストライプスといったデトロイト出身のアーティストに道を開き、史上最も影響力のあるロック・バンドのひとつであり続けている。彼らの代表曲 "Kick Out the Jams "は、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンをはじめ、数え切れないほどカバーされている。


再結成も長くは続かず、クレイマーは1975年、連邦捜査官に麻薬を売った罪で4年の実刑判決を受けた。彼はまた、1992年にMC5を短期間再結成するまでの数年間、薬物中毒と闘った。MC5は21世紀にも何度か再結成しており、2000年代初頭にはディクテーターズのハンサム・ディック・マニトバがリード・シンガーとして参加したこともある。


2018年、クレイマーはMC5の50周年を記念して「MC50ツアー」を開始した。キム・タイユ、マット・キャメロン(ともにサウンドガーデン)、ブレンダン・キャンティ(フガジ)、ダグ・ピニック(キングスX)らオールスター・バンドに加え、クレイマーが以前『ワズ(ノット・ワズ)』で共演したドン・ワズも参加した。


2022年、クレイマーはWe Are All MC5というバンド名でニュー・アルバムをリリースすると発表し、レイジ・アゲインスト・ザ・マシンのギタリスト、トム・モレロをフィーチャーしたシングル「Heavy Lifting」を発表した。アルバムはまだリリースされていないが、クレイマーはその年、ブラッド・ブルックス(ポロ・エラスティコ)、ドラマーのスティーヴン・パーキンス(ジェーンズ・アディクション)、ベーシストのヴィッキー・ランドル(メイヴィス・ステイプルズ)、ギタリストのスティーヴィー・サラス(デヴィッド・ボウイ)というラインナップでMC5としてツアーを行った。最後のライヴは2022年5月15日、サンディエゴだった。


自身の薬物問題を克服した後、クレイマーは依存症の人々を助けることに積極的になった。彼は2009年、Road Recoveryのベネフィットで表彰された。また、社会政治的な活動にも熱心だった。


デニス・トンプソンは現在、MC5のクラシック・ラインナップの唯一の存命メンバーである。タイナーは1991年に、スミスは1994年に、そしてデイヴィスは2012年に亡くなった。

イパネマの海岸


ボサノヴァは1950年代のブラジルを発祥とする音楽で、リオデジャネイロのビーチに隣接するコパカバーナとイパネマの2つの地区の中流階級の学生とミュージシャンのグループにより始まった。


このジャンルは、アントニオ・カルロス・ジョビンとヴィニシウス・デ・モラレスが作曲し、後にはジョアン・ジルベルトが演奏した「チェガ・デ・サウダージ」のレコーディングにより一躍世界的に有名になった。


もちろん、知名度で言えば、「イパネマの娘」も世界的な知名度を持つヒット・ソング。くつろいだアコースティックギターの演奏、甘いボーカル、パーカッションの心地良い響きなど、心を和ませる音楽は、今も世界のファンに親しまれている。

 

 

ボサはサンバとともにブラジルを象徴する音楽でありつづけたのだったが、同時にその誕生は、政治的な意味と文化的な表現が融合されて完成されたものだった。これはスカやレゲエの前身であるカリプソが当初、トリニダード・トバゴの軍事的な意味を持つ政府お抱えの音楽としてキャンペーンされたのと同様である。1956年から61年にかけてのジュセリーノ・クビチェック政権は、ボサノヴァの文化的な運動の発生を見るや、政権としてこの音楽を宣伝し、バックアップしたのだった。クビチェック政権がもたらした成果はいくつもある。ブラジルの国家の近代性の立ち上げ、全般的な産業の確立、それから自国での石油の生産と供給の権限である。もちろん、ブラジリア市建設の主導権を握り、国家の独立性の重要な立役者となった。


芸術運動は、そもそも経済産業の余剰物であり、経済産業の一部にはなっても、根幹となることは稀である。果たして、政治的、経済的の基礎的な安定なくして、国家の文化事業を生み出すことが可能だろうか? 


つまり、これこそが経済的に安定した国家から優れた音楽が登場する理由なのだ。幸運にも、50年代後半のブラジルは、上記の条件を満たしていたこともあり、比較的経済的に恵まれた若者の気分に余裕が出来た。つまり、余剰の部分が後の世界的な文化を生み出すことに繋がった。当時のリオデジャネイロが生み出したのは、何も音楽だけではない。リオは、その当時の世界の中心地である、パリやニューヨークに向けて、最新のファッショントレンドを発信した。

 

そして、この大統領政権時代には、無数の文化が世界に向けて輸出され、それらがブラジルの固有のカルチャーとなったのである。文学的な活動、また、そこから生まれた詩、シネマ・ノボ、自由劇場、新式の建築、音楽が世界に向けて発信された。ボサノヴァは、ブラジル音楽の歴史で重要な役割を果たし、サンバの音楽から熱狂的な打楽器の要素を取り除き、対象的に静かで落ち着いたサウンドに変化させ、米国のジャズやフランク・シナトラのジャズ・ボーカルの影響をもとに、それらを最終的にジャジーなムードを漂わせる大衆音楽へと昇華させたのだった。

 

 

Antnio Carlos Jobin


当初、リオの海岸の街で生み出されたブラジルのジャズとも言えるこのジャンルは、アントニオ・カルロス・ジョビンによって磨きがかけられた。 ジョビンはリオデジャネイロのチジュッカ地区に生まれたが、14歳の頃からピアノをはじめた。音楽で、生計を立てたいと若い時代から考えていたが、家族を養うため、建築学の道に進むことを決意した。


しかし、建築学校に入学後、どうしても夢を捨てきれず、ラジオやナイトクラブでピアノ演奏家として働いていた。その後、ハダメス・ジナタリによって才覚を見出され、コンチネンタル・レコードに入社し、譜面起こしや編曲の仕事に携わった。カルロス・ジョビンの音楽にプロデューサー的な視点があるのは、これらの若い時代の経験によるものだ。その時代から、幼馴染のニュートン・メンドゥーサと一緒に音楽活動を始め、これが後に、「想いあふれて(Chega De Saudade)」で完成を見た。このレコードが世界で最初のボサノバ・ソングと言われている。

 

 

 

アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽には、幼少期からのクラシック音楽の薫陶、クロード・ドビュッシーのフランスの近代印象派に加え、ブラジルの作曲家、ヴィラロボスの影響があった。それに彼は米国のジャズの要素を加えて、ボサノバの代名詞となるサウンドを構築していく。歌詞についても、音楽と密接な関係があり、ブラジルのルートリズムに根ざしている。

 

「イパネマの娘」 はカルロス・ジョビンが1962年に録音したボサノバソングで、このジャンルの最大のヒット作である。この曲はヴァイニシウス・モライスが作詞を手掛けた。ビートルズの「ハード・デイズ・ナイト」に続いて、世界で最もカバーされた曲でもある。


イパネマとはリオの南部の海岸筋にある地区を指し、現在では名高いサーフィン・スポットとして知られている。海岸にある半島には遊歩道があり、素晴らしい夕暮れの景観を楽しめる。


イパネマ地区の近隣には、 緑の多い通り、ファッション・ブティック、ダイニング・レストランなどがずらりと並ぶ。現在でも、ボサノバのアコースティック演奏を楽しめる、くつろいだスペースもある。

 

 

Marcus Vinícius da Cruz e Mello Moraes


この曲は音楽家として知られるようになっていたジョビンと外交官/ジャーナリストのモライスが共作した。1957年頃から二人は、コンビを組んで活動を行っていた。両者はボサノバの最初のムーブメントを牽引した。

 

「イパネマの娘」の曲の誕生にまつわる面白いストーリーがあるので、ここでひとつ紹介しておこう。当時、ジョビンとモライスを始めとするボサノバのアーティストは、リオのイパネマ海岸近くにあるバー「ヴェローソ(ガロータ・デ・イパネマ)」に通い、酒を飲んでいたという。そこへ、エロイーザという少女が現れ、母親のタバコを買いに来た。10代後半の女、比較的背が高く、近隣でも有名であった。好色家の二人は、この女性にインスピレーションを得た。その場で即興で作られた曲という説もあるが、実際は作詞作曲ともに、二人の自宅で制作された。

 

1962年、この曲は正式にお披露目となった。そのお披露目には、ジョビン・ジルベルト、モライスとボサノヴァのスターが共演した。しかし、懸念すべき事項があった。この曲が初演されたのは、リオのナイトクラブ「オ・ボン・グルメ」で8月2日から45日間にわたって開催されたショーだった。外務省から「外交官がナイトクラブに出演するなど言語道断である!」との通告を受けたモライスは、報酬は貰わないと決めた上でステージに出演し、クラブに来客した友人の飲食代を肩代わりした。しかし、モライスは終始酒に酔い続け、飲み代がかさみ、あげくはナイトクラブのショーの後には出演者の料金まで受け持つことになったという。


 

『Getz / Gilberto』1964


後に、「イパネマの娘」は、スタン・ゲッツ、カルロス・ジョビン、ジョアン・ジルベルト、アストラッド・ジルベルトのバージョンで世界的に有名になった。1964年のアルバム『GETZ / GILBERT』は、ボサノバ・ブームの火付け役となった。本作は、ビルボード誌のアルバム・チャートで2位に達する大ヒット作となり、「イパネマの娘」もシングルとして全米5位に達した。


そして、グラミー賞では、アルバムが2部門(最優秀アルバム賞、最優秀エンジニア賞)を受賞し、「デサフィナード」が最優秀インストゥルメンタル・ジャズ・パフォーマンス賞を受賞、「イパネマの娘」が最優秀レコード賞を受賞した。本作の音楽は本来のボサ・ノヴァとは別物であると主張する声も多かったが、結果的には、アメリカにおけるボサ・ノヴァ・ブームを決定づけた。

 

「イパネマの娘」のリリース後、ブラジルと米国を中心に大ヒットを記録し、続いて、日本、フランス、イタリアで知られるようになり、世界的なヒット・ソングとなった。

 

スタン・ゲッツやチャーリー・バードといった米国のジャズ演奏家がボサをカバーしたのをきっかけに、米国にもこのジャンルが一般的に浸透した。優れたジャズ演奏家がボサノバを発見したことで、音楽的にも磨きがかけられた。シンコペーションが取り入れられ、洗練された響きを持つようになった。

 

 


 

J.S.バッハによる「Goldberg-Variationen(ゴールドベルク練習曲集) BMV988」は19世紀以降、「ゴールドベルク変奏曲」という名で親しまれている。

 

ピアノの演奏では、古くはグレン・グールド、現在はアンドラーシュ・シフ、オラフソン等の録音が有名だが、2000年以降、複数の音楽家が、チェンバロ(ハープシコード)の演奏により、スコアの従来とは異なる魅力を引き出そうと試みている。

 

これはベートーベンの時代のフォルテ・ピアノの楽器も用い、その時代の音楽を再現させようという試みである。ハンマー・クラヴィーアとは異なり、18世紀の宮廷で響いた音楽とはかくなるものではなかっただろうか、というような歴史的な考察を交えながら、音楽を楽しむという趣が込められているのではないだろうか。時代検証や古い時代に対するロマンを音楽的な感性によって駆り立てようという試みは、もっと高く評価されてしかるべきではないだろうか。

 

では、このJ.S.バッハによるゴールドベルク練習曲集は、どのような経緯で作曲されたものだったのか。ウイーン原典版にはこうある。


ーーその愛好家の心の慰みのため、ポーランド国王兼ザクセン選帝侯の宮廷作曲家、楽長、ならびにライプツィヒ 音楽隊監督、ヨハン・セバスティアン・バッハが作曲した。ニュルンベルクのバルタザール・シュミートにより刊行ーー


この音楽は癒やしのために宮廷の王侯に捧げられた楽曲集らしいということがわかる。

 

 ゴールドベルクの楽譜彫版は、発行責任者であるシュミートが自ら行った。バッハはこれに先駆け、自費出版をしている。このことから、第四部を出版者に委任した際に、番号付けを断念したことが伺える。

 

初版の発行には、出版年が明記されず、この時代の楽譜出版では一般的であった出版番号(彫版番号とも)も記されていない。

 

つまり、ゴールドベルクの成立した年代は不明であるが、1つだけ手がかりがあり、表題のページの上にある「16番」という数字が明記されているため、1741年よりも前に作曲されたという可能性は少ないというのが一般的な説となっている。通説では、1740年にこの「ゴールドベルク練習曲集」が書かれたことが確実視されている。

 

バッハ研究の第一人者として有名で、伝記も出版しているヨハン・ニコラウス・フォルケルは、このスコアはバッハの年上の息子の申し立てに基づき、変奏曲がドレスデン宮廷のロシア大使であった帝国伯ヘルマン・カール・フォン・カイザーリンクの委嘱により、そのお屋敷のお抱えのチェンバロ奏者ヨハン・ゴートリープ・ゴールドベルクのために書かれたと記している。

 

ーーあるとき、伯爵はバッハに穏やかでいくらか快活な性格を持ち、眠れぬ夜に気分が晴れるようなクラヴィーア曲をお抱えのゴールドベルクのために書いてほしいと申し出た。変奏曲というものは、基本的に和声的な変化を付け加えることが少ないので、バッハ自身はやりがいのない仕事であると考えていたが、伯爵の希望を満たすためには変奏曲が最も望ましいと考えた。そしてバッハは完成品の報酬として、ルイ金貨が100枚詰められた金杯を受け取った。ーー

 

しかしながらこの一般的な通説に関しては疑問視されている箇所もある。まず、貴族からの委嘱作品には正式の献呈の辞をつけることが習慣付けられていたが、これが記されていないという点。そしてバッハがチェンバロ奏者ゴールドベルクのために書いた可能性が限りなく低いのではないかという指摘もある。つまり、1737年頃からバッハの弟子だったゴールドベルクは、この作品が作曲された年に12-13歳だったからである。さらに、ゴールドベルク変奏曲に先立って出版された『クラヴィーア練習曲集』の最初の三部のシリーズとなっており、それらの作品群には委嘱者が記されていない。


上記の点から、これらが委嘱作品と見なすには疑問点がいくつも発見出来る。しかしながら、それと同時に、ヨハン・フォルケルの報告が史実の核心に基づいて行われていることも事実である。1741年の11月、バッハは、ドレスデンのカイザーリンク邸に滞在し、そのときにかれは伯爵に手書きの献呈の辞を添え、その伯爵邸にて、このスコアを直接贈ったか、もしくは献呈をする約束をしたという可能性が浮かび上がってくるわけである。


ヴァイマール時代のオルガンのためのコーラス変奏曲以来、バッハは変奏曲を書くことに興味を示したことはほとんどなかったという。1740年代に対位法的な晩年の作風の時期に至ると、バッハはようやく、この変奏曲という作曲形式に興味をいだきはじめた。そしてこのゴールドベルク練習曲の多楽章を連ねた形式を、彼の卓越したコンポジションの手腕により、首尾一貫したツィクルスに高めようとしたというのが、この楽曲集のウイーン原典版の説明である。

 

このスコアの再演に関しては、ピアノによる演奏が有名だが、その他にもチェンバロ(ハープシコード)による再演を試みる演奏家もいる。

 

特に、傑出した再演をリリースしているのが、アメリカのチェンバロ演奏家であるロバート・スティーブン・ヒル(Robert Hill)、そして、ベルギーの演奏家であるフレデリック・ハース(Fredrick Haas)が挙げられる。前者は、チェンバロのライブ録音により、ダイナミックな音響性を重視したアルバム『Bach: Goldberg Variations』を2011年にリリースしている。

 

後者のフレデリック・ハースは、「Clavin Henri Hemsch 1751」というフランスの18世紀に制作されたアンティークのハープシコードで落ち着いた演奏をレコーディングで披露している。

 

双方ともに、ハープシコードの制作の年代に違いがあるため、演奏される楽器の調音が異なる。少なくとも、ピアノとは一味違うゴールドベルク変奏曲のパフォーマンスを楽しめる。前述したように、フォルテ・ピアノよりも格調高い響きには洗練性と気品が漂い、崇高な音響性が生み出されている。

 

 

 

Robert Hill  『Bach: Goldberg Variations』 /   Music and Arts Program of America 2011



 

1993年5月18日にフライブルク、カウフハザールでロバート・ヒルのライブ録音。・アルバムにはライブ録音が持つ緊張感、それに負けぬ卓越したヒルの演奏、それに加え、その場に居合わせた観客の拍手も収録されている。アートワークのはフェルメールの絵画「音楽のレッスン」。

 

ハープシコードのきらびやかな音の響きを堪能出来、演奏の間にはチューニングピンや響板が軋む音が、演奏者の息遣いとともに精妙な音が録音されている。ゴールドベルクはそもそも、大作であるため、聞くのに根気を必要とするのは事実であるが、ロバート・ヒルの卓越した演奏力はそれらの間を超越し、緩急に富んだゴールドベルクの物語性を喚起させ、最後の「アリア」に至る時、またそれらのすべての音が鳴り止んだ時、観客の歓声とともに感動的な瞬間を呼び起こす。ハープシコードの演奏のゴールドベルク変奏曲のライブの決定版に位置づけられる。

 

 

 


 



 

Fredrick Haas 『Bach:  Goldberg Variations BMV 988」/ La Dolce Volta 2010




ベルギーの演奏家、フレデリック・ハースは、チェンバロやフォルテピアノのソリストとして、オーソニア・アンサンブルのリーダーとして活躍している。1997年よりブリュッセル王立音楽院チェンバロ科教授。ドイツ、イギリス、ベルギー、フランスで定期的にマスタークラスを開催している。

 

1751年製のアンリ・ヘムシュ製チェンバロを所有し、この楽器をゴールベルク変奏曲の演奏で使用している。一般的なハープシコードと調音が異なり、比較的落ち着いたゴールドベルクの贅沢な響きを追求している。

 

 

Maria W. Horn


 マリア・W・ホーン(1989)は、音に内在するスペクトルの特性を探求する作曲家。芸術活動に加え、スウェーデンのレーベル、XKatedralの共同設立者でもある。彼女の作品は、アナログ・シンセサイザーから合唱、弦楽器、パイプオルガン、様々な室内楽形式まで、様々な楽器を用いている。シンセティック・サウンドは、しばしばアコースティック楽器と組み合わされ、音色、チューニング、テクスチャーを正確にコントロールすることで楽器の音色的能力を拡張する。


 マリアは、建物や物体、地理的な地域に内在する記憶を探求するために、スペクトラリストのテクニックとその土地特有の音源を組み合わせている。


 最近の作曲では、物理的な空間から音響的な人工物を用い、作曲のための音楽的枠組みを創り上げている。これらの音響的痕跡を出発点として、マリアは複雑なハーモニック・パターンを織り成し、親密な儚さから灼けるような高密度のオーラル・モノリスへとゆっくりと変化していく。


 デビューアルバム『Kontrapoetik』(2018年)は、歴史的な調査であり、彼女の故郷であるスウェーデン北部のÅngermanlandの欺瞞に満ちた、穏やかな、しかし混乱した過去に取り組む一種の対悪魔祓いである。


 『Dies Irae』(2021年)は、ベルクスラーゲンの鉱山地帯にある空の機械ホールの共鳴周波数に由来し、『Vita Duvans Lament』(2020年)は、スウェーデンで唯一建設されたパノプティック監房の刑務所を音で発掘したものである。


ーー『Panoptikon』は、ルレオにある解体されたVita Duvanというパノプティック刑務所(白い鳩刑務所)でのインスタレーションのために2020年に作曲された。ボーカルとエレクトロニクスのための音楽による音の発掘である。今作は当初、マルチチャンネルのサウンドと光のインスタレーションとして発表され、監獄の独房に設置されたラウドスピーカーから受刑者の想像上の声が送信された。


アルバムのヴォーカルは、サラ・パークマン、サラ・フォルス、ダヴィッド・オーレン、ヴィルヘルム・ブロマンダー。


タイトルの『Omnia citra mortem』は法律用語であり、「死ぬまでのすべて」あるいは「死のこちら側のすべて」と訳せる。この作品では、囚人同士のコール・アンド・レスポンス構造が用いられており、まばらな声の断片から始まり、次第に声の網の目のように広がっていくーー


 

『Panoptipkon』 - XCathedral


 

 「パノプティコン」とは、そもそもフランスの哲学者のミシェル・フーコーが指摘しているように、「中央集権的な監獄のシステム」のことを指す。昨年、イギリスのジェネシスのボーカリスト、ピーター・ガブリエルがこの概念にまつわる曲をリリースしたことをご存知の方も少なくないはず。

 

 「パノプティコン」の定義を要約すると、建築構造の中央に塔のような建物があり、その周囲に官房が張り巡らされ、常に囚人たちがその中央の塔から監視されることを無意識に意識付けられることによって、いつしかその人々は、反乱を企てる気もなくなれば、もちろん、脱走する気も起きなくなるというわけである。そうして権力構造というのを盤石たらしめるというわけである。これは支配的な構造を作るために理に適った方法であるとフーコーは指摘している。

 

 パノプティコンという構造が罪人たちだけに用意された限定的なシステムであるとは考えない方が妥当かもしれない。フーコーは、パノプティコンの定義を「権力の自動化」であるとし、これらの考えが近代の学校教育に適用され、「規律や訓練」という概念に子供たちを嵌め込み、「学校という一種の権力に自発的に服従する主体を作り出してきた」と指摘する。また、東京大学教育科のある先生は、この考えが日本の教育にも無縁ではないのではないかと指摘している。「近代学校の権力の自動化というシステムも、その学校や建築構造に表れている」とした上で、このように続けている。


「わたしたちが小学校、中学、高校と過ごしてきたなかで、学校という建物は、いつもどこか堅苦しく、威圧的であったように思う。画一化された教室設計、整然と並べられた机、閉鎖的な職員室などがその原因となっているようだ。学校の建築自体が、秩序や規律といったものを無意識的に子供たちに植えつけてしまっているのではないか」


 このパノプティコンは、私たちの日常のいたるところに存在している。有史以来の社会における中央集権的な政治の基盤を形作る諸般の権力構造や支配構造に適用され、すなわち、人間の考えに資本的な概念を刷り込ませて、服従する対象者、あるいは対象物を設けることにより、被支配者は、その中央集権的な存在に対し、独立性を持つことはおろか、そこから逃れることさえできなくなるという次第である。これは、20世紀の世界全体として、社会主義/資本主義社会の中にある「監獄の構造」を浸透させることによって、それらの中央集権的な存在が支配下に置く被支配者たちを思いのまま手なづけ、その支配構造を強化してきた。これは、資本主義やそれと対極に位置する社会主義もまたその方向性こそ違えど、共通している事項なのである。

 

 その中央集権的な権力の基盤構造が揺らぐや、武力をちらつかせたり、動乱やショッキングな事件、時に、紛争を起こすことにより、20世紀の社会全体は、パノプティコンという巨大な社会の権力構造の中に築き上げられてきた。そして、ジョージ・オーウェルが指摘するように、その中央集権的な存在の正体がよくわからない、謎に包まれた存在であるということが肝要である。民衆はいつまでたっても、その中央集権を司る「絶対的な支配者」に一歩も近づくことも出来なければ、その存在すら明確に確認しえないということが、パノプティコンの重要な概念になっている。つまり、その存在がいてもいなくても、被支配者はその中央集権的な存在にいつも怯え、そして、時にはその存在に服従せざるを得ないという次第である。これは2000年代にレディオヘッドがいち早く音楽の中で「監視社会」という問題を提起していたし、JK・ローリングは「ヴォルデモート卿」という不可視の存在を作中に登場させたのは周知の通り。

 

 しかし、翻ってみると、長らく、このパノプティコンという建築構造がフーコーの哲学的なメタファーを表現するという役割にとどまるか、単なるフィクションのテーマに過ぎないと考えられてきた。しかし、パノプティコンの構造を持つ建築がスウェーデンにあり、実際、歴史的な遺構--アウシュビッツ収容所のような不気味な雰囲気を持つ、人類の歴史の暗所--として残されているという。現代音楽家のマリア・W・ホーンは、これまで歴史的な考察を交えて、ドローン・アンビエントやエレクトロニックという形を通じて、作曲活動を行ってきた。そして、最新作『パノプティコン』は、実際に同地にある中央集権的な構造を持つ監獄の遺構の中で録音されたというのである。

 

 そして録音場所のアコースティックな響きを上手く活用した作品が近年、ジャンルを問わず数多く見受けられることは何度か指摘している。一例では、ベルリンのファンクハウスの東西分裂時代のアンダーグラウンドな雰囲気を持つ録音や、イギリスの教会建築の中で録音された作品などである。これらの作品群は、たいてい、その録音された場所の空気感というべきものを吸収し、他では得難い特別な音楽の雰囲気を生み出す。それは、アビーロード・スタジオを使用するミュージシャンがどうしても、ビートルズの亡霊に悩まされるようなものであり、ピーター・ガブリエルの所有するスタジオでスターミュージシャンの音楽を意識せずにはいられないのと同様である。

 

 音楽的な出発として、空間が持つ空気感に充溢する奇妙な雰囲気を表現しようとしたのは、ハンガリーの作曲家、ゲオルグ・リゲティの「Atmospheres」が挙げられる。


独特な恐怖感と不気味さに充ちた現代音楽の傑作で、これはリゲティのユダヤ人としての記憶と、彼の親類が体験したアウシュビッツでの追体験が、不気味な質感を持って耳に生々しく迫るのである。それがどの程度、真実に根ざしたものなのかは別にしても、それらの記憶は確実に、作曲家の追体験という形で定着し、また生きる上での苦悩の元ともなったことは想像に難くない。

 



 ストックホルムを拠点に活動するマリア・W・ホーンの「Panoptikcon」も、基本的には同じ系譜にある独特な緊張感を持つアヴァンギャルドミュージックに位置づけられる。

 

スウェーデンにある監獄の遺構の空気感、その人類の歴史的な暗所の持つ負の部分を見つめ、それらを精妙なレクイエムのようなクワイアやアナログ・シンセサイザーを用いたドローンミュージック、エレクトロニックで浄化させようというのが、制作者の狙いや意図なのではなかったかと思われる。


これはまた、スウェーデンのカリ・マローンが制作した映画のサウンドトラックでのイタリアの給水塔のアンビエンスを用いた録音技術の概念性の継承でもある。「Panoptikon」はダークな雰囲気に浸されているが、同時に、その遺構物の上から、賛美歌のように精妙な光が差し込み、その暗部の最も暗い場所を聖なる楽音で包み込もうとする。この遺構こそ現代的に洗練された考えを持つスウェーデンという国家にとって、歴史の暗部であり、安易に触れることが難しいタブーでもあるのかもしれない。

 

 

 冒頭を飾る「Ominia Citra Mortem」は、四声の混声合唱、アナログシンセによって構成されている。オープニングの冒頭は、重低音のドローンで始まり、通奏低音を元にしてAlexander Knaifel(アレクサンダー・クナイフェル)、Valentin Silvestrov(ヴァレンティン・シルベストノフ)、Sofia Gubaidulina(ソフィア・グバイドゥーリナ)の作風によく見受けられるような、現代音楽の主要なコンポジションの1つである最初の重低音のドローンの通奏低音の後、パレストリーナ様式を始めとする教会旋法やポリフォニー構造に支えられた声楽の進行が加わる。

 

 しかし、マリア・W・ホーンの作風は、上記の現代作曲家の形式を受け継ぎながらも、シュトゥックハウゼンの電子音楽のトーン・クラスターの技法を用い、音色の揺らぎを駆使しながら、特異な音響性やそのスペシャリティーを追求している。フィリップ・グラスやライヒに象徴されるミニマル・ミュージックの構成が用いられているのは、他の現在の現代音楽と同様であるが、それは必ずしも反復という意味を持たず、反復の中にある矛盾的な変化が強調される。教会音楽の重要な形式であるユニゾンを用いた、四声によるクワイアの繰り返しの中に、スポークンワードを挟み、そして、最下部のドローンの重低音を意図的に消したりし、音の余白や空間を作り、クワイアの精妙な印象を際立たせる。これは数学的な足し算の手法ではなく、引き算の手法により、音の妙が構築されているところに、作曲家としての崇高性が宿っている。

 

 マリア・ホーンの生み出す表現の美の正体は、鈴木大拙に学んだジョン・ケージが提唱した禅(臨済宗)における「サイレンス」の観念を体現する「休符による音の空白」によって強調されることもある。と同時に、この曲の場合は、歴史的に触れられなかったタブーや社会の暗部に関するメタファーの役割が込められているように感じる。それらの空間のアンビエンスや亡霊的な合唱を、パノプティコン構造を持つ監獄のアコースティックな音響で増幅させる。それは何処かへ消しさられた人々への追悼を意味するのだろうし、その魂に対するレクイエムでもある。マリア・ホーンはコンポーザーとして、クワイアの最も崇高な印象を放った瞬間を見逃さず、声を消失させ、シンセによる重低音を再発生させ、エネルギーを徐々に、丹念に上昇させる。これらの声が途絶えた瞬間に、この曲の持つ凄みが現れ、そして圧倒的な感覚に打たれる。



 二曲目「Haec Est Regular Recti」は同様にアナログシンセの重低音により始まるが、重厚ではあるものの心苦しい雰囲気で始まった一曲目とは対象的に、開放的なメディエーションの作風に変化する。解釈の仕方によっては、ヨーロッパのチロル地方やその隣接地域のフォーク音楽の源流に近づきながら、同じように、混声のクワイアによって全体的なアンビエンスを作り出す。

 

 クワイアの印象が強かった全曲に比べると、シンセと合唱によるオーケストレーションのような印象がある。それはパイプオルガンの音色を持つシンセの演奏を1つのモチーフとしてコール・アンド・レスポンスやモード奏法のようなデイヴィスのモダン・ジャズの形式を取り入れ、オーケストラスコアとして組み上げていったかのようである。ひとつだけ確かなのは、マリア・ホーンにとっては、一見して分離されがちな、合唱、オルガン、シンセといった作曲のための手段は、現代音楽のオーケストレーションの一貫として解釈され、コンポジションに組み込まれているらしく、電子音楽でもなければ、ニュージャズでもない、ヨーロッパ民謡でもない、特異な印象のある楽音として昇華されるということなのだ。

 

 そして、同じくスウェーデンのCarmen Villan(カルメン・ヴィラン)がダブ・ステップやECMのニュージャズをドローン音楽に取り入れるのと同じように、必ずしも実験音楽の表現内にコンポジションの可能性を収めこもうとはしていない。むしろ、ひとつの表現を主体として、無限の可能性に向けて、音を無辺に放射していくかのようである。これは製作者が従来から、ピアノを用いたポスト・クラシカル、エレクトロニック、というように、ひとつのジャンルにこだわらず、多岐に渡る音楽を制作してきたことに理由がある。曲の終盤では、ダンスミュージックのビートに近づく場合があり、当初、メディエーションやヨーロッパの原始的なフォークミュージックが、現代的な質感を帯びる洗練された音楽へと変遷を辿っていく様子は、圧巻と言える。そして、アルバムの当初は、重苦しい印象だった音楽がループサウンドにより、崇高さと神聖さをあわせ持つエレクトロニック/IDMへと驚くべき変遷を辿っていくのである。

 




 アルバムの序盤の2曲は荘厳さと崇高さをあわせ持つが、タイトル曲「panoptikon」では低音部の重厚さを生かしたアンビエントが展開される。しかし、その静謐な印象の中に、トーン・クラスターの音色の変容の技法を散りばめ、従来にはなかったドローン音楽を追求していることがわかる。


 前の2曲では、パノプティコンという建築物が持つ独自の音響性を強調しているが、それと対比的に、タイトル曲では、DJセットのライブで聞かれるような現代的なエレクトロの音楽性が選ばれている。実験音楽の領域にありながら、その響きの中には、クラークやダニエル・ロパティンのような洗練されたアプローチを見出すこともできる。また、これは、現代音楽や実験音楽の範疇にある表現者とは異なる、DJとしてのマリア・ホーンの意外な姿を伺い知ることも出来よう。前2曲に比べ、五分というコンパクトな構成となっているが、シンセのトーンの変容の面白さ、それにときおり交わるノイズという部分にこのアルバムの真骨頂が垣間見える。


 アルバムは、声楽をもとにした合唱曲、エレクトロニック、アンビエント、そしてトーン・クラスター等、マリア・ホーンが持ちうる音楽的な蓄積が表れているが、その後、クローズ曲では、男女混声による声楽を基調とした柔らかい印象を持つ、二分ほどの簡潔なクワイアが収録されている。アルバムの最後を飾る「Langtans Vita Duva」 では、驚くべき音楽的な転換点を迎える。

 

 その純粋な響きの中には、西洋の賛美歌の伝統性の継承の意味が求められながらも、映画音楽やポピュラー音楽の色合いが僅かに加えられる。2つのコーラスのメロディーの進行の中には、ポピュラー音楽の旋律進行を持つ女性のボーカルと、それとは対比的に、賛美歌のような旋律進行を持つ男性のボーカルが交差し、柔らかなコントラストを形成する。つまり、これは『Panoptikon』が単に不可解な現代音楽ではなく、メディエーションに映画音楽と現地のポピュラー音楽を織り交ぜた新しい音楽の形式により構成されていることを表している。何より、マリア・ホーンが実験音楽を限られたファンに用意された閉鎖的な音楽と捉えず、それらを一般的に開けた表現法にするべく努めていることも真実の音楽を生み出す契機となったと考えられる。


 少なくとも、アルバム全体からは、パノプティコンの囚われからの解放というテーマにとどまらず、国家やその社会構造、ひいては、歴史の持つ負のイメージをどのように以後の時代に建設的に受け継いでいくのかという、表向きの暗鬱なイメージとは異なる、未来の社会に対する明るいメッセージを読み取ることもできる。しかし、これは国家や社会構造の持つ負の側面から目を背けるのではなく、その暗部を徹底して直視できたからこそ成し得た偉業なのである。

 


 



96/100

  

『Panopiticon』 はMaria・W・Hornのレーベル、XCathedralから2月2日から発売中。ご購入はこちら
©︎Bill Essenn


ポーティスヘッドのシンガー、ベス・ギボンズは1994年以来、合計3枚のアルバムをリリースしている。最新作は、16年前にリリースされた『Third』。ポーティスヘッド以外では、ギボンズは元トーク・トークのベーシスト、ラスティン・マンことポール・ウェブと組んで『Out Of Season』をリリースし、2019年、ポーランド国立放送交響楽団とヘンリク・グレツキの交響曲第3番をレコーディングした。彼女は現在、初のソロアルバムをリリースする準備を進めているようだ。


2013年、ベス・ギボンズはドミノ・レコードとソロ契約を結んだことを発表した。今朝、彼女はインスタグラムに新曲についての手書きのメモと、『Lives Outgrown』というタイトルが書かれた手書きのCDジャケットの写真を投稿した。


以下がベス・ギボンズによる全文である。


ーーこんにちは、しばらく間が空いてしまいましたが、ようやくDominoと一緒に新しい音楽をすぐに提供できるようになりました。それは10年以上にわたる長い旅路であり、「Lives Outgrown」というタイトルだ。


いつものように、この曲は私の内面に起こっていることを反映している。家族や友人、そして以前の自分との別れの時であり、歌詞は私の不安や眠れない夜の反省を映し出している。感情的、心理的な人生の変遷を旅するという意味だけでなく、私たちがこの惑星を離れて、未知の世界へと旅立つときにも関係している。この物理的な世界の束縛を越えて成長する能力を与えてくれる瞬間が近づいていることを、私は恐れているが、ただ祝福してみる必要がある。


サウンドもまた、私個人の能力の範囲内で構造を探求するプロセスだった。ブレイクビーツやスネアから遠ざかり、砂糖中毒から離れ、木のような音色を重視したかった。


長年にわたって忠実に応援してくれている皆さん、そして、新しいリスナーの皆さんに楽しんでいただけることを願っています。ーー



 


ラナ・デル・レイがカントリー・アルバムを制作中であることを明かした。シンガーソングライターは、水曜日の夜にロサンゼルスで開催されたビルボードのグラミー賞前のイベントで、『Lasso』というタイトルの新作アルバムの計画を確認した。アルバムは今年9月に発売予定であるというが、詳細は未定。


デル・レイは、今年のグラミー賞で年間最優秀プロデューサー賞(ノン・クラシック部門)を3年連続で受賞するジャック・アントノフに敬意を表し、ステージに立ったとき、「受賞者やパフォーマーを見てもわからないかもしれないが、音楽業界は全体的にカントリー化している」とデル・レイは観客に語った。「私たちはカントリーになる。そうなっている。だから、ジャックはこの4年間、マッスル・ショールズ、ナッシュビル、ミシシッピに私を追いかけてきたんだ」


ニュー・アルバムは2023年の『Did You Know That There's a Tunnel Under Ocean Blvd』に続くもので、グラミー賞で年間最優秀アルバム賞と最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム賞を含む5部門にノミネートされた。彼女の曲「A&W」は年間最優秀楽曲賞と最優秀オルタナティヴ・ミュージック・パフォーマンス賞にノミネートされており、ジョン・バティステとの「Candy Necklace」は最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞にノミネートされている。


デル・レイは12月に、ジョン・デンバーの名曲「Take Me Home, Country Roads」のカヴァーを発表している。




ビリー・ジョエルが17年ぶりにオリジナル曲「Turn the Lights Back On」を発表した。この曲はフレディ・ウェクスラーがプロデュースし、ジョエル、ウェクスラー、アーサー・ベーコン、ウェイン・ヘクターが共作した。


「Turn the Lights Back On」は、ビリー・ジョエルにとって2007年の「All My Life」と「Christmas in Fallujah」以来の新曲となる。彼の最後のポップ・アルバムは1993年の『River of Dreams』だが、2001年にはクラシック音楽アルバム『Fantasies & Delusions』をリリースしている。


ビリー・ジョエルは今週末に開催される2024年グラミー賞に出演する。彼がこの授賞式に出演するのは22年ぶりとなる。


Torres 『What An Enormous Room』


 

Label: Merge

Release: 2024/1/26

 

 

Listen/ Stream

 

 

Review

 

ポピュラー音楽の最良の選択


 マッケンジー・スコットによるソロ・プロジェクト、TORRESは近年、盛り上がりをみせつつあるシンセ・ポップをソロシンガーとして探求している。

 

 しかし、月並みにシンセ・ポップと言っても色々なスタイルがあって、ニューヨークのマーガレット・ソーンのような実験的なエクスペリメンタルポップや、ロンドンのmuizyuのような摩訶不思議な世界観を織り交ぜたゲームサウンドの延長線上にあるエレクトロ・ポップ、Fenne Lilyのようなフォークを基調とする柔らかい甘口のインディーポップ、そしてメタルやノイズ、はては、ベッドルームポップまでを網羅するYeuleなど、アウトプットされるスタイルは年々、細分化しつつある。ダンスミュージックを実験的なサウンドて包み込むキャロライン・ポラチェック、DJセットの延長線上にあるエクスペリメンタルポップアーティスト、アヴァロン・エマーソンというように、枚挙に暇がない。よりノイジーなハイパーポップになれば、FKA Twigs、リナ・サワヤマやChali XCXとなるわけで、その細分化を追うことはほぼ不可能である。

 

 トーレスに関しては、やはりニューヨークのシンセポップのウェイブに位置づけられる音楽の体現者/継承者であり、それらのメインストリームとアンダーグランドの中間層にあるバランスの取れたシンセポップをこのアルバムで展開している。 序盤におけるこれらのバランスの取れたスタイルには、過剰なダイナミックス性やカリスマ性、そして圧倒的な歌唱力は期待するべくもないが、軽く聞けると同時に、聴き応えもあるという相乗効果を発揮している。シリアスになりすぎないポップス、感情を左右しないフラットなシンセ・ポップをお好みの方にとって『What An Enormous Room』は最良の選択となるかもしれない。

 

 トーレスは、エヴァロン・エマーソンのようなバリバリのフロアで鳴らしたDJではないのだが、他方、80年代の懐古的なブラックミュージックをポピュラーサウンドに上手い具合に織り込んでいる。まさしく「Happy Man’s Shoes」は、ファンクの影響を内包させた軽快なダンス・チューンを下地にし、このシンガーの特徴であるクールな感じのボーカルが搭載される。フィルターを薄くかけたボーカルに関しては、歌手としての主体性にそれほど重きをおかず、ダンス・チューンの雰囲気や曲の空気感を尊重しようという控えめなスタイルである。

 

 一見すると、きらびやかな印象ばかりが表向きにフィーチャーされる現代的なポピュラーシーンにあり、トーレスの曲そのものはいくらか地味というか、少し華やかさに欠けるような印象を覚えるかもしれない。しかし、音楽フリークとしての隠れたシンガーの特徴は続く「Life As We Don't Know It」に出現し、忘れかけられた1970年代のニューウェイブの音楽性を、みずからのポケットにこっそり忍ばせて、それをやはり軽快なシンセポップという形で展開させる。そして、それらのグルーブ感をグイグイ押し上げるかのようにダンスビートを覿面に反映させたトラックに、ポスト・パンク的なボーカルのフレーズをこっそり織り交ぜるのである。このボーカリストとしてのしたたかな表現性になんらかの魅力を感じても、それは多分思い違いではない。

 

 「I Got Fear」はハイパーポップに象徴されるノイズの影響を込めたダンサンブルなシンセポップで、現代的なポピュラー音楽を好むリスナーにとっては共感をもたらすかもしれない。コラージュ的な再構成によるアコースティックギターの録音に、トーレスは内面の感覚を織り交ぜようとするが、それは驚くほどシンプルであり、無駄なものが削ぎ落とされているため、スタイリッシュな印象を覚える。そしてバンガーのような展開を無理に作ろうとしないこと、これが曲そのもののスムーズな進行を妨げず、驚くほど耳にメロディーが馴染むというわけなのである。つまり、シンガーソングライターとしての自然体な表現がシンプルな質感を伴い、親しみやすい感覚を生み出す。

 

 その後も、耳障りの良いポピュラー・ソングが続く。「WAKE TO FLOWERS」については、現代のニューヨークのモダンポップスの範疇にあるアプローチと言える。知ったかぶりで語るのは申し訳ないと思うが、 この曲では近年のポップスの複雑化とは対極に位置する簡素化に焦点が絞られ、無駄な脚色が徹底して削ぎ落とされている。ベースとドラム、トーレスのボーカルという現代的な音楽として考えると、少し寂しさすら覚えるような音楽であるのに、驚くほど軽妙な質感を持って聴覚を捉える。そして、トーレスのボーカルに関しても、マーガレット・ソーンのように爽やかさがある。さらに、曲の終盤では、ノイジーなギターが入るが、それは決して曲の雰囲気を壊すこともなければ、マッケンジーのボーカルの清涼感を壊すこともない。

 

 上記のシンプルさに徹そうというアプローチは、IDM寄りの電子音楽と結びつけられる場合もある。「UGLY MYSTERY」では、レトロなシンセと混ざり合い、トーレスの優しげなボーカルの質感と合致するとき、内に秘められた密かなドラマティック性を呼び起こす瞬間がある。また、それほど即効性のあるポピュラー音楽のアプローチを選んでいないにもかかわらず、じんわりと胸に響くエモーションが込められている。それはR&Bのようなマディーな渋みとまではいかないが、マッケンジーのスモーキーで深みのあるボーカルによってもたらされる。


そして、フレーズを歌い飛ばすのではなく、しっかりと歌いこんでいるという録音の印象が、聞き手の興味を惹き付ける。これらの印象は、表面的な派手さとは別の「深み」という音楽の持つ魅力的な側面を生み出すことがある。そして、マッケンジーは、それまでエネルギーを溜め込んでいたかのように、続く「COLLECT」で一挙にその秘めたエネルギーを爆発させ、アンセミックなポピュラー・ソング、つまり、フローレンス・ウェルチに比する迫力を持つ大掛かりなポップ・バンガーに鋭く変貌させる。この変わり身の早さともいうべきか、一挙に音楽の印象が激変する瞬間に、このアルバムの最大の醍醐味が求められる。それまで長いあいだ、歌手としての才覚の牙を研ぎつつ、表舞台にでていく日を待ち望んでいたかのようでもあるのだ。

 

 驚くべき変身振りをみせたシンガーは、その流れに逆らわず、スムーズに波に乗っていく。「Artifical Limits」では、それをさらにエクスペリメンタルポップに傾倒した現代的なプロダクションに変化させ、 ヴィンセントの時代のシンセ・ポップの熱狂性を呼び覚まそうとしている。この曲もまたハイパーポップ/エクスペリメンタルポップの属するノイジーさはあるが、シンプルな構成を重視することにより、聞きやすく掴みやすい音楽を生み出している。しかし、それらの王道の音楽性と気鋭の歌手としての微妙な立ち位置やポジションが個性的な雰囲気を持つのもまた事実である。

 

 アルバムの終盤でも一連の流れや勢いは衰えることなく、スムーズにクライマックスへと繋がっていく。「Jerk Into Joy」、「Forever Home」では同じように、ニューヨークのモダンな最前線のポップスを継承し、「Songbird Forever」においても、歌手としての才気煥発さは鳴りを潜めることはない。


他ジャンルとの融合という近年のポップスの主要なテーマを踏まえて、ピアノの現代音楽的なプロダクション、鳥の声のサンプリングというフィールドレコーディングの手法を活かしながら、ボーカルの清々しい空気感は、アルバムのクライマックスで遂に最高潮に達する。それらは最終的に、クリアな感覚を生み出し、トーレスが、同地のマギー・ロジャースに比肩する2020年代を象徴付けるシンガーソングライターになるのではないか、という期待感を抱かせる。

 


86/100


 

Featured Track-「Jerk Into Joy」




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エレクトロ・ポップの伝説、ペット・ショップ・ボーイズがニューアルバム『Nonetheless』を発表、そのファースト・シングル「Loneliness」のミュージックビデオを公開した。『Nonetheless』はパーロフォンから4月26日発売予定。「Loneliness」のビデオはアラスデア・マクレランが監督。アルバムのトラックリストとジャケットアートワークは以下の通り。

 

『Nonetheless』のプロデュースを手掛けたのは、ジェームス・フォード(アークティック・モンキーズ、デペッシュ・モード、ブラー、ゴリラズ、シミアン・モバイル・ディスコなど)。

 

このデュオ(ニール・テナントとクリス・ロウ)は、プレスリリースで新作について次のように語っている。

 

「このアルバムは、私たちを人間たらしめているユニークで多様な感情を祝福するものにしたかった。ダンス寄りのトラックから、美しいストリングス・アレンジが施された内省的なバラードの生々しい切なさに至るまで、各々のトラックが物語を語り、アルバム全体の物語に貢献している」

 

「ジェームス・フォードと一緒に仕事ができたのは本当に素晴らしいことだった。ジェームスは、あえて僕らをもう少しミニマルにすることもしてくれたし、最終的な結果は、僕らがとても誇りに思っているレコードになった」

 


「Loneliness」

 

   

 

 

 

 「Through You (Extended Remix)」

 

 

 

 

Pet Shop Boys 『Nonetheless』



 

Label: Parlophone

Release: 2024/04/26

 

Tracklist: 

 

Loneliness
Feel
Why am I dancing?
New London boy
Dancing star
A new bohemia
The schlager hit parade
The secret of happiness
Bullet for Narcissus
Love is the law

 


Dana Gavanski(ダナ・ガヴァンスキー)は『Late Slap』の二作目のシングル「Let Them Row」を発表した。ダナ・ガヴァンスキーは、ロンドンのセルビア系の移民で、バロックポップをAldous Hardingのようなスタイリッシュなモダンポップスへと変化させるシンガーである。

 

この曲は、「ロマンチックで創造的であることの揺らぎ、ひどく高価で競争の激しい街で、皮肉と陶酔の間を常に揺れ動くこと」を歌っている。

 

 ダナ・ガヴァンスキーは、前作『When It Comes』の作曲中に(文字どおり)声を失った。『LATE SLAP』ではマジメなモードで、作曲と歌の両方で新たな自信とエネルギーを見せている。「強くなるためには、不快であることに慣れる必要があると気づいたのです」とダナは言う。


『Late Slap』は、マイク・リンゼイ(Tunng、LUMP)とガヴァンスキーのバンド(共同プロデューサーのジェームス・ハワードを含む)と共に、マーゲイトにあるプロデューサーのスタジオ、MESSで5日間かけてレコーディングされた。

 

「マイクは、私が探していたサウンドの奥行きを見つける手助けをしてくれるとわかっていた。彼は音の細部に驚くほどこだわりがあり、私たちは、以前のレコードで一緒に仕事をしたことがある」

 

『Late Slap』の作曲において、ガヴァンスキーは、慣れ親しんだものから新しいものへと切り替えた。従来のギターとヴォイスのアプローチではなく、Appleが提供する作曲ソフトウェア、”Logic Pro"の使い方をトレーニングした。

 

21世紀の生活は、矛盾と頭でっかちに満ちていて、信念を持って何かをするのは難しいかもしれない。当初は無限の可能性に圧倒され、ダナは様々な影響を受けた小さな音世界のデモやコラージュを作り始めた。ある時はオーケストラ・ポップ、アート・ロック、ニュー・ウェーブなど、(セルビア系の移民として)差異と多様性を受け入れた。
 

「ある種の作業方法に行き詰まったときはいつも、新しいことに挑戦し、違う方法で自分自身に挑戦することが助けになる。新しい楽器を習うときのようにね。ワクワクするし、完璧を求めなくなる」

 

 

「Let Them Row」

 

 


ニューアルバム『Late Slap』はFull Time Hobbyから4月5日に発売される。先行シングルとして、 「How to Feel Uncomfortable」が公開されている。

 

 

©︎Atiba Jefferson

シカゴの人気インディーロックバンド、Dehdが5枚目のフルレングス『Poetry』の制作を発表した。2022年の『Blue Skies』に続く本作は、ファット・ポッサムから5月10日にリリースされる。アルバムのリード・シングル「Mood Ring」は、対のミュージックビデオと共に本日公開された。


Dehdは、Palisade StudioでバンドのJason Ballaと共に、WhitneyのZiyad Asrarを共同プロデュースに起用した。チャールズ・ブコウスキーの詩『The Laughing Heart』からインスピレーションを得たという。

 

 

 「Mood Ring」

 




■2nd Single「Light On」

©Atiba Jefferson


Dehdは、五作目のアルバムの最新シングル「Light On」を発表した。前シングルに続くセカンドシングルとなる。この新曲はイギリスとヨーロッパでのツアー日程と合わせて公開された。新作アルバム『Poetry』は5月10日にFat Possumから発売される。

 

Violent Femmesを思わせる開放的な気風のあるローファイなオルトロックソングは曲の途中でアンセミックなフレーズへと変わる。

 

「この曲は、窓辺のロウソクのようなもので、家に帰ろうとする人を導く光だ」とバンドのジェイソン・バラは声明で説明している。


Dehd(デッド)は、エミリー・ケンプフ、ジェイソン・バラ、エリック・マグレディの3人組からなる。"Blue Skies"の一連のツアーを終えた後、バンドは人里離れた場所でバンドは作曲のセッションを集中的に行った。「食べること、眠ること、呼吸すること、生きること、そして私たちの唯一の目的は曲を書くことでした」とエミリー・ケンプフはプレスリリースで語っている。


シカゴのインディーポップデュオ、Whitney(ホイットニー)のジヤド・アスラーが、ジェイソン・バラとアルバムをプロデュース。シカゴのパリセイド・スタジオでレコーディングした。チャールズ・ブコウスキーの詩 "The Laughing Heart "は、本作にインスピレーションを与えた。

 

 

「Light On」


 

 

■3rd Single 「Alien」

©Atiba Jefferson


Dehdは、近日発売予定のアルバム『Poetry』からのニューシングル「Alien」を発表した。


バンドのフロントウーマンのEmily Kempf(エミリー・ケンプ)は声明で次のように述べている。

 

「この曲は、私が異世界のアーティストであり、光のアーティストであり、天使であり、エイリアンであり、あるいはある種のフェアリー・クリーチャーであり、この世界で私のような誰か、私と同種の誰かを見つけたいと思っていることについて歌っている」

 

「"私と同じくらい特別な人が、私を愛してくれるために現れてくれることを切望している。でもその代わりに、私は1000人の友人を持つ一匹狼の仙人のような人間になる運命にあり、自分自身を愛することが、私が一貫して取り組むことができる最も重要でやりがいのあることであり、永遠に行うことができるという同じ結論にいつも到達する」 

 

 

Dehdの新作アルバム『Poetry』はファット・ポッサムより5月10日に発売される。



「Alien」




Dehd 2024 Tour Dates:


Jul 1 – Leeds, UK – Brudenell Social Club

Jul 2 – London, UK – Village Underground

Jul 4 – Werchter, BE – Rock Werchter

Jul 5 – Cologne, DE – MTC

Jul 6 – Amsterdam, NL – Paradiso Tolhuistuin – IndieStad

Jul 7 – Kraggenburg, NL – Wilde Weide

Jul 9 – Paris, FR – La Boule Noire

Jul 12- Berlin, DE – Berghain Kantine

 

 

 

Dehd 『Poetry』

Label: Fat Possum

Release: 2024/05/10


Tracklist:

 

 Hard To Love
 Mood Ring
 Necklace
 Alien
 Light On
 Pure Gold
 Dist B
 So Good
 Don’t Look Down
 Knife
 Shake
 Magician
 Forget

 


イギリスのミュージック・シーンを象徴する歌手、フローレンス+ザ・マシーン(フローレンス・ウェルチ)は、独特な世界観と圧倒的な歌唱力、そして唯一無二のカリスマ性で多数のリスナー、ライブ会場の無数のオーディエンスを魅了してやまない。今回、ウェルチはジャック・アントノフが手がけるアップルTV+で放送予定の新シリーズ「The New Look」の公式サウンドトラックからのファーストシングルとして「White Cliffs Of Dover」をリリースした。(視聴する)


アントノフがキュレーションとプロデュースを手がけたサウンドトラックは、ザ・ブリーチャーズ、フローレンス+ザ・マシーン、ラナ・デル・レイ、ザ・1975、ビーバドビー、ニック・ケイヴ、パフューム・ジーニアスが演奏する、20世紀初頭から中頃にかけての人気曲のカヴァーを収録。これらのサウンドトラックは第二次世界大戦中のヒットソングを中心に構成される。

 

映像作品のサントラは、ジャック・アントノフのインディペンデント・レーベルで、ダーティ・ヒットの新しいインプリントである”シャドウ・オブ・ザ・シティ”による最初のリリースとなる。




『The New Look』はトッド・A・ケスラー監督による歴史ドラマ。エミー賞受賞のベン・メンデルゾーンが「クリスチャン・ディオール」を、さらにアカデミー賞受賞のジュリエット・ビノシュが「ココ・シャネル」を演じる。実話にインスパイアされ、パリで撮影された『The New Look』は、ファッションデザイナーのクリスチャン・ディオール、ココ・シャネルが第二次世界大戦の恐怖を乗り越え、ファッションブランドを立ち上げるまでの同時代の人々を中心に描く。

 

ここ数年、フローレンス・ウェルチは「断酒をしている」と明かし、それにまつわる苦悩を打ち明けた。一昨年、パンデミック後期にリリースされた『Dance Fever』(Reviewを読む)は、ウェルチのシンガーとしてのカリスマ性が凝縮された作品だった。2022年に発表された多数のモンスター・アルバムの中にあり、今なお強烈な存在感を放ち、アーティストの象徴的なカタログとなっている。

 

今回のトッド・ケスラー監督の手掛けた『The New Look』へのサウンドトラック提供は、シアトリカルかつシネマティックなスケールを持つ、英国を代表するポピュラー歌手の音楽のスタイルにこの上なくマッチしており、ドラマの音響効果の中で重要な役割を果たす可能性がある。



©︎A.J.Gibbony

 

Paramoreは、近日発売予定のトリビュートアルバム『Stop Making Sense』の一部として、トーキング・ヘッズの「Burning Down the House」のカヴァーを公開した。試聴は以下から。


このトリビュート・アルバムは、トーキング・ヘッズの1984年の重要なコンサート・フィルムの復元版を昨年リリースした映画会社「A24」によって制作される。


パラモアは年明けの記事で紹介したように、アトランティックとの契約が終了し、様々な憶測が流れている。メンバーがソロで活動するという噂もある。当面のところは、サイドプロジェクトというような形で活動が継続される。今週初め、SZAはアップル・ミュージックとのインタビューで、パラモアとのコラボレーションが "進行中 "であることを認めた。バンドは昨年、新作アルバム『This Is Why』(Reviewを読む)をリリースし、ニューウェイブ・サウンドに対するリスペクトを示した。このアルバムはMTのBEST ROCK ALBUM 2023にランクインを果たした。

 

 「Burning Down the House」

 

©Matilda Hill-Jenckins

 

アフロ・ビートとエレクトロを融合させる多国籍のグループ、Ibibio Sound Machine(イビビオ・サウンド・マシーン)が次作『Pull The Rope』を発表した。2022年の『Electricity』に続くこのアルバムは、Mergeから5月3日にリリースされる予定。


「”Got to Be Who U Are”は、私たちを結びつけるものは、私たちを隔てるものよりも強いという考えについて歌っている」とバンドはプレスリリースで説明している。

 

私たちを隔てる場所や物事は、信じられているほど重要ではない。自分が誰であるか、何であるかに幸せと誇りを持とう。


音楽的には、この曲は伝統的なアフリカのムビラのパートでメッセージを述べて始まり、同じようなヴォーカルになり、今度はエレクトロニック・ダンス・ヴァイブになる。

 

サビの中で出てくる "スルレレ、イサレ・エコ、イコイ、ヤバ "という場所はすべて、イーノ・ウィリアムズが育ったナイジェリアのラゴスにある地域だ。音楽の異なる部分は、まったく異なる音を使っているにもかかわらず、つながっており、世界中を移動する人々や、どこにいても場所と人の根本的なつながりを象徴している。

 

 

「Got to Be Who U Are」



ロンドンは、スペシャルズを筆頭に、1970年代から人種を越えたグループを輩出してきた。音楽という言語は国境を超えざるを得ないことを考えると、Ibibio Sound Machineはエズラ・コレクティヴのように、音楽の持つ本来の意義を呼び覚ます重要なグループだ。それはかつてアフリカの一地域でとどまっていたアフロビートが世界的な音楽と認められるようになった証拠でもある。



Ibibio Sound Machine 『Pull the Rope』


Label: Merge

Release: 2024/05/03

 

Tracklist:


1. Pull The Rope

2. Got To Be Who U Are

3. Fire

4. Them Say

5. Political Incorrect

6. Mama Say

7. Let My Yes Be Yes

8. Touch The Ceiling

9. Far Away

10. Dance in the Rain

©︎AneelaSiddiqui



マンチェスターの新人cruushが新作EPを発表した。このニュースは、最近のシングル「As She Grows」に続く。「Nice Things Now, All The Time」は4月12日にHeist or Hitからリリースされる。


また、バンドは新曲「Headspace」を発表した。「このEPの中で最も親しみやすい曲かもしれない。僕らにとっては本当に楽しい曲で、昔からライヴでファンのお気に入りだった。スタジオでは、この曲の自然な浮き沈みとライブのダイナミズムを捉えようと懸命に努力したんだ。コーラス・ギターは、Rideのvapour trailのような曲のスパンキーなギターにとてもインスパイアされている」


「EPのタイトルは、車の中でやっていたトランピアン/ソウル・グッドマン風のキャラクターが、"今すぐ、いつでも、いいことがある "という約束を売り込んでいるところから来ていて、都会で暮らしている私たちの悲惨な現実とは対照的なんだ。私たちは皆、金欠で過労で退屈で、ただ「今すぐ、いつでも、いいもの」が欲しいだけなのだ。ロウリーにキノコを食べさせて、ソープパークに連れて行こう」


 

 

先日、新作アルバム『Daydream Marker』のリリースを発表した神戸のラップデュオ、Neibiss。

 

本日、彼らはCampanellaをフィーチャーした先行曲「4 Season」を配信リリースした。さらに、アルバムの発売を記念し、東京/大阪でリリースパーティーの開催が決定。先行予約も受付中。先行シングル「4 Season」の情報と合わせて、下記よりイベント情報をチェックしてみよう。



・Neibiss「4 season feat. Campanella」-New Single


2024.01.31 Release | NSP010

Released by SPACE SHOWER MUSIC

 

 

配信リンク:

https://neibiss.lnk.to/DaydreamMarker

 

 

 

Events:



アルバム・リリース・パーティーが東京・大阪で決定。東京は、4月23日にWWW+WWWβにて豪華ゲストを迎えたパーティーとなり、大阪は、5月06日にCONPASSにてNeibiss初のワンマン公演となる。現在チケット発売中。(東京公演は、先着早割で販売中!!)

 



/// Tokyo ///

Neibiss 'Daydream Marker' & hyunis1000 'KUPTYTH' W Release Party

 


 
2024.04.23 (Tue)


Open/Start 18:00


WWW & WWWβ, Shibuya, Tokyo


Neibiss, hyunis1000 and Special Guests

 

 

チケット予約はこちら:

https://t.livepocket.jp/e/neibiss_hyunis1000 

 


[ 早割 / Early Bird ] 3,000 Yen [+1D] *枚数限定(販売期間 2.13 (Tue) 23:59まで/規定枚数に達し次第終了)


[ 前売 / ADV. ] 3,500 Yen [+1D]

 

イベント詳細:


https://www-shibuya.jp/schedule/017478.php

 



/// Osaka ///

Neibies 1st One Man Show

 


2024.05.06 (Mon)

Open 17:00 / Start 17:30

CONPASS, Shinsaibashi, Osaka


ADV. 3,800 Yen [+1D]


チケット予約はこちら:

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Neibiss「Daydream Marker」



2024.02.14 Release | NSP011
Released by SPACE SHOWER MUSIC

 

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https://neibiss.lnk.to/DaydreamMarker



2022年10月にリリースしたEP「Space Cowboy」、2023年5月にリリースしたどんぐりずとの「DOMBIESS」で更に注目を集める二人組Neibiss。


2023年7月SG「SURF'S UP」からスタートし、8月「BOSSA TIME」、12月「FLASH」にリリースした3曲を含む12曲収録のアルバムが完成。


全トラックを手掛けたのは、Neibissのratiff。ミックス・マスタリングは、得能直也。アートワークは、wackwack。ゲストで、Campanellaが参加している。


Neibissでの活動での充実に加え、ratiff、hyunis1000それぞれのソロの活動にも注目が高まっている最中のアルバム・リリースとなり、更なる盛り上がりが期待される。

 


Tracklist(収録曲):


1. Daydream Marker
2. FAMILY RESTAURANT
3. Take It Easy
4. SURF'S UP
5. BUBBLE FACTORY
6. FLASH
7. Soulful World
8. BOSSA TIME (interlude)
9. BOSSA TIME
10. dig up dig down
11. 4 season feat. Campanella
12. Looking 4u

 

 



・hyunis1000「KUPTYTH」

 
Released by EPOCH

 

リリースの詳細:

 https://hyunis1000.base.shop/items/8131178



Tracklist(収録曲):

1. やり直し #妖怪人間 (prod by hyunis1000)
2. 曲がりくねった道 (prod by hyunis1000 )
3. KOBE YOUNG ZOMBIE (RAMZA Remix)
4. TOYOTA COROLLA (prod by RAMZA)
5. EarthGear (prod by E.O.U)
6. 森林に行こう(prod by E.O.U)
7. Big No Bang2023 (prod by E.O.U)
8. TANSAN (prod by caroline)
9. コース外
10. Kubozuka feat.anddy toy store (prod by caroline)
11. going up (prod by DJ HIGHSCHOOL)
12. Be all right
13. in earth (poivre Remix)
14. ONE (prod by D.M.C)




Neibiss:

 

ビートメイカー/DJ/ラッパーのratiff(ラティフ)とラッパーのhyunis1000(ヒョンイズセン)の二人組。共に2000年生まれ、兵庫県神戸市出身。Nerd Space Program。2018年に結成、2020年01月「Heaven」でデビューを果たした。


2022年10月にtofubeats、パソコン音楽クラブ、E.O.Uが参加したEP「Space Cowboy」をリリース。11月には、Campanellaとパソコン音楽クラブを迎え、WWWにてリリース・パーティー「Neibiss Space Cowboy Release Party」を開催した。


2023年5月17日に”どんぐりず”と「DOMBIESS」をリリース。二組が出演するMVも公開され、話題となっている。また、自らの所属するクルー”Nerd Space Program”での活動やソロとしてのリリースも活発に行い、あらゆるカルチャーを巻き込み注目を集める。2024年2月14日アルバム「Daydream Marker」をリリースした。



hyunis1000:

 

2000年生まれ、神戸を中心に活動するラッパー。トラックメイカー/DJ/ラッパー・Ratiffとのユニット・Neibiss、同世代のコレクティブ・Nerd Space Program、どんぐりずとのユニット・DOMBIESSのメンバーとしても活動中。

 

SPACE SHOWER TV『BLACK FILE』でのインタビュー動画の公開やRed Bullが企画するマイクリレー『RASEN』への抜擢され、ロンドンを拠点とするパーティー『Keep Hush』の日本公演に出演するなど躍進を続ける。

 

2022年1月にファーストアルバム『NERD SPACE PROGRAM』、2023年1月にビートメイカー/DJ・carolineとの共作『SNOWDOME』を発表。その持ち前のラップスキルの高さから、全国各地のヘッズや音楽評論家の間で話題となり、一躍注目を集める。2023年11月には神戸のセレクトショップ・EPOCHからセカンドアルバム『KUPTYTH』を発表。全国5都市でのリリースツアーを予定しており、今最も注目すべき若手ラッパーの1人であることは間違いない。



Campanella:


Rapper (MdM)


1987年愛知県生まれ。 音楽と言葉を変幻自在に操るRapper。
 

2011年、RCSLUM RECORDINGSのV.A.『the method』 に参加。その後、C.O.S.A.とのユニットであるコサパネルラ名義の作品、 フリーミックステープ、CAMPANELLA&TOSHI MAMUSHI名義の作品などを立て続けにリリース。


2014年、ファースト・アルバム『vivid』をリリースし脚光を浴びる。2016年、セカンド・アルバム『PEASTA』をリリース。


2017年、中納良恵(EGO-WRAPPIN’)とのコラボレーション楽曲『PELNOD』、2019年に坂本龍一の楽曲”ZURE”をサンプリングした楽曲『Douglas fir』をシングルカット。2020年、サード・アルバム 『AMULUE』をリリース。


2021年、KID FRESINOを客演に迎えた『Puedo』、2022年には鎮座DOPENESSを客演に迎えた『RAGA』をシングルカット。2023年12月、最新EP『Mi Yama』をリリースし高評価を得た。