Weekly Music Feature

 

Saya Gray:


 

昨年、Dirty Hitからアルバム『QWERTY』をリリースしたSaya Gray(サヤ・グレー)はトロント生まれ。


グレイは、アレサ・フランクリン、エラ・フィッツジェラルドとも共演してきたカナダ人のトランペット奏者/作曲家/エンジニアのチャーリー・グレイを父に持ち、カナダの音楽学校「Discovery Through the Arts」を設立したマドカ・ムラタを母にもつ音楽一家に育つ。幼い頃から兄のルシアン・グレイとさまざまな楽器を習得した。グレーは10代の頃にバンド活動を始め、ジャマイカのペンテコステ教会でセッションに明け暮れた。その後、ベーシストとして世界中をツアーで回るようになり、ダニエル・シーザーやウィロー・スミスの音楽監督も務めている。


サヤ・グレーの母親は浜松出身の日本人。父はスコットランド系のカナダ人である。典型的な日本人家庭で育ったというシンガーは日本のポップスの影響を受けており、それは前作『19 Masters』でひとまず完成を見た。

 

デビュー当時の音楽性に関しては、「グランジーなベッドルームポップ」とも称されていたが、二作目となる『QWENTY』では無数の実験音楽の要素がポピュラー・ミュージック下に置かれている。ラップ/ネオソウルのブレイクビーツの手法、ミュージック・コンクレートの影響を交え、エクスペリメンタルポップの領域に歩みを進め、モダンクラシカル/コンテンポラリークラシカルの音楽性も付加されている。かと思えば、その後、Aphex Twin/Squarepusherの作風に象徴づけられる細分化されたドラムンベース/ドリルンベースのビートが反映される場合もある。それはCharli XCXを始めとする現代のポピュラリティの継承の意図も込められているように思える。

 

曲の中で音楽性そのものが落ち着きなく変化していく点については、海外のメディアからも高評価を受けたハイパーポップの新星、Yves Tumorの1stアルバムの作風を彷彿とさせるものがある。サヤ・グレイの音楽はジャンルの規定を拒絶するかのようであり、『Qwenty』のクローズ「Or Furikake」ではメタル/ノイズの要素を込めたハイパーポップに転じている。また作風に関しては、極めて広範なジャンルを擁する実験的な作風が主体となっている。一般受けはしないかもしれないが、ポピュラーミュージックシーンに新風を巻き起こしそうなシンガーソングライターである。

 

 

『Qwenty II』- Dirty Hit


Saya Grayは、Dirty Hitの新しい看板アーティストと見ても違和感がない。同レーベルからリリースされた前作『Qwenty』では、ドラムンベースのフューチャリズムの一貫であるドリルンベース等の音楽性を元にし、エクスペリメンタル・ポップの未来形であるハイパーポップのアプローチが敷かれていた。グレイの音楽は、単なるクロスオーバーという言葉では言い表せないものがある。それは文化性と民族性の混交、その中にディアスポラの概念を散りばめ、先鋭的な音楽性を組み上げる。ディアスポラといえば同レーベルのサワヤマが真っ先に思い浮かぶが、女性蔑視的な業界の気風が是正されないかぎり、しばらく新譜のリリースは見込めないとのこと。

 

おそらく、サヤ・グレイにとって、ロック、ネオソウル、ドラムンベース、そしてハイパーポップ等の音楽用語、それらのジャンルの呼称は、ほとんど意味をなさないように感じられる。グレイにとっての音楽とは、ひとつのイデアを作り出す概念の根幹なのであり、そのアウトプット方法は音楽というある種の言語を通じて繰り広げられる「アートパフォーマンス」の一貫である。また、クロスオーバーという概念を軽々と超越した多数のジャンルの「ハイブリッド」の形式は、アーティストの音楽的なアイコンの重要な根幹を担っている。連作のような意味を持つ『Ⅱ』は、前作をさらにエグく発展させたもので、呆れるほど多彩な音楽的なアプローチ、ブレイクビーツの先を行く「Future Beats(フューチャー・ビーツ)」とも称すべき革新性、そしてアーティストの重要なアイデンティティをなす日本的なカルチャーが取り入れられている。

 

 『Qwenty Ⅱ』は単なるレコーディングを商品化するという目的ではなく、スタジオを舞台にロック・オペラが繰り広げられるようなユニークさがある。一般的に、多くのアーティストやバンドは、レコーディングスタジオで、より良い録音をしようと試みるが、サヤ・グレイはそもそも録音というフィールドを踏み台にして、アーティストが独壇場の一人の独創的なオペラを組み上げる。

 

心浮き立つようなエンターテイメント性は、もうすでにオープニングを飾る「You, A Fool」の中に見出せる。イントロのハイハットの導入で「何が始まるのか?」と期待させると、キング・クリムゾンやRUSHの系譜にある古典的なプログレッシヴ・ロックがきわめてロック的な文脈を元に構築される。トラックに録音されるボーカルについても、真面目なのか、ふざけているのか分からない感じでリリックが紡がれる。このオープニングは息もつかせぬ展開があるとともに瞬間ごとに映像のシーンが切り替わるような感じで、音楽が変化していく。その中に、英語や日本のサブカルの「電波系」のサンプリングを散りばめ、カオティックな展開を増幅させる。

 

そのカオティックな展開の中に、さりげなくUFOのマイケル・シェンカーのようなハードロックに依拠した古臭いギターリフをテクニカルに織り交ぜ、聞き手を呆然とさせるのだ。展開はあるようでいて存在しない。ギターのリフが反復されたかと思えば、日本のアニメカルチャーのサンプリング、古典的なゴスペルやソウルのサンプリングがブレイクビーツのように織り交ぜつつ、トリッピーな展開を形作る。つまり、聞き手の興味がある一点に惹きつけられると、すぐさまそこから離れ、次の構造へと移行していく。まるで''Catch Me If You Can''とでもいうかのように、聞き手がある場所に手を伸ばそうとすると、サヤ・グレイはすでにそこにはいないのだ。

 

続く「2 2 Bootleg」はグレイの代名詞的なトラックで、イギリスのベースメントのクラブ・ミュージックのビートを元にして、アヴァン・ポップとネオソウルの中間にあるポイントを探る。ノイズ性が含まれているという点では、ハイパーポップの範疇にあるが、その中に部分的にドリルンベースの要素を元にノイズを織り交ぜる。例えば、フォーク音楽の中にドリルの要素を織り交ぜるという手法は、カナダというより、ロンドンのポップスやネオソウルの中に頻繁に見出される。グレイの場合は、pinkpantheressのように扇動的なエナジーを込めて展開させていく。このトラックには、クラブ・ミュージックの熱狂性、ロックソングの狂乱、ヒップホップのフロウの節回し、そういった多数のマテリアルが渾然一体となり、旧来にはないハイブリッド音楽が組み上げられていく。唖然とするのは、曲の中盤では、フォーク音楽とIDMの融合であるフォークトロニカまでを網羅している。しかし、このアルバムの最大の魅力は、マッドな質感を狙いながら「聞きやすさ」に焦点が置かれていること。つまり、複雑な要素が織り交ぜられた先鋭的なアプローチであるものの、曲そのものは親しみやすいポップスの範疇に収められている。

 

しかし、解釈の仕方によっては、メインストリームの対蹠地に位置するアウトサイダー的なソングライティングといえ、発揮される才覚に関しては、それと正反対に一つの枠組から逸脱している。矛盾撞着のようではあるが、グレイの音楽というのは、一般的なものと前衛的なもの、あるいは、王道と亜流がたえず混在する、不可解な空間をうごめくアブストラクト・ポップなのだ。これは、グレイがきわめて日本的な家庭で育ったという背景に要因があるかもしれない。つまり、日本の家庭に見受けられるような、きわめて保守的な気風の中で精神性が育まれたことへの反動や反骨、あるいは徹底したアンチの姿勢がこの音楽の中に強かに含まれているのだ。

 

 

 

 

何らかの概念に対するアンチであるという姿勢、外的なものに対して自主性があるということ。これは政治的なものや社会気風に対する子供だましの反駁よりも遥かにパンクであることを意味する。


音楽的には、その限りではないが、上述のパンクの気風はその後の収録曲においても、何らかの掴みをもたらし、音響的なものとは異なる「ヘヴィネス」の概念を体現する。そしてサヤ・グレイは、音楽そのものの多くが記号学のように聞かれているのではないかと思わせる考えを提示している。

 

例えば、K-Popならば、「K-Pop」、J-Popであれば、「J-Pop」、または、ロンドンのロックバンド、1975の音楽であれば「1975の音楽」というように、世界のリスナーの9割が音楽をある種の「記号」のように捉え、流れてくる音に脊髄反射を示すしかなく、それ以上の何かを掴むことが困難であることを暗示している。「A A BOUQUET FOR YOUR 180 FACE」は、そういった風潮を逆手に取って、アーバンフラメンコの音楽性をベースに、その基底にグリッチ・テクノの要素を散りばめ、それらの記号をあえて示し、標準化や一般化から抜け出す方法を示唆している。アーバンフラメンコのスパニッシュの気風を散りばめたチルアウト風の耳障りの良いポップとして昇華されているこの曲は、脊髄反射のようなありきたりのリスニングからの脱却や退避を意味し、流れてくる音楽の「核心」を捉えるための重要な手がかりを形成するのである。

 

二曲目で示されたワールド・ミュージックの要素は、その後の「DIPAD33/WIDFU」にも含まれている。ヨット・ロックやチル・アウトの曲風の中で、グレイはセンスよくブラジル音楽の要素を散りばめ、心地よいリスニング空間を提供する。 そしてボーカルのジェイムス・ブレイクの系譜にある現代的なネオソウルの作風を意識しながら、Sampha、Jayda Gのようなイギリスの最新鋭のヒップホップとモダンソウルのアーティストの起伏に富んだダイナミックな曲展開を踏襲し、ベースラインやギターノイズ、シンセの装飾的なフレーズ、抽象的なコーラス、スポークンワードのサンプル、メロウな雰囲気を持つエレピというように、あらゆる手法を駆使し、ダイナミックなポップネスを構築していく。メインストリームの範疇にあるトラックではあるものの、その中にはアーティスト特有のペーソスがさりげなく散りばめられている。これらの両極端のアンビヴァレンスな要素は、この曲をリスニングする時の最大の醍醐味ともなりえる。

 

 

例えば、Ninja TuneのJayda Gが前作で示したようなスポークンワードを用いたストリーテリングの要素、あるいはヒップホップのナラティヴな要素は続く「! EDIBLE THONG」のイントロのサンプリングの形で導入される。


前曲と同じように、この曲は、現在のロンドンで盛んなネオソウルの範疇にあり、Samphaのような抽象的なアンビエントに近い音像を用い、渋いトラックとして昇華している。アルバムの中では、最も美麗な瞬間が出現し、ピアノやディレイを掛けたアコースティックギターをサンプリングの一貫の要素として解釈することで生み出される。これらは例えば、WILCOとケイト・ルボンとの共同作業で生み出された、Bon Iverの次世代のレコーディングの手法であるミュージックコンクレートやカットアップ・コラージュのような前衛的な手法の系譜に位置づけられる。

 

他にも、続く「! MAVIS BEACON」ではアヴァン・ポップ(アヴァンギャルド・ポップ)の元祖であるBjorkの『Debut』で示されたハープのグリッサンドを駆使し、それらをジャズ的なニュアンスを通じてネオソウルやクラブ・ミュージック(EDM)の一貫であるポップスとして昇華している。 


しかし、アルバムの中盤の収録曲を通じて示されるのは、クールダウンのためのクラブ・ミュージックである。たとえば、クラブフロアのチルアウトのような音楽が流れる屋外のスペースでよく聞かれるようなリラックスしたEDMは、このトラックにおいてはブリストルのトリップホップのようなアンニュイな感覚と掛け合わさり、特異な作風が生み出される。ボコーダーを用いたシーランのような録音、そして、それは続いて、AIの影響を込めた現代テクノロジーにおけるポピュラー音楽の新たな解釈という異なる意味に変化し、最終的には、 Roisin Murphy、Avalon Emersonを始めとするDJやクラブフロアにゆかりを持つアーティストのアヴァンポップの音楽性の次なる可能性が示されたとも見ることが出来る。そして実際的に、先鋭的なものが示されつつも、一貫して曲の中ではポピュラリティが重点に置かれていることも注目に値する。

 

最も驚いたのはクローズ「RRRate MY KAWAII CAKE」である。サヤ・グレイはブラジルのサンバをアヴァン・ポップの切り口から解釈し、ユニークな曲風に変化させている。そして伝統性や革新性の双方をセンスよく捉え、それらを刺激的なトラックとしてアウトプットさせている。 ジャズ、和風の音階進行、ミニマリズム、ヒップホップ、ブレイクビーツ、ダブ、ネオソウル、グレイ特有の独特な跳ね上がるボーカルのフレージング、これらすべてが渾然一体となり、音楽による特異な音響構造を作り上げ、メインストリームにいる他のアーティストを圧倒する。全面的に迸るような才覚、押さえつけがたいほどの熱量が、クローズには立ち込め、それはまたソロアーティストとして備わるべき性質のすべてを持ち合わせていることを表している。

 

このアルバムでは、ポップスの前衛性や革新性が示され、音楽の持つ本当の面白さが体験出来る。アルバムのリスニングは、富士急ハイランドのスリリングなアトラクションのようなエンターテイメントの悦楽がある。つまり、音楽の理想的なリスニングとは、受動的なものではなく、ライブのように、どこまでも純粋な能動的体験であるべきなのである。無論、惜しくもCHAIが示しきれなかった「KAWAII」という概念は、実は本作の方がはるかにリアリティーがあるのだ。

 

*Danny Brownの『Quaranta』と同じようにクローズのアウトロがオープナーの導入部となっており、実はこのアルバムは円環構造となっている。

 

 



90/100

 

 

「RRRate MY KAWAII CAKE」

 

 

 


©Rocket Weijers


メルボルンのフューチャーソウルグループ、ハイエイタス・カイヨーテ'(Hiatus Kaiyote)は、ニューアルバム『Love Heart Cheat Code』を発表した。Brainfeeder/Ninja Tuneから6月28日にリリースされる。注目のリリースなので、ぜひとも発売日を抑えておきたい。

 

2021年の『Mood Valiant』に続くこのアルバムは、先にリリースされた「Everything's Beautiful」に続くシングル「Make Friends」がリードしている。アルバムのアートワークとトラックリストは下記よりチェック。


この曲について、ヴォーカルのナオミ・"ナイ・パーム"・サーフィールドは声明でこう語っている。

 

「私の人生における女性たちから、男性たち、そして私のノンバイナリーな友人たちに至るまで、私が愛する人たちの様々な例を表現したかったの」


「私は最大主義者なの。私は何でも複雑にしてしまう。でも、人生でいろいろなことを経験すればするほど、リラックスして奔放になれる。このアルバムは、私たちがそれを明確にした結果だと感じている。曲が複雑さを必要としないのであれば、複雑さを表現する必要はなかったの」


「Make Friends」

 


Hiatus Kaiyote 『Love Heart Cheat Code』


Label: Brainfeeder/ Ninja Tune

Release : 2024/06/28


Tracklist:


1. Dreamboat

2. Telescope

3. Make Friends

4. BMO is Beautiful

5. Everything’s Beautiful

6. Dimitri

7. Longcat

8. How To Meet Yourself

9. Love Heart Cheat Code

10. Cinnamon Temple

11. White Rabbit

 

 

Hovvdyは4月26日に発売予定のセルフタイトルの最新シングル「Make Ya Proud」をリリースした。

 

「この曲は、僕の祖父であるピートおじいちゃんのために書いた数曲のうちの1曲だ。彼は去年の夏に亡くなったんだけど、いろんな意味で僕の家族のバックボーンだった」とデュオのチャーリー・マーティンは声明で説明している。

 

「『Make Ya Proud』を書いたのは、ミシシッピにいた頃だった。ピートが入院している病院を見舞いに海岸に行く合間に書いてみたんだ。表現するのは本当に難しいんだけど、この曲は彼を讃えるものであり、彼がいかに私にインスピレーションを与えてくれたかを歌っている」

 

 アルバムからは先行シングルとして「Forever」、「Jean」、「Bubba」、「Portrait」、「Meant」が配信されている。

 

テキサスのデュオ、Hovvdyは、ハートフルなロックソングを書くことで知られる。それほどセンセーショナルな音楽性ではないものの、彼らのソングライティングには普遍的な魅力が込められている。

 




昨夜、ピート・タウンゼントはジミー・ファロン主演の深夜番組『Tonight Show』に出演し、『Tommy』のプロモーションを行った。以下、パフォーマンスとインタビューをご覧ください。

 

インタビューの中で、タウンゼントはファロンについて気前の良いことを言い、フーの初期、『Tommy』の起源について、ステージでギターを叩き壊すことの経済学についても語った。フーの初期の頃、タウンゼントはたった1本のギターを1日に4回も壊しては「修理していた」そうだ。


続いて、インタビューの中で、タウンゼントは、現在リバイバル上演中の『トミー』のキャストについて語った。その後、キャストと一緒に『Tommy』の曲「Pinball Wizard」、「See Me, Feel Me」、「Listening To You」のメドレーを披露。タウンゼントは、そのパフォーマンスの中心人物ではないものの、タウンゼントが作曲したこれらの定番曲を観るのは楽しい。

 

昨年、ザ・フーのボーカリスト、ロジャー・ダルトリーは、2022年に北米ツアーを行ったばかりの英国のロック界の長寿伝説が、COVID後の世界で大規模のロック・ショーを開催することの難しさを理由に、「もしかすると二度とアメリカ・ツアーを行わないかもしれない」と語った。

 

タウンゼントは、最近30年ぶりのソロ・シングル「Can't Outrun The Truth」をリリースした。現在、ザ・フーの1969年のロック・オペラを基にしたミュージカル『Tommy』がブロードウェイで上演されている。

 


 

 

 



アメリカのシンガーソングライター、ワクサハッチー(Waxahatchee)は昨夜放送された『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルバート』に音楽ゲストとして出演し、アルバムにコラボレーターとして参加したMJ Lendermanと共に「Right Back to It」をステージで披露した。
 

「Right Back to It」は先週末にAnti-から発売された『Tigers Blood』のリードシングル。アルバムには、先行シングル「Bored」「365」も収録。下記よりパフォーマンスをチェックしてみよう。
 
 
 
 「Right Back to It」

 


シカゴのエクスペリメンタル・フォーク・デュオ、Gastr Del Sol(デイヴィッド・グラブスとジム・オルーク)が、90年代以来のアルバム『We Have Dozens of Titles』を5月24日にドラッグ・シティからリリースすると発表した。

 

ガスター・デル・ソルはCAKE、Tortoise、また、Touch &Goに所属するバンドと並んで、シカゴ音響派として知られる。この一派は、ケンタッキーのルイヴィルのバンドとともにポスト・ロックの源流を形作った。その中には、Slint、レイチェル・グリムスのRachel'sなどがいる。これらはポスト・ロックを知るために避けて通ることが出来ないグループ。特に、ポスト・ロックを演奏するにあたって、『Upgrade & Afterlife』を聞かないのはモグリというしかない。


ドラッグ・シティのプレス・リリースによれば、アルバムは「これまで未収録だったスタジオ録音と美しく捉えられた未発表ライヴ・パフォーマンスの集合体」であり、「彼らの本領であった流動性への広々とした頌歌を形成している。


1997年のビクトリアヴィル国際音楽祭でのガストル・デル・ソルの最後のライヴで、CBCのアーカイブに保管されていた "The Seasons Reverse "のライヴ・ヴァージョンをチェックできる。『We Have Dozens of Titles』のトラックリストとアートワークを以下でチェックしよう。

 

近年、オルークはソロ・アルバムをリリースしてきた。その中には映像作品のサウンドトラック提供作品が含まれている。オルークは最近、パート・バカラックのカヴァーアルバム「All Kind of People」にも参加。カヴァーアルバムには他にも、細野晴臣、カヒミ・カリィ、やくしまるえつこ(相対性理論)、サーストン・ムーア(Sonic Youth)、作家の中原昌也などコアなメンバーが参加している。

 

ガスター・デル・ソルのリイシュー的な意味を持つニューアルバムのアートワークは、ペンシルバニアの伝説的なポストロックバンド、Helmetに由来を持ち、以後、WarpのBattlesに分岐する”Don Cabarello”が1998年に発表した『What Burns Never Returns』に対するオマージュだと思われる。 

 




Gstr Del Sol 『We Have Dozens of Titles』



Label: Drag City

Release: 2024/05/24

 

Tracklist:


1. The Seasons Reverse (live)

2. Quietly Approaching

3. Ursus Arctos Wonderfilis (live)

4. At Night and at Night

5. Dead Cats in a Foghorn

6. The Japanese Room at La Pagode

7. The Bells of St. Mary’s

8. Blues Subtitled No Sense of Wonder (live)

9. 20 Songs Less

10. Dictionary of Handwriting (live)

11. The Harp Factory on Lake Street

12. Onion Orange (live)


アルバムのジャケットより

バーナード・バトラーは、ブリットポップのレジェンド、スウェード(Suede)の最初の2枚のアルバムでギタリストを務め、マカルモント&バトラーなどのプロジェクトにも参加していた。バトラーは25年ぶりの新作ソロアルバム『Good Grief』を発表、ファースト・シングル 「Camber Sands」を公開した。『Good Grief』は355 Recordingsから5月31日にリリースされる。


2022年、バトラーは高名な女優ジェシー・バックリーと組み、アルバム『For All Our Days That Tear The Heart』を発表した。

 

彼はスウェードの創設メンバーであり、1993年のセルフタイトル・デビュー作と1994年のオールタイム・クラシック『Dog Man Star』(そして当時の彼らの素晴らしいB面曲の数々)に参加した。

 

スウェードを脱退した後、彼はシンガーのデヴィッド・マカルモントとともに音楽デュオ、マカルモント&バトラーの一員として2枚のアルバムをリリースした。

 

2004年、バトラーはスウェードのブレット・アンダーソンと再結成し、ザ・ティアーズを結成、2005年のアルバム『Here Come the Tears』をリリースした。また、プロデューサーとしても様々なアーティストと仕事をしている。

 

しかし、バトラーのソロ・アルバムは1998年の『People Move On』と1999年の『Friends and Lovers』の2枚しかない。


バーナード・バトラーは声明の中で、このアルバムについてこう語っています。「しばらくの間、私は傷つき、怯えていた。私は多くの音楽に夢中になり、喜びを感じていた。ただそこにいることが、自分が望んでいた以上のことだと気づいた」

 

「私は他の人々に多くを与えたが、私の物語は、私が何であるかよりも、むしろ私が何であったかによって定義されることに気づいた。私は自分自身に、控えめな商業的目標と、期待に満ちた創造的目標を設定した」

 

 

「Camber Sands」





Bernard Butler 『Good Grief』

 


Label: 355 Recordings

Release: 2024/05/31


Tracklist:


1. Camber Sands

2. Deep Emotions

3. Living the Dream

4. Preaching to the Choir

5. Pretty D

6. The Forty Foo”

7. London Snow

8. Clean

9. The Wind


アンドリュー・ベイリー、コリン・コールフィールド、ベン・ニューマン、ザッカリー・コール・スミスの4人組、DIIVが、4thアルバム『Frog in Boiling Water』の最新プレビューとして「Everyone Out」を公開した。


以前公開された、SNLのフェイクビデオでフレッド・ダーストとコラボしたアルバム・プレビュー「Brown Paper Bag」と「Soul-Net」に続き、DIIVは2019年の『Deceiver』に続くアルバムの新曲「Everyone Out」を公開した。


バンドはこの曲について、「アコースティック楽器、重ねたテープループ、シンセサイザーといった、よりソフトで質感のあるサウンドパレットを利用している」と語っている。


「この曲は感情的で親密で、希望的ともシニカルとも解釈できるし、若さゆえの純朴さから苦い幻滅への素早い移行を中心とした人物研究なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。この希望の喪失は、社会から完全に離脱したいという願望に現れているのかもしれないし、社会の崩壊を加速させたいという願望に現れているのかもしれない。あるいはその両方かもしれないし、そのどちらでもないかもしれない」



「Everyone Out」

 


デビューEP「In Her Dream」が「ファナ・モリーナやアントニオ・ロウレイロを想起させる」と評されるなど注目を集めた''marucoporoporo''。数年間の沈黙を経て、ついにファーストアルバムをFLAUから5月15日にリリースする。


アルバムの最初の先行シングルとなる「Cycle of Love」は、命の循環をテーマにした新作の幹となる、メロディアスなエスノ・アンビエント・フォークともいえる楽曲。日本人ばなれした歌唱力と抽象的な音像の中にじんわり溶け込むハートフルなボーカルが神秘的な雰囲気を生み出す。その歌唱力の透明感美麗なナチュラルさは北欧のアイスランドのシンガーに比するものがある。


独自の変則チューニングから繰り出されるアコースティック・ギター、そして唸るような低音から透き通るハイトーンまでを行き来する美しい歌声、深遠な水の底まで落ちていくかのようなドリーミーなアンビエンスが、唯一無二の世界を形作っている。先行シングルの視聴、及び配信リンクは下記より。

 





「Cycle of Love」-Lead Single



Label: FLAU
Release:2024/3/27

Tracklist:

1. 「Cycle of Love」


Pre-save/Pre-add:(先行シングルの配信):

 https://marucoporoporo.lnk.to/ConceivetheSea



『Conceive the Sea』-Deview Album


Label: FLAU

Release: 2024/5/15

1. Conceive the Sea

2. Cycle of Love

2. Cycle of Love

3. From a Distance

4. Double Helix

5. Core

6. Tubulin

7. As I Am

8. Reminiscence


Pre-order(先行予約): 

https://marucoporoporo.lnk.to/ConceivetheSea

 

POND Creative


ニューヨークを拠点に活動するSSWの新星、S. Raekwon(S.レイクウォン)は、j次作アルバム『Steven』の最新シングル「If There's No God...」をリリースした。フォーク・ミュージックとソウルを融合させたスタイルは「Folk-Soul」とも称するべきだろうか。この曲は、前作「Old Thing」と「Steven's Smile」に続くシングル。この曲のミュージックビデオは以下よりご覧下さい。


「『If There's No God...』はアルバムの感情的、テーマ的な中心作なんだ。自分の中にある醜さが自分という人間を定義しているのかどうかを問うている。人間というのは、自分の最悪の部分によって判断されるべきなのだろうか? それとも、私はちょっとだけ自分に厳しすぎるのだろうか? しばらくの間、この曲をどんなふうに仕上げるか迷っていたんだ。やはり、宗教と道徳は大きなテーマになっている。でも、この作品が本当に好きなのは、そのどれにも答えようとしないからなんだ。誰も批判しちゃいない。だれも自分のことしか考えていないだけだよ」


PONDクリエイティブはビデオについてこう付け加えた。「ニューヨークを中心としたグラウンドホッグ・デイのような物語を実現するため、マンハッタンからスタテン島まで、スタテン島フェリーに乗り、何度も何度も往復してみた」

 

「日の出、日没、朝、昼、夜明け、夕暮れ、後悔から羞恥心、怒り、混沌まで、スティーヴンがフェリーの壁の中で様々な感情を経験するのを見守っていた」


S. Raekwonによる新作アルバム『Steven』は5月3日にFather/Daughter Recordsからリリースされる。黄昏に照らされるマンハッタンのフェリーのミュージックビデオは、ヴィンテージな映像処理が施され、クールで美しい。アーティストはマンハッタンの望洋の果てに何を見るのか??



「If There's No God...」


Blondeshell(ブロンドシェル)が、Bully(バリー)と組んで新曲「Docket」をリリースした。双方ともアメリカの現行のロックシーンをリードするクールな女性シンガー。今回のコラボシングルには2人のフレンドシップが感じられる。男性同士にも友情あり、そして女性同士にも友情はつきもの。


Blondshell(ティーテルバウムのロック・プロジェクト)、セルフ・タイトル・デビューに浸透していたアルト・ロックのヴァイブスを倍増させた "Docket "は、Bully(アリシア・ボグナンノのロック・プロジェクト)とアーティストが繋がり、人間関係に関してあまり健康的でない振る舞いをする人物の視点を提示しながら、自問自答の物語を紡ぐ。


「ティテルバウムは、ドライブするパワーコードと飽和したドラムにのせて歌う。彼はもっと恋をしている人と一緒にいるべき/タダで食べている人じゃない/私の最悪の悪夢は私/少なくとも彼らは正直!」


「私はこの曲で別の人のためのスペースを持っていたし、私はそこにBullyの声を聞き続けた 」とティーテルバウムは声明で述べている。


「私は彼女の大ファンで、去年の夏のツアー中、彼女のアルバムを聴くのを止められなかった。正直なところ、スタジオで彼女の歌声を聴いたとき、ただただ衝撃を受け、畏敬の念を抱くばかりだった。彼女がわたしと一緒に曲を作ることにイエスと言ってくれて本当に嬉しい」


「私はサブリナの大ファンで、彼女は信じられないほど素晴らしいと思っています。インディーズの世界で多くのミュージシャンが互いをサポートし、賞賛し合っているのを見ると、本当に嬉しくなる。だから、ありがとうサブリナ。そして、私が大ファンである彼女の愛犬にも特別なエールを送りたいよ」


「Docket」はBlondshellの2024年最初の新作となる。この曲には新しいプロジェクトに関する発表はないが、アーティストはA24のトリビュートアルバム『Stop Making Sense』に参加する。ブリーは最近、2023年の作品『Lucky for You』に続く破壊的な「Atom Bomb」を発表した。


Blondshellは、現時点では2024年のツアーを計画していないもの、ロラパルーザ、ボストン・コーリング、ガバナーズ・ボール、グラストンベリー、シェイキー・ニーズなど、今後数ヶ月の間に数多くのフェスティバルに出演する予定。一方、Bulyは現在グループ・ラブとのツアーを終えたばかりだ。

 


「Docket」

 

©︎Alexa Viscius

アメリカン・フットボールのフロントマン/ヴォーカリスト、マイク・キンセラ(Mike Kinsella)は、別名プロジェクトのOwenのアルバム『The Falls of Sioux』から2曲を同時に発表した。「Virtue Misspent」と「Hit and Run」はリード・シングル「Baucoup」に続く。


「"Virtue Misspent''はずっと好きだったバンド、New Orderへのオマージュ。ギターパートはいつもピーター・フックのベースラインのように聴こえたから、スタジオではシンセストリングスを加えたり、エレキ・ギターをそのままボードにつないだりして、それを取り入れた。このビデオは、人生を生きてきて、その過程でたくさん失敗してきた僕へのオマージュなんだ」


監督のバッセとムーアはこうコメントしている。「この曲を聴くと、自分の過去と、その後に続くジェットコースターのようなエモーションを最後の最後で垣間見るような気がする。誰もが経験する普遍的なノスタルジーを味わうことができるはずだよ。その感情を視覚化するために、私たちは自分たちの青春時代の冒険を再現することを目指してみたんだ」


「中西部で経験した懐かしい思い出と完璧な日々の融合……。少年時代の驚き、少しの反抗、そして、本物の友情……。これらのイリュージョンを捉えるため、私たちは基本的に少年たちを遊ばせた。私たちはこのようなシナリオを作り、そして、彼らに自由に楽しんでほしいと言った。幸いにも少年たちは優秀で、私たちは共鳴し、誠実さを感じられる作品に仕上がったと思う」


「Hit And Run」について、マイク・キンセラは次のように付け加えた。「自分のアルバムには、たいてい1曲は泣ける曲があるけれど、この曲がそうなんだ」

 

Owenによる新作アルバム「The Falls of Sioux(スーの滝)」は4月26日にPolyvinyl/Big Scary Monstersからリリースされる。

 


「Virtue Misspent」

 

 

 「Hit And Run」

 

 


Velvet Undergroundのオリジナルメンバー、John Cale(ジョン・ケイル)が次作『POPtical Illusion』を発表し、そのリード・シングル「How We See The Light」を公開した。


遊び心溢れるアルバム・タイトルとは裏腹に、ケイルのわずか1年ぶりとなるセカンド・アルバムには、高評価された2023年発表のアルバム『MERCY』に見受けられたような、激しく詮索好きな怒りの感情がまだ含まれている。


『POPtical Illusion』では、ケイルは豪華なキャストを差し置いて、シンセサイザーとサンプル、オルガン、ピアノが入り組んだ迷路に一人で潜り込んだ。ケイルと長年のアーティスティック・パートナー、ニタ・スコットがロサンゼルスのスタジオで制作した『POPtical Illusion』は、まさにケイルがいつもそうしてきたように、未来に向かおうとする人の作品である。

 


「How We See The Light」


 

John Caleによる新作アルバム『POPtical Illusion』はドミノから6月14日にリリースされる。

 

 

John Cale 『POPtical Illusion』

 

Label: Domino

Release: 2024/06/14


Tracklist:


God Made Me Do It (don’t ask me again)

Davies and Wales

Calling You Out

Edge of Reason

I’m Angry

How We See The Light

Company Commander

Setting Fires

Shark-Shark

Funkball the Brewster

All To The Good

Laughing In My Sleep

There Will Be No River

 

Pre-add:

 

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西アフリカのトゥアレグ族のハードロックグループ、Mdou Moctarがニューシングル「Imouhar」をリリースした。この曲は、近日発売予定のアルバム『Funeral For Justice』の最新シングル。


西アフリカのニジェールでは、2000年頃から携帯電話が普及し、市民の間でごく普通に音楽がデバイスでやりとりされるようになった。Mdou Moctorはそんな現代化と都市化が進むニジェールの中で、国際的な流れの中に文化性が飲み込まれていくことを危惧している。そのうちに彼らの言語性が奪いとられ、最終的には民族衣装をもどこかに消え去っていくのではないかと。

 

ニューシングル「Imouhar」は、バンドが属するトゥアレグ族のタマシェク語を守りぬくよう全体に呼びかけている。タマシェク語は消滅の危機に瀕しており、モクターは彼のコミュニティの中で数少ないタマシェク語の語法を知っている。そして言語性の消去はとりも直さず、国民性の消去でもある。彼らが行うのは、それを音楽という形で次の世代に伝えることなのである。


「ここの人たちはフランス語ばかり使っている。自分たちの言葉を忘れ始めているんだ。100年後には誰もタマシェク語をうまく話せなくなるような気がして、それは私たちにとってとても怖いことなのです」

 


「Imouhar」

 


ニューヨークのバンド、ビーン・ステラ(Been Stellar)が、6月14日にDirty Hitからリリースされるデビューアルバム『Scream from New York, NY』の最新シングル「All in One」を発表した。このシングルは、リードカット「Passing Judgment」に続くシングル。この曲のビデオは以下から。


「この曲とその歌詞は、いろいろな意味でアルバムの核心をついている。「この曲とその歌詞は、いろいろな意味でアルバムの核心をついている。この歌詞は、私たち全員が行っているありふれた日々の仕事を処理すること、それが私たちの人生をより大きな意味で理解することにどうつながるかをテーマにしている」


「ニューヨークのような凝縮された都市での生活の多くは、とても小さな箱の中で過ごすことになる。私たちはこのビデオで、その経験から来る狂気を描きたかった。EPで取り上げた独在論や実存的な不確かさというテーマは、この曲と結びついているように感じる。この曲は、私たちにとってクリエイティブな結論のようなもので、何年も取り組んできたような曲だ。レコーディングまでの最後の数週間で完成させたんだけど、その出来栄えはこれ以上ないくらい誇らしい」


「Passing Judgment」

 

©︎Jessica Fowly

カナダのシンガー、シャーロット・デイ・ウィルソン(Charlotte Day Wilson)は、次作アルバム『Cyan Blue(シアン・ブルー)』から新曲「Canopy」を発表した。この曲は、以前に発表されたシングル「I Don't Love You」と「Forever」に続く。


ウィルソン曰く、この曲は「愛を失い別れることは、愛を見つけることと同じくらい感動的なことなのだということを思い出させてくれる曲」だという。


シルヴァン・ショッセが撮影し、メラニー・サンチェスがスタイリングしたビデオは以下よりご覧下さい。『Cyan Blue』は5月3日にStone  Woman Music/XLよりリリース予定。


「Canopy」