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ノッティンガムのポストパンクバンド、Do Nothingがデビューアルバムの詳細を発表しました。『Snake Sideways』は6月30日にリリースされる予定です。日本国内では限定版として販売されます。また、バンドは最新シングル「Amoeba」と、Clump Collectiveが監督したビデオを公開しました。

 

 

先行シングル「Amoeba」について、バンドのヴォーカリストは次のように語っている。「僕が覚えている限りでは、"Amoeba "は、僕のガールフレンドが仕事に行って役に立つために家を出て、僕はソファに横になって馬鹿な気分でテレビで迷惑なニュースを見ている話だ」

 

この曲は、メディアが2週間交代で私たちの関心事を決めることについて考えています。時々、テレビやインターネットが他のことを考える時間だと判断するまで、私たちは数週間何かに怒っているように感じます。ある人たちは消防士で、僕は自分のエゴを満たすことに時間を費やしているんだ。

 

 


 Do Nothing  『Snake Sideways』

 

Label: Exact Truth

Release: 2023/6/30


Tracklist:

 

1.Nerve

2.Happy Feet

3.Snake Sideways

4.Fine

5.Ivy

6.Hollywood Learn

7.The Needle

8.Amoeba

9.Moving Target

10.Sunshine State 



©Ebru Yildiz
 

ニューヨークのポスト・パンクバンド、Interpolは、最新アルバム「The Other Side Of Make-Believe」の収録曲を、Daniel Avery、Makaya McCraven、Jeff Parker、Jesu、Water From Your Eyesといった魅力的なアーティストがリワークを手掛けたプロジェクト「Interpolations」を発表しました。現時点では発売日は未定ですが、今後数ヶ月でリリースされます。

 

この告知とともに、第1弾シングルとして、ドラム奏者であるMakaya McCraven(マカヤ・マククレイヴン)による「Big Shot City」のリワークが公開されました。(ストリーミングはこちらから)



また、バンドは、オリジナル・アルバムのレコーディング中にアティバ・ジェファーソンが撮影した新しいドキュメンタリービデオを公開しました。タイトルは「Interpol - Making 'The Other Side of Make-Believe'」で、この曲のオリジナルは昨年、同レーベルから発売された最新作『The Other Side Of Make Believe』に収録されています。


新しいリワークアルバム『Interpolation』について、インターポールは次のように語っています。

 

5人の才能あるアーティストに最新アルバム『The Other Side of Make-Believe』の楽曲を再構築してもらうというコラボレーションシリーズ、"Interpolations "プロジェクトを発表することを誇りに思います。その結果は、本当にインスピレーションに満ちたものでした。


Makaya McCravenが「Big Shot City」に適用したラテンドラムとベースのリズムから、Water From Your Eyesが「Something Changed」に作成した難解で推進力のあるサウンドスケープに至るまで、「Interpolations」は、我々の曲を再構築し、我々が賞賛する才能あるアーティストたちのビジョンと結合させる異国の旅なのです。

 




Weekly Music Feature 





Benefits 


結成4年目にして、イギリス/ミドルズブラの四人組バンドであるBenefitsは大きく変化し、成長しました。ロックダウンの間、彼らはパワフルなギター主導のパンクから、圧倒的にブルータルなノイズワーカーへと変貌を遂げました。激しく、忌まわしさすらある音楽は、ほとんどのアーティストが夢見るような口コミで支持されるようになった。

Benefitsのフロントマンを務めるキングスレイ・ホールのボーカルは、分裂的で外国人嫌い、毒気に満ちた過激なレトリックを発信しましたが、結果、多くの人々によって拡散され、我々の公論を圧倒していたことに対する正当な反撃として機能したのです。

バンドの勇気づけられるような極論が届くたびに、社会に蔓延る不治の病に対する解毒剤のようにソーシャルメディア上で急速に拡散していき、ベネフィッツはやがて多くの人の支持を集めることになりました。Steve Albini、Sleaford Mods、Modeselektorのような著名なミュージシャンのファンは、最初から彼らの音楽に夢中になっていた。さらに、NME、The Quietus、Loud & Quiet、The Guardianなど、先見の明がある国内のメディアがこぞって取り上げました。

その後、Benefitsはさらにステップアップを図り、かれらが尊敬するインディーズ・インプリント”Invada Records"と契約し、4月21日に4作目のフルアルバム「NAILS」をリリースすることになりました。

「ここ数年、いつでもレコードをリリースする準備はできていたんですが、適切な人が現れるまで待ちたかったので、ずっと我慢していました」と、フロントマンのKingsly Hall(キングズリー・ホール)は述べています。
 
イギリスのインディペンデント・レーベル”Invada Records" の共同設立者であるPortisheadのGeoff Barrowは、ネットで話題になっていた音楽に惹かれた一人であり、故郷のブリストルで彼らのライブを見た時、すぐさまBenefitsの虜になったといいます。後に、彼のバンドへの信頼は報われることになり、グループの素晴らしさを再確認し、バーロウが実現可能であると思っていたことを再定義するようなレコードを制作しました。このアルバムには、彼らがイギリス国内で最もエキサイティングなアクトの一つであることを証明するかのように、鋭い怒りとアジテーションが込められています。

リード・シングル「Warhorse」は、音楽的な視野が狭いことや、バンドの "パンク "としての信頼性を疑問視する人々への遊び心のある反撃として、バンドは破砕的なドラムフィルを集め、それを本質的に踊れるエレクトロ・バンガーに変身させました。「パンクは大好きだし、カートゥーンパンクも大好きだ、素晴らしいと思っているよ」とキングズリー・ホールは言います。

「時々、お前はクソじゃないから、パンクじゃない、なんて言われることがあるんだけど、そんなの全部デタラメだ」

しかしそれでも、キングズレイはまた、彼のようなメッセージを伝える最良の方法は、人々を動かすことだと知っているのです。



Benefits 『Nails」 Invada Records




PortisheadのGeoff Barrow(ジェフ・バーロウ)が主宰するレーベル”Invada Records”から発売されたBenefits(べネフィッツ)の4作目のアルバム『Nails』は、2022年のリリースの中でも最大級の話題作です。

このアルバム『Nails』の何が凄いのかといえば、作品の持つ情報量の多さ、密度の濃さ、そしてキングズレイ・ホールが持つ暴力的な表情の裏側にときおり垣間見える聖人のような清らかさに尽きます。しかしながら、その音楽性の核心にたどり着くためには、Benefitsの表向きのブルータルな表現をいくつも潜り抜ける必要があるのです。
 
キングズレイ・ホールのリリックは、基本的に、ラップ/ヒップホップの範疇にある。それはこのジャンルが他ジャンルに対して寛容であることを示し、得意とするジャンルを全て取り入れ、それを痛快な音楽に仕立てることで知られるノーザンプトンのヒップホップ・アーティスト、Slowthaiに近い。表向きには暴力的であり、乱雑ではありますが、その中に不思議な親しみやすさが込められているという点では、ミドルスブラのキングズレイのリリック/ライムも同様です。

しかし、例えば、Slowthaiの音楽が基本的には商業主義に基づいているのに対して、キングズレイのそれはアンダーグラウンドの領域に属しています。

リリックは無節操と言えるほど、アジテーションと怒りに満ち溢れており、その表現における過激さは、ほとんど手がつけることができない。キングズレイのボーカル・スタイルは、どちらかといえば、ロサンゼルスのパンクのレジェンドであるヘンリー・ロリンズに近いエクストリームの領域に属しています。ロリンズは、例えば、『My War』を始めとするハードコアの傑作を通じて、世の不正を暴き、さらに、内的な闘争ともいえるポエティックな表現を徹底して追求しましたが、キングズレイ・ホールのリリックもまた同様に、世の中に蔓延する不治の病理を相手取り、得体の知れない概念や共同体の幻想を打ち砕き、徹底的に唾を吐きかけるのです。

あらかじめ断っておくと、これは耳障りの良いポピュラー音楽を期待するリスナーにとっては絶望すらもよおさせる凄まじい作品です。

これまで古今東西の前衛音楽を聴いてきたものの、この作品に匹敵するバンドをぱっと挙げるのは無理体といえる。それほどまでに、2000年以前のドイツで勃興したノイズ・インダストリアルのように孤絶した音楽です。Benefitsの作品は、この世のどの音楽にも似ておらず、また、どの表現とも相容れない。比較対象を設けようとも、その空しい努力はすべて無益と化すのです。
  
ノイズ/アヴァンギャルドの代表格であるMerzbowの秋田昌美、ドイツのクラウトロックバンド、Faustとリリース日が重なったのは因果なのでしょうか、オープニング・トラック「Malboro Hundrets」から、凄まじいノイズの海とカオティック・ハードコアの応酬に面食らうことになるはずです。最早、心地良い音楽がこの世の常であると考えるリスナーの期待をキングズレイ・ホールは最初の段階で打ち砕き、その幻想が予定調和の世界で覆いかくされていることを暴こうとします。細かなリリックのニュアンスまではわからないものの、初っ端からキングズレイの詩は鋭いアジテーションと怒りに充ちており、まるで目の前で罵倒されているようにも思える。

しかし、フロントマンのリリック/ライムは、単なるブラフなのではなく、良く耳を澄ましていると、世の中の現実を鋭く捉えた表現性が反映されている。その過激なリリックをさらに印象深くしているのが、”ストップ・アンド・ゴー”を多用したカオティック・ハードコアの要素ーーさらにいえば、グラインドコアやデスメタルに近い怒涛のブラスト・ビートの連打です。ドラムフィルを断片的に組み合わせて、極限までBPMを早め、リズムという概念すら崩壊させる痛撃なハードコア・パンク/メタルによって、『Nails』の世界が展開されていくことになります。
 
続く「Empire」においても、フロントパーソンのキングズレイ・ホールの怒号とアジテーションに充ちた凄まじいテンション、狂気的なノイズの音楽性が引き継がれていきます。いや、その前衛的な感覚は、かつてのポストパンクバンド、Crassのように次第に表現力の鋭さを増していくのです。

そして、キングズレイ・ホールは、英国のポスト・ブレクジットの時代の社会の迷走、インターネット社会に蔓延する毒気、また、さらに、人間の心の中に巣食う闇の部分を洗いざらい毒を持って暴き出そうとしている。キングズレイの前のめりのフロウは迫力満点であり、そして扇動的で、挑発的です。そして彼は、”偽りの愛国者”の欺瞞を徹底的に風刺しようとするのです。

真摯なブラックジョークを交えたセックス・ピストルズの現代版ともいえる歌詞のなかで、

"神よ、女王を救い、そして、私のパイント(編注: ビールグラスのこと)をEmpire(編注: 王国の威信の暗示)で満たして下さい!!"

と、無茶苦茶にやりこめる。

瞬間、彼と同じように国家に対して、いささかの疑念と不信感を抱く人々にとって、乱雑な罵詈雑言と鋭い怒りに充ちたキングズレイのリリックの意味が転化し、快哉を叫びたくなるような感覚が最高潮に達する。それは緊縮財政や、弱者に向けたキリストのような叫びへと変化するのです。
 
さて、果たして、キングズレイ・ホールは、現代社会の民衆の中に現れた救世主なのでしょうか? 

その答えはこの際、棚上げしておくとしても、これらのエクストリームな音楽は、その後も弱まるどころか鋭さを増していきます。

今作の中では聴きやすいラップとして楽しめる「Shit Britain」では、ノリの良いライムを通じて、人々が内心では思っているものの、人前では言いづらい言葉を赤裸々に紡ぎ出す。そしてロンドンのロイル・カーナー、ノーザンプトンのスロウタイにも通じる内省的なトリップ・ホップのフレーズを交え、

"アナーキーはかつてのようなものではない、イングランドが燃えている時、あなたはどこにいるのか??"

と、最近のフランス・パリで起きている、年金の支給年齢を引き上げる法案に対する民衆の暴動を念頭に置きながら、キングズリーはシンプルに歌っています。

そして、曲の時間が進むごとに、彼のリズミカルなライムと対比される「Shit Britain」というフレーズは、最初は奇妙な繰り言のように思えますが、何度も繰り返されるうちに、その意味が変容し、最後には、ある種のバンガーやアンセミックな響きすら持ち合わせるようになる。そして、「Shit Britain」という言葉は最初こそ胡散臭く思えるものの、曲の終わりになると、異質なほど現実味を帯び、聞き手を頷かせるような論理性が込められていることに気がつくのです。



「Shit  Britain」

 
 
 
その後も、ボーカルのキングズレイ・ホールの怒りとアジテーションは止まることを知りません。

「What More Do You Want」では、"あなたは、さらに何を望むのか?"というフレーズを四度連呼し、聞き手を震え上がらせた後、ノイズ・インダストリアルとフリージャズの融合を通じて空前絶後のアバンギャルドな領域に踏み入れる。これらのノイズは、魔術的な音響を曲の中盤から終盤にかけて生み出すことに成功し、ジャーマン・プログレッシヴの最深部のソロアーティスト、Klaus Schulze(クラウス・シュルツェ)のようなアーティスティックな世界へと突入していきます。
 
ドラムのビートとDJセットのカオティックな融合は、主にビートやリズムを破壊するための役割を果たし、キングズレイのボーカル/スポークンワードの威力を高めさえします。このあたりで、リスナーの五感の深くにそれらの言葉がマインドセットのように刷り込まれ、全身が総毛立つような奇異な感覚が満ちはじめる。そう、リスナーは、この時、これまで一度も聴いた事がないアヴァンギャルド・ミュージックの極北を、「What More Do You Want」に見出すことになるのです。
 
その後、「Meat Teeth」では、過激なリリックを連発しながら、ヘンリー・ロリンズに比する内的な闘争の世界へと歩みを進める。キングズレイは、80年代にロリンズがそうだったように、世界における闘争と内面の闘争を結びつけ、それらをカオティック・ハードコアという形で結実させます。

しかし、終始、彼の絶えまない内面に満ちる怒りや疑問は、他者への問いという形で投げかけられます。

その表現は「Where were you be?」という形で、この曲の中で印象的に幾度も繰り返され、それはまた、日頃、私たちがその真偽すら疑わない政治的なプロパガンダのように連続する。次いで、これらの言葉は、マイクロフォンを通じ録音という形で放たれた途端、聞き手側の心に刻みこまれ、その問いに対して無関心を装うことが出来なくなってしまう。そして自分のなかに、その問いに対する答えが見つからないことに絶句してしまう。 これはとても恐ろしいことなのです。

前曲と地続きにあるのが「Mindset」です。彼は、この曲の中で、腐敗したニュース報道、メディアが支配するものが、どれほど上辺の内容にまみれているのか、さらに”羊たちへの洗脳”についても言及し、そして、鋭い舌鋒の矛先は、やがて人種差別に対する怒りへと向かう。

しかし、リリックの側面では、過激なニュアンスを擁する曲であるものの、曲風はそれとは対象的に、アシッド・ハウス、モダンなUKヒップホップという形をとって展開される。さらに、心にわだかまった怒りは、続く「Flag」で、遂に最高潮に達します。まさに、キングズレイは、この段階に来ると、個人的な怒りではなく、公憤という形を取り、スピーカーの向こうにいる大衆にむけて、ノイズまみれの叫びと怒号、そしてアジテーションを本能的にぶちまけるのです。

この段階でも、『Nails』が現代のミュージック・シーンにおける革命であることはほとんど疑いがありませんが、Benefitsは、さらに前代未聞の領域へと足を踏み入れていきます。アルバムの終盤に収録されている「Traitors」において、アバンギャルド・ノイズ、カオティック・ハードコアの今まで誰も到達しえなかった領域へと突入し、鳥肌の立つような凄みのある表現性を確立しています。ここでは、怒りを超えた狂気を孕むキングズレイ・ホールの前のめりで挑発的なリリックの叫びが、その場でのたうち回るかのように炸裂します。次いで、その異質な感覚は、苦悶と絶望という双方の概念を具象化したノイズによって極限まで高められていくのです。
 
これ以前に、リスナーを呆然とさせた後、アルバムの最後は、誰も想像しないような展開で締めくくられます。それまでは徹底して、ラップ/ノイズ/ポストパンクという三種の神器を駆使して来たBenefitsですが、神々しさのあるノイズ・アンビエント/ドローンという形を通じて、かれらのアルバム『Nails』は完結を迎えます。それまで忌まわしさすらあったキングズレイ・ホールのスポークンワードのイメージは、最後の最後で、あっけなく覆されることになる。かれの言葉は、それまでの曲とは正反対に、紳士的であり、冷静で、温かみに満ちあふれているのです。
 
そして、表向きの狂気に塗れた世界は、作品の最後に至ると、それとは対極にある神々しくうるわしい世界へと繋がっていく。

抽象的なシンセ、ストリングスの伸びやかなレガート・・・、涙ぐませるような清々しい世界・・・、クライマックスで到来するノイズ・・・。これらが渾然一体となり、Benefitsの『Nails』はほとんど想像を絶する凄まじいエンディングを迎えるのです。
 
 
 
100/100(Masterpiece)



Weekend Featured Track 「Council Rust」




Beneftsの4thアルバム『Nails』はInvada Recordsより発売中です。

 

©︎Michelle Helena Janssen

名門Warp Recordsに所属するポストパンクバンド、Squid(スクウィッド)は、近日発売予定のニューアルバム『O Monolith』に収録される最新シングル「Undergrowth」をリリースしました。

 

この曲は、バンドのLouis Borlaiseが監督したビジュアルと、Frank Forceが作った独自のビデオゲーム付きで公開されています。ビジュアライザーは下記よりご視聴ください。


"私はアニミズム、つまり無生物に霊が宿るという考え方にとても興味を持ちました。"とボーカル兼ドラマーのOllie Judgeは声明でこう説明しています。

 

ツイン・ピークス "を見ていたら、ジョシー・パッカードの霊がタンスの中に入っていくエピソードがあった。

だから "Undergrowth "は、私があの世でベッドサイドテーブルに生まれ変わるという視点から書かれたもので、無生物に生まれ変わるということがいかに恐ろしいことか...

私は決して宗教家ではないのですが、宗教家ではない人が「くそっ、もしあの世があるのならどうしよう」と一瞬考えたことがないほど自信があるとは思えません。地獄に落ちるかもしれないと思ったことが一度もない人はいないと思う。

ゲームとアニメーションが音楽とシンクロし、曲の進行に合わせて変化し、さまざまなフェーズに移行していくインタラクティブなミュージックビデオのようなものだと想像してください。


Squidのニューアルバム『O Monolith』は、Warp Recordsから6月9日に発売されます。最初の先行シングルとして「Swinging(In a Dream)」が公開されています。


 

「Undergroth」

 

 

英サウスロンドンのフローレンス・ショー擁するポストパンクバンド、Dry Cleaningが米シアトルのラジオ局KEXPに出演し、30分弱のライブパフォーマンスを行いました。

 

バンドは、昨年10月、4ADから発売されたセカンドアルバム『Stumpworks』の収録曲「Gary Ashby」、「Hot Penny Day」、「 No Decent Shoes For Rain」 「Anna Calls From The Arctic」を取り上げ、クールなパフォーマンスを行っています。

 

以前、バンドは米国のトーク番組”The Tonight Show Starring Jimmy Fallon”にも出演しているほか、3月上旬には最新EP『Swampy』を同レーベルから発売しています。 またボーカルのフローレンス・ショーは、Sleaford Modsの最新作『UK GRIM』の収録曲「Force 10 From Navarone」にもコラボレーターとして参加しています。


またセカンドアルバム『Staumpworks』は当サイトで、Weekly Recommendaitonとして紹介されているほか、2022年度のベスト・アルバムリストにも掲載しています。

 

 



The Oriellesがニューシングル「Tableau 002」をリリースし、高い評価を得た4thアルバム『Tableau』の続編となるEP『The Goyt Method』のリリースを発表しました。

 

5曲入りのEPは、昨年10月にリリースされた『Tableau』の楽曲からランダムに選ばれた部分から構成された、全く新しい楽曲を収録しています。

 

アルバムのコンセプトについて、バンドは「サイバネティクス、即興、実験的な電子音楽への興味」から生まれたと語っています。

 

「Tableauからズームアウトして、すべてのピースを切り離し、新しい方法で並べ替えて、レコード全体を包み込むような曲のバリエーションを作りたかったんだ。この部分は完全に偶然に任せて、オンラインのルーレットで茎を選びました。このような音楽制作の方法は、リミックスやレコード収集に多くの時間を費やし、ディープリスニングやアバンギャルドなエレクトロニックミュージックに興味を持った私たちにとって、馴染み深いものでした」

 

The Oriellesは、MVも同時公開しています。ビデオは、「Tetsuo: Iron Man」にインスパイアされ、バンドが「ジャンキーなエレクトロニックIDMと実験的SFやボディホラー映画への崇拝」で絆ができたというBeck Cooleyが監督しました。

 

「このEPのために”Tableau”のトラックをリミックスした方法は、AIとのコラボレーションにとてもインスパイアされ、オンラインのランダム化に任せて、トラックに引き込むための茎を選択させました。我々はこれが非常に適切であると感じ、メタルとコンピュータの「マンミーツマシン」の衝突でアイアンマンのテツオに敬意を表することにしたんだ」 



「Tableau 002」
 

 

©Andres Poveda Photography


ジョン・ライドン擁する伝説的なポストパンクバンド、Public Image Ltd.は、8月11日に発売されるニューアルバム『End of World』を発表しました。

 

このアルバムには、4月5日にアルツハイマー病で亡くなったJohn Lydonの妻Noraへのラブレターである、以前にシェアされたシングル「Hawaii」が含まれています。

 

ライドンはプレスリリースで、「ノラはこのアルバムを愛していましたし、延期や計画の変更を望んでいなかったでしょう」とコメントしています。彼が "中世のバイキングの叙事詩のようなもの"と表現したニューシングル「Penge」も同時に発表された。ミュージックビデオについては以下よりご覧下さい。

 

「Penge」




Public Image Ltd. 『End Of World』

 

Label: Cargo

Release: 2023年8月11日


Tracklist:


1. Penge
2. End Of The World
3. Car Chase
4. Being Stupid Again
5. Walls
6. Pretty Awful
7. Strange
8. Down On The Clown
9. Dirty Murky Delight
10. The Do That
11. L F C F
12. North West Passage
13. Hawaii

Sleaford Mods 『UK Grim』



Label: Rough Trade

Release Date: 2023年3月10日



Review 

 

ノッティンガムのジェイソン・ウィリアムソンとアンドリュー・ファーンのポスト・パンクデュオ、スリーフォード・モッズは2005年に立ち上げられたが、当初はウィリアムソンのソロ・プロジェクトとして出発した。

 

スリーフォード・モッズは、2009年までに三作のフルアルバムとEPをリリースした。まだこの時代にはスポークンワードとグライムの融合という現在の持ち味が出ていなかった。この状況を変えたのが、相方であるアンドリュー・ファーンだった。彼はUKのアンダーグランドシーンでDJをしており、2010年10月に、2人は出会ったのである。このとき、両者は、「All That Glue」という曲を書いて、翌年に共にデュオとして活動するようになった。スリーフォード・モッズがプロミュージシャンとして独り立ちしたのは、2014年のことであり、グラスゴーでスカオリジナルバンド、ザ・スペシャルズのサポートを務めたとき。その後、英国に対する風刺を効かせたスポークンワード、UKのダンスフロア出身者らしいコアなグライムを制作するアンドリュー・ファーンのクールなトラックメイクが彼らの代名詞となった。彼らがザ・スペシャルズのサポートを務めた後、ミュージシャンとして独立したのは偶然ではあるまい。先日亡くなったテリー・ホールがそうであったように、デュオは労働者階級のヒーローともいうべき存在なのである。

 

現在、フロントマンのウィリアムソンさんは50歳を過ぎている。しかし、年齢からにじみ出る含蓄溢れるブレクジットや政権に対するシニカルな風刺という要素は、他のどのバンドにも求められないデュオの最高の魅力と言えるかもしれない。昨年、ラフ・トレードから発売された『Spare Ribs』もスポークンワードとポスト・パンクを融合させた快作だったが、昨日発売となった新作『UK Grim』もスリフォード・モッズの持ち味が十分引き出された快作となっている。いや、もしかすると、政治風刺の鋭さについては前作を上回るものがあるかもしれない。


先行曲として公開された「UK Grim」は、グリム童話のように、可愛らしくも不気味なイラストレーションのMVが特徴的だ。ジェイソン・ウィリアムソンは、ボリス・ジョンソン政権に対する暗示的な批判を加え、貴族たちに民衆が搾取されていることをほのめかしている。これらは英国政府の停滞を肌で感じる人々に痛快な印象を与えるはずだ。そして、デュオの代名詞である、ごつごつした鋭いポストパンクに根ざしたアンドリュー・ファーンのトラックメイク、お馴染みのジェイソン・ウィリアムソンのシニカルでウィットに富んだスポークンワードが刺激的な融合を果たしている。イントロダクションは戦闘機のエンジン音のように不気味な印象をもたらす。


その他、2ndシングルとして公開された「Force 10 from Navarone」では、2022年、4ADから『Stumpwork』を発売したイギリスのポスト・パンクバンド、Dry Cleaningのボーカリスト、フローレンス・ショーとコラボレーションを実現させている。これは表向きには、異色のコラボとも思えるかもしれないが、他方、両者とも知的なスポークンワードの要素を兼ね備えるという点では理にかなった共演と言える。情熱的なウィリアムソンのボーカルとショーのクールなボーカルという両極端の掛け合いは、スリーフォード・モッズの音楽に新鮮味をもたらしている。

 

さらに、3rdシングルとして公開された「So Trendy」には、Jane's Addiction(ジェーンズ・アディクション)のペリー・ファレルが参加した。ペリー・ファレルがデュオのファンで、彼の方から連絡をとったという。

 

このコラボレーションが面白いのは、USオルタナティヴの代名詞的な存在であるファレルは、痛快なコーラスワークによって、自身の音楽性の重要なアイコンであるヘヴィネスというより、オレンジ・カウンティのポップ・パンクのような明るい影響をこの曲に及ぼしていることだ。また、このトラックは今までのスリーフォード・モッズの楽曲の中で最も軽快さと明朗さを感じさせる内容となっている。他にも、前作『Spare Ribs』に収録されていた「Out There」の音楽性の延長線上にある「I Claudius」は、アシッド・ハウスとUKグライムを融合させたクラブミュージックで、アンドリュー・ファーンのセンス抜群のトラックメイクを堪能することが出来る。


前作に比べ、ウィリアムソンのスポークンワードは、アジテーションが少し薄まってしまったようにも思えるかもしれないが、依然として、昨年、トム・ヨークがサウンドトラックを担当したBBCのドラマ『ピーキー・ブラインダース』の終盤のエピソードに”ラザロ役”として出演したウィリムソンの醍醐味ーー怒りを内に秘めたスポークンワードーーの存在感は「Pit 2 Pit」に顕著に表れ出ている。さらに以前から自宅でのTikTok形式のダンスの動画をTwitterで公開しているミュージシャンらしいユニークさと遊び心も、本作の随所に見出すことが出来るはずだ。

 

 

86/100

 

 

Featured Track「So Trendy」



Sleaford Modsは、Jane's AddictionのPerry Farrellをフィーチャーした新曲「So Trendy」を、新作アルバム『UK GRIM』の第3弾テイスターとして公開しました。


先月の「Force 10 From Navarone」でDry CleaningのFlorence ShawとコラボしたSleaford Modsは、Jane's AddictionのPerry Farrellをフィーチャーした「So Trendy」を発表しました。この曲は、1月のタイトルトラックとともに、2人のアルバムUK GRIMに収録されることになっています。


Jason Williamsonは、このコラボレーションについて、「Perryが連絡をくれて、僕らと仕事をしたいと言ってくれたんだ。彼は本当にクールな男で、彼のバック・カタログは明らかにそれを物語っている」


彼はこの曲について、「"So Trendy "は、スマートデバイスを通して生活することの二極化が進行していることに関係している。毎日の生活は、パスワードや顔認証の連続であり、消費者マーケティングと適合性というおなじみのアリーナへと私たちを導いていくのです」 と彼は付け加えました。


このデュオの次作アルバムは、2021年のアルバム『Spare Ribs』に続く。ジェイソン・ウィリアムソンは、「もしかしたら、私たちはこの国を誇りに思っているかもしれない。もしかしたら、私たちはイギリス人であることを誇りに思っているのかもしれない。恐ろしく灰色の街並みやクソみたいな天気、気がつけば投資しているくだらないファッションを誇りに思うのかもしれない。ただ、私たちが誇りに思っている英国は、当局が広めようとする英国とは全く違うんだ」





『UK GRIM』はラフトレードから3月10日に発売されます。またこの新作については、ガーディアンの日曜版、The Observerでも特集されています。



 

©︎Cal Moores

Mandy, Indianaは、5月19日にデビューアルバム「I've seen a way」をリリースする予定です。

 

マンチェスターのDIYコミュニティに根ざしたこのバンドは、ノーウェーブの側面とポストパンクの擦り切れた側面、そしてまだ開拓されていない新しい何かを融合させたものである。Fire Talkから次々とリリースされたMandy, Indianaは、ダークエッジなオリジナリティを誇っており、注目を集めた。

 

デビューアルバム「ive seen a way」は5月19日にリリースされ、Mandy, Indianaはこの発表を祝して3月1日にマンチェスターのSOUPでライブを行う。秋には全英ツアーが予定されており、現在ニューシングル「Pinking Shears」がリリースされている。 

 

冷酷なまでに鋭い「Pinking Shears」は、期待感を削ぎ落とすかのような、鋭い、感染力のある作品に仕上がっています。バンドのScott Fairは次のようにコメントしている。「私たちは、質感を変え、衝突を作り出し、そして、その衝突の瞬間を作りたかったのです」

 

 



Mandy, Indiana 「I've seen a way」

 




Tracklist:

 

1. Love Theme (4K VHS)

2. Drag [Crashed]

3. Pinking Shears

4. Injury Detail (YouTube)

5. Mosaick

6. The Driving Rain (18)

7. 2 Stripe

8. Iron Maiden

9. Peach Fuzz

10. (ノ>ω<)ノ :。・:*:・゚’★,。・:*:♪・゚’☆ (Crystal Aura Redux)

11. Sensitivity Training


 


BenefitsがInvada Recordsとの契約を交わし、デビュー・アルバム『NAILS』のリリースを発表した。さらにリード曲『Warhorse』が2月27日にリリースされた。 「Warhorse」は、2022年10月にリリースされたシングル「Thump」以来のリリースとなり、Andy Berrimanが監督を務めたミュージックビデオも同時に公開されている。ストリーミング配信はこちらより。


ベネフィッツのリード・ヴォーカルのキングスレー・ホールはこのニュー・シングルについて、「僕はパンクが大好きで、カートゥーン・パンクが大好きで、それは素晴らしいことだと思う。時々、『お前はクソじゃない、パンクじゃない』って言われることがあるんだ。嘘つけ!!」


さらに、「ある時点で、もしブーツが俺たちを踏みつけ続けるなら、俺たちは反応することになる。物事は私を悩ませる。小さな不満から始まって、より激化する。数日、時には数分かかることもあるんだ。例えば、国会議員が有権者の貧困に直面したとき、”生活費”という言葉を口走る。老朽化したヒエラルキーシステムに対し、卑屈になったり、ひがんだりすること。緊縮財政と削減の時代における華やかさと威厳。"Warhorse "は戦いである。お辞儀をしろ、礼儀正しくしろ、黙っていろ、と言われ、選択肢がないことにうんざりしている。”Warhorse"は、顔からブーツを押し戻し、頭を上げ、立ち上がり、戦う必要性について述べているんだ」

 

「Warhouse」


Gina Birch 『I Play My Bass Loud』


 


Label: Third Man Records

Release: 2023年2月24日




Review



ジーナ・バーチはレインコーツのメンバー、ベーシストとしてお馴染みである。レインコーツは合唱のイラストのデザインで有名なセルフタイトルが代表作に挙げられる。が、印象としては日本でCD盤の流通が一般的だった00年初頭の頃、レコード店に毎日のように通っていた学生時代、なかなかレコードストアで入手しづらかった記憶もある。今では、どの曲をよく聴いていたのかもよく覚えてはいませんが、少なくとも、Raincoatsは、スコットランドのPastelsとともに私の記憶に強烈に残っている。そして、今でもよく思うのは、レインコーツというバンドは掴みどころがないというか、ジャンルを規定することがすごく難しいガールズバンドだったのです。


レインコーツはポスト・パンク・バンドのノイジーな部分もあり、いわゆるネオアコにも近いキャッチーさもあり、かと思えば、ガールズバンド特有のファンシーさも併せ持つ奇妙なバンドというイメージを私自身は抱いていた。それはたとえば、The Slitsのわかりやすいパーティーを志向したダブよりもはるかにレインコーツという存在に対して不可解な印象を持っていました。

 

時代を経て、ベーシストのギーナ・バーチはソロ転向し、サード・マン・レコーズからデビュー・アルバム『I Plat My Bas Loud」をリリースしている。既にそれ以前の時代に有名なバンドのメンバーがソロ転向して何かそれまでと異なる新しい音楽性を生み出すことは非常に稀有なことである。それは以前の成功体験のようなものがむしろ足かせとなり、新しいことにチャレンジできなくなる場合が多いからです。もちろんすべてがこのケースに当てはまるとは言えません。ザ・スマイルのトム・ヨークは少なくとも、レディオヘッドとは違い、ポスト・パンクやダブ、エレクトロの要素を上手く取り入れており、そして、ギーナ・バーチも同様にこのソロ・デビュー作で見違えるような転身をみせています。いや、それは前時代の延長線上にあるが、少なくともレインコーツの時代を知るリスナーに意外性を与えるような新鮮味に富んでいる。そしてかのアーティストが傑出したベーシストであることを対外的に示し、さらにレインコーツの時代見えづらかった副次的なテーマのようなものが随所に感じ取れる作品となっているのです。

 

一曲目のタイトルトラックでギーナ・バーチは分厚いベースラインとともにダブを展開する。そしてかつてのポスト・パンクの実験性、そしてスリッツのような痛快なコーラスワークを通じて現代のポピュラー・ミュージックを踏まえつつも、それとは異なる側面を提示しています。そして、ギーナ・バーチは裏拍を強調したツー・ステップに近いビートを交えつつ、ダブとレゲエの中間を行くようなトロピカルなボーカルを披露します。ヴォーカルのトラックにディレイを分厚くかけることにより、自分の声そのものを背後にあるビートのように処理している。時に自分の声を主役においたかと思えば、他の部分ではベースが主役になったりするのです。


これらのサウンドはいつも流動的な立ち位置を示し、一つのパートに収まることがない、ボーカルは軽妙でキャッチーさを意識してはいますが、何十年も音楽を愛してきた無類の音楽愛好家にしか生み出すことの出来ないコアなサウンドをギーナ・バーチは提示しています。続く「And Then〜」では、ポエトリー・リーディングの手法を見せ、未だにポスト・パンク世代の実験性を失っていないことを示している。

 

このデビュー・アルバムには面白い曲が満載です。没時代的なロックバンガー「Wish I Was You」は、キム・ディール擁するBreedersにも比する快活なオルタナティヴサウンドとなっている。ポストパンクの実験性を交え、ガールズバンドの出身者らしくロックンロールの見過ごされてきたユニークな魅力を再提示する。まさにこの曲はステージでのライブを意識しており、近年のポストパンクバンドにも引けを取らない迫力満点のロックサウンドを生み出してみせたのです。

 

続く、ダブのリズムを突き出した「Big Mouth」は近年のトレンドのポピュラー・ミュージックを意識し、ボコーダーを取り入れつつ、ロボット風のボーカルとして昇華し、SF的な世界観を提示し、特にアルバムの中では1番ベースラインのクールさが引きだれた一曲となっている。驚きなのは、つづく「Pussy Riot」であり、ダブ・ステップに近いビートをイントロに取り入れてレゲトン風のノリを生み出している。これはギーナ・バーチが少し前に流行ったレゲトンや、最近話題に上るアーバン・フラメンコのようなサウンドをセンスよく吸収していることを表しています。


そこには例えば、トーキング・ヘッズに象徴される旧来のポスト・パンクサウンドの影響もあるにしても、旧時代の音楽に埋もれることなく最新鋭のサウンドを刺激的に取り入れている。これはいまだにギーナ・バーチがミュージシャンとしての冒険心を忘れていないことの証となる。おそらく新しいものを古いものと上手く組み合わせることの重要性を知っているのでしょう。

 

 「I Am Rage」、「I Will Never Wear Stilettos」、「Dance Like A Devil」などなど、その他、レインコーツの時代のジャンルレスの要素を継承するかのように、アートポップ、ノイズポップ、アヴァンギャルドポップを始めとする、最近のジョックストラップのような前衛性を感じさせる特異な音楽が続く。


ギーナ・バーチは、テクノ/ハウスのシンプルな4ビートを踏まえながら、それをポピュラーミュージックの領域にある音楽として解釈していますが、これらの曲は常に表面的な音楽の裏側にこのアーティストの主張性や考えのようなものが暗示的に込められているような気がして、なかなか一筋縄ではいかないサウンドとなっています。そして、かつてのレインコーツの時代と同様、規定できない要素を実験的に掛け合わせることで、未曾有のサウンドが随所に生み出されているような気もします。とりわけ、圧巻なのは、アルバムの10曲目を飾る「Feminist Song」で、この曲はアーティストが70年代からポスト・パンクの気鋭としてシーンに台頭し、いまだに主体的な考えや主張性を失っていないことを表しています。音楽シーンや社会に対しての提言や意見を持ち合わせているからこそこういった表現が生み出されるのだろうと思われます。

 

 

84/100

 

 

Featured Track 「I Play My Bass Loud」

 

Algiers


Algeirs(アルジェ)は2020年のサード・アルバム『There Is No Year』を「衝撃的で予測不可能」(The Observer)、「緻密で思慮深く、パワフル」(NME)と評され、近年最も刺激的なカタログを作り上げた。カルト的人気を誇るバンドは同じ志を持つアーティストたちを集めて4thアルバム『SHOOK』を制作した。

 

現代のアイコンから未来のスターまで、様々なゲストを迎えた『SHOOK』は、なかなか捉えどころのない、しかし普遍的なエネルギーとフィーリングを伝える作品である。複数の声、精神的・地理的な帰郷、燃え盛る世界での交信の戦略、関係の終わりの物語、アトランタのフロント・ポーチでのサマー・パーティなど、最終的に、この17曲のセットは、最もスリリングな音楽となった。

アルジェは常に冷徹であるが、『SHOOK』は、同時に喜びに満ちた作品である。このアルバムは、フィッシャーとマハンが数ヶ月間、故郷のアトランタに戻り、ツアー・ミュージシャンとしてのプレッシャーと燃え尽き症候群から立ち直った時期に生みだされた。Rhythm RouletteやAgainst the Clockのエピソードに何時間も浸り、YouTubeのオルタナティブ・ラップにはまり込み、友人として再会したことが、ビートメイキングの激しい期間の引き金となった。

 

DJ Grand Wizard Theodoreの1970年代のパンクを取り入れたニューヨーク・ラップの傑作「Subway Theme」の再訪は、アーバンとカウンターカルチャーのスタイルを絶妙に掛け合わせた精神的ムードボードとして機能する。DJ Premier、DJ Screw、Dead BoysからLukah、Griselda、Dïatまで、ラップとパンクの革新者たちの系譜に多大なる敬意を表し、SP-404とSequential Circuits Tempestでビートを刻み、ゼロからサンプルライブラリを構築していったのだ。

 

Algiersの精神にとってコミュニティとコラボレーションは、常に必要不可欠なものだったが、SHOOKはこれを最大限に表現しようとしている。

 

ライナーノーツには、Zack de la Rocha、Big Rube (The Dungeon Family)、billy woods、Samuel T. Herring (Future Islands)、J.S.A.S.A.、Michael H. (Michael)など、革新的で現代のアンダーグラウンドミュージックの著名人たちが名を連ねている。さらに、レコーディングには、Herring (Future Islands), Jae Matthews (Boy Harsher), LaToya Kent (Mourning [A] BLKstar), Backxwash, Nadah El Shazly, DeForrest Brown Jr. (Speaker Music), Patrick Shiroishi, Lee Bains III, Mark Cisneros (Hammered Hulls, The Make-Up, Kid Congo Powers)など、現代のアンダーグラウンドミュージック界の有名人が多数参加している。

 

アルジェは様々な視点から『Shook』という概念を再構築し、神託や語り手としての役割を変化させながら、全体を通して貢献する。ドラマーのマット・トンは「アルジェの世界をより深く、より広くしてくれる」と語る。

 

制作の端緒となったアトランタという土地が、最終的にこのアルバムの核心を形作っている。アトランタに住む多くの人にとって象徴的な、ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ空港からのロボットのように機械的な列車のアナウンスで始まり、それはボーカルのフランクリン・ジェームス・フィッシャーが子供の頃によく怖がっていたものだった。バンドが作成したフィールド・レコーディングとオリジナル・サンプルは、場所、集団性、想像上のコミュニティや家の感覚を強調し、さらに南部の都市で育つ、という捉えどころのない感覚を呼び起こす世界を緻密に構築している。「私たちは、慣れ親しんだ環境で仕事をしていたんだ」とギタリストのLee Tescheは言う。"今まで作った中で最もアルジェらしいレコードになった気がするよ"。

 

このレコードは、バラバラになって解散寸前であったバンドが作ったという事実によって、さらに印象的になっている。そしてアルジェは、場所と経験の共有から生まれた、変幻自在のレコードを作り出した。「このアルバムは、私たちが家を見つけたようなものだと思う」とRyan Mahan(マハン)は言い、James Fisher(フィッシャー)は、さらに次のように付け加えている。

 

「これは自分たちの出身地と新たな関係を築き、誇りを持つという、新しいポジティブな体験でもある。このアルバムは、アトランタに始まり、アトランタに終わるという、航海のようなものなんだ」

 

 

 「Irrevesible Damage」(Preview Single)

 

 

Algiersのニューアルバム『SHOOK』はMatador Recordsから発売中です。アルバム発表後、バンドは上記の最初のシングルに加えて、「I Can't Stand It」「73%」をリリースしている。

 

 

 

 

 

Algiers 『SHOOK』

 

 

サウスロンドンのポストパンクバンド、Shameがニューアルバム『Food For Worms』の最終シングル「Adderall」を公開しました。これまでに2曲の先行シングル「Fingers Of Steel」「Six Pack」が公開されています。


「Adderall」について、フロントマンのCharlie Steen(チャーリー・スティーン)は次のように語っている。「”Adderall "は処方薬に依存している人の観察記録だ。これらの薬は彼らの精神的、肉体的な状態を変化させ、彼らの行動を変える。このことが彼らや彼らの周りの人々にどのような影響を与えるかを描いているんだ」


「この曲は、同情、フラストレーション、そして変化を受け入れることを歌っている。自分の助けや愛では周りの人を治せないこともあるけれど、苛立ちを感じながらも、それでも助けようとすることをやめないという事実に折り合いをつけている部分もあるんだ」と語っている。

 

『Food For Worms』はDead Oceansから明日(2/24)に発売されます。

 

「Adderall」


 

Do Nothing


ノッティンガムのポスト・パンクバンド、Do Nothingがニュー・シングル「Happy Feet」を携えてカムバックを果たした。


2021年の『Glueland』EP以来となる新曲は、Andy Savours (Black Country New Road, My Bloody Valentine) がプロデュース、Oli Barton Wood (Nilufer Yanya, Porridge Radio) がミックスを担当し、Luke Aingerがミュージックビデオを提供しています。


この曲は、バンドがデビュー・アルバムの制作中、ライターズ・ブロックにぶつかった時にインスピレーションを受けたもので、芸術的なプロセスをありありと表現している。ボーカルのChris Baileyは、「この歌詞は、音楽を作るとき、人々に聴いてもらいたいから世の中に出すという考え方の一種なんだ。純粋に何かを表現するためのものですが、常に人に気に入ってもらいたいという要素があります」と説明しています。


将来有望なバンドの嬉しい復帰作、「Happy Feet」は以下からチェックできます。


 


メルボルン発のポストパンクバンド、RVGがニューアルバム『Brain Worms』のリリースを発表しました。この新作は6月2日にFire Recordsから発売されます。この発表に合わせて際しのテースター「Nothing Really Changes」が公開されている。ミュージックビデオは下記よりご覧下さい。

 

バンドはソングライターの Romy Vager 率いる、Angus Bell、Reuben Bloxham、Marc Nolte による4人組として活動している。


新作アルバム『Brain Worms』全体を通して、このバンドが非常に好調であることを示している。オープニングを飾る「Common Ground」は、これから始まる曲の方向性を示し、RVGの愛する特徴をすべて備えた、スリリングでパンチの効いたアルバム。ロミー・ヴェイジャーの声は、彼女の巧妙で皮肉な歌詞を伝える時、これまで通り無垢で堂々としているが、このアルバムでは、その歌詞は憧れに対する諦めを感じさせず、より反抗的で喜びに満ちたものとなっている。


「Tambourine」は、ベイガーが「コヴィッドの曲を書かないようにしていた」ときに書いた唯一の曲で、孤立の中で悲嘆にくれる様子を痛々しいほど正直に描いたものである。『Brain Worms』は、インターネット上のウサギの穴に落ちた人が陰謀に慰めを見出すというあまりにもよくある話。Nothing Really Changes'は鍵盤を多用したニューウェーブ的なもので、クローズの'Tropic of Cancer'はVagerの自信に満ちた新しいマニフェストで輝きを放っています。


ブロックスハム、ノルテ、ウォレスの3人は、ベイジャーのソングライティングに命を吹き込んでいる。Nick Cave & Warren Ellis、PJ HarveyのJames Trevascusと共にロンドンのSnap Studiosで録音された10曲は、豊かなサウンドと意図、そしてかつてKate Bushが所有し、Tears for Fearsから贈られた(伝説では、ギターで「Everybody Wants to Rule the World」を書き上げた)アコギのマジックで盛り上がったものである。


リード・シンガー兼ギタリストのベイガー、ギタリストのルーベン・ブロックスハム、ドラマーのマーク・ノルテ、ベーシストのイサベール・ウォレスというバンドメンバーは、RVGでこれまでで最も自信を感じている。彼らは、影響を受けた出来事を乗り越え、自分たちを押し出し、新しいことに挑戦してきた。そして、自分たちのベストと呼べるレコードを制作したのだ。


『Brain Worms』は、ポスト・パンデミックのレコードが容易になり得るものに対するアンチテーゼのように感じられる。「最初の2枚のアルバムでは、鬱で外に出なかった」と言うように、すでにロックダウンについて音楽を書いていたバンドにとって強制的な孤立と考える時間は、Vagerが望むものについて書くスペースを与えた。そして、彼女は受け入れについて書く準備ができていることがわかった。「もう1枚だけアルバムを作れるとしたら、それはこの1枚だ」とヴェイガーは言う。 

 

 

 

RVG 『『Brain Worms』

 

Label: Fire Records

Release Date: 2023年6月2日


Tracklist:


1 Common Ground

2 Midnight Sun

3 It's Not Easy

4 Tambourine

5 Brain Worms

6 You're The Reason

7 Squid

8 Giant Snake

9 Nothing Really Changes

10 Tropic of Cancer

New Pegans 『Making Circles of Our Own』

 

 

 

Label: Big Scary Monsters

Release Date: 2023年2月17日

 

 

 

 

Review 


アイルランドの五人組のインディー・ロックバンド、ニュー・ペガンズのセカンド・アルバム『Making Circles of Our Own』は、バンドメンバーのCahir O' Doherty、Allan McGrrevyが、アイルランドのGlens of AntrimにあるBadlands Studioでレコーディングを行った。

 

インディーロック/オルタナティヴ・ロックバンドとは言っても、ニュー・ペガンズの音楽性はどちらかといえばポスト・パンク寄りの硬質なギターサウンドを特徴とする。メインボーカルのフレージングが独特で、メロディーもほのかな哀愁を帯びている。このバンドはパンキッシュなパンチ力が持ち味で、さらにはブリストル・サウンドのような独特なクールさを漂わせています。

 

UKでのセカンド・アルバムの売上が好調な同郷アイルランドのThe Murder Capitalと同じように、New Pegansのサウンドは、かなり綿密な計算の上に構築されていることに気づく。ギター・サウンドがフェーザーなどのエフェクターにより緻密に作り込まれていて、スタジオで相当な試行錯誤を重ねた痕跡がとどめられている。テクニカルな変拍子をそつなく織り交ぜつつ、バラードとオルタナティヴ・ロック、ポスト・パンクの激情性をかけ合わせた個性的なロックサンドを探求している。彼らはドリーム・ポップのような陶酔的な哀愁を表向きなキャラクターとしていますが、また時には、歪んだディストーションによってシューゲイズのような陶酔的な轟音サウンドを部分的に持ち合わす。相反する要素が複雑怪奇に絡み合っているのです。

 

轟音性の強いディストーション・サウンドは、ボーカルが歌われる間は、引き立て役に徹しているものの、間奏に移った瞬間、シューゲイズのような轟音サウンドをガツンと押し出す。アンサンブルとしての役割分担がとれたメリハリの利いたサウンドを擁する。つまり、ニュー・ペガンズは、チャプター・ハウス、ジーザス&メリー・チェイン周辺の80年代のドリーム・ポップ/シューゲイズの源流に当たるサウンドを、よりモダンなポスト・パンクをひとつのファクターとして通過した上、かなり新鮮味あふれるサウンドをこのセカンドアルバムで提示している。

 

全般的には、分厚いベースライン、スネアのダイナミクスが押し出されたドラム、リバーヴ/ディレイを強く噛ませたディストーションギターの掛け合いについては迫力満点で、ケリー・オケレケ擁するブロック・パーティーの2005年のデビュー作「Silent Alarm」のアート性の強い音作りを彷彿とさせるものがある。ただ、ニュー・ペガンズのセカンド・アルバムは、ブロック・パーティーが内的な孤独に焦点を絞っていたのとは対照的に、どちらかといえば他者とのコミニティーにおける共感性に重点を置いている。鮮烈な印象を与えるオープニング「Better People」、二曲目の「Find Fault with Me」を聴くと分かる通り、セカンド・アルバムの楽曲では、聞き手の感情に対して訴えかけ、自分たちの位置取る特異なフィールドに誘引していくパワーを持つ。


ボーカルについては、直情的でありながら少しセンチメンタルな感じがするので、とても好感が持てます。それでも、セカンドアルバムの曲は飽くまでParamoreやAlvveysのようなロックバンガーやステージでの観客とのシンガロング性を志向して作られている。さらに、バンドの音楽の中に一貫して感じられるのは純粋で真摯な姿勢であり、茶化したり、ごまかしたりするような夾雑物が感じられない。今あるものをレコーディング・スタジオにそのまま持ち込み、全部出しきったという感じである。この点がザ・マーダー・キャピタルと同様、取っつきやすいサウンドとは言えないにもかかわらず、聞き手に大きな共感と熱量を与えそうな理由なのである。

 

ニュー・ペガンズはこのセカンドアルバムで自らの作風を確立したといえば誇張になってしまいますが、少なくともバンドとしての完成形にむけて着実に歩みを進めています。オルト・ロック/ポスト・パンク/シューゲイズの怒涛の展開を潜り抜けた後のアイリッシュ・バラード「The State of My Love's Desires」に辿り着いた瞬間、リスナーは何らかの爽快感すら覚えるかもしれません。

 


84/100

 

 

Featured Track 「Better People」

 


米国のクイア・ポストパンクバンド、Thus Loveが新曲「Centerfield」を公開しました。ストリーミングはこちら


"Centerfield "には、バンドの故郷であるヴァージニア州ブラトルボロでAugie VossとBenni Shumlinによって撮影された、パワフルでシネマティックなミュージック・ビデオが付属しています。THUS LOVEは、現在、ヨーロッパツアーを行っており、3月4日にロンドンのThe Windmillで行われるライブはソールドアウト、またDry Cleaningのサポートとして出演することが発表されている。


「広告とインターネットの時代、注意は奪われる資源であり、記憶は消滅の危機に瀕していると感じています。このビデオは、過去、現在、未来への決意とインキュベーションのタイムスタンプです。この曲は、謎を持ち続ける夢想家たちのためのものであり、我々が現在忘れるように仕向けられている現実を受け入れるものである」


 そんなふうに語るTHUS LOVEにとってDIYは、彼らの音楽的ビジョンだけでなく、自称トランス・アーティストである3人の存在そのものを反映する精神である。バンド結成当初から、Echo Mars(彼女/彼)、Lu Racine(彼/彼女)、Nathaniel van Osdol(彼ら/彼女)は同じ屋根の下で暮らし、自分たちの商品をデザイン・制作し、さらには自分たちのレコーディングスタジオをゼロから作り上げた。


 



イギリスのポストパンクバンド、Dry Cleaningが、未発表の2曲とリミックス、デモで構成されたニューEP『Swampy』を3月1日にリリースすることを発表しました。


本日、バンドは新曲「Swampy」と「Sombre Two」を発表しています。ストリーミングはこちら。ミュージックビデオは下記より。ドライクリーニングはプレスリリースを通じてこの曲について次のように説明しています。


「この2曲はStumpworkセッションで録音されたもので、僕らにとって良い仲間のように感じるよ。埃っぽい、荒涼とした、スペイシーな雰囲気を共有している。このリリースの前夜、我々はアメリカ南西部をツアーしてきたが、これらの曲はアリゾナ砂漠の乾燥した火星のような風景にしっくりと馴染んでいる」


さらに、新作EP『Swampy』には、Charlotte Adigéry & Bolis Pupulと、Dry Cleaningの北米ツアーでサポートしたNourished By Timeによるリミックスも収録されています。『Swampy』は3月1日にデジタルと限定カセット(バンドストアのみ)で4ADからリリースされる予定です。


 「Swampy」   


Dry Cleaning 『Swampy』



Label: 4AD

Release Date: 2023/3/1


Tracklist:


1. Swampy

2. Sombre Two

3. Hot Penny Day (Charlotte Adigéry & Bolis Pupul Remix)

4. Gary Ashby (Nourished By Time Remix)

5. Peanuts (Demo)

©Eddie Whelan


ノッティンガムで結成されなモダン・ポスト・パンクデュオ、Sleaford Mods(スリーフォード・モッズ)が新曲「Force 10 From Navarone」を発表しました。このニューシングルではDry CleaninngのFlorence Shaw(フローレンス・ショー)とコラボを果たしています。”ナヴァロン”というのは、アリステア・マクリーンによる第2次世界大戦を題材にした小説にちなむと思われます。

 

スリーフォード・モッズはDry Cleaningの2ndアルバム『Stumpworks』を高く評価しており、発売時に「BRAVO!」との手放しの称賛を送っていました。 性別や熱量こそ違えど、ジェイソン・ウィリアムソンとフローレンス・ショーのスポークンスタイルは知性とシニカルという面で共通項があるので、このコラボは意外なようでいて案外理に適ったものなのかもしれませんね。

 

3月10日にラフ・トレードリリースされるニューアルバム『UK Grim』では、Sleaford Modsがイギリスの肥大化した底流に斬り込んでいるという。最初のタイトルトラックでは、グリム童話にちなんだ童話的な不気味な政治的なアンチテーゼを盛り込み、英国政府、及び、西洋社会全体の腐敗を暗示的に暴くかのようでもあった。さらに続く2ndシングル「Force 10 From Navarone」はジェイソン・ウィリアムソンがこれまでで最もオープンなスポークンワードを披露している。 


「Force 10 From Navarone」は、最初のシングルと同様に韜晦な暗示に富んだ内容となっています。それは現代のディストピアの社会の中で幸せはどこに求められるのか問うかのようでもある。しかし捉え方の解釈により曲の持つ意味は変化し、原型を持たない姿を変身させ、奇妙な流動体となる。スリーフォード・モッズのスポークンワードを務めるジェイソン・ウィリアムソンは、「この曲は、自分自身との対話であり、幸せとは何か、幸せはネガティブな気持ちや憂鬱な気持ちよりも暗いものなのかについて考えてます。それと相まって、腐敗しきった政府が存在するイギリスにおける大多数の活動家と無為の神話を探究しています」と説明します。

 

さらにデュエット曲のコラボについても、ジェイムス・ウィリアムソンはこのように付け加えています。「私たちはDry Cleaningの大ファンで、Flo(フローレンス・ショー)がこの曲にぴったりだとわかっていました。彼女は本物で、私がウータンのようなものから受けるインスピレーションを、彼女が一つの言葉を使って全体のストーリーを伝える方法で呼び起こしているのです」