ベルギー/ブリュッセルのアヴァンフォークシーンで活躍するシンガーソングライター、Antoine Loyer(アントワーヌ・ロワイエ)が5枚目のアルバム『Talamanca』のリリースを発表しました。アントワーヌ・ロワイエについては、音楽評論家の高橋健太郎氏が絶賛しています。2014年のアルバム『Chante De Recrutement』をベストアルバムとして選んでいます。

 

『Talamanca』の収録曲には、Mégalodons malades(メガロドン・マラデス)というオーケストラが参加しています。(コントラファゴットが女性のボーカルを支えています)。レーベルの説明によると、5作目のアルバムのレコーディングは、スペインのカタルーニャ地方の同名の村の教会と、古い家で行われたという。例により作品に妥協はない。ブリュッセルの小学生と一緒に作った曲も数曲含まれるという意味では、既存のアルバムの中では最もアクセスしやすいことは間違いない。


『Talamanca』はベルゴ・カタロニアの教会の名称であり、2019年にその名の由来となったスペインの村で足場が組まれた。このアルバムの制作についてアーティストは以下のように説明している。


あの時、私たちはキッチンテーブルの周りに座って労働していた。その後、パンデミックが到来したものの、以来、私たちは何も変わっていないし、変わるはずもなかった。毛布の上に寝そべりながら、子供がレコーディングの間、手持ち無沙汰にしていた。フランス語で(「Marcelin dentiste」)、次にフードの言葉で(「Marcelí」)、彼は2回歌ってくれた。私は、"Percheron frelichon "で、彼の喃語を聞くとはなしに聞いていた。


クラシック・オーケストラの最も奥深い楽器であるコントラファゴットが、レコードの全編に流れている。『タラマンカ』は、優しく、軋むとすればほんの一瞬だ。ブリュッセルの学校で作られた歌が持ち込まれ、("Demi-lune "、"Pierre-Yves bègue")、("Robin l'agriculteur d'Ellezelles", "Un monde de frites")ではピッコロが演奏される。


私が愛するすべてのものは、会話しながら(会話によって)急速に書かれ、近くにあったギターによって収穫された。私はこの方法で何千もの作品を作ることができる。そのため必要なのは、邪魔をしないことだった。事実上、長いコントラファゴットの動脈は幾重にも重なり私たちの前に現れ、流れを塞ぐことは考えられなかった。


『Talamanca』は、2023年6月2日にデジタル、LPの二形式でLabel Le Sauleより発売される。日本国内では、タワーレコードディスクユニオンで予約が開始されています。『French Song』は墓地のように広がり、人が音楽の深さを発見できるかぎりつづく。『Talamanca』のアートワークの表紙を飾ったのは、アントワーヌより20歳年下のダンサー、アンナ・カルシナ・フォレラドだ。


Antoine Loyer 『Talamanca』

Japanese BreakfastのMichelle Zauner(ミシェル・ザウナー)の2021年の回顧録『Crying in H Mart』が映画化されることが決定しました。制作側はミシェル・ザウナー役を探しており、一般募集を掛けています。

 

ミチェル・ザウナーは自身のインスタグラムのストーリーに公開キャスティングコールを投稿し、条件を以下のように定めています。「ISO 18-25歳の韓国系アメリカ人で、NYTimes Bestseller Crying in H Martの映画化でミシェル役を演じます」


 

『The White Lotus』シーズン2への出演、2016年『Flowers』の脚本・監督・主演、2021年Amazon Prime作品『The Electrical Life of Louis Wain』の脚本・監督、2021年HBO Maxミニシリーズ『Landscapers』の監督などを務めるウィル・シャープが、この回顧録の映画を監督します。

 

 

©Patrick O'Brien Smith


アルバムリリースに際してWarp Recordsと新たに契約を結んだKasa Overall(カッサ・オーバーオール)は、Lil B、Shabazz PalacesのIshmael Butler、Francis and the Lightsが参加した新曲「Going Up」を公開しました。『ANIMALS』は今週金曜日、5月26日にWarpからリリースされます。

 

「Ready to Ball」「Make My Way Back Home」「The Lava Is Calm」に続く、彼のアルバム『ANIMALS』からの最新シングルとなっています。以下よりチェックしてみてください。


「Going Up」

 



カート・コバーンの記念品の名品が今週末、ジュリアンズ・オークションに出品されました。ニルヴァーナのボーカル、デイヴ・グロールとクリスト・ノヴォセリックのサイン入りフェンダー・ストラトキャスターは、ボーカルによって砕かれ、再度組み立てられた。ストラトキャスターは、当初60,000ドルで出品された後、約60万ドルで落札されました。

 

Julien'sは595,000ドルの売却前にこの楽器はニルヴァーナのアルバム「Nevermind」時代にコバーンがステージで割ったもので、その後直したが演奏不可能だったと述べている。このギターには、トリオのサインのほか、スクリーミング・ツリーズのシンガー、マーク・ラネガンへのカートからのメッセージもあり、「Hell-o mark!Love, Your Pal, Kurdt Kobain/ Washed up rockstar.」と書かれている。




黒いギターのネックプレートには、コバーンの想像上の幼なじみにちなんで "Boddah Lives" という刻印があり、 "Abort Christ" と刻印された黒いハードケースに入っていた。説明書によると、コバーンは1992年秋、ネヴァーマインドツアーの北米公演の際、この壊れたギターをラネガンに渡したという。その状態についてJulien'sは、「壊されては組み立て直され」、「壊れたネックの他に、ボディ後部の下部から欠けた木の塊など、使用や破壊の跡がたくさんある」と指摘しています。


オークションに出品された高額のニルヴァーナアイテムはストラトキャスターではありませんでした。ある入札者は、バンドが1991年4月17日にワシントン州シアトルのOKホテルで行ったライヴのセットリストにも大金を払い、同年11月にリリースされた、まもなくブレイクするヒット曲「Smells Like Teen Spirit」のライブデビューを飾ったこのライヴから、5万800ドルで落札した。


 



昨日のライブストリーム「Preparing Music For Concerts」では、Josh FreeseがFoo Fightersのドラムを担当したことが大きな話題となりましたが、このライブでは、Dave Grohlが11枚目のアルバム『But Here We Are』でドラムを担当したという、もうひとつ素晴らしいニュースも発表されました。


606スタジオで撮影された5月21日のライブは、ジョシュがドラムを叩く姿を世界中のファンが無料で見ることができる。



そして、最近のシングル「Rescued」と「Under You」のライブデビューを含むこのパフォーマンスで、FoosはBut Here We Areからの未発表曲、絶対的エース「Nothing At All」も演奏しました。


この曲が演奏された後、ジョシュはデイヴにこう言った。「レコードのビートを説明して、『片手で弾いたと思う』と言われたとき、僕も同じようなことをやっていたよ。気持ちいいし、かっこよく聞こえるんだ」


「意図的ではないんだ 」とデイヴは答えた。「自分の家でデモをしたとき、起きたばかりで疲れていたんだ。でも、自宅のクソみたいなドラムセットでやったら、なんとなく音が良くなったんだ。ハイハットとスネアを同時に叩かないから、スペースが広くなるんだ」

 

 


最新作『First Two Pages of Frankenstein』の発売から1カ月余りで、グループはすでにライブで新曲を披露しました。

 

5月18日、The Nationalはシカゴのオーディトリアムシアターで行われたツアーのオープニングで「Turn Off the House」という曲を披露しました。以下より視聴してみて下さい。

 

シカゴでバンドは『フランケンシュタイン』の11曲のうち7曲を披露しましたが、多くはアルバムのリリースに先立ち、昨年ロードテストが行われています。フランケンシュタインの1曲目の「ユーカリ」は、ニューヨーク州ポートチェスターでの公演で初めて演奏されました。


 bar italia 『Tracy Denim』

 

 

Label: Matador

Release: 2023/5/19

 



Review

 

 

bar italiaは、Nina Cristante、Jezmi Tarik Fehmi、Sam Fentonによるロンドンを拠点とするロックバンドである。

 

過去2年間、Dean BluntのレーベルWorld Musicから2枚のアルバム、1枚のEP、数枚のシングルを発表している。バンドは、今年、米国のMatadorと新たに契約を結び、そして、ビョーク、デペッシュ・モード、ブラック・ミディの作品のプロデューサーであるマルタ・サローニを迎えて制作を行なった。

 

まず、The QuieitusやCrack Magazineをはじめ、現地のイギリスの複数の音楽メディアは、bar italiaを”秘密主義”、”ミステリアスな”バンドであるとレビューを通して定義づけているようだ。イギリスの大きめのメディアでさえも、bar italiaのことについてよく知る人はそれほど多くない。現時点では、彼らのライブをその目で見届けた人々が、bar Italiaの正体について最もよく知っていると言えるだろう。バンドの正体を秘匿しておくこと、全ての背景を明かさぬことは、実際、ソーシャル全盛期で全貌が見えすぎる現代において、ロンドンのバンドの神秘性を保持しておくとともに、彼らの音源に触れた時の衝撃性を強める可能性がきわめて高い。

 

これまでのWorld Musicから発売された2作のフルアルバムを聴くかぎりでは、ローファイ、サイケ、オルタナティヴ、また少しだけエキゾチックなポップというように、異質なほどbar Italiaの音楽性には雑多な文化性が内包されている。荒削りでローファイなギターロックサウンドは少しザラザラとした質感があり、得体の知れないものにおそるおそる触れるような感覚も滲んでいる。

 

先行シングルとして公開された3曲「Nurse!」「punkt」「changer」を聴くかぎりでは、前2作のアルバムに比べると、エッジの効いたポスト・パンクサウンドとドリーム・ポップに近いサウンドが際立っていた。また、「punkt」だけに言及すれば、The Strokesを彷彿とさせるニューヨークのガレージロックの性格も反映されている。

 

このアルバムの魅力はそれだけにはとどまらない。Sonic Youthのサーストン・ムーアの前衛的なギターサウンド、メンバーが立ち代わりにメインボーカルを取るスタイル、The Smithsのような哀愁や孤独に充ちたサウンド、そういった感覚的なオルタナティヴ・ロックが掛け合わさり、時代のトレンドとは没交渉の唯一無二のロックサウンドが生み出されることになったのだ。

 

 

 

前2作に比べると、マルタ・サローニが手掛けるサウンドは艶やかさとダイナミクス性を増している。基本的なバンドサウンドは、エッジが効いているが、よく聴きこむと、優しげなメロディーがその背後に揺蕩っていることが分かる。三者のメインボーカルもその性質を異にしており、ポスト・パンクバンドのような尖ったボーカル、聞き手を酔わせるボーカル、”コントロールを失いたい”という欲求をもとにし、感覚的なボーカルが綿密に組み合わされている。ロンドンの現代社会に生きる無類の音楽好きが集い、人知れずセッションを重ねた結果、同じ思いをともにする三者の内的で力強いオルタナティヴサウンドが全体には貫流している。

 

bar Italiaの音楽は単なるプロダクトとして生み出されたわけではあるまい。ライブセッションにおける心地良さをどのような形で伝えようか模索しているという印象がある。そして、ここに彼らなりの流儀があって、音楽の本質が明るみに出る寸前のギリギリのところで、そのサウンドは留められている。別に言い方をすれば、音の核心に到達しようとすると、中心から離れ、抽象性の高いサウンドを維持し、再度その核心へと向かっていく。彼らの音楽はその運動の連続なのである。

 

三つの先行シングルの他にも傾聴に値する楽曲は複数存在する。その中には、ロンドンの新旧のポストロックサウンドに対する傾倒が垣間見える曲もある。例えば、「F.O.B.」、「NOCD」といった主要なトラックを通じて、エッジの効いたギターサウンドと陶酔感のあるドリーム・ポップサウンドの融合を見出せるだろうし、他にも「Horsy Girl Rider」では、イギリスの伝説的なポストロックバンド、Empireの『Expensive Sound』(1981)に比する実験的なサウンドの幻影が把捉できる。さらに叙情性を重んずるオルタナティヴ・ロックバンドとしての姿を「Clark」に見出せるはずだ。

 

グルーヴィーなベースラインに加わるメロディアスなフェイザーのギター、シンプルな8ビートのドラミングの兼ね合いは、このバンドのサウンドの代名詞ともいえ、そして、それは今作において以前の旧作よりタイトに引き締まったという印象を受ける。彼らは一貫して、一地点にとどまらず、流動的なドライブ感のあるサウンドを志向している。それらは聞き手に一定の音楽性を措定させることを敢えて避けるかのようでもあるる。そして、極めつけは、90年代のグランジサウンドに触発された「Friends」であり、Nirvanaの「In Utero」時代のポップセンスを継承した上で、一体感のあるサウンドを生み出している。多分、グランジの要素は以前のアルバムにはなかったものと思われる。


今後、これらのバンドサウンドがどのような形で集大成を迎えるか期待していきたい。また、bar Italiaはアルバムの発売を記念するヨーロッパツアーを予定している。ローファイでエッジの効いたサウンドは、さらに多くの音楽ファンの心を捉えるに違いない。



84/100

 

 

©︎Titouan Massé

 

イギリスのポストパンクバンド、OSEESは、In the Redから8月18日にリリースされる予定の新作『Intercepted Message』を発表しました。バンドの『Live At Levitation』(2012年)のリリースに合わせた本日の発表には、アルバムのタイトル・トラックが収録されています。以下、そのビデオをチェックしてみてください。


John Dwyerはニューアルバムについてウィリアム・バロウズ風の声明を発表している。



疲れた時代のためのポップ・レコード……

君のストラップにもっとヒビを入れんがため、飛散防止ガラスの欠片で砂糖漬けにしてある。ついに、ヴァース/コーラス……

風化したシソーラスの数々……

これはOseesのブックエンド・サウンド……

初期グレードのガレージ・ポップとプロト・シンセ・パンクの自殺を防ぐような出会い……

 


芝生を叩くか?  それとも尻餅をつきながら聴くか?

安物のブロードバンドをガムシャラにする、電子的な渦巻き状の加速剤の数々……

ソーシャル・メディアの便所掃除をする人たちよ、団結しよう……

この笑顔の屠殺場のドアマンを見、24時間のニュースサイクルの目を細めることを許可しよう……

ついに自分の居場所を見つけることができるはずさ…… 



すべての人を歓迎しよう……

冒頭からフィナーレにいたるまで......

 80年代シンセサイザーのラストダンスが君の失われた恋のため、遠くでパチパチと音を立てて伝わるだろう……

政治的な記憶喪失に苦しんでいるって? AIが生成したポップな曲には飽きたって?

なら、この曲はあなたのためにある、我々の友人たち……



不毛地帯の放浪者、ここにいてくれ……

愛している……

帝王学的シンセパンクとThee Oh Sees(彼らは誰だ?)



「Intercepted Message」





Osses 『Intercepted Message』


Label: In The Red
Release: 2023/8/18


Tracklist:

1. Stunner
2. Blank Chems
3. Intercepted Message
4. Die Laughing
5. Unusual & Cruel
6. The Fish Needs a Bike
7. Goon
8. Chaos Heart
9. Submerged Building
10. Sleazoid Psycho
11. Always at Night
12. Ladwp Hold


 

BeyoncéがKendrick Lamarを起用し、彼女の最新作である『ルネッサンス』からカットされた「America Has a Problem」の新しいリミックスを制作しました。「私は名誉Beyhiveだ、その理由を見てみよう」とLamarはこのトラックでラップしている。この曲をご視聴は以下からどうぞ。


ラマーは以前、ビヨンセの2016年のアルバム『レモネード』からの「フリーダム」や、『ライオンキング』の「ナイル」にも参加し、さらには『ザ・ギフト』にも参加しています。ビヨンセは現在、『ルネッサンス』を引っ提げた大規模なワールドツアーを開催しています。

 





インディーポップのレジェンド、ザ・スミスのベーシストだったアンディ・ルークが56歳で亡くなったことが明らかになった。このニュースは、ジョニー・マーがソーシャルメディア上の声明で発表したもので、バンドメイトの死は "膵臓がんによる長期の病気 "の後に訪れたという。


ルークは、1982年にシンガーのモリッシーを中心にマンチェスターでバンドが結成されてから数ヶ月後にスミスに加入した。ジョニー・マーの旧友であるルークは、スミスの初ライブに出演したデール・ヒバートの後任として参加した。   


「私たちは親友で、どこへ行くにも一緒だった」と、ジョニー・マーは追悼文に書いている。「15歳の時、私は彼と彼の3人の兄弟と一緒に彼の家に引っ越しました。私はすぐに、私の仲間が、絶対に誰にも嫌われない珍しい人の一人であることを理解することになりました。アンディと私は音楽の勉強に明け暮れ、楽しみながら、最高のミュージシャンになるために努力しました」


1983年にラフ・トレード・レコードと契約したスミスは、セルフタイトルのデビューアルバムをリリースし、その後、1985年の『Meat Is Murder』、1986年の『The Queen Is Dead』、1987年の『Strangeways, Here We Come』と快進撃は続いた。アンディ・ルークの複雑で勢いのあるメロディックなベースラインは、「Barbarism Begins at Home」、「This Charming Man」、「There is a Light That Never Goes Out」、「Bigmouth Strikes Again」、「Heaven Knows I'm Miserable Now」といった曲で聞くことができる。1987年、スミスは解散した。


その後、ルークはシネイド・オコナー、プリテンダーズ、イアン・ブラウン、バドリー・ドローン・ボーイと共演し、レコーディングを行った。また、同じマンキュー出身のベーシスト、ニュー・オーダーのピーター・フックとストーン・ローゼズのマニとスーパーグループ、フリーバスを結成した。また、クランベリーズのヴォーカリスト、ドロレス・オリオーダン、DJオレ・コレツキーとトリオ「D.A.R.K.」を結成し、2016年にデビューアルバム『サイエンス・アグリーズ』をリリースしています。


「私たちは、どこにいても、何が起こっていても、長年にわたって友情を保ち、アンディが最後にステージで演奏したのが、2022年9月にマディソン・スクエア・ガーデンで私や私のバンドと一緒だったことは、悲しみとともに、個人的に誇らしいことです」とマーの賛辞は続いている。「私の家族、そして彼の妻でソウルメイトのフランチェスカと共有した特別な瞬間であった。アンディは、彼を知る全ての人から優しく美しい魂として、音楽を愛する人々からは最高の才能を持ったミュージシャンとして、常に記憶されることでしょう」


さらに、ルークの幼なじみでスミスの元バンドメイトであるジョニー・マーはTwitterで訃報を確認し、Instagramでの長文の追悼文の中で、彼は「彼を知るすべての人に優しく美しい魂として、音楽を愛する人々に最高の才能を持ったミュージシャンとして、記憶されるだろう」と記しています。"今、モリッシーは自身のウェブサイト上の声明で元バンドマンを讃え、「彼の音楽が聴かれる限り、彼は決して死なないだろう。彼は自分の力を知ることはなかったし、彼が演奏したものは何一つ他の誰かが演奏したことがない。"以下、彼の声明の全文をお読みください。


時に、最も過激なことの1つは、はっきりと話すことです。誰かが死ぬと、まるでその死を利用するかのような......陳腐な表現が出てくる。私は、アンディに対してこのようなことをする用意はない。ただ、アンディがどこに行ったとしても......彼が無事であることを願うだけだ。彼の音楽が聴かれる限り、彼は決して死ぬことはないだろう。彼は自分の力を知らなかったし、彼が演奏したものは、他の誰かが演奏したことのあるものではなかった。彼の区別はとても凄まじく、型破りで、それが可能であることを証明した。彼はまた、とても面白く、とても幸せな人でした。スミスの後、彼は安定したアイデンティティを保ち続けました。結局のところ、私たちは自分が評価されたことを実感したいと思うものなのでしょう。アンディはその心配をする必要はないんだ。


Weekly Music Feature

 

Hannah Jadagu

©︎Sterling Smith


高校を卒業してまもなく、Hannah Jadaguは、ベッドルームポップの新星としてみなされるようになり、2021年にデビューEP『What Is Going On』をリリースした。これは、当時、彼女にとって最も身近な制作方法であったiPhone 7で録音した正真正銘のベッドルームポップの楽曲集だった。作曲から完パケまでアーティスト自身が行つったこのEP作品は、音楽制作に対する親しげなアプローチと、忘れられないフックを書く本能的な能力が特徴であり、それはまたシンガーソングライター、Hannah Jadaguの主題の激しさを裏付けるものだった。

 

当時、Hannah Jadaguは、音楽の機材を買う余裕がなかったため、「低予算で作曲を行う必要があった」と回想している。しかし、限られた機材で音楽制作を行うことは、彼女のクリエイティビティを高める結果となった。学生として勉強に励む傍ら、プライベートの時間の中で録音された「What Is Going On?」 は、ジャダグの駆け出しのソングライターとしての初々しさが感じられる作品ではあったが、一方で、Hannah Jadaguの人間としての思いやりのある視点を通して、勇敢にも米国の最も緊急性のある闘争に立ち向かってみせたのだ。

 

「私の曲は、超親密でありながら、聞き手に対して普遍的な親近感を抱かせるものにしたいのです」とJadaguは述べている。「デビューEPでは、多くの人が個人的なレベルで曲に共鳴していると言ってくれましたが、実はそれこそ私が常に望んでいることなのです」この言葉は、シンガーソングライターをよく知る際、また彼女の作品に触れる際に最も重要視すべき考えとなるに違いない。また、先日のニューヨーク・タイムズのインタビュー記事でも、キャッチーであることや親しみやすい曲を作ることを最重要視していると念を押している。


2021年のEP「What Is Going On」はハナー・ジャダグにとって、シアトルの名門レーベルSub Popとの契約を交わして最初のリリースとなったが、彼女は何年も前から楽曲を自主制作し、出来上がった曲をSound Cloudで音楽を発信し、着実にオンラインファンを獲得し、ファンのベースを広げていった。

 

Hannah Jadaguのミュージシャンとしてのルーツは、合唱隊に所属していた時代にある。しかし、かねてから、教会のゴスペルや聖歌のような音楽とは別の一般的な音楽の表現方法を探しもとめていた。その後、ギターの演奏を始めたというが、気楽なスタイルで行うことができるデバイスのデジタル・レコーディングの一般的な普及が、彼女をソングライティングへと駆り立てることになり、いうまでもなく、それはそのままプロのミュージシャンへの道のりへと直結していくことになる。学生時代に音楽制作を本格的に始めた契機について、Hannah Jadaguは次のように説明している。「中学校のバンドでパーカッションを担当するようになってから、だんだんと音楽の制作が軌道に乗っていきました。当初、曲作りは趣味で始めましたが、すぐにのめりこむようになって、自由な時間をすべてレコーディングに費やすようになりました」


今年の2月、Hannah Jadaguは、これまでで最も野心的な作品である『Aperture』をサブ・ポップからリリースすると発表した。テキサス州メスキートで高校を卒業したのち、ニューヨークで大学2年生になるまでの数年間に書かれた『Aperture』は、Hannah Jadaguの人生のひとつの節目を迎えたことを表すとともに、ミュージシャンとしての大きな転換期を迎えつつあることを物語っている。「私が育った場所では、みんなクリスチャンだったし、教会に行かなくても、何らかの形で修行をしていました」と、ジャダグは説明している。高校時代から教会との関係に疑問を抱いていたものの、アルバムの重要なテーマである「家族」については、教会でのドグマと一般的な社会での二つの観念を折り合いをつけるような意味合いが込められているようだ。


これは、よくあることだと思われるが、子供の頃から、Hannah Jadagu(ハナー・ジャダグ)は憧れであった姉の姿を追っていた。ソングライター自身が自らの人生の「設計図」と呼びならわす大きなインスピレーションの源である姉の背中を追い、地元の児童合唱団に参加し、さらに合唱の訓練を受けるようになったのである。「私はそれが嫌いだった。でも、ハーモニーの作り方、自分の音色の見つけ方、メロディーの作り方などを教えてくれたのは事実だった」

 

シングル「Admit It」はほかでもない、彼女が姉に捧げたトラックである。無限の愛と非の打ち所のないセンスは、Jadaguにとって子供の頃から依然として変わらない。かつて、Jadaguは姉の車で、後々、彼女の作品にインスピレーションを与える素敵なインディーズ・アーティストを発見するに至った。Snail Mailや Clairoの影響はこの曲にとどまらず、アルバム全体に反映されている。


「Lose」は、Jadaguが新しい人間関係を始めるときのスリルと、その根底にある得体の知れない恐怖について歌っている。シンプルで飾り気のないギターリフと素朴なピアノのコードを織り交ぜ、現代のインディーシンガーへの愛と憧れを表現している。彼女の言葉を借りれば、この曲は「クラシックなポップソング」であるという。「私たちがしてこなかったこと/私の心の中で再生される/あなたは私に時間を与えてくれる?」と歌い、終わりに近づくにつれて、スキッターのようなドラムビートが、曲を瞑想的な憧れの地点から引き剥がし、反抗の境地へと導いていく。


「このアルバムのトラックは、”Admit It"を除いて、すべて最初にギターで書かれたもので、インストゥルメンタルの雰囲気があります」とJadaguは述べている。「しかし、全体を通して使うシンセのブランケットは、私が感性の間を行き来するのを助けてくれた。ロックのハナシもあれば、ヒップホップのハナシもある、みたいな。とにかくどの曲もあまり似たような音にはしたくなかった」と、アルバムの制作の秘話を解き明かすHannah Jadaguであるが、この理念を象徴するのが「Warning Sign」となるだろう。イントロはアコースティックでR&Bのスローバーナーとして始まるが、途中から硬派なエレキギターが入り、曲はサイケデリックに似た曲調に変化を辿る。

 

結果的に、デビューアルバムの制作のために適切な費用を与えられたこと、プロデューサーがついたこと、アメリカを離れて海外でのレコーディングが行われたことは、制作の重圧を与えたというより、彼女のクリエイティビティを刺激し、感性を自由に解放するという良い側面があった。さらにハナー・ジャダグは、ソングライターとしての道を歩む上で、よりよい音楽を作りあげたいという願望も胸の内に秘めていた。「携帯電話でもう1枚アルバムを作れることはわかっていたのですが」とHannah Jadaguは言った。「特にこのデビュー作のため、確実にレベルアップしたかったんです」

 

アルバムの制作をさらに高いレベルに引き上げるため、フランスのソングライター兼プロデューサーであるマックス・ロベール・ベイビーが抜擢された。二人は、当初、メールでステムを送り合いながら、リモートで仕事を進めていき、最終的には、パリ郊外のグレイシー・スタジオで初めて出会った。当初、オンライン上のMIDIのデータの細かなやりとりで制作が開始されたが、パリでの対面の制作が進んでいくうち、両者は意気投合することになった。作品の全体には、ソングライターとエンジニアの双方の才覚が稲妻さながらにきらめいている。そして実際の音源を聴くと分かる通り、二人三脚といった形で、デビューアルバムは珠玉の完成品へと導かれたのだった。

 


『Aperture』 SUB POP


 

 

ガレージバンドで音楽制作を始め、iphone 7で完パケをするというハナー・ジャダグらしいインディペンデントのソングライティングのスタイルは、このデビュー作でもしたたかに受け継がれている。端的に言えば、Guitar Rigのように、一般的なエフェクターでも容易に作り出せるシンプルで親しみやすいギターサウンドーー、アーロ・パークスにも比する甘くキャッチーな音楽性ーー、ポップスとR&Bとロックを変幻自在に行き来する柔らかいボーカルラインーー、それからヒップホップのブレイクビーツの要素を織り交ぜた先鋭的なリズムやビートーーという四つの要素が分かちがたく結びつき、アルバム全体の音楽の構成を強固に支えているのだ。

 

まず、このデビューアルバムは、じっくりと音楽を聴きたいリスナー、そして多くの時間を割けないため、Tik Tokで音楽を素早く聴くというリスナー、その双方の需要に応える画期的な作品となっている。自宅のオーディオスピーカーで時間をかけて聴いても良いし、友達とTik Tokふうに短い時間で楽しむのも良いし、夜のドライブで流しても楽しめる、いわば条件や環境、時と場所に左右されない時代を超越したポピュラーミュージックである。また、イギリスのエド・シーランが普及させたベッドルームポップの形、曲を一人で書いて、レコーディングし、それを万人に楽しめる洗練された製品としてパッケージするという制作方法は、現代の音楽産業を俯瞰した際、度外視することが難しいスタイルをふまえている。また90年代や00年代の音楽制作とは異なり、現代的な音楽産業の需要に対する供給という概念がこのアルバムには通底している。そのことが、特にこの作品を語る上で欠かせないポイントとなるかもしれない。

 

現代的なポピュラー音楽という概念は、必ずしも、使い捨ての消費のための音楽を示すとは限らない。万人が楽しむことができると共に、長い年月に耐え、後の時代になっても音楽としての価値を失わない作品を作り出すことは、(一見、不可能のようで)不可能ではないと、Hannah Jadaguはこのデビューアルバムを通じて示唆している。


アルバムの始まりを飾るにふさわしい「Explanation」は、Clairoの書くような柔らかさと内省的な雰囲気に充ち、Hannah jadaguの音楽的なバックグランドが力強く内包されている。インディーポップの要素を絡めたグルーブ感満載のバックビートには、児童合唱団での音楽体験が刻まれ、それは曲の中でふいにゴスペルという形で現れる。繊細ではあるものの、ダイナミックス性を失わないHannah Jadaguのソングライティングの魅力が遺憾なく発揮されている。


二曲目の「Say It Now」は、内省的な雰囲気を受け継ぎ、ベッドルームポップの影響を散りばめ、美麗なオルタナティブポップを作り出している。イントロからサビにかけてのリードシンセを織り交ぜた壮大なスペーシーな展開は、新しいポップスのジャンルの台頭を予感させ、未来の音楽への期待をもたせるとともに、Hannah Jadaguの才気煥発な創造性を見出すことが出来るはずだ。

 

 

 

さらに驚くべきは、(空耳ではないことを願いたい)ソングライターが日本語歌詞を歌う3曲目の「Six Months」である。この曲は、アルバムの中で最もガーリーなポップとして楽しむことができる。オートチューンをかけたボーカルを通じて繰り広げられるスロウテンポのまったりしたインディーポップソングは、サビの終わりを通じて「Ikiteiru、Shake Your Time」と軽快に歌われている。ここには、”Alive”を意味する”生きている”という言葉により喜びがシンプルに表現され、部分的に日本語の持つ語感の面白さを織り交ぜ、それをダイナミックなポップソングへと仕上げている。特に、ストリングス風のシンセのアレンジとクランチなギターの融合は本当に素晴らしく、プロデューサーのマックス・ロベール・ベイビーの手腕が光る一曲となっている。

 

その後もファズギターを主役としたダイナミックなロックソングが続いている。4曲目の「What You Did」は、Soccer Mommy、Snail Mailといったインディーアーティストの影響を感じさせると共に、ダイナミックなギターフレーズはサブ・ポップの90年代のグランジの雰囲気に満ちているが、シンガーソングライターはそれを親しみやすいベッドルームポップに昇華している。


5曲目の「Lose」においても、Snail MailやIndigo De Souzaと同じように、現代の若者の心境を上手く捉えつつ、親しみやすいインディーポップソングとして昇華している。ここには駆け出しの頃、(ひとつずつサンプル音源のトラックを重ねていく)ガレージバンドでの音楽制作を行っていたアーティストらしい矜持が表れている。イントロのインディーロック風の曲調から、サビにかけてのクランチなディスコポップへのダイナミックな移行は、聞き手に強いグルーブ感を授けてくれるだろうと思われる。

 

Hannah Jadaguは、アルバムの制作を通じて、「音楽の国境を越えて、ジャンルレスであることを示したかった」と語っているが、そのことがよく理解出来るのが6曲目の「Admit」となるかもしれない。ここにはインディーロック/ポップを始めとするサブカルチャーから踵を返し、メインカルチャーへの親和性を示し、アーティストのモダン・ポップへの愛着と敬意が表されている。Arlo Parksのソングライティングの方向性に近いこの曲では、シンプルなビートを織り交ぜながら、最終的にはポップバンガーにも似た多幸感溢れる雰囲気のあるサビへと直結していく。現代的なフレーズの語感を多分に含ませつつ、そこに少し甘く可愛らしい雰囲気を加味しているが、アルバムの中では、アーティストの最も夢見るような思いが込められた一曲となっている。

 

7曲目の「Dreaming」では、一転してそれ以前のクランチなギターが印象的なインディーロックアーティストとしての姿に舞い戻っている。この曲は、ポップシーンの最前線をいくノルウェーのGirl In Redの音楽とも無関係ではない。アルバムの冒頭と同様にベッドルーム・ポップの性質が際立っているが、その根底にあるのは90年代の米国のオルトロックへの憧れだ。J Mascisのトレモロギターの影響を織り交ぜて、乾いた感じのギターロックと柔らかいボーカルが強い印象を放っている。さらに、メロからサビに掛けての奇妙な弾けるような感覚もまた心地よさをもたらすだろうと思われる。


Hannah Jadaguは、その後もジャンルレスの形で縦横無尽に音楽性の広範さを示している。「Shut Down」では、かつての人間関係に別れを告げるような曲で、それを親しみやすい現代的なインディーフォークというスタイルで象ってみせている。曲の途中に導入されるスペーシーなシンセは、シンプルなギターラインと絡み合い、複雑な感情を絡め取っているが、この内省的なロックソングを通じてアーティストの悩ましげな感覚を読み取くことができる。飽くまで個人的な感情が示されているだけなのに、それと同時に多くの若者の心に共鳴するものが少なからず込められていると思われる。しかし、これは上辺の心ではなくて、製作者の本心からの思いを歌詞や歌の中に純粋に込めているからこそ、多くの人の心を捉える可能性を秘めているのである。

 

アルバムは、その後も緊張感をゆるめず、一貫したテンションが続いている。これは制作過程の製作者とプロデューサーの両者の集中力がある種のセレンディピティとして反映された結果である。アルバムの先行シングルとして公開された「Warning Sign」では、シンガーソングライターのR&Bやファンクの影響が最も良く表れている。ここでは、先週のマディソン・マクファーリンのように、現代的に洗練されたメロウなソウルと、ベッドルームポップの融合を見出すことができるはずだ。若い時代のゴスペルや合唱をはじめとする、これまで歌手が疎んじてきた経緯のある古典的な音楽に、ジャダグはあらためてリスペクトを示し、それを一般的に親しみやすく、センチメンタルなポップソングへと再構成し、ジャズ寄りのソウルにブレイクビーツの要素を絡めることにより、英国のソングライターCavetownに比する先鋭的な作風を確立している。さらに、この曲は、アルバムの中で最もソングライターとプロデューサーの良好な協調性が美しく表れ出た瞬間のように思える。後続曲も同様であり、楽曲のスタイルが変わろうとも、両者の連携は非常に緊密で力強さがあり、トラックの洗練度にそれほど大きな変化はないのである。

 

最後に、このアルバムはフランスのパリで録音されたわけだが、はたして、いわゆるヨーロッパ社会のエスプリのような気風はどこかに揺曳しているのか? そのことについてはイエスともノーとも言いがたいものがあるが、実際にパリで録音された余韻も含まれていることが最後になると少し分かるようになる。クローズ・トラックとして収録されている「You Thoughts Are Ur Biggest Obstacle」 では、シンプルなバラードにも近い哀愁ある雰囲気を通してアーティストらしいエスプリを精一杯表現している。


ここには、パリの街を離れる時が近づくにつれ、その国が妙に恋しくなる、そんな淡い感性が表されている。つまり、Hannah Jadaguという歌手がヨーロッパに滞在した思い出をしっかりと噛み締め、その土地の追憶に対してやさしげに微笑むかのように、アルバムのエンディングを美麗に演出している。曲の最後に、オートチューンをかけたボーカル、シンセとピアノのフレーズの掛け合いが遠ざかっていくとき、不思議とあたたかな感覚に満たされ、爽やかな風が目の前を吹きぬけていくように感じられる。このエンディング曲に底流する回顧的なセンチメンタリズムこそ、シンガーソングライターの才能が最大限に発揮された瞬間となる。そもそも追憶という不確かなものの正体は何なのだろう、それはフランスの作家マルセル・プルーストが言うように、"人生の中で最も大切にすべき宝物"の一つなのだ。本作は、そのことをはっきりと認識できる素敵なアルバムとなっている。

 


 94/100

 


Weekend Featured Track 「Six Months」


 

 

『Aperture』はSub Popから発売中です。

 

 

Label: Wedge

Release: 2023/5./19


 

Review

 


アジアや他のヨーロッパやアメリカといった文化国に住んでいる人には分かりづらいかもしれないが、音楽を演奏することや音楽を聴くということは、ある地域に住む人々にとっては当たり前でもなければ、自然なことでもない。そして、体制側の意向により、ロックを演奏することすらままならない地域もあるという事実を、西アフリカのトゥアレグ族の6人組のロックバンド、Tinariwenは示唆している。そもそもこの地域は、他にもMatadorと契約するMdou Moctorがいて、世界的なロック・バンドを同じ部族から輩出している。西アフリカのサハラ砂漠の地域で生活し、固有言語のタマシェク語を話すトゥアレグ族にとって、おそらくロックミュージックというのは、他の地域に住む人達とは別の意味を持ち、そして生活に欠かさざるものなのである。


かれらの故郷であるサハラ砂漠には、現在も過激派グループのアンサール・ダインが活動している。そこには、音楽そのものを違法化しようと画策する人達もいる。もし過激派により、その地域全体が掌握されれば、音楽は完全に違法になる。違反者には間違いなく死が訪れる。彼らにとって音楽を演奏することは当たり前ではない。そのことにより、サハラ砂漠でのレコーディングが難しくなり、バンドはアルジェリアのテントでアルバムの録音を行うことになった。


以上のことを念頭に置いた時、Tinawarinの通算9作目のアルバム『Amatssou』の持つ意味は全然異なるものに変わるのではないだろうか。それは単なる商品化されたプロダクト以上のカルチャーの伝承という意味を帯びるようになる。U2の作品でお馴染みのダニエル・ラノワがプロデューサーを務めたアルバムは、複数の異なる場所でリモートを通じて完成へと導かれている。アルジェリアのテントにいるTinariwen、ナッシュビルにいるファッツ・カプリン、パリにいるパーカッション奏者のアマル・シャウイ、そして、LAにいるプロデューサーのダニエル・ラノワ。彼らの協力によって、Tinariwenはアルジェリアと世界を結びつける音楽を生み出すことになった。

 

本作では、Tinariwenの主な音楽の一般的な呼称である”サハラ・ブルース”をもとにして、フォークミュージックや民族音楽を基調にしたアクの強いロックミュージックが展開される。 西洋音楽の価値観をもとにして聴くと、かなり異質なものであり、まったく別空間にある音楽のように聞こえる。

 

オープニング曲「Kek Alghalm」を始めとする音楽は、西アフリカの伝統的な儀式音楽のグリオの形式が取り入れられている。これはメインボーカルを取り巻くようにして、他の複数のボーカリストが合いの手を入れるようにコーラスに加わる音楽形式だ。ジャマイカのカリプソ/レゲエ、米国のゴスペル/ブルースの元祖である西アフリカの古典音楽をTinariwenは継承している。その音楽はイスラム圏や小アジアとの音楽の関連性も少なからず見出せる。例えば、チュニジアの作曲家Anouar Braham(アヌアル・ブラヒム)のウードの演奏にも近い特殊な旋律やリズムが取り入れられている。


3曲目の「Arajghiyine」に見られるように、スティーヴ・チベッツの最初期の熱狂性を彷彿とさせるギターの内省的なエネルギーに充ちた迫力ある演奏は、一つの地点にまとわりつくかのように連続し、ギターの演奏に合わせて取り入れられる儀式的な手拍子のリズムによって、強いエネルギーをまとい、エネルギーをぐんぐん上昇させていく。基本的にはエレクトリックの演奏だが、瞑想的で、深い思慮に富んでいる。2000年ごろから、マリの都市部ではデジタルデバイスが普及しているというが、しかし、Tinariwenの音楽はデジタルカルチャーに根ざしたものとは言いがたい。まるで音によって何かのメッセージを伝えるような霊的な雰囲気すらはらんでいるのである。


アルバムの殆どの収録曲には民族音楽の影響もかなりわかりやすい形で反映されている。「Tidjit」では、ウードのような弦楽器を用い、イスラム圏の音楽を彷彿とさせる特異な旋律やリズムが取り入れられている。およそ西洋音楽に慣らされた感性には特異なものとしか解釈するしかなくなるが、それでも、砂漠地帯の砂煙や蜃気楼といった幻想的な情景が実際の演奏から立ち上ってくるような気もする。そして彼らの手にかかると、すこぶる陽気で聞き手が入り込みやすい音楽に昇華される。その他「Jayche Atarak」を始め、独特なリズムを取り入れた楽曲を通じて、彼らは西アフリカの文化や幻想性を披露しようとする。それらはダニエル・ラノワのプロデュースの意向により、レコードというよりもライブ録音に近いリアルな感覚を擁しているのである。


「Imidiwan Mahitinam」は、彼らの住む西アフリカと他の世界を結びつけるような良曲である。ここでは民族楽器のパーカッションを通じて、アンセミックなコーラス、その合間に演奏される絡みつくようなギターが取り入れられている。ここでは、70年代のサイケデリックロック/ハードロックの要素を取り入れた上で、それらを彼らの音楽の主な特徴である、手拍子のようなリズムを織り交ぜることにより、アンセミックな響きがもたらされている。これは、バンドの音楽に少し近づきにくさを感じるリスナーに彼らの音楽の魅力をわかりやすい形で伝えようとしている。続く「Ezlan」は、サハラ・ブルースを体現しており、最初期の米国南部のブルースの演奏に近い哀愁に充ちた音楽観が示されている。更に、ニューヨークのギター/フィドルの演奏家、Fats Kaplinの参加によって、そのセッションは白熱した雰囲気を帯びるようになる。

 

同じく、Fats Kaplinが参加した「Anemouhagh」は、祭儀的な気配に充ちた一曲となっている。ここでは陽気な瞬間と心浮き立つような雰囲気がレコーディングからありありと伝わってくる。その終盤では、バンジョー、マンドリンのような古典的な弦楽器と民族音楽のパーカッションが加わることによって、Tinawriwenのセッションは次第に鋭さと熱狂性を帯びていく。セッションに合間に取り入れられるリード・ギターは、曲の持つエネルギーを徐々に上昇させていく。その後、アルバムの終盤には、フォーク・ミュージックを基調にした瞑想的な楽曲が複数収録されている。

 

もうひとつ、『Amatssou』を締めくくる「Tinde」では、女性ボーカルが参加していることに注目したい。グリオの影響下にあると思われる(二拍子に近い)儀式的なリズムも魅力的ではあるが、アフリカの地域性や固有性を示すにとどまらず、本当の意味で世界を一つに結びつけるメッセージが、この曲に込められているように思える。また、アルバムのタイトル「恐怖の向こう側」には、それと対極にある平穏で調和的な境地が見いだせるような気がする。世界の異なる場所を通じ、人類が一つに団結することでしか和平は訪れることはない、つまり、分離が何処に存在するかぎり平和など机上の空論に過ぎないということを、彼らは真摯に伝えようとしているのである。



78/100

 

 

 

 


 

©︎Elizabeta Prodina


コナン・グレイが新曲「Never Ending Song」を公開しました。このシングルは、ポッププロデューサーの大御所、マックス・マーティンがプロデュースしました。


この新曲について、コナン・グレイはこう語っている。「この曲は、私たち誰もが経験したことのあるような、古くからある物語をテーマにしています。物語はただ延々と続く。それは意図的なものなのかもしれないし、内心では終わってほしくないと思っているのかもしれませんね。私はいつも、悲しい気持ちを明るい音楽の中に紛らわせるのが好きでした。そうやって人生を切り開いてきたんだ。自分のことを深刻に考えすぎるのは好きではないんだ」

 

「最近の自分を忠実に反映したようなものを作りたかったんだ」と彼は続けた。「感情を嘆くのではなく、感情を祝福しているような感じがしました。一緒に成長し、変化することができるのは美しいことです。ネバーエンディングソングは、物語の始まりなんだ」


「Never Ending Song」

©︎Nik Pate

Róisín Murphy(ロイシン・マーフィー)が新作アルバム『Hit Parade』を発表しました。ニューアルバムは9月8日にNinja Tuneからリリースされる。

 

13曲入りのこのアルバムは、DJ Kozeとのコラボレーションで制作され、先にリリースされたシングル「CooCool」も併録されています。本日、マーフィーは新曲「The Universe」を公開しました。ジャケットアートワークとトラックリストとともに、下記をチェックしてください。 

 

「宇宙は遊び心と恐怖に満ちている」とマーフィーは声明でコメントしている。「判別できるような意味はない。常に語られているストーリーは、複数のレベル、私たちが見たり理解したりできないレベルにある。生きているという経験は、私たちの周りで実際に何が起こっているのか、私たちがいかに全く知らないかということを絶えず思い知らされることです」

 

 「The Universe」


『Hit Parade』を紹介して、彼女は説明している。


このレコードは、DJ Kozeとのコラボレーションです。私たちは数年間、異なる国でトラックやアイデアを送り合いながら、リモートで仕事をしました。私は常にオープンな姿勢で新しいコラボレーションに臨み、学ぶ意欲を持つ必要がありますが、今回ほどそうであったことはありません。


今回のスタジオは、ハンブルグとロンドンの間の空域にある架空のものでした。つまり、曲作りの際には、私たち2人は個人的でプライベートな場所にいたのです。私にとっては、曲作りのアプローチがより親密になり、このアルバムで自分の秘密を打ち明けることができた。コゼにとっては、私の存在に気を取られることなく、完全な自由と絶対的な集中力を得ることができました。彼は自分自身の中に深く潜り込み、そのおかげで音楽が生き生きとしているのだと思います。色彩が爆発しているのです!


個人的な理由もありますが、仕事面でも非常に充実しています。私にとっては、このアルバムは愛と官能についてのものであり、また音楽そのものと、それがいかにいつも私のために存在してきたかについてのものでもあるのです。喜びだけでなく、闇や深淵の色合いもある。死生観は、私(そしておそらくリスナーであるあなた)に対して、できるうちに本当に生きることを思い出させるような意味を持っています。


2021年、マーフィーは2020年のアルバム『Róisín Machine』のリミックス版『Crooked Machine』をリリースしました。



Róisín Murphy『Hit Parade』


 

Label: Ninja Tune

Release: 2023/9/8


Tracklist:


1. What Not To Do

2. CooCool

3. The Universe

4. Hurtz So Bad

5. The House

6. Spacetime

7. Fader

8. Free Will

9. You Knew

10. Can’t Replicate

11. Crazy Ants Reprise

12. Two Ways

13. Eureka


3月に素晴らしいニュー・アルバム『Did You Know That There's a Tunnel Under Ocean Blvd』をリリースしたラナ・デル・レイが、未発表の 「Say Yes to Heaven」を公開しました。(Reviewを読む)


2012年に常連コラボレーターのリック・ノヴェルズと共作したこの曲は、2014年の『Ultraviolence』からカットされていたが、今年初めにTikTokで流行したスピードアップ・バージョンを含め、様々な形でオンライン上に登場している。以下でお聴きください。


ラナはニューアルバムをサポートするフル・ツアーを発表していないが、この夏から秋にかけて、ロラパルーザ、アウトサイドランズ、オールシングスゴーなどいくつかのフェスティバルに出演している。2023年のラインナップを1アーティストずつ公開している。ニューポートフォークフェスティバルは、今回、ラナが7月30日(日)に出演することを発表しました。


「Say Yes to Heaven」

 

Bad Bunny

Bad Bunnyが「Where She Goes」をリリースしました。この曲は、テキサスを拠点とするメキシコの地方バンドGrupo Fronteraとのコラボレーション「un x100to」に続く、2023年最初の正式のソロ・シングルです。



フランク・オーシャン、リル・ウージー・ヴァート、ドミニク・ファイクなど、有名人が出演しているミュージックビデオも公開されています。以下よりご覧ください。