Laufey ©Gemma Warren

 

Laufey(レイヴェイ)は、アイスランドと中国、両方のルーツを持ち、現在はLAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、さらにマルチ奏者でもあり、ポピュラー・ミュージック、ジャズ、オーケストラを結びつけ、清新な音楽性で世界中の多くのファンを魅了しつづけています。今年、レイヴェイは、自身初となるワールド・ツアーを敢行。瞬く間にチケットがソールドアウトとなり、さらに、先日6/5(月)に行われたブルーノート東京での初来日公演も2ステージとも5分で即完。日本での注目度も上昇している気鋭のシンガーソングライターです。


レイヴェイは、セカンドアルバム『Bewitched』のリリースを発表しました。本作は『Everything I Know About Love』に続く作品。デビューアルバム新作は9月8日に発売されます。さらに、本日、新作アルバムの2ndシングル「Promise」が公開されました。詳細は下記よりご覧下さい。

 

ファースト・シングル「From The Start」に続く「Promise」は、アデルの「Someone Like You」や、ザ・チックス「Not Ready to Make Nice」の共同制作を手がけ、グラミー賞にノミネートされた経験をもつ米国のソングライター、プロデューサー "Dan Wilson" とレイヴェイにより制作された。レイヴェイの深みのある歌声が最大限に生かされたナンバー。ロマンティックで大掛かりなサウンドと絶妙にマッチしたバラードは、涙を誘うような切ない情感に溢れている。


デビュー作『Everything I Know About Love』(2022年)では、ビルボードのオルタナティブ・ニューアーティスト・アルバム・チャート1位、ヒットシングル「Valentine」もSpotifyジャズチャート1位、さらに、Spotifyで最もストリーミングされたジャズ・アーティストとなり、全プラットフォームで4億2500万回再生を記録した。ポテンシャルを存分に発揮し、一気に世界中のリスナーの注目を集めたレイヴェイ。次作アルバムでも多数のファンを魅了しそうだ。

 

 

 

『Everything I Know About Love』は絶望的なロマンチストなアーティストの私生活の一面を表現していたが、続くセカンドアルバム『Bewitched』は、デビューアルバムの延長線上にテーマが置かれつつも、より深い側面が表されている。恋に恋している瞬間を捉えたことには変わりないものの、ミュージシャンがより成熟した人間としての展望を持つようになったことを表している。

 

「友人や恋人、人生に対する愛であれ、これは愛のアルバムです」とレイヴェイは語った。


ファースト・アルバムは、幼い頃に住んでいた家を出て、新しい街に引っ越し、初めて大人になったというようなことを歌ってました。けれど、今回のアルバムではそのようなことを少しずつ経験した上で、若さゆえの愛の魔法について書いているんです。

 

デビュー作の発表から大きな間隔を経ずにリリースされる2ndアルバム『Bewitched』は、新曲「Promise」をはじめ、発表後、1時間で100万回の再生数を記録した「From The Start」など珠玉の14曲が収録される。

 

クラシックやスタンダードジャズからインスピレーションを得て、オリジナルの音楽スタイルにますます磨きをかけるレイヴェイ。二作目のアルバムには、ソングライターとしての深化の瞬間が現れるはずだ。アイスランドから世界に羽ばたこうとするレイヴェイから今後も目が離すことが出来ない。

 

 

Laufey 「Promise」 New Single



 

Label: Asteri Entertainment

Release: 2023/6/14

 

Tracklist:

 

1. Promise


楽曲のストリーミング:

 

https://asteri.lnk.to/promise 


リパプールのロックバンド、STONEは、ニューシングル「I Gotta Feeling」を公開しました。ボーカルのフィンは次のように説明する。

 

「I Gotta Feeling」は、僕とAlexがGrand Nationalの夜に出かけたときのことを書いたもので、バーがいかに敵対的な環境であったかを表現しています。私はメモアプリを開きながら街を歩き、その最中に歌詞を書きました。


この曲は、私が以前、このような人たちの持つエゴに共感していたこと、そして、そのような有害なメンタリティから抜け出したことで、いかに解放されたかを描いています。この曲は自己洞察力を示すのに役立ち、多くの人が共感してくれるような気がします。

 

「I Gotta Feeling」

 


2010年にソングライターのMark Linkous(マーク・リンカス)が自殺して以来、初のフルレングスの新曲集となるSparkle Horse(スパークル・ホース)の遺作アルバムのリリースが発表されました。

 

『Bird Machine』は、9月8日にAnti-(アンタイ・レコード)からリリースされます。14曲入りのこのプロジェクトには、リンカスの弟であるマットが昨年12月にリリースしたシングル「It Will Never Stop」が含まれています。本日、Matt Linkous(マット・リンカス)はアルバムの発表とともに、もう1曲「Evening Star Supercharger」を公開しました。以下でご覧ください。

 

マット・リンカスは過去数年間、亡き兄の遺産を監督し、彼の録音をアーカイブしてきました。Bird Machineに収録されている楽曲は、当初2009年に発売される予定だったSparklehorseの5枚目のアルバムに収録される予定でした。

 

Mark Linkous(マーク・リンカス)はこのアルバムを、シカゴでSteve Albini(スティーヴ・アルビニ)とレコーディングし、自身のStatic Kingスタジオで1968年製のFlickingerのミキシングコンソールを使用して録音しました。マーク・リンカスは生前、アルバムのほとんどを録音していた。彼は、タイトルとトラックリストを、後にマットが受け取った手書きのメモに書き留めた。

 

マーク・リンカスの死後、マットとマークの義理の妹であるメリッサは、『Bird Machine』を完成させるため、テープの箱を調べ始めた。メリッサはプレス資料の中で、「まるで曲が知らせてくれるかのようだった」と語っている。

 

「マークはこの曲を伝えてくれた。私たちは、それを伝えるためにベストを尽くしただけです。多くの曲はすでに完成に近づいていたが、他の曲はマットとメリッサと共同プロデュースしたプロデューサー、Alan Weatherhead、ミキサー、Joel Hamilton、過去にSparklehorseと仕事をしたエンジニアGreg Calbiによって微妙な追加を受けた」


「今までで一番難しい決断だった」と、マットはプロセスについて語っています。「他人のアートについて選択するのは、たとえ、その人のことをずっと知っていて、一緒に仕事をしていたとしても、たとえ、その人が兄弟や親友であったとしても、難しいことだよ。私たちは、これを違う方向に持っていきたくないと、長い間話し合った。私たちはそこにあるものを引き出したかったのです」

 

さらに、「兄がまとめていたこの美しいものの最後の一団は、僕にとってとても意味があるんだ。座ってヘッドホンをつけると、ずっと聴いてしまうんだ。It Will Never Stop』から『Evening Star Supercharger』、『Stay』に至るまで、すべてマークが吐き出したものなんだ」



Sparklehorse 『Bird Machine』

 


Label:Anti-

Release: 2023/9/8

 

Tracklist:

 

1 It Will Never Stop


2 Kind Ghosts


3 Evening Star Supercharger


4 O Child


5 Falling Down


6 I Fucked It Up


7 Hello Lord


8 Daddy’s Gone


9 Chaos of the Universe


10 Listening to the Higsons


11 Everybody’s Gone to Sleep


12 Scull of Lucia


13 Blue


14 Stay

 

©Derek Henderson

オーストラリアのシンガーソングライター、Julia Jacklin(ジュリア・ジャックリン)が、ニック・ケイヴ擁するBoys Next Doorが1979年に発表したRoland S. Howard(同じくオーストラリアのミュージシャン)の「Shivers」のカヴァーを公開しました。以下よりお聴きください。


「Shivers」は、この曲のオリジナル・バージョンを録音したオーストラリアのプロデューサー、Tony Cohenを称える新しいコンピレーションにJacklinが提供したニューシングルです。Birthday Party、Go-Betweens、Hunters & Collectors、Nick Caveのレコードも含まれています。RVG、Leah Senior、Grace Cummingsも、このコンピレーションに参加し、John Olsonが書いたCohenの人生についての書籍「Half Deaf, Completely Mad」に付属しています。


「たくさんカバーされていますが、私にとっては特別な曲です」とジャックリンは声明で述べています。

 

「この曲は、私が初めて弾けるようになった曲のひとつ。多くのシドニーのバーや会場、オープン・マイク・ナイトで、私がこの曲を歌うのを聞いたことがあります。ハワードが16歳の時に書いた曲であり、歌詞が10代の抑えきれないドラマチックな恋心をうまくとらえていて、ずっと気に入っているんです。肉体的に傷つきながらも、自分自身を笑い飛ばせるような曲なんだ。

 

「Shivers」


ジュリア・ジャックリンは昨年、最新アルバム『PRE PLEASURE』をPolyvinylからリリースしました。MTの週間のアルバムに選ばれた他、2022年度のベストリストにも選出されています。アルバムの最後に収録されている「End Of The Friendship」は名曲なのでぜひ聴いてみて下さい。

 

The Hives

スウェーデンのガレージロックバンド、The Hivesは本日、アルバム『The Death Of Randy Fitzsimmons』の2ndシングル『Countdown to Shutdown』を初公開しました。アルバムの発表時に、バンドは、「Bogus Operandi」というリードシングルを公開しています。ファーストシングルでは、ロックは成熟してはいけないというメッセージを残している彼らですが、2ndシングルの方も同様にロックに憧れる少年のような雰囲気に充ちています。曲自体はハイヴズらしいど直球のガレージパンクですが、タイトルにもメタファーが込められているという気もします。

 

2ndシングルのリリースに伴い、SNASK(Viagra Boys: ロンドンのポストパンクバンド)が監督したミュージック・ビデオが公開されました。この映像は、会社の重役がオフィスのガラス窓から外を眺めて、シガーをふかしているところからストーリーは始まる。続いて、彼がこの曲を演奏しているバンドが乱入し、ショーを乗っ取り、無茶苦茶にコントロールするという内容です。途中からオフィスはカオス状態に突入する。ラストの紙テープが吹き荒れる瞬間は必見。

 

ニューアルバム『The Death Of Randy Fitzsimmons』は、8月11日にFUGAから発売されます。 


『Countdown to Shutdown』



ニューアルバム『In Times New Roman』のリリースを数日後に控え、Queens of the Stone AgeのJosh Homme(ジョシュ・ホーミ)は、2022年に癌と診断され、それを取り除く手術を受けたことを明らかにした。彼は、Revolverとの最近のインタビューで診断結果を話したものの、手術が成功したことと、まだ治療中であること以外、多くの詳細を明らかにしていない。彼は今年、Queens Of The Stone Ageと2回共演している。


「"これ以上悪くなることはない "とは決して言わないよ。決してそんなことは言わないし、それを勧めることもない。でも、良くなる可能性はある」とHommeは語った。「がんは、興味深い時期の上に乗ったチェリーに過ぎないんだよ。これを乗り越えて、このことを振り返ってみると、めちゃくちゃなことだったけれど、自分をより良くしてくれたんだと思える。それはそれでいい。やりたいことは山ほどある。そして、それを一緒にやりたい人がたくさんいる」


Hommeは続けた。「僕は間違いなく、深刻な感情病にかかっていたんだ。もうダメかもしれないと思ったこともあったよ。それを反芻するのはいいんだ。でも、そこにとどまって、自分をかわいそうだと思うのはよくないことだね。私の人生で最も暗い4年間だった。でも、それもいいんです。心の痛み、私の過ち、これらの死、そして私自身の身体的なこと......、たとえ、それらすべてが起こって、私の古い人生を粉々に打ち砕いたとしても、それらの破片は、これから出航する船を作り上げることができたのだから。私は、そのすべての破片から新しい人生へと浮かんでいくつもりです」


このインタビューは、ブロディ・ダールとの険悪な離婚で話題になっていた近年のHommeの声を聞くことができる数少ない機会だった。さらにHommeは、Revolverに対して、「この3年間、床に鎖でつながれているような気分だった」と必ずしもレコードを作りたいとは思っていなかったが、セラピーとして最適だと思ったと語っている。


 ニューアルバム『In Times New Roman』は今週の金曜日、6月16日にマタドールから発売されます。これまで、シングル「Emotion Sickness」と「Carnavoyeur」によって、このレコードはプレビューされてきた。


『In Times New Roman...』は、QOTSAにとって2017年の『Villains』以来となる作品です。カリフォルニアのバーバンクにあるピンク・ダック・スタジオと、海岸沿いのマリブにあるリック・ルービンのシャングリ・ラ・スタジオでレコーディングされた。バンドは自分たちで制作を担当し、ミックスにはマーク・ランキンが戻ってきた。

 

©Pooneh Ghana


Angelo De Augustine(アンジェロ・デ・アウグスティン)は、Asthmatic Kitty Recordsから6月30日に発売されるアルバム『Toil and Trouble』からタイトル曲をリリースしました。この曲はClara Murrayが制作した自主制作のクレイメーションビデオも同時に公開。下記よりご覧ください。


「Toil and Trouble」について、De Augustineは声明の中で次のように述べています。「ご存知のように、私たちは別の世界の中で生きています。心が指揮を執るチーフ・アーキテクトである特定のキュレーションとデザインの場所です。私はよく、心は誰のために働いているのだろう? カーテンの後ろで糸を引き、メッセージを発信しているのは誰なのか?」


クララ・マレーは、このビデオについてこう付け加えています。「Toil and Troubleの舞台は、魔法で照らされた埃っぽい部屋で、ひっそりと、しかし魔法で溢れている。飛び出す絵本と歌う大鍋は、邪悪でありながら神聖な魔法にかけられた神秘的な生き物を生み出す」 とコメントしています。


「Toil And Trouble」

Squid   『O Monolith』



Label: Warp Records

Release: 2023/6/9



Review

 

ロンドンを拠点に活動するポストパンクバンド、Squidは2021年のデビュー作『Bright  Green Field』で大きな成功を収めた。

 

その結果は、全英アルバムチャートの4位という商業的な形で訪れた。バンドはその後、かつかつのスケジュールを組むわけではなく、二作目のフルレングスのレコーディングにじっくりと取り組んだという印象を受ける。このアルバムは、一作目よりも円熟味を増したロンドンのバンドの姿を克明におさめている。一作目よりも音の配置やボーカル、ギターサウンドに創意工夫が凝らされており、商業的な成功を収めた前作と一定の距離を置いた作品であるとも考えることが出来る。つまり商業的なロックに近づきすぎないことを念頭に置いたようなアルバムである。


だが、彼らがスターミュージシャンと無縁な生活を送っていたというわけではない。名門ワープ・レコードはSquidの面々にGenesisのピーター・ガブリエルが所有するリアル・ワールド・スタジオへの入門を許した。なぜ、入門などという大げさな誇張表現を使用するのかは、このスタジオで録音を行ったバンドやミュージシャンを列挙してみればよくわかることである。リアルワールドは、The 1975、ビヨンセ、ビョークなど、セレブ系のアーティストしか入ることが許されない、ウィルトシャーの田舎地方にある伝説的なスタジオであるというのだ。かつてのアビー・ロードは現在のミュージックシーンを見るかぎり、リアル・ワールドに変更されつつあるのか。スタジオの内装もかなり豪華らしく、光沢が目立つまさにきらびらかなスタジオらしい。


しかし、面白いことに、Squidがレコーディングを行ったのは、メインの建物のレコーディング施設ではなく、川の向こうにある寒々しい付属的なレコーディング施設であったという。DIYのインタビューでは、このスタジオは冷凍小屋と称され、「一年中氷が冷たい、第二次世界大戦の防空壕のような場所」と話している。そこで、彼らは川の向かうにあるリアルワールドスタジオにセレブ・アーティストが出入りするのを伺っていたというのだから興味深い。彼らは、その間、有名ミュージシャン、トム・ジョーンズとも仲良くなれた。また、レコーディングの合間には、スタジオの近くを散策しながら、日本のアニミズムのような深い瞑想にふけっていたという。


さて、二作目のアルバムは、彼らの人生の曲がりくねった道を行く過程を丹念に切り取った作品である。現代のポストパンクサウンドの象徴的な部分であるシャウトは前作よりもなりをひそめることになった。しかし、その反面、繊細なギターのアルペジオ、ホーンセクションを交えたアレンジ、またメロディーラインに重点を置いて歌うことを意識したジャッジのボーカル、これらはある意味では、米国のポストロックの原点に迫るような作風となっていることが理解出来る。Squidの今作の音楽性は、オープニング曲「Swing (In A Dream)」のミニマルミュージックのアプローチを見る限り、アヴァンギャルド・ロックとも称すべきものである。


かつてのSlintやDon Cabarelloにも比するものがあるが、しかし、フロントマンのジャッジのボーカルはキャッチーで親しみやすく、現代のロンドンのポスト・パンクの文脈に根ざした内容である。その中には独特な繊細さと動的な感覚が渦巻いている。実験的な要素を交えつつも、実際のライブを意識したサウンド作りで、シャウトの部分はシンガロングを誘う。また、ギターサウンドも単調ではなく、ヘヴィロックバンドに比するパンチやフックの効いたリフを弾く場合もある。曲がりくねっていて、これと決めつけがたいような複雑怪奇なサウンドが特徴でもある。


かと思えば、二曲目「Devil's Den」では、内省的なエモコアに近いサウンドに舵を取る。ここには、ウィルトシャーの田舎を散策した効果が表れたのか、彼らの代名詞であるエネルギーに充ちたロックサウンドとは別の内向きな一面を垣間みることが出来る。この音楽性は、例えば、ブライトンのKEGにも近い雰囲気を感じ取る事ができる。そして、曲の後半では前半の静かな印象から一転して、Gilla Bandのようなノイジーなアヴァン・ロックへと歩みを進める。ある意味では、デビュー・アルバムの商業的な成功を否定する作風で、リスナーに驚きを与えるのである。ここにはSquidのひねくれた性質と、また生粋の音楽マニアの姿を捉える事もできる。


ハイカルチャーから距離を置くような感覚は、三曲目の「Siphon Song」でより一層強化される。Kraftwerkのロボット風のボコーダーのエフェクトを導入したボーカルは、彼らのSFの趣味が上手く引き出され、特異な印象を受ける。また、ここにはHot Chipの『Fearkout / Release』のタイトル曲に対するわずかな親和性を読み取ることが出来る。アルバムが売れても、リスナーに媚びを売らず、自主性の高い作風を提示しようというバンドの強い意識が感じられる。また、曲の途中からはLed Zeppelinを彷彿とさせるグルーブ感あふれるハードロックへの傾倒を見せ、これがSquidのライブセッションを間近で見ているようなリアルさを体感することが出来る。

 

その後、ある意味では、現在のワープ・レコードの音楽性の間口の広さを伺わせるような感じで、Squidはジャンルを規定せずに自由な音楽を、彼ららしい手法で体現させていく。4曲目の「Undergroth」はブレイクビーツ風のイントロから、ファンクとラップの要素を融合させる。ボーカルのスタイルは、ラップやスポークンワードに近いが、これは2021年のデビュー作のリリース後、現代のスポークンワードとパンクを融合させた複数のバンドに強い触発を受けた結果として生み出された曲と言える。現在の音楽シーンから遅れを取ることを彼らは良しとせず、常に最前線にいるバンドでありということを表明する。


しかし、ここでも一曲の中で大きな変遷があり、曲調はクルクルと様変わりしていく。ファンク、ラップからダブへ、そして、曲の最後になると、音響系のポスト・ロックへと劇的な展開力を見せる。その音楽の多彩さは、旧来のシカゴのジャズの影響を交えたポストロック・バンドにも比するものがある。

 

続く「The Blades」はワープらしさのある楽曲で、イントロでは、エレクトロニカの音楽性を導入し、Boards of Canada、Autechreといったテクノが最も一般的なリスナーに浸透するようになった時代のエレクトロニカを2023年に呼び覚まそうとしている。しかし、サビにかけては、ファンクの要素を絡めたポスト・ロックへと展開させる。以前のエレクトロニカの要素をどのような形でロックバンドとして昇華させるのか、レコーディングの過程の試行錯誤の痕跡が留められている。


そして、曲の後半では、ポストパンクバンドとして彼らが理想とするノイジーな展開へと導かれていく。この終盤の段階になると、ジャッジは初めて本格的なシャウトのスタイルを全面的に披露する。まるでその手法を意図して封じていたかのように。しかし、もったいぶった形で彼のシャウトが披露されると、奇妙なカタルシスをもたらされる。それまでわだかまっていたものが一瞬にして表側に吹き出すかのように、スカッとした爽快感が駆けめぐるのである。


続く「After The Flash」では、ビートルズやラーズの時代のバラードソングの系譜にあるブリットポップの影響を絡めているが、しかし、Squidが提示しようというものは、旧来のリバプールサウンドとも、その後のブリット・ポップとも違う。それは相容れないというべきか、それとも拒絶しているというべきなのかは分からないが、現代の音楽としてそれ以前の音楽を踏まえた上で、それを否定し、次の時代の音楽を示そうという意識もある。かつてキング・クリムゾンのロバート・フリップがそうであったように、前の時代の音楽を理解した上で、それを否定するという意図も見受けられる。なぜ否定するのかと言えば、否定し壊させねば新しいものが生み出されないからである。これはロックにとどまらず、純正音楽の世界でも同じことなのだ。

 

アルバムのクライマックスに至ると、耳障りの良さとは対極にあるアヴァンギャルドロックが展開される。アルバム全体には、環境問題への提言など、社会的なメッセージが込められているとも聞くが、彼らがバンドという形で繰り広げようとする不協和音は現代社会のどこかに響いているものであり、それを端的な形で体現しよう試みる。そして、クローズ曲でも彼らは既存の音楽を否定するどころか、自分たちの成功体験をも否定する。それは成功した経験に縋っていると、すぐに音楽が古びはじめ、退廃することを、何らかの形で知っているからに違いない。


さらに、彼らはエレクトロニカを期待して、このアルバムを聞こうとするリスナーに対して、フォークもなかなか良いという感想を持ってもらえれば、と同じく上記のDIYの取材で話しているが、その言葉は最後になってようやく理解できる。セカンドアルバムを締めくくる「If You Had Seen The Bull~」では、Squidがアヴァンギャルドなフォーク・ミュージックへと挑戦した瞬間が刻印されている。一貫してノイジーな印象のある『O Monolith」は、この最後の静かで瞑想的な曲が収録されていることもあって、奇妙なバランスに支えられた良作に仕上がっている。

 

『O Monolith』は、決してThe 1975のファンにオススメしてはいけないアルバムである。今作には、耳障りの良くない不協和音に充ちた音が通奏低音のように響きわたる。しかし、同時に、今作には、ニューヨークやシカゴと並び、世界音楽の中心地であるロンドンのロック・ミュージックの最前線で何が行われているのか、その一端を知るための手がかりが隠されているのである。



84/100



Featured Track 『Swing(In a Dream)

 



 

©︎Otium


Hand Habitsは、6月16日(金)のリリースに先駆けて、EP『Sugar the Bruise』から最後のシングルを公開しました。「The Bust of Nefertiti」は、以前にリリースされた「Private Life」「Something Wrong」に続くシングルです。以下のビジュアルでチェックしてみてください。

 

『Sugar the Bruise』は、Hand Habitsの2021年のアルバム『Fun House』に続く作品で、Luke Templeと共同プロデュースしています。『Fun House』のリリースと同年、Hand HabitsはSchool of Songで1ヶ月間のソングライティング・クラスを担当し、それが次のアルバムの材料となった。


「”Sugar the Bruise”では、心を無にして、遊び心に傾ける以外には何も考えていなかった」と、Hand HabitsのMeg Duffyはこのプロジェクトについての声明に書いている。「少し笑うこと、明るくすること、自分自身の経験から少し焦点をずらすこと」

 

「The Bust of Nefertiti」

 

©Andrea Nakhla

ロサンゼルスを拠点に活動するシンガーソングライター兼プロデューサーのジョナサン・ウィルソンは、新しいソロアルバムを発表した。『Eat the Worm』は、BMGから9月8日にリリースされる予定です。このニュースを記念し、ウィルソンは3月の「Marzipan」に続くニューシングル「Charlie Parker」を公開した。以下のアルバム詳細とともにチェックしてみてください。


「チャーリー・パーカー」は、「イート・ザ・ワーム」の中で最も好きな曲の一つです。「幻想的で架空の空想の飛翔です」と、ウィルソンは声明でこの曲について述べています。「また、ツアー・ミュージシャンとしての過去10年間の私の人生の浮き沈みなどにも触れています。ストリングス、ホーン、ファジーなギター、チューブラーベル、そして、ビバップの要素も少し入っていて、それが名前の由来になっているんだ。ある意味、「チャーリー・パーカー」は、新譜が目指す冒険、忠実さ、楽しさを包括しているんだ。この曲に合わせて、これまた驚くほどトリッピーなAIビデオを作ったんだけど、この曲のムードを完璧に捉えていると思うよ」

 

「Charlie Parker」
 

 

「アルバム収録曲の多くは、僕が現在取り組んでいるプロダクションの仕事に対する端的な反応でもあるんだ」とウィルソンはこのアルバムについて補足している。「スタジオでみんなと長い時間をかけて作業していると、突拍子もないアイデアが浮かんできて、彼らは "いやいや、それはおかしい、JW "なんて言うんだ。けれど、今、私はようやく自由にチャンスをつかめるようになり、物事を否定する衝動を抑えることができるようになった。それは、以前から考えてみると、ちょっと奇妙なことでもあるんだ」




Jonathan Wilson 『Eat the Worm』

Label: BMG

Release: 2023/9/8


Tracklist:

 
1. Marzipan


2. Bonamossa


3. Ol’ Father Time


4. Hollywood Vape


5. The Village Is Dead


6. Wim Hof


7. Lo and Behold


8. Charlie Parker


9. Hey Love


10. Stud Ram (Vinyl Exclusive)


11. B.F.F.


12. East LA


13. Ridin’ in a Jag


ソニー・ミュージックは、過去50年間のヒップホップの発展をたどる2枚組LPコンピレーションを発表しました。ヒップホップ好きの方はマストアイテムです。

 

「Raised By Rap: 50 Years Of Hip Hop」は、ソニーの既存のカタログから選りすぐりのヒップホップ作品を選ぶ”Certified Series"の一環として発売される。Run DMC、A Tribe Called Quest、Wu-Tang Clanといった伝説のアーティストから、Future、Doja Cat、21 Savageといった現代のアーティストまで参加している。

 

『Raised By Rap: 50 Years Of Hip Hop』は7月28日にダブルブラックビニールで発売されます。現在、予約注文を受け付けています。アルバムはLP限定の輸入盤として発売されます。日本国内ではTower RecordsHMV等で予約受付中です。


 

 

 

Sony Music 『Raised By Rap: 50 Years Of Hip Hop』

 



Side A:

 
Dr Jeckyll & Mr. Hyde  – Genius Rap (7” Single Version)
Run DMC – It’s Tricky
Rob Base & DJ EZ Rock – It Takes Two
A Tribe Called Quest - Can I Kick It?
DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince – Summertime (Single Edit)
Da Brat – Funkdafied

 

Side B:

 
Cypress Hill – Insane In The Brain
Wu-Tang Clan – C.R.E.A.M. (Cash Rules Everything Around Me) feat. Method Man, Raekwon, Inspectah Deck & Buddha Monk
Mobb Deep – Shook Ones, Pt. II
Fugees – Ready Or Not
NAS – N.Y. State Of Mind
The Beatnuts – Watch Out Now feat. Yellaklaw

 

Side C:

 
Outkast – Ms. Jackson
Clipse – Grindin’
Dead Prez – Hip-Hop
Three 6 Mafia – Poppin’ My Collar
Too $hort – Blow The Whistle
UGK (Underground Kingz) – Int’l Players Anthem (I Choose You) feat. Outkast

 

Side D:

 
Travis Scott – Goosebumps
21 Savage – a lot
Doja Cat – Streets
Future  - Mask Off
Skepta – Praise The Lord (Da Shine) feat. A$AP Rocky feat. Skepta
Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road feat. Billy Ray Cyrus (Remix)
MIA – Whole Lotta Money

 

 
イギリスのロックバンド、Bring Me The Horizonが通算9枚目のスタジオ・アルバムを発表した。この発表は先週末のDownload Festivalでのヘッドラインパフォーマンスの後に行われています。『POST HUMAN: NeX GEn』は9月15日にSony/RCAから発売されます。
 
『POST HUMAN: NeX GEn』は、2020年の『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』に続く作品で、ブランニューシングル「LosT」とLil Uzi Vertが参加した「AmEN!」が収録される予定です。


 
 
 
このアルバムとツアーの発売は、週末にバンドがソーシャルとフェスティバルの会場で発表されました。
 
 
アルバムの発表もかなり凝った演出が行われたようです。ファンは、隠された手がかりや謎をたどって、Downloadの会場にある秘密の建物「The Church Of Genxsis」にたどり着くよう促されました。中に入ると、ファンは、タロット占いなど、さまざまなGenxsisの儀式を擬似的に体験し、教団の一員となるための旅を完了しました。


近日発売のアルバムに加え、バンドは2024年まで続く初のツアーも発表し、ロンドンのThe 02での公演を含む。このツアーには、Bad Omens、Cassyette、Static Dressが参加する予定です。
 

 


アイスランドのポスト・ロックの重鎮、Sigur Rós(シガー・ロス)が7年以上ぶりに新曲を携えて帰ってきました。「Blóðberg」は、壮大で、幽玄で、オーケストラ的で、プレスリリースによると、"バンドにとって10年ぶりのニューアルバムへの道しるべとなる可能性がある "ということです。かつては音響系とも称されることのあったシガー・ロスのアンビエントにも近いロックサウンドは以前よりも迫力と重厚感を増しています。繊細なヨンシーのボーカルも哀感を誘う。


この曲には、HBOのチェルノブイリ・ミニシリーズを監督したヨハン・レンクが監督したビデオが付属しています。レンクは、「未来について、これ以上ないほど虚無的な気分だ。自分たちの愚かさに対して無力なのだ。そのある側面が、『Blóðberg』のテーマに対する私の印象と融合した。音楽は、私自身の惨めな思いを楽譜にし、音楽ならではの美しさを与えている」と説明している。

 

『Blóðberg』

 

「Blóðberg」は、今週末のロンドン、アムステルダム、ハンブルグでのSigur Rósのライブを目前にして到着しました。彼らは8月にWordless Orchestraと共に北米を訪れ、8/16のBeacon Theatreと8/18のKings Theatreでのニューヨーク公演を予定しています。全日程は以下の通りです。

 

Sigur Rós 2023 Tour Dates:

 


6/16 London, UK — Royal Festival Hall


6/17 Amsterdam, Netherlands — Concertgebouw


6/18 Hamburg, Germany — Elbphilharmonie


7/3 Paris, France — Philharmonie Main Hall


8/14 Toronto, ON — Roy Thomson Hall


8/16 New York City, NY — Beacon Theatre


8/18 Brooklyn, NY — Kings Theatre


8/19 Boston, MA — Wang Theatre


8/21 Minneapolis, MN — State Theatre


8/24 Seattle, WA — The Paramount Theatre


8/26 Berkeley, CA — The Greek Theatre at UC Berkeley


8/27 Los Angeles, CA — The Greek Theatre

 

Maciej Mastalerz

 

先週、ブリストルのシンガーソングライター、Lande Hekt(ランデ・ヘクト)が新曲「Axis」をリリースしました。ランデ・ヘクトはマンシー・ガールズとして以前活動していましたが、現在はソロ活動に専念しているようです。

 

この曲は先月の「Pottery Class」に続く作品でソングライターとしての力量を感じさせる内容となっています。いつものようにシングルではありながら良く作り込まれており、聴き応えも十分です。

 

前作に続いて、静と動を生かしたロマンチックなギターロック・ナンバーです。曲の途中からはカントリー・ロック等の要素を交えたダイナミックな展開へと引き継がれる。イングランドのブリット・ポップ、スコットランドのネオ・アコースティックのバンドが好きな方は、ぜひチェックしてみて下さい。今週のHot New Singlesとして読者の皆様にご紹介します。


「Pottery Class」と「Axis」は、Get Better Recordsから本日発売のブラック7インチ・レコードに収録されています。昨年、ランデ・ヘクトは最新アルバム『House Without a View』を発表しました。

 

Interview 畠山地平(Chihei Hatakeyama)

  

Chihei Hatakeyama-Courtesy of The Artist


日本のアンビエント・プロデューサー、畠山地平さんは、2000年代から多作なミュージシャンとして活躍してきました。2006年には、米国、シカゴのレーベル、Kranky Recordsと契約を結び、デビュー・アルバム『Minima Moralia』をリリースしました。グリッチとアンビエントを融合させた画期的な音楽性で、多くのエレクトロニックファンを魅了するようになりました。

 

以後、独立レーベル”White Paddy Mountain”(Shopはこちら)を主宰し、リリースを行うようになった。その後、アーティストにとってのライフワークとも称せる三国志を題材にしたアンビエント作品『Void』を中心に現在も継続的にリリースを行っています。先日には、サウンドトラックとして発表された『Life Is Climbing』をリリースし、ライブやラジオ出演など、多岐にわたる活動を行っています。

 

5月12日より公開中の「ライフ・イズ・クライミング」の映画公式サイトはこちらからご覧下さい。

 

今回、改めて、Music Tribuneのインタビューでは、デビューからおよそ17年目を迎えるに際して、アーティストの人生、音楽との出会い、アンビエント制作を開始するようになったきっかけ、自主レーベルを主宰するようになった時のエピソード、昨年のUK,USのツアーに至るまで、網羅的にお話を伺っています。そこには笑いあり、涙ありの素晴らしいアーティストの人物像を伺うことが出来るはずです。ロング・インタビューの全容を読者の皆様にご紹介いたします。

 

 

Q1.


畠山さんは、ティム・ヘッカーが所属する名門レーベル、シカゴのKranky Recordsから2006年にデビューなさっています。これは、どういった経緯でデビューすることになったのか教えて下さい。また、現地のレーベルとのやりとりなどで、苦労したことなどはありましたか?


2001年か2002年に最初のノート型のmacを購入して、DTMを始めました。それまではDTMや打ち込みはそれほど経験がなく、(少しはシーケンサーなどでは遊んでいました)ほぼ手探り状態で作曲していました。当時はトリップホップという言葉もあって、Massive AttackとかBoards of CanadaやAutechreのような曲を作っていたんですね。その当時はビートも作ってました。


それがある時、ビートがあると、どうしても小節や拍に捉われてしまうので、もっと自由に曲が作りたいなと思って、ビートを無しにして作曲を初めて見たら、すごくしっくりきたんですね。それもあって今のような静かな曲を作るスタイルに変化していきました。

 

その後、ヴァリューシカというユニットを伊達伯欣と吉岡渉と3人で始めて、(これも今でいうとアンビエントにくくれるかもしれません。)ライブ活動や楽曲制作をしてました。同時にsoloでも作曲活動は続けていて、2006年くらいにはクランキーからリリースすることになる『Milimal Moraia』も完成していました。

 

それで、当時はとにかく海外からリリースしたいという気持ちが強かったので、いくつかのレーベルにdemoのCDRを送りました。その結果、クランキー(Kranky Records: シカゴに本拠を置くレーベル。クラブ・ミュージックからポスト・ロックまで幅広いカタログを有する)から返事があって、「ぜひリリースしましょう」とそういう流れだったんですね。

 

正直、英語は現在でもあまり得意ではないのですが、そのクランキーにdemoを送る時は、英語のすごくできる友人に協力してもらって、それは今考えると凄くありがたかったです。その友人もすぐに海外に引っ越してしまったので、運も良かったですね。


Q2.


アンビエント/ドローンというジャンルは、日本ではそれほど一般的なジャンルではないわけですが、このジャンルに興味をお持ちになったきっかけについて教えて下さい。

 

1997年に大学に入学して東京の大学に通うようになるのですが、当時はとにかく音楽バブルというか、下北沢のレコファンとかディスクユニオンとか、渋谷とか、新宿のレコ屋に今じゃ考えられないくらい人が沢山いて、自分もバイト代が入るとすぐCDとかレコードに突っ込んでしまうので、本当に金がなかったですね。借金してまでCDとかレコードとか買ってましたから。。。

 

それが今じゃ980円でネットで聞きたい放題ですからね。信じられません!! 話が外れてしまいましたが、それで色々と漁っているうちにジャーマンロック、CAN 、NEU!とかに出会って「これだ!」と思って、すぐに似たようなバンドを結成しました。

 

これは、OUI というバンド名で、NEU!にかなり影響受けてます。まあでも若かったので色々あって、中心メンバーだったはずの自分が抜けて、その後もOUI 自体は活動を続けていたようです。

 

しかし、こういう若い時のバンド活動のせいで、かなり人間不信に陥りました・・・。その前のバンドは新興宗教にハマるメンバーもいて、気付いたら自分だけが信者じゃなかったとか・・・、とにかく今考えるとバンド運なかったのか、性格が向いてなかったのか。。それで、当時も今なんですが、自分ではアンビエント/ドローンというジャンルではなくて、Rockの一形態としてアンビエント/ドローンというものを捉えていて、少しはRockミュージックでありたいとは自分では思っているのですが、リスナーがどう捉えてもそれは自由です。

 

アンビエント/ドローンに興味を持ったキッカケですが、90年は誰もアンビエントとは呼んでなくて、「チルアウト」と呼んでいたような気がします。もちろんアンビエントという言葉や、環境音楽という言葉については知っていたのですが、その当時はちょっと80年代はダサい雰囲気だったんです。
 

90年代の末に大学在学中に色々とアルバイトをしてたのですが、その一つに新大久保の”コンシャス・ドリームス”という凄く怪しいお香とか、何を売ってるんだがよくわからない店がありました。そこでは他のアルバイトのメンバーもほとんどみんな音楽をやっていて、インディーロックからラッパーまで色々いました。

 

そのお店の店長がトランス系のDJをやってたんですが、チルアウトのDJもやっていて店では90年代チルアウトを流していたんです。テクノの流れのサイケデリックなジャケットのものですね。それで、チルアウトもいいなぁということになって、よくイベントなど行くようになりました。

 

当時はまだ細野晴臣さんもアンビエントやってたのかどうか、定かではないのですが、細野晴臣さん絡みのイベントでMixmaster MorrisがDJをするイベントに遊びに行きました。そしたら凄い人が来ていて、音楽も素晴らしいし、感激しました。それがアンビエントとの最初の出会いかもしれませんね。

 

その後色々あったと思うのですが、最初にラップトップを買ったあたりで下北沢にONSA(編注: 2011年に実店舗は閉店したものの、現在はwebで営業中のようです)というレコード屋がオープンして、この店のセレクションがとても素晴らしくて、多分シスコで働いていたバイヤーの人が始めた店だと思うのですが、その店はエレクトロニカ、今で言うとアンビエントものが多くて、それでアンビエントの方に一気に流れた感じです。当時はフェネスとJim O’Rourkeが私のアイドルでした。そのお店で結局色々と買っているうちに、自分はビートのない静かな音楽が好きなんだなということに気付いて、どんどんハマって行ったという流れですね。


Q3.


また、高校時代にはメタリカ、スレイヤーなどスラッシュ・メタルに親しんでいたとのことですが、バンド時代のエピソードなどがあれば教えて下さい!!

 

中学生の時はサッカー部で、部活が終わるとテレビゲーム三昧でした。ドラクエ、三国志、信長の野望、ストリートファイターと、部活の休みの月曜日はゲームセンターとテレビゲーム黄金時代で、サッカーとテレビゲームの日々だったため、音楽はほとんど興味なくて、それでもテスト勉強用のBGMに何か聞きたいなぁ・・・と。

 

当時はBzとかZARDの全盛期だったんですが、音楽の明るさに全くついていけなくて、そんな時に小田和正のドラマの曲「ラブストーリーは突然に」を聞いて、「これだ!」と思って、それで小田和正のバンドのオフコースにハマってしまって、中学三年間はオフコースしか聞きませんでした。

 

今考えると、小田和正は70年代当時ライブでシンセに囲まれて歌っていて、プロフェットとか、ムーグとか、凄い良いシンセを使ってるんですね、楽曲も割と静かですし、その自分の原体験が現在のアンビエントに通じるものがあるのかもしれません。

 

それで高校に入学した時はサッカー部に最初入ろうと思ったのですが、どうも練習のレベルが中学生の時のレベルではないなぁ・・・と。かなりみんな本気で取り組んでましたので、二の足を踏んでしまって。。でも、これが運命の分かれ道だった。そんな時、クラスメートに「バンドやるから一緒にやらない?」って誘われて、ギターも持ってないし、どうしようと思ったんですが、特に他にやることも無いしと、バンドを始めました。最初は全くの消極的な理由なんです。


最初の1年間は他のメンバーの言うことを聞いて、BOØWYとかブルーハーツとかをコピーしてました。実はそんなに思い入れがなかったんですが…。でも、その軽音楽同好会に一人めちゃくちゃ凄い先輩がいて、その人はその後、山嵐(日本の伝説的なミクスチャーロックバンド。詳細はこちらより)というミクスチャーバンドでデビューして、中心メンバーとして今も活動してます。

 

その人は、洋楽に凄く詳しかったので、その影響で、メタリカとかのスラッシュ・メタルを聴くようになったんです。ギターの方は、ラーメン屋で半年くらいバイトして、なんとかお金をためて、今でも使ってるフライングVを10万円くらいで購入しました。そこのギター屋のマスターがレッド・ツェッペリンが大好きで、コピーバンドをやっていて。太ったジミー・ペイジのようなルックスのおじさんで面白かったんですが、その人の進めるままにフライングVを買ってしまったんです。が、これが大失敗だった..。なぜならフライングVは座って練習できないんです。

 

なので、2本持ってる人とかは、座って別のギターで練習して、ライブとか練習で、フライングVを弾けば良かったんですが、自分の場合はフライングVしかなかったので、ずっと立って練習していました..。でも、高校生の2年生の夏休みだけ、バイトもやめて、ひたすら朝起きで夜まで立って早弾きの練習をしていたら、それなりに弾けるようになったんです。今、考えると凄い。それでバンドメンバーに「もう邦楽はやめて、スラッシュ・メタルをやろう」と提案して、スラッシュ・メタルを演奏するようになりました。バンドメンバー全員で、パンテラのライブに行けたのが、最高の思い出です。会場は幕張メッセだったんですが、ギターとドラムの音がやたら大きくて、ヴォーカルの声がぜんぜん聞こえない。それでも会場は沸騰したヤカンみたいになっていて、音のバランスなんでどうでもいいんだと変なことを学んでしまいました。。


Q4.


以前、他のインタビューでエリック・サティについて言及しているのを読んだ記憶があるんですが、特にアンビエントに関して、影響を受けたアーティストを教えて下さい。ジャンルは電子音楽ではなくても構いません。また、そのミュージシャンのどういった点に触発されたり、影響を受けたのかについてもお伺いしたいです。

 

クリスティアン・フェネスやジム・オルークにも影響を受けたんですが、今回はブライアン ・イーノからの影響を考えてみます。

 

2010年前後から、アンビエント/ドローンというジャンルを意識するようになりました。それまでは、先ほど申し上げたようにあえて、Rockミュージックの一形態、もしくはエレクトロニカ、ポストロックの一形態ということで、自分の音楽を捉えていたのですが、2000年代後半くらいから、アンビエントやドローンというキーワードが浮上してきたように思います。

 

それまではあえてブライアン ・イーノを聴くことを避けて来ました、それはあまり有名すぎて、強烈なので、真似してしまうんじゃないかと不安だったからです。それでもちゃんと一回向き合おうと思って、ほとんど全作品を一度に購入して、聞きました。

 

その結果、一番好きなアルバムは『アポロ』ということが分かりました。その作品からの1番の影響はストーリー性かもしれません。アルバム1枚の流れの美しさというか、アンビエントでも曲調が豊富で、楽器の数も多い。アンビエント・シリーズ(編注: ブライアン・イーノとハロルド・バットとの共作のこと)だとミニマルなものが多かったので、とても斬新でした。あと、シンセの使い方ですね。音色の使い方から、レイヤーの方法など、具体的なこともブライアンから研究しました。そのあたりの影響が自分の作品では『Forgotten Hill』に出ていると思います。




Q5.


畠山地平さんは非常に多作な作曲家だと思っています。2006年からほとんど大きなブランクもなく、作品をリリースしつづけています。これはほとんど驚異的なことのようにも思えます。畠山地平さんにとってクリエイティビティの源はどこにあるんでしょうか?

 

これまた中学生の時のエピソードに戻ってしまって申し訳ないのですが、その当時テレビ番組で、関口宏の『知ってるつもり』(日本テレビ系列で1989年から2002年まで放映されていた教養番組。関口宏がホスト役を務めた)というものがありまして、好きで、よく見ていたんです。ある回で、種田山頭火のことが取り上げられたんです。それで、種田山頭火(大正、昭和初期の俳人。季語や5・7・5の定型句を無視した前衛的な作風で知られる)の芸術に対する生き方というのものに衝撃を受けて、「これだ!」と思ったんですね。それで自分も旅をしながら詩を書いて生きようと思ったんですが。。言葉が出てこない。。でも、そういう生き方もあるんだなと勉強になりました。それでもミュージシャンなら、ツアーしながら、生活もできるので、似たようなポジションかなと思って..今も続けてるという面もありますが。。


また、別の側面から行くと、とにかく曲を作るのが楽しいというのが一番最初にあります。特に自分の場合はインプロヴィゼーションで、ガーと一気に録音するんですが、その時が一番楽しい。

 

ポストプロダクションやミックスは最近飽きてしまってる面もあるというか、少し辛くもあるんです。でも作曲の最初の段階、インプロヴィーションの段階は自由ですから、今日はどんな曲が出来てくるのかなと自分でもワクワクするっていうか、そういう面もあります。常にスタジオでギターを持って、音を出せば未知のものが出てくるので、そりゃ楽しいよなと、そういう感じなんです。

 

で、最初の話に繋げると、その日の気分で、詩を書くように音楽をやっているそういう感じなんですね。


Q6.


畠山さんは東京と藤沢にルーツを持つようです。幼少期はどういった人物でしたか? また以後、長く音楽に親しむようになった思い出がありましたら教えて下さい。

 

小学生の時は外で遊ぶのが大好きでした、ほとんど野外ですね。藤沢でも六会日大前という駅名なのですが、日大がありまして、それが農業系の学部があったんです。その関係で、ほとんどが日大の土地なんですが、未開の森とかも残されていて、本当に面白かったです。

 

森への冒険は人が誰もいないので、もちろん入ったら、大人に怒られるんです。なので、友達を誘っても一緒に来てくれなかった。なので、一人で森の奥まで冒険に行ってました。。今考えると恐ろしく危険でした。手付かずの川も流れてるし、かなりヤバイです。あと線路の上で遊びたくなっちゃって、線路の上で遊んでいたら、警察官に補導されたんです。今考えると尋常じゃなかった。

 

あとは日大の土地に秘密基地を作っていたんですが、小学生も高学年になると物凄い高度な基地になってしまい、家具とかもゴミの日に全部拾ってきて、家みたいになっちゃって。そういう基地を2個か3個作ったんですね。友人というか手の器用なやつを集めて。。

 

そしたら、だんだん噂になって来て、その基地の奪い合いの喧嘩騒動に発展してしまったり。後は最初は基地は木を利用して作っていたんですが、目立つので、地下に作ろうと思って、物凄く大きな穴を掘って基地を作ったんです。それが何故か大人に見つかって、泣く泣く埋め戻しました。

 

幼少期はほとんど音楽に触れる機会はなくて、楽器を始めたのは、高校生になってからでした。ですが、現在に繋がるという視点で行くと物作りと一緒なんです。創造的なエネルギーというか、とにかく基地を作るということに全力投球でしたね。




Q7. 

 

昨年のUSツアーに関してご質問致します。3月、4月に、シアトル、ニューヨーク、クリーブランド、デンバー、ポートランド、また、一度帰国してから、5月に、ロサンゼルス、シカゴ、ミネアポリスでツアーを開催なさっています。


ほとんど全米ツアーに近い大規模なライブスケジュールを組まれたわけですが、これはどういった経緯でツアーが実現したのでしょう? USツアー時、特に印象深かった土地や出来事等はありましたか? また、畠山さんの音楽に対する現地のファンの反応はいかがだったでしょう?

 

 

2019年頃に今のツアーマネジャーと契約して、彼はアメリカ人なのですが、本当は2020年にUSツアーや、ヨーロッパツアーをするつもりだったんですが、コロナのパンデミックで全てキャンセルになりました。それで、改めて去年アメリカツアーを開催すること出来ました。

 

アメリカで”Ambient Church(アンビエント・チャーチ)”という教会でアンビエントのライブをするイベントがあるのですが、それがメインでした。ニューヨークでは、1000人くらい入る教会だったような気がします。現地のファンは静かに聞いてくれます。それが1番有難かったです。やはり静かな音楽なので..、反応とかは分からないんです。

 

ただアメリカは物販は物凄く動くので、お金の使い方は派手です。初回のコンサートの本番前に日本から持っていたレコードが売り切れて、驚きました。CDは手元に残りましたが..。それで、現地のディストリュビューターやレーベルに協力してもらい、急遽レコードを掻き集めて、ライブ会場に直接送ったりしてなんとかしました。

 

初めて海外旅行に行った街がニューヨークだったので、それが一番感慨深かったというか、24年振りだったので、全部の印象が変わっていたという感じでした。。でも、いつかこの街でライブをしたいな、とその当時思ったので、その夢が叶うのに24年もかかりました。でも、24年待った甲斐があったというか、凄く複雑な感情でした、時が逆再生されているような感覚というか。。またロサンゼルスは初めて行ったのですが、気候も凄くいいし、今にも折れそうな椰子の木が街中に植えてあって、景観も最高でした。




Q8.


続きまして、先日のイギリスツアーに関してご質問します。ロンドンなど、現地の観客の畠山さんの音楽に対する反応は、昨年のアメリカ・ツアーと比べていかがでしたか? またライブ開催時に現地のファンとの交流において印象深かった出来事などありましたら教えて下さい。

 

イギリスの観客も静かに熱心に聞いてくれるので、とても有難いです。今回の会場は多分400人くらいの規模だったと思うのですが、ステージも含めて、電気の関係なのか、暖房設備がなくて、とても寒かったです。そのため、仕方なくコートを着てライブをしました。60分の演奏予定だったのですが、実際は75分くらい演奏してしまって..。スタートの時間を勘違いしていたんです。自分でもなんか長いかな、と思ってたんですが…。最近、このパターンが多いんです。物販はアメリカに比べるとそこまで動かないです。イギリスとアメリカでここまで違うのかと、かなり興味深いですね。




Q9.


また、イギリスのツアーの際、物価の高騰に関して、ツイッターでつぶやかれていました。これに関して日本とイギリスの生活スタイルの相違など驚いたことがありましたら教えて下さい。

 

元々、失われた20年のなかで日本だけが、デフレ傾向だったところに円安が加わってどうにも信じられないくらい物価高いというイメージです。

 

基本的には、ラーメン一杯3000円くらいで、チップとかまともに払ったら、もっと行くでしょう。世話になった人に気軽にラーメンを奢って、ビールを一杯飲んだだけなのですが、あとでクレジットカードの明細見たら一万円超えになっていたので、これではマトモに機能しないな、と。

 

また、アメリカで泊めてくれた友人に家賃を聞いたら「6000ドルだ」と言ってまして…、日本円にしたら80万くらいですか…。でも、その人も夫婦共働きで暮らしていて、給料もお互い6000ドルくらいな感じのことを言ってましたが…。イギリスのツアーは結局、自分も派手に飲んだり食べたり、遊んでしまったので、大分赤字でした。ギャラは結構好条件だったんですが…。


でも、もうツアー行ったら思いっきり楽しんじゃった方がいいかなと、人生も半分終わってしまったので、ギリギリツアーは、肉体的にも精神的にも辛い。若い頃はそれでオーケーだと思うんですが、機材も重いし、ダニに噛まれながら、ボロボロのゲストハウスで、出稼ぎの人の騒ぎ声で夜も眠れないツアーはかなり厳しいです。それも今では良い思い出となっているんですが…。



Q10.


よく知人などから、外国にいくと、日本食が恋しくなるという話を聞くんですが、その点、いかがでしたか?

 

そうですね、自分の場合はラーメンも含めて中華料理が恋しくなってしまうんです。チャーハンとか焼きそばとか、でも中華料理は今のところどこの国も大体クオリティが良くて安い。なので、結構良さそうな中華料理屋を探します。あとは毎回外食だとこれまた金が持たないので、カップラーメンとかツアーに持って行くといいです。ペヤングを向こうのホテルで食べると半分は懐くしくて感動しますが、半分は虚しさも残ります。その複雑な感情がなんともいいんですね。

 

シカゴで暇だった日にカップラーメンを探す散歩に出かけたのですが、なかなか美味しそうなものが見つからなくて、それで半日くらい費やしましたが、贅沢な時間だったなと、日本にいたら仕事に追われて、半日も無駄に出来ませんから。

 

日本食という寿司かなとも思うんですが、寿司は高級なので、食べれませんね。。イギリスでは''wasabi''という日本食のファストフードみたいな店があって、そこの寿司巻物は何回か食べました。



Q11.


以前からプレミアリーグのファンであると伺っています。いつくらいからプレミアに興味を持つようになったんでしょうか? またお気に入りのチーム、選手、またフットボールなどについて教えてください。

 

プレミアリーグだけでなく、ラ・リーガやセリエA、CLもチェックしています。現在はかなりのサッカーフリークになってしまっていて….プレミアリーグはアーセナルのファンです。2003-04の無敗優勝の前のシーズンから少しずつ観るようになって、当時のアーセナルのサッカーは美ししすぎて、本当に衝撃でした。。以来、アーセナルを追ってます。セリエAではインテルが好きなんですが。。

 

こちらは元会長のモラッティさんのファンという形で今も試合を追ってますね。アーセナルはでも無敗優勝以来優勝できてなくて、プレミアにはモウリーニョから始まって、ペップ、クロップなど、どんどん素晴らしい監督が集まってきて、それでもヴェンゲルさんのサッカーは最後までブレずに見ていて楽しい試合が多かったです。勝ち負けはともかく。。激動は18-19シーズンのエメリ監督就任からですかね。。全然勝てないし、サッカーも面白くないと、まずいまずいと思ってるうちに、どんどん不味くなっていて。。こっちの気分も最悪に落ち込みました。

 

ヴェンゲルさんの時はそれでもサッカーが面白かったんで。。それでアルテタ監督がやってきたのですが、21-22シーズンからやっと少し上昇気流で、今シーズンも大半の時期は首位だったんですが、最後にシティに抜かれて。またこれかと、アーセナルを応援しているとどうしてもネガティブな予想をしてしまうんですが、ぬか喜びしないために・・・。

 

今シーズンもまさにその展開でした。でも昨シーズンは5位だったわけで今シーズンは2位ですから、そんなにうまく行くはずないとは思いながらも来シーズンは優勝の期待大と思いたいです。

 

サッカーと音楽の共通点があるとすれば、感覚とロジックの鬩ぎ合いだと思っています。どちらも音楽理論や戦術など、ロジックな要素をベースにしつつも、最後は感覚の問題なんですね。瞬間に何が出来るか、時の流れの早さが変わります。その時の流れが通常の速さからゆっくりした流れに変わった瞬間をどう捉えるのか。サッカーをプレイするのと、楽器を演奏するのは共通点が多い気がします。なので、サッカーを観ながら、いつも音楽の作曲の参考にしてます。

 

その観点から行くとペップ・グアルディオラには本当に感銘を受けます。この10年間くらいのサッカーの戦術の流行の源流は間違いなく彼が作っていますから、日本を含め世界中で真似されています。それでも今シーズンも偽センターバックなど、新しい戦術を開発してしまって脱帽です。




Q12.


畠山さんのリリースの中で連作『Void』があります。この作品はある意味、ご自身のライフワークのような作品に位置づけられるように思えます。この作品を制作を思い立ったきっかけなどについて教えて下さい。また、この連作は現在「ⅩⅩⅤ」まで続いていますが、どれくらいまで続けるか想定していますか?

 

 
『Void』シリーズは最初はBandcampを始めるあたって、ライブの録音や未発表曲を纏めたものをリリースしていました。当初からデジタル・オンリーという位置づけでした。フィジカルを想定したものだと、こちらもかなり力が入ってしまうため、そうではないものが、いい意味で力の抜けたものがあってもいいかな、と。それと作り手の私の主観で素晴らしいと思ってもリスナーにとってはそうでもないというケースや逆のケースもあることに、このシリーズで気付きました。

 

そうやって何作品かリリースしているうちに、このシリーズの人気が出てきて、だんだんと新作の発表の場に変化していき、『Void 22』は勢い余ってCDでもリリースしてしまいました。。『23』からはまたデジタルに戻る予定ですが..。ちょっとブレてしまった。。今も『26』を準備しているところです。30くらいまで続けたいなと思ってるんですが、最近はペースが落ちていますね。。



Q13.


2010年からご自身のレーベル”White Paddy Mountain”を主宰なさっています。このレーベルを立ち上げた理由をお聞かせ下さい。さらに、どういったコンセプトを持ってレーベル運営をなさっているんでしょうか? またオススメのアーティストがいましたら教えて下さい

 

2010年くらいまでは会社員だったんです。実に自由な会社で、働き手にとっては素晴らしい会社でした。

 

給料は安かったんですが…、創作活動と並行して会社員を続けることが出来たんです。でもだんだん在籍していても、何の成果もないので、だんだんと場所が窓際に近づいて行くのを感じてました。。

 

業務としては社長の個人的な音楽レーベルのスタッフという位置付けで、社長の決めたリリースの営業やら広報を担当するという内容でした。入社した時から若干怪しいなと思ったんですが、社長のリリースする作品が全然売れないんです。

 

その当時はまだCDの全盛期で、他のCDは結構売れてました。それで、社長も他の業種に目がいったのか、遂に映画製作などにも手を出してしまい、自分はその映画の広告担当になったんです。でも映画の広告なんて経験もないしうまく行くはずもなく、壮大にコケました。あの一年は本当に全員狂った季節でした。会社として大金を投資したので、公開2日目に映画館に視察に行ったらお客さんが一人(!!)という始末でした。あの時の気持ちは生涯忘れられません。情けなさと怒りと、とにかく感情が渦巻いていました。

 

新宿の空に真っ黒な雲が垂れ下がっていて、歌舞伎町の風が冷たかったです。切腹ものでしたね。。そんな感じで最後は責任取らされるじゃないですけど、社長も冷たい塩対応になってしまって…。その時30代の半ばぐらいだったかな。。このままじゃまずいぞと思って、独立して自分レーベルやってみようと、そんな感じで始めました。しかし最初の一年は大赤字で貯金が全部吹っ飛びました。気持ちいいくらいに。


シュゲイザーやインディーロックなどをリリースしつつ、アンビエントもリリースするというスタンスでスタートしたのですが、シュゲイザーやインディーロックはそこそこ売れたんですが、アンビエントやエクスペリメンタルが全然うれなくて、回ってないと実感していたんですが..、最後は野外イベントで壮大に大金を飲み代に使って、持ち金をゼロにして、背水の陣で反転攻勢に転じました。

 

そこからはう少しはまく回り始めたんですよね。まあ、とにかくその当時はレーベル業務に全力投入という感じで、プチビジネスマンでした。新人発掘も大変でした。良いアーティストの噂を聞いてはライブハウスに見にいって声かけたりと、凄いエネルギーでした。そんな時、satomimagaeさんに出会って、この子は本物だと思い、素晴らしい未来が見えました。satomimagaeさんはWPMに2本の作品を残してくれて、今はアメリカのRVNG所属のアーティストになっています。

 

satomimagae、Shelling、family Basikなどがオススメです。アンビエント系は自分がセレクトしたので、良いはずです。。そうしてるうちに、パンデミックがやってきて、少しレーベルを休んでいたら、自分のスタンスも変わってきて、今は自分の作品を出しているだけという状態になってます。しかしパンデミックも終わったので、またリリース活動を再開したいとは思ってますね。


Q14.


もちろん、畠山地平さんの作品は必ずしもアンビエント/ドローンだけでは一括出来ないように思います。ジャズに関してもお詳しいと聞きます。しかし、2007年からこのジャンルにこだわりを持ってきたのは理由があるのでしょうか? また、電子音楽やアンビエントを作っていて良かったと思うような瞬間があったら教えて下さい。
 

自分の中ではこだわりを持ってきたというよりは時の流れが早すぎて、自分の聞きたい音楽を作っていたら時間が経過していた、みたいな気持ちなんですね。この電子音楽やアンビエントというのも自由なジャンルなんで、アイデアは次から次へと出てくると、そういう感じなんです。

 

一つ父親からの忠告かアドヴァイスか、分からないですが、『芸術家は山師と同じだ、一度そこ場所を掘ると決めたら、宝が出てくるまで掘り続けなければならない』そういう事を言われまして、とにかく一度アンビエントを始めた以上最後まで掘り続けようという気持ちでここまで来ました。

 

ただ2008年〜2011年の間には「Luis Nanook」という歌物のユニットで活動しておりまして、私は作曲とかミックス、ギターなどをやって、もう一人ヴォーカル、作曲、ギター担当の二人で活動していました。

 

でも!レーベルからCDをリリースするようになったら、そのヴォーカルが変わってしまって、凄い良い性格の人だったんですが、多分売れないといけないというプレッシャーが強すぎたんでしょう。1枚目はアンビエントだったんですが、2枚目でビートルズみたいな曲を作ってきたので、ビックリしました。色々あって活動停止しました。そういう経験もあって、ブレずに電子音楽やアンビエントを続けようと思った。それでも今はまた、静かな歌物を作りたい気持ちはあります。

 

電子音楽やアンビエントを作っていて良かったのはファンレターで、「すごく寝れるようになった」というメールが多いんです。そういう時は本当に人の役に立ったなと。自分も不眠症で寝れない辛さは本当によく分かりますから。



Q15.

 
畠山さんは、ギター、エフェクター、録音機材など、かなり多数の機材をお持ちのようですね。例えば、同じようなギターを主体にしたアンビエントのプロデューサーにはクリスティアン・フェネスなどがいますが、正直、畠山さんのサウンドは他にないような独特なものであるように感じます。ギターや作品のサウンドの作り込みに関して、独自のこだわりがありましたら教えて下さい。また、実際の音源制作に際して、試行錯誤する点などがありましたら教えて下さい。

 
 

機材は好きで集めてるうちにだんだんと自然に溜まってきたという感じです。作曲というか楽曲制作のこだわりは、常にスタジオで、電源を入れたら音が出るような状態をキープする事ですね。思いついた時にすぐに音を出せるのが一番いいです。

 

また、作曲をする時間帯ですね。朝は夜が明けるまでの4時から7時くらい、夕方も4時から8時くらいまで、この昼と夜の変化する時間帯、つまり、この時間に作曲された曲がいいのが多いです。この時間帯に創作意欲が湧くんです。サッカーは夜遅くとか不便な時間に行われるので、自分も全く不規則な生活になってしまって、それでも、朝の4時から7時というのは、そんなに出来ないです。ごくたまに朝方になる時があって、そういう時はその時間帯がいいですね。

 

ほとんどの曲はボツになって永遠に日の目を見ないと思うのですが、良い曲に関しては共通項があって、ほとんどその曲にまつわる記憶がないというのがあります。どういった状況で作ったのか、どうしてそのアイデアに行き着いたのか等、そういう曲についても本来覚えているはずの情報や記憶が全くない曲が、たまに紛れてしまっているんです。そういう曲はすごく良かったりします。



Q16.



デビュー作『Milimal Moraia』のリリースからおよそ17年が経ちました。あらためてご自身のキャリアを最初期を振り返ってみて、2006年と2023年、ご自身の制作に関して、あるいは、ミュージシャンとしての心境の変化はありましたか?

 

2006年当時は右も左も分からずにガムシャラに暗闇に突っ込んでる感覚でしたが、最近は一応道が分かりつつ、懐中電灯を持って歩いているくらいの感覚でしょうか。それでも少し先しか見えないです。相変わらず暗闇の中を歩いている感じはある。今後はこれまでのアンビエントのベースを活かしつつ、コラボレーションなどを通じて、音楽の幅を広げたいという心境になりました。



最後の質問です。




Q17.



まだイギリスツアーから帰国したばかりですが、今後の新作のリリース、公演の予定などがありましたら、可能な限りで構いませんので教えて下さい。

 

5/12からサウンドトラックを手掛けた映画『ライフ・イズ・クライミング!』が公開されています。CDも発売されました。また今年の11月にはポーランドでフェスに出演しますので、そのタイミングで小規模なツアーが出来ればと思っております。


インタビューにお答えいただき、本当にありがとうございました。



 



ノッティンガムのポスト・パンクデュオ、Sleaford Modsは、ラフ・トレードから発売された最新作『UK Grim』の熱狂が醒めやらぬうちに、米国のカルフォルニアのインディオで開催されるコーチェラ・フェスティバルに出演、多くのオーディエンスをわかせました。続いて、スリーフォード・モッズはシアトルのラジオ局/KEXPのスタジオに登場し、35分間のライブパフォーマンスを行っています。

 

デュオは最新作『UK Grim』のタイトル曲を筆頭に、ライブセットではお馴染みと言える「Jobseeker」に至るまで、魅力的なライブを披露しています。ライブパフォーマンスの模様は下記よりご視聴下さい。

 

 

Setlist:

 

1.UK GRIM
2.On The Ground
3.Pit 2 Pit
4.Force 10 From Navarone
5.Tilldipper
6.Mork n Mindy
7.DIwhy
8.Tory Kong
9.Jobseeker
10.Tweet Tweet Tweet