アルバムの冒頭で以上のようなことはすべて表されている。「Thinking About You」はちょっと斜に構えたようなラブソングだが、驚くほどシンプルで爽快な感覚に彩られている。リードボーカルを強調するグロッケンシュピールも、それと交差的に導入されるギターラインの音色もすべてがシンプルで裏がない。考えようによっては自分の感情をそのままボーカルに乗せている。それらのメロディーを背後から支えるドラムのプレイも無駄な装飾はなく、着飾らないアーティストが表され、それがちょっと高い場所にいる憧れの自分を慈しみの眼差しで見つめるのだ。曲は日曜の午後の微睡みのように流れていくが、大きなダイナミックスを設けることなく、ローファイやチルウェイブを含めた痛快なインディーポップサウンドが爽やかに駆け抜ける。
続く「But Not Kiss」は同じ系統にあるラブ・ソングに思えるが、アーティストのインディーロッカーとしての性質が垣間見える。
「Feeling Good Today」では、オートチューンをもとにしたモダンなポップソングを聴くことが出来る。オートチューンによりボーカルの単旋律は分裂し、心地よくも奇妙なハーモニーを生み出す。背後のアコースティックギターは、ジャズ的な文脈を元にアップストロークを中心とするプレイが繰り広げられる。アルバムでの一貫したトロピカルな感覚とくつろぎは、この曲でも続き、ときどき、ピアノのフレーズを交えながら、スタイリッシュなポップソングへと昇華している。曲の終盤にかけてのピアノの演奏はアーバン・ジャズ的な雰囲気を生み出す。
アルバムの最後までリラックスした感覚が続く。アメリカーナを通過したバロック・ポップ「Undredded at The Symphony」、Laufeyのソングライティングの同系統にあるジャズ・ポップの影響を反映したクローズ「Tttttime」で終了する。終盤では、少しマンネリに陥りがちなのが難点であるものの、少なくともモダンなポップネスの形骸化に一石を投ずるようなアルバムである。
LAを拠点に活動するインディーポップ・アーティスト、Vicky Farewell(ヴィッキー・フェアウェル)がニューアルバム『Give a Damn』を発表した。2021年のデビュー作『Sweet Company』に続くこのアルバムは、マック・デマルコのレーベル、Mac's Record Labelから5月10日にリリースされる。リード・シングルの「Tern Me On」は、付属のビデオと共に本日リリースされた。
「より深い自分に出会うために、脆弱性を受け入れる必要があった」と、ファーウェルはロサンゼルスのアパートで自作プロデュースのアルバムについて語った。「これらの曲は本当の場所から生まれた」新曲について、彼女はこう付け加えた。"Tern Me On "の青写真がどういうわけか生まれるまで、私は即興で演奏したり、無意味にしゃべったりする自分のテイクを録音したの」
『What A Devastating Turn Of Events』の大部分と同様、この曲はチヌリリの人生で最も個人的で印象的な瞬間からインスピレーションを得ており、彼女の家族の死の実話を再構築している。アルバムのリード・シングルである「Never Need Me」や「The Hills」とは趣を異にしている。
『What A Devastating Turn Of Events』は5月3日にパーロフォン/アトラス・アーティスツよりリリースされる。