以後、フューチャー・アイランズは、2015年の一年間に1000回に及ぶ過酷なツアーをこなし、弛まぬ成長を続けてきた。2011年頃から、バンドはポピュラー性を前面に出すようになり、ソングライティングのメロディーを洗練させ、アンサンブルに磨きをかけてきた。グラミー賞プロデューサー、ジョン・コングルトンとLAで録音された『People Who Aren't There Anymore』は、サミュエル・T・ヘリングの年を重ねたがゆえのボーカルの円熟味、ウィリアム・カシオンの骨太なベース、そして全体に華やかさをもたらすゲリット・ウェルマーズのシンセサイザー、ソングライティングに携わった三者三様の個性が良質な科学反応を起こしている。
近年、ラフ・トレードが年間ベストに選出したNation Of Language(ネイション・オブ・ランゲージ)を筆頭に、ヒューマン・リーグやジャパンといったニューロマンティックやニューウェイブに属するバンドが、ニューヨークを中心に盛り上がっている。この動向はロンドンを中心に隆盛を極めるポストパンクとは別のウェイブを巻き起こしそうな予感もある。
タイトルにこめられた「最早そこにいなくなった人々」という伏線的なテーマは、「King Of Sweden」におけるベースとシンセを中心とするアプローチに乗り移り、サミュエル・ヘリングの渋いボーカルが加わり、フューチャー・アイランズの代名詞となる緻密なサウンドにより構築されていく。デペッシュ・モードに比するロック的な響きも求められなくもないが、ボーカルの合間に導入される癖になるレトロなシンセが、曲の持つエネルギーを増幅させる。これらの見事なアンサンブルに関して、なんの注文をつけることができよう。明らかに三分半頃からのヘリングのボーカルには、ロックに引けを取らないエナジーを感じ取ることができる。2010年頃に飽和したかに思えたシンセ・ポップが今も健在であることを、彼は身をもって示している。
アルバムの中盤では、ライブサウンドを意識した楽曲が収録され、オーディエンスをどのように熱狂の中に取り込むかという狙いも読み解くことができる。「Say Goodbye」、「Give Me The Ghost Back」はフューチャー・アイランズのアグレッシヴな側面が立ち現れ、前者はソフト・ロックを基調としたベースラインの力強さに、そして後者は、ニューロマンティックの懐古的なボーカル/シンセの中に宿る。これらのサウンドは、アルバムの冒頭の収録曲と同じように、2つの側面ーーサイレンスとラウドーーという対極にあるはずの音楽が合致することで生み出される。
その後、微細な感情の揺れ動きを巧みに表現するかのように、2つの対比的なトラックが続く。「Corner Of My Eye」は暗喩的に含まれる悲哀をどのようにダイナミックな音楽表現として昇華するのかという思いが読み取れる。昨年のGolden Dregsほど明確なアプローチではないものの、人生の中における目の端の涙を拭うかのように、その後の希望に向けて歩き出す過程を親しみやすいシンセ・ポップとして刻印している。実際、サビの部分では、彼らのレコーディングの経験の側面が立ち現れる瞬間があり、ロサンゼルスの海岸のようなロマンティックで開けた雰囲気、あるいはそのイメージが脳裏に呼び覚まされる。背後に過ぎ去った悲しみに別離を告げ、未知の新しい人生に向かい、少しずつ歩み出すかのような清々しさを味わえる。続く「The Thief」は対象的に、YMOのようなサウンドを基調とするスタイリッシュでレトロなポップスが展開される。シンセのフレーズにアジア音楽のスケールが取り入れられることもあり、ボーカルのヘリングの声には、ちょっとユニークでおどけたような感覚がうっすら滲み出ている。
『For Your Consideration』は、2020年の『I'm Your Empress Of』、2022年の『Save Me EP』に続く作品。ローレリーは、ニック・レオン、ビルボード、ヴァレー・ガールズ、セシル・ビリーヴ、ウムルーを含むソングライターやプロデューサーと仕事をしながら、ロサンゼルス、マイアミ、モントリオールでアルバムを書いた。
ある映画監督に恋をしていたとき、彼がアカデミー賞のためのキャンペーン "For Your Consideration "を発表していたの。
彼は私を丘の上に連れて行き、感情的になれないと言った。私はその日スタジオに入り、グラムとハリウッドを反映した『For Your Consideration』という曲を書いたの。それがアルバムの入り口となり、より広いテーマを探求する機会を与えてくれた。
「オープニング・サンプルの "There is a message for you "は、モントリオールのタクシーにあるクレジットカードの機械が発する不思議なメッセージでもあるんだ」
付属のミュージックビデオは、マヤ・デレンの1943年の映画『Meshes of the Afternoon』にインスパイアされた。「このコンセプトは、私がソロ・プロジェクトを持つに至った旅の瞑想から生まれた。自分自身を探し求め、ある真のエッセンスを求めて努力し、それが自然に起こるものであり、強制する必要のないものであることに気づいた旅だった」と彼女は付け加える。
「"Stay”は一気にガーっと出てきた曲なんだ。ウッドストックのヤードセールで買った12弦アコースティックから取り出した。そのコードを弾くのを何年も待っていたような感じだ。当時、私はKinksのレコード『Lola
Versus Powerman』のアコースティックギターとドラムの音に夢中になっていた」
チェルシー・ウルフは、アルバム『She Reaches Out to She Reaches Out to She』の最新シングル「Everything Turns Blue」をリリースした。ウルフによれば、「有害なものの一部であった長い時代を経て、再び自分自身を見つけること」をテーマにしている。10年後、20年後、30年後、誰かと別れることになる。
『Underdressed at the Symphony』は、ウェブスターの2021年の最新アルバム『I Know I'm Funny haha』と2021年のEP『Car Therapy Sessions EP』に続く作品。アルバムには、ウェブスターが2023年に発表した2曲、「But Not Kiss」と「Lifetime」が収録されている。
「Kicking Up Daisies」はシンセ・ピアノを基調にしたインディーロックサンドに挑戦した一曲。Yumi Zoumaの代名詞の軽やかなインディーポップサウンドではあるものの、その中には奇妙な熱狂性とファイティングスピリットが感じられる。これらはバンドの内省的なオルトポップ・サウンドに、ロック的なウェイブを付加している。もうひとつ、アップビートな曲調と、それとは正反対のサイレンスを生かした曲調がたえず入れ替わりながら、メリハリの効いた流動的なバンドサウンドが繰り広げられる。前の2曲に比べると、シンプソンのボーカルにはかすかなペーソスが漂い、時に、それがバンドサウンドから奇妙な質感を持って立ち上がる瞬間がある。しかし、曲そのものがヘヴィネスに傾いたかと思われた瞬間、バンドはすぐさまそこから踵を返し、やはりバンドらしい軽妙で親しみやすい甘口のインディーポップサウンドへ立ち返る。どのような音楽性の種類を選ぼうとも、Yumi Zoumaの中核となるサウンドに変更はないのだ。
ナッシュビルのシンガーソングライター、Katy Kirby(ケイティ・カービー)が、2ndアルバム『ブルー・ラズベリー』からの最新シングル「Party of the Century」をリリースした。この曲は、前作「Cubic Zirconia」と「Table」に続くシングルとなる。以下よりチェックしてみよう。
カービーは声明で「"Party of the Century "は友人のクリスチャン・リー・ハトソンとFaceTimeで書いた」と説明している。「この曲は、スローダンスができるような、ちょっと甘いラブソングになった。この曲は、物理学や反出生主義、気候変動、そして友人をどれだけ愛しているかについても歌っているんだ。この曲をレコーディングした時、バンドに対して、エド・シーランの曲のようなサウンドにするように頼んだんだけど、彼らはそれを拒否したんだ」
ボルチモアのシンセ・ポップバンド、Future Islands(フューチャー・アイランズ)は、アルバム『People Who Aren't There Anymore』のニューシングル「The Fight」を発表した。
この曲は、これまでのシングル「The Tower」、「Peach」、「King of Sweden」、「Deep in the Night」に続く作品です。以下よりチェックしてみよう。
ニューアルバム『People Who Aren't There Anymore』は4ADより1月26日にリリースされる。
「The Fight」
Future Islandsは、サミュエル・T・ヘリング、ウィリアム・キャッションにより2006年に結成された。ゲリット・ウェルマーズ2008年にイギリスのレーベル、Upset The Rhythmからデビューアルバム『Wave Like Home』をリリースした。
2010年には2作目のアルバム『In Evening Air』、2011年には3作目『On the Water』をThrill Jockeyからリリースする。2014年には4ADに移籍し、4作目のアルバム『Singles』をリリース。リードシングル「Seasons (Waiting on You)」はピッチフォークとNMEから2014年のベストソングに選ばれた。
2014年3月に放送されたデヴィッド・レターマンのレイトショーでのパフォーマンスは、同番組のYouTubeで最も視聴された動画となった。2017年に5作目のアルバム『The Far Field』をリリース。
Arlo Parks(アーロ・パークス)が2ndアルバム『My Soft Machine』のデラックス・エディションを発表した。12月8日にTransgressiveからリリースされるこのアルバムには、ジャイ・ポールの「Jasmine」のスタジオ・カヴァーを含む6曲の新録が収録されている。下記よりチェックしてほしい。