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©Alexis Aquino

オーストラリア出身のシンガー・ソングライター、Phoebe Go(フィービー・ゴー: 本名フィービー・ルー)は、近日発売予定のデビューアルバムを発表した。サイモン・ラム(Charli XCX、Cub Sport)との共同プロデュースによる『Marmalade』は、AWALから5月17日にリリースされる。最近のシングル「7 Up」と 「Something You Were Trying」を収録している。


「曲は傷つきやすく、同時に勇敢でありたかった。人生にはいろいろなことがあった。それは一瞬の出来事なんだ。このアルバムを作りたいという思いは、それに対する恐れよりも常に大きかったんだと思う」


彼女はさらに、「これらの曲に取り組むことは、はけ口であり、私が前進するのを助けてくれた」と付け加えた。


新曲「Leave 」は、ルーの典型的な渋いテクスチャーを引き出しており、サビの冒頭の質問にユーモアがある。"私を置いてくつもり?"と彼女は歌い、葦のようなギターのレイヤーの中でクールで冷静なヴォイスが続く。


「"Leave "は、ある意味、自己を麻痺させることなの」とシンガーソングライターはこの曲について語った。

 

「この曲は、恐怖のために心を閉ざし、それを実行することについて歌ってる。その感覚、つまり、絶望と解離を表現したかった。私の人生の中で、ある種の麻痺を感じてた時期について歌っているの。ちょっと辛辣で、両刃の刃のような曲なんだけど、ある意味この曲は謝罪の曲でもある」

 

 

 「Leave」



Phoebe Go『Marmalade』




Label: AWAL Recordings

Release: 2024/ 05/17


Pre-save/ Pre-add:


https://phoebego.ffm.to/marmalade


 

©Alexa Visciu


シカゴのインディーロック・プロジェクト、Bnnyは、Fire Talk Recordsから4月5日にリリースされるニューアルバム『One Million Love Songs』から、2つの新曲をストリーミング配信した。

 

Bnnyはジェシカ・ヴィスキウスを中心にするバンドで、双子の姉妹、アレクサ・ヴィスキウスをメンバーに擁する、シカゴの魅力的なインディーロック・アウトフィットだ。同レーベルから、今年はじめに、PACKSの「Melt The Honey」がリリースされたが、それに続いて楽しみなアルバムである。


Bnnyの前作のデビュー・アルバムは、Pitchforkにもレビューで取り上げられた。このアルバムは、ヴィスキウスのパートナーでバンドメイトでもあった愛する人をオーバードーズにより失ったことに対する喪失感がテーマに縁取られていた。続くアルバム『One Million Love Songs』もその延長線上にあり、ラブソングを中心として構成され、ラフなインディーロックの形で紡がれる。ジェシカ・ヴィスキウスは音楽制作や歌詞を介し、愛とは何であるのかを探求する。

 

今回配信された「Something Blue」と「Changes」は、「Crazy, Baby」「Good Stuff」に続く先行シングル。Something Blue」のミュージックビデオと「Changes」の試聴は以下より。

 

 

「Something Blue」



「Changes」



発売後に掲載されたWNFはこちらからお読み下さい。 

©Michael Schmelling

 

ヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)は、4月5日にリリースされるアルバム『Only God Was Above Us』の最新シングル「Mary Boone」を公開した。先行配信された「Capricorn」、「Gen X Cops」、「Classical」に続く。

 

「Mary Boone」は、エズラ・ケーニグが作曲し、アリエル・レヒトシャイドとケーニグがプロデュースした。Soul II Soulの「Back to Life (However Do You Want Me)」のドラム・ループをサンプリングしている。以下からチェックしてほしい。


この新曲に加え、ヴァンパイアウィークエンドは、11月29日にダブリンの3Arenaを皮切りに、イギリスとヨーロッパで9日間の公演を発表した。



「Mary Boone」

 

 

Hovvdyは4月26日に発売予定のセルフタイトルの最新シングル「Make Ya Proud」をリリースした。

 

「この曲は、僕の祖父であるピートおじいちゃんのために書いた数曲のうちの1曲だ。彼は去年の夏に亡くなったんだけど、いろんな意味で僕の家族のバックボーンだった」とデュオのチャーリー・マーティンは声明で説明している。

 

「『Make Ya Proud』を書いたのは、ミシシッピにいた頃だった。ピートが入院している病院を見舞いに海岸に行く合間に書いてみたんだ。表現するのは本当に難しいんだけど、この曲は彼を讃えるものであり、彼がいかに私にインスピレーションを与えてくれたかを歌っている」

 

 アルバムからは先行シングルとして「Forever」、「Jean」、「Bubba」、「Portrait」、「Meant」が配信されている。

 

テキサスのデュオ、Hovvdyは、ハートフルなロックソングを書くことで知られる。それほどセンセーショナルな音楽性ではないものの、彼らのソングライティングには普遍的な魅力が込められている。

 


アンドリュー・ベイリー、コリン・コールフィールド、ベン・ニューマン、ザッカリー・コール・スミスの4人組、DIIVが、4thアルバム『Frog in Boiling Water』の最新プレビューとして「Everyone Out」を公開した。


以前公開された、SNLのフェイクビデオでフレッド・ダーストとコラボしたアルバム・プレビュー「Brown Paper Bag」と「Soul-Net」に続き、DIIVは2019年の『Deceiver』に続くアルバムの新曲「Everyone Out」を公開した。


バンドはこの曲について、「アコースティック楽器、重ねたテープループ、シンセサイザーといった、よりソフトで質感のあるサウンドパレットを利用している」と語っている。


「この曲は感情的で親密で、希望的ともシニカルとも解釈できるし、若さゆえの純朴さから苦い幻滅への素早い移行を中心とした人物研究なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。この希望の喪失は、社会から完全に離脱したいという願望に現れているのかもしれないし、社会の崩壊を加速させたいという願望に現れているのかもしれない。あるいはその両方かもしれないし、そのどちらでもないかもしれない」



「Everyone Out」


Blondeshell(ブロンドシェル)が、Bully(バリー)と組んで新曲「Docket」をリリースした。双方ともアメリカの現行のロックシーンをリードするクールな女性シンガー。今回のコラボシングルには2人のフレンドシップが感じられる。男性同士にも友情あり、そして女性同士にも友情はつきもの。


Blondshell(ティーテルバウムのロック・プロジェクト)、セルフ・タイトル・デビューに浸透していたアルト・ロックのヴァイブスを倍増させた "Docket "は、Bully(アリシア・ボグナンノのロック・プロジェクト)とアーティストが繋がり、人間関係に関してあまり健康的でない振る舞いをする人物の視点を提示しながら、自問自答の物語を紡ぐ。


「ティテルバウムは、ドライブするパワーコードと飽和したドラムにのせて歌う。彼はもっと恋をしている人と一緒にいるべき/タダで食べている人じゃない/私の最悪の悪夢は私/少なくとも彼らは正直!」


「私はこの曲で別の人のためのスペースを持っていたし、私はそこにBullyの声を聞き続けた 」とティーテルバウムは声明で述べている。


「私は彼女の大ファンで、去年の夏のツアー中、彼女のアルバムを聴くのを止められなかった。正直なところ、スタジオで彼女の歌声を聴いたとき、ただただ衝撃を受け、畏敬の念を抱くばかりだった。彼女がわたしと一緒に曲を作ることにイエスと言ってくれて本当に嬉しい」


「私はサブリナの大ファンで、彼女は信じられないほど素晴らしいと思っています。インディーズの世界で多くのミュージシャンが互いをサポートし、賞賛し合っているのを見ると、本当に嬉しくなる。だから、ありがとうサブリナ。そして、私が大ファンである彼女の愛犬にも特別なエールを送りたいよ」


「Docket」はBlondshellの2024年最初の新作となる。この曲には新しいプロジェクトに関する発表はないが、アーティストはA24のトリビュートアルバム『Stop Making Sense』に参加する。ブリーは最近、2023年の作品『Lucky for You』に続く破壊的な「Atom Bomb」を発表した。


Blondshellは、現時点では2024年のツアーを計画していないもの、ロラパルーザ、ボストン・コーリング、ガバナーズ・ボール、グラストンベリー、シェイキー・ニーズなど、今後数ヶ月の間に数多くのフェスティバルに出演する予定。一方、Bulyは現在グループ・ラブとのツアーを終えたばかりだ。

 


「Docket」

 

©︎Alexa Viscius

アメリカン・フットボールのフロントマン/ヴォーカリスト、マイク・キンセラ(Mike Kinsella)は、別名プロジェクトのOwenのアルバム『The Falls of Sioux』から2曲を同時に発表した。「Virtue Misspent」と「Hit and Run」はリード・シングル「Baucoup」に続く。


「"Virtue Misspent''はずっと好きだったバンド、New Orderへのオマージュ。ギターパートはいつもピーター・フックのベースラインのように聴こえたから、スタジオではシンセストリングスを加えたり、エレキ・ギターをそのままボードにつないだりして、それを取り入れた。このビデオは、人生を生きてきて、その過程でたくさん失敗してきた僕へのオマージュなんだ」


監督のバッセとムーアはこうコメントしている。「この曲を聴くと、自分の過去と、その後に続くジェットコースターのようなエモーションを最後の最後で垣間見るような気がする。誰もが経験する普遍的なノスタルジーを味わうことができるはずだよ。その感情を視覚化するために、私たちは自分たちの青春時代の冒険を再現することを目指してみたんだ」


「中西部で経験した懐かしい思い出と完璧な日々の融合……。少年時代の驚き、少しの反抗、そして、本物の友情……。これらのイリュージョンを捉えるため、私たちは基本的に少年たちを遊ばせた。私たちはこのようなシナリオを作り、そして、彼らに自由に楽しんでほしいと言った。幸いにも少年たちは優秀で、私たちは共鳴し、誠実さを感じられる作品に仕上がったと思う」


「Hit And Run」について、マイク・キンセラは次のように付け加えた。「自分のアルバムには、たいてい1曲は泣ける曲があるけれど、この曲がそうなんだ」

 

Owenによる新作アルバム「The Falls of Sioux(スーの滝)」は4月26日にPolyvinyl/Big Scary Monstersからリリースされる。

 


「Virtue Misspent」

 

 

 「Hit And Run」

 

 


ニューヨークのバンド、ビーン・ステラ(Been Stellar)が、6月14日にDirty Hitからリリースされるデビューアルバム『Scream from New York, NY』の最新シングル「All in One」を発表した。このシングルは、リードカット「Passing Judgment」に続くシングル。この曲のビデオは以下から。


「この曲とその歌詞は、いろいろな意味でアルバムの核心をついている。「この曲とその歌詞は、いろいろな意味でアルバムの核心をついている。この歌詞は、私たち全員が行っているありふれた日々の仕事を処理すること、それが私たちの人生をより大きな意味で理解することにどうつながるかをテーマにしている」


「ニューヨークのような凝縮された都市での生活の多くは、とても小さな箱の中で過ごすことになる。私たちはこのビデオで、その経験から来る狂気を描きたかった。EPで取り上げた独在論や実存的な不確かさというテーマは、この曲と結びついているように感じる。この曲は、私たちにとってクリエイティブな結論のようなもので、何年も取り組んできたような曲だ。レコーディングまでの最後の数週間で完成させたんだけど、その出来栄えはこれ以上ないくらい誇らしい」


「Passing Judgment」

 Sam Evian 『Plunge』

 

Label: Flying Cloud Recordings

Release: 2024/03/22



Review

 

サム・エヴィアン(Sam Evian)はニューヨークのシンガーソングライター。前作『Time To Melt』で好調なストリーミング回数を記録し、徐々に知名度を高めつつあるアーティスト。エヴィアンの音楽的な指針としては、サイケ、フォーク、ローファイ、R&Bなどをクロスオーバーし、コアなインディーロックへと昇華しようというもの。彼の制作現場には、アナログのテープレコーダーがあり、現在の主流のデジタル・サウンドとは異なる音の質感を追求している。このあたりはニューヨークというよりもロサンゼルスのシーンのサイケサウンドが絡んでいる。


サム・エヴィアンは『Plunge』でもビンテージなテイストのロックを追求している。オープニングを飾る「Wild Days」は、70年代のアメリカン・ロックや、エルヴィス・コステロの名作『My Aim Is True』のようなジャングルポップ、そしてアナログのテープレコーダーを用いたサイケ/ローファイのサウンドを吸収し、個性的なサウンドが組みあげられている。ノスタルジックなロックサウンドという点では、Real Estateに近いニュアンスも求められるが、エヴィアンの場合はスタンダードなロックというより、レコードコレクターらしい音楽が主な特徴となっている。

 

70年代のUSロックに依拠したサウンドは、ジャンルを問わず、現代の米国の多くのミュージシャンやバンドがその音楽が持つ普遍的な価値をあらためて再訪しようとしている。ご多分に漏れず、サム・エヴィアンの新作のオープナーも、いかにもヴィンテージなものを知り尽くしている、というアーティストの自負が込められている。これは決してひけらかすような感じで生み出されるのではなく、純粋に好きな音楽を追求しているという感じに好感をおぼえる。イントロのドラムのロールが立ち上がると、ソロアーティストとは思えない緻密なバンドサウンドが展開され、そこにウェストコーストサウンドの首領であるDoobie BrothersのようなR&Bを反映させたロックサウンド、そしてエヴィアンのボーカルが入る。トラックメイクの試行錯誤を何度も重ねながら、どこにシンコペーションを置くのか、グルーヴの重点を据えるのか。いくつもの試作が重ねられ、かなり緻密なサウンドが生み出されている。このオープナーには確かに、いかなるレコードコレクターをも唸らせる、コアなロックサウンドが敷き詰められている。

 

 

「Jacket」以降もエヴィアンの志す音楽は普遍的である。同じく、Doobie Brothers、Byrds、CSN&Yを彷彿とさせる音楽で今や古びかけたと思われたものを、きわめて現代的な表現として2024年の時間軸に鮮明に浮かび上がらせる手腕については脱帽である。このサウンドは70年代のアナログレコードの旨味を知るリスナーにとどまらず、それらのサウンドを初体験する若いリスナーにも新しいサウンドとして親しまれるだろう。 その中にチェンバーポップやバロックポップ、つまりビートルズの中期の音楽性、あるいは、それ以降の米国の西海岸のフォロワーのバンドの系譜にあるサウンドを組み上げてゆく。ロックソングの中に遊びのような箇所を設け、マッカートニーのようなおどけたコーラスやハネ感のあるリズムで曲そのものをリードしていく。

 

サム・エヴィアンの制作現場にあるアナログレコーダーは、ロックソングのノイズという箇所に反映される。「Rolling In」も、70年代のUSロックに依拠しているが、その中にレコードの視聴で発生するヒスノイズをレコーダーで発生させ、擬似的な70年代のレコードの音を再現している。ここには良質なロックソングメイカーにとどまらず、プロデューサー的なエヴィアンの才覚がキラリと光る。そして彼はまるで70年代にタイムスリップしたような感じで、それらの古い時代の雰囲気に浸りきり、ムードたっぷりにニール・ヤングの系譜にあるフォーク・ロックを歌う。これには『Back To The Future』のエメット・ブラウン博士も驚かずにはいられない。


もし、先週末のエイドリアン・レンカーの『Bright Future』が女性的な性質やロマンチシズムを持つフォーク・ミュージックであると仮定するなら、エヴィアンの場合は、ジャック・アントノフ率いるブリーチャーズと同じように、きわめて男性的なロマンチズムが示されている。それはおそらくアーティストの興味の一貫として示されるスポーツカーやスーパーカー、ヴィンテージのアメリカン・カジュアルのようなファッション、あるいはジョージ・ルーカス監督の『アメリカン・グラフィティ』に登場するような郊外にあるドライブスルー、そういったアメリカの代名詞的なハイカルチャーが2020年代の視点から回顧され、それらの良き時代への親しみが示唆される。それは例えば、バイカーやカーマニアのカスタムメイド、それに類するファッションというような嗜好性と密に結び付けられる。女性から見ると不可解なものであるかもしれないが、それは男性にとってはこの上なく魅了的なものに映り、そしてそれはある意味では人生において欠かさざるものとなる。エヴィアンは、そういった均一化され中性化した文化観ではなく、男性的な趣向性ーー個別の価値観ーーを華麗なまでに探求してみせるのである。

 

本作の序盤では一貫してUSのテイストが漂うが、彼のビンテージにまつわる興味は続く「Why Does It Takes So Long」において、UKのモッズテイストに代わる。モッズとはThe Whoやポール・ウェラーに象徴づけられるモノトーンのファッションのことをいい、例えば、セミカジュアルのスーツや丈の短いスラックス等に代表される。特に、The Whoの最初期のサウンドはビートルズとは異なる音楽的な意義をUKロックシーンにもたらしたのだったが、まるでエヴィアンはピート・タウンゼントが奏でるような快活なイントロのリフを鳴らし、それを起点としてウェスト・コーストロックを展開させる。ここには、UKとUSの音楽性の融合という、今までありそうでなかったスタイルが存在する。それらはやはりアナログレコードマニアとしての気風が反映され、シンコペーション、アナログな質感を持つドラム、クランチなギターと考えられるかぎりにおいて最もビンテージなロックサウンドが構築される。そして不思議なことに、引用的なサウンドではありながら、エヴィアンのロックサウンドには間違いなく新しい何かが内在する。

 

そして、アルバムの序盤では、アメリカ的な観念として提示されたものが、中盤を境に国境を越えて、明らかにブギーを主体としたローリング・ストーンズのイギリスの60年代の古典的なロックサウンドへと肉薄する。「Freakz」はキース・リチャーズの弾くブルースを主体としたブギーのリフにより、耳の肥えたリスナーやギターフリークを唸らせる。エヴィアンのギターは、リチャーズになりきったかのような渋さと細かいニュアンスを併せ持つ。しかし、それらの根底にあるUKロックサウンドは、現代のロサンゼルス等のローファイシーン等に根ざしたサイケデリアにより彩られたとたん、現代的な音の質感を持つようになる。結局、現代的とか回顧的といった指針は、どこまでそれを突き詰めるのかが重要で、その深さにより、実際の印象も変化してくる。エヴィアンのコアなサイケロックサウンドは、ファンクとロックを融合させた70年代のファンカデリックのようなR&B寄りの華やかなサウンドとして組み上げられる。ギタリストとしてのこだわりは、Pファンク風のグルーヴィーなカッティングギターに見いだせる。

 

同じように70’sのテイストを持つロックサウンドを挟んだ後、「Runaway」ではエヴィアンのロックとは別のフォーク音楽に対する親しみがイントロに反映されている。それはビートルズのアート・ロックに根ざした60年代後半のサウンドへと変化していく。エヴィアンのボーカルは稀にマッカートニーのファニーなボーカルを思わせる。それを、ビクトロンのような音色を持つアナログシンセサイザーの音色、そして、リッケンバッカーに近い重厚さと繊細さを持つギターサウンド、同音反復を特徴とするビートルズのバロック・ポップの音階進行やビートの形をしたたかに踏襲し、それらをしなやかなロックソングへと昇華させる。コーラスワークに関しても、やはりビートルズの初期から中期にかけてのニュアンスを踏まえ、ソロプロジェクトでありながら、録音のフィールドにポールの他にレノンのスピリットを召喚させるのである。これらはたしかに模倣的なサウンドとも言えなくもないが、少なくとも嫌味な感じはない。それは先にも述べたように、エヴィアンがこれらの音楽を心から愛しているからなのだろうか。

 

ウェストコーストロック、サンフランシスコのサイケ、さらにストーンズやビートルズの時代の古典的なUKロックという流れでアーティストの音楽が示されてきたが、アルバムの終盤の2曲はどちらかと言えば、エルヴィス・コステロのようなジャングル・ポップやパワー・ポップの原点に近づいていく、そのコーラスの中には、Cheap Trickのニールセンとサンダーのボーカルのやり取り、または、武道館公演の時代のチープ・トリックの音楽性が反映されているように見受けられる。厳密に言えば、アイドル的なロックではなくて、どちらかといえば、パンキッシュな嗜好性を持つコステロの骨太なサウンドの形を介して昇華される。果たして、これらの音楽にマニア性以上のものが存在するのか? それは実際のリスニングで確認していただきたいが、少なくともロックファンを唸らせる何かが一つや二つくらいは潜んでいるような気がする。

 

アルバムのオープナー「Wild Days」とクローズの「Stay」はジャングルポップや良質なインディーフォークなので聴き逃がせない。

 


76/100

 

 

 

Best Track- 「Stay」

 


フィラデルフィアを拠点に活動するKaho Matsui(松井夏帆)がニューシングル「i don't have to tell the rest」をストリーミングでリリースした。著名なジャズ演奏家を親に持つ松井は「エモ・アンビエント」と呼ばれる新しい作風でインディーズシーンに新風を呼び込む。


アーティストは今年始めにフルレングス「i want it more than i want to be well」を発表したばかり。


松井夏帆は昨年までポートランドで活動をしていたが、夏に引っ越そうと話していた。また音楽的な影響としては、オースティンを拠点とするアーティスト、More Eazeこと、Mari Maurice Rubioがいる。松井の作品にも名を連ねているが、マリに関してアーティストは次のように述べている。


「私は何年も[マリ]を尊敬してきたので、彼女が『ああ、あなたの音楽を聴いた、本当に素晴らしい』という感じだったのは少し意外だった」と松井。「私にとっては、まさかという感じだった。そして、彼女は「私たちは協力すべきだ」という感じだった」


More Eazeの音楽は、感情的な表現を強調するロック音楽のスタイルに因んで、「エモ・アンビエント」として規定されている。あまり聞きなれない用語だが、どうやら松井もこの用語に親近感を覚えているらしい。松井は、音楽的なアプローチに関して、エモを直接参照するのではなく、アイデアの提示方法に革新性をもたらそうとしている。


音楽的なプロセスには明らかにClairoのようなベッドルームポップの影響が感じられるが、一方、スノビズムやナードであることをまったく恐れていない。ギター演奏は、アメリカン・フットボールのような中西部のエモバンドによって開拓されたスピンドリースタイルの影響を受けているという。また、シカゴのジェフ・パーカーに近い音の独特な繊細なニュアンスを生み出す。


松井の音楽にはジャズ、アンビエントやエモに加え、ローファイ的な音のニュアンスが付加される。もう一つアーティストは、EDMからの影響も挙げている。クレア・ラウジーのポスト世代として注目しておきたい。


 

©︎Caylin Ofsanko

ニューヨークを拠点に活動するシンガーソングライター兼プロデューサーのスチュワート・ブロノーのプロジェクト、Lionlimbが新作アルバム『Limbo』を発表した。2021年の『Spiral Groove』に続くこの作品は、5月24日にBayonet Recordsからリリースされる。本日の発表では、リード・シングル「Hurricane」がリリースされた。アルバムのジャケットとトラックリストは以下からご覧ください。


「Hurricane』は、人間であることの不安や居心地の悪さから逃避し、フロー状態に入れるような感覚を探すことをテーマにしている。「創造性は助けになるし、もっと有害な方法もある。この曲は、そういったものに別れを告げることを歌っているんだけど、私はいつも次のものを探しているような気がするんだ。


BronaughはLimboの作曲、プロデュース、ミキシングを手がけ、Robin Eatonがレコーディング、Joshua Jaegerが生ドラム、Angel Olsenがヴォーカルを担当した。「音楽に取り組んでいる時は、自分の世界を作ろうとしているような感じなんだ。「どこかに存在したいという感覚なんだ。何かを表現して、自分の頭や体から抜け出そうとしているんだ」






Lionlimb 『Limbo』


Label: Bayonet

Release: 2024/05/24


Tracklist:


1. Sun

2. Hurricane

3. Underwater

4. Hiss

5. Dream Of You (feat. Angel Olsen)

6. Runaway

7. Two Kinds of Tears

8. Nowhere to Hide

9. Til It’s Gone

10. You Belong To Me

 


Olivia Rodrigoが2ndアルバム『GUTS』のデラックス・エディション『GUTS(spilled)』をリリースした。リリースに伴い、トラック「Obsessed」の新しいミュージックビデオが公開された。


今週初めにシカゴのステージで初めて発表された『GUTS (spilled)』には、新曲 「So American 」に加え、『GUTS』のヴァイナル盤のシークレット・トラック、「Obsessed」、「Girl I've Always Been」、「Scared of My Guitar」、「Strange」が収録されている。 アルバムのストリーミングは以下から。


「Obsessed」の新しいミュージックビデオでは「Miss Right Now」と書かれたたすきをかけたロドリゴが、元恋人のためのアワード・ショーで、現在交際している元恋人たちと対面する。以下のビデオをご覧ください。


他のロドリゴのニュースでは、彼女はまだ8月まで続く "GUTS World Tour "の真っ最中であり、その道中、彼女のリプロダクティブ・ライツ・イニシアチブである''Fund 4 Good''を支援している。次いで直近のツアーでは、コンドームとプランBを含む無料の避妊キットを配布している。



「Obsessed」

 

 

 

 Streaming:

 

 


ニューヨークのオルタナティヴロック/ローファイシーンで存在感を放つWild PinkがサプライズEP『Strawberry Eraser』をリリースした。

 

このEPには、バンドがファイア・トークと契約したことを記念し、最近のシングル「Air Drumming Fix You」のほか、「Unconscious Pilot」とインストゥルメンタル曲「Cielo Wheed」が収録されている。


ワイルド・ピンクの前作『ILYSM』は2022年にリリースされた。昨年、バンドのジョン・ロスは、ローラ・ウルフと組んで「Lilts」というコラボレーション・プロジェクトを立ち上げた。


 

©Richard Ramirez Jr.

ロサンゼルスのアート・ロックグループ、ウォーペイント(Warpaint)は、バンド結成20周年を記念した新作7″のB面に収録される新曲「Underneath」をリリースした。先にリリースされた「Common Blue」に続く新曲だ。試聴は以下から。


「これらの新曲で、私たちは人生のこの時期、そして私たちが長年にわたって共有してきたすべての経験と曲を結びました」とバンドは声明で述べています。「信じられないような旅で、美しい人々と楽しい時間を分かち合い、世界中を旅してきた。私たちの心は満たされています!」


 

©︎Sydney Tate


ブルックリンのオルタナティヴロックバンド、THICKがニュー・シングル「Father」をEpitaphからリリースした。シンガー/ベーシストのケイト・ブラックの父親の死をきっかけに生まれたこの曲は、シドニー・テイト・ブラッドフォードが監督したビデオとともに到着した。ストリーミングはこちら


"THICKは常にフラストレーションや怒りのカタルシスの捌け口だったが、『Father』は私が初めて悲しみや喪失感に触れた曲だ。「この曲は、父を亡くして悲しみに暮れる私の旅のスナップショットであり、父に質問したくても、そこに父がいないことを思い出すたびに驚いていた時期のものだ。


「とても個人的で傷つきやすいものを共有するのは怖いことで、ニッキーにこの曲を送った最初のボイスノートを録音するのがやっとだった。「ライブで演奏するのは大変で、自分の感情に対して全身が締め付けられる。でも、みんなが自分の経験を共有してくれたり、この曲に共感してくれたりするのは、やりがいがある」


「悲しみの体験というのはとても個人的なものだから、"Father "のミュージックビデオでは、悲しみや喪失感が自分にとってどのようなものかを共有してもらい、動きや音楽、叫び声など、その人が最も心地よいと感じる方法で表現してもらった。私たちは参加者に圧倒され、彼らが自分自身を分かち合い、私たちと一緒に生を分かち合ってくれたことにとても感謝しています」

 


「Father」

 

©Zoe Prinds-Flash

 

ミネアポリスのインディーロックデュオ、Bad Bad Hatsがニューシングル「My Heart Your Heart」をリリースした。

 

この曲は、4月12日にドン・ジョヴァンニ・レコードからリリースされるセルフタイトルの収録曲。以下よりチェックしてみてください。


この曲のコーラスは、実はセカンド・アルバム『Lightning Round』に取り組んでいた2018年1月に書いたものなんだ」とケリー・アレクサンダーは声明で説明している。

 

「ずっと気に入っていたんだけど、曲は最終的な形を明らかにする準備ができるまでに、何年も新たなインスピレーションと試行錯誤を経る必要があることがあるんだ。でも、ありがたいことに、2021年の4月、私が取り組んでいたコード進行が、この曲に私を導いてくれました。私が死んだら、あなたに私のCDを持っていてほしい』と言ってもらえるなんて、最高の栄誉です」

 

 

「My Heart Your Heart」

 

©Erick Easterday


クラウド・ナッシングス(Cloud Nothings)が、近日発売予定のアルバム『ファイナル・サマー』からの最新シングル「I'd Go Along」をドロップした。先にリリースされた「Running Through the Campus」とタイトル曲に続くものだ。試聴は以下から。


ヴォーカル/ギタリストのディラン・バルディは、新曲について次のように語っている:「パンデミック中にアースというバンドに夢中になり、それが他のドゥーム・メタルに夢中になった。I'd Get Along "は、そのサウンドをCloud Nothings風にアレンジしたような曲で、ギターは大きく逞しいけれど、その上にとてもポップなヴォーカル・メロディが乗っていて、ドラムは弾んでいて、他の楽器を独特の方法で転がしているんだ」。


クラウド・ナッシングスの『Final Summer』は4月19日にピュア・ノイズ・レコーズからリリースされる。


「I'd Go Along」


ヴェリティ・スランゲンとモーガン・モリスによるデュオ、ノー・ウィンドウズ(No Windows)が新曲「Zodiac 13」を発表した。

 

デュオはエジンバラのミュージック・シーンから登場した新星、英国のメディアから注目を集める。親しみやすいメロディはもちろん、ひねりのあるオルタネイトなギターが抽象的なニュアンスを醸し出す。

 

軽々しいキャッチコピーは避けるべきだが、スコットランドのバンドではありながら、米国のレーベルからリリースを行うという点でも、No Windowsは「The Vaselinesのネクストジェネレーション」といっても過言ではない。

 

最初のリードシングルに続く「Zodiac 13」は、ミシシッピのレーベル、Fat Possumから5月3日にリリースされるNo Windowsの『Point Nemo EP』に収録される。以下よりチェックしてみよう。


「この曲は、冬が始まった時に感じた孤独感について書かれたもので、友情が終わり、変化していくこと、そして自分の近くにいる人々について常に疑念を抱くことに折り合いをつけることについて歌っている」バンドのヴェリティ・スランゲンは声明の中で「Zodiac 13」について語っている。「これはEPの中で一番古い曲で、当時はもっと自分の気持ちに自信がなかった」

 


「Zodiac 13」

 

©Merge Records

ジェイド・ヘアピンズ(Jade Hairpins)は、Fucked Upのメンバーの二人が立ち上げたサイドプロジェクトで、2018年にMerge Recordsから謎めいた12インチをリリースし、シーンに名乗りを上げた。以後、四人組は2020年にフルアルバム『Harmony Avenue』をリリースしている。バンド名から察するに、''Jade Tree''へのリスペクトが捧げられているものと思われる。

 

カナディアンハードコアの象徴的な存在であるFucked Upとは異なり、Jade Hairpinsはより親しみやすいインディーロックに焦点が置かれ、Promise Ringの音楽性に近い。エモのような響きもあれば、R.E.Mの90年代のカレッジ・ロックのような響きもある。メインプロジェクトとは異なるエヴァーグリーンな魅力がある。

 

現在、バンドはステップアップを図るべく、Sub Pop所属のハードコアバンド、最新アルバム(Reviewを読む)をリリースしたばかりのピステッド・ジーンズ(Pissed Jeans)との共演やマンチェスター・パンク・フェスティバルへの出演を含む、早春のUKツアーに向けて準備を進めているとのこと。

 

ジェイド・ヘアピンズのフロントマン、ジョナ・ファルコによれば、”変化し続ける頭脳、意志、身体、そして世界の理想と期待に応えて生きていくこと "をテーマにした、パンチの効いた、バギーでポップなポストパンク・アンセム『Unreliable』をその手始めにMergeからリリースする。


2023年の『Life in England』に続く『Unreliable』は、2020年のジェイド・ヘアピンズのデビューアルバム『Harmony Avenue』以来、ファルコとマイク・ハリエチュックが何を目指してきたかをうかがい知ることができる。不条理でスリリング、そして自虐的でアンセミックな「Unreliable」は、ジェイド・ヘアピンズの不遜な最高傑作。音楽ストリーミングならどこでも視聴可能。

 


「Unreliable」

 


イギリスのインディーロックバンド、ディヴォース(Divorce)は、2024年最初のシングル「Gears」で、絶賛されるキャサリン・マークス(ボーイジーニアス、フォールズ、ウルフ・アリス)のプロデュースにより、ギアをハイ・ギアに入れる。


この新曲は、彼ら最大のUKヘッドライン・ツアーを含む、一連のエキサイティングな発表と同時に到着した。彼らの落ち着きのない精神に忠実な「Gears」は、複数のアイデンティティと責任を両立させることの難しさを掘り下げている。

 

曲自体もこの二面性を反映しており、ソフトでメロディアスなサウンドスケープから始まり、よりジリジリと激しいものへと変化していく。

 

リード・シンガーでギタリストのフェリックス・マッケンジー=バローは、次のようにこの曲について説明している。

 

「『Gears』は、ロンドンに引っ越したばかりの頃、『ディヴォース』のバンド活動が増える中、とても長い時間働いていた時に書いた曲なんだ。仕事かライヴに明け暮れて、社会生活を維持することができなかったし、社会生活を維持するために必要な出費にもついていけなかった。この曲は、そんなフラストレーションから生まれたんだ」


「Gears」