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Runner  『Like Dying Star,We're Reaching Out』
 

 

 


Label: Run For Cover

Release: 2023/2/17

 




Review

 

 

LAをベースに活動するRunner(ノア・ワインマン)は、近年のローファイ、エレクトロニカ、オルト・フォークを融合させた米国の最新のミュージックシーンに呼応したサウンドをこのセカンドで作り出しています。


「私は、ただ、簡単に識別できないような、少しオリジナルなサウンドを作りたいだけなんだ」とワインマンは説明していますが、その言葉通りのユニークさを今作には見出すことができるはずです。学生時代にはトランペットとジャズを学んだというRunnerは、それらの下地に加えて、バンジョー、ピアノ、ギター、友人の声のサンプリングなど、楽器とサンプリングを絶妙に加工し、緩やかで穏やかな音響の世界を全12曲に内包させている。

 

バック・トラック自体は相当複雑に作り込まれていますが、背後のビートにナチュラルで優しさのある70年代のフォーク・ミュージックを彷彿とさせるボーカルがアルバムの世界を軽妙に牽引していきます。さらに実際に紡ぎ出される歌詞も、「アルバムに収録する曲を決めようとデモを整理していたら、言葉の限界というテーマに気がつき始めた。誰かに何かを伝えようとしたとき、うまく伝わらなかったり、結局、何も言えなかったりする。親しい人に自分を表現するのに苦労するのは、私の人生でもよくあるパターンなんだ」と語るように、表向きの言葉を越え未知なる感覚的な言葉の世界を探求しているようにも感じられます。この点が、曲を聴いている際に、ワインマンの言葉が耳に深く馴染み、浸透していくように思える理由なのかもしれません。

 

全編に一貫しているギターとバンジョーの軽妙な掛け合いは、Runnerの詩人のような性質を明確に感じさせるものとなっていますが、加えて、シンプルな演奏をサンプリングやコラージュの手法でループさせ、独特なグルーブ感をもたらしており、これは、ローファイミュージックの影響が楽曲に巧みに吸収されている事を表す。そして、Runnerのボーカルは朗らかでどことなく開放感に満ちあふれている。きっとこのアルバム全体を聴いていると、不思議と清々しい気分になるでしょう。


Alex Gを始め、近年、ローファイとフォークを融合させた複数の魅力的なアーティストが存在感を示しているが、Runnerもまたその筆頭格に挙げられるだろうと思われます。上記のアーティストに比べ、ノア・ワインマンの音楽は、とくに、ナチュラルなオルト・フォークの性格を強く反映させています。そのことは、「plexigrass」、「raincoat」 を始めとするゆったりした存在感のある曲に加えて、Superchunkのオルト・ロック性に近い盛り上がりを見せる「chess with friends」といった曲を中心に顕著な形で表れ出ているように思える。

 

Runnerの書き上げる楽曲は最近のインディーミュージックファンの耳に馴染みやすいものとなっていますが、プレスリリースでも説明されている通り、簡潔な音楽にはアーティストのささやかな慈しみが垣間見える。友人との関係性をはじめとするノア・ワインマンの普遍的な感覚が全体に飾らない形で表現されています。実際の人間関係と同様、一筋縄ではいかないような内容によって彩られているものの、どのような出来事もノア・ワインマンは愛着を持って、さらりと歌い上げる。この点に気づきというか、何かしらふと考えさせられるものがあると思います。

 

 

78/100



 

©︎Kaye Song


ロンドンのスローコアバンド、deathcrashがニューシングル「Duffy's」を公開した。これは、3月17日にリリースされる彼らのアルバム『Less』からのセカンド・シングル。トラック「Empty Heavy」がリードしていた。


「とてもまばらなスローコアのセクションと、よりオープンでキャッチーなメロディやリフが交互に現れる」と、ベーシストのPatrick Fitzgeraldは「Duffy's」について声明で述べています。「急いではいないけど、何かに屈服している、明るさかもしれないね」


付属のビジュアルについて、「この明るさ、そして一緒に音楽を作ってレコーディングする、時に楽しく、時にフラストレーションのたまるプロセスを捉えることを目的としている」と彼は付け加えている。私はバンドの撮影をたくさんしていたので、その過程を記録するためにスコットランドにカメラを持ち込んだ。私が不在の時はジョーが撮影を手伝ってくれ、長いプロジェクトのための映像が揃った。後になって、DuffyのビデオをもっとDIYで個人的なものにしたら面白いんじゃないかと思いついたんだ」

 

 「Duffy's」

 

©Noah Kentis


Militarie Gunがニューシングル「Do It Faster」をリリースした。昨年の『All Roads Lead to the Gun (Deluxe)』に続く、ロサンゼルスのバンドのまだ発表されていないデビュー・アルバムの初プレビューとなる曲だ。この曲のビデオは以下よりご覧ください。


ボーカルのイアン・シェルトンは、「Do It Faster」について次のように語っている。「この曲は、僕の人生に対する焦りを歌っているんだ。物事が実現するまでの苦しい待ち時間...だから、自分でやることを諦める前に、もっと早く動いてほしいと世界に対して訴えかけているんだ」


©︎Juan Ortiz Arenas


今月上旬に "Layla "でVを発表したUnknown Mortal Orchestraが、VIRA-LATAが監督したビデオを伴った "Nadja "というダブル・アルバムからの新たなアウトプットを公開した。


『V』は、Unknown Mortal Orchestraの2018年のアルバム『Sex & Food』に続く作品で、昨年のシングル『I Killed Captain Cook』も収録される予定。


リード・ヴォーカルのルーバン・ニールソンは、カリフォルニア州パームスプリングスとハワイ州ヒロの間で制作された本作について、「ハワイでは、僕と僕の音楽からすべてがシフトしていった。突然、他の人が何を必要としているのか、家族の中で自分の役割は何なのかを考えることに、より多くの時間を費やすようになったんだ。また、自分ではそうだと思っていたことが、案外大きなものであることも知りました。私のいたずら好きは、私だけでなく、ポリネシア人としての側面もあるのです。家族のために音楽から離れるつもりでしたが、結果的にこの2つはつながりました」と述べている。


 



The WAEVEが、セルフタイトルのデビュー・アルバムをリリースし、LPカットと最新シングル「Sleepwalking」のPVを公開しました。The Waeveは、ブラーのグレアム・コクソンとローズ・エリノア・ドゥーガルによるプロジェクトです。


デビュー・アルバム『The Waeve』は、James Ford(クラクソンズ、フローレンス・アンド・ザ・マシーン、フォールズ、ゴリラズ、アークティック・モンキーズ等、英国内の著名なアーティスト、グループの作品を数多く手掛けている)をプロデューサーに招き、2022年初めにロンドンでレコーディングされた。Graham Coxon(グラハム・コクソン)はサックスお奏者としても参加している。

 

今作はイギリス国内のメディアを中心に好評価を受けている。(レビューはこちらからお読み下さい)

 

「Sleepwalking」

New Pegans 『Making Circles of Our Own』

 

 

 

Label: Big Scary Monsters

Release Date: 2023年2月17日

 

 

 

 

Review 


アイルランドの五人組のインディー・ロックバンド、ニュー・ペガンズのセカンド・アルバム『Making Circles of Our Own』は、バンドメンバーのCahir O' Doherty、Allan McGrrevyが、アイルランドのGlens of AntrimにあるBadlands Studioでレコーディングを行った。

 

インディーロック/オルタナティヴ・ロックバンドとは言っても、ニュー・ペガンズの音楽性はどちらかといえばポスト・パンク寄りの硬質なギターサウンドを特徴とする。メインボーカルのフレージングが独特で、メロディーもほのかな哀愁を帯びている。このバンドはパンキッシュなパンチ力が持ち味で、さらにはブリストル・サウンドのような独特なクールさを漂わせています。

 

UKでのセカンド・アルバムの売上が好調な同郷アイルランドのThe Murder Capitalと同じように、New Pegansのサウンドは、かなり綿密な計算の上に構築されていることに気づく。ギター・サウンドがフェーザーなどのエフェクターにより緻密に作り込まれていて、スタジオで相当な試行錯誤を重ねた痕跡がとどめられている。テクニカルな変拍子をそつなく織り交ぜつつ、バラードとオルタナティヴ・ロック、ポスト・パンクの激情性をかけ合わせた個性的なロックサンドを探求している。彼らはドリーム・ポップのような陶酔的な哀愁を表向きなキャラクターとしていますが、また時には、歪んだディストーションによってシューゲイズのような陶酔的な轟音サウンドを部分的に持ち合わす。相反する要素が複雑怪奇に絡み合っているのです。

 

轟音性の強いディストーション・サウンドは、ボーカルが歌われる間は、引き立て役に徹しているものの、間奏に移った瞬間、シューゲイズのような轟音サウンドをガツンと押し出す。アンサンブルとしての役割分担がとれたメリハリの利いたサウンドを擁する。つまり、ニュー・ペガンズは、チャプター・ハウス、ジーザス&メリー・チェイン周辺の80年代のドリーム・ポップ/シューゲイズの源流に当たるサウンドを、よりモダンなポスト・パンクをひとつのファクターとして通過した上、かなり新鮮味あふれるサウンドをこのセカンドアルバムで提示している。

 

全般的には、分厚いベースライン、スネアのダイナミクスが押し出されたドラム、リバーヴ/ディレイを強く噛ませたディストーションギターの掛け合いについては迫力満点で、ケリー・オケレケ擁するブロック・パーティーの2005年のデビュー作「Silent Alarm」のアート性の強い音作りを彷彿とさせるものがある。ただ、ニュー・ペガンズのセカンド・アルバムは、ブロック・パーティーが内的な孤独に焦点を絞っていたのとは対照的に、どちらかといえば他者とのコミニティーにおける共感性に重点を置いている。鮮烈な印象を与えるオープニング「Better People」、二曲目の「Find Fault with Me」を聴くと分かる通り、セカンド・アルバムの楽曲では、聞き手の感情に対して訴えかけ、自分たちの位置取る特異なフィールドに誘引していくパワーを持つ。


ボーカルについては、直情的でありながら少しセンチメンタルな感じがするので、とても好感が持てます。それでも、セカンドアルバムの曲は飽くまでParamoreやAlvveysのようなロックバンガーやステージでの観客とのシンガロング性を志向して作られている。さらに、バンドの音楽の中に一貫して感じられるのは純粋で真摯な姿勢であり、茶化したり、ごまかしたりするような夾雑物が感じられない。今あるものをレコーディング・スタジオにそのまま持ち込み、全部出しきったという感じである。この点がザ・マーダー・キャピタルと同様、取っつきやすいサウンドとは言えないにもかかわらず、聞き手に大きな共感と熱量を与えそうな理由なのである。

 

ニュー・ペガンズはこのセカンドアルバムで自らの作風を確立したといえば誇張になってしまいますが、少なくともバンドとしての完成形にむけて着実に歩みを進めています。オルト・ロック/ポスト・パンク/シューゲイズの怒涛の展開を潜り抜けた後のアイリッシュ・バラード「The State of My Love's Desires」に辿り着いた瞬間、リスナーは何らかの爽快感すら覚えるかもしれません。

 


84/100

 

 

Featured Track 「Better People」

©︎Ebru Yildiz

カナダ/バンクーバーのインディーロックバンド、ザ・ニュー・ポルノグラファーズは、3月31日にMergeから初のアルバム『Continue as a Guest』をリリースします。そのセカンドシングル 「Angelcover」が公開されました。


フロントマンのカール・ニューマン(別名A.C.ニューマン)はプレスリリースで、「この作品はジョージ・サンダースのような奇妙で小さなスケッチ、スナップショットのようなものだと考えていた」と語っている。

 

「より良いパフォーマンスを得るためにメロディやフレーズを変え、自分が書いたオリジナルのメロディや歌詞をあまり重要視せず、パフォーマンスやデリバリーに気を遣っている自分に気付いたんだ。そんな中、「メロディーはデリバリーには関係ない」というメッセージとともに、夜な夜な天使が訪ねてくるというアイデアを思いつきました。フィーバードリームのようなもので、感情が自分の個性や形になるんだとね」


ニュー・ポルノグラファーズの前作は、コンコードと提携し、バンド自身のCollected Workインプリントからリリースされた2019年の『In the Morse Code of Brake Lights』であった。そのアルバムのツアーが終了した後、ニューマンはニューヨーク州ウッドストックの自宅で新作の執筆を開始した。このアルバムのラインナップは、Newman、Neko Case、Kathryn Calder、John Collins、Todd Fancey、Joe Seidersに加え、サックス奏者のZach Djanikianが参加したものであった。Sadie Dupuis (Speedy Ortiz, Sad13) は "Firework in the Falling Snow" という曲を共同作曲しています。


以前のプレスリリースでは、Continue as a Guestは、"孤立と崩壊をテーマに、パンデミック中の日常生活の両義性とオンライン生活の果てしない落とし穴に続く "とされていたが、タイトルトラックは "長くバンドにいることで生じる継続的に転がる懸念にも対処する "とされている。


"ゲストとして続けるというアイデアは、時代にとてもマッチしていると感じた "とニューマンは説明している。「文化や社会の中で居場所がないように感じ、時代精神の一部であるかのように感じ、しかし分離して自分のシンプルな人生、長いフェードアウトを生きることに満足している。自分だけの小さな場所を見つけ、バラバラになるためのスペースを見つけ、客人として続けるのだ。

 

「Angelcover」

 


元ソニック・ユースのギタリスト、Thurston Moore(サーストン・ムーア)がニューシングル「Hypnogram」を自身のレーベル、the Daydream Library Seriesから発表した。

 

この曲は、ベーシストのDeb Googe、ギタリストのJames Sedwards、パーカッショニストのJem Doulton、電子音楽家のJon Leideckerが参加し、詩人のRadieux Radioが歌詞を担当しています。ミキシングはロンドンを拠点とするプロデューサー、マーゴ・ブルームが担当しています。以下、試聴してみてください。


プレスリリースによると、「Hypnogram」はサーストンが2022年にセドワーズと共にアレンジした次作アルバムの最初のテイスト。また、ムーアがヨーロッパ・ツアーに出る前にこの春にデジタルでリリースする予定の2曲のうちの1曲目でもある。


サーストン・ムーアは昨年、2020年の夏に録音されたインストゥルメンタル・ギター作品集『Screen Time』を発表している。


「Hypnogram」

 

©Brandon Dudley


LAのオルタナティヴポップ・アーティスト、Deb Neverがニューシングル「Momentary Sweetheart」を公開しました。

 

デブ・ネヴァーは、グランジ、エレクトロ、ヒップホップをかけ合わせたニュー・オルタナティヴとして近年シーンで注目を集めつつあるようです。Hana Vuを始めLAには若い有望なアーティストが数多く活躍しており、Deb Neverもまたそのシーンで力強い存在感を放っています。


2022年2月にリリースされた「Crutches」に続く「Momentary Sweetheart」は甘口のバラードと思いきや、終盤にかけてディストーションギターが炸裂。アウトロではシューゲイザーのような轟音性による陶酔的な雰囲気が漂う。昨年、Deb Neverはマイケル・パーシーやジャム・シティとのコラボを収録したEPは『Where Have All The Flowers Gone?」を発表しています。


「Momentary Sweetheart」

 


LAのガレージロック・バンド、FIDLAR(フィドラー)は、EP『That's Life』のリリースを発表し、ニューシングル「Centipede」を公開しました。『That's Life』は5月27日に発売される。

 

「Centipede」は、FIDLARの2023年最初の作品となる。昨年のシングル "Taste The Money"、"Sand On The Beach"、"FSU "と併録される予定です。Ryan Baxleyが監督したミュージックビデオも公開されています。


『That's Life』は、FIDLARにとって2019年のフルアルバム『Almost Free』以来の作品となり、このプロジェクトの最初のきっかけは、2020年に西海岸と東海岸、メキシコ、ハワイなどを友人たちと旅行した際に求められる。EPは、LAのShanri-LaでDave Sardy (Spoon, LCD Soundsystem, Red Hot Chili Peppers)と共にレコーディングされた。EPのプリセーブはこちら

 

「Centipede」


 


フロントウーマンのIzzy Bee Phillips、ギタリストのChris Ostler、ベーシストのTommy Taylor、ドラマーのAlex Woodwardからなるブライトンの4人組インディーロックバンド、Black Honeyがサードアルバム『A Fistful of Peaches』の最新シングル「OK」を公開しました。シングルと同時にジェイミー・ノイズが監督したミュージックビデオも公開されています。


リード・ヴォーカルのIzzy Bee Phillipsは、この新作について、「『OK』は、不安を鈍らせるためにいつもハイになっていた友人のために書いたラブストーリーなんだ。この曲は、"私はあなたの味方よ、もしあなたが白骨化するまで8杯飲んだ後にマリファナを吸うような奇妙な10分間が必要なら。それが必要なことなら、大丈夫だよ”というような内容です。誰かが幸せになることを期待するのは酷だから、まあまあで十分なんだ。誰かを助ける能力が全くないのに、ロミオ的なヒーローになろうとする自分も批判される。また、ロマコメでしか見せないような、相手に献身的に尽くす気持ちも何となくあって、現実とは思えませんでした」

 

「OK」



Eternal Summersのシンガー/ギタリスト、Nicole Yun(ニコル・ユン)は、2枚目のソロ・アルバム『Matter』をKanine Recordsから4月14日にリリースすることを発表しました。
 
 
このアルバムは、特に過去3年間の韓国系アメリカ人女性としての経験を扱ったもので、私にとって非常に個人的なものなのです」と彼女は説明する。「この曲をリリースすることで、最近私たちみんなを取り囲んでいる暗闇に光を照らすことができたらと思います」語っている。Matter』のアートワークとトラックリストは以下から確認してみてください。
 

ニコルは本日、リード・シングル「Lost Keys」を公開しました。この曲は、資本主義、お金、欲望についてコメントした、容赦ない、ドリーミーなインディー・ポップ・トラックです。
 

「Lost Keys」
 




Nicole Yun 『Mater』
 
 

Label: Kanine Records
 
Release Date: 2023年4月14日
 
 
 
Tracklist
 
Heavy Voices
Lost Keys
Desperation I Know
Annyeounghaseyo Again
Points AB
High American
Like Never Before
The Ballad Of
Always the Same
Jewelry


 Paramore 『This Is Why』


 

Label: Atlantic Records

Release Date: 2023年2月10日

 


 

 

Review

 

パラモアの6年ぶりの新作アルバム『This Is Why』はブランクを埋め合わせるどこか、リスナーの予測を上回っている。ディスコやファンクのダンサンブルなビートとポスト・パンクのオリジナル世代のソリッドなギターやベース、ドラムの魅力をふんだんに詰め込んで、それらをノリの良いキャッチーなポップソングとして仕上げている。

 

ボーカルのウィリアムズは他のアーティストがロックダウンについてシリアスになったのを尻目に、これらの時代の出来事を実に痛快に笑い飛ばすかのようでもある。ときにはカイロプラクティックなどの自虐的なジョークを交え、スピーカーの向こうにいるリスナー、そしてライブに詰めかけるたくさんのオーディエンスを意識し、エンターテインメントが何たるかを教唆してみせる。

 

表向きにはフロントマンのウィリアムズの繰り出すボーカルのフレーズや、その歌いぶりに関しては、リスナーの楽しさを引き出すが、バックバンドとしての演奏は真摯で、彼らの緻密なポスト・パンクサウンドのライブ感満載の迫力がアルバムの収録曲を魅力的に引き立て、さらにはウィリアムズのファンクやR&Bに根ざしたダンサンブルなボーカルの存在感を否応なく引き上げている。これらのパンチが効いてフックを持ち合わせたポピュラーかつドライブ感のあるロックソングは、リスナーの心に潤いと、ほんのりとした明るさをもたらすことになるだろう。

 

アルバムには、タイトルトラック「This Is Why」をはじめ、ディスコ・ポップが中心を占めているが、これらのバンガーに加え「Running Out Of Time」をはじめとする若干しっとりとしたR&Bを基調にしたロックソングが全編に華やかな印象を添えている。もちろん、華やかさだけがこのアルバムないしバンドの売りではない。「Big Man,Little Dignity」では、メロウなソウル・ミュージックとポスト・パンクの硬質なギターをかけ合わせた新時代の音楽を呼び込んでみせている。これらの曲は夢想的な雰囲気と現実的な雰囲気の間でさまよいながら、パラモアらしい答えが生み出される。これらのアンビバレントな楽曲の数々は、近年、夢にいるのか現実にいるのか、その境目があやふやとなっている社会をある側面から反映しているようにも思える。

 

パラモアの新作アルバム『This Is Why』は、まさにロックダウンについての冷やかしの意味とまたリスナーや社会に対するトリオのイデオロギーにおける反論の意味がある。本作は、バンドのファンの期待に沿うような内容となっていることは確かである。そして、また、6年という月日を考えると、これだけのクオリティーの作品を生み出せるということは、パラモアの実力をしたたかに証明してみせているともいえる。もちろん、実際のライブで重要なレパートリーとなりそうな曲も複数用意されているし、ウィリアムズの力強い言葉「言いたいことがあるならいうべき」といった言葉は、ポスト・パンデミックのリスナーに勇気を与えてくれると思われる。

 

しかし、アルバムの後半で、その勢いというのが少しだけ陰りを見せる。これがなんによるものなのかはわからない。序盤と後半では音楽的な密度がはっきりと異なるのだ。エンターテインメントの楽しみが瞬間的な火花を見せたかと思うと、それがふっと消え入る寂しい瞬間もまたこのアルバムには捉えられている。それを余韻と捉えるかどうか、意気消沈と捉えるのかは聞き手次第なのかもしれない。『This Is Why』は良いアルバムであり、さらに売れることが約束されているアルバムでもある。ただ、買って後悔することはないと思うものの、長く聴き続けられる作品かどうかについては少しだけ疑問符が残る。おそらく、パラモアの最大の魅力はライブ・パフォーマンスにあり、飽くまで音源はその魅力の一部分にとどまるのかも知れない。

 

 84/100

 

 

 


Bully(別名:アリシア・ボグナンノ)が、サッカー・マミー(別名:ソフィー・アリソン)をフィーチャーした新曲「Lose You」を公開しました。このシングルはSub Popからリリースされた。「Lose You」は2022年にナッシュビルのMMKスタジオとボグナーノの自宅でレコーディングされた。


Bullyこと、アリシア・ボグナンノはプレスリリースでニューシングルについてこのように語っている。

 

"Lose You"が生まれたとき、ブリーの曲で他の人に歌ってもらおうと考えたのは初めてだったんだ。

 

私はソフィーの声が大好きで、彼女がやること全てにいつも感心しているので、私にとっては当然のことでした。彼女がナッシュビルのシーンから飛び出し、世界のインディー・ミュージックを席巻するのを見るのは、とても楽しいことです。Lose You」を書くことは、私にとって無常の痛みと現実を克服するための方法でした。楽にはならないけど、反省の後には成長が待っていることが多いし、僕にとってはそれこそが人生のすべてなんだ。

Bullyは今後のツアー日程でPixiesのサポートを務める。最新アルバム『SUGAREGG』は2020年にSub Popから発売された。サッカー・マミーの最新アルバム『Sometimes, Forever』は、昨年Loma Vistaから発売となった。

 

「Lose You」


米国のロックバンド、Paramoreは、トーク番組”Jimmy Kimmel Live”に出演し、最新アルバム『This Is Why』の収録曲「Running Out of Time」を披露しました。ライブパフォーマンス模様は以下でご覧ください。


先週金曜日のリリースされたばかりの「This Is Why」は、「The News」、「C'est Comme Ça」とタイトル曲が先行シングルとして発売された。ブロック・パーティーの最盛期を彷彿とさせるポスト・パンクにウィリアムズのパワフルなボーカルが魅力。レコーディングの音源よりもライブの方が明らかに映えるバンドです。以前、Paramoreは、”The Tonight Show Starring Jimmy Fallon”でタイトルトラックの「This Is Why」をパフォーマンスしています。


 

©︎Amy Grace

今週金曜日(2月17日)にリリースされるニューアルバム『7s』に先駆け、Animal Collectiveのエイヴィー・テアがシングル「Invisible Darlings」を発表しました。前作の「The Musical」、「Hey Bog」に続き、Abby Portnerが監督したビジュアルも公開されている。下記よりご覧ください。


 


3月31日にThirty TigersのPositive Jamsからリリースされる9枚目のスタジオアルバム「The Price Of Progress」に先駆けて、The Hold Steadyが最新シングル「Sixers」を公開しました。


「Sixers "はパンデミックの最初の数日間に書かれた曲で、フロントマンのCraig Finnは次のように語っています。

 

「基本的には、隣人を知ろうという歌なんだ。2人の若い社会人が金曜の夜遅くに自分たちのビルで待ち合わせ、週末を一緒にパーティーで過ごす。でも、彼らは愛のつながりを見つけようとするが、なかなかうまくいかない。仕事が厳しいと、なかなか友達もできない。そこでタッドとスティーブが美しいギターハーモニーで素敵なチャイムを鳴らすんだ」

 

The Lemon Twigs

 

60、70年代の古き良きロックンローラーのような渋い佇まいが強烈な異彩を放つ、ブライアン/マイケルのダダリオ兄弟で構成されるインディー・ロックバンド、The Lemon Twigsは、は、先日、NYのインディペンデント・レーベル”Captured Tracks”と契約を結び、同時にドリーミーなシングル「Corner Of My Eye」を発表し、レーベルとの新たな契約を祝福している。

 

昨日、続いてザ・レモン・ツイッグスは『Everything Harmony』を同レーベルからリリースすると発表した。ニュー・アルバムはマンハッタン、ブルックリン、サンフランシスコのハイド・ストリート・スタジオで作曲/録音/制作/エンジニアリングを全てバンドが行った。バンドの巻き返しになるのかに注目。アルバムのアートワーク、及び収録曲は下記よりご覧ください。


バンドは、この次作アルバムに収録される2ndシングル「Any Time Of Day」を公開し、プロモーションを拡大している。心に響く歌詞と豊かなメロディーの組み合わせによる痛快なサンシャイン・ポップ・バラードについて、ザ・レモン・ツイッグスは次のような声明を提出している。

 

 「僕たちは、架空の70年代の兄弟バンドを題材にしたインタラクティブなテレビ番組に出演するために雇われたんだ。サウンドトラックのためにKISSタイプの曲をたくさん書いて、それにこの曲も書いたんだ。この曲は番組にはちょっと合わなかったから、抑えたんだ。2019年の1ヶ月間、全8話の撮影を行いました。Quibiに対して会社が取った注目の訴訟の影響で、番組は棚上げされ、スペースを確保するために完全に消去されないまでも、誰かのハードドライブに残っています。この曲は人生の循環性について歌っている。すべては続いていく。古きを捨て、新しきを得るんだ」


このテーマに沿って、ディレクターのAmbar Navarroは、レトロをテーマにしたMVを撮影しており、60年代や70年代初期の有名な”The Smothers Brothers Comedy Hour”や”Dick Clark's American Bandstand”のビデオ・クリップを彷彿とさせる。「カーペンターズ、トム・ペティ、特にモンキーズのテレビ番組と、その時代の不条理でシュールなコメディを参考にしています」と監督は語る。ノスタルジア満載のビデオも合わせて下記よりチェックしてみてください。


「Any Time Of Day」





The Lemon Twigs  『Everything Harmony』



 
Label:  Captured Tracks

Release Date: 2023年5月5日



Tracklist:

1.When Winter Comes Around
2.In My Head
3.Corner Of My Eye
4.Any Time Of Day
5.What You Were Doing
6.I Don’t Belong To Me
7.Every Day Is The Worst Day Of My Life
8.What Happens To A Heart
9.Still It’s Not Enough
10.Born To Be Lonely
11.Ghost Run Free
12.Everything Harmony
13.New To Me

©︎Mike Bridavskx

サンフランシスコのインディーロックバンド、Deerhoodが新作アルバム『Miracle Level』から新曲「Wedding, March, Flower」を公開しました。この先行曲は「Sit Down, Let Me Tell You A Story」に続く最新シングルです。この新作はバンドのキャリア初となる全編日本語歌詞で歌われたフルレングスです。

 

ニュー・シングルでは、普段のパートが変更となり、松崎さとみがドラムを担当し、ドラマーGreg Saunierがリードボーカルを務め、松崎が書いた日本語の歌詞を歌う。本日のバレンタインデーにぴったりのラブソングで、Deerhoofのスタンダードな型から逸脱した、意外性に富んだバラードとなっています。Greg Saunierさんのしっとりとした日本語のボーカルに注目です。


ボーカルを務めたGreg Saunier(グレッグ・ソーニア)のコメントは下記の通り。

 

パートナーのソフィーといちゃつきながら、鼻歌を歌いながらピアノを弾く動画を送っていたんだ。Deerhoofは次のレコードのために曲を集め始めていた。誰も優しいピアノバラードが必要だとは言っていなかったのですが、ソフィーに説得され、とりあえずバンドメンバーに見せることにしました。

彼らがその曲を気に入ったとき、私はとても感動しました。本当に嬉しかったのは、サトミが歌詞を書いてくれたことだ。日本語の歌詞だったので、最初にリハーサルをしたときは、自分が何を歌っているのかよくわからなかったんです。

しかし、サトミさんは結婚式をテーマにしたラブソングを書いていた。私とサトミは10年以上前に結婚を解消しており、バンドを続けるのは簡単なことではありませんでした。私たちの歌は、私たちがお互いに気持ちを処理する一つの方法だったのです。「結婚行進曲の花」を彼女と共作し、演奏したことは、本当に強烈だったな。

 

Deerhoofの新作アルバム『Mirale-Level』は3月3日にJoyful Noiseから到着します。


 「Wedding, March, Flower」

 

Paramore


およそ6年間の沈黙を破り、Paramoreはニューアルバム『This Is Why』を発売した。今作は多くのレビュアーから好意的に迎え入れられ、さらにNMEをはじめ各紙のカバーを飾っている。間違いなく今週の話題作の一つ。


6枚目のアルバム『This Is Why』はトリオの復活作となる。アルバムをリリースし、熱狂的なツアーを行う。そして、今後、パラモアはキャリア最大のライブを予定している。春のツアーでは、マディソン・スクエア・ガーデンでの連続公演、ボナルー、ボストン・コーリング、ニュージャージー州アトランティック・シティで開催されるアジャスト・フェスティバルでトップ・ライナーの座を獲得し、来月フェニックスで行われる米国の大人気シンガー、テイラー・スウィフトの大規模なツアーのオープニングを飾る予定であることは言うまでもありません。


ボーカルのウィリアムズ、ギタリストのテイラー・ヨーク、ドラマーのザック・ファロは、彼らのキャリアの中で最も注目を集めるツアーに乗り出す準備をしていますが、バンドは2月10日にリリースされた、主題が明らかに私生活にまつわるものであろうとも、熱烈なロック精神を盛り上げる推進力のある新曲を提供してくれている。週末に盛り上がりたい、そんな欲求を抱えるリスナーにとっては願ってもないリリースとなる。バンドの6thアルバムからの最初の4曲はすべて、34歳のウィリアムズが改心したホームドクターとして、パンデミックの眠りから覚めて、彼女が去ったときよりもいくらか悪化した世界に現れるという興味深い内容になっています。


『This Is Why』は現代社会についてセンセーショナルに書かれた曲が多い。タイトル曲の「This is why」では、インターネット/ソーシャルメディア文化の息苦しさや、浴びせられる中傷について嘆きながら、苛立ちの声を上げている。「意見があるならそれを押し通すべき」と歌う。ウィリアムズの怒りと苛立ちを表現したリードシングルは、Paramoreの先行アルバム『After Laughter』のダンスファンクにエッジを加えることに成功しており、多くの人の共感を呼ぶ内容となっている。


これらのキャッチーなロックソングの中にあって、「The News」は異彩を放っている。ポストパンクの個性を維持し、24時間続くニュース・サイクルを非難している。ウィリアムズはこれを「搾取的、演出的、そしてそのほとんど分かっていない」と一刀両断し、さらに鋭く言及し、「コンピューターの背後では役に立たない気がする」ことを歌っている。また、この曲は、Paramoreの次のツアーのオープニングを飾るBloc Partyのデビュー当時の音楽性に影響を受けていて、リスナーの心をドギマギさせるのである。「この曲は、 "Because I Got High "の続編とでも言うべきもので、時間を遵守することを嫌う人たちのためのアンセムだ」という。


序盤の最後を飾る「C'est Comme Ça」(フランス語で「あるがまま」の意)では、ウィリアムズは何らかのエスプリを込めており、辛辣で自虐的なニュアンスを目眩く様に展開させる。「1年で100歳も老けた/私の社会生活、カイロプラクティックの予約」と私生活について赤裸々に告白している。この曲は、老獪な歌詞とハイテンポなコーラスの対照性が痛快で、また、マイ・ケミカル・ロマンスの "Na Na Na (Na Na Na Na)" を思わせる "Na Na Na "のボーカルの掛け合いも効果抜群である。


これらの曲は核心を捉えたかと思うと、あっという間に過ぎ去っていくが、Paramoreの新作アルバムの中盤以降は、現代人としての日常的な告白に加えて、より思弁的な内容が強められる。ウィリアムズは、日常性を超えて、バンドのレコードの一貫したテーマである権力に対するしたたかな反抗を促す。「Big Man, Little Dignity」は繊細で、バスクラリネットとフルートがTame Impalaのような華やかさを醸し出している。しかし、「You First」と 「Figure 8」の轟音ディストーション、高鳴るフック、そして「カルマはすべて我々に巡ってくる/私は彼女があなたを迎えに来ることを望んでいる」と嘆くウィリアムスの強い精神性が表れ出ている。


「Liar」は、パラモアお約束のバラードソングで映画のような壮大さと悲しみを巧みに表現しようとしている。長年のファンにとっては、2008年のヒット曲「Decode」に似たリフに親しみを覚えるはずである。ウィリアムズの "壊れかけの磁石......壊れかけの人に惹かれる"という静かな瞑想から始まるこの曲は、アリーナのステージでのパフォーマンスに沿った内容となっている。


このプロジェクトは怒りやいらだちを中心に展開されているが、どことなく人間味にあふれていて、それが共感を誘う。またパラモアの音楽は享楽性に根ざしているが、そこには楽しみに溢れたパーティーの後に訪れる何らかの虚脱や悲哀もある。とっつきやすさを用意するとともに奥行きを持ち合わせたアルバムであることは疑いがない。近年、Paramoreがこれほどまでプロダクションに奥行きを与え、さらに、ウィリアムズがクールに音を奏でたことはなかったように思われる。また、快適なポップ性とそれと対比的な尖ったロック性をこれほどバランス良く操るバンドは他を探してもなかなか見当たらない。『This Is Why』はパラモアらしさが十分に引き出された快作といえるでしょうか。今週最も注目すべき新作の一つとしてご紹介しておきます。

 

パラモアの待望のニューアルバム『This Is Why』は2月10日に発売。

 

Big Man, Little Dignity」