グラミー賞を受賞した敏腕プロデューサー、ジャック・アントノフのバンド、Bleachersがニュー・シングル「Modern Girl」をDirty Hitからリリースした。この曲は、2021年の『Take the Sadness Out of Saturday Night』に続く、近日発売予定のアルバムの最初のテイストだ。アレックス・ロケットが監督したこの曲のビデオを以下でチェックしよう。楽曲のストリーミングはこちら。
イースト・ロンドンのロックバンド、Bad Nervesがニューシングル「USA」をリリースした。この曲は、リアム・リンチの「United States of Whatever」とシャム69の「Borstal Breakout」からインスピレーションを得たという。ガレージロックを思わせるフックの効いたナンバー。12月に行われるThe DarknessのソールドアウトUKツアーへの参加に先駆けてリリースされる。
イタリアの世界的ロックバンド、マネスキンがニューシングル「Honey (are u coming?)」をリリースした。この曲は、最新アルバム「RUSH!」を引っ提げたワールド・ツアーに先駆けてリリースされる。ツアーは9月にドイツのハノーバーでスタートし、ヨーロッパ、北米、南米、日本、イギリス、アイルランドを訪れ、オーストラリアでは初の公演を行う。
God Games』では、キルズは新旧の戦略をミックスしてみた。アリソン・モシャートとジェイミー・ヒンスは、デュオとしては初めてピアノをメインに12曲を作曲したが、レコーディングはバンドが20年来の付き合いであるプロデューサー、ポール・エプワース(アデル、ポール・マッカートニー、ブロック・パーティー)と行った。アルバムのレコーディングは古い教会で行われ、それが彼らの特徴である蒸し暑いブルース風のサウンドに拍車をかけたと思われる。
トミー・ラモーンとして知られる故トミー・エルデリイによってプロデュースされたアルバムには、"Bastards of Young"、"Kiss Me on the Bus"、"Left of the Dial"、"Waitress in the Sky "など、リプレイスメンツの不朽の名曲が収録されている。
StasiumのミックスとErdelyiのオリジナル・ミックスのリマスター・ヴァージョンを補強するディスクが、『Sons of No One: Rare & Unreleased』となる。
トミー・スティンソンが作曲し、ポール・ウェスターバーグが歌った「Havin Fun」、「Nowhere Is My Home」、「Left of the Dial」、「Can't Hardly Wait」、「Bastards of Young」、「Hold My Life」の別ミックスやデモ、ビッグ・スターのアレックス・チルトンがプロデュースした1985年1月のレコーディング・セッションの未発表音源などが収録されている。
このボックスの4枚目のディスクは、『Not Ready for Prime Time』と名付けられ、1986年1月11日にシカゴのキャバレー・メトロで行われたコンサートの記録である。”I Will Dare"、"Favorite Thing"、"Kids Don't Follow "といった定番曲や、"Go"、"Mr.Whirly "といったディープなカットに加え、28曲からなるショーでは、故ギタリスト、ボブ・スティンソンがノーヴァスの "The Crusher "のカヴァーで珍しいリード・ヴォーカルをとっている。
50曲の未発表曲の中で、『Tim:Let It Bleed Edition』には、ビッグ・スターのアレックス・チルトンがプロデュースした1985年1月のセッションの音源がいくつか収録されている。ラモーンズのトミー・エルデリがプロデュースした『Tim』のオリジナル・バージョンに収録されたのは、チルトンが手掛けた1曲(「Left of the Dial」)のみ。今にして思えば、このコラボレーションは意図的なミスマッチだったとスティンソンは認めている。
The Replacementsの代表曲「Can't Hardly Wait」は、ティム・セッションで試されたいくつかのヴァージョンでボックス・セットに収録されているが、この曲が正式に日の目を見るのは、リプレイスメンツの次のアルバム、1987年の『Pleased To Meet Me』だった。この曲は、1986年1月にリリースされたライヴ・アルバム『Not Ready for Prime Time』に収録された、愛すべき無骨なヴァージョン。
「ポールは、この曲をナビゲートしようとしていて、ティムの時点では、何度も演奏していたにもかかわらず、まだ準備が整っていなかったんだ。彼は、この曲が頭角を現す準備が整うまで、ミックスに長く入れておく必要があるとわかっていて、『Pleased To Meet Me』でそれが実現した。メンフィスでこの曲をカッティングしたとき、ポールは私に、アコースティック・ギターを弾かせたんだ。理由はよくわからないよ。あのアルバムがそうであったように、シンプルにしてスリー・ピースのシナリオでアプローチする必要があったんだと思うね」
Can’t Hardly Wait (The “Tim” Version) [Alternate Mix]*
Swingin Party (Alternate Version)*
Here Comes a Regular (Alternate Version)
(* = previously unreleased)
Here is the track list for Not Ready For Prime Time:
Gary’s Got a Boner
Love You ‘Till Friday
Bastards of Young
Can’t Hardly Wait
Answering Machine
Little Mascara
Color Me Impressed
Kiss Me on the Bus
Favorite Thing
Mr. Whirly
Tommy Gets His Tonsils Out
I Will Dare
Johnny’s Gonna Die
Dose Of Thunder
Takin’ a Ride
Hitchin’ a Ride
Trouble Boys
Unsatisfied
Black Diamond
Jumpin’ Jack Flash
Customer
Borstal Breakout
Take Me Down to the Hospital
Kids Don’t Follow
Nowhere Man
The Crusher
I’m in Trouble
Go
ラスベガスのロックバンド、ザ・キラーズがニューシングル「Your Side of Town」を発表した。この曲は、今週末のレディング&リーズのヘッドライン・セットに先駆けてリリースされた。ニューシングルは、バンドの代名詞となるサウンド、ダンサンブルなロックとして楽しめる。
ザ・キラーズは、このシングルについてこう語っている。「多くの興奮とともに、『Your Side of Town』をお届けします。この曲には、長年にわたって僕らにインスピレーションを与えてくれた多くのシンセ・ミュージックの亡霊が宿っているんだ。でも、どういうわけか、完全に僕たち自身のものだと感じるんだ。さあ、今やこのシングルは君のものだ!音量を上げろ!!」
「Your Side of Town」
The Hives 『The Death of Randy Fitzsimoons』
Label: Hives AB
Release: 2023/8/11
Review
スウェーデンのロックンロールの伝道師は、20年の歳月を経て再び輝きを取り戻しはじめている。
The Hivesのライブは一度この目で見届けている。それは2000年代始めのガレージ・ロックリヴァイヴァル華やかりし時代に遡る。同日、出演したバンドでは、The StrokesとThe Hivesのカッコよさが傑出していた。スリーコード主体のあきれるほどシンプルなロックンロールだが、なぜかバンドとしては輝いて見えたほどである。
その言葉は真心から発せられたと分かる。オープニング「Bogus Operandi」では最高傑作の一つである「Veni Vidi Vicious」の頃のクレイジーな熱狂性を取り戻そうと努めている。それはある側面では功を奏し、ロックンロールの醍醐味や、ひねりのあるフックを呼び覚ますことに成功している。しかし、楽曲制作やレコーディングの側面での成長を拒絶しているのかといえば、全くそうではない。以前のように、ハイヴズはフレーズの反復性を一つの特徴としているが、稀に移調を交えながら、反復性に変化を及ぼそうとしている。ただ、それは表向きには強調されてはいない。ガレージ・ロックの醍醐味であるシンプルな音楽性が一貫して提示されていると言える。
他にも、ロックアルバムとして聴き逃せない部分もある。オリジナル・パンク時代のチャントに近いシンガロングを取り入れようとしたり、ロカビリー色を付け加え、バンドとして工夫を凝らし、新たなフェーズに突入しているという印象も受ける。「Riger Mortis Radio」では、オアシス風のロックにも挑戦し、ライブのセットリストという観点から聴き応え十分の曲も収録されている。
ただし、アルバムというより、アリーナの観客を熱狂の最中に取り込むようなアンセミックな響きが重視されている点については、ライブ・バンドの宿命として逃れがたいものであるのかもしれない。特に、「The Way The Story Goes」は、明らかにライブでのシンガロングを狙った痛快なロックソングの一つであり、上記の収録曲と合わせて、アルバムのハイライトになりえる。
「The Bomb」では、中南米の音楽のパーカッシヴな要素を交え、彼ららしいノイジーなサウンドのを提示している。これは以前にはなかった要素であり、バンドとして新しいステップへと歩みを進めた証拠でもある。また、「What Did I Ever Do To You?」でも奇妙なダブ風のロックに挑戦している。これはバンドが新たにポスト・パンク的なアプローチに挑んだ瞬間ではないか。
ただ、アルバムの最後は、やはり、ハイヴズは直情的なロック・ナンバー「Step Out Of The Day」で終了し、旧来のファンの期待に応えようとしている。以前よりもパンク性が強まった点については、プレスリリース通り、ロック好きの悪ガキであり続けたい、という彼ららしいメッセージ性を感じる。こういったパワフルさは貴重であり、正直、他のベテラン・バンドにはなかなか求めづらいものだ。実際、アルバムの全編には初期衝動における若々しいエナジーが迸りまくっている。
74/100
The 1975は、デビュー10周年を記念して、デビューアルバムの限定盤をリリースすると発表した。
バンドのデビューアルバムは、「The 1975」に「Facedown」EP、「Sex」EP、「Music For Cars」EP、「IV」EPを加えた4LPデラックス・ヴァイナル盤を含む、数々の新しい限定版フォーマットで発売される。
これらのナンバーは、来週の8月11日にFUGAからリリースされる『The Death of Randy Fitzsimmons』に収録される。
The Hivesの楽曲は、”ランディ・フィッツシモンズ”という謎のスヴェンガリによって書かれたと長い間言われてきたが、都合よく一度も一般人の目に触れることはなかったという。そして、最近になって、そのフィッツシモンズが
"死んだ
"らしく、ハイブスは彼の墓を探し回っていたところ、偶然、デモ音源を発見し、『ランディ・フィッツシモンズの死』というタイトルにふさわしいアルバムに仕上げた(と言うWWEのような設定となっている)。
『A Love』は、アルバムの中で最も伝統的なプリテンダーズ・サウンドの曲で、『Kid』や『Talk of the Town』、あるいは長年のミドル・テンポの曲の流れを汲んでいると思う」とクリッシー・ハンデはプレス・リリースで語っている。「私はしばしば、恋愛や人間関係を麻薬中毒と同じようなものだと考えている。とはいえ、私が色あせた皮肉屋であることは承知しているけれど......」
『Relentless』は9月15日にRhinoからリリースされる。以前、バンドは先行シングル「Let the Sun Come In」と「I Think About You Daily」を発表している。
『The Ballad of Darren』は2015年の『The Magic Whip』に続くブラーの8年ぶりのアルバムとなる。ウェンブリーでのライヴに加え、バンドはBBC Radio Theatreでセッションを行った。さらにブラーは、今年のフジロック2023でヘッドライナーを務める予定です。楽しみですね。
「The Rabbi」
「The Swan」
スウェーデンのガレージロックバンド、The Hivesは、多忙なコンサート・スケジュールと『The Death of Randy Fitzsimmons』と題された次作となるアルバムのサードシングル『Rigor Mortis Radio』をリリースし、最近のステージ復帰のイメージをまとめたビデオクリップを添えている。中には過去のグラストンベリー・フェスティバルの映像も収録されている。
ザ・ハイヴスの10年以上ぶりとなる待望の復活作『The Death of Randy Fitzsimmons』は8月11日にFUGAからリリースされる。
これまでにバンドは、「Bogus Operandi」、「Countdown To Shotdown」で新作アルバムのプレビューを行ってきた。これまでの先行シングルは、三作ともにオルタネイトなロックは一つもなく痛快なほどのど真ん中のロックを展開している。最新シングルはバンドの友情や結束力を感じさせる内容となっている。
「Rido Mortis Radio」
ブリットポップのアイコン、Blurが7月21日にパーロフォンからニューアルバム『The Ballad of Darren』をリリースします。そのセカンド・シングル「セント・チャールズ・スクエア」のミュージック・ビデオが公開。ライブ映像で構成されたモノクロのビデオは、トビー・Lが監督を務めた。
M.Wardの超自然的なものを聴きながら、何度か「これは何年だろう? 1952年で、ハリー・スミス・アンソロジーのトラックを聴いているのだろうか? 1972年で、『After the Gold Rush』のレコーディング・セッションをこっそりと聞いているのだろうか? 」というような錯覚に陥らせる。M.Wardは、そのような疑問を抱かせる特別な現代アーティストの一人である。ウォードは、アメリカン・ポピュラー音楽の語彙をマスターし、それを自分の目的のためにどう使うかについて真剣な決断を下そうとしている。ウォードがハリー・スミス、ニール・ヤングといった伝説的なアーティストと共有しようとしているのは、音楽的価値観と人間的価値観の文脈である。リリックの運びには、わずかな生々しさがあり、彼の声には静かな威厳と大きな優しさがある。ようは「Supernatural Thing」は、オープンハートで魅力的なアルバムなのだ。
ファースト・エイド・キット、ショベルズ&ロープ、スコット・マクミッケン、ネコ・ケース、ジム・ジェイムズなど、アルバムのゲスト・スターたちはアルバムの魅力を最大限に引き立てている。「Too Young to Die」では、スウェーデンのファースト・エイド・キットのソダーバーグ姉妹の麗しい歌声がメロディーに軽やかなフロスティングをかけ、「Engine 5」ではビーチ・ボーイズのような爽やかなコーラスがこの曲を瞬く間にヒットへと導くことだろう。プログラム全体は、パンデミック前のハウスパーティーを彷彿とさせる素敵なオープンハウスのような感覚に満ちている。
エルビス・プレスリーがメッセンジャーとして登場するタイトル曲について、「私の曲はすべて、ある程度夢のイメージに依存している。ただし、パンデミックに関連しているかどうかはわからない」とウォードは語っている。これは彼が "you feel the line is growing thin / between beautiful and strange "と歌っている曲であり、このアルバムの感情的なトーンを巧みに要約している。
アルバムの全10曲のうち、8曲がウォードのオリジナルである。また、ボウイの曲としては珍しく、『ブラックスター』収録の "I Can't Give Everything Away "とダニエル・ジョンストンの "Story of an Artist "のライブ演奏をカバーしている。「ボウイとジョンストンは、私にとってインスピレーションの源で、何年そうしてきたかわからない」とウォードは語る。ボウイのインストゥルメンタルを聴きながら、昔サンルイス・オビスポで、喫茶店でアコースティック・ソロを弾きながらウォードが "Let's Dance "をとてもスローなバラードとして歌った夜のことが思い出される。
続いて、スウェーデンの双子のフォークデュオ、First Aid Kitがゲストボーカルとして参加した「too young to die」もタイトルからして、往年の米国のポップスやフォーク/カントリーへのリスペクトが示されている。軽快なM.Wardのアコースティックギターに、ファースト・エイド・キットの姉妹のボーカルが心地よく乗せられる。イントロは、教会の聖歌の神への宣誓への一節のように同じ音程が歌われるが、その後の次いで爽やかに繰り広げられる姉妹デュオの美しいボーカルは、じんわりとした心地よさを与えてくれる。ここには、70年代の音楽をこよなく愛するFirst Aid Kitの楽曲の深い理解と彼女たちの歌唱力が、2020年代のフォーク・トレンドを生み出したと言える。M.Wardは、時に、拳を効かせながら、それらのボーカルに呼応するように渋みのあるボーカルで合いの手を入れる。コラボレーターの相性の良さと、互いの敬愛がこういった調和的な美しさを持つフォークミュージックを生み出したのだろう。楽曲は、草原を駆け巡る風のように緩やかに、そして流れるように展開されるが、特に、曲の終わりにかけてのM. WardとFirst Aid Kitの「too young to die」というフレーズの掛け合いには甘美的な雰囲気すら漂う。
続く「Supernatural Thing」は、アーティストのラジオに対するミステリアスな興味を表すようなトラックである。現実世界でのシリアスな出来事と、夢の中でのロマンティックな出来事が絶えず交錯している。ボブ・ディラン、ジョージ・ハリスン、ルー・リード、トム・ペティ、ポール・ウェスターバーグに代表される、古き良きブルース・ロックを基調とするこの楽曲の全体には、この歌手の人生を反映した哀愁やペーソスがほのかに漂っている。アーティストは、夢の中でロックの王様のエルヴィス・プレスリーに出会い、「You Can Go Anywhere You Please - 君はどこへだっていける」と素敵なメーセージを告げられる。M. Wardは、単調と長調の合間を絶えず行き交いながら、コードのうねりを作り出すことによって、この曲全体に渋さと切なさを与えている。 パンデミック時代の厳しい現実と、それと相反するウェスタン時代のロマンチシズムがその根底には揺曳している。これらの旧時代と新時代の不確かな波間を絶えず行き来するような奇妙な感覚やエモーションは、ブルースを基調にしたフックのあるギター・ソロだったり、あるいは、M.Wardのコーラスの多重録音によって段階的に高められていく。曲のタイトルを歌った「Supernatural Thing - 超自然的なもの」というフレーズは、シュールな印象を与えるとともに、アルバム全体を俯瞰してみた際に、鮮やかな印象を聞き手の脳裏に残すことだろう。
「Supernatural Thing」
「New Kerrang」では、スタンダードなブルース・ロックの方向性を推し進めていく。タイトルが英国最高峰のメタル雑誌に因むものなのかは分からないものの、トム・ペティやチャック・ベリー、ボ・ディドリー、エルヴィス・プレスリーといったレジェンドを彷彿とさせるプリミティヴな60年代のロックンロールへと回帰し、聞き手の耳を喜ばせる。Scott McMicken and The Ever-Expandigのゲスト参加は、Robyn Hitchcockのようなカルト的な意義をもたらす。M.Wardは、''踊りのための大衆音楽''として台頭した、人種や年代を問わないロックの原初的な魅力に再度脚光を当てようとしている。また、ブルースのスケールを取り入れた進行にも着目しておきたい。
その後、ロックやフォーク/カントリーの要素とは別に、もうひとつの主要な音楽性となるスタンダードなジャズに対する親和性も、このアルバムの一番の魅力に挙げられるだろう。ボウイのインストゥルメンタル・カバーである「i Can't Give Anything」では、タイトルからも分かる通り、アーティスト(ボウイ)の少し情けない一面が示されており、親しみを覚えることが出来る。トランペットの鋭いスタッカートの後に芳醇なレガートが続いているが、その後、モノクロ映画のワンシーンのようなノスタルジア溢れるコーラスが曲の雰囲気を支配している。ドラムとギター、トランペットが渾然一体となり、ジャズの気配を強化する。こういったノスタルジックな音楽のアプローチは、Father John MistyやAngel Olsenの最新アルバムでも見受けられたもので、米国の現代的なポピュラー音楽の一つの形式となっていきそうな気配もある。古き良き時代の伝統性と、その文化が持つ美しさを継承しようというアーティストの切なる思いがこの曲に込められており、そして、それは、Father John MistyやAngel Olsenのアルバムにあるようなノルタルジアを求めるリスナーにとって、この上ない至福の瞬間をもたらすものと思われる。
2曲目の「too young to die」に続いて、スウェーデンの姉妹フォークデュオ、First Aid Kitは7曲目の「engine 5」でもゲストボーカルとして素晴らしい貢献を果たしている。この曲は、それほどモダンなポピュラー・ソングとは言えないにせよ、その一方で、ソダーバーグ姉妹のボーカルは奇妙な新鮮味をもたらしている。少なくとも、ハイパーポップともエクスペリメンタルポップとも異なり、自然なロック/ポップを原型にしたスタンダードなナンバーであるが、フォーク/カントリーに根ざしたアコースティック・ギターのストロークは、この曲にダンス・ミュージックに近いグルーブやビートをもたらし、聞き手を心をほんわかさせてくれる。ここには、アルバムの序盤と同じように、人生の悲哀や苦悩に近い感慨も率直に込められているが、その奇妙な感覚が、聞き手にある種の癒やしの瞬間をもたらし、普遍的なロック/ポップの良さを追求する両者の才覚が劇的なスパークを果たしている。ここでも、三人のミュージシャンは、現代的な苦悩を認めつつも、旧時代のラジオのような領域へと逃避場を設けるかのように潜りこんでいく。そしてそれは清らかな一滴の雫のような感覚を生み出し、わずかな清涼感をもたらす。
アルバムの最後に収録されているダニエル・ジョンストンのカバー曲「story of an artist」は、ジョンストンがみずからの人生を映画の登場人物のように歌った一曲で、またそれは多くの人への愛の讃歌代わりでもある。自らの人生をあらためて回想するかのような和らいだ内省的なフォーク・ミュージックは、カバーという形ではありながら、M.Wardの24年のキャリアを総括するとともに、彼のアーティストとしての心情を虚心坦懐に打ち明けたものとなっている。それは傷ついた心を癒やし、傷んだ心のある種の慰みを与える。それほど大きな抑揚や起伏に富んだ展開こそないものの、M.Wardのギターの進行とヴォーカルのフレーズは一定の音域の間をきわどい感じで淡々と彷徨っている。そこには、派手な上昇もなければ、派手な下降もない。そして、多くの人々の人生を見るかぎりでは、世界のすべての人に映画のような人生の大きな上昇があるわけでもなければ、大きな下降があるわけでもない。しかし、そういった何気ない日常の連続は、ここ数年で、奇妙な形で破壊され、阻害され、変化してしまった。関連するとまでは明言こそしていないが、M.Wardは、きわめて間接的なかたちで、そういった現代の多数の人々の人生の浮き沈みを直視し、それを最後の曲や作品全体を通じて真摯に描出しようと試みている。いうまでもなく、みずからの得意とするフォーク/カントリーによってである。
イギリスのロックバンド、Bring Me The Horizonが通算9枚目のスタジオ・アルバムを発表した。この発表は先週末のDownload Festivalでのヘッドラインパフォーマンスの後に行われています。『POST HUMAN: NeX GEn』は9月15日にSony/RCAから発売されます。
アルバムの発表もかなり凝った演出が行われたようです。ファンは、隠された手がかりや謎をたどって、Downloadの会場にある秘密の建物「The Church Of Genxsis」にたどり着くよう促されました。中に入ると、ファンは、タロット占いなど、さまざまなGenxsisの儀式を擬似的に体験し、教団の一員となるための旅を完了しました。
この曲はブライアン・イーノとの共同プロデュースで、バースのReal World Studios、ロンドンのBeehiveとBritish Grove、南アフリカ・ヨハネスブルグのHigh Seas Studiosで録音されました。ソウェト・ゴスペル・クワイア、ジョン・メトカーフのストリングス・アレンジ、ガブリエルのツアー・バンドのメンバーであるベーシストのトニー・レヴィン、ギタリストのデヴィッド・ローズ、ドラマーのマヌ・カッチェをフィーチャー。Road to Joy [Bright-Side Mix]」は下記よりご視聴ください。
デイヴ・グロールがRCAのインプリントとして95年に設立したRoswellから発売となった「But Here We Are--だが、私たちはここにいる」という名を冠したフー・ファイターズのアルバムは、 タイトルからも分かるように、2022年3月に惜しまれつつ亡くなったテイラー・ホーキンスへの追悼の意味を込めた作品である。いまだに彼の追悼コンサートでの彼の息子のシェーン・ホーキンスの素晴らしいドラムの演奏が目にありありと浮かぶ。あの時、バンドには選択肢がいくつかあった。テイラー・ホーキンスを代えの効かない唯一無二のドラマーとしてフー・ファイターズを封印するという可能性もなくはなかった。しかし、バンドは以前とは別のバンドになると思うが、活動を継続すると発表した。結局、それをしなかったのは、フー・ファイターズというバンド自体が、友人の死、そして、コバーンの弔いの意味から95年に出発したグループであるからなのだと思う。そして、おそらく、テイラー・ホーキンスの死後になって、フー・ファイターズの未知の音楽を聴きたいというファンの思いは、さらに強まったともおもわれる。結局は、デイヴ・グロールは旧来のファンの期待を裏切るわけにはいかなかったのだ。
しかし、このアルバムがフー・ファイターズの代名詞であるアメリカン・ロックを主眼に置いているからといって、彼らが新しいサウンドを提示していないというわけではない。タイトル曲「But Here We Are」には新生フー・ファイターズとしての片鱗が伺え、変則的なリズムを配し、近年で最もヘヴィーな瞬間へと突入する。この曲にはオルタナティヴ/グランジの後の時代のタフな生存者として活躍してきたロックバンドとしてのプライドが織り込まれており、これはまた90年代以降のヘヴィロックの流れをその目で見届けてきたロック・バンドとしての意地でもある。そしてこのロックソングはホーキンス亡き後のバンドとしての力強い声明代わりになるとともに、バンドにとっての新しいライブ・アンセムとなってもおかしくないような一曲だ。
その後、アルバムの冒頭の「Rescued」で読み取ることが出来るエモーションは、90年代のグランジの暗鬱な情感と複雑に絡み合うようにして強化されていく。「Show Me How」ではサウンド・ガーデンのクリス・コーネルが書いたような瞑想的なグランジ・サウンドを現代に呼び覚まし、それを深みのある形に落とし込んでいる。しかし、グランジを下地に置くからといって、それほど暗澹とした雰囲気はほとんど感じられず、そこにはからりとした乾いた質感すら漂っている。これはデイヴ・グロールのソングライティングの才覚が最大限に発揮された瞬間と称せる。そのあと、アメリカのロックバンドとしての印象はアルバムの後半に至るほど強まっていき、それは80年代のナイト・レンジャーのようなメタリックな雰囲気すら帯びるようになる。