アルバムの冒頭はどことなく夢想的な雰囲気に充ちている。しかし、それは確かに2014年頃の夢想的な雰囲気に基軸を置きつつも、その質感やアウトプットされるものはまったく違うものであることがわかる。地に足がついていて、そしてその地盤をしっかり踏みしめ、そしてその中に夢想的な感覚を織り交ぜる。”下を見ながら上を見る”、そんな表現が当てはまるほど、敬虔な音楽に対する思い、そして、みずからの生活に対する親しみや充実が感じられるのである。その後、アルバムはカントリーの古典へと繋がり、ハンク・ウィリアムズの時代へと立ち返る。2曲目「Sadness A Gift」はカントリー/フォーク歌手の望郷の思いを歌うという原点のスタイルを忠実になぞらえ、それを現代的な感性によって紡いでいる。ジョセフィン・ランスティーンのバイオリンの音色はケルティック民謡で使用されるフィドルのような開放的な響きを生み出し、この音楽の持つ原初的な爽快感や開けたイメージをはっきりと呼び起こす力がある。
アルバムの中盤では、実験的な音楽の試みが取り入れられている。「Vampire Empire」はビックシーフの曲としてもリリースされているが、タップダンスのユニークなリズムと取り入れ、よりプリミティブな質感を持つアコースティックギターと掛け合わせ、ダンスのためのフォーク/カントリーを演出する。それは寂れたスペースに、にぎやかなマーチング・バンドがやってきて演奏するようなエンターテインメント性がある。この曲でレンカーはジョニー・キャッシュのようなワイルドなボーカルのスタイルを継承し、それらを軽快なムードとステップを持つフォーク音楽へと昇華させている。アナログ風の録音の音響効果を用い、ときにアンセミックなフレーズを織り交ぜる。アコースティックギターとボーカルの合間に取り入れられるジョセフィン・ランスティーンのバイオリンは、「Sadness As A Gift」と同じようにフィドルの織りなすセルティック民謡のような効果を及ぼす。これは原初的なアパラチアンフォーク等が英国やスコットランド/アイルランド圏からの移民によってもたらされたものであることを思い起こさせる。
先にリリースされたシングル「Ruined」に続く「Sadness As A Gift」は、レンカーが最も親しみやすく温かみのある楽曲で、全く時代を超越しながらも、聴くたびに新鮮な驚きを与えてくれる。エイドリアンヌの生き生きとした声が、彼女の詩を高めている。ギター、ピアノ、ヴァイオリン、そしてすべての声によって完成された輪の中で彼女は歌う。"季節はあっという間に過ぎていく // この季節が続くと思っていたのに // その疑問は大きすぎたのかもしれない"
ブライト・フューチャーでは、フレーズの転回と韻の流れで知られるソングライター、エイドリアン・レンカーが、"You have my heart // I want it back. "とさらりと言う。アナログ的な正確さで記録されたこの作品は、コラボレーションの実験として始まったが、エイドリアン・レンカーのハートが未知の世界へ果敢に挑み、満タンになって戻ってきたことを証明するものとなった。
以下、『Spell Blanket』の「Follow the Light」と『Distant Call』の「Tears in the Typing Pool [Demo]」を下記よりご視聴下さい。
ブロードキャストの最後のアルバムは、フォーカス・グループとのコラボレーションで、キーナンが42歳で急逝する2年前の2009年にリリース。『Distant Call』には、キーナンの死後にカーギルが発見した初期のデモ2曲、「Come Back to Me」と「Please Call to Book」も収録されている。
「このタイトルは自明の理なの。もし私が死の床にあるとしたら、デルフィに、この世界、銀河系、私たちが生きている宇宙でくつろいでいるという感覚を与えるために、こう言うだろう。デルフィが生まれる前、私はマヤ・アンジェロウの同名の本『Letter To My Daughter』に触発されて、彼女に手紙の本を書き始めた。特別な思い出と歴史的な世界の瞬間に満ちた、とても奇妙だけど魔法のような1年間を記録したものです」とカーンは説明する。
ジョン・グラント(Joh Grant)がニューアルバム『The Art of the Lie』を発表し、ディスコポップ風の軽快なファーストシングル「It's a Bitch」をリリースし、同時にミュージック・ビデオを公開した。新作『The Art of the Lie』はベラ・ユニオンから6月14日にリリースされる。
ジョン・グラントは米国の歌手であり、かつてオルタナティヴロック・バンド、ザ・ザーズの創設メンバーでもあった。現在はリードシンガー、ピアニスト、ソングライターとして活動している。ソロシンガーとしては着実に実績を積み重ねている。ソロデビューアルバム『Queen of Denmark』(2010年)はMojo誌の年間ベストアルバムに選ばれた。続くセカンドアルバム『Pale Green Ghosts』(2013年)はRough Trade誌の年間のベストアルバムに選ばれた。
3rdアルバム『Grey Tickles, Black Pressure』(2015年)は広く批評家の称賛を受け、全英アルバム・チャートで5位を記録、4thアルバム『Love Is Magic』(2018年)は全英トップ20入りを果たした。
5枚目のアルバム『Boy from Michigan』(2021年)も絶賛された。また、ライヴ・アルバム『John Grant and the BBC Philharmonic Orchestra』をリリース: ライブ・イン・コンサート』(2014年)では、BBCフィルハーモニー管弦楽団の伴奏で、最初の2枚のアルバムからの曲を演奏した。
アルバムのタイトルとそのテーマは、現在の政治情勢にインスパイアされている。ドナルド・トランプの自伝的な著書『The Art of the Deal』は、今やMAGAの弟子たちの間では単なる聖書の一冊に過ぎず、トランプ自身は天から遣わされた救世主のようにと見なされることもある。なぜなら、神はあなたが金持ちになることを望んでいるからです」とグラントは説明する。「このアルバムは、人々が信奉する嘘と、その嘘がもたらす心の傷について描いたものでもある」
米国のR&Bシンガー、バーティーズ・ストレンジ(Bartees Strange)が、Apple TV+の新シリーズ「The New Look」のジャック・アントノフ監修の公式サウンドトラックから「You Always Hurt The One You Love」のカバーをリリースした。原曲はThe Mills Brothersが1961年に歌っている。アラン・ロバーツが作詞、ドリス・フィッシャーが作曲を手掛けた。
サウンドトラックは、高評価を得ているロンドンのインディペンデント・レーベル、ダーティ・ヒットのアントノフの新しいインプリント、Shadow Of The Cityからの最初のリリースとなる。
「The New Look」はファッション界の大物にスポットライトを当てている。ココ・シャネル等、20世紀のファッションシーンを牽引した業界人が戦後、どのようにして名ブランドを立ち上げていったのかが描かれている。この映画のサウンドトラックは著名なアーティストが20世紀中盤の定番曲のカバーを行っている。映画の内容、そして挿入歌とともに大きな話題を呼びそうだ。
「You Always Hurt The One You Love」
Bartees Strangeの最新アルバムは『Farm To Table』。このアルバムは2022年6月に4ADから発売されました。
「『Color De Dolor』は『Gemelo』のために書かれた最初の曲だ。この曲は、私が悲しみと向き合った最初の曲でもある。Color De Dolor」は、まるでジャングルの中を歩いているような、質感のある青々とした曲にしたかった。私にとって、その万華鏡のような質感は、悲しみと美しさを示している」