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実力派シンガーソングライター、マギー・ロジャースが、4月12日にサード・アルバム『Don't Forget Me』をポリドール・レコードからリリースすることを発表した。


このアルバムは、彼女の2019年のデビュー作「Heard It In A Past Life」と2022年の「Surrender」に続く。新譜に期待される最初のプレビューは、高らかに歌い上げるフォーク調のタイトル・トラック。マギーは「Don't Forget Me」の制作過程を説明した手紙を公開している。


『ドント・フォーゲット・ミー』の制作について、マギーはこう語っている。


「このアルバムの制作は、どの段階でもとても楽しかった。曲の中にそれが表れていると思う。それが、このアルバム制作を成功させるための重要な要素なんだ」


「2022年12月に3日間、2023年1月に2日間。時系列順に書かれた。アルバムに収録されているストーリーのいくつかは私自身のものだ。そして本当に初めて、そうでないものもある。大学時代の思い出や、18歳、22歳、28歳(現在29歳)の頃の詳細が垣間見える。アルバムを順次書いていくうちに、ある時点でキャラクターが浮かび上がってきた」


「アメリカ南部と西部をロードトリップする女の子の姿を思い浮かべ始めたんだ。若いテルマ&ルイーズのようなキャラクターで、家を出て人間関係から離れ、声を大にして処理し、友人たちや新しい街や風景の中に慰めを見出している」


「私は、リンダ・マッカートニーの写真のような親密さで、彼女の人生をとらえようとした。彼女はやり直し、人生の新しい章のページをめくっている」


「曲中のストーリーや詳細は、友人やニュースから得たものもある。完全に作り上げたというか、私の中から飛び出してきたものもある。ペンを紙に。完全な形で。そこにあった。こうすることで、私の現在に関する最も深い真実のいくつかが前に出てくることができたと思う」


「私はそれらを探したり、掘り起こしたりして、それらが完全に成長する前にその物語を収穫したのではない。私の人生についての真実は、私の最も深い直感から生まれた。自分自身では口に出して言う準備ができていなかったが、音楽の中に居場所を見つけた」



『Don't Forget Me』




 ・「So Sick Of Dreaming」



気鋭のシンガーソングライター、マギー・ロジャース(Maggie Rogers)が、近日リリース予定のアルバムのニューシングル「So Sick Of Dreaming」を公開した。先に公開されたタイトル曲に続く。

 

今回の新曲「So Sick Of Dreaming」でアーティストはよりロック的なアプローチを図っている。ボーカルとスポークンワードの融合という点ではニューヨークのTorresに近いが、ロジャースのソングライティングはロックの普遍性に焦点が置かれている。それほど先鋭的な音楽性ではないものの、その中には非凡な歌唱力とセンスが垣間見える。以下よりチェックしてみよう。

 

マギー・ロジャースはニューヨークの歌手ではあるが、今回のアルバムでは南部的な概念をポピュラー音楽の中に織り込んでいる。


「So Sick Of Dreaming」


 

 

 
Maggie Rogers 『Don't Forget Me』



Label: Polydor

Release: 2024/04/12


Tracklist:

1. It Was Coming All Along
2. Drunk
3. So Sick of Dreaming
4. The Kill
5. If Now Was Then
6. I Still Do
7. On & On & On
8. Never Going Home
9. All The Same
10. Don’t Forget Me
 
 

 

・The Late Show With Stephen Colbert




昨日、NYのシンガーソングライター、Maggie Rogers(マギー・ロジャース)が米国の深夜番組、『The Late Show With Stephen Colbert』に登場し、最新アルバム『Don't Forget Me』の収録曲「The Kill」をステージセットで披露した。ライブパフォーマンスの模様は以下より。


ロジャースのライブステージは、アコースティックギター、シンセ、ベース、エレクトリックギター、ドラムに加え、パーカションが参加した。曲の魅力が伝わりやすいライブとなっている。


「The Kill」

 

 

©︎Netti Habel

先週、予告されていた通り、ポーティスヘッドのボーカリスト、ベス・ギボンズが待望のアルバム『Lives Outgrown』でソロ・デビューを果たす。5月17日にDominoからリリースされる。


ギボンズとジェームス・フォードが共同プロデュースし、トーク・トークのリー・ハリスがプロデュースを担当。アルバムには、10年間に渡ってレコーディングされた10曲が収録されている。トニー・アウスラーによる新曲「Floating on a Moment」のビデオを以下よりご覧下さい。


『Lives Outgrow』の収録曲の中でギボンズは、自らの人生についての考察を的確に交え、とくにそれは内的な感覚が年齢を重ねるごとにどう変化していくのか、その飽くなき音楽家としての真摯な眼差しで捉えようとする。普通の人ならば見過ごしてしまうか、目をそらしてしまうテーマ、誰もが持っている人生の主題を的確な視点から捉え、ーー不安、母性、死ーーを音楽によって表現しようとする。あるいはアーティストにとって、それは内側に秘めたままではいられぬものでもある。

 

ギボンズは声明の中で、「私は希望がない人生がどのようなものかを悟りました。そして、それは、私が感じたことのない悲しみだった。以前は、自分の未来を変えることができた。でも、自分の体と向き合ったとき、体が望んでいないことをさせることはできないことがわかったんです」


このアルバムはまた、"数多くの別れの時期 "から生まれた、とギボンズは述べている。「人が死にはじめたと私は悟った。若いときは、未来の結末なんてちっともわからないのだし、どうなるかなんて皆目見当もつかない。私たちは、たぶん、これを乗り越えられるだろうし。きっと良くなるのだ、と。それでも、生きていると、消化するのが難しいような結末もある......。今、私はもう一つの終わりから抜け出して、勇気を出さなければならないときが来たんだと思う」


「Floating on a Moment」のビジュアルについて、監督のトニー・アウスラーはこうコメントしている。


「''Floating On A Moment "を初めて聴いたとき、文字通り、私をあちこちに連れて行き、万華鏡のような多彩な感情とビジョンで満たしてくれました。可能であれば、このビデオによってその精神的な流動性のようなものを捉えたかった。そもそも、ベスの作品はとてもパワフルなのです。私たちを人生の森や火の中へと導き、可能性のある未来を垣間見せてくれます。そのような声と音楽があるのならば、オープンで、どことなく思索的な映像を作らなければと思っていた」

 

「Floating on a Moment」



今作にはシンガーソングライターとしてのキボンズの性質が反映されている。加えて、近年、ヘンリク・グレツキの交響曲、ケンドリック・ラマーの「Mother I Sober』など現代音楽やスポークンワードにも取り組んできたギボンズの音楽的な蓄積がどのように表れるかに着目したい。



Beth Gibbons 『Live Outgrown』


Label :  Domino

Release: 2024/05/17

 

Tracklist:


1. Tell Me Who You Are Today

2. Floating On A Moment

3. Burden Of Life

4. Lost Changes

5. Rewind

6. Reaching Out

7. Oceans

8. For Sale

9. Beyond The Sun

10. Whispering Love


Beth Gibbons 2024 Tour Dates:


May 27 – Paris, FR – La Salle Pleyel

May 28 – Zürich, CH – Theater 11

May 30 – Barcelona, ES – Primavera Sound Festival

May 31 – Lyon, FR – La Bourse Du Travail

Jun 2 – Berlin, DE – Verti Music Hall

Jun 3 – Copenhagen, DK – Falkonersalen

Jun 5 – Utrecht, NL – Tivoli Vredenburg

Jun 6 – Brussels, BE – Cirque Royal

Jun 9 – London, UK – The Barbican Centre

Jun 10 – Manchester, UK – Albert Hall

Jun 11 – Edinburgh, UK – Usher Hall

 


ブルックリン出身のシンガー、キャロライン・ポラチェクが、『Desire, I Want to Turn Into You(Reviewを読む)の収録曲「Butterfly Net」の新バージョンでウェイズ・ブラッドとタッグを組んだ。


2人のアーティストは昨年、グラストンベリーやフジロックなど、何度か大型フェスでこの曲をライブで共演している。特にフジロックで両アーティストは親しくしている様子が確認されている。


10月、ポラチェクは『Desire, I Want to Turn Into You』のレコーディングセッションから抜粋したトラック「Dang」を公開した。彼女はまた、『The Late Show With Stephen Colbert』でこの曲を披露した。最新アルバムはグラミー賞にも見事選出され、シンガーはLAの授賞式に出席している。




ビリー・ジョエルが17年ぶりにオリジナル曲「Turn the Lights Back On」を発表した。この曲はフレディ・ウェクスラーがプロデュースし、ジョエル、ウェクスラー、アーサー・ベーコン、ウェイン・ヘクターが共作した。


「Turn the Lights Back On」は、ビリー・ジョエルにとって2007年の「All My Life」と「Christmas in Fallujah」以来の新曲となる。彼の最後のポップ・アルバムは1993年の『River of Dreams』だが、2001年にはクラシック音楽アルバム『Fantasies & Delusions』をリリースしている。


ビリー・ジョエルは今週末に開催される2024年グラミー賞に出演する。彼がこの授賞式に出演するのは22年ぶりとなる。



エレクトロ・ポップの伝説、ペット・ショップ・ボーイズがニューアルバム『Nonetheless』を発表、そのファースト・シングル「Loneliness」のミュージックビデオを公開した。『Nonetheless』はパーロフォンから4月26日発売予定。「Loneliness」のビデオはアラスデア・マクレランが監督。アルバムのトラックリストとジャケットアートワークは以下の通り。

 

『Nonetheless』のプロデュースを手掛けたのは、ジェームス・フォード(アークティック・モンキーズ、デペッシュ・モード、ブラー、ゴリラズ、シミアン・モバイル・ディスコなど)。

 

このデュオ(ニール・テナントとクリス・ロウ)は、プレスリリースで新作について次のように語っている。

 

「このアルバムは、私たちを人間たらしめているユニークで多様な感情を祝福するものにしたかった。ダンス寄りのトラックから、美しいストリングス・アレンジが施された内省的なバラードの生々しい切なさに至るまで、各々のトラックが物語を語り、アルバム全体の物語に貢献している」

 

「ジェームス・フォードと一緒に仕事ができたのは本当に素晴らしいことだった。ジェームスは、あえて僕らをもう少しミニマルにすることもしてくれたし、最終的な結果は、僕らがとても誇りに思っているレコードになった」

 


「Loneliness」

 

   

 

 

 

 「Through You (Extended Remix)」

 

 

 

 

Pet Shop Boys 『Nonetheless』



 

Label: Parlophone

Release: 2024/04/26

 

Tracklist: 

 

Loneliness
Feel
Why am I dancing?
New London boy
Dancing star
A new bohemia
The schlager hit parade
The secret of happiness
Bullet for Narcissus
Love is the law

 


イギリスのミュージック・シーンを象徴する歌手、フローレンス+ザ・マシーン(フローレンス・ウェルチ)は、独特な世界観と圧倒的な歌唱力、そして唯一無二のカリスマ性で多数のリスナー、ライブ会場の無数のオーディエンスを魅了してやまない。今回、ウェルチはジャック・アントノフが手がけるアップルTV+で放送予定の新シリーズ「The New Look」の公式サウンドトラックからのファーストシングルとして「White Cliffs Of Dover」をリリースした。(視聴する)


アントノフがキュレーションとプロデュースを手がけたサウンドトラックは、ザ・ブリーチャーズ、フローレンス+ザ・マシーン、ラナ・デル・レイ、ザ・1975、ビーバドビー、ニック・ケイヴ、パフューム・ジーニアスが演奏する、20世紀初頭から中頃にかけての人気曲のカヴァーを収録。これらのサウンドトラックは第二次世界大戦中のヒットソングを中心に構成される。

 

映像作品のサントラは、ジャック・アントノフのインディペンデント・レーベルで、ダーティ・ヒットの新しいインプリントである”シャドウ・オブ・ザ・シティ”による最初のリリースとなる。




『The New Look』はトッド・A・ケスラー監督による歴史ドラマ。エミー賞受賞のベン・メンデルゾーンが「クリスチャン・ディオール」を、さらにアカデミー賞受賞のジュリエット・ビノシュが「ココ・シャネル」を演じる。実話にインスパイアされ、パリで撮影された『The New Look』は、ファッションデザイナーのクリスチャン・ディオール、ココ・シャネルが第二次世界大戦の恐怖を乗り越え、ファッションブランドを立ち上げるまでの同時代の人々を中心に描く。

 

ここ数年、フローレンス・ウェルチは「断酒をしている」と明かし、それにまつわる苦悩を打ち明けた。一昨年、パンデミック後期にリリースされた『Dance Fever』(Reviewを読む)は、ウェルチのシンガーとしてのカリスマ性が凝縮された作品だった。2022年に発表された多数のモンスター・アルバムの中にあり、今なお強烈な存在感を放ち、アーティストの象徴的なカタログとなっている。

 

今回のトッド・ケスラー監督の手掛けた『The New Look』へのサウンドトラック提供は、シアトリカルかつシネマティックなスケールを持つ、英国を代表するポピュラー歌手の音楽のスタイルにこの上なくマッチしており、ドラマの音響効果の中で重要な役割を果たす可能性がある。



 

ジャスティン・ティンバーレイクが6年ぶりのアルバム『Everything I Thought It Was』を発表しました。


2018年の『Man of the Woods』に続くこのアルバムは、RCAから3月15日にリリースされます。


リード・シングル「Selfish」は、ブラッドリー・J・カルダーが監督したビデオとともに本日公開。ティンバーレイク、ルイス・ベル、ヘンリー・ウォルター、セロン・マキエル・トーマス、エイミー・アレンが作曲し、ティンバーレイク、ベル、サーカットがプロデュースしました。以下よりチェックしてみよう。


Apple Music 1でのZane Loweとのインタビューで、ティンバーレイクは「信じられないほど正直な瞬間があると思う」と述べてています。


ティンバーレイクは、ダコタ・ジョンソンが司会を務める今週の『サタデー・ナイト・ライブ』に出演する予定。そして、"いや、このアルバムは僕にとって違う意味で特別なんだ "って思ったんだ」とティンバーレイクはザーン・ロウに語った。「でも、スケッチのひとつやふたつに引っ張りだこにならないとも思えない。当然のことだよ。僕はそのためにここにいる。いつだって楽しいよ。SNLは私にとって、どんな立場でも。司会は5回やったけど、出演したのは何回目かわからないよ」





 Marika Hackman 『Big Sigh』


 

Label: Chrysalis 

Release: 2024/01/12

 

 

Review    -感情の過程-

 

 

リズムマシンやシンセサイザーを複合的に折り重ねて、シンプルでありながらダイナミックなソングライティングを行うイギリス/ハンプシャーのシンガーソングライター、マリカ・ハックマンの最新作『Big Sigh』は、冬の間に耳を澄ますのに最適なアルバムといえそうである。なぜなら雪に覆われた山岳地帯を訪ね歩くような曰くいいがたい雰囲気に作品全体が包まれ、それは小さな生命を持つ無数の生き物がしばらくのあいだ地中の奥深くに眠る私たちが思い浮かべる冬のイメージとピタリと合致するからである。アーティストは、Japanese House、Clairoといった、今をときめくシンガーに親近感を見出しているようだが、マリカ・ハックマンのソングライティングにも親しみやすさやとっつきやすさがある。初見のリスナーであっても、メロディーやリズムが馴染む。それは、その歌声が聴覚にじわじわ浸透していくといった方が相応しい。

 

オープニングを飾る「The Ground」は、インタリュードの役割を持ち、ピアノとシンセ、メロトロンの音色が聞き手を摩訶不思議な世界へといざなう。微細なピアノのミニマルなフレーズを重ね合わせ、繊細な感覚を持つマリカ・ハックマンのポップスの技法は、アイスランドのシンガーソングライターのような透明感のある輝きに浸されている。透明なピアノ、フォーク、メディエーションに根ざした情感たっぷりのハックマンのボーカルは、春の到来を待つ雪に包まれた雄大な地表をささやかな光で照らし、雪解けの季節を今か今かと待ち望む。それはタイムラプスの撮影さながらに、壮大な自然の姿を数時間、ときには十数時間、高性能のカメラで撮影し、編集によりスローモーションに差し替えるかのようでもある。ピアノのフレーズやボーカルが移ろい変わる毎に、崇高で荘厳な自然がゆっくり変化していく。オーケストラのストリングに支えられ、雪解けの季節のように、美しい輝きがたちどころにあらわれる。冬の生命の息吹に乏しい深閑とした情景。いよいよそれが、次の穏やかな光景に刻々と変化していくのだ。

 

しかし、春のおとずれを期待するのは時期尚早かも知れない。完全にはその明るさは到来していないことがわかる。「No Caffeine」は、従来の作品で内面の情景を明晰に捉えてきたアーティストらしい一曲で、それらは現代と古典的な世界を往来するかのようだ。少し調律のずれたヴィンテージな感じのピアノの音色を合わせたチェンバーポップ風のイントロに続いて、ハックマンは内面の憂いを隠しおおせようともせず、飄々と詩をうたう。最初のビンテージな感覚はすぐさま現代的なシンセポップの形に引き継がれ、それらの懐古的な感覚はすぐに立ち消える。しかし、最初の主題がその後、完全に立ち消えたとまでは言いがたい。それは曲の深いところで音を立ててくすぶり続け、他のパートを先導し、その後の展開にスムーズに移行する役割を果たす。セント・ヴィンセントを思わせるシンセのしなやかなベースラインは、ロックのスタンダードなスケールを交え、ハックマンの歌声にエネルギーを与える。それらのエナジーは徐々に上昇していき、内的な熱狂性を呼び覚ます。イントロでは控えめであったハックマンの声は、シンセの力を借りることにより、にわかに凄みと迫力味を帯びてくる。そして曲のクライマックスにも仕掛けが用意されている。オープニングと同様、オーケストラのストリングスのレガートを複合的に織り交ぜることで、イントロの繊細さが力強い表現へと変化するのだ。

 

本作の序盤における映画のサウンドトラックやオーケストラを用いたポップスのアプローチは、次曲への布石を形作っている。そして、ある意味では続くタイトル曲の雰囲気を際立たせるための働きをなす。本作の序盤に満ちる内的な憂愁は、リバーブやフェーザーを基調とするエレクトリックギターに乗り移り、シンセポップを下地にしたオルタネイトなロックへと変遷していく。

 

「大きなため息」と銘打たれたこの曲でも、マリカ・ハックマンの歌声には、なにかしら悶々とした憂いが取り巻き、目に映らぬ闇と対峙し続けるかのように、サビの劇的な展開に至るまで、力を溜め込み続け、内面の波間を漂うかのように、憂いあるウェイブを描こうとする。サビで溜め込んだ力を一挙に開放させるが、相変わらず、それは完全な明るさとはならず、深い嘆息を抱え込んでいる。しかし、イントロの静かな段階からノイジーなサビへと移行する瞬間に奇妙なカタルシスがあるのはなぜか。ハックマンが抱える痛みや憂いは他でもなく、見ず知らずの誰かの思いでもある。表向きに明かされることのない、離れた思いが重なりあう時、それは孤独な憂いではなくなり、共有されるべき感覚へと変わる。本当の意味で自らの感情に忠実であるということ、つまり、負の感覚を許容することにより、その瞬間、ハックマンのソングライティングが報われ、他者に対する貢献という類稀なる表現へと昇華されるのだ。苦悩は、内面の感情性を別のもので押さえつけたり、蓋をしようとすることでは解決出来ないのである。

 

「Blood」はハックマン自身による、ささやかなボーカルとアコースティックギターの組み合わせが、最終的にオルタナティヴ・ポップ/フォークという形に昇華されている。ビッグ・シーフ、クレイロ、ブリジャーズをはじめとする、現代のミュージックシーンの重要な立役者の音楽性の延長線上にあるが、その中でもシネマティックな音響効果をアーティスト特有の素朴なソングライティングに織り交ぜようとしている。曲そのもののアプローチは、トレンドに沿った内容ではあるけれども、曲の中盤からは、ダイナミックな展開が繰り広げられ、迫力溢れる表現性へと変化する。イントロから中盤にかけてのアコースティックのベースラインを意識した演奏を介して、ピアノやシンセを複合的に組み合わせ、表面的な層に覆われていた内郭にある生命力を呼び起こすかのようである。そして、タイトルに即して言及するならば、それは内面の血脈が波打ちながら表面的な性質の果てに力強く浮上していく過程を描いているとも言える。

 

 

「Blood」

 

 

「Hanging」は、夢の実現の過程における葛藤のような感覚が歌われ、複数のレーベルをわたりあるいてきたシンガーソングライターとしての実際的な感慨がシンプルなポピュラー・ソングのなかに織り交ぜられている。これは、昨年のThe Golden Dregsの最新作「On Grace & Dignity」で見受けられたように、みずからの人生の重荷をモチーフにしたと思われる楽曲である。しかし、マリカ・ハックマンの楽曲は、単なる憂いの中に沈むのを良しとせず、その憂いを飛び上がるための助走のように見立てている。そして最終的には、アンセミックなポップバンガーへ変化させ、4分弱の緊張感のあるランタイムに収めこんでいる。しかし、タイトル曲と同じように、憂鬱や閉塞感のような感覚が、サビという演出装置により一瞬で変貌する瞬間に、驚きとカタルシスが求められる。とりもなおさず、それは人間の生命力の発露が、頼もしさを感じるほど発揮され、背後のバックトラックを構成するピアノ、シンセ、リズムマシン、そしてマリカ・ハックマンの霊妙なボーカルにしっかりと乗り移っているからである。生命力とは抑え込むためにあるのではなく、それを何らかの形で外に表出するために存在する。それがわかったとき、共鳴やカタルシスが聞き手のもとにもたらされ、同時に、にわかに熱狂性を帯びるのである。 

 


「Hanging」

 

 

しかしながら、「Hanging」で一時的に示された一瞬の熱狂性は、何の目的も持たずに発せられるノイズのように奔放なものにはならず、その後の静謐な瞬間へと繋がっている。「The Lonely House」はアーティスト自身によるピアノの日記とも解釈できるトラックで、ポスト・クラシカルやコンテンポラリー・クラシカルのように楽しめる。しかし、徹頭徹尾、単一のジャンルで構成されるよりもはるかに、この曲は効果的な意味を持つ。それは一瞬の熱狂後にもたらされる静けさがクールダウンの効果を発揮するからであり、聞き手が自らの本性に戻ることを促すからである。そして、アルバムの冒頭で示された情景的な変化は、この段階に来て、優しげな表情を見せる時もある。それは制作者にとっての世界という概念が必ずしも厳然たるものばかりではなく、それとは対象的に柔らかな印象に変わる瞬間が存在する、あるいは、どこかで「存在していた」からなのかもしれない。

 

ハックマンの新作アルバムは、外的な現象と内的な感覚がどのようにリンクしているのかを見定め、それがどのように移ろうのかをソングライティングによってひとつずつ解き明かし、詳細に記録するかのようでもある。歌手の観察眼は、きわめて精彩かつ的確であり、そして内面のどのような微かな変化をも見逃すことはない。そして、一辺倒な表現ではなく、非常に多彩な感情の移ろいが実際の曲の流れ、ときには一曲の中で驚くほど微細に変化することもある。

 

それらの内面的な記録、あるいは省察は、祝福的な表現へと変貌することがある。「Vitamins」では、エレクトロニック/グリッチという現代的なポップスの切り口を通じて、内面的な豊かさへ至るプロセスを表現しようとする。しかし、その感覚は、温かな内面の豊かさに浸されているが、いつもゆらめき、形質というものを持たない。ある形に定まったかと思えば、ダブステップによるリズムを交えながら、エレクトロニックによる別の生命体へと変化していく。それは最終的に、70年代の原初的なテクノの未来的なロマンという形になり、最もダイナミックな瞬間を迎える。しかし、その後、突如それらが途絶え、静かで何もない、何物にも均されていない、本作の序盤とは異なる無色透明の場所にたどり着く。しかし、本当に「たどり着いた」というべきなのだろうか。それは単なる過程に過ぎないのかもしれず、その先もマリカ・ハックマンは貪欲になにかを探しつづける。

 

アルバムの終盤に収録されている「Slime」、「Please Don't Be So Kind」、「The Yellow Mile」では、アルバムの序盤の憂いへと戻り、素朴なインディー・フォークや、ダンサンブルなシンセ・ポップという、本作の重要な核心を形成するアプローチに回帰を果たす。しかし、不思議なことに、中盤の収録曲を聞き終えた後、序盤と同じような音楽性に帰って来たとしても、その印象はまったく同じ内容にならない。確実に、作品全体には、表向きのものとは別の長い時間が流れている。受け手が、そのことをなんとなく掴んだとき、このアルバムがフリオ・コルタサルの「追い求める男」のような神妙な意味合いを帯びるようになる。同じような出来事が起きた時、おしなべて多くの人は「同じことが起きた」と考える。けれど、それは先にも述べたように単なる思い込みにすぎない。どの出来事も同じ意味を持つことはありえないのである。

 

 

85/100

 


 

 

©Mark Seliger


シェリル・クロウが、3月29日にリリースするアルバム『Evolution』のタイトル曲を公開した。この曲はマイク・エリゾンドのプロデュースで、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリスト、トム・モレロのギター・ソロがフィーチャーされている。


「ギターとヴォーカルだけで曲を書いて、プロデューサーのマイク・エリゾンドに送ったんだ。クロウはプレスリリースで語っている。「わたしにとって、トムの演奏はどこか別の惑星から来たものなんだ。私たちが同じ年にロックの殿堂入りを果たしたのは、ちょっとした偶然の巡り合わせなんだ」

 


シェリル・クロウは、米国のポピュラー・ミュージックとロックシーンを長年リードしつづけてきた。7枚のアルバムの他、2枚のコンピレーション・アルバム、1枚のライブ・アルバムを発表し、多数の映画のサウンドトラックに楽曲を提供している。全米で1,700万枚、世界で5,000万枚のレコード・セールスを記録。9回にわたってナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンスからグラミー賞を受賞(ノミネートは32回に及ぶ)。 


代表曲に「オール・アイ・ワナ・ドゥ」「イフ・イット・メイクス・ユー・ハッピー」「マイ・フェイヴァリット・ミステイク」がある。

 

ミュージシャン、活動家のほか、女優としてもNBCの『30 ROCK/サーティー・ロック』、ABCの『GCB 』、『クーガータウン』、ディズニー・チャンネルの『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』第4シーズン、ジョン・スチュワートとスティーヴン・コルベアの『Rally to Restore Sanity and/or Fear 』、『One Tree Hill』などテレビ番組に出演している。


ブライトンの四人組のロックバンド、YONAKAが2024年の幕開けを告げる「Predator」を発表した。


このニューシングルは、旧来のバンドのアプローチとは異なり、メタルコアやラップメタルの影響を交えたミクスチャー・サウンドとなっている。その音楽性は90/00年代のミクスチャーロックにヒントがありそうだが、もちろんそれを2020年代の形にアップデートしているのは言うまでもない。

 

2023年、ユニバーサルミュージックから発表されたEP『Welcome To My House』では、マンチェスターのPale Wavesのように、ポップ・パンクとハイパー・ポップを融合させたスタイルで話題を呼んだ四人組。だが、YONAKAを単なる「ニューライザー」等と称する段階は過ぎているのではないだろうか。Evanescence(エヴァネッセンス)を基調としたメタルコアに近い音楽性、チャーリーXCXのハイパーポップ、現代的なUKラップを吸収し、それらをポピュラーミュージックとして昇華したスタイルは劇的である。今後さらに多くのファンベースを獲得しても不思議ではない。昨年のG2、Jeris Johnsonとのコラボレーション曲「Detonate」の進化系がニューシングル「Predator」で遂にお目見えとなった。問題無用のベストニュートラックだ。

 

YONAKAは、2023年、イギリスの最大級の都市型の音楽フェスティバル、レディング/リーズに出演し、続いて彼らの新たな代名詞となるアンセムソング「PANIC」を発表した。今後、急上昇が予想されるブライトンのロック・バンドに注目したい。

 

 

「Predator」



ヴェロニカが10月のカムバック・シングル『Perfect』に続き、新たなバンガーを発表した。このオージー・デュオの最新曲は『Detox』で、2曲とも3月にBig Noiseからリリースされるアルバム『Gothic Summer』からのシングル。



元オーストラリアのプロBMXライダーであるパット・フレイン監督と制作した『Detox』のビデオについて、ヴェロニカはこう説明している。「ワイド・ショットと極端なクローズ・アップを対比させ、ダンス・シーンを意図的に即興で作ることで、その瞬間の身体的・感情的なミラーリングを促したんだ」




 

ロンドン、ワトフォードのシンガーソングライター、Griffがライブショートパフォーマンスフィルムを公開した。映像は、彼女の最新プロジェクト『Vol.1』に合わせて、グリニッジ王立博物館のクイーンズ・ハウスで撮影された。「vert1go vol.1」はワーナー・ミュージックより発売中。


「Vol.1」のライブ・パフォーマンス・フィルムは、リード・シングル「Vertigo」で始まる。グリフはグリニッジ王立博物館クイーンズ・ハウスの敷地内を探索しながら、「Into The Walls」、そしてグリフが庭園でゼロからライブで作り上げた「19th Hour」を披露。4曲入りのvert1go vol.1に新たに追加された "Astronaut "のライブビジュアルは、先週映画の公開を予告。

 

この曲では、ソングライティングのヒーローであり、ツアーパートナーでもあるクリス・マーティンがピアノを弾いている。



Weekly Music Feature


Daneshevskaya




ニューヨーク/ブルックリンのアンナ・ベッカーマンのプロジェクトであるダネシェフスカヤ(Dawn-eh-shev-sky-uh)は、彼女自身の個人的な歴史のフォークロアに浸った曲を書く。

 

アーティスト名(本当のミドルネーム)は、ロシア系ユダヤ人の曾祖母に由来する。ベッカーマンは音楽一家に育ち、父親は音楽教授でありアンナ・ベッカーマンのプロジェクト。

 

ベッカーマンは音楽一家に育ち、父親は音楽教授、母親はオペラを学び、兄弟は家で様々な楽器を演奏していた。彼女は父親の大学院生からピアノを習い、自分で作曲を試みる前は、シナゴーグで教えられた祈りを歌った。彼女自身の曲は、宗教的な意味合いというよりは、ベッカーマン自身の過去、現在、未来の賛美歌のような、アーカイブ的な記録として、スピリチュアルなものを感じることが多い。「音楽の楽しみは人と繋がること、私はそうして育ってきたの」と彼女は言う。


彼女のデビューEP『Bury Your Horses』が人と人とのつながりの定点と謎を縫い合わせたのに対し、『Long Is The Tunnel』(Winspearからの1作目)は、出会った人々がどのように自分の進む道に影響を与えるかを考察している。ベッカーマンはずっとニューヨークに住んでいるが、彼女のアーティスト名(そして本当のミドルネーム)はロシア系ユダヤ人の曾祖母に由来する。『ロング・イズ・ザ・トンネル』を構成する曲を書いている最中に、彼女の祖父母は2人とも他界した。祖母(詩人であり教師でもあった)に関する話は、「過去の自分の姿」のように感じられると同時に、ベッカーマンがどこから来たのかという線に色をつけたいという燃えるような好奇心に火をつけた。

 

ベッカーマンは祖母の手紙を頻繁に読み返したが、その手紙は「憧れを繊細かつ満足のいくリアルな方法で伝えていた」という。痛烈な「Somewhere in the Middle」のような曲は、彼女の人生に残された人々を不滅のものとし(「もう二度と会うことはないだろう」)、過去を再現することで、しばしば暗い真実が表面化する。殺伐とした現実にもかかわらず、このEPは伝統的なソングライティングと現代的な言い回しの間の独特のコラージュを描いており、自己発見の純粋な輝きに魅せられる。


昼間はブルックリンの幼稚園児のためのソーシャルワーカーを務めるベッカーマンの音楽は、すべてが険しいと感じるときに生きる子供のような純粋さを追求することが多い。「子供が登校時に親に別れを告げるとき、もう二度と会えないような気がするものです」と彼女は説明する。

 

『ロング・イズ・ザ・トンネル』は、そのような心の傷の感覚を強調している。「人に別れを告げることは、私にとってとても神秘的なことなの」と彼女は言う。2017年から数年間かけて書かれた7曲は、パッチワークのような思い出/日記で、彼女の人生に関わる人々へのエレジーでもある。Model/ActrizのRuben Radlauer、Hayden Ticehurst、Artur Szerejkoによる共同プロデュースで、これらの初期デモの最終バージョンには、Black Country, New RoadのLewis Evans(サックス)、Maddy Leshner(鍵盤)、Finnegan Shanahan(ヴァイオリン)も参加し、各曲をそれ自身の中の世界のように聴かせるきらびやかな楽器編成を加えている。


ベッカーマンは、音楽を聴くときはまず歌詞に惹かれると強調する。「私が曲を書くことを学んだ方法の多くは詩を通してであり、それは私にとって言語についての新しい考え方なのです」 

 

彼女の祖母の足跡をたどる新作EPは、古典的な構成に、別世界のようでもあり、地に足のついた独特なメタファーが組み込まれている。『ロング・イズ・ザ・トンネル』は、逃避の形を示す超現実的なイメージで満たされている。曲のうち2曲は、鳥を題材にしており、ベッカーマンは、目を離せないものに目を奪われる一方で、自由にその場を離れることもできると説明している。「水中にいるような気分にさせてくれるアートが好きなんだ」とベッカーマンは過去のインタビューで語っているが、『ロング・イズ・ザ・トンネル』は、欲望、感情、ファンタジーに完全に没入しているような感覚を長引かせる。と同時に、「『ピンク・モールド』のような曲は、私が違うバージョンの愛を学ぼうとしていることを歌っているの」と彼女は説明する。彼女のラブソングの陰鬱なメランコリアは、しばしば他の誰よりも彼女の内面に現れている。彼女が本当に求めているのは健全な関係の自立だ。「私たちは互いのものにはならないけれど、この人生を分かち合う」 多くの場合、このような魅惑的なおとぎ話は途切れてしまうにしても。 


「私は運命の人じゃない!、私は運命の人じゃない!"と繰り返すフレーズは、新しい存在の野生の中に生まれた呪文のようである。


『Bury Your Horses』と『Long Is The Tunnel』のタイトルはどちらも特定のカーゲームにちなんだもので、後者はトンネルが何秒続くかを当てる内容だ。ベッカーマンは、それぞれの曲を通して建築的な注意深さを維持し、彼女の視点を越えてゆっくりと世界を構築していく。「海が出会う場所がある/その下には暗闇がある」と彼女は「Challenger Deep」の軽やかさの中で歌いながら夢想する。誰かを理解しようと近づけば近づくほど、その人の欠点が明らかになることがある。しかしながら、結局のところ、愛とは、目的のための手段にすぎないのかもしれない。

 

 -Winspear




『Long Is A Tunnel』/ Winspear


 

このアルバムは、ブルックリンのシンガー、ダネシェフスカヤの「個人的なフォークロア」と称されている通り、奥深い人間性が音楽の中に表出している。それは21世紀の音楽である場合もあり、それよりも古い時代である場合もある。最近の音楽でよくあるように、自分の生きる現代から、父祖の年代、また、複数の時代に生きていた無数の人々の記憶のようなものを呼び覚まそうという試みなのかもしれない。それは、現代的な側面として音楽にアウトプットされるケースもあれば、20世紀のザ・ビートルズが全盛期だった時代、それよりも古いオペラや、東ヨーロッパの民謡にまで遡る瞬間もある。しかし、音楽的にはゆったりとしていて、親しみやすいポップスが中心となっている。フォーク、バロック・ポップ、チェンバー・ポップ、現代的なオルト・ロックまで、多角的なアプローチが敷かれている。そして、アルバムを形成する7曲には、普遍的な音楽の魅力に焦点が絞られている。時代を越えたポップスの魅力。

 

「Challenger Deep」

 



アルバムは、幻想的な雰囲気に充ちており、安らかさが主要なサウンドのイメージを形成している。全般的に、おとぎ話のようなファンタジー性で紡がれていくのが幸いである。ダネシェフスカヤは、自分の日頃の暮らしとリンクさせるように、子供向けの絵本を読み聞かせるかのように、雨の涼やかな音を背後に、懐深さのある歌を歌い始める。ニューヨークのフォークグループ、Floristは、昨年のセルフタイトルのアルバムにおいて、フォーク・ミュージックにフィールドレコーディングやアンビエントの要素をかけ合わせて、画期的な作風で音楽ファンを驚かせたが、『Long Is A Tunnel』のオープニング「Challenger Deep」も同様に『Florist』に近い志向性で始まる。ナチュラルかつオーガニックな感覚のあるギターのイントロに続き、ダネシェフスカヤのボーカルは、それらの音色や空気感を柔らかく包み込む。童話的な雰囲気を重んじ、和やかな空気感を大切にし、優しげなボーカルを紡ぐ。デモソングは、ほとんどGaragebandで制作されたため、ループサウンドが基礎になっているというが、その中に安息的な箇所を設け、バイオリンのレガートやハモンド・オルガンの神妙な音色を交え、賛美歌のような美しい瞬間を呼び覚ます。驚くべきことに、シンガーとして広い音域を持つわけでも、劇的な旋律の跳躍や、華美なプロデュースの演出が用意されているわけではない。ところが、ダネシェフスカヤのゆるやかに上昇する旋律は、なにかしら琴線に触れるものがあり、ほろ苦い悲しみを誘う瞬間がある。

 

「Somewhere in The Middle」は「Challenger Deep」の空気感を引き継ぐような感じで始まる。同じようにアコースティックギターのループサウンドを起点として、インディーロック的な曲風へと移行していく。

 

イントロではフォーク調の音楽を通じて、吟遊詩人のような性質が立ち現れる。続いて、ギターにベースラインとシンプルなドラムが加わると、アップテンポなナンバーに様変わりする。この曲には、Violent Femmesのようなオルタナティヴ性もあるが、それをポップスの切り口から解釈しようという制作者の意図を読み取る事もできる。ときに、フランスのMelody Echoes Chamberのインディー・ポップやバロック・ポップに対する親和性も感じられるが、トラックには、それよりも更に古いフレンチ・ポップに近いおしゃれさに充ちている。曲の雰囲気はシルヴィ・バルタンのソングライティングに見られる涼やかで開放的な感覚を呼び覚ますこともある。曲の最後には、テンポがスロウダウンしていき、全体的な音の混沌に歌の夢想性が包み込まれる。 

 

 

「Bougainvilla」



「Bougainvilla」には、歌手のソングライティングにおける特異性を見いだせる。ダネシェフスカヤは、さながら演劇の主役に扮するかのように、シアトリカルな音楽性を展開させる。ミュージカルの音楽を明瞭に想起させる軽妙なポップスは、音階の華麗な駆け上がりや、チェンバー・ポップの夢想的な感覚と掛け合わされて、アルバムの重要なファクターであるファンタジー性を呼び覚ます。そして、シンガー自身の緩やかで和らいだ歌により、曲に纏わる幻想性を高めている。さらにヴィンテージ・ピアノ、ヴィブラフォン、コーラスを散りばめて、幻想的な雰囲気を引き上げる。しかしながら、嵩じたような感覚を表現しようとも、音楽としての気品を失うことはほとんどない。それはメインボーカルの合間に導入される複数のコーラスに、要因が求められる。アルバム制作中に亡くなったという祖(父)母の時代の言葉、不確かな何かを自らのソングライティングにアーカイブ的に声として取り入れているのは、(英国のJayda Gが既に試みているものの)非常に画期的であると言える。さらに、ダネシェフスカヤは驚くべきことに、自分の知りうることだけを音に昇華しようとしているのではなく、自分がそれまで知り得なかったことを音にしている。だからこそ、その音楽の中に多彩性が見いだせるのである。

 

アルバムには「鳥」をモチーフにした曲が収録されているという。なぜ、鳥に魅せられる瞬間があるのかといえば、私達にとって不可解であり、ミステリアスな印象があるからなのだ。「Big Bird」は、ニューヨークで盛んな印象のあるシンセ・ポップ/インディーフォークを基調とし、それをダイナミックなロックバンガーへと変化させている。特に、ゆったりとしたテンポから歪んだギターライン、ダイナミック性のあるドラムへと変化する段階は、鳥が空に羽ばたくようなシーンを想起させる。ドリーム・ポップの影響を感じさせるのは、Winspearのレーベルカラーとも言える。そして、そのシューゲイズ的な轟音性は曲の中盤で途切れ、ベッドルームポップ的な曲に変化したり、童話的なインディーフォークに変化したり、曲の展開は流動的である。しかし、その中で唯一不変なるものがあるとするなら、それらの劇的な変化を見届けるダナシェフスカヤの視点である。劇的なウェイブ、それと対象的な停滞するウェイブと複数の段階を経ようとも、その対象に注がれる眼差しは、穏やかで、和やかである。もちろん外側の環境が劇的に移ろおうとも、ボーカルは柔らかさを失うことがない。ゆえに、最終的にシューゲイザーのような轟音性が途切れた瞬間、言いしれない清々しい感覚に浸されるのである。

 

 

例えば、ニューヨークのBigThief/Floristに象徴されるモダンなフォークの音楽性とは別に、続く「Pink Mold」において、ダネシェフスカヤはより古典的な民謡やフォークへの音楽に傾倒を見せる。アメリカーナ、アパラチア・フォークのような米国音楽の根幹も含まれているかもしれない。一方、アルプスやチロル地方やコーカサス、はては、スラブ系の民族が奏でていたような哀愁に充ちた、想像だにできない往古の時代の民謡へと舵を取っている。これは、米国のブルックリンのハドソン川から大西洋を越え、見果てぬユーラシア大陸への長い旅を試みるかのようでもある。セルビア系の英国のシンガー、Dana Gavanskiの音楽性をはっきりと想起させる国土を超越したコスモポリタンとしてのフォーク音楽である。それはまた、どこかの時代でジョージ・ハリソンが自分らしい表現として確立しようと企てていた音楽でもあるのかもしれない。これらの西欧的な感覚は、さながら中世の船旅のようなロマンチシズムを呼び覚まし、どのような民族ですら、そういった時代背景を経て現在を生きていることをあらためて痛感させる。

 

メロトロン、淑やかなピアノ、ダネシェフスカヤのボーカルが掛け合わされる「Roy G Biv」は、60、70年代のヴィンテージ・レコードやジューク・ボックスの時代へ優しくみちびかれていく。夢想的な歌詞を元にし、同じようにフォーク音楽とポピュラー音楽を融合を図り、緩急ある展開を交えて、ビートルズのアート・ポップの魅力を呼び覚ます。後半にかけてのアンセミックなフレーズは、オーケストラのストリングスと融合し、すべては完璧な順序で/降りていく最中なのだとダネシェフスカヤは歌い、美麗なハーモニーを生み出す。最後の2曲は、ソロの時代のジョン・レノンのソングライティング性を継承していると思えるが、こういった至福的な気分と柔らかさに充ちた雰囲気は、「Ice Pigeon」において更に魅力的な形で表される。

 

シンプルなピアノの弾き語りの形で歌われる「Ice Pigeon」では、「Now And Then」に託けるわけではないけれど、ジョン・レノンのソングライティングのメロディーが、リアルに蘇ったかのようでもある。この曲に見受けられる、ほろ苦さ、さみしさ、人生の側面を力強く反映させたような深みのある感覚は、他のシンガーソングライターの曲には容易に見出しがたいものである。考えられる中で、最もシンプルであり、最も素朴であるがゆえ、深く胸を打つ。ダネシェフスカヤのボーカルは、ときに信頼をしたがゆえの人生における失望とやるせなさを表している。最後の曲の中で、ダネシェフスカヤは、現実に対する愛着と冷厳の間にある複雑な感情性を交えながら、次のように歌い、アルバムを締めくくっている。「信じてるのは私じゃない/やってくるもの全部が私には役に立たない/なぜならそれが何を意味するのか知っているから」

 

 

 

92/100

 

 

 

 「Ice Pigeon」

 

イギリスのシンガー、Dua Lipaがニューシングル「Houdini」をリリースした。このリリースを記念して、新しいミュージック・ビデオが撮影された同じ場所で、ロンドンのイングリッシュ・ナショナル・バレエ団のファン・イベントが開催された。1400万回の再生数を記録しているMVは下記よりご覧ください。


「この曲は、私の独身時代の最も明るく、そして自由な部分を表現しています」と彼女は説明する。"Houdini "はとても舌っ足らずな曲で、その人が本当に私にとって価値のある人なのか、それとも結局は単なるゴーストのようになってしまうのか、ということを探っているわけ」


「何かがあなたをどこに連れて行くかわからない。人生があなたに投げかけるものに対してオープンであることの素晴らしさ。反抗的な至福の感覚をファンと分かち合うことを楽しみにしてます」


この新曲は、HAIM、Charli XCX、Tame Impala、Ice Spiceと共に『バービー』の映画のサウンドトラック「Dance The Night」に続くシングル。デュア・リパの最新作は2020年の「Future Nostalgia」。以後、大規模なワールド・ツアーを敢行し、2022年後半に終了させた。

 

 

「Houdini」

 


 

 

ロサンゼルスのシンガーソングライター、Laufey(レイヴェイ)が『Bewitched』の4thシングル「California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)」を公開した。日本国内では、Asteri Entertainmentより本日発売される。ストリーミングは本記事の下部より。

 

アイスランドと中国、両方のルーツを持ち、現在はLAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、マルチ奏者のレイヴェイ。 2023年6月5日(月)に行われたブルーノート東京での初来日公演が2ステージとも5分で即完した。


秋のワールドツアーも35公演瞬く間にソールドアウトさせるなど、全世界でレイヴェイ旋風を巻き起こす中リリースとなる「California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)」は、前シングル「Bewitched」に続き、ロンドンを拠点とするフィルハーモニア管弦楽団を迎えた一曲。

 

「アイアンマン3」、「アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン」、「ベイビー・ドライバー」、「王様と私」などの数々のハリウッド映画のサウンドトラックでも知られる、世界的に有名なオーケストラの豊かなサウンドが、“ジャズ、クラシック、ポップを温かく融合させたスタイル” と称されるレイヴェイのドリーミーなサウンドとマッチしている。


「子供たちはもちろん、生粋のクラシック批評家たちも、彼女の音楽を愛しています。彼女のサウンドを『ジャズポップ』と表現することもできますが、彼女の、時代を超越したサウンドを1つのジャンルに当てはめることは不可能でしょう。」—「VOGUE Scandinavia」


 

 

      

また、Laufeyはファンからのクロスワードパズルの解答を募る形で、『Bewitched』のトラックリストを下記の通り公表している。

 

 

 

 

数々のメディアから、「クラシックやスタンダード・ジャズからインスピレーションを得て
オリジナルの音楽スタイルを確立している」と称賛されるレイヴェイ。若い世代から着実に支持を集める次世代の歌姫の時代を超えたサウンドスケープをお楽しみください。



Laufey 「California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)」ーNew Single-


 

リリース日:2023年8月24日(木)

レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT (アステリ・エンタテインメント)


ストリーミング/ダウンロード:

https://asteri.lnk.to/california

 

©Brianna Blank


ビヴァリー・グレン=コープランドが、ニューアルバム『The Ones Ahead』の新曲「Stand Anthem」を発表した。グレン=コープランドと彼の長年のパートナーであるエリザベスとのコラボレーションで、「Harbour (Song for Elizabeth)」「Africa Calling」に続く作品です。


「"Stand Anthem”は元々、エリザベスが書いた「Bearing Witness」という一人芝居のエッセンスを表現するために書かれた曲だった。「彼女はこのショーの脚本、プロデュース、演出、出演を担当し、マウント・アリソン大学のサポートのもと、あの比類なき(今は亡き)カナダのドラマトゥルク、シャロン・ポロックの支援を得てワークショップを行った。ショーでは、私と先住民の長老が「長老の声」を代弁した。これはエリザベスの先見的で、地球活動家的なショーで、まったく素晴らしいものでした」

 

「Stand Anthem」



Beverly Glenn Copelandの新作アルバム『The Ones Ahead』はTransgressiveより7月28日発売予定。

 Maisie Peters -『The Good Witch』

 

Label: Warner Bros.

Release: 2023/6/24



Review


結局、アルバムの発売日というのは大局的に見ると、売上を大きく左右する場合がある。レーベル側の売り込みの定石としては、話題のイベント開催と重ならないように慎重にリリース日を選ぶということに尽きる。去年もそうだったが、現地の音楽メディアのプレス・ルームが、音楽フェスティバルが開催される日には空っぽになり、メールなどを送っても連絡がつかなくなる場合が多い。 


今年、来日公演も行ったブライトンのシンガーソングライター、メイジ−・ピーターズはグラストンベリー・フェスティバルの初日に、ニューアルバム『The Good Witch』の発売日を合わせてきたわけだが、これはレーベルが相当この作品によほど自信があるか、もしくは発売日に無頓着であるかのどちらかである。もちろん後者については考えづらいので、他のアーティストのリリースが先延ばしにされる日を見計らい、前者の奇策を打ったのが、アルバムの宣伝の意図とも推測される。

 

そして、世界有数の巨大レーベルの奇策はそれなりに成功を収めるかもしれない。もちろん、イギリスの全ての音楽ファンがグラストンベリーに参加出来るわけではない。このフェスティバルはチケット発売日から数時間後にソールドアウトとなった。チケットが取れずに、夜な夜な枕を濡らした音楽ファンも少なくはない。つまり、メイジー・ピーターズの新作はグラストンベリーに参加できなかったポップスファンの心を慰め、フェスティバル級の楽しみを与えてくれるはずだ。

 

アーティストはポップネスに欠かさざる清涼感溢れる音楽で、ミュージック・シーンに清新な風を巻き起こそうとしている。アルバムには、アーティスト自身の恋愛観などを絡めながら、「Good Witch-良き魔女」として振る舞おうとするポップスターの姿を捉えることが出来る。スタジアムでのライブを意識したアンセミックなポップナンバーの数々は、ポップミュージックファンの最低限の要求に応えるもので、もしかすると、それ以上の至福の瞬間を与えてくれる可能性もある。前2作では、甘酸っぱいキャンディー・ポップとも称すべき音楽性を提示していたメイジー・ピーターズだったが、三作目では、さらにオープンハートな曲作りが行われている。メイジ−・ピーターズは、UKポップスのトレンドを踏襲し、旧来のアヴリル・ラヴィーンの名曲のようにロックのテイストを交えた王道のポピュラー・ミュージックを展開する。表向きには親しみやすさを意識してはいるが、聴き応えがあるため一度聴いて飽きるような作品ではない。どころか何度も聞き返したくなるような中毒性もあるように思えるが、これはアーティストの音楽に対する強い愛情がこれらの収録曲に余すところなく込められているがゆえなのだ。

 

特に、前2作に比べて、昨年ヒットを記録したサワヤマの音楽性を少なからず意識したダイナミックなポップスナンバーがずらりと並んでいる。ナイーブさとパワフルさが混在する絶妙なポップスの数々である。もちろん、Tiktokのように、一曲だけ取り出して気軽に楽しんでみるのもいいだろうし、アルバムを購入し、最初から最後までじっくりと聴いてみてもいい。聞き方を選ばない自由なモダン・ポップという面では、昨年のサワヤマの最新作「Hold The Girl」に近いものがある。リナ・サワヤマは、昨年の最新作において、ハイパーポップの理想的な形を提示したのだったが、ポップスの中にエヴァネッセンスのメタリックな要素や、フックの効いたロックないしはフォーク・ミュージックの要素を絶妙に織り交ぜることで、最高傑作を生み出した。


メイジー・ピーターズも、その成功例に倣い、ポップスの中に複数のジャンルを織り交ぜ、強いスパイスを加えることに成功している。シンガーソングライターの作曲における試行錯誤の成果が、「Body Better」、「Lost The Breakup」、「Therapy」といったハイライト曲に顕著な形で現れている。これらの曲は、ラムネ・ソーダを飲み干すときの爽快感があり、青春の甘酸っぱい雰囲気に溢れている。曲の構成もすごくわかりやすく、サビに近いフレーズもあるので、それほど洋楽に詳しくないJ-Popのリスナーにも強烈にプッシュしておきたい。

 

スタジアム級のダイナミックなポップスの楽曲群に加えて、終盤の収録曲では多彩な音楽性を織り交ぜて新たなチャレンジをしている。「Run」では、グライムなどをはじめとするUKのクラブミュージックを基調にしたポップスに、さらに、「Two Weeks Ago」では、シャナイア・トゥエインを彷彿とさせるフォーク・ミュージックに取り組み、さらに「History Of Man」では、しっとりとしたバラード・ソングにも取り組んでいる。


表向きのガーリーなイメージとは別の大人の雰囲気を交えたバラードは、アーティストが「良き魔女」に変身した瞬間だ。これらの多彩な音楽性は、以前の作風にはなかった要素で、アーティストがシンガーソングライターとしての次なるステップに歩みを進めた証でもある。本作の音楽性には、まだ見ぬソングライターとしての潜在的な可能性が秘められている。ブライトンのメイジー・ピーターズは、世界的なポップ・スターへの階段を着実に駆け上っている最中なのである。

 

  

86/100

 

 

 Featured Track 「Lost The Breakup」

 

 ©︎Chuck Grant

 

ラナ・デル・レイの父親であるロブ・グラントは、デビュー・アルバム『Lost at Sea』をリリースしました。

 

このアルバムから新しいシングルが公開されました。「Hollywood Bowl」は先にリリースされたタイトル曲(MVはこちらより)に続き、アルバムに収録された娘との2つのコラボレーションのうちの1つです。以下よりお聴きください。アルバムのストリーミングはこちらからどうぞ。


ローラ・シスク、ザック・ドーズ、ジャック・アントノフとの共同プロデュースによるこの曲で、ラナ・デル・レイは「2回、ハリウッド・ボウルで歌った/そして私のパパはビリー・ジョエルのように演奏する/そして私は年をとっても若いし、年をとっても若い/私のハートと魂の気まぐれで」と歌いあげています。


ロブ・グラントはこの作品について次のように説明しています。「このアルバムの中で一番好きな曲のひとつだ!ラナが見せるヴォーカルの幅は信じられないほどだ。ピアノは繊細なメロディで始まり、美しいリリースへと発展していく...そこで音楽は突然あなたを持ち上げ、そして席巻するだろう」

 

「Hollywood Bowl」

 

 ©︎Briana  Blank

 

米国出身で、カナダでその半生の多くを過ごした歌手、Beverly Glenn-Copeland(ビバリー・グレン=コープランド)は、約20年ぶりのアルバム『The Ones Ahead』から2ndシングル「Harbour (Song for Elizabeth)」を公開しました。先行公開された「Africa Calling」に続く作品で、Indigo Risingのメンバー、Jeremy Costello(ジェレミー・コステロ)がボーカルを務めています。

 

ノバスコシア州のLakewind Sound Studiosで撮影され、Posy Dixonが監督した新しいライブ・パフォーマンス・ビデオも下記からチェックしてみてください。

 

「エリザベスの誕生日には、毎回彼女に曲を書いていますよ」とグレン=コープランドは声明でコメントしています。「この曲を書いた日付は定かではないが、彼女がそのコピーを持っていたのは幸運だった。さもなければ失われていただろうから。私はすっかり忘れていたんです」

 

 「Harbour (Song for Elizabeth)」

 

 

エリザベスと私は、1992年以来の友人でした。2007年、共通の友人の結婚式で、個人的な深い愛の火花が散りました(その結婚式の前に彼女が見た私たちに関する夢について、ここには素晴らしい話があるのですが、それは彼女が語ることになるでしょう)。私たちは2009年に結婚した。以来、彼女は個人的にもクリエイティブな面でも、人生のあらゆる場面で私のパートナーとなってくれています。 


 この曲は、結婚当初の数年間、私たちを支えてくれた彼女の深い愛と私への献身を称えるためにこのアルバムに収録しました。この数年間、肉体的にも精神的にも辛い時期があり、私の世話をするため、自分の創作活動を諦めねばならなかった彼女の献身を、私は認め、称えなければなりません。私にとり、港は、人生の荒波にもまれたときに安全な場所を意味します。エリザベスは、私にとってまさにそのような存在だった。彼女は、世界中の誰も気にしていないような時代でも、私の仕事を信じて切ってくれた。彼女は宇宙が与えてくれた私の人生の愛であり、私は真心から感謝しています。


ビバリーグレン=コープランドの新作アルバム『The Ones Ahead』は、7月28日にTransgressiveからリリースされる予定です。

 


カナダ/アメリカの歌手で作曲家のビバリー・グレン=コープランドが、約20年ぶりのニューアルバムを発表しました。『The Ones Ahead』は7月28日にTransgressiveから発売されます。直近のソロ・リリースは2004年の『Primal Prayer』だが、2020年には『Transmissions』を共有している。『The Music of Beverly Glenn-Copeland』は、ライブ演奏やアーカイヴ録音を含む優れたコンピレーションです。

 

『The Ones Ahead』は、インディゴ・ライジングをバックバンドに迎え、ジョン・ハーバーマンがプロデュースして録音された。トランスの先駆者であり、熱心なスピリチュアリストでもあるビバリーは、「古い世界が崩れ去る中、新しい世界が生まれるのを待っているのです。私たちのさまざまな力が必要とされているのです。まだ来ていない人たちの世代が、私たちを呼び寄せているのです」


ニューアルバムからの最初のシングルは、ポリリズムのパーカッションと暖かいボーカルで高揚感を与える「Africa Calling」です。

 

「80年代、私はDidoという西アフリカの太鼓の名手と共演する機会に恵まれました。このドラムの伝統の美しさは、『アフリカ・コーリング』の中で探求されています」と、ビバリーは話してくれました。

 

「長年にわたり、多くの会話をする中で、私は、アフリカン・ディアスポラの他の多くのメンバーと、定義できない、名前のない感覚、つまり天職を共有していることを理解するようになりました。悲しみと同時に、大西洋を横断する奴隷貿易の時代に家系が引き裂かれ、隠されてきた自分たちのルーツを知りたいという切望がある。植民地主義のしがらみにとらわれた世界で、この何世代にもわたる切望に耳を傾ける必要があるのは、私一人ではないことを私は知っています」


「Africa Calling」


 

Beverly Glenn-Copeland 『The Ones Ahead』


 

Label: Transgressive

Release: 2023/7/28

 

Tracklist:


1. Africa Calling

2. Harbour (Song For Elizabeth)

3. Love Takes All

4. People Of The Loon

5. Stand Anthem

6. The Ones Ahead

7. Prince Caspian’s Dream

8. Lakeland Angel

9. No Other