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オレゴン州ポートランドを拠点に活動するアーティスト、ローラ・ヴィアーズ(Laura Viers)がニューアルバム『Phone Orphans』を発表した。昨年の『Found Light』に続くこのアルバムは、11月3日に自身のRaven Marching Bandからリリースされる。本日リリースされるリード・シングル「Rocks of Time」は、「私の最愛の兄であり、献身的な叔父であるスコット・ヴェアーズについて書いたもの」とヴェアーズは説明している。とヴィアーズは説明している。


ヴィアーズは、8年分の携帯電話のボイスメモを整理して、14曲入りのアルバムを制作した。「私の50歳の誕生日に、そして30年間曲を書き続けてきて、これらの "Phone Orphans "を明るみに出すことができて、とても気分がいい」とヴィアーズはプレスリリースで述べている。

 

「これらの曲は、8年以上も私の携帯電話に隠れていたものもある。私の家族、恋人たち、そして私自身について歌ったものです。リビングルームで一人でボイスメモアプリに録音したんだ。リラックスした感じが好き。これらの曲はマスタリングされたが、録音に編集は加えていない。私の芸術的なプロセスを垣間見ることができる親密な時間を楽しんで。ロザリー・ソレルズの'Up is a Nice Place to Be'とフェデリコ・ガルシア・ロルカの詩を歌詞にした'The Archers'以外はすべて私の曲です」

 

 

「Rocks of Time」




Laura Viers 『Phone Orphans』

Label: Raven Marching Band

Release: 2023/11/3


Tracklist:


1. Creatures of a Day

2. If You Could Hold Someone

3. Rocks of Time

4. Tree Climber

5. Up Is a Nice Place to Be

6. The Archers

7. Tiger Ocean Instrumental

8. Smoke Song

9. Valentine

10. Magnolia Sphere

11. Swan Dive

12. Next One, Maybe

13. Piano Improv

14. Beautiful Dreams



Weekly Music Feature

 

Mitski 



©Ebru Yildiz

 

「希望や魂や愛が存在しないほうが人生は楽だと感じることがある・・・」とミツキは言う。しかし目を閉じ、何が本当に自分のものであるのか、差し押さえられたり取り壊されたりすることのないものは何なのかを考えたとき、ほんとうの愛が見えてくる。「私の人生で最高のことは、人を愛することだ」

 

「私が死んだ後、私が持っているすべての愛を残せたらいいのに、と思う。そうすれば、私が作り出したすべての善意、すべての善良な愛を他の人々に輝かせることができるのだから・・・」彼女は、最新アルバム『The Land Is Inhospitable and So Are We』が、自分の死後もずっとその愛を照らし続けてくれることを願っている。このアルバムを聴くと、まさにそのように感じる。「この土地に取り憑いている愛のようだ。これは私にとって最もアメリカ的なアルバム」と、ミツキは7枚目のアルバムについて語っているが、その音楽は、私的な悲しみや痛ましい矛盾を抱えたアメリカなる国家を直視する深甚な行為であるかのように感じられる。

 

このアルバムは、サウンド的にもミツキの最も広大かつ壮大、そして賢明な内容に彩られている。曲はアーティストの心の傷を示し、そして同時に積極的に癒しているかのようだ。ここでは、愛は数億光年も先にある遠い星からの光の反射さながらに、私達の優しい日々を祝福するため、タイムリープしている。アルバムの全体には、大人になり、一見すると平凡な心の傷や、しばしば表向きには歌われることがない莫大にも感じられる喜びによる痛みがあふれている。

 

これはアーティストによる小さく大きな叙事詩である。グラスの底から、思い出と雪でぬかるんだ車道、アメリカ中西部を疾走する貨物列車のアムトラック、そして目が眩むほど私達が住む場所から離れた月へと、すべてが、そして誰もが、痛みで叫びながら、愛に向かってアーチを描いているのだ。愛とはそもそも、人を寄せ付けぬサンクチュアリなのであり、私たちを手招きしながらも、時に拒絶する。この場所--この地球、このアメリカ、この身体--を愛するには、積極的な努力が必要となる。しかし、それは不可能かもしれない。最高のものはいつだってそうなのだから。

 

 

『The Land Is Inhospitaland and So Are We』/ Dead Oceans

 




前作『Laurel Hell』では、ビルボード・トップ・アルバム・チャートで初登場一位を記録し、Talking Headsのデイヴィッド・バーンとのコラボレーションにより、2023年度のアカデミー賞にもノミネートされ、また、イギリスの偉大なエレクトロニック・プロディーサー、Clarkへのリミックスの依頼する等、ミツキはアルバムをリリースから2年ほど遠ざかっていたものの、表層的な話題に事欠くことはほとんどなかった。


ボストンのRoadrunnerを除けば、世界的なフェスティバルにはほとんど出演しなかったものの、このアルバムの制作及び発表にむけて、そのクリエイティヴィティーをひそかに磨きつづけていた。
 
ミツキが一度は表舞台からの引退発表を行ったことは事実であるが、一方、前作の『Laurel Hell』でミュージック・シーンに返り咲き、インディーズの女王の名を再び手中に収めた。アーティストは、その謎めいた空白の期間、アーティストとして生きるということはいかなることであるのかを悩んだに違いない。


そして、オーディエンスの奇異な注目を浴びることの意味についても考えを巡らせたに違いない。例えば、Mitskiは、近年のライブにおいて、観客がアーティストの音楽に耳を傾けず、デジタル・デバイスを暗闇にかざし、無数のフラッシュをステージに浴びせることに関し、強い違和感を抱いていたはずである。


アーティストは写真を撮影されるために何万人もの前でライブを行うわけではない。また、ゴシップ的な興味を抱かれるためにライブを行うわけでもない。無数のカメラのフラッシュのすぐとなりで、ひっそりと音楽に純粋に耳を傾ける良心的なファンのため、普通の人ならほとんど膝が震えるような信じがたいほど大きな舞台に立つのである。またそのために、人知れず長い準備を行うのだ。この無数のオーディエンスは、とミツキは考えたに違いない。自分の音楽を聴きに来ているのだろうかと。

 
そして実際、アーティストは以前、そういった音楽を聞かず、写真だけを撮影しに来るオーディエンスに対して、次のような声明を出していたことは記憶に新しい。「観客とパフォーマンスを行う私たちが同じ空間にいるのにもかかわらず、なぜか一緒にその場にいないような気がする」と。さらに彼女は、ライブ・セットをスマートフォン等で全撮影をおこなう節度を弁えない(ライブを聴いていない)ファンにも率直に苦言を呈した。「ライブでの電話に反対だと言ったことはありません。私がプロとしてパフォーマンスをしているかぎり、オーディエンスは自由にライブを録画したり写真を撮ったりしてきた」彼女はもちろん、「ライブショー全体を撮影する観客のことを指している」と付け加え、「ステージの上で、静止したままの携帯電話の海を見て、ショー全体の観客の顔が全然見えなくなる」ことがとても残念であると述べた。

 
最新アルバム『The Land Is Inhospital and So Are We』を見るかぎり、上記の現代のライブにおけるマナーに関するコメントは、意外にも、重要な意味を帯びて来ることが分かる。ニューヨークの山間部に自生しているバラの名前にちなんだ前作アルバム『Laurel Hell』では、ライブを意識したダンス・ポップ/エレクトロ・ポップの音楽性を主体にしていたが、最新作では、驚くほど音楽性が様変わりしている。単体のアルバムとしてのクオリティーの高さを追求したことは勿論、ライブで静かに聴かせることを意識して制作された作品と定義付けられる。いわば多幸感や表向きの扇動性を徹底して削ぎ落として、純なるポピュラーミュージックの良さをとことん追求した作品である。これまで幾度も二人三脚で制作を行ってきたプロデューサー、そしてオーケストラとの合奏という形で録音された『The Land Is Inhospital and So Are W』は、厳密に言えばライブ・アルバムではないのだが、まるでスタジオで録音されたライヴ・レコーディングであるようなイメージに充ちている。すべての音は生きている。そして絶えず揺れ動いているのだ。

 
先行シングルとして公開された「Bug Like A Angel」のイントロは、アコースティック・ギターのコードにより始まる。しかし、その後に続くミツキのボーカルは、アンニュイなムードで歌われていて、そして、ソフトな印象をもたらす。そして、そのフレーズはゴスペル風のクワイアによって、印象深いものに変化する。まさにイントロから断続的に音楽がより深い領域へと徐々に入り込んでいく。ゴスペルのコーラスの箇所では華美な印象性をもたらす場合もあるが、メインボーカルは、一貫して落ち着いており、一切昂じるところはなく、徹底して素朴な感覚に浸されている。しかし、それにも関わらず、複数人のサブボーカルがメインボーカルの周りを取り巻くような形で歌われる、アフリカの民族音楽のグリオ(教会のゴスペルのルーツ)のスタイルを取り、曲の中盤から終わりにかけて、なだらかな旋律の起伏が設けられている。歌詞についても同様である。安直に感動させる言葉を避け、シンプルな言葉が紡がれるがゆえ、言葉の断片には人の心を揺さぶる何かが含まれている。この曲は、叙事詩的なアルバムの序章であるとともに、この数年間のシンガーソングライターとしての深化が留められている。
 
 

「Bug Like A Angel」

 

 

 

「Buffalo Replaced」ではアーティストのインディーロック・シンガーとしての意外な表情が伺える。表向きに歌われるフレーズはポピュラー音楽に属するが、一方、アコースティックギターのノイジーなプロダクションは、まるでグランジとポップの混合体であるように思える。そしてニヒリズムに根ざした感じのあるミツキのボーカルは、これらの重量感のあるギターラインとリズムにロック的な印象を付与している。ここには、不動のスターシンガーとみなされるようになろうとも、パンキッシュな魂を失うことのないアーティストの姿を垣間見ることが出来る。特にミニマルな構成を活かし、後半部では、スティーヴ・ライヒの『Music For 18 Musicians』の「Pulse」のパーカッシブな効果を活用し、独特なグルーヴを生み出す。これはモダンクラシカルとポップス、そしてインディーロックが画期的な融合を果たした瞬間でもある。

 

Mitskiはこのアルバムを「最もアメリカ的」であると説明しているが、その米国の文化性が「Heaven」に反映されている。ペダル・スティールや大きめのサウンドホールを持つアコースティック・ギターの演奏を通じて、カントリー/ウェスタンの懐古的な音楽性に脚光を当てようとしている。この曲は例えば、同じレーベルに所属するAngel Olsen(エンジェル・オルセン)が『Big Time』で示したアメリカの古き良き時代への愛のオマージュとなり、Mitskiというシンガーの場合も同じく、保守的な米国文化への憧れの眼差しが注がれている。実際、プロデューサーの傑出したミックス/マスタリングにより、曲全体にはアルバムの主要なテーマが断片的に散りばめられている。それは単なる偏愛や執着ではなく、アーティストの真心の込められた寛容で温かく包み込む感覚ーーἀγάπη(アガペー)ーーが示されていると言える。そしてその感覚は、実際、部分的にシンガーの歌にμ'sのごとく立ちあらわれ、温和な感情に満たされる。音楽というのは、そもそも肉体で奏でるものにあらず、魂で語られるべきものである。


先日、頭にいきなり思い浮かんだ来た言葉があった。それは良いシンガーソングライターとはどういった存在であるのかについて、「生きて傷つきながらも、その傷ついた魂を剥き出しにしたまま走り続けるランナー」であるという考えだ。実際、それは誰にでも出来ることではないために、ことさら崇高な感覚を与える。そして、ギリシャ神話にも登場する女神とはかくなるものではないかとおもわせるものがある。「I Don't Like My Mind」は、まさにそういった形容がふさわしく、アーティストのμ'sのような性格がどの曲よりもわかりやすいかたちであらわれている。前の曲「Heaven」と同じように、カントリーを基調にした一曲であり、自己嫌悪が端的に歌われる。ペダル・スティールはアメリカの国土の雄大さと無限性を思わせる。そしてその嫌悪的な感覚の底には、わたしたちが見落としてしまいそうな得難いかたちの愛が潜んでいる。それはシンガーの力強いビブラート、つまり、すべての骨格を震わせて発せられる声のレガートが最大限に伸びた瞬間、自己嫌悪の裏に見えづらい形で隠れていた真の愛が発露する。愛とはひけらかすものではなく、いつもその裏側で、目に映らぬほどかすかに瞬くのだ。

 

「The Deal」は、まるで暗い海の上をどこに向かうともしれず漂うような不安定なバラードである。表向きにはアメリカのフォーク/ポップの形が際立ち、それはシアトリカルなイメージに縁取られている。曲調はラナ・デル・レイにも近い。しかし、日本人として指摘しておきたいのは、サビのボーカル・ラインの旋律の節々には、日本の昭和歌謡の伝統性がかなり見えづらい形で反映されていることだろう。これらのナイーヴとダイナミックな性質の間を絶えず揺れ動く名バラードは、なぜか、曲の後半でアバンギャルドな展開へと移行していく。破砕的なドラム・フィルが導入され、米国のフォーク音楽が、にわかにメタルに接近する。これは、プロデューサーの冒険心が”Folk Metal”というユニークな音楽を作り出したのか。それともプロデューサーのミドルスブラのBenefitsに対する隠れた偏愛が示されているのか。いずれにしても、それらのダイナミックな印象を引き立てるドラム・フィルの断片が示された後、曲はグランド・コアに近いアヴァンギャルドな様相を呈してから、徐々にフェード・アウトしていく。このプロデュースの手法には賛否両論あるかもしれないが、アルバムの中ではユニークな一曲と呼べる。


「When Memories Snow」では、シンガーとしては珍しく、古典的なジャズ・ポップスに挑戦している。実際の年代は不明だが、これこそシナトラやピアフの時代への最大の敬愛が示された一曲である。ストリング、ホーン、ドラムとビック・バンド形式を取り、ミュージカルのような世界観を組み上げている。メロディーやリズムの親しみやすさはもちろん、ミツキのボーカルは稀にブロードウェイ・ミュージカルの舞台俳優のようにムードたっぷりに歌われることもあり、昨年、Father John Mistyが『Chloe and the Next 21th Century』で示したミュージカル調のポップスを踏襲している。



クワイア調のコーラスがメインボーカルの存在感を際立たせる。アウトロにかけては、Beatlesが取り組んだポップとオーケストラの融合を、クラシック・ジャズ寄りのスタイルにアップデートしている。実際、ストリングのトレモロ、 ホーン・セクションのアレンジは、ミュージカルのような大掛かりな舞台装置の演出のような迫力をもたらす。かつてのOASISの最盛期のブリット・ポップの作風にも比する壮大さである。


ミツキが今後、どのようなシンガーソングライターになっていくのか、それはわからないことだとしても、「My Love Mine All Mine」で、その青写真のようなものが示されているのではないか。ジャズの気風を反映したポップだが、この曲に溢れる甘美的な雰囲気は一体なんなのか。他のミツキの主要曲と同じように、中音域を波の満ち引きように行き来しながら、淡々とうたわれるバラード。もったいつけたようなメロディーの劇的な跳躍もなければ、リズムもシンプルで、音楽に詳しくない人にも、わかりやすく作られている。


それにもかかわらず、この素朴なバラード・ソングは、60年代から六十年続く世界のポピュラー・ミュージックの精髄を突いており、そして2分弱という短尺の中で、シンガーは、片時もその核心を手放すことはない。このNorah Jonesのデビュー作のヒット・ソングとも、一昨年のSnail Mailの『Valentine』のクローズのバラード・ソングとも付かない、従来のシンガーソングライターのキャリアの中で最も大胆かつ勇敢な音楽へのアプローチは、実際のところ、あっという間に通り過ぎていくほんの一瞬の音の流れに、永遠の美しさの影を留めている。

 

「My Love Mine All Mine」

 

 

 

「The Forest」では、カントリー/ウェスタンの懐古的な音楽性へと舞い戻る。この曲では、ハンク・ウィリムズのような古典から、WW2の後のジョニー・キャッシュ、レッド・フォーリーに至るまでのフォーク音楽を綿密に吸収して、それを普遍的なポップスの形に落とし込んでいる。「No One」や「Memory」といった理解しやすいフレーズを多用し、語感の良さを情感たっぷりに歌っている点が、非英語圏のスペインをはじめとするヨーロッパの主要な国々でも安定した支持を獲得している理由でもある。そして、ペダル・スティールやジャズのブラシ・ドラムのようにしなやかなスネアは、温和なボーカルと綿密に溶け合い、この上なく心地よい瞬間を生み出す。それはやはり、他の収録曲と同じように、あっけなく通りすぎていってしまうのだ。


アルバムの先行シングルとして公開された「Star」は、ポピュラー歌手としての新機軸を示している。この曲は編曲家/指揮者のドリュー・エリクソンとロサンゼルスのサンセット・スタジオで録音された。アーティストは、オーケストラを曲の中に導入する場合、別の場所で録音されたものでは意味がないと考え、そのオーケストラとポップの瞬間的なエネルギーを生み出そうと試みた。ハリウッド映画『Armagedon』のオープニング/エンディングのような壮大さを思わせるダイナミックなサウンドは圧巻だ。パイプ・オルガンを交えたシネマティックな音響効果が、宇宙的な壮大さを擁するバラードという最終形態に直結していく。そしてイントロの内省的なボーカルは、オーケストラやオルガンの演奏の抑揚がゆっくりと引き上げられていくにつれ、神々しい雰囲気へと変貌を遂げる。それは、このアルバムを通じて紡がれていくナラティヴな試みーー生命体がこの世に生まれてから、いくつもの悲しみや痛みを乗り越えて、ヒロイックなエンディングを迎える壮大な叙事詩の集大成ーーを意味している。そしてこの曲には、アーティストが隠そうともしない心の痛みが、己が魂を剥き出しにするがごとく表れている。

 

 「Star」

 

 

この段階までで、すでに大名盤の要素が十分に示されているが、このアルバムの真の凄さは、むしろこの後に訪れるというのが率直な意見である。アルバムの序盤では封じていた印象もある憂鬱な印象を擁する「I'm Your Man」では、サッド・コアにも近いインディーズ・アーティストとしての一面を示す。これは大掛かりなしかけのある中で、そういったダイナミックな曲に共感を示すことができない人々への贈り物となっている。そして、この曲では、(前曲「Star」の三重県出身のアーティストが若い頃に影響を受けたという中島みゆきからの影響に加えて)次のクローズ曲とともに、日本の原初的な感覚が示される。それは、曲の後半で、犬の声のサンプリング、山を思わせる大地の息吹、そして虫の声、と多様な形を取って現れる。最初に聴いた時、曲調とそぐわない印象もあったが、二度目以降に聴いた時、最初の印象が面白いように覆された。おそらく日本的なフォークロアに対する親しみが示されているのではないか。

 

アルバムの序盤では、一貫してアメリカの民謡やその文化性に対する最大限の敬愛が示されたが、その後半ではシンガーソングライターのもう一つのルーツである日本古来の民族的な感覚へと変貌し、ニンジャや着物姿のアーティスト写真の姿のイメージとピタリと合致する。また、それは、『日本奥地旅行』で、イギリス人の貴族階級の旅行家であるイザベラ・バード(Isabella Lucy Bird)が観察した、明治時代の日本人の原初的な生活ーー陸奥の農民の文化性、さらに、北海道の北部のアイヌ民族の奇妙なエキゾチズムーーに対する憧憬に限りなく近いものがある。ややもすると、それらの文化の混淆性は、歌手の最も奥深い日本人としての性質を表しており、今もなお、このシンガーの背中をしっかりと支え続けているのかもしれない。

 

アルバムのクローズ「I Love Me After You」は、前作のシンセ・ポップ/ダンス・ポップの延長線上にあるトラックで、アーティストのナイチンゲールのような献身性が示されている。しかし、驚くべきことに、その表現性は、己が存在を披歴しようとしているわけではないにもかかわらず、弱くなりもしないし、曇ったものにもならない。いや、それどころか、歌手の奥ゆかしい神妙な表現性により、その存在感は他の曲よりもはるかに際立ち、輝かしく、迫力ある印象となっている。ぜひ、これらの叙事詩のような音楽がいかなる結末を迎えるのか、めいめいの感覚で体験してみていただきたい。そして、実際、この国土的な観念を集約した傑出したポピュラー・アルバムは、2023年度の代表的な作品と目されても何ら不思議はないのである。


 

 100/100(Masterpiece)

  

 

「I Love Me After You」

 

 

 

Mitskiの新作アルバム『The Land Is Inhospital and So We Are」はDead Oceansより発売中です。日本国内では、Tower Record、HMV,Disc Unionにてご購入できます。

 

 

 


ザラ・ラーソン(Zara Larsson)とデヴィッド・ゲッタ(David Guetta)の初コラボレーションから7年、2人のミュージシャンが新曲を携えて帰ってきた。


今週、金曜日に、スウェーデンのポップ・スターとイギリスのDJ/プロデューサーがタッグを組んだ「On My Love」は、無条件の愛で結ばれた大切な絆をテーマにしたクラブ向けのダンス・トラックで、この曲はザラ・ラーソンの妹であるハンナ・クリスティーナ・ラーソンをフィーチャーした絵のように美しいミュージック・ビデオとともに到着した。


「"オン・マイ・ラヴ "は、あなたにとってとても大切で、すべてを捧げたいと思えるような人間関係について歌っています」とプレス声明で語っている。


「On My Love "は、愛する人についての情熱的な歌詞が特徴で、ゲッタ・プロデュースのダンス・ビートに乗せてザラが歌い、夏の終わりのフェスティバルにぴったりの陶酔的なクライマックスへとゆっくりと盛り上がっていく。


「暗闇の中へ、光の中へ、ベイビー、私は行く/それが間違っていようが、正しかろうが、私はついていく/代償を払う、犠牲になる/それは私の愛に、ええ」と彼女はこの曲で歌っている。


この曲の心温まるミュージック・ビデオは、幼いザラがハンナ・クリスティーナを紹介する自宅でのパフォーマンスという幼少期の映像から始まり、誕生日パーティーやその他の幼少期の瞬間のクリップが続く。次に映像は現在に切り替わり、姉妹が原付バイクに乗ったり泳いだりしながら、ゴージャスな屋外の風景の中でくつろいでいる様子が映し出される。

 

ザラとゲッタは以前、2016年の「This One's for You」でコラボしており、この曲はフランスで開催されたUEFAユーロ2016の公式ソングである。


 

シカゴのシンガーソングライター/詩人、Jamila Woods(ジャミーラ・ウッズ)のニュー・アルバム『Water Made Us』のリリースまで残すところ1ヶ月となった。ジャミーラ・ウッズは「Tiny Garden」「Boomerang」に加えて、もうひとつの先行シングルを「Good News」を初公開した。この曲は、"The good news is we were happy once"(良い知らせは私たちはかつて幸せになったということだ)という意味が込められているとのこと。ニューシングルの試聴は以下から。


ジェミーラ・ウッズが説明するように、「このアルバムのタイトルは、歌詞の中にある "The good news is we were happy once / The good news is water always runs back where it came from / The good news is water made us "に由来している。「私にとっては、この曲は降伏の教訓であり、何度も何度も水から学ぶ教訓なのです」また、ジャミーラ・ウッズの現代詩は、どのような人生にも欠かさざる水をメタファーに配し、抽象的な概念を複数の視点から解きほぐそうとしている。

 

ウッズが現代詩の中で探求する概念は、人それぞれ定義付けが異なるからこそ、また、人それぞれ感じ方や受け取るものが異なるからこそ、自らの力によって何かを探求していくことに大きな意義があることを教唆してくれる。つまり、それぞれの人にとって、幸福という概念という形は異なるため、だからこそ、自分なりの答えを探していくべきなのだ。究極的に言えば、他者と同じものを求めて、たとえそれを全部手に入れたとしても、仕合せになることはできない。その反面、他者から見たものと己から見たものは全然異なるため、ガラクタに見えることもある。

 

 

「Good News」

 Roisin Murphy   『Hit Parade』




Label:Ninja Tune

Release: 2023/9/8



Review 



UKソウルの代表格、ジェシー・ウェアとのコラボレーション等で知られるロイシン・マーフィーは、アイルランド出身で、当地を代表するソウルシンガーの一人である。ダンス・ポップ・リヴァイヴァルの体現者であり、超実力派のシンガー。『アルバム発売日直前、アーティストがLGMTQの発言に関して、SNSでスキャンダラスな一件を巻き起こしている。しかし、少なくとも、マーフィーが指摘したのは、同性愛の権利をしっかりと認めた上、成長過程でまだ性差の認識がない時期に、そういった刷り込みをすることは健全ではないということであり、つまり、アーティストは何ひとつも間違ったことは言っていないし、彼女の考えは健全であると擁護しておきたい。むしろキャンペーンばかりが目立つ中、こういった反駁もあってしかるべきではないか。偽のキャンペーンの二次被害者が出る前に弥縫策を打っておくことも必要だろう。

 

 

さて、『Hit Parade』は、ハンブルクとベルリンを経由して制作されたというが、その全般は個人的なスペースを重視して制作が行われた。DJ Kozeとのコラボレーションアルバムとロイシン・マーフィーは銘打っており、フロア・ミュージックの要素が強いダンス・ポップとして楽しめる。それらのダンサンブルなビートの中にソウルミュージックの要素も散りばめられていることもニンジャ・チューンらしいリリースだ。すでにクラブ・ビートの壮絶な嵐の予兆は、オープニング「What To Do」に顕著な形で見える。ここではネオ・ソウルとダンス・ポップを融合させ、アルバムをリードする。大人のダンス・ポップ/エレクトロ・ポップとしてこれ以上のオープニングはない。「CooCool」ではヒップホップの影響を交えて、スモーキーなソウルとしてアウトプットしている。その中にはディスコに対する憧憬も含まれている。ボーカル・ラインはジャクソンを思わせ、それがコーラスのヴィンテージ・ソウルの要素と劇的にマッチしている。

 

その後はよりヴィンテージ・ソウルの奥深い領域へと畏れ知らずに踏み入れていく、「The Universe」ではMTVの時代のライオネル・リッチーの音楽性、いわばアガペーに根ざしたソウルを展開する。その中に生ずるDJ Kozeのスクラッチを駆使したターンテーブルのプレイもヴィンテージ感満載だ。80年代のソウル・ミュージックの後のオールドスクール・ヒップホップを思わせるナンバー。この時代には、明確にヒップホップとソウルの違いがなかったのに、いつしかそれは明確に分別されるようになってしまったのはなぜなのか。音楽のジャンルに違いはないのにも関わらず、である。マーフィーのボーカルも淡い哀愁が漂って素晴らしいが、着目すべきは、DJ Kozeのソウルのサンプリングネタのチョイスのセンスの良さ。ソウル・ミュージックのストリングスのアレンジを部分的に織り交ぜ、ノスタルジックな質感を生み出している。


ロイシン・マーフィーは、このアルバムを通じて、様々な感情性を複雑な心の綾として織り交ぜようとしたと説明しているが、「Hurtz So Bad」ではハードコアなエレクトロに、ソウル/ファンクを融合させ、自らの傷ついた経験を歌おうとしている。クラブ・ミュージックに近いグルーヴィーなテンションが特徴のトラックであるが、マーフィーのボーカルから不思議と悲哀や哀愁が匂い立つ。UKベースラインのビートのトラックメイクも巧緻であることに疑いはないが、ロイシンの老獪なヴォーカルは、速めのBPMをバックに歌われているにも関わらず、スモーキーかつスロウなソウルの安定感がある。これらの渋さは、ひとりの人間としての人生経験が色濃く反映されているのだろうか。そこには社会性に対するニヒリズムも読み取ることが出来る。これらの感覚が合うかどうかは別として、ネオソウルとして見ると、聴き応え十分である。

  

 

アルバムの序盤ですでに何度かフィーチャーされているファンクのギター・カッティングが続く「The Home」は80年代のディスコ・ナンバーをファンクの側面から再解釈しようとしている。そして、実際、アース・ウインド&ファイアー、スタイリスティックスのようなファンクなグルーブ感を生み出す。もちろん、ロイシン・マーフィーはリズムを最重要視しながらもメロディーの良さにも気を配る。特に、ファルセットの部分には、サザン・ソウルの全盛期のシンガーに比する圧巻の存在感がある。これは、俗に言う歌謡曲のこぶしのようなフックが強い印象性を及ぼすのだ。マーフィーはホワイト・ソウルとは別のブラック・ミュージックの源泉に迫る。ただ、それらは単なるアナクロニズムに堕することがない。後半部の最近流行りのボーカルの部分的なディレイを掛けることにより、現代的な質感を持つソウルとして昇華するのだ。

 


「Spacetime」は、異星人との邂逅を表現したと思われるシュールなトラック。ここではアルバムのアートワークのような不気味ともユニークとも付かないレーベルカラーの際どい部分が示される。ふざけているのか、それとも真面目なのか、どちらとも解釈しようのあるスニペットだ。しかし、この悪ふざけにも思えなくもないトラックの後にアルバムで最も神妙な瞬間が訪れ、アーティストのアイルランドのルーツへの敬愛が示される。「Fader」のMVは、アーティストの故郷であるアークローで撮影された。当日は、「ハリウッドのような太陽が輝き信じられないほどの好意が感じられた」「アークローの人たちは、私をとても誇りに思ってくれました」と振り返っている。アーティストは、アイルランドを離れてもなお、このトラックに込められている郷土性を誇りに思うのだ。 それらは、ヒップホップ、ソウル、ダンス・ポップ、つまりアーティストが知りうるすべての音楽性を混在させ、それらに分け隔てがないことを示している。実際に本曲のミュージック・ビデオは今年見た中で一番素晴らしい内容となっている。

 

 

 

 

「Free Will」はアルバムの中で風変わりな印象性を持つ楽曲だ。イビサのダンスミュージックに触発されたトロピカルの風味をエレクトロとミックスし、エネルギッシュなナンバーとして昇華している。 他の曲に比べると、ロイシン・マーフィーのポップシンガーとしての性質が最も色濃く反映されているのではないか。曲の後半では、躍動感のあるダンス・ビートとソウルの要素が劇的に融合し、刺激的な瞬間を呼び起こす。イビサ島の夜の泡パーティーでかかっても違和感がない多幸感満載の素晴らしいナンバー。この曲は、イギリスの80年代のマンチェスターのファクトリーのフロアで鳴り響いていた音楽とは、かくなるものかと思わせる何かがある。

 

「Fader」と合わせて、アルバムのもう一つのハイライトともなりえる「You Knew」もチェックしておきたい。この五分半にも及ぶ壮大なトラックで、マーフィーは自らの人生を描写しようとしている。「オープンハートで、生きる動機を明らかにする人間でありつづけたがゆえに、人から愛されなかった代償もあった」と語るマーフィー。曲の後半にかけてダイナミックな瞬間が出現する。ベースラインを基調としたミニマルな構成は、その反復的な構造を持つがゆえに中盤から終盤にかけて強力なエナジーを発する瞬間がある。それらは満ち引きを繰り返す海岸沿いの波さながらに荒々しく波打ったり、それとは正反対に静かに引いていったりもする。ロイシン・マーフィーの人生もまた同じように波乱に満ち溢れたものだったのではないか。それらの怒涛のようなコアなダンス・ビートは、このアーティストのキャリアの集大成を象徴するものでもある。そして、それらの演出的な効果をDJ Kozeの巧みなフレージングが支える。力強く。

 

アルバムの序盤では、ネオソウルとエレクトロ、そして中盤では、ナラティヴな要素を擁するダンスミュージックと変遷を辿っていくが、アルバムの終盤でもそれらの流動性は継続し、「You Knew」のミニマルなクラブビートの気風を受け継いだ「Can't Replicate」では、それらのミニマル・ビートをアシッド・ハウスの要素を融合させている。不思議なのは、DJ Kozeの生み出すビートは軽快かつシンプルで、フロアの扇動的な側面、あるいは多幸感溢れる側面をフィーチャーしているが、このトラックにロイシン・マーフィーの円熟味のあるボーカルが加わったとたん、その印象が一変することである。実際、ノリの良さと渋みを兼ね備えたクラブ・ビートは躍動感と深い情感という際どい感覚、また、それと相反するように思えるアンビバレントな要素を両立させる。これは両者のアーティストとしての才覚が最も鮮やかに掛け合わさった瞬間だ。

 

「Spacetime」でのシュールなスニペットは続く「Crazy Ants Reprise」でも顕在である。ここでは真面目な性質とそれとは正反対にある戯けた性質という2つの局面がぎりぎりのところでせめぎ合っている。オートチューンを掛けたボーカルは、とりもなおさず、ロイシン・マーフィー、DJ Kozeのユニークな性質を表している。

 

このクールダウンの後、突如、アルバムはクライマックスへ脇目も振らずに突き進んでいく。 「Two Ways」は意外にも、UKドリルに触発されたポップ音楽であり、ソウルシンガーとは別のボーカル・スタイルが採られる。特に近年のビヨンセの作風に近い。クローズ「Eureka」では、イントロにクリッチ・ノイズを配して、アヴァン・ポップとネオソウルの新境地へと向かう。チルアウトの要素もなくはない。しかし、そこには独特の緊張感が立ち込め、飽和状態に至ることはない。スモーキーなボーカルの魅力はもとより、このクローズの抜群の安定感にロイシン・マーフィーの真骨頂が表れている。本作はまさに『ヒット・パレード』のタイトルに相応しく、どこをとっても聴き応え十分。新時代のポピュラー・ミュージックの台頭に震撼せよ。

 

 

 

90/100

 

 

©︎Gemma Warren


アイスランドと中国、両方のルーツを持ち、現在はLAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、マルチ奏者のレイヴェイが2ndアルバム『Bewitched』をリリースする。収録曲の「Lovesick」がまもなくプレミア公開されます。下記よりご視聴下さい。アルバムのストリーミング・リンクも下記を参照下さい。

 

歌の創作を始める上で初めてのチャレンジでもあったという1stアルバム『Everything I Know About Love』に比べて、今作は、愛に対してより成熟した展望を持ち、彼女自身もさらに成長したと語る。



レイヴェイは、このニュー・アルバムのリリースに関して、以下のようなメッセージを添えています。

 

『Bewitched』は『Everything I Know About Love』よりもずっと成熟した展望を持ち、恋に恋していることには変わりないものの、友人や恋人、人生に対する愛など、より大きな意味での愛のアルバムになりました。

今回のアルバムでは色々な経験をし、少しずつ大人になっていく過程の若さゆえの愛の魔法について書いています。『Everything I Know About Love』は私にとって、歌の創作を始める最初の試みでした。だから、どの曲もまるで偶然の幸運の産物のようでした。

一方、『Bewitched』では、アルバムを書くことに決めてから曲を書く前に、『Bewitched』というアルバムのタイトルが決まっていました。だから、ゼロから創り上げることができたことは、アーティストとして私にとって非常に大きな自信を持たせてくれたものであり、私がこのアルバムを通して得た経験の中でも最も価値のあるものの一つです。



“現実世界からある意味で逃避できる場所を音楽の世界に作りたい” そんな想いからジャズ・カルテットやフィルハーモニア管弦楽団を迎え制作された楽曲を収録した本作は、壮大なミュージカルのように書き上げられたストーリーが、まるで一本の映画を見るかのような没入体験を与えてくれる。



アルバムのリード曲となる「Lovesick」は ”誰かに恋をしている時に感じる特別な瞬間” について書かれ、アルバム随一の爽やかなサウンドが際立つ1曲。レイヴェイの故郷・アイスランドで感じた、車の中に座って風に髪がなびかれ、黄金色の光が降り注ぐ瞬間にインスパイアされている。
 

 

「(誰かに恋をしている時に感じる特別な瞬間は)すべてが完璧に見えるにも関わらず、何かがうまくいかないかもしれないという不安が伴う。すべてが完璧だからこそ、なぜこのような感覚があるのか、と思ったのです。」とレイヴェイが語るように、ギターやストリングスのピチカートが軽やかで煌びやかな疾走感を表現している。そんな中にも、コーラスが彩るアウトロがどことない儚さを感じさせ、まるで映画のエンドロールを彷彿とさせるようなドラマチックな1曲となった。


成熟した奥行きのある歌声とは裏腹に、今の時代を生きる24歳の等身大の言葉で、自身のミュージシャンとしてのゴールである”ジャズやクラシック音楽を、より親しみやすい方法で同年代の若い世代に届けること”を体現するレイヴェイ。



夏に行われたワールドツアーに続き、10月に開催されるアルバム・ツアー全29公演は瞬く間にソールドアウト! さらに2024年のUS&UK ツアーの開催も発表!すでに完売となった公演もあり、驚異的なスピードで世界中にその名を轟かせている。

 

クラシックやスタンダードジャズからインスピレーションを得て、独自の音楽スタイルを確立する次世代の歌姫が奏でる愛の物語をぜひご堪能ください! 

 

 

「Lovesick」 (13:00にプレミア公開



Laufey 『Bewitched』 New Album

リリース日:2023年9月8日

レーベル:Asteri Entertainment

 

Tracklist:

1. Dreamer
2. Second Best
3. Haunted
4. Must Be Love
5. While You Were Sleeping
6. Lovesick 
7. California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)
8. Nocturne (Interlude)
9. Promise
10. From The Start
11. Misty
12. Serendipity
13. Letter To My 13 Year Old Self
14. Bewitched


楽曲のダウンロード/ストリーミング:

 

https://asteri.lnk.to/bewitched_al 



 

©Dan Medhurst


ソフィア・クルテシスは、近日発売予定のアルバム『Madres』からの新曲「Vajkoczy」を公開した。

 

この曲は、有名な神経外科医、ピーター・ヴァイコッツィにちなんで名付けられた。「私のミューズで、私のヒーローであり、世界はもっとヴァイコッツィを持つべきだ」とコートシス。試聴は以下から。


新作アルバム『Madres』はNinja Tuneより10月27日リリース予定。これまでにリリースされた「Si Te Portas Bonito」、そしてタイトル曲が収録されている。


「Vajkoczy」

 

©Alexa Viscius


ウィル・バトラーとシスター・スクエアーズは、9月22日にMergeからリリースされるセルフ・タイトル・アルバムからのニュー・シングルを発表した。



このシングルは、前作「Long Grass」「Arrow of Time」「Willows」に続く作品だ。この曲のリリック・ビデオは以下から。


ウィル・バトラーは今回の声明の中でも謎めいたメッセージを添えている。

 

「これはアルバムに収録されている "夢の歌 "のひとつなんだ。夢の中の感情、現実の中の夢、疲れて混乱している」

 

「この曲は、"夢の中の感情"、"現実の中の夢"を示し、疲れて混乱している様子を表している。果たして、この曲が、"話すのを止めてくれ、言うことは何もない"。"止めてくれ!"という拒絶として機能しているのか、それとも、"言う必要はない、もう分かっているから"という愛のしるしとして機能しているのかどうかは分からない。それでも、この曲はなんらかの恐怖に満ちているんだ」


「Stop Talking」



 




ロサンゼルスのポップスター、Miley Cyrus(マイリー・サイラス)が「Used To Be Young」のミュージックビデオを公開した。


この曲は彼女の最近のアルバム「Endless Summer Vacation」の4曲目に収録。またこのアルバムはその週のベスト・アルバムとしてプッシュしている。メインストリームのポップス作品ではあるものの、聴き応え十分の傑作です。

 

プレスリリースでは「LAへのラブレター」と表現されたこのアルバムは、3月にコロンビアからリリースされた。サイラスは、このアルバムの発表前に自宅が全焼するという不幸に見舞われたが、それを糧に素晴らしいポップス・アルバムを完成させた。「Flowers」は現在もロングランヒットを継続しており、シングル発売から半年近く経過した現在もビルボード・チャートの10位前後に位置している。



「この曲は、今までの自分を称えるとともに、今の自分を愛し、これからの自分を祝福することを歌っている」とマイリーは説明する。「過去を振り返るときは誇らしく感じ、未来を考えるときは喜びを感じる。毎日私の夢を現実にしてくれる忠実なファンに感謝している。あなた方の揺るぎない支持の安定に心から感謝しています。この曲はあなたのために。本当に・・・」

 

 

「Used To Be Young」


 

エド・シーランは今月中、秋をテーマにしたニューアルバムをリリースすることを世界中に知らせてきたが、遂にその詳細が明らかになった。


『Autumn Variations』は9月29日にリリースされる予定。算数の演算にちなんだ四部作の最終章となるアルバム『Subtract』同様、『Autumn Variations』もザ・ナショナル(The National)のアーロン・デスナーがプロデュースしている。今回、リリース公表に合わせて、エド・シーランはファンに向けてメッセージを添えている。下記より御覧ください。


彼は、テイラー・スウィフトがフォークロアのために彼を起用して以来、テイラー周辺のポップ・シンガーソングライター・タイプの頼れるプロデューサーとなっており、秋の音楽について1つや2つ知っている人物だ。


昨年の秋、私は友人たちと多くの人生の変化を経験していた。夏の暑さの後、すべてが落ち着き、落ち着き、バラバラになり、頭打ちになったり、崩壊したりした。

 

昨年の初めに辛いことがあったときは、曲を書くことで自分の気持ちを理解し、何が起こっているのかを受け入れることができた。友人たちのさまざまな状況を知ったときは、彼らや私のその時々の世界観を表現するために、彼らの視点から、あるいは私の視点から曲を書いた。失恋、憂鬱、孤独、混乱といったどん底の中にも、恋に落ちたり、新しい友情を得たりといった高揚感があった。


 

父と兄は、エルガーという作曲家が作曲した『エニグマ変奏曲』について教えてくれた。それがこのアルバムを作るきっかけになった。『Subtract』をアーロン・デスナーとレコーディングしたとき、私たちはすぐに意気投合した。私たちはノンストップで作曲とレコーディングを行い、このアルバムはそのパートナーシップから生まれた。彼のサウンドは秋の感覚を見事にとらえていると思う。


   

 

 

 Ed Sheeran  『Autumn Variations』

 


 

Label: Warner Music

Release: 2023/9/29


Tracklist:


1 Magical

2 England

3 Amazing

4 Plastic Bag

5 Blue

6 American Town

7 That’s on Me

8 Page

9 Midnight

10 Spring

11 Punchline

12 When Will I Be Alright

13 The Day I Was Born

14 Head > Heels

 


マディソン・ビール(Madison Beer)がニューシングル「Spinnin」をリリースした。


先日発表された彼女の次のアルバムからの最新カットだ。『Silence Between Songs」は9月15日にリリースされる予定で、すでに「Home To Another One」でプレビューされている。


この曲は、何もかもが止まっているように思えた時期を反映したもの。毎日がサイクルのように感じられ、不安な場所から抜け出せなかったけれど、ようやく頭の中の考えや感情を探ることができた。映画的で視覚的に印象的で、その感情に命を吹き込むようなビデオを夢見ていたので、私たちが作り上げたものをとても誇りに思います。


「Spinnin」

 

©Stephan VanFleteren

グレン・ハンサード(Glen Hansard)が、妻ともうすぐ1歳になる息子の母親へのラブレターである「Sure As The Rain」を発表しました。この曲では、ヴィア・マルドットがテルミンを演奏しており、ハンサードは彼女の一連の演奏をネットで見てコンタクトを取った。試聴は以下からどうぞ。


「この曲は、野性的な本能や、次の明るく輝くものへと走ろうとする憧れをよそに、今いる場所でようやく幸せになれるという歌なんだ」とハンサードは説明する。


「私たちの世界に新しい生命をもたらすために結合することを選んだ、独立した魂としての互いへの宣言。要するに、ラブソングなんだ。お互いの中にある自然、野生化していく愛、そしてその壮大な冒険の象徴として廊下に置かれた乳母車を認める歌だ」




グレン・ハンサードは10月20日に5枚目のソロ・アルバム『All That Was East Is West Of Me Now』をリリースする。


このアルバムは、ハンサードが2022年11月にかけて地元の小さなパブで行った5回のクチコミ・ギグを通じて完成した。曲は目撃者を通してしかありのままの姿にならない、とハンサードは言い、聴衆がいることで、曲は違う道を見い出す。レジデンスが終わる頃、レコードのおおよその形が出来上がり、共同制作者であるデヴィッド・オドラムとダブリン郊外にある彼の自宅スタジオでレコーディングが始まった。


ハンサードによれば、このタイトルは「前方よりも後方に多くのものがあることに突然気づいた」ことに由来するもので、高所からの調査を示唆している。時間の経過は中心的なテーマかもしれないが、この8曲は、後悔やノスタルジアの思いよりも、未来への約束に焦点を当てている。


グレン・ハンサードは4年前に「This Wild Willing」をリリースした。AP通信は「音楽的探求の実験的な作品集」と称賛した。NPRミュージックは、このアルバムを 「ゴージャス。親密さを犠牲にすることなく広がりがある」と評価した。


パール・ジャムのエディ・ヴェダーやキャット・パワーと『フラッグ・デイ』のサウンドトラックでコラボしたり、アースリングスのメンバーとしてエディ・ヴェダーとツアーを行なったり、映画『Once』の15周年を記念し、マルケタ・イルグロヴァーと再結成し、ソールドアウト公演を行なったりと、『This Wild Willing』とこの新作の間の数年間もハンサードは多忙を極めていた。そのツアーは現在全米を回っており、今夜ワシントンDCで公演が行われるとのことだ。

©Petros


シグリッドが新曲「The Hype」をリリースしました。この曲は、セカンド・アルバム「How To Let Go」リリース後初の新曲で、ØYA、Big Feastival、Victoriousでのフェスティバル・セットを控えている。

彼女はこうコメントしている。「期待に応えられたかどうか不安になることは、誰にでもあること。恋愛でも仕事でも、Hype(誇大広告)という言葉があるけれど、本当にその誇大広告に応えられているのだろうか?」

「だから、それについて曲を書いたんだ!アーティストの仕事をしていると、ある意味、自分らしく生きようとしているように感じることがある。それを私生活に持ち込んでしまったのかもしれない。エスプリの効いたメロディーとベース、シンセ、ドラムの重厚なプロダクションに包まれているけど、私のヴォーカルにはとても力強さがあるのが気に入っている」
 
 

 
 



テイラー・スウィフト『1989(Taylor's Version)』を正式に発表しました。この再録アルバムは10月27日に発売されます。このニュースは、8月9日(通称8/9)にカリフォルニア州イングルウッドのSoFiスタジアムで行われたコンサート中に発表された。


アルバム『1989』は数え切れないほど私の人生を変えた。その私のバージョンが10月27日に発売されることを発表できて、興奮でいっぱいです」とスウィフトはツイッターに書いた。「正直言うと、この5曲のフロム・ザ・ヴォールトはクレイジーだから、今までで一番好きな再レコーディング。だって、『From The Vault』の5曲はとてもクレイジーだから。でも、長くはないよ!」


Fearless (Taylor's Version)』は、スウィフトにとって4枚目の再録アルバムとなります。スピーク・ナウ(テイラーズ・ヴァージョン)』でスウィフトは、これまでの記録保持者であるバーブラ・ストライサンドを抜き、女性アーティストとして史上最多のアルバム1位獲得記録を樹立しました。

 



フジ・ロック 23'で来日公演を行ったウェイズ・ブラッド(Weyes Blood)は、昨年リリースされた最新あるバウ『And In The Darkness, Hearts Aglow』から「Hearts Aglow」の新しいビデオを公開した。サブ・ポップから発売された本作は、22年度のベスト・リストとしてもご紹介しています。

 

このビデオは、彼女のツアーフォトグラファーであるニーラム・カーン・ヴェラによって監督され、北米、イギリス、ヨーロッパでのライヴ映像が使用されている。以下よりご視聴下さい。


ウェイズ・ブラッドのツアーは、8月14日のレッド・ロックスでのザ・ストロークスとのオープニングを筆頭に、ベック&フェニックスとの共演、ヘッドライン・ライヴなどが予定されています。BeckとPhoenixとのオープニング公演は、9月9日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われます。


 


トム・ヨークの息子、Noah Yorke(ノア・ヨーク)が同名のEP「Cerebral Key」からのファースト・シングルをリリースした。彼は、普遍的なポピュラー性を追い求める精神に加え繊細な声質を受け継いでいます。

 

「Cerebral Key」はノア・ヨークにとって2023年最初のリリースとなる。これまで彼は、2021年のデビュー曲「Trying Too Hard (Lullaby)」に続く2022年の単独シングル「It's Been a Long Time」と「Lucky Black Cat」を発表している。


ノア・ヨークは自身のインスタグラムで、「Cerebral Key」が近々リリースされるEPからの最初のシングルであり、音楽的に新たな時期を迎えたと発表した。


「@msmithryprecordings(マイケル・スミス)とスタジオで作業したんだ。自分の作品のためにスタジオで作業するのは初めてだったんだ :) 素晴らしい経験だったし、その結果を誇りに思う」


ソロ活動のほか、ヨークはポスト・ジャンル・デュオ、Hex Girlfriendの片割れでもある。また、以前は『サスペリア』のサウンドトラックのドラムのレコーディングの手伝いをしていた。


「Cerebral Key」

Holly Humberstone(ホリー・ハンバーストーン)がd4vdをフィーチャーした新曲「Superbloodmoon」を発表しました。

 

この曲は、10月13日に発売されるデビュー・アルバム『Paint My Bedroom Black』に収録される予定で、最近のシングル「Antichrist」と「Room Service」も収録。以下よりチェックしてみてください。


「私は1年ほど前からd4vdの大ファンで、幸運にも彼がロンドンにいるときに会うことができた」ハンバーストーンは説明しています。


「私たちはスタジオに入り、Superbloodmoonを書いた。私たちはずっとツアーをしていたようなもので、故郷や愛する人たちと別れるときの気持ちを書きたかった。曲のタイトルはメモに書いてあって、そこから生まれたんだ。私たちは、世界の反対側から同じことを目撃し、孤独を感じると同時に、その経験を通してつながっていることを書いたの。この曲が大好きで、この曲に命を吹き込んでくれたd4vdにとても感謝しています」


さらに、d4vdは次のように述べています。


「ホリーと私はロンドンで出会い、ほんの数時間でこの曲を書きました。ホリーと私はロンドンで出会い、ほんの数時間でこの曲を書き上げました。”スーパーブラッドムーン”というアイデアと、世界のどこにいても同じことを目撃する2人というアイデアが2人とも大好きでした。数ヶ月前にロンドンで行われた僕のショーでも一緒に披露することができたんだけど、あんな風にステージ上で誰かとコラボするのは初めてで、楽しかった。この曲に参加させてくれたホリーにとても感謝しています」

 

 

「Superbloodmoon」

Mitski  Photo:Ebru Yildiz

今週、月曜日にサプライズで発表された告知を受けて、シンガーソングライター、Mitski(ミツキ)が新作アルバムのリード・シングル 「Bug Like an Angel」をリリースした。


アルバムのリードシングル「Bug Like an Angel」は、ミツキの特徴的な歌声の下で、柔らかく鳴り響くギターがループする、スローで甘い曲で始まる。『BE THE COWBOY』以前の彼女を思い起こさせるように、この曲は脈打つようにコーラスが挿入され、瞑想的な曲にゴスペルのような深みのあるトーンを与えている。


ミツキは『The Land is Inhospitable』と『So Are We』の曲を、人生に深みを与える小さな瞬間から引き出しながら、何年もかけて一気呵成に書き上げたという。本作はボム・シェルターとサンセット・サウンド・スタジオでレコーディングされ、ドリュー・エリクソンが編曲・指揮したオーケストラに加え、ミツキが編曲した17人のフル・クワイアが参加。パトリック・ハイランドが共同でプロデュースし、モリコーネのスパゲッティ・ウエスタンのスコアからカーター・バーウェルの『ファーゴ』のサウンドトラックに到るまで、幅広いジャンルの音楽にインスピレーションを得ている。


ミツキ自身は、このアルバムを「最もアメリカ的なアルバム」と呼んでいるが、それは本作が繰り返し同じ問いを投げかけているから。希望も魂も愛もない方が人生は楽と彼女は感じるが、目を閉じて本当に自分のものは何かを考えると、彼女が見るのは真の愛だけである。


「私の人生で最高のことは、人を愛すること」とミツキは言う。「死後、私が持っているすべての愛を残せたらと思う。そうすれば、私が創り出したすべての善意、すべての善良な愛を、他の人々に輝かせることができる」


Mitskiの新作アルバム『The Land Is Inhospitable and So Are We』は9月15日にDead Oceansからリリースされる。



 

 

「Bug Like an Angel」



ニューヨークのシンガーソングライター、ミツキ(Mitski)は、近日発売予定のアルバム『The Land Is Inhospitable and So Are We』から2曲の新曲「Star」と「Heaven」を同時公開した。

 

ミツキは、ロサンゼルスのサンセット・サウンド・スタジオで、アレンジャー兼指揮者のドリュー・エリクソンとフル・オーケストラと共に、新曲に命を吹き込んだ。以下からご視聴ください。

 

『The Land Is Inhospitable and So Are We』は、Dead Oceansから9月15日にリリースされる予定だ。先行シングルとして「Bug Like An Angel」ミツキは本日、『Amateur Mistake』と題したヨーロッパとイギリスでの一連のアコースティック・パフォーマンスを発表した。またミツキは、昨年のアルバム『Laurel Hell』でビルボード・トップ・アルバム・チャートで初登場一位を獲得している。このアルバムはその週のベスト・アルバムとしてご紹介しています。

 


「Star」

 

 


「Heaven」

 




Mitski Tour Date:


10月7日(土) - スコットランド、エディンバラ - クイーンズ・ホール

10月9日(月) - イギリス、マンチェスター - アルバート・ホール

10月11日(水) - イギリス、ロンドン - ユニオン・チャペル

10月14日(土) - ドイツ、ベルリン - バビロン

10月16日(月) - オランダ、ユトレヒト - Tivoli / Vredenburg

10月20日(金) - フランス、パリ - ル・トリアノン

 

 

 

Mitski 『The Land Is Inhospitable and So Are We』



Label: Dead Oceans

Release: 2023/9/15

 

Tracklist: 


1. Bug Like an Angel


2. Buffalo Replaced


3. Heaven


4. I Don’t Like My Mind


5. The Deal


6. When Memories Snow


7. My Love Mine All Mine
8. The Frost

 



Best Coastのメンバーとしても知られるBethany Cosentino(ベサニー・コセンティーノ)が、近日リリース予定のソロ・アルバムの4thシングル「Natural Disaster」を公開した。「For A Moment」「Easy」「It's Fine」がプレビューとして先行公開されている。アルバムは7月28日にConcordRecordsより発売される。

 

「”Natural Disaster”は、90年代のパワー・ポップの定番と現代のフォーク・ポップのエッジを融合させた。リリックでは、地球温暖化と、世界の終わりを目の前にしている時の連帯感を探求しているという。また、コセンティーノは、ファンに自然災害対策のためにEvergreen Actionという支援サイトを訪れ、温暖化問題に対して多くの人々に取り組んでもらいたいと考えているようだ。

 

「"Natural Disaster"のビジュアルは、私たちの地球が苦しんでいる様子に注意を向けさせると同時に、この地球の美しさと、なぜ私たちがこの地球を救うために戦うべきなのかを思い出させるようなものにしたかったのです」と、コセンティーノは付属のMVについて語っている。

 

「私たちは誰ひとりとして完璧ではありませんが、たとえ、ひとつふたつの小さなことでも、変化を引き出そうとすれば、それは正しいことです。この夏、記録的な猛暑が続く中、この曲とビデオが行動を促すきっかけになればと思います。私は、気候変動対策に取り組む非営利団体、エバーグリーン・アクションに焦点を当てることにした。この星は私たちが手に入れた唯一の星だ」

 

「"Natural Disaster"は、アルバムの中で最も書きやすい曲だった。プロデューサーでソングライターのスージー・シンがインストゥルメンタル・トラックを送ってくれた。自分の中から出てくるのを待っていたような、そんな曲だった。メッセージはとても明確だ。私は、特に2020年の夏のエネルギーについて、ずっと考えていた。政治的な激動や、警察の横暴に対する抗議、カリフォルニア州全土で起きた山火事、そして、世界中の自然災害。その混沌としたエネルギーが地球上で感じられた。この曲は、私たちを取り巻く世界が崩れ、文字通り燃えていく中で、私たち人間がどのように仕事に取り組んでいくのかについてのコメントとして機能することを意図している」とコセンティーノは続ける。「私たちの惑星がどのように変化しているのかを考えることは、不安を煽るものだけど、とても現実的なことでもある。だからこの曲は、人々に何か一緒に歌えるものを与えながら、それに注意を喚起することができればと願っています」


「Natural Disaster」

 PJ Harvey 『I Inside the Old Dying Years』



Label: Partisan

Release: 2023/7/7

 

 

Review

 

PJ Harveyは、近年、音楽家という形に拘らず、舞台俳優等、様々な形の芸術表現を追求してきた。 ミュージシャンとして豊富なキャリアを持つ彼女は、昨年、詩集『Orlam』を出版したことも記憶に新しい。この書籍は、ドーセット州にあるアイラ=エイベル・ロウルズという少女の一年を追っている。その中には、英国文学らしい幽霊のモチーフが導入され、イギリス南北戦争、兵士の幽霊、そういった古典的な文学の主題、及び、副主題を魅力的に散りばめ、その中に幽霊との恋という、エバーグリーンなストーリー性が織り交ぜられている。イギリス/アイルランド文学では、オスカー・ワイルドの「カンタベリーの幽霊」や、ハーバート・ジョージ・ウェルズの作品をはじめ、幽霊の主題が古くから取り入れられてきたが、ハーヴェイの作風はそれらの古典的な題材を継承し、石にまつわる民間伝承のミステリーを複数書いたアーサー・マッケンのようなフォークロアの影響を付加している。これは、近頃では、ウィリアム・ブレイクの詩集を愛読していたと語るPJ Harveyの文学的な才能が遺憾なく発揮された瞬間となった。


これまでは長らく音楽という形式がポリー・ジーン・ハーヴェイの人生の中心にあったものと思われるが、それが近年では、ウィリアム・ブレイクのように複数の芸術表現を探求するうち、音楽という形式が人生の中心から遠ざかりつつあるとハーヴェイさんは考えていたらしい。もちろん、それは音楽だけが人生ではないのだから、悪いこととも言えない。しかし、音楽というものがいまだにこのアーティストにとっては重要な意味を持つということが、少なくとも最新作を聴くと理解出来る。一見すると遠回りにも思え、ばらばらに散在するとしか思えなかった点は、このアルバムで一つの線を描きつつある。詩集『Orlam』の詩が、収録曲に取り入れられていること、近年、実際にワークショップの形で専門の指導を受けていた”ドーセット語”というイングランドの固有言語、日本ふうに言えば”方言”を歌唱の中に織り交ぜていること。この二点が本作を語る上で欠かさざるポイントとなるに違いない。

 

それらの文学に対する真摯な取り組みは、タイトルにも顕著な形で現れていて、現代詩のような意味をもたらしている。「死せる旧い年代のなかにある私」とは、なかなか難渋な意味が込められており、息絶えた時代の英国文化に現代人として思いを馳せるとともに、実際に”ドーセット語”を通じ、旧い時代の中に入り込んでいく試みとなっている。これは昨年のウェールズのシンガーソングライター、Gwenno(グウェノー)が『Tresor』において、コーニッシュ語を歌の中に取り入れてみせたように、フォークロアという観点から制作された作品とも解釈出来るだろう。この旧い時代の文化に対するノスタルジアというものが、音楽の中に顕著に反映されている。それはイギリスの土地に縁を持つか否かに関わらず、歴史のロマンチシズムを感じさせ、その中に没入させる誘引力を具えているのである。

 

アルバムを制作する上で、 フォークロアという考えに加え、民謡を意味するフォーク音楽が本作の重要な素地を形成している。ところが、制作者は、ステレオタイプのフォーク音楽を作りたくはなかったと語っているのを考慮すると、オルタナティヴフォーク作品として位置づけてもおかしくはない。だが、それと同時に、フォークという枠組みに収まるような音楽とも言い難い。その中には、パティ・スミスのように、''詩というフィルターを通じてのポピュラー・ミュージック''という形がこの音楽の中に、ぼんやりと浮かび上がってくる。ロック色はほとんどない。クランチなギターもなければ、歪んだボーカルもない。ここには、フォーク音楽と対峙するような形で、ハーヴェイの瞑想的なソウルフルなボーカルが宙を舞い、それは時に華やかな印象をもたらす時もある。アルバムの中で、ハーヴェイは舞台俳優の経験を活かし、複数のキャラクターを演じているという指摘もある。しかし、日本の古典芸能の一つである落語での名人芸がそうであるように、アルバム全体の収録曲の中で、声色をわかりやすく変更させることはほとんどない。世に傑出した噺家というのは声色を変更しないのにも関わらず、別の人物を演じていると錯覚させる力を備えているが、それと同じように、PJ Harveyもまたこのアーティストがその歌をうたっていると聞き手に自覚させながら、その歌の持つキャラクターや性質を楽曲ごとに様変わりさせ、複数の人物やキャラクターが登場すると思わせる場合もある。この点について実際、多くの優れた俳優の演技から学ぶべきものがあったとハーヴェイは説明している。

 

アルバムの収録曲は、アーティストの制作した曲をスピーカーやイヤホンを通して聴くという形式の範疇に留まらない。それは舞台で歌う何者かの歌をスピーカーやイヤホンを通じて聴くといった印象を制作の中で構築していく試みであるとも解釈することが出来る。それは旧来の音楽形式のアーティストと需要者との距離を縮めるという概念を反転させ、逆にそれを遠ざけるというような手法により、作品が組み上げられていく。音楽そのものは表向きにはそれほど新しさを感じさせないものの、反面、手法による斬新さがアーティストが潤沢なキャリアの中で培ってきた音楽的な経験と密接に結びついた作品であるとも考えられる。また、音楽性のバリエーションも少なからず込められており、ドーセット語を取り入れた「Lwonesome Tonight」では、アイリッシュ・フォークを基調とした音楽に取り組み、また、「The Nether-Edge」においてはアヴァン・ポップに近いアプローチも取り入れられている。更に、タイトル曲では、スロッピング・グリッスルのアート・パンクの影響も取り入れている点を見ると、ほとんどジャンルレスに近い複雑な内容により構成されている。また、「All Souls」では、トリップ・ホップやネオソウルの影響も取り入れている。音楽ジャンルの広汎さには白旗を振るよりほかなくなる。

 

アルバムの収録曲の中で一番聞きやすい「A Children's Question,August」は、前作の2016年の作品の中で、アーティストがジャーナリストとして活動していた時代の経験が表れており、アフガニスタン、コソボといった紛争地域、ワシントンDCの貧困地域をジャーナルの視点を持って歩いた経験を活かし、世界的な問題に対する洞察を曲の中に織り交ぜようとしているように思える。ただ、世界的な問題の中にある暗さや困難に焦点を置くのではなくて、愛情という観念により、自らの思想を音楽と結びつけようとしているとハーヴェイは主張する。それこそが社会問題の中に内在する暗さに少しの救いを見出すきっかけになると考えているようだ。


それは実際の曲の中にもはっきりとした形で表れており、ハイライトとも称すべき瞬間が『I Inside The Old Dying Years』に見出せる。「August」では、ダブステップを、モダンなポップネスという観点から把捉している。「A Children's Question,July」では、本作の中で最も実験的な瞬間が表れている。さらにエンディング曲「A Noiseless Noise」では、デヴィッド・ボウイの実験音楽の要素を捉え直している。 このアルバムの収録曲は、アーティストの数年間の人生経験が色濃く反映されているような気がし、表面上の音楽的なヘヴィネスではなく、内側の観念的なヘヴィネスとして、我々の耳にグッと鋭く迫ってくる場合がある。



81/100