カナダのポスト・ハードコアバンド、Fucked Upが、今週金曜日に発売されるニューアルバム『One Day』の最終シングル「Cicada」を公開しました。

 

是非、ニューシングル「Cicada」を発売前に改めてチェックしてみてください。ギタリストのMike Haliechukがリード・ヴォーカルをとるこの曲は、Colin Medleyが監督したビデオ付きでリリースされました。今回のシングルについて、バンドはプレスリリースを通して次のように説明しています。


"Cicada "は、人を失った後の人生とはどんなものか、そして彼らが教えてくれたことを光として、未来に引き継ぐ私たちの責任についての曲です。

 

蝉の鳴き声を、私たちのサブカルチャーにおける奇妙な生活のメタファーとして想像するのが好きだ。私たちは皆、土の中で奇妙な小さな隠れ生活を送り、ある世代に一度、私たちの誰かが土から飛び出して、全体に聞こえるほど大きな声で歌を詠む。


『One Day』は、Superchunkのマック・マコーン氏が主催するMergeから1月27日に発売されます。既発のシングル「I Think I Might Be Weird」「Found」タイトル曲が収録されています。


「Cicada」

 

©Stephan Manel

 

Daft PunkのThomas Bangalter(トーマス・バンガルデル)が新しいソロアルバム「Mythologies」を発表しました。

 

このレコードはオーケストラ作品で、Erato/Warnerから4月7日にリリースされる予定です。昨年初演された同名のバレエのために振付師Angelin Preljocajが「Mythologies」を委嘱したそうです。


プレスリリースによると、Bangalterの90分のスコアは、"電子音楽のリソースを利用するのではなく、交響曲の大規模な伝統的な力を伴うので、個人的かつ協力的なジェスチャーでオーケストラのバレエ音楽の歴史を受け入れる。"とある。


ダフト・パンクは2021年に解散を発表した。翌年、デビュー・アルバム『Homework』のデジタル・リイシューをリリース。Bangalterは以前、ギャスパー・ノエ監督の『クライマックス』のサウンドトラックに参加したことがある。






Thomas Bangalter 『Mythologies』
 
 

Label: Erato/Warner
 
Release Date: 2023年4月7日 


Tracklist:

1. Premiers Mouvements
2. Le Catch
3. Thalestris
4. Les Gémeaux I
5. Les Amazones
6. L’Arrivée d’Alexandre
7. Treize Nuits
8. Danae
9. Zeus
10. L’Accouchement
11. Les Gorgones
12. Renaissances
13. Le Minotaure
14. Eden
15. Arès
16. Aphrodite
17. Les Naïades
18. Pas de Deux
19. Circonvolutions
20. Les Gémeaux II
21. Icare
22. Danse Funèbre
23. La Guerre

 

 

国内最大級の音楽フェスティバル、Summer Sonic 2023のヘッドライナーが本日公表され、英国のブリット・ポップの立役者、「Song 2」などの名曲で名高いブラーがこの大役を任されることが決まった。

 

ブラーは、昨年11月に2015年以来となる再結成をファンに告知し、さらに今年7月にウェンブリー・スタジアムでリユニオン・ライブを開催することを発表している。この再結成に関して、ボーカリスト/フロントマンであるデーモン・アルバーンと他のメンバーは次のように声明を出していた。 


「僕らはこれらの曲を演奏するのが本当に大好きで、またやる時が来たと思ったんだ」とアルバーンは語っている。


ギタリストのグレアム・コクソンは語った。「ブラー兄弟と再び演奏し、素晴らしい楽曲をすべて再演することを本当に楽しみにしている...。ブラーのライブはいつも僕にとって素晴らしいものなんだ。素敵なギターとアンプを右に回して、たくさんの笑顔...」


ベーシストのアレックス・ジェームスはコメントしている。「僕ら4人が部屋にいるとき、いつも何か特別なものがあるんだ。7月8日、そのための空間がウェンブリー・スタジアムになると思うと嬉しいよね」


さらに、ドラマーのDave Rowntreeはこう語っている。「ここ数年の混乱の後、夏の日に一緒に曲を演奏するために戻ってくるのは素晴らしいことだ。そこで君に会えることを期待している」

 

Summer Sonic 2023は、東京(千葉ゾゾマリンスタジアム、幕張メッセ)、大阪(舞洲ソニックパーク)にて8月19日(Sat)、8月20日(Sun)二日間にわたり開催される。詳細はこちら



Blur -Profile-


1989年、Food/EMIレコードとサイン契約を交わし、1991年に『レジャー』でデビューを飾る。そのアート・パンクで奇抜な、ポップで洒落たバンドの存在で、一気にその存在が世界に知れ渡る事となったのだが、アルバム『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ』(1993年)でブリット・ロックのクールさを世界中に認識させ、『パークライフ』(1994年)で世界を巻き込むブリット・ポップ/UKロックの旗手としてシーンを牽引する存在へと成長していく。

 

この作品で全英チャート1位を記録した彼らは、ブリット・ポップの音域に磨きをかけた『ザ・グレート・エスケープ』(1995年)、ノイジーなインディ・ギター・ロックをかき鳴らす『ブラー』(1997年)、ウィリアム・オービットが参加し、オーガニックなポップと最新技術を組み合わせたラディカルで実験的な『13』(1999年)、そしてグレアムがバンドを脱退し、3ピース・バンドとして発売した『シンク・タンク』(2003年)まで、実に5作連続で全英1位を記録するという快挙を成し遂げている。 

 

2009年の再結成以降も世界各国のフェスティバルへのヘッドライン出演や、デビュー21周年を記念するボックス・セット『ブラー21』の発売、またキャリアの全てを網羅したドキュメンタリー映画『ノー・ディスタンス・レフト・トゥ・ラン』の公開、2012年にはハイド・パークでソールド・アウト公演を行い、ロンドン・オリンピックの閉会式に参加するなど、その凄まじい存在感をシーンに見せ続けている。 2014年には、約10年振りとなる来日公演が行われ、即日ソールド・アウト。その後『ザ・マジック・ウィップ』(2015年)を発売してロンドンのハイド・パークで公演を行った。 バンドは再びSummer Sonic 2023で約9年ぶりに日本へ戻ってくる。


Summer Sonic 2023 公式サイトより抜粋


 

アカデミー賞オリジナル楽曲部門にノミネートされたRihanna


オスカーが主宰して行われる米/アカデミー賞の2023年度のノミネート作が公式サイトを通じて発表された。Rihanna(リアーナ)、Lady Gaga(レディー・ガガ)、Mitski(ミツキ)、David Byrne(デヴィッド・バーン)などがオリジナル楽曲賞の部門でノミネートされたことが分かった。

 

今回、2023年のアカデミー賞の受賞資格があるとされた147のスコアと82の楽曲のうち、5曲と5つのスコアがノミネートされています。




Rihanna(リアーナ)の『Black Panther』、Wakanda Forever(ワカンダ・フォーエバー)の楽曲「Lift Me Up」、Mitki(ミツキ)とDaivid Byrne(デヴィッド・バーン)をフィーチャーしたSon Lux(サン・ラックス)の「Everything Everywhere All at Once」の楽曲「This Is a Life」、Lady Gagaレディー・ガガの「Top Gun」とともにオリジナル楽曲賞にノミネートされている。

 

『Top Gun : Maverick』の楽曲「Hold My Hand」、『RRR』の「Naatu Naatu」、ソフィア・カーソンが演奏し、ダイアン・ウォーレンが作曲した『Tell It Like a Woman』の「Applause」なども候補作に挙がった。

 

2023年のアカデミー賞の音楽部門のノミネート・アーティストと候補作品は以下の通りとなっています。



 


Nominees

 

-Music Score-


All Quiet on the Western Front

Volker Bertelmann


Babylon

Justin Hurwitz


The Banshees of Inisherin

Carter Burwell


Everything Everywhere All at Once

Son Lux


The Fabelmans

John Williams

 

 -MusicOriginal Song)-

 

Applause

from Tell It like a Woman; Music and Lyric by Diane Warren


Hold My Hand

from Top Gun: Maverick; Music and Lyric by Lady Gaga and BloodPop


Lift Me Up

from Black Panther: Wakanda Forever; Music by Tems, Rihanna, Ryan Coogler and Ludwig Goransson; Lyric by Tems and Ryan Coogler


Naatu Naatu

from RRR; Music by M.M. Keeravaani; Lyric by Chandrabose


This Is A Life

from Everything Everywhere All at Once; Music by Ryan Lott, David Byrne and Mitski; Lyric by Ryan Lott and David Byrne





Panic! At the Discoが活動を終了するとの声明を発表しました。約20年にわたる活動を経て、バンドリーダーのブレンドン・ウリーは本日、来たるヨーロッパ・ツアーの後にグループを解散させることを発表しました。


"まあ、地獄のような旅だったかな"とフロントマンのブレンドン・ウリーはソーシャルメディアに声明を書いている。


ラスベガスで育って、この人生がどこに行くのか想像もつかなかったよ。世界中のたくさんの場所、そして、その過程でできたすべての友人たちを忘れないよ。


しかし、時には旅は新しいものを始めるために終わらなければなりません。私たちはそれを自分自身に維持しようとしてきた、あなたのいくつかは、聞いたことがあるかもしれませんが... [妻の)サラと私は、非常にすぐに赤ちゃんを期待している! 父親になること、そして妻が母親になるのを見ることは、身が引き締まる思いがしますし、とてもエキサイティングです。この次の冒険を楽しみにしています。


とはいえ、私は自分の人生のこの章を終わらせ、家族に焦点を当て、エネルギーを注ぐつもりです。Panic! At The Discはもう存在しないのです。

 

皆さん、長年に渡る絶大なるサポートに感謝します。ここに座って、これを言う完璧な方法を考え出そうとしましたが、私たちにとってどれだけ意味があったのか、本当に言葉にできません。最初からここにいる人も、これから出会う人も、多くの才能ある人たちとステージを共有できただけでなく、皆さんと時間を共有できたことを嬉しく思っています...愛してる。感謝しています。存在していてくれてありがとう。


ブレンドン・ウリは高校時代にパニック!アット・ザ・ディスコを結成しました。2004年にギタリストのライアン・ロス、ドラマーのスペンサー・スミスと共にパニック!アット・ザ・ディスコを結成し、翌年にデビューアルバム『A Fever You Can't Sweat Out』を発表。その後の3枚のアルバムで何度かラインナップを変更した後、2016年のLP『Death of a Bachelor』までにバンドは実質的にウリのソロ・プロジェクトになっていた。昨年8月、パニック!アット・ザ・ディスコは最後のスタジオ・アルバム『Viva Las Vengeance』を発表した。約二十年間の活動、本当にお疲れさまでした。


 



昨年11月に2023年のニュー・アルバムを予告していたSparksは、2020年の『A Steady Drip, Drip, Drip』に続く『The Girl Is Crying In Her Latte』を発表している。次作アルバムのニュースを伝えると同時に、スパークスはアイランド・レコードとの最初の契約から50年近くを経て、同レーベルに復帰しています。


RonとRussell Maelからなるエレクトロ・ポップ・デュオ、Sparksは、"Funny how things work!"とこのリリースに際して語っている。


スパークスにとって最も記憶に残る時代のひとつは、イギリスとの関係を永遠に固め、スパークスを世界中のより多くのオーディエンスに知らしめた、70年代のアイランド・レコード時代だったんだ。クリス・ブラックウェル、マフ・ウィンウッドらは、私たちのアルバム『Kimono My House』に全力を注ぎ、実に型破りなファーストシングル「This Town Ain't Big Enough For Both Of Us」をリリースしました。


ポップミュージックには大胆な創造性と商業性の両方が存在する、という彼らの信念(そして私たち)の正しさが証明されたのです。そして、それから約50年後の2023年、私たちは再びアイランド・レコードと契約し、当時、いや、私たちのキャリアを通じていつでもそうであったように、大胆で妥協のないアルバムに仕上がっていると私たち全員が感じているのです。長い時間を経て、アイランドと再会し、当時と同じ冒険心を共有しながら、ニューアルバム『The Girl Is Crying In Her Latte』をリリースできたことを嬉しく思っています。

 


アイランド・レコード社長であるルイス・ブルームはこの再契約について次のように声明を提出した。


「スパークスは常にポップ界で最もオリジナルで画期的でクリエイティブなグループの一つであり、彼らの長寿は、常に自分たちを改革する能力によるところも大きいです。アイランドにスパークスが戻ってきたことは光栄であり、スリリングなことだ。来年は、アイランドが『Kimono My House』をリリースしてから50年になる。あのアルバムは未来から来たようなサウンドで、今回も『The Girl Is Crying In Her Latte』で、ロン&ラッセルは他の誰にも真似できないようなポップな傑作を作り上げたんだ」

スパークスのニューアルバム『The Girl Is Crying In Her Latte』は5月26日にアイランド・レコードからリリースされる。

 



本日、ロンドンを拠点とするアーティスト、Lucinda Chua(ルシンダ・チュア)は、新曲「Echo」とそれに付随するショートフィルムを公開し、さらに3月24日に4ADからリリースするソロ・デビュー・アルバム『YIAN』を発表しました。また、ルシンダは5月9日にロンドンのICAで、これまでで最大のヘッドライン・ショーを行うことも発表しています。


2022年にリリースされた『Golden』が、若き日の自分自身の視点から書かれた曲で、『YIAN』の世界への瞑想的な前奏曲であるとすれば、彼女のニューシングル『Echo』は、その第1章にしっかりと位置づけられるはずだ。先祖代々のトラウマを歌ったポップソング「Echo」は、過去への敬意と新しい未来を切り開く自由との境界線を歩く、アンチヒーローの旅路でもある。(私はあなたの恥を背負わない/二度とあなたのエコーにはならない...私は他の誰にもなれない/あなたを見て、自分を見る」)。この曲では、官能的なエコーのハーモニーと繊細なソウルを感じさせるピアノが、彼女独特の親密でありながら別世界のようなサウンドを生み出している。


「Echo」

 


中国舞踊を徹底的に学んだルシンダ・チュアは、映画監督のジェイド・アン・ジャックマン、ムーブメントディレクターのチャンテル・フーとともに、振り付けを施したポップなMV「Echo」のビジュアルを制作しました。このショートフィルムは、中国のファンダンスと武術へのオマージュであり、移り変わる感情の季節を旅するような、感動的で革新的な作品となっています。ストーンサークルを土台に、手作りの中国製シルクの扇子を使って、茨のバラ園から吹雪へと移り変わるムードの中で、Chuaはダンスを披露している。「私たちは皆、雪の中の足跡に過ぎないのだと思うことがあります」とルシンダ・チュアは言います。


今回のリリースは、ロンドンのパーセルルームでのソールドアウト公演と、昨年のウィリアム・バシンスキーのオープニングを飾ったピッチフォーク・ロンドンへの出演に続いて発表されました。


Lucinda Chua 『YIAN』


 


Label: 4AD

Release: 2023年3月24日


Tracklist:

1. Golden 
2. Meditations On A Place 
3. I Promise 
4. You 
5. An Ocean 
6. Autumn Leaves Don't Come 
7. Echo 
8. Do You Know You Know 
9. Grief Piece 
10. Something Other Than Years 


 

Clark


クラークは、トム・ヨークがエグゼクティブ・プロデューサーを務める(そしてフィーチャーされている)10枚目のアルバム『Sus Dog』を発表しました。この新作はThrottle Recordsから5月26日に発売されます。


リードシングルとして公開された「Town Crank」は、クラークにとって昨年11月に発表したFyfe and Iskra Stringsの "Deletia "のリミックスに続く。また、クラークの楽曲で初めてヴォーカルがフィーチャーされている。


『Sus Dog』は、クラークの2021年発表のアルバム『Playground in a Lake』に続く作品となり、レディオヘッドのトム・ヨークがエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。ヨークはアルバムに収録される「Medicine」という曲にもヴォーカルとベースを提供している。


トム・ヨークはこのコラボレーションについて、次のように語った。


「クリスは私に、歌を始めたので感想やアドバイスが欲しい、彼にとっては新しいサメの入り江のようなものだ、と書いてきたんだ。

 

私は彼がやっていることに何年ものめり込んでいて、結局、彼がその奇妙なことをつなぎ合わせている間、私は後部座席の運転手のような存在になってしまったんだ。

 

私は、彼が歌と言葉について、まったく別の扉から入ってきたことを発見しても驚かなかったし、それが私にとって最も興味深く、刺激的な部分だった。

 

彼が最初に送ってきたのは、2つのフロアの間に挟まれたことを歌っているもので、私はすでに納得していました。それは、彼が作曲やレコーディングに取り組む方法と同じでしたが、今回は人間の顔をしていたのです」





Clark 『Sus Dog』



Label: Throttle Records

Release: 2023年5月26日


Tracklist: 

1.Alyosha 
2.Town Crank 
3.Sus Dog (Feat. Anika) 
4.Clutch Pearlers 
5.Over Empty Streets 
6.Wedding 
7.Forest 
8.Dolgoch Tape 
9.Bully 
10.Dismissive 
11.Medicine (Feat. Thom Yorke)
 12.Ladder

Kali Malone 『Does Spring Hide Its Joy』



Label: Xkatedral

Release Date: 2023年1月日

 

 

Review


三枚組の新作アルバム『Does Spring Hide Its Joy』は、現在、スウェーデンを拠点に活動するアメリカ人実験音楽作曲家、Kali Malone(カリ・マローン)による没入型オーディオ体験で、マローンの他、スティーブン・オマリーとルーシー・レイルトンがミュージシャンとして参加している。2020年春のロックダウンの期間中に、ベルリン・ファンクハウス&モノムで制作・録音された。音楽は、音の信号として数学的な技術が用いられており、7進数のジャスト・イントネーションとビートの干渉パターンに焦点を当てた、長尺の非線形デュレーション作曲の研究となっている。これまでのこのアーティストと同様、ドローンの音響の可能性を追求している。

 

昨年、『Living Torch』というドローンの傑作を残したカリ・マローンであるが、今回、アーティストはパイプオルガンの演奏から離れ、 シンセサイザーのサイン波に焦点を絞ったドローン・ミュージックを制作している。そして、イギリスのメディア、The Quietusによれば、上記の2人のコラボレーターとしての役割は歴然としているという。ルーシー・レイトンの音楽的な背景は、コンテンポラリー・クラシックにある。一方、オマリーの方はSunn O)))の活動をみても分かる通り、ブラック・メタルや実験音楽にある。レイトンはチェロ奏者として、オマリーは、Bowed Guiterという形で作品に参加している。ある意味では異色のコラボレーションともいえるが、この三人には、方向性こそ違えど、ドローンという共通項を見出すことが出来る。


今回、パイプ・オルガンを離れ、シンセサイザーの世界に没入したことは、他の側面から見ると、既存作品とは異なるドローンミュージックのアプローチを探究したかったように思える。そして、例えば、ルネッサンス期の宗教曲のような重厚さを全面に押し出していた既存作品とは異なり、どちらかといえば今作のドローン・ミュージックはアフガニスタンの弦楽器ラバールの音色に近い音響の特性を持ち、エキゾチックな雰囲気に充ちたドローンへカリ・マローンは歩みを進めた。ただ、クラシック音楽の通奏低音のような形で常に一つの音が長く維持される点や、音の増幅と減退を用いてトーンの揺らぎを与えるという点、そして、時折、Bowed GuitarやCelloを通じてもたらされるアナログ信号のノイズのようなアバンギャルドな音の断片は、もしかするとこれまでのマローンの作品には見られなかった新鮮な要素といえるかもしれない。

 


 

今作『Does Spring Hide Its Joy』は、映画音楽のサウンドトラックとして制作された。 この映像作品に登場する1868年にエンジニアのジェシー・ハートリーによって設計された中央水力塔とエンジン・ハウスは、イタリアのフィレンツェにあるルネッサンス期の洞窟、パラッツォ・ヴェッキオを基にしている。映像作品『Does Spring Hide Its Joy』は、Abandon Normal Devicesの依頼を受け、アーツカウンシル・イングランドの資金援助を得て、オイスター・フィルムズが配給している。助監督はスウェットマザーが担当した。映像監督は以下のようなコメントを提出している。

 

  「私は、この作品に付随するフィルムを監督しました。バーケンヘッド・ドックの水圧塔とエンジンハウスの廃墟を撮影し、自然が静かにその権利を取り戻したこの工業地帯の震えるような肖像画を作りました。
私は、カメラの熱っぽい動きと彷徨によって、この荒涼とした空間に人間の存在を導入しようとした。建物を巨大な空の骨格として撮影するだけではなく、建物や崩壊した屋根、穴、床に散らばる苔や瓦礫、焼けた木片、そしてこの廃墟を彼らの王国としたすべての生き物たちと一緒に撮影しようとしたのである」

 

つまり、映像監督が語るように、これらルネッサンス期のイタリアの廃墟、他にもイギリスの古い廃墟など、古びた遺構のサウンド・スケープとして制作されている。これらはもちろん世の多くのサウンドトラックと同様、あくまで映像作品の質感を損ねないように、極力主張性が抑えられている。しかし、もちろんこのサントラの音楽は、映像の雰囲気を掻き立てるために存在するのであり、それはそのまま存在感が希薄であるということではない。それよりも実際の音楽から想起される古典的な宗教音楽の雰囲気が全面に満ち渡っているのである。

 

一方、音楽の製作者はこのサウンド・トラックについて、どのような見方をしているのか、断片的ではあるが、その一部を抜粋しておきたい。


「世界中のほとんどの人と同じように、私の時間に対する認識は、2020年の春の大流行の閉塞感の中で、大きな変容を遂げました。慣れ親しんだ人生の節目もなく、日や月が流れ、本能的に混ざり合い、終わりが見えなかった。時間が止まっているのは、環境の微妙な変化により、時間が経過したことが示唆されるときである。記憶は不連続に曖昧になり、現実の布は劣化し、予期せぬ関係が生まれては消え、その間、季節は移り変わり、失ったものはないまま進んでいく。この音楽を何時間もかけて演奏することは、数え切れないほどの人生の転機を消化し、一緒に時間を過ごすための深い方法だった」

 

カリ・マローン本人が説明するとおり、アーティストはあくまで、映像作品の付属であることを弁別しながらも、これらのドローン・ミュージックは制作時期のアーティストの感情や人生を色濃く反映している。それは孤独感に充ち、寂寥感に溢れ、茫漠とした荒野の最果てに浮かぶ霧のようである。しかし、その一方で、普通のドローンには見られない温かな感情もその冷たさの中に滲んでいる。ただ、これは表題にあるように喜びという単純な言葉ではいいあらわせないなにかがある。そして、これらの厳粛な抽象的な音楽に耳を澄してみると、没空間、没時間といった、すべてのこの世にある常識的観点から解き放たれた反転の概念が存在している。それは、チベット密教の概念、時間そのものは一方方向に流れず、円環を形成しているというニュアンスに近い。

 

そもそも、これらのドローンという実験音楽を通じての哲学的考察は、外側に流れる時を表現したものではないように感じられる。それは、人間の内側にある内的な時間の流れ、つまり、過去から現在、未来へと繋がる本来の時流とは異なる混沌とした合一の時間が、このレコードの中には内包されている。そしてまた、外的な風景ではなく、外の風景に接した際の内的風景が描写的に音の増幅や減退の反復によって永遠と続いていく。つまり、カリ・マローンが近年探究するアブストラクト・アンビエントとは、現実の物理空間に内在する法則とは異なる何かを追い求めようというのかもしれない。それはこの長大なサウンドトラックを聴いてみると分かるとおり、物質の持つ無限性や合一性、そういった超越的な観点に集約されているようにも思えるのである。

 

この新作アルバムの収録曲を逐一説明することは、あまり有益ではないように思える。その理由は、これらの四時間以上に及ぶ収録曲は、始まりもなければ、終わりもない、無限の空間とも称せるからなのだ。この最新作において、前作で金字塔を打ち立てたカリ・マローンはそれとは異なる崇高性を追い求めている。アバンギャルド・ミュージックとしては、未曾有の孤絶した領域にあり、こういった音楽について、評価付けることすら愚かしいと思える。もしかすると、今作は、前作『Living Torch』と同様、前衛音楽の伝説的な作品として後に語り継がれるような作品となるかもしれない。



98/100

 

 

 ©Reed Schick


3rdアルバム『Good Morning It's Now Tomorrow』から2年の歳月を経て、サウスロンドンの気鋭シンガーソングライター、Matt Maltese(マット・マルチーズ)が、4thアルバム『Driving Just To Drive』を発表しました。この新作は4月28日にNettwerkから発売となる。さらに、この告知に合わせて、タイトル・トラックのMVが1月20日に公開されています。下記よりご視聴下さい。

 

この新作アルバム『Driving Just To Drive』についてのマット・マルチーズの声明は以下の通り。


「年齢を重ね、また、忙しくなるにつれて、頭の中に報酬システムを構築することができるようになると思うんだ。しかし、個人的な "成長 "への執着を視野に入れることができるような、まったく新しい新鮮な破滅がそこに存在することも確かであると思います。

 

私はよく、あれをするためにこれをしなければならない、そうすれば他のことをするチャンスがある、というような積み木のような考え方をします。一方で、富に偏った金融システムや指数関数的に白熱する世界など、コントロールできない(そして、おそらく変えられない)現実があり、すべての生産性を無意味なものにしてしまう可能性があります。


私は、若い頃をよく思い出して、何かをやるためにどれだけ多くのことを成し遂げたかを考えました。子供の頃、遊び場で遊んだり、ドライブに出かけ、車の中で音楽を聴いたり・・・。そう、なんの成果もなく、必要性も感じないまま、好きなことをただやっていたんです。生活の中にそういうものがあるのはとても大事なことだと思います。

 

 

「Driving Just To Drive」

 

 

 

Matt Maltese 『Driving Just To Drive』




Label: Nettwerk

Release Date: 2023年4月28日

 


Tracklist: 
 
1. Mother 
2. Irony Would Have It 
3. Florence 
4. Mortician 
5. Museum 
6. Widows 
7. Coward 
8. Driving Just to Drive 
9. Hello Black Dog 
10. Suspend Your Disbelief 
11. But Leaving Is

 

ELVINA VLADI KVISLE


ノルウェイのパンクバンド、Sløtfaceがニューシングル「Nose」を公開しました。この新曲は、2月24日にPropeller Recordingsからリリースされる新作EP「AWAKE / ASLEEP」の収録曲となる。


「Nose」は、一般的な「Sløtfaceの不安」と呼ぶべき曲で、私がいつも戻ってくる反復的なテーマなんだ」とHaley Sheaは語っている。

 

「Nose」は、私と愛する人との会話で、不安を経験していない人に不安がどのようなものかをイメージで説明しようとしている。小さなことでも、それが引き金となって、止めることが不可能な思考のスパイラルに陥ってしまう。そしてコーラスは、私が愛する人が私に呼吸をするように思い出させてくれる。パートナーや家族、愛する人たちが正しい方法で行えば、通常、私の思考を落ち着かせるのに役立つ戦術なのです。


"Nose "は、2022年の3月にベルゲンのスタジオにOdd Martinを訪ね、何曲か書いた時に始まった。結局、初日だけで7種類ほどのデモを書き、2日目にはその中から数曲を選んで肉付けするという超生産的な2日間になった。その2日目の最後に試した曲が「Nose」だった。


ヘビーでリズミカル、ベースにフォーカスしたヴァースと、ビッグでレイヤー、ポップなコーラスのミックス、そしてサックス奏者のAksel Rønningがトラック全体にスパイスとグリットと深みを加えている。EPの中でも絶対にお気に入りの1曲になりました。


 

When Young


アオイイフ・パワーとアンドリュー・フラッドのデュオ、Whenyoungは、4月7日に200枚限定で発売されるニューアルバム「Paragon Songs」から最新シングル「Shame Train」を公開しました。

 

The Murder Capital、Fountaines D.Cを始め、インディー・ロックが活況を見せているアイルランド出身のWhenyoungは、同地のオルタナティヴ・ロックのシーンで注目を集める二人組だ。2019年にデビュー・アルバム『Reasons To Dream』をVirgin/Universal Musicからリリースしている。


「曲作りと自己啓発に没頭し、不安やコンプレックスを克服しようとしていたとき、恥は誰にでも影響を与えるトラウマ的な感情であることを理解し始めた」とアオイイフ・パワーは説明する。

 

「自覚があろうとなかろうと、私たちは型にはまるように作られていて、でなければ恥をかかされる。加齢、社会経済的地位、宗教、性別、イメージなど、数え上げればきりがないほどです。この曲はアルバムのために最初にレコーディングした曲で、曲を通して明らかな自己愛と尊敬というテーマは、この曲から本当に発展していったんだ。」


「Shame Train」のビデオは、ラムズゲート港にあるラムズゲート・アート・バージ号の廃船体で、監督のルーク・オグデンと友人たちの協力を得て撮影したんだ」とアンドリューは続ける。

 

「私たちは、この船がコミュニティ・アート・スペースとして改装される直前に、この場所に入りました。むき出しの壁や梁は、線路を走る貨物列車を連想させ、その空間の雰囲気は曲ととてもよく合っていました。私たちは、暗い錆びた空間の中で、潮に揺られながら、アオイフェが対照的な白いシモーネ・ロシャのドレスを着て、エネルギッシュなパフォーマンス作品を作りました" と語っています。

 

 


LAのシンガーソングライター、Runnnerは、近日発売予定のデビューフルレングスから新曲「runnning in place at the edge of the map」を公開しました。この曲は、これまでに発表されたシングル「NYE」「bike again」、「i only sing about food」に続く作品となります。下記よりご覧ください。


「この曲は、コミュニケーションやビデオゲームでフラストレーションを感じることについて書いたんだ」とNoah Weinmanは声明を出しています。

 

「私は自分自身をある種の無言の緊張状態に追い込み、それを通して考えようとすればするほど、身動きが取れなくなる感じだった。オープンワールドのゲームで、キャラクターが見えない壁に何度も何度もぶつかっていくようなイメージしかなかったんだ」


Runnerの『Like Dying Stars, We're Reaching Out』は、Run for Coverから2月17日にリリースされる。

 

「runnning in place at the edge of the map」

 

American Nightmare

ボストンのニュースクール・ハードコア・クルー、American Naightmara(アメリカン・ナイトメア)がニューEPを発表した。

 

『Dedicated To The Next World』は、2020年の『Life Support EP』以来となるバンドの新曲で、初の10インチ・ヴァイナルは6月2日に”Heartworm Press”からリリースされる予定だ。

 

ボストンのMystic Valley Recording StudioでドラマーのAlex Garcia-Riveraがテープにライブ録音したこの4曲は、ブリスター・パンクの鋭い衝撃となること間違いなし。新曲「Self Check-Out」の試聴は以下から。

 





American Nightmare 『Dedicated To The Next World』EP

 

 

 
 
Label: Heartworm Press
 
Release: 2023年6月2日 


Tracklist:


1. How I Got Away

2. Self Check-Out

3. Real Love

4. Praying Hands On Fire

 

Banymetal

BABYMETALが、待望の4thアルバム『The Other One』の新たな味を披露した。先日のシングル「Divine Attack - 進撃」と「Monochrome」に続き、アルバムのオープニング・トラック「METAL KINGDOM」を発表しました。


『The Other One』はコンセプト・アルバムとなっており、全10曲の断片を含むトレイラーを公開している。私たちは、このアルバムのストーリーをまだ100%理解していませんが、以下、バンドのプレス・ステートメントからの抜粋が、何らかの光を当ててくれることを願っています...。

 

”昨年、BABYMETALは、10年間の旅を成功させ、世界から「封印」された。2022年4月、METALVERSEという仮想世界の中で、私たちの知らないBABYMETALを復元する『THE OTHER ONE』の復元プロジェクトがスタートしました。この修復プロジェクト内では、合計10曲が発見されており、それぞれの曲は、発見された10個の別々のパラレル・ワールドに基づく独自のテーマを表現しています。今度のコンセプト・アルバムには、これらの全く新しい楽曲が収録され、誰も知らなかったもうひとつのBABYMETALの物語を体験することができます。" 

 



BABYMETAL  『The Other One』 

 


 

レーベル: トイズ・ファクトリー

発売日: 2023年3月24日

 
 

Tracklist:


1. METAL KINGDOM

2. Divine Attack - Shingeki -
神撃

3. Mirror Mirror


4. MAYA


5. Time Wave


6. Believing


7. METALIZM


8. Monochrome


9. Light And Darkness


10. THE LEGEND

©Sophie Kuller

米国のシンガーソングライター、Heather Woods Broderick(ヘザー・ウッズ・ブロデリック)が、5枚目のアルバム『Labyrinth』を発表した。4月7日にWestern Vinylからリリースされる。ヘザー・ウッズ・ブロデリックはシャロン・ヴァン・エッテンのバックバンドのメンバーとしても活動している。

 

このアルバムの最初のテースターとなる「Crashing Against the Sun」は、Jeremy Johnstone(ジェレミー・ジョンストン)が監督したビデオと同時に公開された。この曲は、11月にリリースされた「Blood Run Through Me」に続く作品となり、共同プロデューサーである、D. James GoodwinとシンガーソングライターのLisa Hanniganがヴォーカルを務めています。『Labyrinth』のカバーアートとトラックリストと共に、新曲を以下でチェックしておこう。


「Crashing Against The Sun」は、ブロデリックによると「今日の現実と折り合いをつけ、心の余裕と未来が持つ全ての可能性を認識しながら、現在を進んでいく」ことをテーマにしているそうです。

 

「この曲は、私たちがこの世界で安心感や信頼感を得るためにしがみついているもの、そしてそれらがいかにはかないものであるかということについて歌っている。

 

この曲は、同じ感情がどのように二重の存在と現在のポジティブさを持つことができるかという好奇心を示している。存在の微妙な部分は変化に富んでいます。私たちの経験はしばしば冗長に感じられますが、ユニークさは細部に潜んでいます。本質的に、時間は飛ぶように過ぎていくのだから、それを楽しもう」


『Labyrinth』のテーマについて、彼女はさらに次のように語っています。「私たちの多くは、周りの動きから逃れるために、静寂と平和を切望しています。しかし、運動は永遠に続き、あるレベルでは常に起こっている。それは風のように荒々しく、しかし、その必然性において永遠に予測可能です。直線的な部分もあるが、その回路は無限である。私たちの人生は、それを刻んでいるだけなのです」




Heather Woods Broderick  『Labyrinth』

 

 

Label: Western Vinyl

Release Date: 2023年4月7日


Tracklist:

 

1. As I Left

2. I Want To Go

3. Admiration

4. Crashing Against The Sun

5. Wandering

6. Wherever I Go

7. Tiny Receptors

8. Blood Run Through Me

9. Seemed A River

10. What Does Love Care