©Shervin Lainez


オブ・モントリオールは、ニューアルバム『Lady on the Cusp』からニューシングル「Rude Girl on Rotation」をリリースした。このシングルは、リード曲「Yung Hearts Bleed Free」に続く。以下よりチェック。


「Rude Girl On Rotation」は、ジョージア州アテネからバーモントの新居への引っ越しを間近に控えていることからインスピレーションを得た曲だ。「ギターは、ニック・ドレイクが彼のジャマーでよく使っていたオープン・チューニングを使ったんだ。ベースラインは、キャンド・ヒートの'Poor Moon'に影響された60年代後期のウェストコースト・ロッカースタイルだ。この曲はルーズでアンダー・プロデュースなサウンドにしたかった。アルバムの全曲の中で、レコーディングに一番時間がかからなかった。気に入ってもらえるといいな。


2022年の『Freewave Lucifer f<ck f^ck f>ck』に続く『Lady on the Cusp』は、ポリビニル・レコードから5月17日にリリースされる。




 

©Riley Coughlin


Molly Payton(モリー・ペイトン)がニューシングル「Accelerate」をリリースした。この曲は、オスカー・キーズ監督によるミュージックビデオとセットになっている。以下より。


ペイトンは声明の中で、"私はここ数年で経験したことの多くの重い部分を扱っていたが、私は同様に持っていたすべての混乱と楽しみを完全にキャプチャしていなかった "と説明した。「僕はただ楽しいものを書きたかっただけで、あまり深刻に考えすぎなかった。この曲は、自分自身を自由にし、結果をあまり気にせずに物事に真っ先に飛び込んでいくことを歌った、ドライブの効いた、轟音のような曲だ。ヘビーなバンド・サウンドではなく、シンガー・ソングライター的な方向に行くのかとよく聞かれるんだけど、私は常にそれぞれの陣営に足を踏み入れると思う。


「ビデオを作ることになった時、この曲が持っている拳を振り上げ、何もかもクソ食らえという感じを本当に引き立てるようなものを作りたかったの」

 

「ヴィンテージ・カーやスピードウェイについて話していたんだけど、予算がとても少なかったから、バンドメイトでビデオ・プロデューサーのダミン・マッケイブが、彼のお父さんがダニーデンでヴィンテージ・カーを集めていると言うまでは、実現可能だとは思えなかった」

 

彼はまた、ビーチランズ・スピードウェイをタダで使わせてくれる人をたまたま知っていた。1ヵ月後、ダミンとオスカー・キーズ(監督)と私は飛行機でビーチランズ・スピードウェイに向かった。今までで一番素晴らしい撮影だった。ブルース・スプリングスティーンの格好で80年代のフォードでニュージーランドの最も美しい場所を3日間走り回り、アイスクリームを食べ、人生を楽しんだ」


 

 

ANTI-に所属するウィスコンシン州のオルタナティヴロックバンド、Slow Pulp(スロウ・パルプ)は、Lifehouseの2001年のヒット・ソング「Hanging By A Moment」のカバーをリリースした。

 

Lifehouseは、日本での知名度はいまひとつだが、アメリカでは根強い人気を誇る、ポスト・グランジバンド。2000年にデビューアルバム『No Name Face』を発表し、翌年、このアルバムから同曲をシングル・カットしている。「Hanging By A Moment」はビルボードが集計するモダンロックトラックスチャートで一位を獲得した。さらにこのヒットに続いて、アルバムもビルボードチャートで最高6位を獲得し、ブレイクした。日本でこのアルバムが発売されたのは、オリジナル盤のリリースから一年後のことだった。2002年には東京と大阪で来日公演を行っている。

 

Slow Pulpはエミリー・マッシーをフロントボーカルに擁するロックバンド。Epitaphの派生レーベル、ANTI-と昨年2月に契約を交わした。


その後、9月にフルアルバム『Yard』を発表した。このアルバムは、メロディックパンクとオルトロック、アメリカーナ、エモが混在する昨年のオルタナティヴロックの最重要作だった。『Yard』は、Music Tribuneのベストリストに選ばれた。


先々週、Slow Pulpは、米国のCBSの深夜番組、"The Late Show With Stephen Colbert"に出演し、ニューアルバムのハイライト曲「Doubt」をステージセットで披露している。派手さこそないが、質実剛健とも称すべき原曲に忠実なバンドの演奏に着目したい。このパフォーマンスは下記より。

 

 

「Hanging By A Moment」

 

 

 

 「Doubt」‐ The Late Show with Stephen Colbert

 ・Coachella Festival 2024



コーチェラ・フェスティバルは今年もカルフォルニアのインディオで開催中。ヘッドライナーにラナ・デル・レイ、タイラー・ザ・クリエイター、ドージャ・キャットを迎え、平日を挟んで4月21日までこのイベントは続く。今年も公式動画から注目のライブアクトをピックアップしていきます。!!

 

コーチェラでのサプライズは、アントノフ率いるザ・ブリーチャーズのライブにテイラー・スウィフトが登場。ラナ・デル・レイのライブのクライマックスにはビリー・アイリッシュが登場し、特設ステージで両者のアーティストはデュエットを披露し、トークする姿が確認されている。 他にも、オリヴィア・ロドリゴのライブにはノーダウトのグウェン・ステファニーが登場し、インディオのオーディエンスを沸かせた。

 

グラストンベリーフェスティバルに関してはポール・マッカートニーなど有名アーティストがお忍びで見に来ていたりするので、隠れたエピソードをご紹介できる場合がありますが、コーチェラに関しては人が多すぎ、それを確認することは不可能。全てのサプライズはステージで起こっている。注目のパフォーマンスをご紹介していきます。

 

 

・現在のライブストリーミング配信は以下をチェック。


・CH1:  

https://www.youtube.com/watch?v=dYTuZMRFhFY

 

・CH2: 

https://www.youtube.com/watch?v=F6A3iDbujrI

 

 

 

 

 Faye Webster

 


ニューヨーク・タイムズでも特集が組まれたアトランタ出身のシンガーソングライター、Faye Webster。


フェイ・ウェブスターは、アトランタ交響楽団のコンサートに出かけるときの浮き立った気分を可愛らしいポピュラー・ソングに昇華させた「Underdressed at the Symphony」を引っ提げてのコーチェラ・フェスティバルの出演となる。

 

アーティストはブルーの衣装を見にまとい、アルバムのハイライト曲「Thinking About You」を含む11曲をステージで披露した。



Setlist:

But Not Kiss

Wanna Quit All The Time

Thinking About You

Right Side of My Neck

He Loves Me Yeah

Johnny

Johnny(reprise)

In A Good Way

Lego Ring

Feeling Good Today

Kingston

 

 

The Beths


ニュージーランドで最もクールなバンドを知ってる? The BethsはカナダのAlvvaysと双璧をなすメロディックパンクアウトフィットである。


バンドはこの日、2022年の最新作『Expert In A Dying Field』の曲を中心にセットリストを組んでいる。このアルバムにはパワフルなパンクチューンも収録されていたのは周知の通りだが、この日のハイライトであるタイトル曲のパフォーマンスでは、もう一つの魅力である聞かせるポップソングをオーディエンスの前で披露している。



 

 

Setlist:

Future Me Hate me

Knees Deep

When You Know You Know

Out of Sight 

Little Death 

I'm Not Getting Excited

Jump Rose Gazers

Silence Is Golden

Expert In A Dying Field

 

 Sabrina Carpenter

 


ディズニー・シリーズのマヤ役でお馴染みの女優のサブリナ・カーペンター。先日ニューシングル「Espresso」をドロップしたばかり。

 

シンガーは、ニューポップスターの名に違わず、キャッチーかつ扇動的なポップソングを披露した。ステージの背景に青い家のセットを設え、空間性を意識したダンスパフォーマンスをオーディエンスの前で披露した。モダンなポップスとクラブチューンの融合は''新しいマドンナの登場''と見ても違和感がない。

 

アーティストはこの日、三部構成でセットリストを組み、映像のインタリュードを交え、11曲に加え、アンコール1曲という構成でライブをおこなった。


 


Setlist:

 

Act1:

Fast Times

Vicious

Read Your mind


Act2:

Tornade Warnings

Already Over

opposite

emails i can't send

 

Act 3:

because i liked boy

bet you wanna

Espresso

Feather


Ancore:

Nonsense


 The Japanese House

 



Dirty Hitの看板アーティストであるアンバー・ベインによるプロジェクト、The Japanese Houseはデビューアルバム『In The End It Always Does』の宣伝を兼ねてコーチェラに登場した。アルバム発売前には、当時、レーベルの取締役だったマティー・ヒーリーとの親密なセッションを公開した。


ライトなシンセ・ポップがデビュー・アルバムの売りだったが、バンドセットで構成されるライブアクトはアーティストの音楽のダイナミックな一面を表す。躍動感があり、音源よりも曲の魅力が伝わってくる。この日、アンバー・ベインはバンドとともにステージで7曲を披露した。




Setlist:

Sad To Breath

Touching Yourself

Something Has to change

Boyhood

You Seemed So Happy

Friends

Sunshine Baby

 

 

 Sublime


 

SUBLIMEは、Black Flag、Germs,Circle Jerks、Fifteenと並んで、西海岸の最初期のパンクシーンの最重要バンドに挙げられる。

 

1988年から活動し、ドラッグのオーバードーズにより、ブラッド・ノウェルが死去するという悲劇に見舞われたが、2023年にメンバーを入れ替え再結成、現在に至る。バンドは、スペシャルズと同じく、パンクにスカとレゲエ等を取り入れ、西海岸の気風を持つパンクサウンドを確立した。一時期、バンドはMCAと契約を結び、メジャーレコード会社に所属していた。

 

この日、バンドは心地よいスカサウンドをコーチェラの観客の前で披露した。あらためてスカパンクの魅力を体感出来るライブアクトとなっている。映像では観客の目に涙が浮かんでいるのがわかる。長い期間のファンのバンドに対する思い入れは、その人の人生を形作るのである。

 

 

 

Setlist:

Garden Grove

Wrong Way

Same In The End

STP

Pawn Shop

What I Got

Greatest-Hits

Date Rape

Badfish

Jailhouse

Romeo

Doin' Time

Santeria



Blur


 

昨年、久しぶりの再結成を果たし、新作アルバム『The Ballad Of Darren』を発表したブラー。2023年は彼らにとって復活の年を意味し、2015年以来初めてヘッドライン公演をウェンブリースタジアムで行った。また、もちろん、サマーソニックでも来日したことは記憶に新しい。バンドは少なくともこの年の活動に関して充実感を感じたという。

 

この年、アルバーンはゴリラズの新作を発表した。グレアム・コクソンは、ローズ・ピペットとのユニットを組み、The Waeveのセルフタイトルのデビューアルバム『The Waeve』をリリースした。また、デイヴ・ロウントゥリーは、20代の頃に遭遇したロンドン橋での数字にまつわるシンクロにテーマを置いたソロアルバム『Radio Songs』を2022年にリリースしている。

 

アルバーンは、この制作について、”ブラーとしての勘を取り戻すような意味があった”と語っている。彼は、ブリット・ポップという呼称をあまり快く思っていないようで、現在でもそれに関する嫌悪を口にすることも。ステージでの立ち振舞いを見るかぎり、90年代の面影はほとんどない。彼らはどちらかと言えば、普遍的なロックバンドとしての道を歩み始めているようだ。

 

今回、ブラーはコーチェラのステージで「Song 2」、「Girl And Boys」等のアンセムソングを交え、アンコールをのぞいて、全13曲のセットリストを組んだ。最新作『The Ballad Of Darren』から「St. Charles Square」、「The Narcissist」、「Goodbye Albert」が披露された。

 

特筆すべきは、アンコールでは、フレンチ・ポップの代表的なシンガーソングライター、Francois Hardy(フランソワーズ・アルディ)の「Le Temps de l'amour」のカバーをチョイスし、披露している。

 

 

Setlist:

St. Charles Square

Popscene

Trouble In The Message Centre

Beetlebum

Goodbye Albert

Trimm Trabb

Out Of Time

Bird Song

Death of a Party

Girl & Boys

Song 2

The Narcissist

Tender

 

Ancore:

Le Temps de l'amour(Francois Hardy's Cover)

 

 

 Maggie Rogers 『Don’t Forget Me』

 

 

Label: Polydor

Release: 2024/04/12

 

Review

 

Apple Musicのプレスリリースの声明を通じて、ニューヨークのマギー・ロジャースは、できるだけ音楽を楽しむようにしたと述べている。その楽しさがリスナーに届けば理想的であるというメッセージなのだろうか? レビューを行うに際し、世界屈指の名門レーベル、ポリドールから発売された本作は、1986年のマドンナの傑作『True Blue』の雰囲気によく似ている。マドンナのアルバムは、クラブチューンとポップスをどこまで融合出来るかにポイントが置かれていたが、マギー・ロジャースのアルバムも同様にダンサンブルなポピュラーテイストが漂う。いわゆる楽しみや商業性を重視した作品ではあるものの、聞き入らせる何かがある。マギー・ロジャースは、シンディー・ローパー、マドンナ、そして現代のセント・ヴィンセントにつながる一連のUSポップの継承者に位置づけられる。歌唱の中にはR&Bからの影響もありそうだ。

 

アルバムのオープナー「It Was Coming All Along」は分厚いシンセのベースラインとグルーヴィーなドラム、そして装飾的に導入されるギターラインという3つの構成にロジャースのボーカルが加わる。この一曲目を聞けば、ロジャースのシンガーとしての実力が余すところなく発揮されていることがわかる。ウィスパーボイスのようなニュアンスから、それとは対極にある伸びやかなビブラート、そして、R&Bに属するソウルフルな歌唱法等、あらゆるサングの手法を用いながら、多角的なメロディーと多次元的な楽曲構成を提供する。ハイクオリティのサウンドも名門レーベル、ポリドールの手によりダイヤモンドのような美しく高級感のある輝くを放つ。そしてアーティスト自身が述べているように、それは華やかで楽しげな空気感を生み出す。


同じく「Drunk」も、マドンナからのUSポピュラーの系譜を受け継ぎ、それにギターロックの性質を加えている。タイトルと呼応するかのように、酩酊した状態の楽しげな気分と、それとは正反対にあるブルーな気分を織り交ぜ、奥行きのあるポピュラー・ソングを展開する。ニューキャッスルのスター、サム・フェンダーのようなロック的な性質を織り交ぜながら、アンニュイなムードからそれとは対極にある激した瞬間まで、幅広いエモーションを表現している。そして、これらの微細な感情の抑揚は、やはりフェンダーのヒットソング「Seventeen Going Underground」のような共感性を思わせ、スタンダードなポップソングの魅力を擁しているのである。


特に驚いたのが、先行シングルとして公開された「So Sick of Dreaming」だった。ここではスティング要するThe Policeの名曲「Every Breath You Take」の80年代のニューウェイブサウンドを影響を込め、ブライアン・アダムスを彷彿とさせる爽快なロック/ポピュラー・ソングへと昇華させている。もちろん、そこにはアーティストが説明するように、米国の南部的なロマンチシズムが微かに揺曳する。


特に、前作の『Surrender』ではシンセ・ポップという形に拘っていたが、今回の楽曲はその限りではない。繊細なものからダイナミックなニュアンスに至るまでを丹念に表現し、そしてそれらをメロとサビという構成からなるシンプルなポップソングに落とし込んでいる。さらに前作よりもロジャースのボーカルにはソウルフルな渋さと哀愁が漂い、この曲に深みをもたらしている。そしてサブでコーラスが加わった時、この曲は最も華やかな瞬間を迎える。曲の終盤ではニューヨークのスタイルであるスポークンワードのサンプリングを散りばめ、アルバムの伏在的なテーマである20代の思い出を切なく蘇らせる。


「The Kill」は不穏なワードだが、曲自体はTears For Fearsのヒット曲「Everybody Wants To Rule The World」のシンセポップの形を受け継ぎ、それをモダンな印象で彩る。しかし、MTVが24時間放映されていた音楽業界が最も華やかな時代の80’sのポップスは、ロジャースのソングライティングやボーカルの手腕にかかるやいなや、モダンな印象を持つポップソングへと変化する。ここにもポリドールのプロデュースとマギー・ロジャースの録音の魔法が見え隠れする。ミニマルな構造性を持つ楽曲だが、構成自体が単調さに陥ることはほとんどないのが驚きだ。ギターロックとシンセポップをかけあわせた作風の中で、ロジャースは曲のランタイムごとに自身の微細なボーカルのニュアンスや抑揚の変化を通して、音程やリズム、そして構成自体にもバリエーションをもたらしている。特にアウトロにかけてのギターリフとボーカルの掛け合いについては、ロック的な熱狂を巻き起こしている。単なるポピュラー・ソングだけではなく、オルタネイトな響きを持つロックへと変化する瞬間もあるのがこの曲の面白い点なのである。

 

その後も、アーティストの感覚的なポップサウンドがポリドールらしい重厚なベースを要する迫力のあるプロダクションと交差する。アーティストの最もナイーブな一面を表したのが続く「If Now Was Then」で、ロジャースが20代の頃の自分自身になりきったかのように歌を紡ぐ。そこには純粋な響きがあり、高いトーンを歌ったときに、少しセンチメンタルな気分になる。サビの箇所ではポピュラーシンガーから実力派のソウルシンガーへと歌唱法を変える。これらの歌唱のバリエーションは、楽曲自体にも深い影響を及ぼし、聴き応えという側面をもたらす。普通のトーンからファルセットへの切り替えも完璧で、歌手としての非凡さが体現されている。

 


スタンダードなバラードソングが年々少なくなっているが、ロジャースは普遍的な音楽へと真っ向から勝負を挑んでいる。「I Still Do」は、ビリー・ジョエルを彷彿とさせる良質なバラードソングである。この曲では、一般的なバラードソングとは異なり、音程の駆け上がりや跳躍ではなく、最も鎮静した瞬間に、あっと息を飲むような美しさが表れる。それはやはりロジャースの多角的な歌唱法という点に理由が求められ、微細なビブラートと中音域を揺れ動く繊細なボーカルが背後のピアノと劇的な合致を果たすのである。歌そのものの鮮明さも、ポリドールの録音の醍醐味の一つだ。取り分け、最後に登場する高い音程のビブラートは本当に素晴らしい。

 


「I Still Go」

 

 

 

アルバムは二部構成のような形で構成されており、ほとんど捨て曲であったり、間に合せの収録曲は一つも見当たらない。続く「On & On & On」では2つ目のオープニングトラックのような感じで楽しめる。ここでは冒頭に述べたようにマドンナの作風を踏襲し、それらを現代的なクラブチューンへと変化させている。特にロジャースのダイナミックなボーカルはいわずもがな、ファンクの印象を突き出したしなやかなベースラインがこの曲に華やかさをもたらしている。 続く「Never Going Home」もサム・フェンダーの新しいフォーク・ロックの形を女性ボーカリストとして再現する。そしてこの曲には最もアメリカの南部的なロマンチシズムが漂う。

 

続く「All The Time」では、エンジェル・オルセンやレンカーのような形で、フォークミュージックというフィルターを通じて、質の高いポピュラー・ソングを提供している。ここにもプレスリリースで示された通り、南部的なロマンが漂う。それがアコースティックギターとピアノ、そしてボーカルという3つの要素で、親しみやすく落ち着いたバラードへと昇華されている。


アルバムのクローズでも前の2曲のフォーク・ミュージックの気風を微かに留めながら、ソウルフルなポピュラー・ソングで本作は締めくくられる。このアルバムのタイトルを心から叫ぶようにロジャースが真心を歌う時、本作を聴いたことへの満足感や充実感は最高潮に達する。それはもちろん、ビブラートの精度を始め、歌手による高い水準の歌唱を中心にそれらの切ないような感覚が表現される。2024年のポピュラー音楽のニュースタンダードの登場である。


本作は歌手としての技量は勿論、音楽的なムード、そして20代の頃の回想という複数のテーマが合致し、ポリドールの卓越したプロダクションにより、高水準の作品に仕上がっている。前作『Surrender』に続いて、アーティストはいよいよ世界的な舞台に登場することが期待される。

 


 

95/100 

 

 

Best Track -「So Sick Of Dreaming」

 

ポートランドのプロデューサー、Elijah Knutsenがニューアルバムのリリースを発表した。また、アーティストのレーベルは、シンコー・ミュージックとサブパブリッシング契約を結んだと発表した。

 

「Because I Love You」は、イライジャ・クヌッセンによるアンビエントポップアルバム。遊園地やカーニバルの鏡、回転する頭、震える手を連想させる、めくるめく恋のバラード。ニューオーダー風の脈打つベースラインとパンチの効いたドラムマシンのマーチの上を、幽玄なプラックが浮遊する。宙返りするオルガンがメロディーを包み込み、突然、素晴らしいものになる。


イライジャ・クヌッツェンは、オレゴン州ポートランド出身の多彩なアンビエント/エクスペリメンタル・プロデューサー。

 

彼の作品は、日本の環境アンビエントから、実験的なノイズ、灼熱のスローコア/シューゲイザーまで多岐にわたる。エフェクトを多用したギター、DX-7シンセサイザーのチャイム、ユニークなフィールド・レコーディング/サウンド・デザインを駆使した作品を発表している。イライジャは、自身のレコードレーベル、Memory Colorからアルバムをリリースしている。

 

イライジャは、ハロルド・バッド、井上哲、吉村弘、ザ・キュアー、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、レッド・ハウス・ペインターズ、コクトー・ツインズ/ロビン・ガスリーの作品に多大な影響を受けている。



"イライジャの最新アルバムは『Maybe Someday』。日本の最北の島々が、孤独のハミングと相まって、想像の目的地となっている。イライジャのアンビエント・ミュージック以前の音楽制作で重要な役割を担っていたギターが、彼のプロダクションの武器に戻り、アルバムにヴィクトリアランドのような味わいを加える。日本の自然環境、田舎町、日常生活から抽出されたアトモスフェリックな録音。

 

先行シングルの試聴は下記より。Elijah Knutsenのインタビューはこちらからお読み下さい。


世界的なストリーミングサービス企業、スポティファイは今後、ユーザーがプラットフォーム上で直接自分のために曲をリミックスできる機能を導入する予定で、ストリーミングの報酬は原曲の権利者に支払われる。


ウォール・ストリート・ジャーナルの新しいレポートに詳述されているように、スポティファイは現在、スローダウン、スピードアップ、マッシュアップ、「その他の編集」オプションなど、新しい音楽操作ツールの導入を検討している。一度編集した楽曲は、スポティファイ上の "バーチャル・コレクション "に共有することは可能だが、他のプラットフォームで共有することはできない。


この動向は、TikTokがストリーミング業界に与えた影響を受けてのもの。2月、Pexは、同プラットフォーム上の全楽曲の3分の1以上が何らかの方法でスピードやピッチが変更されている(2023年時点で38.03%、前年比13%増)というレポートを発表した。物議を醸しているのは、これらの楽曲が改変されていることで、その多くがTikTokの著作権保護を回避できるため、ユニバーサルミュージックグループやその他の権利者との間で紛争が続いている。


WSJの記事によると、スポティファイは、権利者が正当な対価を受け取れるような手段を組み込んだリミックス・ツールが、"若いユーザーにアピールし、同時にアーティストに新たな収入をもたらす "ことを期待している。現在のところ、「ツールに関する議論は初期段階にあり、ライセンス契約はまだ締結されていない」とのことであるが、基本的なリミックス・ツールはすべてのプレミアム加入者が利用できるようになる見込みだ。さらに、「より高度な曲の修正」をするツールは、より高い月額19.99ドルのサブスクリプションを支払う人が利用できるようになるかもしれない。


ガール・イン・レッドは、昨夜放送された米国の深夜番組''ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン''の音楽ゲストとして出演し、リリースされたばかりのセカンド・アルバム『l'm  Do It Again Baby!』から「Too Much」を披露した。ライブパフォーマンスの模様は以下より。


ノルウェー出身のシンガー・ソングライターである彼女の新作は、2021年のデビュー作『If I Could Make It Go Quiet』に続く。「Too Much」に加え、プロモーション・シングル「Doing It Again Baby」とサブリナ・カーペンターとのコラボ曲「You Need Me Now?」をリリースしている。


ガール・イン・レッドは今年のフジロックフェスティバルにサブヘッドライナーとして出演予定だ。


©NPR/NHK MUSIC

NHK紅白に出場経験のある岡山県出身のシンガーソングライター、藤井風がNPRのTiny Desk Concertに出演した。藤井風は以前、ニューヨークで撮影を行い、ドキュメンタリー番組がNHKでも放映されている。今回のタイニー・デイスクの出演は、NHK Musicとのコラボレーションの一環として実施。詳細は以下の通り。


ーー東京・渋谷にあるNHK放送センターの忙しいオフィスの片隅で、スタッフが真っ赤な棚に本やレコード、小物を並べ直していたーー

 

ーー制作スタッフは機材設定を再チェックし、照明の微調整を行った。別のスタッフは、背の高い白いファイルキャビネットにポスターを追加した。藤井風と彼のバンドは前夜リハーサルをしたばかりだったので、カメラはセットされ、マイクも準備されていた。タイニー・デスク・コンサート・ジャパンの初公演の始まりであるーー



ーー才能豊かな藤井風(Fujii Kaze)は、世界中で人気のある日本のシンガーでありピアニストで、スルメのようなR&Bのグルーヴとキャッチーなソングライティングで知られている。リバーブやエフェクト、インイヤーモニターやウェッジを使わずに、親密でアコースティックなコンサートを録音するタイニーデスク流に落ち着いた彼の冒険心は強かった。リハーサルの間、バンドはすぐ環境に慣れ、互いの音がよく聞きとれるように楽器の音量を調整した。その結果、間髪入れず、ストップもリスタートもリテイクもなく、美しい30分のセットが収録されたーー


昨年4月、藤井風はアメリカの超人気ソングライター、JVKEとのコラボレーションシングル「Golden Hour」をリリースした。

 

 

Tiny Desk Concert 

 

 


SET LIST

    "Matsuri"
    "Garden"
    "damn"
    "Kirari"
    "Michi Teyu Ku (Overflowing)"
    "Shinunoga E-Wa"

MUSICIANS

    Fujii Kaze: lead vocals, keys
    Yaffle: keys
    DURAN: guitar
    Katsuya Takumi: bass
    Kudo Seiya: drums
    Yo-Sea: vocals
    nishina: vocals

CREDITS

NHK / NHK ENTERPRISES:

    Executive Producer: Shibasaki Tetsuya, Kamano Mizuho
    Producer: Ozawa Hiroshi
    Director: Ito Misato, Kikuchi Minako
    Camera: Ishigaki Motomu
    Lighting: Ichikawa Takaho
    Sound: Sato Yosuke
    Designer: Yamaguchi Takashi
    Editor: Morozumi Yuka

NPR Music:


    Audio Technical Director: Neil Tevault
    Lead Video Producer: Maia Stern
    Host/Series Producer: Bobby Carter
    Tiny Desk Team: Joshua Bryant, Kara Frame, Ashley Pointer, Hazel Cills
    Senior Director of Partnership Development: Gordon Synn
    Executive Producer: Suraya Mohamed
    Series Creators: Bob Boilen, Stephen Thompson
    VP, Visuals and Music: Keith Jenkins


スクリーモの元祖、ニュージャージーの伝説的なバンドーーThursdayが帰ってきた。彼らは2011年以来となる新曲を発表した。彼らのメタリックな楽曲とスクリーモは、現在のシーンの渦中で個性的な輝きを放つ。今後の活動にも注目したい。

 

この曲は、ポストハードコア・バンドの前作『No Devolución』のリリースから13年ぶりにリリース。彼らは、ニューヨーク州オルバニーのコンサートのライブでこの曲をデビューさせた。


待望のニューシングルをインスタグラムで発表したサースデイは、次のような声明を発表している。


ーー今夜、13年ぶりの曲をリリースします。そして、25年ぶりにレコード会社を通さずにリリースするDIYの曲でもある。小さな白いバンに乗って、地下室やVFWホール、屋根裏部屋、キッチン、裏庭で演奏するために出発してから25年が経過した。

 

 "サマー・ツアー'99"の時代のことをふと思い出す。この25年間、高速道路での故障、救急搬送、法律との衝突がたくさんあったんだよ。スタジオで笑っていた時間、バックステージで肩を寄せ合っていた時間、雨の中で機材を積み込んでいた時間。そして、25年間にわたる法廷闘争と公の場での暴挙...。しかし、私たちは今、自由なんだ。自分たちで間違いを犯す自由がある。

 

このバンドを、持ち回りのメンバーの集団にするか、小さな家内工業にするか、出版社にするか、レコードレーベルにするか、何年経っても一緒に楽しんでいる睦まじい友人のグループにするのか、私たちが夢見るものに変える自由がある。だから、今夜は『Full Collapse』をリリースしていた頃(23年前の今週)、あるいは、再び『Full Collapse』をリリースした頃に演奏していたように、小さなインディペンデントな会場でステージに立つつもりでいるんだ。ーー

 

 

「Application For Release From The Dream」

 

©Blue Note
 

南アフリカのピアニスト/作曲家/ヒーラー/哲学者であるNduduzo Makhathini(ンドゥドゥゾ・マカティーニ)が3枚目のアルバム『Unomkhubulwane-ノムクブルワネ』を6月7日にBlu Noteからリリースする。前作『In The Spirit Of NTU』の発売後、アーティストは韓国をツアーし、ライブを敢行した。このアルバムは週末の注目作として当サイトでご紹介しています。

 

マカティーニの音楽は、ミニマリズムのピアノを中心に構成されるが、その根底には奇妙な癒やしがある。ピアニストの演奏は、エヴァンスのように繊細さと力強さの双方を兼ね備えている。彼のピアノの演奏には古典的なジャズの気品とスピリチュアル・ジャズの飽くなき冒険心が混在している。

 

ブルーノートいわく、”超越的な3楽章からなる”組曲『Unomkhubulwane-ノムクブルワネ』は、彼のアフリカのルーツを辿る内容となっている。ズールー族の女神ウノムクブルワネにオマージュを捧げ、アフリカの悲劇的な抑圧の歴史を探求している。ベーシストのズヴェラケ・ドゥマ・ベル・ル・ペレとドラマーのフランシスコ・メラとのトリオをフィーチャーしている。

 

2020年にブルーノートから『モード・オブ・コミュニケーション』で世界デビューして以来、 ”地下世界からの手紙”と称されるように、マカティーニは、彼の音楽の純粋にスピリチュアルな超越性を通して、広い称賛を得た。彼の音楽の超越性。ズールーのヒーラー、同時に教育者でもあるマハティーニにとって、即興音楽は単なる美学やイディオムの範疇にとどまることはない。

 

ニューヨーク・タイムズ紙が『Mode Of Communication-モード・オブ・コミュニケーション』を”ベスト・ジャズ・アルバム”に選んだ際、次のように評した。 「スピリチュアル・ジャズが危険なほど賑やかな主題になっている現在、真に”占いの実践”に人生を捧げてきたミュージシャンを信頼してみたい」

 
『Unomkhubulwane-ノムクブルワネ』は、既存の音楽制作の概念を超え、最も深遠なヴィジョンを提供する。ピアニストは、形而上学的な平面にインスピレーションを求めている。アーティスト自身が言うように、「超自然的な声」と交信する方法として音楽を駆使するのだ。

 

アルバムからオープニング・トラック「Omnyama」がリードシングルとして配信された。「Omnyama」はジャズ・ピアニストとしてスリリングな音の響きを探求する。ピアノの気品に満ち溢れた音の運び、アフリカのエキゾチズムを体現するドラム、そして、ニューヨークの欠かさざる文化である”スポークンワード”という手法を以て、ジャズの未知の可能性を切り開く。

 



「Omnyama」

 

 

Nduduzo Makhathin『Unomkhubulwane』


Label: Blue Note

Release: 2024/06/07

 

Tracklist:

 
1. Libations: Omnyama
2. Libations: Uxolo
3. Libations: KwaKhangelamankengana
4. Water Spirtis: Izinkonjana
5. Water Spirit: Amanxusa Asemkhathini
6. Water Spirtit: Nyoni Le?
7. Water Spirit: Iyana


ディズニー・チャンネルでお馴染みの人気女優/歌手としても活躍するサブリナ・カーペンター(Sabrina Carpenter)が新曲「Espresso」を配信した。この曲は、エイミー・アレン、ジュリアン・ブネッタ、ステフ・ジョーンズと共作した。ブネッタは、この新曲のプロデュースも手がけており、デイヴ・メイヤーズ監督によるミュージックビデオも公開されている。以下より。


カーペンターは、Apple Music 1のゼイン・ロウとのインタビューで「Espresso」について解き明かした。

 

「変な話だけど、この曲はフランスで書いた。この曲には、世界を旅しているような興奮とエネルギーがあった。とてもあっという間の作業だったことを覚えている。つまり、最初から最後まで......。だからこそ、得難いような楽しさが伝わってくるんだと思う。私にとっては、曲全体に個性があふれていることが、とてもエキサイティングなことでした。そういう曲は、わたしの音楽とか、わたしが誰であるのかとか、そういうことを知らない人たちが、この1曲を聴くだけで、わたしのユーモアのセンスについてよりよく理解し、戻ってくれるような曲なのです」

 

 「Espresso」

 


SUB POPの一押しシンガー、Suki Waterhouse(スキ・ウォーターハウス)が2作のシングル「My Fun」と「Faded」を同時配信した。両曲とも、カラム・スコット=ダイソンによるアニメーション・ヴィジュアル付きで公開された。アーティストはコーチェラフェスティバルへの出演を目前に控えている。

 

映像の監督を務めたスコット・ダイソンは、声明の中で次のようにコメントしている。


「モンティ・パイソンや他の偉大なカットアウト・アニメーターにインスパイアされて、この2つのビデオでは、活気があって、楽しくて、チョッピーなカードカットのストップモーション・アニメーション・スタイルにしてみたんだ」

 

「曲によって雰囲気が違っていたので、"My Fun "では彩度の高い明るい雰囲気に、"Faded "では少し洗礼された雰囲気にしました」


ウォーターハウスは2022年にサブ・ポップからデビュー作『I Can't Let Go』をリリースした。なお、現在、レーベルはシアトルの空港にあるサブ・ポップのショップ店員を募集中とのことである。詳細はサブポップ公式サイトにて。

 

 

 「My Fun」

 

 

「Fade」


リナ・サワヤマが最新アルバム『Hold The Girl』の収録曲「This Hell」のリミックスとなる、ミレニアル世代を代表するトリリンガルラッパー/シンガー、ちゃんみなをフィーチャリングに迎えた「This Hell (feat. CHANMINA - Gyarupi Remix - Spotify Singles)」をSpotify Singlesとしてリリースした。


これは、Spotifyが世界各地で展開する、LGBTQ+コミュニティのアーティストやクリエイターたちのクリエイティブな魅力や視点を彼らの作品を通じて広くリスナーに紹介するプログラム「GLOW」の日本における取り組みの一環としてSpotifyで独占リリースされたもので、世界のSpotifyユーザーが聴くことができる。


「This Hell」は、リナがLGBTQ+コミュニティから奪われている権利について歌った楽曲で、今回ちゃんみなが新たにリリックを書き下ろして、「This Hell (feat. CHANMINA - Gyarupi Remix - Spotify Singles)」が誕生した。


リナ・サワヤマのコメントは以下の通り。


「愛。信念。情熱。勇気。セクシャリティを理由に奪われている権利を取り戻すために闘ってきた人々の想いが積み重なって今のLGBTQ+コミュニティの力となっています。しかし、悲しいことに日本はまだ発展途上です。世界は変わりつつあるのに。同性婚。差別禁止法。山積する課題に対し、変わるまで、あきらめず、声をあげ続けましょう。こんな世界もあなたとなら変えられる。より良い世界を目指し、一緒に闘ってください。」


ちゃんみなのコメントは以下の通り。


「愛されるべき人が溢れている中、愛さないという選択肢を取れるはずがない。こんな当たり前な事、いつまでもああでもないこうでもないとなる時代が早く終わるといいな。でももしかしたらあとちょっとなのかも、こんな地獄を変えられるなら、いつまでも声をあげます。」


リナ・サワヤマの最新作『Hold The Girl』は2022年9月にDirty Hitから発売された。本作は日本人アーティストとしてUKチャートの歴代最高位を記録した。


「This Hell (feat. CHANMINA - Gyarupi Remix - Spotify Singles)」

 Weekly Music Feature -- Leyla McCalla

 

©ANTI-


ハイチからの移民と活動家の間にニューヨークで生まれたレイラ・マッカラ(Leyla Mccalla)は、過去と現在からインスピレーションを得ている。


マッカラは、チェロ、テナー・バンジョー、ギターを見事に操り、多言語を操るシンガー・ソングライターとして、彼女のルーツと経験が融合した独特のサウンドを生み出す。ソロ活動に加え、マッカラは''Our Native Daughters''(リアノン・ギデンズ、エイミシスト・キア、アリソン・ラッセルと共に)の創設メンバーであり、グラミー賞を受賞した黒人ストリングス・バンド、キャロライナ・チョコレート・ドロップスの卒業生でもある。


マッカラの5枚目のスタジオ録音となるニュー・アルバム『サン・ウィズアウト・ザ・ヒート』(ANTIから4月12日発売)は、変容の痛みと緊張を抱えながらも、遊び心に溢れ、喜びに満ちている。『Sun Without the Heat』の10曲を通して、マッカラは、アフロビート、エチオピアの様式、ブラジルのトロピカリズム、アメリカのフォークやブルースなど、さまざまな形態のアフロ・ディアスポラ音楽に由来するメロディーとリズムで、重さと軽さのバランスを実現している。


 彼女の2022年のアルバム『Breaking the Thermometer』(ANTI-)は、デューク・パフォーマンスズの依頼による音楽、ダンス、演劇の複合的な作品のアルバム・コンパニオンである。命がけでハイチのクレヨル語のニュースを報道したラジオ・ハイチの勇敢なジャーナリストの物語を通して、『Breaking the Thermometer』は、自己と社会の解放を促進する自由で独立した報道の重要性を明らかにしている。


『Breaking the Thermometer』は、『The Guardian』、『Variety』、『Mojo』、『NPR Music』によって今年のベスト・アルバムのひとつに選ばれ、彼女の曲「Dodinin」は、バラク・オバマのお気に入りリストに入った。マッカラは、フォーク・アライアンス・インターナショナルから2022年度の''ピープルズ・ヴォイス・アワード''を受賞した。この賞は、創作活動に臆することなく社会変革を取り入れたアーティストに贈られる賞である。


次のプロジェクトを構想する中で、マッカラは音楽的な味覚を広げ、長年創作に影響を及ぼしてきたものを見直した。「私は音楽が緊急性を帯びているのが好きなの。でも、新しいアルバムは遊び心があって楽しいものにしたかった」


『サン・ウィズアウト・ザ・ヒート』でマッカラは、オクタヴィア・バトラー、アレクシス・ポーリン・ガンブス、アドリアン・マリー・ブラウンら黒人フェミニスト・アフロフューチャリストの著作から歌詞の霊感を得ている。これらの著者のように、マッカラはソングライティングを、信仰と希望を高め、コミュニティーの思考を促し、個人の変容を触媒する方法として見ている。「ソングライティングは、語るべき物語を語るための方法です。時には痛みを伴う話もある」


 このアルバムのタイトル曲は、奴隷解放宣言の6年前、1857年にフレデリック・ダグラスが奴隷制度廃止論者の白人群衆を前に行った演説を引用している。


彼の生々しい言葉がこの曲に響いている。「耕さずに作物が欲しいのか/雷を鳴らさずに雨が欲しいのか/轟音を鳴らさずに海が欲しいのか」 


ダグラスの主張は、マッカラがこの曲の中心的なメッセージに織り込んでいるように、変革的な行動にコミットすることなしには、解放と平等はあり得ないということだ。


「私たちは皆、太陽の暖かさを求めているが、誰もがその熱さを感じたいわけではない。両方が必要なの」

 

このスピーチと、スーザン・ラフォの著書『Liberated to the Bone』(2022年)に心を動かされたマッカラは、歌詞を付け加えてこの考えを全面的に主張する。"暑さなくして、太陽はない"。この歌は、社会変革のための継続的な取り組みと、私たちが今も背負っている闘いを思い起こさせる役割を果たす。"この傷はとても古い "とマッカラは私たちに思い起こさせる。


『サン・ウィズアウト・ザ・ヒート』は、ニューオーリンズのドックサイド・スタディーズで9日間の集中セッションでレコーディングされた。マリアム・クダスのプロデュースで、マッカラは長年のバンド・メンバーでありコラボレーターでもあるショーン・マイヤーズ(パーカッションとドラム)、ピート・オリンチウ(エレクトリック・ベースとピアノ)、ナウム・ズディベル(ギター)が参加した。クダスはシンセサイザー、オルガン、バッキング・ヴォーカルで参加している。


「いつもはスタジオに入ると、曲と骨組みがすでに出来上がっている」とマッカラは言う。「でもこのアルバムでは、リアルタイムで骨組みを作った。威圧的なプロセスだったけど、一緒に仕事をするミュージシャンたちに自分がどれだけ支えられているかを実感することができた」



その結果、個人的なものと普遍的なもの、悲しみと喜びを同時に抱えた超越的な曲のコレクションが生まれた。このアルバムを通して、マッカラは変容の要素と、闇から光へと向かうために必要な熱を探求している。


『Sun Without the Heat』はANTI- Recordsからリリースされる。マッカラは現在、リッチモンド大学のアーティスト・イン・レジデンスでもある。このアルバムに寄せられた賛辞は以下の通り。



「一度レイラにのめり込んだら、もう手離すことは難しい」-Iggy Pop、BBC Radio 6 Music


「高揚感と力強さ.このアルバムはまさしく彼女の音楽的遺産を祝福するものである」- UNCUT


「このアルバムの他、この夏、フェスティバルの観客の上を転がり落ちるような良い音はほとんどないだろう」 - The Guardian


「レイラ・マッカラは、恐怖なくして希望は持てないことを知っており、変身という行為自体がトラウマになりうることを決して度外視しない。この強烈なエッジ、そして彼女の信仰によるメッセージの背後にある利害関係の認識は、これらの曲を空虚なセンチメンタリズムのリスクを超えて押し上げ、「Sun Without the Heat」を真に高揚させる」- MOJO


「レイラ・マッカラのような方法で、音楽の名手が自分の声の予期せぬ可能性を探求するのを聞くのは、爽快なことだ...。ポストコロニアル、汎アフリカの経験の複雑なテクスチャーを彼女の憧れの詩的言語でなぞる」- NPR



Leyla McCalla『Sun Without the Heat』- ANTI-



 

カリブ海にあるハイチは、およそポスト・コロニアルの時代のおいて、植民地化、及び、占領という二つの悲劇的な運命にさらされてきた。クリストファー・コロンブスが15世紀にヨーロッパ人として最初にこの諸島を発見すると、以降の四半世紀はスペインによる侵略、以後はフランスの占領下に置かれた。ナポレオンの時代、アフリカの諸国を始め、カリブ海の群島まで皇帝の名は轟く。植民地という考えについては、二つの側面から解釈できる。つまり、先住民族の圧政による支配と土地の文化の掠奪である。何も、金銀財宝にとどまらない。侵略国家はいつもその国の文化を消去し、その国の風土を全く別の色で染め上げる。地球上のあらゆる国という国、そして島という島、土地と地域が近代化文明の中で、およそその国の資本主義化や現代化という名目上、別の国家への転身を義務付けられてきた。「Invadeー侵略」という行為の本質は事物的な掠奪にあるのではない。究極の目的は国家の文化性を破壊することなのだ。これは現代の社会通念であるグローバリズムやグローバリゼーションの考えに置換することもできる。

 

ハイチの音楽は、日本のFMラジオ局の”J-WAVE”の特集動画で紹介されている通り、明らかにスペインのフラメンコやサルサに近い。もしくはアルゼンチンのタンゴ、もしくはブラジルのサンバにも比する陽気な気風に彩られている。南米の気風がハイチの音楽には反映されているが、一方で、カリブ諸島、それよりも西に位置するハワイやグアムのような土地のトロピカルな音楽の浸透もある。いついかなる時代において、これらの複数の地域の音楽が混交し、別の土地に伝わったのかまでは明言しかねるが、中世ヨーロッパの繁栄の時代、それはもちろんエカテリーナの時代のロシヤ帝国の繁栄の時代とも重なりながら、カリブ海の地域に位置する幾つかの諸島では、国家間での文化の交換、やりとり、交易がなんらかの形で行われていたものと推測される。つまり、これらの文化性の混交がハイチの音楽の魅力ともなっているのである。

 

レイラ・マッカラの音楽が素晴らしいのは、歴史という側面を悲観視するのではなく、肯定的に捉えていることだろう。前時代の侵略や植民地支配の歴史を否定せず、それを肯定的に捉えた上で、どのような独自の音楽文化を次世代に伝えていくのかという点に表現性の核心が据えられている。これはまた、植民地国家としての自立性や自主性、アフリカの諸国と同じように「本質的な意味の独立」というテーマを交えながら、マッカラはそれを音楽という形を通じて勝利を手元にたぐりよせようと試みるのである。もちろん、ためしに、世界地図を目の前に広げてみてもらいたい。ハイチという土地の地政学を見ると、南アメリカとも繋がっている。マッカラの音楽は、アフリカ、アメリカ、カリブ、ヨーロッパというように、無数の地域の音楽がR&Bやジャズ、ワールドミュージック、そしてロックという複数の文脈を元に展開されていくのである。 言うなれば、音楽における数世紀の歴史がこのアルバムに凝縮されているのである。

 

 

アルバムの音楽の世界に踏み入ると、そこには驚嘆すべきユートピアが広がっている。オープニングを飾る「Open The Road」にはマッカラの開放的な音の響きを容易に見いだすことが出来る。この曲では、ハワイアンやアロハの音楽性を踏まえて、古典的なジャズやサルサを始めとするワールド・ミュージックのリズムとスケールを駆使して展開される。複雑な変拍子を背景に演奏されるマッカラのテクニカルなエレクトリック・ギターは、シカゴ/ルイヴィル/ピッツバーグのポスト・ロックのような形で体現される場合もある。しかしながら、音楽そのものが神経質になったり、強張ったりすることはほとんどない。レイラ・マッカラの20世紀はじめのR&Bシンガーのようなナチュラルなボーカルは、メロウな空気感を生み出し、リゾート地のコテージの向こうに広がるエメラルドの海、その果てに境界線を形作る雲ひとつない青空のような爽快さがある。マッカラは、ジャズに加え、Dick Daleのようなサーフミュージックの影響を絡めながら、トロピカルな気風を反映したギターリフにより、この曲を面白いようにリードしていく。

 

 続く「Scaled To Survive」でも”ロハス”な気風が続く。ハワイアン・ミュージックを反映させ、鳥の声をシンセのシークエンスで表現し、それをヒップホップのビートのように見立て、Buddy Hollyの「Everyday」のような古典的なロックンロールの影響を交えながら、蠱惑的なポピュラーソングを展開させる。レイラ・マッカラのボーカルは背景のサウンドプロダクションと絶妙に合致し、それは南国的な雰囲気にとどまらず、いわくいいがたい天国的な空気感を作り出す場合もある。ギターの演奏はミュージック・コンクレートのように配置される。その間にボーカルが入ると、トリニダード・ドバゴのカリプソ(レゲエのルーツ)のようなトロピカルな印象を形作る。 

 

 

三曲目「Take Me Away」は、端的に言えば、世界のカーニバルの音楽である。聞き方によっては、リオのサンバのようでもあり、スペインのサルサのようでもあり、また、フラメンコのような陽気さもある。また、アフロ・ビートからの影響を指摘するリスナーもいるかもしれない。しかし、この曲はどちらかと言えば、日本の「囃子」のような音楽性がギターロックの形で表現されていてとてもおもしろい。これらの囃子という民族音楽は、日本の地方のお祭りに見出され、大阪の岸和田のだんじりであったり、他にも東北のお祭り等で、神輿を担ぎながら、民衆が掛け声を掛けながら、やんややんやと騒ぎ立てながら町中を陽気に練り歩くのだ。リズムに関しては、ハイチの民族音楽の影響がありそうだが、実際にアウトプットされるサウンドは驚くほど自由で開放的である。このトラックに満ち溢れる崇高性や完璧性とは対極にある別の意味の音楽の楽しみは、タイトルにあるようにリスナーを別の場所に誘う力とイメージの換気力を兼ね備えている。しかし、音楽的にはカーニバルのような陽気さがあるが、マッカラのボーカルはR&Bのようにしっとりとしており、そして落ち着いた雰囲気に縁取られている。

 

マッカラのギターの演奏に関しては、どうやらジャズのスケールの反映がありそうだ。「So I'll Go」は、シカゴのジャズ協会の名誉会員であるジェフ・パーカーのようなロックとジャズの中間にある淡い感覚の音楽を体現している。これらは、TortoiseやRodanのようなポスト・ロック性にとどまらず、アーティストのアヴァンギャルド・ロックへの親和性も見出せる。この曲はおそらく、これまでにありそうでなかったタイプのロックソングで、ハイチ・トロピカルやハワイアン・ミュージックのようなリゾート地の音楽性が巧みに織り交ぜられている。それらが最終的に、ミニマルロックの要素と綿密に絡み合い、ワイアードな音楽性を作り出すのだ。ロック的な文脈に位置しながら、マッカラのボーカルスタイルには、Ernestine AndersonのようなジャズとR&Bの中間にあるブルージーな味わいがある。これらは、熟成に熟成を重ねたケンタッキーのバーボンのような苦味と渋さをもって、わたしたちの音楽的な味覚を捉えてやまない。


続く「Tree」は二部構成のアルバムの序章のような感じで始まる。古典的なR&Bに依拠したバラードだが、マッカラはそれを普遍的な歌声で奏でる。アコースティックギターでの弾き語りは、ブルージャズに近いニュアンスで展開されるが、その中には往年のR&Bシンガーのような開放的な感覚と奥行きのある歌声が披露される。イントロのモチーフが終わった後、サルサやタンゴ、フラメンコを彷彿とさせる南米的な気風を携えたポピュラーソングが続く。また、曲の進行ごとに、面白いように表情が変わり、稀にキューバの”Buena Vista Social Club”に象徴づけられるジャズのビックバンドの音楽に近づく瞬間もある。少なくとも、南米的な哀愁が感情的に織り交ぜられ、それが巧みなギターの演奏やボーカルのニュアンスの変化により、聴き応えのあるナンバーに昇華される。ここにも、JFKの時代、南米とアメリカの国家的な関係性に歪みが生じさせることになった政治的な事変が、ナラティヴなテーマとして機能している。それらは古き日へのララバイなのであり、それらの政治的な運命に翻弄された民衆への哀悼を意味する。

 

続くタイトル曲にも、それらの政治的なテーマが内在している。プレスリリースで銘記されている通りで、「耕さずに作物が欲しいのか/雷を鳴らさずに雨が欲しいのか/轟音を鳴らさずに海が欲しいのか」という勇敢なメッセージが織り交ぜられている。しかし、マッカラの本質的な音楽性は、平和や友愛という側面にあり、それらをハワイアン・ミュージックやフォーク・ソングを基調とするスタンダードな響きを持つポピュラーナンバーとして展開される。これらの歌詞を通し、サブテクスト(行間)のリリックが聞こえてきそうだ。混迷をきわめる世界情勢の中で何を重んじるべきか?   それは”もう一度、敵対した人々が手を取り合い、踊ることが出来る”ということなのだ。それは普遍的なメッセージなのであり、パブロ・ピカソが絵画の中に込めたメッセージとまったく同じ内容である。その後、アルバムの音楽は現世的な雰囲気を離れ、やや神秘的な音楽性へと舵を取る。「Tower」のイントロでは、中近東のガムランやインドネシアの音楽のような民族性に少しの親しみを示した後、そのモチーフをベースにしてハイチのアグレッシヴな響きのある民族音楽を展開させる。どこまでもそのリズムは高らかであり、そしてマッカラのボーカルも誇らしげだ。自国の文化を誇るのにどのような遠慮がいるのか。 

 

 「Sun Without the Heat」

 

 

こういった点を踏まえると、驚くほど曲のタイトルと制作者の考えがスムーズに合致していることに気づく。マッカラが伝えたいのは普遍的な愛であり、以外の何物でもない。それは性愛を越えた万物に注がれるべき本質的な光を意味する。これがゆえに、レフ・トルストイは、かつて「光あるうちに光の中を歩め」と言った。「Love We Had」は、ANTI-らしいシンプルなロックンロールナンバーで、世の中に愛を忘れた人々がたくさんいることの証明代わりである。しかし、それでも思い出してみてほしい。愛が存在せずにして何者も存在しえない。そして昨年、マッキンリー・ディクソンが語ったように、どのような人も、愛されているということなのである。それがワールド・ミュージックやサーフミュージックのような楽しげな響きで繰り広げられるとあらば、このトラックに耳を澄まさずにはいられないというのも道理なのである。

 

レイラ・マッカラは、みずからのハイチ出身という出自を踏まえ、歴史的なテーマや真摯なメッセージ性を内在させながらも、どこまでも純粋で親しみやすい音楽を作り出す。そして優れたミュージシャンというのは、自分から与えるということを厭わないものである。ぜひ、目をゆっくりとつぶり、「Giive A Break」に耳を澄ませ、思い出してほしい。自らの心がこの世に蔓延する本質とは対極に位置するーー憎しみ、恨み、悲しみーーこういったものに毒され、美しい心の鏡を曇らせていたということを。そして、じっくり思いを馳せてみてほしい、それとは対極にあるーー愛、安らぎ、優しさーーそういったものも人々の心のどこかに存在するということを。

 

アルバムの最後でも、マッカラの音楽的表現は、どこまでも透徹しており、一貫性があり、何も注文をつける点はない。講釈や評言を付け加えるのが無粋なくらい。「I Want To Believe」は、レイラ・マッカラのチェロの演奏を通じて繰り広げられる「自分を信じることができなくなった人々に捧げられるささやかな応援ソング」だ。この曲は普遍的な音楽の美しさをどこかに留めている。今年のポピュラーミュージックの名盤の登場といっても過言ではないかもしれない。



98/100
 
 

「I Want To Believe」

Interview - Celestial Trails Up-and-coming ambient producer from San Francisco


 

This process opens the gateway to surrealism, the unknown, and beyond what we can see.

- Celestial Trails


Notice:  This article is published in English&Japanese. Read the both language article below.


お知らせ: 本記事は英語と日本語で掲載されています。両言語の記事は下記よりお読みいただけます。



Episode in English


Celestial Trails, the San Francisco, California-based solo ambient music project of Fluttery Records founder Taner Torun, makes its debut on ''Lunar Beachcomber''.


Celestial Trails paints sonic tapestries layer by layer, seamlessly blending the warmth of organic textures from piano, analog synths, electric and bass guitars with the precision of virtual electronic instruments. Organic recordings are enriched using electroacoustic techniques such as reverb, delay, harmonizing, tape manipulation, and sonic deconstruction. Additionally, tape-manipulated field recordings captured during nature hikes and city walks are seamlessly integrated as another layer.


From seed to final form, Lunar Beachcomber’s recording process unfolded between June 2023 and January 2024. The first recording was in Pittsburgh, PA on a sleepless hot summer night, while the last one took place in San Francisco, CA. All recordings for the album were captured exclusively in these two cities.

 

For this issue, Music Tribune was able to discuss with an up-and-coming ambient producer from San Francisco.

 


Music Tribune:

 

First of all, can you tell us about your biography as an artist? When did you start
making ambient music? How did you connect it to your current form of music?

 

Celestial Trails(Taner Torun):


My musical journey began in punk and post-punk bands, where we cut our teeth with demos during my late teenage years. In my early twenties, I found myself drawn to the dreamy vibes of post-rock and modern classical music.

As a music enthusiast, I'd always dabbled in ambient music, but it wasn't until 2006 that I truly fell in love with the genre. That year, The Belong's album "October Language" struck a chord within me and I fell in love with ambient music. From there, I went on a quest to uncover more ambient gems, discovering the likes of William Basinski, Tim Hecker, and Rafael Anton Irisarri.

Eager to dive deeper, I set out to get my hands on the gear and software needed to bring my own ambient visions to life. Those early experiments were just the beginning of a thrilling ride into music production, both for myself and alongside fellow artists. 



Music Tribune:

 

Were you involved in any form of music production before you started your ambient
project?

 

 

Celestial Trails:

Back in the summer of 2006, a group of us kindred spirits started messing around with some experimental music. We recorded five tracks together, then finished the album by digitally passing files back and forth. When it felt complete, we uploaded it on Last.fm this was back when it was a massive hub for music discovery. It caught the attention of a significant audience. Our music found its way onto various experimental channels, earning us our first taste of international recognition. Under the moniker "A Journey Down the Well," I've collaborated with like-minded musicians on three albums.

In 2008, I started Fluttery Records, which became a home for post-rock, ambient, and modern classical talents. Beyond my own releases, I wear multiple hats at the label, mastering recordings and crafting album artwork for both our roster and a select few artists outside the label.

 



Music Tribune:

 

We then want to talk to you about your new album. We hear that a few years ago you went hiking in Mount Rainier and other nature-rich places. In what ways did this real-life experience influence your actual music-making?

 

 

Celestial Trails:



I have an undying love for nature in all its forms—birds, trees, plants, animals, you name it. Once upon a time, I used to be plagued by incessant overthinking and a cacophony of noisy thoughts rattling around in my head. But now, I've found solace in the tranquility of a quieter mind, and it's brought a newfound sense of joy and creativity into my life.

For me, hiking amidst the wonders of nature is akin to a meditative journey. It's a chance to fully immerse myself in the present moment, to listen intently to the whispers of my creative inner voice. Sure, like everyone else on this planet, I still grapple with thoughts that no longer serve me. But each time they surface, I've learned to acknowledge them and gently usher them away. In this phase of my life, I've made a conscious decision to embrace productivity, creativity, and joy with open arms.

Ambient music, much like nature itself, is all about the ebb and flow. You can find echoes of nature's rhythms in every note—a flowing river, the wind weaving through rocky landscapes, the gentle sway of tree branches adorned with leaves, the rhythmic crash of ocean waves against the shore, the soothing patter of rain, and the harmonious symphony of a meadow teeming with life. It's a mesmerizing tapestry of sound that mirrors the beauty and serenity of the natural world.



Music Tribune:

 

When I listened to the soundtrack of Lunar Beachcomber, the music as Celestial
Trails seemed to be more in the nature of an electric producer. It's quite elaborately
crafted, including glitchy noises. Are there any musicians that you yourself feel a
kinship with?

 

 

Celestial Trails:

 
Thank you so much for your kind words.

It's truly heartening to witness the growing presence of labels in the ambient music scene, providing a platform for numerous passionate producers to shine. There's an extensive list of labels and artists that I hold dear, and while it's hard to pick just a few, here are some noteworthy mentions. Azure Vista Records, for instance, boasts an impressive roster including the likes of Billow Observatory. Then there's 12K, hailing from New York state, founded by the seasoned ambient music veteran Taylor Deupree. And let's not forget Lontano Series from Italy, which consistently delivers stellar ambient tunes from talented underground artists.

On a somber note, I'd like to express my deepest condolences to the fans of Ryuichi Sakamoto. His untimely departure was a profound loss to the music world. However, he has left behind a priceless legacy, not only through his own musical creations but also through his collaborations with fellow artists—a treasure that will continue to inspire generations to come.

 



Music Tribune:

 

On this album, you will not only hear pleasant ambient, but also industrial style noise. Why do you incorporate this type of noise?

 

 

Celestial Trails:

 
Actually, I wouldn't call it industrial noise - I prefer to refer to them as "waves of flow." Most of these sounds are sourced from field recordings I made while hiking in nature.

I enjoy using nature's own sounds as an instrument, and I process them with techniques like tape manipulations and other electro-acoustic methods. I also apply these processing techniques to recordings of traditional instruments like guitar or organ, as well as virtual electronic instruments.

This process opens the gateway to surrealism, the unknown, and beyond what we can see. My goal is to create music where each track and album has its own unique universe. I'm drawn to the edginess of noise in genres like Noise and Industrial Music, but my music is not quite similar to that. I think most listeners will find these "waves" to be a captivating musical experience that they can swim in, whether they're exploring their adventurous side or traveling to other galaxies.

 



Music Tribune:

 

We would like to know your opinion on ambient production in general. There are many different elements to this genre, such as depicting soundscapes and healing. What would you say are the essential aspects of ambient production for you?



Celestial Trails:


When it comes to ambient music, I can only speak from my own experience. I believe each artist should find their own path and what works best for them. However, it's crucial not to confine oneself to common perceptions.

There's a tendency to pigeonhole ambient music into certain environments like airports, spas, or elevators, which can be amusingly restrictive. But in the early 2000s, artists like William Basinski challenged these notions, showcasing how ambient music can beautifully reflect an artist's unique individuality. While ambient music often evokes feelings of peace and calm, it's not limited to those emotions alone.

In my album "Lunar Beachcomber," I explore a variety of moods, emotions, and sonic landscapes. Take, for instance, the track "Spell Machine and Manufacturing," which I consider to be a rebellious ambient composition. In any genre of music, my priority is seeking out uniqueness. Although some may not immediately appreciate something different, novel, and original, I believe it's vital in music production to unearth your own creative spark and infuse it into your art.




Music Tribune:

 

You currently run Fluttery Records. What kind of music does the label deal with? Are there any artists you would recommend belonging to the label?

 


Celestial Trails:


Fluttery Records is a label that releases captivating music in the genres of post-rock, ambient, and modern classical. I encourage your readers to visit our website and explore the incredible artists we have the pleasure of working with.

Over the past 15 years, Fluttery Records has had the honor of releasing remarkable post-rock, modern classical, and ambient music from talented artists hailing from all corners of the world.

As I'm speaking with the Japanese press today, I'd like to highlight one of our exceptional artists from Japan. The band is called Gargle, and one of the members is my dear friend, Jun Minowa. Gargle has collaborated with the Spanish artist Bosques De Mi Mente on an album called Absence, which features mesmerizing and beautifully crafted modern classical compositions. This collaborative effort is a true testament to the label's dedication to showcasing the most compelling and boundary-pushing music from around the globe.

From the expansive and emotive post-rock soundscapes to the serene and introspective ambient pieces, and the deeply moving modern classical compositions, there is something for every music lover to discover on Fluttery Records.



Music Tribune:

 

What are your future plans for the label?

 


Celestial Trails:

 
We would like to keep doing what we are doing right now. We'll continue to champion our existing roster of artists while also welcoming new talents into the fold, providing them with a platform for international recognition and growth of their fan base. Our commitment remains unwavering: to keep our doors open to talented instrumentalists from every corner of the globe who are dedicated to creating exceptional music. Together, we'll continue to nurture a vibrant community of musicians and enthusiasts, united by their passion for instrumental music.

 

 

Music Tribune:

 

Thank you so much, Taner. I look forward to your future career as an artist and management of the label.



''Lunar Beachcomber" is released today on Fluttery Records.For more information, click here.

 




Episode In Japanese:


このプロセスは、超現実主義や未知のもの、目に見えるものを超越した何かへの扉を開く-Celestial Trails



カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするFluttery Recordsの創設者Tanel Torunのソロ・アンビエント・プロジェクト、Celestial Trailsがデビューアルバム『Lunar Beachcomber』をリリースする。


セレスティアル・トレイルズは、ピアノ、アナログ・シンセ、エレクトリック・ギター、ベース・ギターの有機的なテクスチャーの暖かさと、ヴァーチャルな電子楽器の精密さをシームレスに融合させながら、音のタペストリーを幾重にも描いていく。

 

オーガニックなレコーディングは、リバーブ、ディレイ、ハーモナイジング、テープ・マニピュレーション、サウンド・デコンストラクションといったエレクトロ・アコースティックなテクニックを駆使し、より豊かなものとなっている。さらに、自然散策や街歩きの際に録音されたテープ操作のフィールド・レコーディングが、もうひとつのレイヤーとしてシームレスに統合されている。


始まりから最終形まで、『ルナ・ビーチコマー』のレコーディング・プロセスは2023年6月から2024年1月にかけて展開された。最初のレコーディングは、ペンシルベニア州ピッツバーグで眠れない暑い夏の夜に行われ、最後のレコーディングはカリフォルニア州サンフランシスコで行われた。アルバムのレコーディングはすべて、この2都市のみで行われた。

 

今回、Music Tribuneは、サンフランシスコ出身の新進気鋭のアンビエント・プロデューサーに話を聞くことができた。

 


Music Tribune:

まず、あなたのアーティストとしての経歴を教えてください。アンビエント・ミュージックを作り始めたのはいつですか?また、それが現在の音楽活動にどのように結びついたのでしょうか?

 

Celestial Trails(Taner Torun):



私の音楽の旅はパンクやポストパンクのバンドから始まりました。20代前半になると、ポストロックやモダン・クラシックのドリーミーな雰囲気に惹かれるようになりました。



音楽愛好家として、私はいつもアンビエント・ミュージックに手を出していたんですが、このジャンルを本当に好きになったのは、2006年のことでした。その年、The Belongのアルバム『October Language』が私の琴線に触れ、アンビエント・ミュージックが好きになった。そこから私は、より多くのアンビエント・ミュージックの逸品を探し求めるようになり、ウィリアム・バシンスキー、ティム・ヘッカー、ラファエル・アントン・イリサリなどを発見しました。



もっと深く潜りたいと思った私は、自分のアンビエント・ビジョンを実現するために必要な機材やソフトウェアを手に入れようとしました。この初期の実験は、私自身にとっても、また仲間のアーティストたちにとっても、音楽制作へのスリリングな道のりの始まりに過ぎませんでした。




Music Tribune:

アンビエント・プロジェクトを始める前に、何か音楽制作に携わっていましたか?




Celestial Trails:


2006年の夏に、気の合う仲間で実験的な音楽を作り始めました。一緒に5曲レコーディングをして、デジタルでファイルをやり取りしながらアルバムを完成させました。アルバムが完成すると、Last.fmに楽曲をアップロードするようになりました。



Music Tribune:

 

続いて、新しいアルバムについてお話を伺いたいと思います。


数年前、マウント・レーニアをはじめとする自然豊かな場所にハイキングに行かれたそうですね。この実体験は、実際の音楽制作にどのような影響を与えたのでしょうか?


 
Celestial Trails:


私は、鳥、木、植物、動物など、あらゆる形の自然を愛してやみません。むかしは、ひっきりなしに考えこみすぎたり、頭の中で雑音のような思考に悩まされたりしていました。それでも、今は、より静かな心の静けさに安らぎを見出し、それが私の人生に新たな喜びと創造性をもたらしています。



私にとって、自然の驚異の中でのハイキングは瞑想の旅によく似ています。今この瞬間に完全に没頭し、創造的な内なる声のささやきに耳を澄ますチャンスでもある。確かに、この地球上の誰もがそうであるように、私はまだ、もはや自分のためにならない考えと闘っています。しかし、それらが浮上するたびに、私はそれを認め、そっと遠ざけることを学びました。私の人生のこの段階では、生産性、創造性、そして喜びを諸手を広げて受け入れることを意識的に決めたんです。



アンビエント・ミュージックについては、自然そのものと同じように、満ち引きを大切にしています。川の流れ、岩だらけの風景を縫う風、葉で飾られた木の枝の穏やかな揺らぎ、岸辺に打ち付ける海の波のリズミカルな音、心地よい雨音、そして、草原にあふれる調和のとれたシンフォニー……。

 


Music Tribune:


『ルナ・ビーチコマー』のサウンドトラックを聴いたとき、『セレスティアル・トレイルズ』の名義としての音楽はエレクトリック・プロデューサーの性質が強いように感じました。グリッチノイズなど、かなり精巧に作られていますね。あなた自身が親しみを感じているミュージシャンはいますか?

 

 

Celestial Trails:

 
ありがたいお言葉をありがとうございます。



アンビエント・ミュージック・シーンにおいてレーベルの存在感が増しているのを目の当たりにし、多くの情熱的なプロデューサーたちが輝ける場を提供していることを、本当に心強く思っています。

 

私が大切にしているレーベルやアーティストのリストは数多くあり、その中からいくつかを選ぶのは難しいのですが、特筆すべきものをいくつかご紹介しましょう。

 

例えば、アズール・ヴィスタ・レコーズは、ビロウ・オブザーバトリーを含む印象的なロスターを誇っています。そして、経験豊富なアンビエント・ミュージックのベテラン、テイラー・デュプリーが設立したニューヨーク州出身の12Kも素晴らしいです。

 

そして、才能あるアンダーグラウンド・アーティストによる素晴らしいアンビエント・チューンをコンスタントに提供しているイタリアのロンターノ・シリーズも忘れてはならないでしょう。



次いで、坂本龍一のファンにも哀悼の意を表しておきたいです。彼の早すぎる旅立ちは、音楽界にとって大きな損失でした。しかしながら、彼自身の音楽的創造のみならず、仲間たちとのコラボレーションを通して、彼はかけがえのない遺産を残しました。

 


Music Tribune:

 

このアルバムでは、心地よいアンビエントだけでなく、インダストリアル・スタイルのようなノイズも聴くことができます。なぜ、このようなノイズを取り入れたのでしょう?


 

Celestial Trails:


実は、産業ノイズとは呼んでいません。私は、"流れの波 "と呼んでいます。これらの音のほとんどは、自然の中をハイキングしているときに録音したフィールドレコーディングから得ています。



自然の音を楽器として使うのが好きで、テープ・マニピュレーションなどの電気音響的な手法で加工しています。また、これらの加工技術をギターやオルガンなどの伝統的な楽器やバーチャルな電子楽器の録音にも応用しています。



このプロセスは、超現実主義や未知のもの、目に見えるものを超えたものへの入り口を開く。私の目標は、それぞれのトラックやアルバムが独自の世界を持つような音楽を作ることです。私はノイズやインダストリアル・ミュージックといったジャンルのノイズのエッジネスに惹かれるが、私の音楽は、それとは似ても似つかないでしょう。ほとんどのリスナーは、冒険的な一面を探検しているときでも、他の銀河系を旅しているときでも、この「波」を泳いでいるような魅惑的な音楽体験だと感じると思う。



 

Music Tribune: 

 

アンビエント制作全般についてのご意見をお聞かせください。このジャンルには、サウンドスケープの描写や癒しなど、さまざまな要素があります。あなたにとってアンビエント制作の本質的な部分は何だと思いますか?



Celestial Trails:


アンビエント・ミュージックに関しては、私は自分の経験からしか語ることができませんね。それぞれのアーティストが自分の道を見つけ、自分にとって何が一番効果的かを見つけるべきだと思います。しかし、一般的な認識にとらわれないことが重要です。



アンビエント・ミュージックは、空港、スパ、エレベーターなど、特定の環境に限定される傾向があり、それは面白いほど制限的なのです。しかし、2000年代初頭、ウィリアム・バシンスキーのようなアーティストがこうした概念に挑戦し、アンビエント・ミュージックがアーティストのユニークな個性を見事に反映できることを示しました。アンビエント・ミュージックはしばしば平和で穏やかな感情を呼び起こすのですが、そのような感情だけに限定されるものではないでしょう。



私のアルバム『Lunar Beachcomber』では、様々なムード、感情、音の風景を探求しています。例えば、"Spell Machine and Manufacturing "という曲は、反抗的なアンビエント曲だと思っています。どんなジャンルの音楽でも、私が優先するのは独自性を追求すること。人とは違うもの、斬新なもの、独創的なものを、すぐに評価しない人もいるかもしれませんが、自分自身の創造的な輝きを発掘し、それを作品に吹き込むことが音楽制作には不可欠だと信じています。




Music Tribune:

 

あなたは現在、Fluttery Recordsを運営なさっています。このレーベルはどのような音楽を扱っていますか? また、このレーベルに所属のお勧めのアーティストはいますか?

 



Celestial Trails:


Fluttery Recordsは、ポストロック、アンビエント、モダン・クラシックのジャンルで魅力的な音楽をリリースするレーベルです。読者の皆さんには、ぜひ私たちのウェブサイトを訪れて、私たちが一緒に仕事をする喜びを感じている素晴らしいアーティストたちを探求していただきたいと思います。



過去15年にわたり、Fluttery Recordsは世界中の才能あるアーティストからポストロック、モダン・クラシック、アンビエント音楽をリリースしてきました。



今日、日本のプレスとお話をさせていただくにあたり、日本からの優れたアーティストの一人にスポットを当てたいと思います。

 

Gargleというバンドで、メンバーの一人は私の親愛なる友人である箕輪純です。Gargleはスペインのアーティスト、Bosques De Mi Menteとコラボレートしたアルバム『Absence』を発表しました。このコラボレーションは、世界中から最も魅力的で境界を押し広げる音楽を紹介するというレーベルの献身性を証明するものです。



広がりのあるエモーショナルなポストロックのサウンドスケープから、静謐で内省的なアンビエント作品、そして、深く心を揺さぶるモダン・クラシックの楽曲に至るまで、Fluttery Recordsにはすべての音楽愛好家が発見できる何かがあるはずです。



Music Tribune:

 

レーベルの今後の事業計画はありますか?

 


Celestial Trails:

 
今やっていることを続けていきたいと思っています。既存のアーティストを支持し続ける一方で、新たな才能を迎え入れ、彼らに国際的な認知とファン層の拡大のためのプラットフォームを提供します。

 

私たちのコミットメントは揺るぎません。卓越した音楽を創造することに専心する世界中の才能あるインストゥルメンタリストに門戸を開き続けることです。私たちは、インストゥルメンタル・ミュージックへの情熱で結ばれたミュージシャンと愛好家の活気あるコミュニティを、共に育てていきます。

 
 

Music Tribune:


Tanerさん、本当にありがとうございました。今後のアーティストとしての活躍、レーベルの運営にも期待しています。